(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置、表示制御装置、及びヘッドアップディスプレイ装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240528BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240528BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240528BHJP
【FI】
G02B27/01
G09G5/00 550B
G09G5/00 510B
G09G5/00 X
G09G5/00 550C
B60K35/23
(21)【出願番号】P 2020140637
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100192533
【氏名又は名称】奈良 如紘
(72)【発明者】
【氏名】佐治 俊輔
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-015708(JP,A)
【文献】特開2019-099030(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002344(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0083039(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0039078(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/23-35/235
G09G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、画像を被投影部材に投影することで、視認者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置であって、
前記画像を生成する画像生成部と、
前記画像を表示する表示部と、
前記画像の表示光を反射して、前記被投影部材に投影する光学部材を含む光学系と、
アイボックスにおける視認者の視点位置に応じて
パラメータ値を更新し、その
パラメータ値を用いて前記表示部に表示する画像を、前記画像の虚像の歪み特性とは逆の特性をもつように予め歪ませる視点位置追従ワーピング制御を実施する制御部と、
を有し、
アイボックスの内部を複数に分割したときの各分割領域を視域とし、前記視域を単位として前記視認者の視点の位置が検出される場合に、
前記制御部は、
視点の移動に伴い
前記パラメータ値の更新が必要となると、所定時間の過渡期間
の計測を開始すると共に、
前記視認者の視点の位置が検出される前記視域に対応した第1のワーピングパラメータを設定して、
前記パラメー
タ値が、前記第1のワーピングパラメータの値になるように変化させ、
前記過渡期間内では、視点の移動に関わらず前記第1のワーピングパラメータを維持する、又は
、視点移動に対応して新た
な第2のワーピングパラメータを設定
し、前記パラメータ値が、前記第2のワーピングパラメータの値になるように変化させる、
という制御を含む第1変化処理を実行し、
前記過渡期間の経過後に、視点移動に伴う
前記パラメータ値の更新が必要となると、前記過渡期間の経過後における視域に対応した第3のワーピングパラメータを設定し、
前記パラメータ値が、前記第3のワーピングパラメータの値になるように変化させる、又は時間に対して線形に、又は非線形に、徐々に変化させる、
という制御を含む第2変化処理を実行
し、
前記第1変化処理における、前記パラメータ値の時間に対する第1の変化率を、前記第2変化処理における、前記パラメータ値の時間に対する第2の変化率よりも小さく設定する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記過渡期間において、前記第1変化処理を実行中に視点の移動があり、その視点の移動に伴い、
前記パラメータ値を、新たな視域に対応する
前記第2のワーピングパラメータの値へ変化させるに際し、
前記第1変化処理における
前記パラメータ値の
時間に対する前記第1の変化率よりも大きな変化率となるように、第3変化処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項
1に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第3変化処理が実行されたときは、
前記過渡期間経過後における前記第2変化処理に代えて、
前記パラメータ値の変化率が前記第3変化処理における変化率よりも大きい第4変化処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項
2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記過渡期間内において前記第1変化処理を実行中に、不規則な視点移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたときは、前記第1変化処理を停止し、停止した時点での
前記パラメータ値を維持する、
ことを特徴とする、請求項1乃至
3の何れか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
前記視認者の前記視点の高さ位置に応じてアイボックスの位置を調整するに際し、前記光学部材を動かさず、前記画像の表示光の、前記光学部材における反射位置を変更する、
ことを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
前記表示部の画像表示面に対応する仮想的な虚像表示面が、前記車両の前方の、路面に重畳するように配置される、
又は、
前記虚像表示面の前記車両に近い側の端部である近端部と前記路面との距離が小さく、前記車両から遠い側の端部である遠端部と前記路面との距離が大きくなるように、前記路面に対して斜めに傾いて配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至
5の何れか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
画像を表示する表示部と、
前記画像の表示光を反射して
、被投影部材に投影する光学部材を含む光学系と、を含み、
前記画像を
前記被投影部材に投影することで、視認者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を制御する表示制御装置であって、
アイボックスにおける視認者の視点位置に応じて
パラメータ値を更新し、その
パラメータ値を用いて前記表示部に表示する画像を、前記画像の虚像の歪み特性とは逆の特性をもつように予め歪ませる視点位置追従ワーピング制御を実施する1つ又は複数のプロセッサ、を有し、
アイボックスの内部を複数に分割したときの各分割領域を視域とし、前記視域を単位として前記視認者の視点の位置が検出される場合に、
前記プロセッサは、
視点の移動に伴い
前記パラメータ値の更新が必要となると、所定時間の過渡期間
の計測を開始すると共に、
前記視認者の視点の位置が検出される前記視域に対応した第1のワーピングパラメータを設定して、
前記パラメータ値が、前記第1のワーピングパラメータの値になるように変化させ、
前記過渡期間内では、視点の移動に関わらず前記第1のワーピングパラメータを維持する、又は
、視点移動に対応し
て新た
な第2のワーピングパラメータを設定
し、前記パラメータ値が、前記第2のワーピングパラメータの値になるように変化させる、
という制御を含む第1変化処理を実行し、
前記過渡期間の経過後に、視点移動に伴う
前記パラメータ値の更新が必要となると、前記過渡期間の経過後における視域に対応した第3のワーピングパラメータを設定し、
前記パラメータ値が、前記第3のワーピングパラメータの値になるように変化させる、又は時間に対して線形に、又は非線形に、徐々に変化させる、
という制御を含む第2変化処理を実行
し、
前記第1変化処理における、パラメータ値の時間に対する第1の変化率を、前記第2変化処理における、パラメータ値の時間に対する第2の変化率よりも小さく設定する、
ことを特徴とする表示制御装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記過渡期間において、前記第1変化処理を実行中に視点の移動があり、その視点の移動に伴い、
前記パラメータ値を、新たな視域に対応する
前記第2のワーピングパラメータの値へ変化させるに際し、
前記第1変化処理における
前記パラメータ値の
時間に対する前記第1の変化率よりも大きな変化率となるように、第3変化処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項
7に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記第3変化処理が実行されたときは、
前記過渡期間経過後における前記第2変化処理に代えて、
前記パラメータ値の変化率が前記第3変化処理における変化率よりも大きい第4変化処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項
8に記載の表示制御装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
前記過渡期間内において前記第1変化処理を実行中に、不規則な視点移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたときは、前記第1変化処理を停止し、停止した時点での
前記パラメータ値を維持する、
ことを特徴とする、請求項
7乃至
9の何れか1項に記載の表示制御装置。
【請求項11】
画像を表示する表示部と、前記画像の表示光を反射して
、被投影部材に投影する光学部材を含む光学系と、を含み、
前記画像を
前記被投影部材に投影することで、視認者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を制御する方法であって、
アイボックスにおける視認者の視点位置に応じて
パラメータ値を更新することと、
その
パラメータ値を用いて前記表示部に表示する画像を、前記画像の虚像の歪み特性とは逆の特性をもつように予め歪ませる視点位置追従ワーピング制御を実施することと、
アイボックスの内部を複数に分割したときの各分割領域を視域とし、前記視域を単位として前記視認者の視点の位置が検出される場合に、
視点の移動に伴い
前記パラメータ値の更新が必要となると、所定時間の過渡期間
の計測を開始すると共に、
前記視認者の視点の位置が検出される前記視域に対応した第1のワーピングパラメータを設定して、
前記パラメー
タ値が、前記第1のワーピングパラメータの値になるように変化させ、
前記過渡期間内では、視点の移動に関わらず前記第1のワーピングパラメータを維持する、又は
、視点移動に対応し
て新た
な第2のワーピングパラメータを設定
し、前記パラメータ値が、前記第2のワーピングパラメータの値になるように変化させる、
という制御を含む第1変化処理を実行することと、
前記過渡期間の経過後に、視点移動に伴う
前記パラメータ値の更新が必要となると、前記過渡期間の経過後における視域に対応した第3のワーピングパラメータを設定し、
前記パラメータ値の値が、前記第3のワーピングパラメータの値になるように変化させる、又は時間に対して線形に、又は非線形に、徐々に変化させる、
という制御を含む第2変化処理を実行することと、
前記第1変化処理における、パラメータ値の時間に対する第1の変化率を、前記第2変化処理における、パラメータ値の時間に対する第2の変化率よりも小さく設定することと、
を含む、ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置の制御方法。
【請求項12】
前記過渡期間において、前記第1変化処理を実行中に視点の移動があり、その視点の移動に伴い、
前記パラメータ値を、新たな視域に対応する
前記第2のワーピングパラメータの値へ変化させるに際し、
前記第1変化処理における
前記パラメータ値の
時間に対する前記第1の変化率よりも大きな変化率となるように、第3変化処理を実行することをさらに含む、
ことを特徴とする、請求項
11に記載の表示制御装置。
【請求項13】
前記第3変化処理が実行されたときは、
前記過渡期間経過後における前記第2変化処理に代えて、前記パラメータ値の変化率が前記第3変化処理における変化率よりも大きい第4変化処理を実行することをさらに含む、
ことを特徴とする、請求項
12に記載の表示制御装置。
【請求項14】
前記過渡期間内において前記第1変化処理を実行中に、不規則な視点移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたときは、前記第1変化処理を停止し、停止した時点での
前記パラメータ値を維持することをさらに含む、
ことを特徴とする、請求項
11乃至
13の何れか1項に記載のヘッドアップディスプレイ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のウインドシールドやコンバイナ等の被投影部材に画像の表示光を投影(投射)し、視認者の前方等に虚像を表示するヘッドアップディスプレイ(Head-up Display:HUD)装置、表示制御装置、及びヘッドアップディスプレイ装置の制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
実景に重畳したコンテンツを表示(描画)するヘッドアップディスプレイ(HUD)装置によって、視線移動の最小化と進路方向や注意喚起等の情報を、ロスなく運転者等(視認者)に伝えることができ、運転の安全を提供できると考えられている。
【0003】
それを実現するためには外界をセンシングし、実際の対象物に合わせた表示を実現するシステムや運転者が視点を移動したときに生じる対象物との位置関係の変化に合わせて表示位置を変化させるシステムが必要になる。その補正には遅延なく精度高く運転者の変化や外界の変化を捉えて表示補正する必要がある。
【0004】
但し、例えば、オンロード(路面重畳)HUDや3D-HUDのようなシステムにおいては、像歪みが大きくなる傾向があり、視点移動をした場合に、重畳対象物から表示コンテンツがずれることが発生しやすくなる。
【0005】
このため、より精度が高く、遅延の少ない運転者の視点位置検出や表示位置補正システム等が必要になる。この場合、システムによる補正処理の負荷が大きくなってしまうのは否めない。また、その補正処理にも限界があり、遅延や位置ずれが発生して提示情報の認知が低下する場合もないとは言えない。
【0006】
この対策の1つとして、運転者等の視点位置に応じてワーピングパラメータを更新する、視点位置追従ワーピングを実施することが考えられる。なお、ワーピングとは、HUD装置において、投影される画像を、光学系やウインドシールド等の曲面形状等に起因して生じる虚像の歪みとは逆の特性をもつように予め歪ませる画像補正のことである。HUD装置におけるワーピング処理については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、視認者(運転者、操縦者及び乗務員等、広く解釈可能である)の視点位置に応じてワーピングパラメータを更新する視点位置追従ワーピング制御を実施することについて検討し、以下に記載する新たな課題を認識した。
【0009】
視点位置が移動してワーピングパラメータを更新する場合において、パラメータの切り替え時に、視認者から見た虚像の見た目(虚像の様子や虚像から受ける印象等)が不連続に変化し、視認者に違和感を生じさせたり、視認者の情報等の認知性(奥行きの知覚)を低下させたりすることがあり得る。
【0010】
本発明の目的の1つは、HUD装置において、視点位置追従ワーピング処理を実施するときに、ワーピングパラメータの更新に伴って画像の見た目が不連続に変化して視認者に違和感を生じさせることを抑制することである。
【0011】
本発明の他の目的は、以下に例示する態様及び最良の実施形態、並びに添付の図面を参照することによって、当業者に明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下に、本発明の概要を容易に理解するために、本発明に従う態様を例示する。
【0013】
第1の態様において、ヘッドアップディスプレイ装置は、
画像を被投影部材に投影することで、視認者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置であって、
前記画像を生成する画像生成部と、
前記画像を表示する表示部と、
前記画像の表示光を反射して、前記被投影部材に投影する光学部材を含む光学系と、
アイボックスにおける視認者の視点位置に応じてワーピングパラメータを更新し、そのワーピングパラメータを用いて前記表示部に表示する画像を、前記画像の虚像の歪み特性とは逆の特性をもつように予め歪ませる視点位置追従ワーピング制御を実施する制御部と、
を有し、
アイボックスの内部を複数に分割したときの各分割領域を視域とし、前記視域を単位として前記視認者の視点の位置が検出される場合に、
前記制御部は、
視点の移動に伴いワーピングパラメータの更新が必要となると、所定時間の過渡期間を設定すると共に、第1のワーピングパラメータを設定して、パラメータの値が、前記第1のワーピングパラメータの値になるように変化させ、
前記過渡期間内では、視点の移動に関わらず、前記第1のワーピングパラメータを維持する、又は、前記視域を単位とした視点位置の検出毎にワーピングパラメータを更新する場合に比べて、パラメータ更新の頻度をより低下させつつ、あるいは同等のパラメータの更新頻度としつつ、視点移動に対応して新たなワーピングパラメータとしての第2のワーピングパラメータを設定していく、
という制御を含む第1変化処理を実行し、
前記過渡期間の経過後に、視点移動に伴うワーピングパラメータの更新が必要となると、前記過渡期間の経過後における視域に対応した第3のワーピングパラメータを設定し、ワーピングパラメータの値が、前記第3のワーピングパラメータの値になるように変化させる、又は時間に対して線形に、又は非線形に、徐々に変化させる、
という制御を含む第2変化処理を実行する。
【0014】
第1の態様では、視点の移動が生じると、その移動はある程度の時間は続き、やがて視点移動が収束する(止まる)ことが多い点に着目し、第1のワーピングパラメータを新たに設定するときに、視点移動の過渡期間(単に過渡期間と称する)を設定する。
【0015】
その過渡期間内では、視点の移動に関わらず、第1のワーピングパラメータを維持するか、あるいは、視域を単位とした視点位置の検出毎にワーピングパラメータを更新する場合に比べて、パラメータ更新の頻度をより低下させつつ、あるいは、同等の(言い換えれば同じ)パラメータの更新頻度としつつ、視点移動に対応して新たなワーピングパラメータとしての第2のワーピングパラメータを設定していく、という制御を含む第1変化処理を実行する。
【0016】
視域を細かく設定して視点位置の検出感度を高く保ちつつ、過渡期間内では、第1のパラメータを維持するか、視域毎にパラメータを更新する場合に比べて、パラメータの更新回数を減らして頻繁なパラメータ更新をしないようにする等の工夫をしつつ(但し、同等のパラメータの更新頻度とすることも許容され得る)、視点移動に対応して少しずつ第2のパラメータを設定していく。これによって、視認者に違和感を生じさせることが抑制される。ここで、少しずつ第2のパラメータを設定していくことは、視点移動の様子を見ながら(言い換えれば、視点移動の経過を観察しながら)、現状に少しずつ追従させてパラメータ値を変化させ、過渡期間経過後に検出される視域に対応する第3のパラメータの値に近づけていく処理(追従処理)とみることもできる。また、視点移動に関わらず、第1のワーピングパラメータを維持してもよいが、この場合も、パラメータ値は、第1のワーピングパラメータの値になるように、時間に対して変化していく。第1のワーピングパラメータは、最初の視点移動に対して更新されたワーピングパラメータであるため、上記のパラメータ値の変化は、緩やかではあるが、その後の視点移動にも追従したものである可能性が高く、よって、上記の追従処理に含まれ得る。
【0017】
過渡期間経過後において視点位置が検出されると、検出された視域に対応する第3のワーピングパラメータを設定し、パラメータ値を変化させる(すみやかな変化を意図したものでもよい)、又は時間に対して徐々に変化させる制御を含む第2変化処理を実行する。この第2変化処理により、パラメータ値を、現実的に許容され得る時間の範囲内で、第3のパラメータの値に行き着かせる(到達させる)ことが可能である。
【0018】
よって、視点位置検出精度を高く保ちつつ、また、不連続なパラメータの値の変化による違和感を抑制しつつ、視点移動が収束した後の視域のワーピングパラメータの値への変更を、許容される遅延時間内で実現することができる。言い換えれば、ある程度の範囲における視点移動が生じたとしても、効果的な対策が施されることになり、HUD装置が表示する画像(虚像)の表示品質の低下を抑制することができる。
【0019】
なお、第1変化処理、第2変化処理では、その変化の特性は、基本的には、別個独立に設定することが可能である(但し、連動させたり、関係づけをしたりすることも可能である)。例えば、パラメータを線形に変化させてもよく、非線形に変化させてもよい。また、第1変化処理と第2変化処理とで、変化率を大、小とする、小、大とする、同じとする、というように、柔軟に設計することができる。これによって、例えば、視点位置追従ワーピングの性能を微調整する、あるいは、特性を現状に合わせて変更する、といったことが可能であり、HUD装置の性能が向上する。
【0020】
第1の態様に従属する第2の態様において、
前記第1変化処理における、パラメータ値の時間に対する第1の変化率は、前記第2変化処理における、パラメータ値の時間に対する第2の変化率よりも小さく設定されてもよい。
【0021】
第2の態様では、第1変化処理の変化率(第1の変化率)は、第2変化処理の変化率(第2の変化率)よりも小さく設定される。
【0022】
好ましい1つの態様としては、過渡期間内における第1変化処理では、視点位置の移動の様子を見るという観点から、あるいは、視点移動の途中において視認者に違和感を生じさせないようにするという観点から、パラメータ値の時間に対する変化率は、ある程度、抑制して、少しずつ変化させるのがよい。言い換えれば、過渡期間内では、パラメータ値を、あまり急に変化させない。よって、第1変化処理におけるパラメータ値の変化率(第1の変化率)は、比較的小さく設定される傾向にある。
【0023】
一方、過渡期間が経過して、視点移動が収束した後は、パラメータ値を、検出された視域に対応するパラメータ(第3のワーピングパラメータ)の値に、ある程度、すみやかに到達させて、視点追従ワーピングにおける、パラメータ変更の追従性能を確保(担保)することが好ましい。よって、この場合には、第2変化処理におけるパラメータ値の変化率(第2の変化率)は、第1の変化率よりも、大きく設定されるのがよい。すなわち、第2変化処理は、過渡期間が経過した場合、検出された視域に対応するパラメータ(第3のワーピングパラメータ)にすみやかに切り替えられてもよい。
【0024】
これによって、不連続なワーピングパラメータ値の変更に伴う視認性の低下を抑制しつつ、視点追従ワーピングにおける、パラメータ変更の追従性能を確保(担保)することができる。
【0025】
第1又は第2の態様に従属する第3の態様において、
前記制御部は、
前記過渡期間において、前記第1変化処理を実行中に視点の移動があり、その視点の移動に伴い、パラメータ値を、新たな視域に対応するワーピングパラメータの値へ変化させるに際し、
前記第1変化処理におけるパラメータ値の変化率よりも大きな変化率となるように、第3変化処理を実行してもよい。
【0026】
第3の態様では、過渡期間内において、必要に応じて、第1変化処理よりもパラメータ値の変化率が大きく設定されている第3変化処理を実施することができる。上記のとおり、過渡期間内では、パラメータ値の変化率をやや小さめにして不連続な変化を抑制している。
【0027】
但し、例えば、過渡期間内において視点が複数の視域を通過して動き、これに伴ってワーピングパラメータ値の変化量(変動量)が増大する場合には、第1変化処理のみを実行していたのでは、ワーピングが、視点位置の変化に追従できず、かなり遅延した処理となってしまう場合が想定され得る。この場合は、過渡期間の経過後に、パラメータ値を急峻に変化させて対応せざるを得ないが、こうすると、表示する虚像の見た目が不連続に変わって、視認者に違和感を生じさせる可能性が高まる。
【0028】
そこで、過渡期間が満了する前に、パラメータ値の変化を、第1変化処理よりも増大させて、パラメータ値の追従性を高めておく。こうすることで、過渡期間が満了した時点では、パラメータ値は、視点の動きに追従して素早く変化しており、よって、過渡期間経過後におけるパラメータ値の変化量を小さくすることができる。よって、違和感の発生等を抑制することができる。
【0029】
第3の態様に従属する第4の態様では、
前記制御部は、
前記第3変化処理が実行されたときは、
前記過渡期間経過後における前記第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率が前記第3変化処理における変化率よりも大きい第4変化処理を実行してもよい。
【0030】
第4の態様では、過渡期間の経過後に、第1の態様における第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率がより大きく設定されている第4変化処理を実施する。先に説明したように、第3の態様では、過渡期間満了前に第3変化処理が実行されて、パラメータ値の追従性が高められ、過渡期間経過後のパラメータ値の変化量が抑制される。
【0031】
但し、その第3変化処理を行ったとしても、過渡期間経過後のパラメータ値の変化量がある程度、大きい場合には、第1の態様で述べた第2変化処理では、パラメータ値が目標値に到達するまでの時間が長くなり、視点追従ワーピングの追従性能が低下することがある。
【0032】
そこで、第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率がより大きい第4変化処理を実行して、パラメータ値が目標値に到達するのに要する時間を短縮し、追従性能の低下を抑制する。したがって、視点追従ワーピングの追従性能が低下して、補正後の画像(虚像)の表示品質が低下する、といった問題は生じない。
【0033】
第1乃至第4の何れか1つの態様に従属する第5の態様において、
前記制御部は、
前記過渡期間内において前記第1変化処理を実行中に、不規則な視点移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたときは、前記第1変化処理を停止し、停止した時点でのワーピングパラメータを維持してもよい。
【0034】
第5の態様では、過渡期間中に、精度の高い視点位置追従ワーピングを実施できない事情が生じたときは、第1変化処理を停止(中止)し、停止時におけるワーピングパラメータを維持する措置を採る。パラメータの値は、例えば、その維持されているワーピングパラメータにおける、その停止時のパラメータ値に維持される。但し、停止時のパラメータ値ではなく、適切な他の値を選択(採用)し、パラメータ値を、その値に維持するといった変形も可能である。
【0035】
これにより、視点追従ワーピングを継続することによって、かえって、画像(虚像)が不安定化して、不自然な見え方をする等の弊害が生じないようにすることができる。
【0036】
第1乃至第5の何れか1つの態様に従属する第6の態様において、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
前記視認者の前記視点の高さ位置に応じてアイボックスの位置を調整するに際し、前記光学部材を動かさず、前記画像の表示光の、前記光学部材における反射位置を変更してもよい。
【0037】
第6の態様では、上記の制御を実施するHUD装置は、視認者の目(視点)の高さ位置に応じてアイボックスの高さ位置を調整する場合に、光を被投影部材に投影する光学部材を、例えばアクチュエータを用いて回動させるようなことをせず、その光学部材における光の反射位置を変更することで対応する。
【0038】
近年のHUD装置は、例えば車両の前方のかなり広い範囲にわたって虚像を表示することを前提として開発される傾向があり、この場合、必然的に装置が大型化する。当然、光学部材も大型化する。この光学部材をアクチュエータ等を用いて回動等させるとその誤差によって、かえってアイボックスの高さ位置の制御の精度が低下することがあり、これを防止するために、光線が光学部材で反射する位置を変更することで対応することとしたものである。
【0039】
このような大型の光学部材では、その反射面を自由曲面として最適設計すること等によって、できるかぎり虚像の歪みが顕在化しないようにするが、しかし、上記のように、例えばアイボックスの周辺に視認者の視点が位置する場合等には、どうしても歪みが顕在化してしまう場合もある。よって、このようなときに、上記のワーピングパラメータの更新の感度を低下させる等の制御を実施することで、虚像の歪みによる見え方の変化による違和感が生じにくくすることができ、上記の制御を有効に活用して視認性を向上させることができる。
【0040】
第1乃至第6の何れか1つの態様に従属する第7の態様において、
前記ヘッドアップディスプレイ装置は、
前記表示部の画像表示面に対応する仮想的な虚像表示面が、前記車両の前方の、路面に重畳するように配置される、
又は、
前記虚像表示面の前記車両に近い側の端部である近端部と前記路面との距離が小さく、前記車両から遠い側の端部である遠端部と前記路面との距離が大きくなるように、前記路面に対して斜めに傾いて配置されてもよい。
【0041】
第7の態様では、HUD装置における、車両の前方等に配置される仮想的な虚像表示面(表示部としてのスクリーン等の表示面に対応する)が、路面に重畳されるように、あるいは、路面に対して傾斜して設けられる。前者は路面重畳HUDと称され、後者は傾斜面HUDと称されることがある。
【0042】
これらは、路面に重畳される広い虚像表示面、又は路面に対して傾斜して設けられる広い虚像表示面を用いて、例えば、車両前方5m~100mの範囲で、種々の表示を行うことができるものであり、HUD装置は大型化し、アイボックスも大型化して、従来よりも広い範囲で視点位置を高精度に検出して、適切なワーピングパラメータを用いた画像補正を行うことが好ましい。この場合、例えば、視点がアイボックスの周辺にあるとき等において、ワーピングパラメータの頻繁な更新に伴う画像(虚像)の視認性の低下が生じる場合があり、よって、本発明の制御方式の適用が有効となる。
【0043】
第8の態様において、表示制御装置は、
画像を表示する表示部と、
前記画像の表示光を反射して、前記被投影部材に投影する光学部材を含む光学系と、を含み、画像を被投影部材に投影することで、視認者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を制御する表示制御装置であって、
アイボックスにおける視認者の視点位置に応じてワーピングパラメータを更新し、そのワーピングパラメータを用いて前記表示部に表示する画像を、前記画像の虚像の歪み特性とは逆の特性をもつように予め歪ませる視点位置追従ワーピング制御を実施する1つ又は複数のプロセッサ、を有し、
アイボックスの内部を複数に分割したときの各分割領域を視域とし、前記視域を単位として前記視認者の視点の位置が検出される場合に、
前記プロセッサは、
視点の移動に伴いワーピングパラメータの更新が必要となると、所定時間の過渡期間を設定すると共に、第1のワーピングパラメータを設定して、パラメータの値が、前記第1のワーピングパラメータの値になるように変化させ、
前記過渡期間内では、視点の移動に関わらず前記第1のワーピングパラメータを維持する、又は、前記視域を単位とした視点位置の検出毎にワーピングパラメータを更新する場合に比べて、パラメータ更新の頻度をより低下させつつ、視点移動に対応して少しずつ新たなワーピングパラメータとしての第2のワーピングパラメータを設定していく、
という制御を含む第1変化処理を実行し、
前記過渡期間の経過後に、視点移動に伴うワーピングパラメータの更新が必要となると、前記過渡期間の経過後における視域に対応した第3のワーピングパラメータを設定し、ワーピングパラメータの値が、前記第3のワーピングパラメータの値になるように変化させる、又は時間に対して線形に、又は非線形に、徐々に変化させる、
という制御を含む第2変化処理を実行する。
【0044】
第8の態様では、上記の第1の態様と同様の効果が得られる。言い換えれば、視点位置検出精度を高く保ちつつ、また、不連続なパラメータの値の変化による違和感を抑制しつつ、視点移動が収束した後の視域のワーピングパラメータの値への変更を、許容される遅延時間内で実現することができる。言い換えれば、ある程度の範囲における視点移動が生じたとしても、効果的な対策が施されることになり、HUD装置が表示する画像(虚像)の表示品質の低下を抑制することができる。
【0045】
第8の態様に従属する第9の態様において、
前記プロセッサは、
前記第1変化処理における、パラメータ値の時間に対する第1の変化率を、前記第2変化処理における、パラメータ値の時間に対する第2の変化率よりも小さく設定してもよい。
【0046】
第9の態様では、上記の第2の態様と同様の効果が得られる。言い換えれば、不連続なワーピングパラメータ値の変更に伴う視認性の低下を抑制しつつ、視点追従ワーピングにおける、パラメータ変更の追従性能を確保(担保)することができる。
【0047】
第8又は第9の態様に従属する第10の態様において、
前記プロセッサは、
前記過渡期間において、前記第1変化処理を実行中に視点の移動があり、その視点の移動に伴い、パラメータ値を、新たな視域に対応するワーピングパラメータの値へ変化させるに際し、
前記第1変化処理におけるパラメータ値の変化率よりも大きな変化率となるように、第3変化処理を実行してもよい。
【0048】
第10の態様によれば、上記の第3の態様と同様の効果を得ることができる。言い換えれば、過渡期間経過後におけるパラメータ値の変化量を小さくすることができ、違和感の発生等を抑制することができる。
【0049】
第10の態様に従属する第11の態様において、
前記プロセッサは、
前記第3変化処理が実行されたときは、
前記過渡期間経過後における前記第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率が前記第3変化処理における変化率よりも大きい第4変化処理を実行してもよい。
【0050】
第11の態様では、上記の第4の態様と同様の効果を得ることができる。言い換えれば、第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率がより大きい第4変化処理を実行して、パラメータ値が目標値に到達するのに要する時間を短縮し、追従性能の低下を抑制する。したがって、視点追従ワーピングの追従性能が低下して、補正後の画像(虚像)の表示品質が低下する、といった問題は生じない。
【0051】
第8乃至第11の何れか1つの態様に従属する第12の態様において、
前記プロセッサは、
前記過渡期間内において前記第1変化処理を実行中に、不規則な視点移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたときは、前記第1変化処理を停止し、停止した時点でのワーピングパラメータを維持してもよい。
【0052】
第12の態様では、上記の第5の態様と同様の効果を得ることができる。言い換えれば、視点追従ワーピングを継続することによって、かえって、画像(虚像)が不安定化して、不自然な見え方をする等の弊害が生じないようにすることができる。
【0053】
第13の態様において、ヘッドアップディスプレイ装置の制御方法は、
前記画像の表示光を反射して、前記被投影部材に投影する光学部材を含む光学系と、を含み、画像を被投影部材に投影することで、視認者に前記画像の虚像を視認させるヘッドアップディスプレイ(HUD)装置を制御する方法であって、
アイボックスにおける視認者の視点位置に応じてワーピングパラメータを更新することと、
そのワーピングパラメータを用いて前記表示部に表示する画像を、前記画像の虚像の歪み特性とは逆の特性をもつように予め歪ませる視点位置追従ワーピング制御を実施することと、
アイボックスの内部を複数に分割したときの各分割領域を視域とし、前記視域を単位として前記視認者の視点の位置が検出される場合に、
視点の移動に伴いワーピングパラメータの更新が必要となると、所定時間の過渡期間を設定すると共に、第1のワーピングパラメータを設定して、パラメータの値が、前記第1のワーピングパラメータの値になるように変化させ、
前記過渡期間内では、視点の移動に関わらず前記第1のワーピングパラメータを維持する、又は、前記視域を単位とした視点位置の検出毎にワーピングパラメータを更新する場合に比べて、パラメータ更新の頻度をより低下させつつ、視点移動に対応して少しずつ新たなワーピングパラメータとしての第2のワーピングパラメータを設定していく、
という制御を含む第1変化処理を実行することと、
前記過渡期間の経過後に、視点移動に伴うワーピングパラメータの更新が必要となると、前記過渡期間の経過後における視域に対応した第3のワーピングパラメータを設定し、ワーピングパラメータの値が、前記第3のワーピングパラメータの値になるように変化させる、又は時間に対して線形に、又は非線形に、徐々に変化させる、
という制御を含む第2変化処理を実行することと、
を含む。
【0054】
第13の態様では、上記の第1の態様と同様の効果が得られる。言い換えれば、視点位置検出精度を高く保ちつつ、また、不連続なパラメータの値の変化による違和感を抑制しつつ、視点移動が収束した後の視域のワーピングパラメータの値への変更を、許容される遅延時間内で実現することができる。言い換えれば、ある程度の範囲における視点移動が生じたとしても、効果的な対策が施されることになり、HUD装置が表示する画像(虚像)の表示品質の低下を抑制することができる。
【0055】
第13の態様に従属する第14の態様において、
ヘッドアップディスプレイ装置の制御方法は、前記第1変化処理における、パラメータ値の時間に対する第1の変化率を、前記第2変化処理における、パラメータ値の時間に対する第2の変化率よりも小さく設定することをさらに含んでもよい。
【0056】
第14の態様では、上記の第2の態様と同様の効果が得られる。言い換えれば、不連続なワーピングパラメータ値の変更に伴う視認性の低下を抑制しつつ、視点追従ワーピングにおける、パラメータ変更の追従性能を確保(担保)することができる。
【0057】
第13又は第14の態様に従属する第15の態様において、
ヘッドアップディスプレイ装置の制御方法は、前記過渡期間において、前記第1変化処理を実行中に視点の移動があり、その視点の移動に伴い、パラメータ値を、新たな視域に対応するワーピングパラメータの値へ変化させるに際し、
前記第1変化処理におけるパラメータ値の変化率よりも大きな変化率となるように、第3変化処理を実行することをさらに含んでもよい。
【0058】
第15の態様では、上記の第3の態様と同様の効果を得ることができる。言い換えれば、過渡期間経過後におけるパラメータ値の変化量を小さくすることができ、違和感の発生等を抑制することができる。
【0059】
第15の態様に従属する第16の態様において、
ヘッドアップディスプレイ装置の制御方法は、前記第3変化処理が実行されたときは、
前記過渡期間経過後における前記第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率が前記第3変化処理における変化率よりも大きい第4変化処理を実行することをさらに含んでもよい。
【0060】
第16の態様では、上記の第4の態様と同様の効果を得ることができる。言い換えれば、第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率がより大きい第4変化処理を実行して、パラメータ値が目標値に到達するのに要する時間を短縮し、追従性能の低下を抑制する。したがって、視点追従ワーピングの追従性能が低下して、補正後の画像(虚像)の表示品質が低下する、といった問題は生じない。
【0061】
第13乃至第16の何れか1つの態様に従属する第17の態様において、
ヘッドアップディスプレイ装置の制御方法は、前記過渡期間内において前記第1変化処理を実行中に、不規則な視点移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたときは、前記第1変化処理を停止し、停止した時点でのワーピングパラメータを維持することをさらに含んでもよい。
【0062】
第17の態様では、上記の第5の態様と同様の効果を得ることができる。言い換えれば、視点追従ワーピングを継続することによって、かえって、画像(虚像)が不安定化して、不自然な見え方をする等の弊害が生じないようにすることができる。
【0063】
当業者は、例示した本発明に従う態様が、本発明の精神を逸脱することなく、さらに変更され得ることを容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1(A)は、ワーピング処理の概要、及びワーピング処理を経て表示される虚像(及び虚像表示面)の歪みの態様を説明するための図、
図1(B)は、ウインドシールドを介して視認者が視認する虚像の一例を示す図である。
【
図2】
図2(A)は、視点位置追従ワーピング処理の概要を説明するための図、
図2(B)は、内部を複数の視域に分割したアイボックスの構成例を示す図である。
【
図3】
図3(A)、(B)は、ワーピングパラメータの値の線形、又は非線形の変化の態様を示す図である。
【
図4】
図4(A)は、アイボックスにおける視点移動の一例(視点が1つの視域を隔てた視域へと移動する例)を示す図、
図4(B)は、ワーピングパラメータの切り替え時における、パラメータ値を徐々に変化させる制御の例(第1変化処理、及び第2変化処理の例)を示す図である。
【
図5】
図5(A)は、アイボックスにおける視点移動の他の例(視点が2つの視域を隔てた視域へと移動する例)を示す図、
図5(B)は、ワーピングパラメータの切り替え時における、パラメータ値を徐々に変化させる制御の他の例(第1変化処理、第3変化処理、及び第4変化処理を実行する例)を示す図である。
【
図6】
図6(A)は、アイボックスにおける視点移動のさらに他の例(視点が不規則に移動する例)を示す図、
図6(B)は、ワーピングパラメータの切り替え時における、パラメータ値を徐々に変化させる制御のさらに他の例(第1変化処理等を停止する例)を示す図である。
【
図7】
図7は、HUD装置のシステム構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、ワーピングによる画像補正処理の手順例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9(A)は、路面重畳HUDによる表示例を示す図、
図9(B)は、傾斜面HUDによる表示例を示す図、
図9(C)は、HUD装置の主要部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下に説明する最良の実施形態は、本発明を容易に理解するために用いられている。従って、当業者は、本発明が、以下に説明される実施形態によって不当に限定されないことを留意すべきである。
【0066】
図1を参照する。
図1(A)は、ワーピング処理の概要、及びワーピング処理を経て表示される虚像(及び虚像表示面)の歪みの態様を説明するための図、
図1(B)は、ウインドシールドを介して視認者が視認する虚像の一例を示す図である。
【0067】
図1(A)に示されるように、HUD装置100は、表示部(例えば、光透過型のスクリーン)101と、反射鏡103と、表示光を投影する光学部材としての曲面ミラー(例えば凹面鏡であり、反射面は自由曲面である場合もある)105と、を有する。表示部101(液晶パネル等)101の表示面102に表示された画像は、反射鏡103、曲面ミラー105を経て、被投影部材としてのウインドシールド2に投影される。
図1において、符号4は投影領域を示す。なお、HUD装置100は、曲面ミラーを複数設けてもよく、本実施形態のミラー(反射光学素子)に加えて、又は本実施形態のミラー(反射光学素子)の一部(又は全部)に代えて、レンズなどの屈折光学素子、回折光学素子などの機能性光学素子を含んでいてもよい。
【0068】
画像の表示光の一部は、ウインドシールド2で反射されて、予め設定されたアイボックス(ここでは所定面積の四角形の形状とする)EBの内部に(あるいはEB上に)位置する視認者等の視点(目)Aに入射され、車両1の前方に結像することで、表示部101の表示面102に対応する仮想的な虚像表示面PS上に虚像Vが表示される。
【0069】
表示部101の画像は、曲面ミラー105の形状やウインドシールド2の形状等の影響を受けて歪む。その歪みを相殺するために、その歪みとは逆特性の歪みが画像に与えられる。このプレディストーション(前置歪み)方式の画像補正を、本明細書ではワーピング処理、あるいはワーピング画像補正(あるいはワーピング補正)と称する。
【0070】
図1(A)の左上において、破線で示されるPS’は、ワーピング処理無しの場合の虚像表示面を示し、V’は、その虚像表示面PS’に表示される虚像を示している。
【0071】
図1(B)には、ウインドシールド2を介して視認者が視認する虚像Vの一例が示されている。
図1(B)では、矩形の外形を有する虚像Vには、例えば縦に5個、横に5個、合計で25個の基準点(基準画素点)G(i,j)(ここで、i、jは共に1~5の値をとり得る変数)が設けられる。画像(原画像)における各基準点に対して、ワーピング処理によって、虚像Vに生じる歪みとは逆特性の歪みが与えられ、したがって、その事前に与えられる歪みと、現実に生じる歪みとが相殺され、
図1(B)に示されるような湾曲のない虚像Vが表示される。基準点G(i,j)の数は、補間処理等によって適宜、増やすことができる。なお、
図1(B)において、符号7はステアリングホイールである。
【0072】
次に、
図2を参照する。
図2(A)は、視点位置追従ワーピング処理の概要を説明するための図、
図2(B)は、内部を複数の視域に分割したアイボックスの構成例を示す図である。
図2において、
図1と共通する部分には同じ参照符号を付している(この点は以降の図においても同様である)。
【0073】
図2(A)に示されるように、アイボックスEBは、複数(ここでは9個)の視域Z1~Z9に分割されており、各視域Z1~Z9を単位として、視認者の視点Aの位置が検出される。なお、アイボックスEBは立体的構成であるが、説明の便宜上、平面的に示している。
【0074】
HUD装置100の投射光学系118から画像の表示光Kが出射され、その一部がウインドシールド2により反射されて、視認者の視点(目)Aに入射する。視点AがアイボックスEB内にあるとき、視認者は画像の虚像を視認することができる。
【0075】
HUD装置100は、ROM210(
図7参照)を有し、ROM210は、画像変換テーブル212を内蔵する。画像変換テーブル212は、例えばデジタルフィルタによる画像補正(ワーピング画像補正)のための多項式、乗数、定数等を決定するワーピングパラメータWPを記憶している。ワーピングパラメータWPは、アイボックスEBにおける各視域Z1~Z9の各々に対応して設けられる。
図2(A)では、各視域に対応するワーピングパラメータをWP(Z1)~WP(Z9)が示されている。なお、図中、符号としては、WP(Z1)、WP(Z4)、WP(Z7)のみを示している。
【0076】
視点Aが移動した場合、その視点Aが、複数の視域Z1~Z9のうちの、どの位置にあるかが検出される。そして、検出された視域に対応するワーピングパラメータWP(Z1)~WP(Z9)の何れかがROM210から読みだされ(ワーピングパラメータの更新)、そのワーピングパラメータを用いてワーピング処理が実施される。
【0077】
図2(B)には、視域の数を
図2(A)の例よりも増やしたアイボックスEBが示されている。アイボックスEBは、縦に6個、横に10個、合計で60個の視域に分割されている。各視域は、X方向、Y方向の各座標位置をパラメータとして、Z(X、Y)と表示されている。各分割領域を視域とする。各視域は矩形の外形を有する。各視域には1つのワーピングパラメータが対応しており、その視域(矩形の1つの区画)を単位として、視点移動が検出(判定)される。
【0078】
また、
図2(B)の例では、太線の矩形Cの内部の12個の視域(白抜きの領域)が中央部(中央領域)ZAであり、その外側の領域(斜線を付して示される)が周辺部(周辺領域)ZBであり、両者は、本発明に係るワーピング処理の感度の調整のために、区別されて認識(検出)される。
【0079】
次に、
図3を参照する。
図3(A)、(B)は、ワーピングパラメータの値の線形、又は非線形の変化の態様を示す図である。
図3(A)、(B)の例では、移動前のワーピングパラメータwp12から、移動後のワーピングパラメータwp13への切り替え(更新)が行われる。
【0080】
言い換えれば、アイボックスにおける視認者の視点位置に応じてワーピングパラメータをwp12からwp13に更新して、そのワーピングパラメータを用いて表示部(
図1(A)の符号101)の表示面(
図1(A)の符号102)に表示する画像を、画像の虚像の歪み特性とは逆の特性をもつように予め歪ませる視点位置追従ワーピング制御が実施される。この制御は、
図7のワーピング制御部(単に制御部という場合がある)180により実行(実施)される(詳細は後述する)。
【0081】
制御部180は、ワーピングパラメータwp12からワーピングパラメータwp13に切り替える際、
図3(A)において、特性線Q1、Q2で示されるように、パラメータ値が、時間に対して(言い換えれば、時間軸上で)、線形に、又は非線形に、徐々に変化するように制御する。
【0082】
図3(A)において、ワーピングパラメータの切り替えタイミングは時刻t1である。線形の変化は、破線の特性線Q1により示され、非線形の変化は、破線の特性線Q2で示されている。特性線Q2は、ワーピングパラメータの切り替えの初期期間においては変化が急峻で、後半の期間では変化は緩やかとなる特性をもつ。初期の急峻な変化で、切り替えが遅くなることが抑制され、後半の緩やかな変化によって、wp12からwp13への、滑らかな移行が実現され、wp13に移行する時点での視覚的な違和感が低減される。
【0083】
線形、あるいは非線形にワーピングパラメータ値を変化させることで、ワーピングパラメータ値は、時間に対して徐々に変化し、変化開始から所定時間後に、wp13のパラメータ値に達する。よって、時刻t1において、急に(ステップ的に)変化させる場合に比べて、表示している画像(虚像)の見た目が急峻に変化することがなく、視認者(運転者等)の視覚的な違和感が低減される。
【0084】
また、
図3(B)には、ワーピングパラメータ値の非線形の変化の他の例が、破線の特性線Q3、Q4で示されている。特性線Q3は、ワーピングパラメータの切り替えの初期期間においては変化が穏やかで、後半の期間では変化は急峻になる特性をもつ。後半の急峻な変化で、切り替えが遅くなることが抑制され、前半の緩やかな変化によって、切り替えが開始されたときの視覚的な違和感が低減される。
【0085】
特性線Q4は、前半の変化が特性線Q3と同様(言い換えれば、最初は緩やかで後に急峻となる)であり、後半の変化が、先に示した特性線Q2と同様(言い換えれば、最初は急峻で後に緩やかとなる)である。変化が開始された当初に緩やかな変化とすることで視覚的違和感が低減され、やがて急峻となることで変化の遅延が軽減され、続いて、その急峻な変化が継続されることで遅延が抑制され、変化の終りの期間において変化が緩やかとなることで視覚的違和感が軽減される。
【0086】
次に、
図4を参照する。
図4(A)は、アイボックスにおける視点移動の一例(視点が1つの視域を隔てた視域へと移動する例)を示す図、
図4(B)は、ワーピングパラメータの切り替え時における、パラメータ値を徐々に変化させる制御の一例(第1変化処理、及び第2変化処理の例)を示す図である。
図4において、視域(wp13)、視域(wp14)という表記がなされているが、これは、ワーピングパラメータwp13に対応する視域、wp14に対応する視域であることを示す(後述する
図5、
図6においても同様である)。
【0087】
図4(A)では、視点Aは、アイボックスEBにおけるワーピングパラメータwp12に対応する視域から、wp14に対応する視域へと移動する。これに伴い、ワーピングパラメータの更新が実行される。ワーピングパラメータの更新に際しては、先に
図3にて説明したように、パラメータ値が、時間に対して線形、又は非線形に変化する。
【0088】
視点Aが、ワーピングパラメータwp12に対応する視域から、wp13に対応する視域(言い換えれば、視点の移動前の視域に隣接する視域)に移動したことが検出されると(言い換えれば、視点移動の最初の検出がなされると)、新たなワーピングパラメータwp13(第1のワーピングパラメータとする)が設定される。
【0089】
図4の例では、同時に、所定時間の、視点移動の過渡期間(単に過渡期間という)Taが設定される。ここで、過渡期間の長さ(所定時間)は、例えば5秒程度に設定される。但し、一例であり、時間は、適宜、短縮あるいは延長することができる。
【0090】
そして、過渡期間Taが経過する前は、第1変化処理(
図4(B)の特性線Q10で示されるパラメータ値の変化処理)が実行され、経過後は、第2変化処理(
図4(B)の特性線Q20で示されるパラメータ値の変化処理)が実行される。
【0091】
なお、
図4(B)の例では、特性線Q10、Q20により示される変化は線形であるが、非線形であってもよい。また、
図4(B)では、特性線Q10の変化率よりも、特性線Q20の変化率の方が大きいが、これは一例であり、逆であってもよく、また、同じ変化率とする場合もあり得る。各特性線の変化率等は、別個独立に設定が可能であり、設計の自由度が担保されている。
【0092】
第1変化処理においては、過渡期間Ta内で、視点の移動に関わらず、第1のワーピングパラメータを維持するか、あるいは、視域を単位とした視点位置の検出毎にワーピングパラメータを更新する場合に比べて、パラメータ更新の頻度をより低下させつつ、視点移動に対応して少しずつ新たなワーピングパラメータとしての第2のワーピングパラメータを設定していく、という制御を含む処理が実施される。
【0093】
視域を細かく設定して視点位置の検出感度を高く保ちつつ、過渡期間内では、第1のパラメータを維持するか、視域毎にパラメータを更新する場合に比べて、パラメータの更新回数を減らして頻繁なパラメータ更新をしないようにするといった工夫をしつつ(但し、同等の(あるいは同じ)パラメータの更新頻度とすることも許容され得る)、視点移動に対応して少しずつ第2のパラメータを設定していく。これによって、視認者に違和感を生じさせることが抑制される。ここで、少しずつ第2のパラメータを設定していくことは、視点移動の様子を見ながら(言い換えれば、視点移動の経過を観察しながら)、現状に少しずつ追従させてパラメータ値を変化させ、過渡期間経過後に検出される視域に対応する第3のパラメータの値に近づけていく処理(追従処理)とみることもできる。また、視点移動に関わらず、第1のワーピングパラメータを維持してもよいが、この場合も、パラメータ値は、第1のワーピングパラメータの値になるように、時間に対して変化していく。第1のワーピングパラメータは、最初の視点移動に対して更新されたワーピングパラメータであるため、上記のパラメータ値の変化は、緩やかではあるが、その後の視点移動にも追従したものである可能性が高く、よって、上記の追従処理に含まれ得る。
【0094】
第2変化処理においては、過渡期間Taの経過後に、視点移動に伴うワーピングパラメータの更新が必要となると、過渡期間Taの経過後の視域(経過後に検出される視域)に対応した第3のワーピングパラメータ(
図4(B)のwp14、後述する
図5(B)のwp15)を設定し、パラメータ値を変化させる。このパラメータ値の変化は、すみやかな変化を意図したもの(言い換えれば、急峻な変化)であってもよく、あるいは、時間に対して徐々に変化するものであってもよい。言い換えれば、第2変化処理は、すみやかな変化(急峻な変化を含む)を実施する制御、あるいは時間に対して徐々に変化させる緩やかな変化を実施する制御の双方を含む。それらの制御を適宜、使い分けたり、組み合わせて使用したりすることもできる。この第2変化処理により、パラメータ値を、現実的に許容され得る時間の範囲内で、第3のパラメータの値に行き着かせる(到達させる)ことが可能である。
【0095】
図4(B)では、第1変化処理は、特性線Q10により示されている。
図4(B)において、時刻t1に過渡期間(所定時間)が経過する。この時点で、視点Aが視域(wp14)に移動したことが検出される。時刻t1から時刻t2までは、第2変化処理(特性線Q20で示される)が実行される。時刻t2以降は、視点Aの移動がないため、ワーピングパラメータwp14のパラメータ値が維持される(特性線Q30で示される処理)。
【0096】
このように、
図4の例では、視域を細かく設定して視点位置の検出感度を高く保ちつつ、ワーピングパラメータの更新頻度を、視点が移動する視域毎に更新する場合よりも低下させて、頻繁な更新を抑制し、緩やかなパラメータ値の変化を生じさせる。視認者に違和感を与えずに、少しずつ、視点移動の方向性に対応するように、ワーピングパラメータの値を変化させていく。視点移動の様子を見ながら(言い換えれば、視点移動の経過を観察しながら)、現状に少しずつ追従させてパラメータ値を変化させ、過渡期間Taの経過後の視域(視域(wp14))に対応する第3のパラメータ(wp14)の値に近づけるような処理(追従処理)が実施される。
【0097】
過渡期間Taが経過すると、時刻t1で次の視域(視域(wp14)が検出され、第3のワーピングパラメータwp14が設定され、特性線Q20で示されるような第2変化処理が実行される。
【0098】
第1変化処理の際に、パラメータ値が、第3のワーピングパラメータ(wp14)の値に近づけられており、また、第2変化処理においては、必要に応じてすみやかな(急峻な)パラメータ値の変化も許容される。よって、第2変化処理では、パラメータ値を、現実的に許容され得る時間の範囲内(
図4(B)では、時刻t1~t2の期間内)で、第3のパラメータ(wp14)の値に行き着かせる(到達させる)ことが可能である。
【0099】
よって、視点位置検出精度を高く保ちつつ、また、不連続なパラメータの値の変化による違和感を抑制しつつ、視点移動が収束した後の視域のワーピングパラメータの値への変更を、許容される遅延時間内で実現することができる。言い換えれば、ある程度の範囲における視点移動が生じたとしても、効果的な対策が施されることになり、HUD装置100が表示する画像(虚像V)の表示品質の低下を抑制することができる。
【0100】
上述のとおり、第1変化処理、第2変化処理では、その変化の特性は、基本的には、別個独立に設定することが可能である。但し、連動させたり、関係づけをしたりすることも可能である。例えば、パラメータの変化を線形の変化とし、第1変化処理と第2変化処理とで、変化率を大、小とする、小、大とする、同じとする、あるいは、変化を非線形とする、というように、柔軟に設計することができる。これによって、例えば、視点位置追従ワーピングの性能を微調整する、あるいは、特性を現状に合わせて変更する、といったことが可能である。この点は、HUD装置100の性能の向上に寄与する。
【0101】
また、
図4(B)に示されるように、第1変化処理における、パラメータ値の時間に対する第1の変化率(特性線Q10の傾き)は、第2変化処理における、パラメータ値の時間に対する第2の変化率(特性線Q20の傾き)よりも小さく設定されてもよい。
【0102】
好ましい1つの例としては、過渡期間Ta内における第1変化処理では、視点位置の移動の様子を見るという観点から、あるいは、視点移動の途中において視認者に違和感を生じさせないようにするという観点から、パラメータ値の時間に対する変化率は、ある程度、抑制して、少しずつ変化させるのがよい。言い換えれば、過渡期間Ta内では、パラメータ値を、あまり急に変化させない。よって、第1変化処理におけるパラメータ値の変化率(第1の変化率:特性線Q10の傾き)は、比較的小さく設定される傾向にある。
【0103】
一方、過渡期間Taが経過して、視点移動が収束した後は、パラメータ値を、検出された視域に対応するパラメータ(第3のワーピングパラメータ)の値に、ある程度、すみやかに到達させて、視点追従ワーピングにおける、パラメータ変更の追従性能を確保(担保)することが好ましい。よって、この場合には、第2変化処理におけるパラメータ値の変化率(第2の変化率:特性線Q20の傾き)は、第1の変化率よりも、大きく設定されるのが好ましい。
【0104】
これによって、不連続なワーピングパラメータ値の変更に伴う視認性の低下を抑制しつつ、視点追従ワーピングにおける、パラメータ変更の追従性能を確保(担保)することができる。言い換えれば、例えば大きく不規則な視点の移動が生じたとしても、HUD装置100が表示する虚像Vに不自然な挙動(カクカクとした不連続な変化や急激な変化等)を抑えながら、歪みが小さい、視認性の高い表示をすることが可能である。これによって、HUD装置100が視認者に提供する情報の認知性が低下することが防止される。
【0105】
次に、
図5を参照する。
図5(A)は、アイボックスにおける視点移動の他の例(視点が2つの視域を隔てた視域へと移動する例)を示す図、
図5(B)は、ワーピングパラメータの切り替え時における、パラメータ値を徐々に変化させる制御の他の例(第1変化処理、第3変化処理、及び第4変化処理を実行する例)を示す図である。
【0106】
図5の例では、過渡期間Ta内において、必要に応じて、第1変化処理(特性線Q21で示される)よりもパラメータ値の変化率が大きく設定されている第3変化処理(特性線Q22で示される)を実施する。
【0107】
上記のとおり、過渡期間Ta内では、パラメータ値の変化率をやや小さめにして不連続な変化を抑制しつつ、パラメータ値を、過渡期間経過Ta後に検出されるであろう視域のパラメータ値に近づけるような制御が実行される。
【0108】
但し、その制御だけでは、過渡期間Taの経過後におけるパラメータ値の変化が、かなり大きくなって、視認者に違和感を生じさせる可能性が高くなる場合があり得る。
【0109】
例えば、過渡期間Ta内において、視点Aが複数の視域(
図5(A)では、視域(wp12)~視域(wp(15))を通過して動いており、過渡期間Ta内で検出された最新の視域(
図5(A)、(B)における視域(wp14))は、過渡期間Taを設定した時点での視域(元の視域:
図5(A)、(B)における視域(wp12))から離れた位置にあり、対応するパラメータの値に大きな差があり、よって、最新の視域の直前の視域までのパラメータ値の変化量(
図5(B)の変化量ΔS1)を勘案すると、最新の視域(視域(wp14))のパラメータ値との差分の変化量(
図5(B)の変化量ΔS2)が、かなり大きくなると判定(推定)される。なお、この判定は、制御部180(
図7参照)が、例えば所定の閾値を用いて行う。
【0110】
このときに、特性線Q22の変化率(傾き)を、通常の第1変化処理の変化率(傾き)としたのでは、変化が遅く、上記の大きな差分ΔS2を縮小することが困難である。この場合は、過渡期間Taの経過後におけるワーピングパラメータの更新の際、大きなパラメータ値の変化が生じて、視認者に違和感を与える可能性が高くなる。
【0111】
そこで、
図5(B)の例では、特性線Q22の傾きを、第1変化処理よりも急峻として、第3変化処理を実行している。
【0112】
図5(B)では、特性線Q22の変化率(傾き)は、第1変化処理における変化率(傾き)の2倍程度に設定されている。言い換えれば、過渡期間Taが満了する前に、パラメータ値の変化を、第1変化処理よりも増大させて、パラメータ値の追従性を高めておく。
【0113】
こうすることで、過渡期間Taが満了した時点では、上記の大きな差分ΔS2は、ΔS3に縮小されている。言い換えれば、パラメータ値は、過渡期間Taの経過における視域(視域(wp15))に対応したパラメータwp15の値により近づいている。よって、過渡期間Ta経過後におけるパラメータ値の変化量(
図5(B)のΔS4)は、過渡期間Taにおいて第1変化処理のみを実行した場合に比べて小さくなる。よって、違和感の発生等を抑制することができる。
【0114】
但し、
図5(B)のパラメータ値の変化量ΔS4は、それほど小さくはない。そこで、
図5(B)の例では、過渡期間Taが経過後において、通常の第2変化処理に代えて、第2変化処理よりもパラメータ値の変化率が大きい、第4変化処理(特性線Q23で示される)を実行している。特性線Q23の傾きは、通常の第2変化処理よりも、急峻(例えば2倍の変化率)となっている。よって、過渡期間Taの経過後のパラメータwp15のパラメータ値に達するまでの時間は、時刻t13~t14の時間となり、かなり短縮される。言い換えれば、パラメータの視点への追従の遅延は、許容範囲内に収まる。
【0115】
このように、第2変化処理に代えて、第4変化処理を実行して、パラメータ値が目標値に到達するのに要する時間を短縮し、追従性能の低下を抑制する。したがって、視点追従ワーピングの追従性能が低下して画質低下防止効果が低くなる、といったことは、特に、問題とならない。
【0116】
次に、
図6を参照する。
図6(A)は、アイボックスにおける視点移動のさらに他の例(視点が不規則に移動する例)を示す図、
図6(B)は、ワーピングパラメータの切り替え時における、パラメータ値を徐々に変化させる制御のさらに他の例(第1変化処理等を停止する例)を示す図である。
【0117】
図6の例では、過渡期間Ta内において第1変化処理を実行中に、不規則な視点移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたときは、第1変化処理を停止し、停止した時点でのワーピングパラメータを維持する制御が実行される。
【0118】
図6(A)に示されるように、視点Aは、かなり不規則な移動をしている。
図6(B)では、時刻t21において、不規則な視点移動が生じたことが検出される。これ以降、過渡期間Taが終了する時刻t22まで、第1変化処理(所定の変化率に基づくパラメータの更新処理)又は第3変化処理は停止し、停止した時点でのワーピングパラメータ(
図6(B)では、wp13)を維持する。
【0119】
パラメータの値は、例えば、その維持されているワーピングパラメータwp13における、その停止時のパラメータ値に維持される。なお、停止時のパラメータ値ではなく、適切な他の値(例えば、ワーピングパラメータの中間値等)を選択(採用)し、パラメータ値を、その値に維持するといった変形も可能である。
【0120】
これにより、視点追従ワーピングを継続することによって、かえって、画像(虚像)が不安定化して、不自然な見え方をする等の弊害が生じないようにすることができる。
【0121】
図6(B)において、時刻t22に過渡期間Taが終了し、また、視域(wp14)が検出される。これによって、ワーピングパラメータWP14が設定されて、時刻t22~時刻t23にて、第2変化処理あるいは第4変化処理が実施される。時刻t23以降は、視点Aの移動がないため、パラメータ値は、wp14の値に維持される。
【0122】
次に、
図7を参照する。
図7は、HUD装置のシステム構成の一例を示す図である。車両1(あるいはHUD装置100自体)には、視認者の視点A(目、瞳)の位置を検出する視点検出カメラ110が設けられている。また、車両1には、視認者がHUD装置100に必要な情報を設定すること等を可能とするために操作部130が設けられ、また、車両1の各種の情報を収集することが可能な車両ECU140が設けられている。
【0123】
また、HUD装置100は、光源112と、投光部114と、表示部としてのスクリーン116(表示面117を有する)と、投射光学系118と、視点位置検出部(視点位置判定部)120と、バス150と、表示制御部(表示制御装置)160と、画像変換テーブル212を内蔵するROM210と、画像(原画像)データ222を記憶し、かつワーピング処理後の画像データ224を一時的に記憶するVRAM220と、画像出力部230と、を有している。
【0124】
視点位置検出部120は、HUD装置100とは別に設けることもできる。視点位置検出部120は、視点座標検出部122と、アイボックス内の視域検出部124と、を有する。
【0125】
表示制御部(表示制御装置)160は、I/Oインタフェース170と、
図3~
図9に示したようなワーピング制御を実施するワーピング制御部(単に制御部という場合がある)180と、画像生成部192と、ワーピング処理部194と、を有する。ワーピング制御部180は、視点位置情報設定部182と、ワーピングパラメータ変化制御部184(経過時間管理部183を有する)と、タイマ185と、を有する。なお、経過時間管理部183は、タイマ185のカウントを使用して、所定時間である過渡期間の終了時点等を検出する。
【0126】
基本的な動作は以下のとおりである。視点位置検出部120から送られてくる視域情報(視点Aがアイボックスのどの視域にあるかを示す情報)に基づいて、ワーピング制御部180の視点位置情報設定部182が、視点移動前の視点位置と視点移動後の視点位置を設定する。ワーピングパラメータ変化制御部184は、車両ECU140等からの種々の情報を参考としつつ、先に、
図4(B)、
図5(B)、及び
図6(B)で示したような、ワーピングパラメータ値の時間に対する変化の態様(変化率、変化を示す特性線の種類等)を決定する。
【0127】
ワーピングパラメータ変化制御部184は、
(1)各視域に対応するワーピングパラメータWP(Z1)~WP(Z9)、及びこれらの間を補間する1つ又は複数のワーピングパラメータを、予めROM210に記憶しておき、これらを順次読み出すことで、画像を緩やかに変化させる、
(2)線形、又は非線形の特性線(演算式)を用いて、各視域に対応するワーピングパラメータWP(Z1)~WP(Z9)の間を補間する1つ又は複数のワーピングパラメータを順次生成することで、画像を緩やかに変化させる、
(3)車両ECU140等からの種々の情報を参考としつつ、上記(1)、(2)の処理を補正する、ことに関係する様々な動作を実行する。
すなわち、ワーピングパラメータ変化制御部184は、視点位置検出部120から送られてくる視域情報(視点Aがアイボックスのどの視域にあるかを示す情報)に基づいて、ワーピングパラメータ値の時間に対する変化の態様(変化率、変化を示す特性線の種類等)を決定するためのコマンド、判定値、テーブルデータ、演算式、などの様々なソフトウェア構成要素を含み得る。
【0128】
画像生成部192は、VRAM220にアクセスして画像データを読み出し、画像(原画像)を生成し、ワーピング処理部194に供給する。ワーピング処理部194は、ROM210にアクセスし、画像変換テーブル(
図2参照)212から、対応するワーピングパラメータを読み出し、読みだされたワーピングパラメータを用いて画像データ(原画像データ)に対してワーピング処理を施す。ワーピング処理後データは、一旦、画像生成部192に戻され、適宜、VRAM220に一時的に保存され、所定のタイミングで画像出力部230に供給される。画像出力部230にて所定のフォーマットの画像が生成され、その画像が、例えば光源112や投光部114等に供給される。
【0129】
次に、
図8を参照する。
図8は、ワーピングによる画像補正処理の手順例を示すフローチャートである。ステップS1では、視点を監視し、ステップS2では、最初の視点移動(視点移動先の視域の最初の検出)が有るか否かを判定する。NのときはステップS1に戻り、Yのときは、ステップS3に移行する。
【0130】
ステップS3では、移動先の視域に対応するワーピングパラメータ(第1のワーピングパラメータ)を設定する。また、同時に、過渡期間(所定時間)の計測を開始する。パラメータ値は、時間に対して線形、非線形に徐々に変化してもよく、また、すみやかに変化してもよい。
【0131】
ステップS4では、さらなる視点移動が有るか否かを判定する。Nのときは、ステップS4を継続し、Yのときは、ステップS5に移行する。ステップS5では、過渡期間(所定時間)内であるか否かが判定される。Nのときは、ステップS10に移行する(ステップS10の内容は後述する)。Yのときは、ステップS6に移行する。
【0132】
ステップS6では、第1変化処理を実行する。第1変化処理では、視点の移動に関わらず第1のワーピングパラメータを維持してもよく、又は、視域毎の更新の場合よりも頻度を低下させて、あるいは同等の頻度で、視点移動に対応させて第2のワーピングパラメータを設定していってもよい。但し、追従性能を高めるために、パラメータ値の変化率を高めた第3変化処理を実行してもよい。
【0133】
ステップS7では、視点の不規則移動、又は視点位置検出の精度の低下、あるいは視点位置の一時的喪失が検出されたか否かが判定される。Nのときは、ステップS4に戻る。Yのときは、ステップS8に移行する。ステップS8では、第1又は第3変化処理を停止して、現状の(言い換えれば、停止した時点の)ワーピングパラメータを維持する。パラメータ値は、例えば停止した時点の値が維持される。
【0134】
ステップS9では、過渡期間(所定時間)が経過したか否かが判定される。Nのときは、ステップS9を継続し、Yのときは、ステップS10に移行する。ステップS10では、第2変化処理が実行される。第2変化処理では、過渡期間の経過後に検出された視域に対応した第3のワーピングパラメータを設定する。第3のワーピングパラメータの切り替えはすみやかに行われてよい。パラメータ値の変化は、すみやかな(急峻な)変化であってもよく、時間に対して徐々に、線形に、又は非線形に変化するものであってもよい。また、現状のパラメータ値と目標のパラメータ値との差が大きい場合には、第2変化処理に代えて、パラメータ値の変化率がより大きい第4変化処理を実施してもよい。
【0135】
次に、
図9を参照する。
図9(A)は、路面重畳HUDによる表示例を示す図、
図9(B)は、傾斜面HUDによる表示例を示す図、
図9(C)は、HUD装置の主要部の構成例を示す図である。
【0136】
図9(A)は、表示部(
図1(A)の符号101、又は
図9(C)の符号161)の画像表示面(
図1(A)の符号102、又は
図9(C)の符号163)に対応する仮想的な虚像表示面PSが、車両1の前方の、路面41に重畳するように配置される、路面重畳HUD(オンロードHUD)による虚像表示例を示す。
【0137】
図9(B)は、虚像表示面PSの車両1に近い側の端部である近端部と路面41との距離が小さく、車両1から遠い側の端部である遠端部と路面41との距離が大きくなるように、虚像表示面PSが路面41に対して、例えば角度θ(0<θ≦90°)で傾斜している、傾斜面HUD(傾斜像面HUD)による虚像表示例を示す。
【0138】
これらは、路面41に重畳される広い虚像表示面PS、又は路面41に対して傾斜して設けられる広い虚像表示面PSを用いて、例えば、車両1の前方5m~100mの範囲で、種々の表示を行うことができるものであり、HUD装置は大型化し、アイボックスEBも大型化して、従来よりも広い範囲で視点位置を高精度に検出して、適切なワーピングパラメータを用いた画像補正を行うことが好ましい。この場合、例えば、視点Aの移動が多くなり、ワーピングパラメータの頻繁な更新に伴う画像(虚像V)の視認性の低下が生じる場合があり、よって、本発明の制御方式の適用が有効となる。
【0139】
次に、
図9(C)を参照する。
図9(C)のHUD装置107は、制御部171と、投光部151と、画像表示面163を有する表示部としてのスクリーン161と、反射鏡133と、反射面が自由曲面として設計されている曲面ミラー(凹面鏡等)131と、表示部161を駆動するアクチュエータ173と、を有する。
【0140】
図9(C)の例では、HUD装置107は、視認者の視点Aの高さ位置に応じてアイボックスEBの位置を調整するに際し、表示光をウインドシールド2に投影する光学部材である曲面ミラー131を動かさず(曲面ミラー131用のアクチュエータは設けられていない)、画像の表示光51の、光学部材131における反射位置を変更することで対応する。
【0141】
言い換えれば、視認者の目(視点A)の高さ位置に応じてアイボックスEBの高さ位置を調整する場合に、光を被投影部材2に投影する光学部材131を、例えばアクチュエータを用いて回動させるようなことをせず、その光学部材131における光の反射位置を変更することで対応する。なお、高さ方向とは、図中のY方向(路面41の垂線に沿う方向であり、路面41から離れる方向が正の方向となる)。なお、X方向は、車両1の左右方向、Z方向は車両1の前後方向(あるいは前方方向)である。
【0142】
近年のHUD装置は、例えば車両の前方のかなり広い範囲にわたって虚像を表示することを前提として開発される傾向があり、この場合、必然的に装置が大型化する。当然、光学部材131も大型化する。この光学部材131をアクチュエータ等を用いて回転等させるとその誤差によって、かえってアイボックスEBの高さ位置の制御の精度が低下することがあり、これを防止するために、光線が光学部材(曲面ミラー、具体的には例えば凹面鏡)131の反射面で反射する位置を変更することで対応することとしたものである。
【0143】
このような大型の光学部材131では、その反射面を自由曲面として最適設計すること等によって、できるかぎり虚像の歪みが顕在化しないようにするが、しかし、例えばアイボックスEBの周辺に視認者の視点Aが位置する場合等には、どうしても歪みが顕在化してしまう場合もある。
【0144】
よって、このようなときに、上記のワーピングパラメータの更新に伴うパラメータ値の変化を緩やかにして違和感を低減し、また、視点移動方向に対して、細かい視点位置検出を実施してパラメータ値を徐々に変化させながら、最終的に所定時間後(過渡期間経過後)の視域中心のパラメータに行き着く(到達する)ように、パラメータの変化を制御(調整)することが有効となる。言い換えれば、上記の制御を有効に活用して虚像Vの視認性を向上させることができる。
【0145】
以上説明したように、本発明によれば、視認者の視点位置に応じてワーピングパラメータを更新する視点位置追従ワーピング制御を実施するときに、ワーピングパラメータの更新に伴って画像の見た目が不連続に変化して視認者に違和感を生じさせることを効果的に抑制することができる。
【0146】
本発明は、左右の各眼に同じ画像の表示光を入射させる単眼式、左右の各眼に、視差をもつ画像を入射させる視差式のいずれのHUD装置においても使用可能である。
【0147】
本明細書において、車両という用語は、広義に、乗り物としても解釈し得るものである。また、ナビゲーションに関する用語(例えば標識等)についても、例えば、車両の運行に役立つ広義のナビゲーション情報という観点等も考慮し、広義に解釈するものとする。また、HUD装置には、シミュレータ(例えば、航空機のシミュレータ、ゲーム装置としてのシミュレータ等)として使用されるものも含まれるものとする。
【0148】
本発明は、上述の例示的な実施形態に限定されず、また、当業者は、上述の例示的な実施形態を特許請求の範囲に含まれる範囲まで、容易に変更することができるであろう。
【符号の説明】
【0149】
1・・・車両(自車両)、2・・・被投影部材(反射透光部材、ウインドシールド等)、4・・・投影領域、7・・・ステアリングホイール、100・・・HUD装置、110・・・視点検出カメラ、112・・・光源、114・・・投光部、101・・・表示部、102・・・表示面(画像表示面)、118・・・投射光学系、120・・・視点位置検出部(視点位置判定部)、122・・・視点座標検出部、124・・・アイボックス内の視域検出部、130・・・操作部、131・・・曲面ミラー(凹面鏡等)、133・・・反射鏡(反射ミラー、補正鏡等を含む)、140・・・車両ECU、150・・・バス、151・・・光源部、116・・・表示部(スクリーン等)、117・・・表示面(画像表示面)、160・・・表示制御部、170・・・I/Oインタフェース、180・・・表示制御部(表示制御装置:1又は複数のプロセッサを含む)、182・・・視点位置情報設定部、183・・・経過時間管理部、184・・・ワーピングパラメータ変化制御部、185・・・タイマ、192・・・画像生成部、194・・・ワーピング処理部、210・・・ROM、212・・・画像変換テーブル、220・・・VRAM、222・・・画像(原画像)データ、224・・・ワーピング処理後の画像データ、230・・・画像出力部、EB・・・アイボックス、Z(Z1~Z9等)・・・アイボックスの視域(分割領域)、WP・・・ワーピングパラメータ、PS・・・虚像表示面、V・・・虚像。