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特許7494660駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラム、液体吐出装置および駆動波形決定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラム、液体吐出装置および駆動波形決定システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20240528BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240528BHJP
   B41J 2/14 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 401
B41J2/14 301
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020144791
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039655
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊福 篤
(72)【発明者】
【氏名】村山 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】片倉 孝浩
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-006073(JP,A)
【文献】特開2000-334941(JP,A)
【文献】特開2012-248160(JP,A)
【文献】特開2008-176085(JP,A)
【文献】特開2017-209919(JP,A)
【文献】特開2006-247843(JP,A)
【文献】米国特許第08353567(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する第1液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第1駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、
液体を吐出する第2液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第2駆動パルスの波形に関する第2波形情報を取得する第1工程と、
前記第2波形情報に基づいて、前記第1駆動パルスの波形を決定する第2工程と、含む、
ことを特徴とする駆動波形決定方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記第1駆動パルスの波形候補を示す波形候補情報と、前記第2波形情報と、に基づいて、前記第1駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動波形決定方法。
【請求項3】
前記第2波形情報は、前記第2駆動パルスの波形候補でない第2駆動パルスの波形非候補を示す情報を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の駆動波形決定方法。
【請求項4】
前記第2工程において、前記第1駆動パルスの波形候補のうち前記第2駆動パルスの波形非候補に対応する波形候補を除外して得られる情報を用いて、前記第1駆動パルスの波形を決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の駆動波形決定方法。
【請求項5】
前記第2波形情報は、前記第2駆動パルスの波形候補を示す情報を含む、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項6】
前記第2波形情報は、前記第2駆動パルスを決定する過程で測定された吐出特性を示す情報を含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の駆動波形決定方法。
【請求項7】
前記第2工程において、前記第2駆動パルスの波形候補を示す情報を用いて前記第1駆動パルスの波形候補を決定する、
ことを特徴とする請求項5または6に記載の駆動波形決定方法。
【請求項8】
前記第2液体吐出ヘッドに対応して設けられた第2処理部から、前記第1液体吐出ヘッドに対応して設けられた第1処理部に、前記第2波形情報を送信する第5工程をさらに含み、
前記第2工程は、前記第1処理部にて行われる、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項9】
前記第2液体吐出ヘッドに対応して設けられた第2処理部から、サーバーに、前記第2波形情報を送信する第3工程と、
前記サーバーから、前記第1液体吐出ヘッドに対応して設けられた第1処理部に、前記第2波形情報の少なくとも一部を送信する第4工程と、をさらに含み、
前記第2工程は、前記第1処理部にて行われる、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項10】
前記第2液体吐出ヘッドに対応して設けられた第2処理部から、サーバーに、前記第2波形情報を送信する第3工程と、
前記第1液体吐出ヘッドに対応して設けられた第1処理部から、前記サーバーに、前記第1駆動パルスの波形に関する第1波形情報を送信する第6工程と、をさらに含み、
前記第2工程は、前記サーバーにて行われる、
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項11】
前記サーバーに設けられた記憶部に記憶されたプログラムをアップデートする第7工程をさらに含み、
前記プログラムは、前記第1駆動パルスの波形を決定する機能を前記サーバーに実現させる、
ことを特徴とする請求項10に記載の駆動波形決定方法。
【請求項12】
前記第1駆動パルスの波形に関する第1波形情報と、前記第2波形情報と、に基づいて、液体を吐出する第3液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第3駆動パルスの波形を決定する第8工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項13】
前記第1駆動パルスの波形に関する第1波形情報に基づいて、前記第2駆動パルスの波形を再決定する第9工程をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項14】
前記第1液体吐出ヘッドおよび前記第2液体吐出ヘッドは、互いに異なる液体吐出装置に設けられる、
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項15】
前記第1液体吐出ヘッドに対応して設けられた第1処理部と前記第2液体吐出ヘッドに対応して設けられた第2処理部とは、無線通信を介して互いに接続される、
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の駆動波形決定方法をコンピューターに実行させる、
ことを特徴とする駆動波形決定プログラム。
【請求項17】
液体を吐出するための駆動素子を有する第1液体吐出ヘッドと、
前記第1液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第1駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、
前記処理回路は、
液体を吐出する第2液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第2駆動パルスの波形に関する第2波形情報を取得する第1工程と、
前記第2波形情報に基づいて、前記第1駆動パルスの波形を決定する第2工程と、を実行する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項18】
液体を吐出するための駆動素子を有する第1液体吐出ヘッドと、
液体を吐出するための駆動素子を有する第2液体吐出ヘッドと、
前記第1液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第1駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、
前記処理回路は、
前記第2液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第2駆動パルスの波形に関する第2波形情報を取得する第1工程と、
前記第2波形情報に基づいて、前記第1駆動パルスの波形を決定する第2工程と、を実行する、
ことを特徴とする駆動波形決定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラム、液体吐出装置および駆動波形決定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリンター等の液体吐出装置では、一般に、圧電素子等の駆動素子に駆動パルスが印加されることにより、インク等の液体がヘッドから吐出される。ここで、ヘッドからのインクの吐出特性が所望の特性となるように、駆動パルスの波形が決定される。
【0003】
特許文献1に記載の技術は、駆動パルスの波形である駆動波形を決定するためのパラメーターを複数変化させて噴射特性を計測し、その計測結果に基づいて、実際に用いる駆動波形のパラメーターを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-131910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、複数のヘッドのそれぞれについて駆動パルスを決定する場合、ヘッドごとに前述の計測を行う必要があるので、当該決定に必要な処理工数が過大になってしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明の駆動波形決定方法の一態様は、液体を吐出する第1液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第1駆動パルスの波形を決定する駆動波形決定方法であって、液体を吐出する第2液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第2駆動パルスの波形に関する第2波形情報を取得する第1工程と、前記第2波形情報に基づいて、前記第1駆動パルスの波形を決定する第2工程と、含む。
【0007】
本発明の駆動波形決定プログラムの一態様は、前述の態様の駆動波形決定方法をコンピューターに実行させる。
【0008】
本発明の液体吐出装置の一態様は、液体を吐出するための駆動素子を有する第1液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第1駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、前記処理回路は、液体を吐出する第2液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第2駆動パルスの波形に関する第2波形情報を取得する第1工程と、前記第2波形情報に基づいて、前記第1駆動パルスの波形を決定する第2工程と、を実行する。
【0009】
本発明の駆動波形決定システムの一態様は、液体を吐出するための駆動素子を有する第1液体吐出ヘッドと、液体を吐出するための駆動素子を有する第2液体吐出ヘッドと、前記第1液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第1駆動パルスの波形を決定する処理を行う処理回路と、有し、前記処理回路は、前記第2液体吐出ヘッドに設けられる駆動素子に印加される第2駆動パルスの波形に関する第2波形情報を取得する第1工程と、前記第2波形情報に基づいて、前記第1駆動パルスの波形を決定する第2工程と、を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る駆動波形決定システムの構成例を示す概略図である。
図2】第1実施形態に係る駆動波形決定システムに用いる印刷システムの構成例を示す概略図である。
図3】駆動パルスの波形の一例を示す図である。
図4】インクの吐出特性の実測を説明するための図である。
図5】第1実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。
図6】駆動パルスの波形を自動的に決定する処理の一例を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態に係る駆動波形決定システムの構成例を示す概略図である。
図8】第2実施形態に係る駆動波形決定システムに用いるサーバーの構成例を示す概略図である。
図9】第2実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。
図10】第3実施形態に係る印刷波形決定システムに用いるサーバーの構成例を示す概略図である。
図11】第3実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。
図12】駆動パルスの波形を自動的に決定する処理の一例を示すフローチャートである。
図13】第4実施形態に係る駆動波形決定方法に用いる液体吐出装置の構成例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法または縮尺は実際と適宜に異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
【0012】
1.第1実施形態
1-1.駆動波形決定システム10の概略
図1は、第1実施形態に係る駆動波形決定システム10の構成例を示す概略図である。駆動波形決定システム10は、液体の一例であるインクを吐出する際に用いる電気信号である駆動パルスの波形を決定する。図1に示す例では、駆動波形決定システム10が複数の印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4を有しており、これらのシステムのそれぞれが駆動パルスの波形を決定する。なお、以下では、印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4のそれぞれを区別せずに印刷システム100という場合がある。
【0013】
ここで、印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4は、駆動パルスの波形の決定に必要な情報を互いに共有可能である。このため、各印刷システム100において、駆動パルスの波形の決定に必要な処理工数を低減することができる。本実施形態では、複数の印刷システム100がP2P(Peer-to- Peer)方式で互いに通信可能に接続されており、印刷システム100間での通信により当該情報が共有される。
【0014】
1-2.印刷システム100の構成例
図2は、第1実施形態に係る駆動波形決定システム10に用いる印刷システム100の構成例を示す概略図である。印刷システム100は、別の印刷システム100から波形情報D2が取得可能である場合、波形情報D2を用いて、駆動パルスPDの波形を決定する。この決定には、必要に応じて、波形候補情報D1が示す波形候補を駆動パルスPDに用いた場合におけるインクの吐出特性をシミュレーションおよび実測のうちの少なくとも一方により測定した結果が適宜に用いられる。また、印刷システム100は、別の印刷システム100から波形情報D2が取得不可能である場合、波形情報D2を用いずに、波形候補情報D1が示す波形候補を駆動パルスPDに用いた場合におけるインクの吐出特性をシミュレーションおよび実測のうちの少なくとも一方により測定し、その測定結果に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0015】
なお、前述のいずれの場合においても、駆動パルスPDの決定には、その決定を行う印刷システム100で過去に生成した波形情報D2がある場合、当該過去に生成した波形情報D2が併用されてもよい。波形候補情報D1および波形情報D2については、後に詳述する。
【0016】
図2に示すように、印刷システム100は、液体吐出装置200と、測定装置300と、コンピューターの一例である情報処理装置400と、を有する。以下、図2に基づいて、これらを順次説明する。
【0017】
1-2a.液体吐出装置200
液体吐出装置200は、インクジェット方式により印刷媒体に印刷するプリンターである。印刷媒体は、液体吐出装置200が印刷可能な媒体であればよく、特に限定されず、例えば、各種紙、各種布または各種フィルム等である。なお、液体吐出装置200は、シリアル型のプリンターでもよいし、ライン型のプリンターでもよい。
【0018】
図2に示すように、液体吐出装置200は、液体吐出ヘッド210と移動機構220と電源回路230と駆動信号生成回路240と駆動回路250と記憶回路260と処理回路270とを有する。
【0019】
液体吐出ヘッド210は、インクを印刷媒体に向けて吐出する。図2では、液体吐出ヘッド210の構成要素として、駆動素子の一例である複数の圧電素子211が図示される。図示しないが、液体吐出ヘッド210は、圧電素子211のほか、インクを収容するキャビティと、当該キャビティに連通するノズルと、有する。ここで、圧電素子211は、キャビティごとに設けられており、当該キャビティの圧力を変化させることにより、当該キャビティに対応するノズルからインクを吐出させる。なお、圧電素子211に代えて、キャビティ内のインクを加熱するヒーターを駆動素子として用いてもよい。
【0020】
図2に示す例では、液体吐出装置200が有する液体吐出ヘッド210の数が1個であるが、当該数は、2個以上でもよい。この場合、例えば、2個以上の液体吐出ヘッド210がユニット化される。液体吐出装置200がシリアル型である場合、印刷媒体の幅方向の一部にわたり複数のノズルが分布するように、液体吐出ヘッド210またはこれを2個以上含むユニットが用いられる。また、液体吐出装置200がライン型である場合、印刷媒体の幅方向での全域にわたり複数のノズルが分布するように、2個以上の液体吐出ヘッド210を含むユニットが用いられる。
【0021】
移動機構220は、液体吐出ヘッド210と印刷媒体との相対的な位置を変化させる。より具体的には、液体吐出装置200がシリアル型である場合、移動機構220は、印刷媒体を所定方向に搬送する搬送機構と、液体吐出ヘッド210を当該印刷媒体の搬送方向に直交する軸に沿って反復的に移動させる移動機構と、を有する。また、液体吐出装置200がライン型である場合、移動機構220は、2個以上の液体吐出ヘッド210を含むユニットの長手方向に交差する方向に印刷媒体を搬送する搬送機構を有する。
【0022】
電源回路230は、図示しない商用電源から電力の供給を受け、所定の各種電位を生成する。生成した各種電位は、液体吐出装置200の各部に適宜に供給される。例えば、電源回路230は、電源電位VHVとオフセット電位VBSとを生成する。オフセット電位VBSは、液体吐出ヘッド210等に供給される。また、電源電位VHVは、駆動信号生成回路240等に供給される。
【0023】
駆動信号生成回路240は、液体吐出ヘッド210が有する各圧電素子211を駆動するための駆動信号Comを生成する回路である。具体的には、駆動信号生成回路240は、例えば、DA変換回路と増幅回路とを有する。駆動信号生成回路240では、当該DA変換回路が処理回路270からの後述の波形指定信号dComをデジタル信号からアナログ信号に変換し、当該増幅回路が電源回路230からの電源電位VHVを用いて当該アナログ信号を増幅することにより駆動信号Comを生成する。ここで、駆動信号Comに含まれる波形のうち、圧電素子211に実際に供給される波形の信号が駆動パルスPDである。なお、駆動パルスPDについては、後に詳述する。
【0024】
駆動回路250は、後述の制御信号SIに基づいて、複数の圧電素子211のそれぞれについて、駆動信号Comに含まれる波形のうちの少なくとも一部を駆動パルスPDとして供給するか否かを切り替える。駆動回路250は、各圧電素子211を駆動するための駆動信号および基準電圧を出力するIC(Integrated Circuit)チップである。
【0025】
記憶回路260は、処理回路270が実行する各種プログラムと、処理回路270が処理する印刷データ等の各種データと、を記憶する。記憶回路260は、例えば、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーとROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)またはPROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーとの一方または両方の半導体メモリーを含む。印刷データは、例えば、情報処理装置400から供給される。なお、記憶回路260は、処理回路270の一部として構成されてもよい。
【0026】
処理回路270は、液体吐出装置200の各部の動作を制御する機能と、各種データを処理する機能と、を有する。処理回路270は、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを含む。なお、処理回路270は、CPUに代えて、または、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んでもよい。
【0027】
処理回路270は、記憶回路260に記憶されるプログラムを実行することにより、液体吐出装置200の各部の動作を制御する。ここで、処理回路270は、液体吐出装置200の各部の動作を制御するための信号として、制御信号Sk、SIおよび波形指定信号dCom等の信号を生成する。
【0028】
制御信号Skは、移動機構220の駆動を制御するための信号である。制御信号SIは、駆動回路250の駆動を制御するための信号である。具体的には、制御信号SIは、駆動回路250が駆動信号生成回路240からの駆動信号Comを駆動パルスPDとして液体吐出ヘッド210に対して供給するか否かを所定の単位期間ごとに指定する。この指定により、液体吐出ヘッド210から吐出されるインク量等が指定される。波形指定信号dComは、駆動信号生成回路240で生成される駆動信号Comの波形を規定するためのデジタル信号である。
【0029】
1-2b.測定装置300
測定装置300は、駆動パルスPDを実際に用いたときの液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定するための装置である。当該吐出特性としては、例えば、吐出速度、インク量、サテライトの数および安定性等が挙げられる。なお、以下では、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を単に「吐出特性」という場合がある。
【0030】
本実施形態の測定装置300は、液体吐出ヘッド210から吐出されたインクの飛翔中の状態を撮像する撮像装置である。具体的には、測定装置300は、例えば撮像光学系および撮像素子を有する。撮像光学系は、少なくとも1つの撮像レンズを含む光学系であり、プリズム等の各種の光学素子を含んでもよいし、ズームレンズまたはフォーカスレンズ等を含んでもよい。撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサーまたはCMOS(Complementary MOS)イメージセンサー等である。測定装置300による撮像画像を用いた吐出特性の測定については、後に詳述する。
【0031】
なお、本実施形態では、測定装置300が飛翔中のインクを撮像するが、印刷媒体等に着弾したインクを撮像した結果に基づいて液体吐出ヘッド210からのインクの吐出量等の吐出特性を測定することも可能である。また、測定装置300は、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性に応じた測定結果を得ることができればよく、撮像装置に限定されず、例えば、液体吐出ヘッド210から吐出されたインクの質量を測定する電子天秤等でもよい。さらに、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定するための情報源としては、測定装置300からの情報のほか、液体吐出ヘッド210で生じる残留振動の波形を検出した結果を用いてもよい。当該残留振動は、圧電素子211の駆動後に液体吐出ヘッド210におけるインクの流路に残留する振動であり、例えば、圧電素子211からの電圧信号として検出される。
【0032】
1-2c.情報処理装置400
情報処理装置400は、液体吐出装置200および測定装置300の動作を制御するコンピューターである。ここで、情報処理装置400が液体吐出装置200および測定装置300のそれぞれに無線または有線により互いに通信可能に接続される。なお、この接続には、インターネットを含む通信網が介在してもよい。
【0033】
本実施形態の情報処理装置400は、駆動波形決定プログラムの一例であるプログラムPを実行するコンピューターの一例である。プログラムPは、液体の一例であるインクを吐出する液体吐出ヘッド210に設けられる圧電素子211に印加される駆動パルスPDの波形を決定する駆動波形決定方法を情報処理装置400に実行させる。
【0034】
図2に示すように、情報処理装置400は、表示装置410と入力装置420と記憶回路430と処理回路440と通信回路450とを有する。これらは、互いに通信可能に接続される。
【0035】
表示装置410は、処理回路440による制御のもとで各種の画像を表示する。ここで、表示装置410は、例えば、液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)表示パネル等の各種の表示パネルを有する。なお、表示装置410は、情報処理装置400の外部に設けられてもよい。また、表示装置410は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0036】
入力装置420は、ユーザーからの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置420は、タッチパッド、タッチパネルまたはマウス等のポインティングデバイスを有する。ここで、入力装置420は、タッチパネルを有する場合、表示装置410を兼ねてもよい。なお、入力装置420は、情報処理装置400の外部に設けられてもよい。また、入力装置420は、液体吐出装置200の構成要素であってもよい。
【0037】
通信回路450は、他の印刷システム100と通信可能に接続されるインターフェイスである。例えば、通信回路450は、無線または有線のLAN(Local Area Network)、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(High Definition Multimedia Interface)等のインターフェイスである。USBおよびHDMIは、それぞれ、登録商標である。なお、通信回路450は、インターネット等の他のネットワークを介して他の印刷システム100に接続されてもよい。また、通信回路450は、後述する処理部441の一部として捉えてもよく、処理回路440と一体でもよい。
【0038】
記憶回路430は、処理回路440が実行する各種プログラム、および処理回路440が処理する各種データを記憶する装置である。記憶回路430は、例えば、ハードディスクドライブまたは半導体メモリーを有する。なお、記憶回路430の一部または全部は、情報処理装置400の外部の記憶装置またはサーバー等に設けてもよい。
【0039】
本実施形態の記憶回路430には、プログラムP、波形候補情報D1および波形情報D2が記憶される。なお、プログラムP、波形候補情報D1および波形情報D2の一部または全部は、情報処理装置400の外部の記憶装置またはサーバー等に記憶されてもよい。
【0040】
波形候補情報D1は、駆動パルスPDの複数の波形候補を示す情報である。後に詳述するが、波形候補情報D1は、ユーザーからの入力に応じて設定されるか、または、プログラムPの実行により自動的に生成される。本実施形態では、波形候補情報D1は、後述のシミュレーションまたは実測による測定結果を評価するためのアルゴリズム等を用いて所望の波形となるように調整される。この結果、最終的な波形候補情報D1に基づく波形が駆動パルスPDの波形として求められる。
【0041】
波形情報D2は、駆動パルスPDの波形に関する情報である。波形情報D2は、例えば、駆動パルスPDの波形を示す情報、駆動パルスPDの波形候補を示す情報、または、駆動パルスPDの波形候補でない波形非候補を示す情報等を含む。ここで、前述のように、波形情報D2は、駆動パルスPDの波形の決定を行う印刷システム100とは別の印刷システム100から取得される。また、駆動パルスPDの波形が決定された場合、その決定に伴って波形情報D2が新たに生成される。生成した波形情報D2は、当該別の印刷システム100から取得した波形情報D2と別途に記憶回路430に記憶されてもよいし、記憶回路430に記憶される波形情報を置き換えてもよい。なお、波形情報D2には、前述の情報のほか、駆動パルスPDの波形を決定する際に用いた測定の条件に関する情報等が含まれてもよい。例えば、波形情報D2は、別の印刷システム100において利用された情報として、液体またはドットの撮影結果を示す画像データ、液体を吐出したときの残留振動の結果を示す残留振動データ、あるいは、後述のようにして測定されたインク量または吐出速度等の吐出特性を示す情報を含んでもよい。
【0042】
処理回路440は、情報処理装置400の各部、液体吐出装置200および測定装置300を制御する機能、および各種データを処理する機能を有する装置である。処理回路440は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーを有する。なお、処理回路440は、単一のプロセッサーで構成されてもよいし、複数のプロセッサーで構成されてもよい。また、処理回路440の機能の一部または全部を、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで実現してもよい。
【0043】
処理回路440は、記憶回路430からプログラムPを読み込んで実行することにより、処理部441として機能する。
【0044】
処理部441は、波形情報D2を取得した場合、波形候補情報D1および波形情報D2を用いて駆動パルスPDの波形を決定する。ここで、処理部441は、必要に応じて、波形候補情報D1が示す波形候補を駆動パルスPDに用いた場合における液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性をシミュレーションまたは実測により測定した結果を用いて、駆動パルスPDの波形を決定する。また、処理部441は、波形情報D2を取得できない場合、当該シミュレーションおよび当該実測のうちの少なくとも一方を用いて、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0045】
当該シミュレーションは、例えば、駆動パルスPDの波形から吐出特性を生成する演算を行うプログラムモジュールにより実現される。当該演算の式には、理論値または実験等を用いて設定された複数の係数が適用される。当該演算では、例えば、駆動パルスPDの波形を示す後述のパラメーターが入力値として入力されると、インク速度、インク量等の吐出特性を示す数値が出力値として生成される。当該実測については、後述の「1-3.インクの吐出特性の実測」において詳述する。
【0046】
1-3.駆動パルスPDの波形例
図3は、駆動パルスPDの波形の一例を示す図である。図3には、駆動パルスPDの電位の経時的変化、すなわち駆動パルスPDの電圧波形が示される。なお、駆動パルスPDの波形は、図3に示す例に限定されず、任意である。
【0047】
図3に示すように、駆動パルスPDは、単位期間Tuごとに駆動信号Comに含まれる。図3に示す例では、駆動パルスPDの電位Eは、基準となる電位E1から電位E2に上昇した後に、電位E1よりも低い電位E3に低下し、その後、電位E1に戻る。
【0048】
より具体的に説明すると、駆動パルスPDの電位Eは、まず、タイミングt0からタイミングt1までの期間にわたり電位E1に維持された後、タイミングt1からタイミングt2までの期間にわたり電位E2に上昇する。そして、駆動パルスPDの電位Eは、タイミングt2からタイミングt3までの期間にわたり電位E2に維持された後、タイミングt3からタイミングt4までの期間にわたり電位E3に降下する。その後、タイミングt4からタイミングt5までの期間にわたり電位E3に維持された後、タイミングt5からタイミングt6までの期間にわたり電位E1に上昇する。
【0049】
このような波形の駆動パルスPDは、タイミングt1からタイミングt2までの期間において液体吐出ヘッド210の圧力室を増大させ、タイミングt3からタイミングt4までの期間において当該圧力室の容積を急激に減少させる。このような圧力室の容積の変化により、当該圧力室内のインクの一部がノズルから液滴として吐出される。
【0050】
以上のような駆動パルスPDの波形は、前述の各期間に対応するパラメーターp1、p2、p3、p4、p5、p6およびp7を用いた関数で表すことが可能である。駆動パルスPDの波形が当該関数で定義される場合、各パラメーターを変化させることにより、駆動パルスPDの波形を調整することができる。駆動パルスPDの波形を調整することにより、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を調整することができる。
【0051】
1-4.インクの吐出特性の実測
前述の情報処理装置400は、駆動パルスPDを実際に用いて液体吐出ヘッド210を駆動させ、測定装置300からの撮像情報に基づいて、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出特性を測定する。
【0052】
図4は、インクの吐出特性の実測を説明するための図である。図4に示すように、本実施形態の測定装置300は、液体吐出ヘッド210のノズルNから吐出されたインクの液滴DR1、DR2、DR3およびDR4の飛翔中の状態を吐出方向に対して直交または交差する方向から撮像する。
【0053】
液滴DR1は、メインの液滴である。これに対し、液滴DR2、DR3およびDR4のそれぞれは、液滴DR1よりも小径のサテライトと呼ばれる液滴であり、液滴DR1の発生に伴って液滴DR1に後続して発生する。なお、液滴DR2、DR3およびDR4の発生の有無、数または大きさ等は、前述の駆動パルスPDの波形に応じて異なる。
【0054】
液体吐出ヘッド210からのインクの吐出量は、例えば、測定装置300の撮像画像を用いて、液滴DR1の直径LBに基づいて算出される。また、液体吐出ヘッド210からのインクの吐出速度は、例えば、液滴DR1を連続的に撮像し、所定時間後の液滴DR1の移動距離LCと当該所定時間とに基づいて算出される。図4では、当該所定時間後の液滴DR1が二点鎖線で示される。また、液体吐出ヘッド210からのインクのアスペクト比(LA/LB)をインクの吐出特性として算出することもできる。
【0055】
1-5.駆動パルスPDの波形決定の流れ
図5は、第1実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。図5では、印刷システム100_1、100_2および100_3において印刷システム100_1を中心として駆動パルスPDの波形を決定する場合における各システムの処理の流れが例示される。なお、図5では、印刷システム100_4の図示が省略されるが、印刷システム100_4における処理は、例えば、印刷システム100_1、100_2または100_3における処理と同様である。
【0056】
ここで、印刷システム100_1は、液体吐出ヘッド210である第1液体吐出ヘッド210_1と、処理部441である第1処理部441_1と、を有する。同様に、印刷システム100_2は、液体吐出ヘッド210である第2液体吐出ヘッド210_2と、処理部441である第2処理部441_2と、を有する。また、印刷システム100_3は、液体吐出ヘッド210である第3液体吐出ヘッド210_3と、処理部441である第3処理部441_3と、を有する。
【0057】
以下では、印刷システム100_2が事前に駆動パルスPDの波形の決定に伴って波形情報D2として生成された第2波形情報D2_2を有する場合が例示される。なお、詳細な説明を省略するが、印刷システム100_2が第2波形情報D2_2を有しない場合、印刷システム100_1は、他の印刷システムが有する波形情報D2を用いるか、または、波形情報D2を用いずに、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0058】
印刷システム100_1が駆動パルスPDの波形を決定する指示をユーザー等から受け付けると、まず、図5に示すように、ステップS101において、第1処理部441_1は、印刷システム100_2に対して、波形情報D2を要求する。
【0059】
次に、ステップS102において、第2処理部441_2は、印刷システム100_1に対して、波形情報D2として第2波形情報D2_2を送信する。この送信は、印刷システム100_2の通信回路450を介して行われる。なお、ステップS102は、「第5工程」の一例である。
【0060】
その後、ステップS103において、第1処理部441_1は、第2波形情報D2_2を取得する。この取得は、印刷システム100_1の通信回路450を介して行われる。この取得後、第1処理部441_1は、印刷システム100_1の記憶回路430に第2波形情報D2_2を記憶させる。なお、ステップS103は、「第1工程」の一例である。
【0061】
次に、ステップS104において、第1処理部441_1は、第2波形情報D2_2に基づいて、印刷システム100_1で用いる駆動パルスPDである第1駆動パルスPD_1を決定する。このステップS104における具体的な処理の例については、後述する図6に基づいて行う。なお、ステップS104は、「第2工程」の一例である。
【0062】
ここで、第1処理部441_1は、第1駆動パルスPD_1の波形に関する波形情報D2として第1波形情報D2_1を生成する。この生成後、第1処理部441_1は、印刷システム100_1の記憶回路430に第1波形情報D2_1を記憶させる。
【0063】
その後、ステップS105において、第1処理部441_1は、印刷システム100_2に対して、第1波形情報D2_1を送信する。また、ステップS106において、第1処理部441_1は、印刷システム100_3に対して、第1波形情報D2_1を送信する。これらの送信は、印刷システム100_1の通信回路450を介して行われる。なお、これらの送信は、送信先の印刷システム100_2または100_3から要求があった場合に行ってもよい。
【0064】
印刷システム100_2では、ステップS107において、第2処理部441_2が第1波形情報D2_1を取得する。その後、ステップS109において、第2処理部441_2は、第1波形情報D2_1に基づいて、印刷システム100_2で用いる駆動パルスPDである第2駆動パルスPD_2を再決定する。この再決定は、前述のステップS104と同様に行われる。なお、この再決定は、ユーザーからの指示等があった場合に行ってもよい。
【0065】
ここで、第2処理部441_2は、印刷システム100_2の記憶回路430に記憶される第2波形情報D2_2を更新する。その後、ステップS110において、第2処理部441_2は、印刷システム100_3に対して、第2波形情報D2_2を送信する。この送信は、印刷システム100_2の通信回路450を介して行われる。なお、この送信は、送信先の印刷システム100_3から要求があった場合に行ってもよい。
【0066】
印刷システム100_3では、ステップS108において、第3処理部441_3が第1波形情報D2_1を取得する。また、ステップS111において、第3処理部441_3が第2波形情報D2_2を取得する。その後、ステップS112において、第3処理部441_3は、第1波形情報D2_1および第2波形情報D2_2に基づいて、印刷システム100_3で用いる駆動パルスPDである第3駆動パルスPD_3を決定する。この決定は、前述のステップS104と同様に行われる。なお、この決定は、ユーザーからの指示等があった場合に行ってもよい。また、この決定に用いる第2波形情報D2_2は、前述の再決定前の第2波形情報D2_2でもよい。なお、ステップS112は、「第8工程」の一例である。
【0067】
1-5a.ステップS104における具体的な処理の例
図6は、駆動パルスPDの波形を自動的に決定する処理の一例を示すフローチャートである。図6は、前述の図5に示すステップS104における処理の一例である。前述のステップS104では、図6に示すように、まず、ステップS1において、処理部441は、ユーザーからの入力等に応じて、目的とする吐出特性の値等の目標値を設定する。
【0068】
そして、ステップS2において、処理部441は、目標値または後述の評価値に基づいて波形候補情報D1を設定する。
【0069】
なお、ステップS2では、評価値またはそれに基づく波形候補情報D1がない場合、目標値に基づく波形候補情報D1が設定され、一方、評価値またはそれに基づく波形候補情報D1がある場合、評価値に基づく波形候補情報D1が設定される。なお、波形候補情報D1は、他の方法により設定されてもよく、例えばランダムに生成されてもよい。
【0070】
次に、ステップS3において、処理部441は、波形候補情報D1が示す1または複数の波形候補のうち、波形情報D2が示す波形非候補に対応する波形候補を除外する。なお、図6において図示しないが、波形候補情報D1が示す1または複数の波形候補が、すべて波形情報D2が示す波形非候補に対応する場合、ステップS4以降の処理に進まず、再度ステップS2の処理が実行される。
【0071】
その後、ステップS4において、処理部441は、波形候補情報D1が示す波形候補について、インクの吐出特性をシミュレーションにより測定する。そして、ステップS5において、処理部441は、その測定結果を記憶回路430に記憶させる。その後、ステップS6において、処理部441は、その測定結果を評価する。
【0072】
当該評価には、例えば、所定の吐出特性が所望の値または範囲のときに最小または最大となる評価関数が用いられ、当該評価の結果は、当該評価関数の算出値である評価値として表される。当該評価関数の一例には、当該所定の吐出特性に関する項の線形和が用いられる。本実施形態の当該評価関数の一例には、吐出速度に関する項とインク量に関する項との線形和が用いられる。また、当該評価関数のパラメーターは、前述の駆動パルスPDの波形に関するパラメーターp1,p2,p3,…である。
【0073】
より具体的に説明すると、当該評価関数f(x)の一例は、
f(x)=W1×(Vm(x)-Vmtarget)+W2×(Iw(x)-Iwtarget)
で表される。なお、評価関数は必ずしも線形和でなくともよく、吐出特性が所望の値または範囲であることが評価できるものであれば評価関数として用いることができる。
【0074】
ここで、評価関数f(x)中、xは、パラメーターp1,p2,p3,…である。Vm(x)は、シミュレーションによる吐出速度の測定値である。Iw(x)は、シミュレーションによるインク量の測定値である。Vmtargetは、吐出速度の目標値である。Iwtargetは、インク量の目標値である。W1およびW2は、それぞれ、重み係数である。なお、この評価関数f(x)の一例では、インク量と吐出速度によって評価するが、その他に吐出安定性または吐出方向の傾き等を用いて評価してもよい。
【0075】
なお、当該評価関数の評価値に基づいて、測定結果が目標とする吐出特性に近づくように波形候補情報D1が調整される。この調整は、後述するステップS7にてステップS2に戻ることが決定されたときに波形候補情報D1に対して実際に反映される。
【0076】
波形候補情報D1の調整には、例えば、測定した吐出特性に基づく当該評価関数の評価値が最小化するベイズ最適化またはNelder-Mead法等の最適化アルゴリズムが用いられる。
【0077】
波形候補情報D1の調整にベイズ最適化を用いる場合、EI(Expected Improvement)、PI(Probability of Improvement)、UCB(Upper Confidence Bound)、LCB(Lower Confidence Bound)、PES(Predictive Entropy Search)等の獲得関数を用い、パラメーターp1,p2,p3,…を探索することにより、調整後の波形候補情報D1が求められる。
【0078】
ここで、用いる獲得関数の種類に応じて、得られる波形候補情報D1が示す波形候補の特徴が異なる。一般的な傾向として、獲得関数EIを用いて得られる波形候補は、改善量の期待値が高い波形である。獲得関数PIを用いて得られる波形候補は、改善の確率が高いが、改善量が少ない波形である。獲得関数UCBを用いて得られる波形候補は、改善の余地が大きいが、悪化の余地も大きい波形である。
【0079】
Nelder-Mead法は、局所最適化アルゴリズムであることから、駆動パルスPDに既存の波形を用いてインクの物性または目的とする吐出特性をわずかに変更する場合に好適である。
次に、ステップS7において、処理部441は、波形候補情報D1が示す波形候補について、後述の基準に基づいて、インクの吐出特性の実測による測定を行う価値があるか否かを判断する。当該価値がない場合、前述のステップS2に戻る。すなわち、処理部441は、当該価値があるまで、前述のステップS2からステップS7までを繰り返す。
【0080】
ステップS7における判定は、気泡の混入等が起こらずに正常に吐出可能であるか、また、後に吐出不良を生じさせないか、実測する価値があるかという基準に基づいて行われる。実測する価値があるか否かの判定方法としては、任意であるが、より具体的には、例えば、以下の判定方法が挙げられる。
【0081】
例えば、シミュレーションによる測定結果におけるインク量が所定の閾値未満である場合、正常吐出できていないことが推定されるため、まだ実測する価値がないと判断する。一方、当該インク量が所定の閾値以上である場合、実測する価値があると判断する。
【0082】
また、例えば、吐出不良が発生しやすい波形、またはハードウェアの寿命、安全性等に基づく制約により実用的でない波形の範囲を前述のパラメーターの不等式等であらかじめ定義しておき、波形候補が当該範囲内である場合、実測するまでもなく不適合であることが推定されるため、まだ実測する価値がないと判断する。一方、当該波形候補が当該範囲外である場合、実測する価値があると判断する。
【0083】
また、例えば、シミュレーションによる測定結果として得られる吐出特性と目標値との差が所定以上である場合、まだシミュレーションにより改善可能であることが推定されるため、まだ実測する価値がないと判断する。一方、当該吐出特性と目標値との差が所定未満である場合、実測する価値があると判断する。
【0084】
また、例えば、シミュレーションにより得られる情報量と実測により得られる情報量とを評価し、実測により得られる情報量がシミュレーションにより得られる情報量に比べて所定以上少ない場合、まだシミュレーションにより改善可能であることが推定されるため、まだ実測する価値がないと判断する。一方、実測により得られる情報量がシミュレーションにより得られる情報量に比べて所定以上少なくない場合、実測する価値があると判断する。なお、これらの情報量は、例えば、情報エントロピーに相当する。
【0085】
以上のような価値の判断において価値がある場合、ステップS8において、処理部441は、インクの吐出特性の実測による測定を実行する。すなわち、処理部441は、正常に吐出可能であり、後の吐出不良も生じさせず、かつ、実測する価値がある場合、インクの吐出特性の実測による測定を実行する。
【0086】
そして、ステップS9において、処理部441は、その測定結果を記憶回路430に記憶させる。その後、ステップS10において、処理部441は、その測定結果を用いて評価関数の評価値を算出する。
【0087】
ステップS10での評価は、前述のステップS6での評価に用いたものと同じ評価関数f(x)を用いる。ただし、ステップS10では、Vm(x)は、実測による吐出速度の測定値であり、Iw(x)は、実測によるインク量の測定値である。また、当該評価関数の評価値に基づいて、測定結果が目標とする吐出特性に近づくように波形候補情報D1が調整される。この調整の方法もステップS6と同様である。この調整は、後述するステップS11にてステップS2も戻ることが決定されたときに波形候補情報D1に対して実際に反映される。
【0088】
次に、ステップS11において、処理部441は、終了するか否かを判断する。この判断は、ステップS8での測定結果が目標値に対して所定範囲内にあるか否かにより行う。測定結果が目標値に対して所定範囲内にない場合、前述のステップS2に戻る。一方、測定結果が目標値に対して所定範囲内にある場合、処理部441は、最後に設定された波形候補情報に基づく波形を駆動パルスPDの波形として決定し、処理を終了する。
【0089】
なお、本実施形態ではシミュレーションと実測を併用して駆動パルスPDの波形を決定する方法について記載したが、これに限られない。実測のみ、あるいはシミュレーションのみで駆動パルスPDの波形を決定する方法であっても、波形情報D2を用いる形態であれば、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
以上の駆動波形決定システム10は、第1液体吐出ヘッド210_1と第2液体吐出ヘッド210_2と処理回路440とを有する。第1液体吐出ヘッド210_1および第2液体吐出ヘッド210_2のそれぞれは、液体の一例であるインクを吐出するための駆動素子の一例である圧電素子211を有する。処理回路440は、第1液体吐出ヘッド210_1に設けられる圧電素子211に印加される第1駆動パルスPD_1の波形を決定する処理を行う。
【0091】
処理回路440は、前述のように、「第1工程」の一例であるステップS103と、「第2工程」の一例であるステップS104と、を実行する。ここで、ステップS103は、第2液体吐出ヘッド210_2に設けられる圧電素子211に印加される第2駆動パルスPD_2の波形に関する第2波形情報D2_2を取得する。ステップS104は、第2波形情報D2_2に基づいて、第1駆動パルスPD_1の波形を決定する。このように、処理回路440は、ステップS103とステップS104とを含む駆動波形決定方法を実行する。
【0092】
以上の駆動波形決定方法では、第1駆動パルスPD_1の波形の決定に第2駆動パルスPD_2の波形に関する第2波形情報D2_2が用いられるので、第1液体吐出ヘッド210_1を用いて生成される波形情報D2を用いなくても、第1駆動パルスPD_1の波形を決定することができる。このため、第2波形情報D2_2を用いない方法に比べて、第1駆動パルスPD_1の波形の決定に要する処理工数を低減することができる。
【0093】
本実施形態では、前述のように、ステップS104において、第1駆動パルスPD_1の波形候補を示す波形候補情報D1と、第2波形情報D2_2と、に基づいて、第1駆動パルスPD_1の波形を決定する。このため、第1液体吐出ヘッド210_1からのインクの吐出特性の目標値に応じた第1駆動パルスPD_1の波形を決定することができる。
【0094】
ここで、第2波形情報D2_2は、第2駆動パルスPD_2の波形候補でない第2駆動パルスPD_2の波形非候補を示す情報を含むことが好ましい。当該情報は、第1駆動パルスPD_1の波形として評価する価値のないことを示す。このため、当該情報に基づいて、波形候補情報D1が示す複数の波形候補のうち、当該波形非候補に対応する波形候補を評価せずに、第1駆動パルスPD_1の波形を決定することができる。この結果、第1駆動パルスPD_1の波形の決定に要する処理工数を低減することができる。
【0095】
このように、ステップS104において、当該複数の波形候補のうち当該波形非候補に対応する波形候補を除外して得られる情報を用いて、第1駆動パルスPD_1の波形を決定することにより、第1駆動パルスPD_1の波形の決定に要する処理工数が低減される。
【0096】
本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、「第5工程」の一例であるステップS102をさらに含み、ステップS104は、第1処理部441_1にて行われる。ここで、ステップS102は、第2液体吐出ヘッド210_2に対応して設けられた第2処理部441_2から、第1液体吐出ヘッド210_1に対応して設けられた第1処理部441_1に、第2波形情報D2_2を送信する。このため、本実施形態のように通信方式としてP2P方式を用いる駆動波形決定システム10において、第1処理部441_1で第1駆動パルスPD_1の波形を決定することができる。
【0097】
また、本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、「第8工程」の一例であるステップS112をさらに含む。ここで、ステップS112は、第1駆動パルスPD_1の波形に関する第1波形情報D2_1と、第2波形情報D2_2と、に基づいて、インクを吐出する第3液体吐出ヘッド210_3に設けられる圧電素子211に印加される第3駆動パルスPD_3の波形を決定する。このため、3つの印刷システム100間で波形情報D2を共有しつつ駆動パルスPDの波形を決定することができる。なお、印刷システム100_4についても、印刷システム100_1、100_2または100_3と同様に、駆動パルスPDの波形を決定することができる。また、本実施形態では、印刷システム100の数が4つである場合が例示されるが、印刷システム100の数が5個以上であってもよく、この場合も、印刷システム100_1、100_2または100_3と同様に、駆動パルスPDの波形を決定することができる。
【0098】
さらに、本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、「第9工程」の一例であるステップS109をさらに含む。ここで、ステップS109は、第1駆動パルスPD_1の波形に関する第1波形情報D2_1に基づいて、第2駆動パルスPD_2の波形を再決定する。このため、第2駆動パルスPD_2の波形をより最適化することができる。
【0099】
前述のように、第1液体吐出ヘッド210_1および第2液体吐出ヘッド210_2は、互いに異なる液体吐出装置200に設けられる。この場合、駆動パルスPD自体を第1液体吐出ヘッド210_1および第2液体吐出ヘッド210_2で共用することが難しい。このため、第2波形情報D2_2に基づいて第1駆動パルスPD_1の波形を決定することは、第1液体吐出ヘッド210_1および第2液体吐出ヘッド210_2が互いに異なる液体吐出装置200に設けられる場合に有用である。
【0100】
第1液体吐出ヘッド210_1に対応して設けられた第1処理部441_1と第2液体吐出ヘッド210_2に対応して設けられた第2処理部441_2とは、無線通信を介して互いに接続されることが好ましい。この場合、有線接続を用いる場合に比べて、印刷システム100_1および100_2の設置が容易であるという利点がある。
【0101】
2.第2実施形態
図7は、第2実施形態に係る駆動波形決定システム10Aの構成例を示す概略図である。駆動波形決定システム10Aは、複数の印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4とサーバー500とを有する。ここで、駆動波形決定システム10Aは、サーバークライアント方式のシステムであり、印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4のそれぞれがサーバー500に通信可能に接続される。なお、この接続には、インターネット等を含む通信網が介在してもよい。
【0102】
本実施形態では、サーバー500が各印刷システム100からの波形情報D2を記憶しており、各印刷システム100がサーバー500から他の印刷システム100からの波形情報D2を取得する。すなわち、印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4は、サーバー500を介して、駆動パルスの波形の決定に必要な情報を互いに共有する。
【0103】
図8は、第2実施形態に係る駆動波形決定システム10Aに用いるサーバー500の構成例を示す概略図である。サーバー500は、各印刷システム100に対して波形情報D2を取得したり提供したりするコンピューターである。
【0104】
図8に示すように、サーバー500は、表示装置510と入力装置520と記憶回路530と処理回路540と通信回路550とを有する。これらは、互いに通信可能に接続される。
【0105】
表示装置510は、処理回路540による制御のもとで各種の画像を表示する装置であり、前述の表示装置410と同様に構成される。入力装置520は、ユーザーからの操作を受け付ける機器であり、前述の入力装置420と同様に構成される。通信回路550は、各印刷システム100と通信可能に接続されるインターフェイスであり、前述の通信回路450と同様に構成される。なお、通信回路550は、後述する処理部541の一部として捉えてもよく、処理回路540と一体でもよい。
【0106】
記憶回路530は、処理回路540が実行する各種プログラム、および処理回路540が処理する各種データを記憶する装置であり、前述の記憶回路430と同様に構成される。記憶回路530には、プログラムP1および波形情報D2(D2_1~D2_4)が記憶される。
【0107】
処理回路540は、サーバー500の各部を制御する機能、および各種データを処理する機能を有する装置であり、前述の処理回路440と同様に構成される。処理回路540は、記憶回路530からプログラムP1を読み込んで実行することにより、処理部541として機能する。
【0108】
処理部541は、各印刷システム100から波形情報D2を取得し、取得した波形情報D2を記憶回路530に記憶させる機能と、記憶回路530に記憶された波形情報D2を各印刷システム100からの要求に応じて通信回路550に送信させる機能と、を有する。これらの機能を用いて、サーバー500は、印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4からの波形情報D2を蓄積し、これらの情報を一括管理する。
【0109】
図9は、第2実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。図9では、印刷システム100_1において駆動パルスPDの波形を決定する場合における印刷システム100_1および100_2とサーバー500との間における処理の流れが例示される。なお、図9では、印刷システム100_3および100_4の図示が省略されるが、印刷システム100_3または100_4における処理は、印刷システム100_1または100_2における処理と同様である。
【0110】
以下では、印刷システム100_2が事前に駆動パルスPDの波形の決定に伴って波形情報D2として生成された第2波形情報D2_2を有する場合が例示される。なお、詳細な説明を省略するが、印刷システム100_2が第2波形情報D2_2を有しない場合、印刷システム100_1は、サーバー500を介して、他の印刷システムからの波形情報D2を取得して用いるか、または、波形情報D2を用いずに、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0111】
まず、図9に示すように、ステップS201において、第2処理部441_2は、サーバー500に対して、波形情報D2として第2波形情報D2_2を送信する。この送信は、印刷システム100_2の通信回路450を介して行われる。なお、ステップS201は、「第3工程」の一例である。また、この送信は、サーバー500から要求があった場合に行ってもよい。
【0112】
その後、ステップS202において、サーバー500は、第2波形情報D2_2を取得する。この取得は、サーバー500の通信回路550を介して行われる。この取得後、サーバー500は、記憶回路530に第2波形情報D2_2を記憶させる。
【0113】
その後、印刷システム100_1が駆動パルスPDの波形を決定する指示をユーザー等から受け付けると、ステップS203において、第1処理部441_1は、サーバー500に対して、波形情報D2を要求する。
【0114】
次に、ステップS204において、サーバー500は、印刷システム100_1に対して、波形情報D2として第2波形情報D2_2を送信する。この送信は、通信回路550を介して行われる。なお、ステップS204は、「第4工程」の一例である。
【0115】
その後、ステップS205において、前述の第1実施形態のステップS103と同様、第1処理部441_1は、第2波形情報D2_2を取得する。なお、ステップS205は、「第1工程」の一例である。
【0116】
次に、ステップS206において、前述の第1実施形態のステップS104と同様、第1処理部441_1は、第2波形情報D2_2に基づいて、印刷システム100_1で用いる駆動パルスPDである第1駆動パルスPD_1を決定する。なお、ステップS206は、「第2工程」の一例である。
【0117】
その後、ステップS207において、第1処理部441_1は、サーバー500に対して、第1波形情報D2_1を送信する。この送信は、印刷システム100_1の通信回路450を介して行われる。なお、この送信は、サーバー500から要求があった場合に行ってもよい。
【0118】
以上の第2実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、第1駆動パルスPD_1の決定に必要な処理工数を低減することができる。本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、「第3工程」の一例であるステップS201と、「第4工程」の一例であるステップS204と、をさらに含み、第1駆動パルスPD_1の波形を決定するステップS206は、第1処理部441_1にて行われる。ここで、ステップS201は、第2液体吐出ヘッド210_2に対応して設けられた第2処理部441_2から、サーバー500に、第2波形情報D2_2を送信する。ステップS204は、サーバー500から、第1液体吐出ヘッド210_1に対応して設けられた第1処理部441_1に、第2波形情報D2_2の少なくとも一部を送信する。このため、本実施形態のように通信方式としてサーバークライアント方式を用いる駆動波形決定システム10Aにおいて、第1処理部441_1で第1駆動パルスPD_1の波形を決定することができる。
【0119】
なお、本実施形態の駆動波形決定システム10Aは、印刷システム100_1~100_4と別にサーバー500が有していたが、印刷システム100_1~100_4のいずれかがサーバー500同様の機能を有していても良い。
【0120】
3.第3実施形態
図10は、第3実施形態に係る印刷波形決定システムに用いるサーバー500Bの構成例を示す概略図である。サーバー500Bは、プログラムP1に代えてプログラムP2を用いること以外は、前述の第2実施形態のサーバー500と同様である。処理回路540は、記憶回路530からプログラムP2を読み込んで実行することにより、処理部541Bとして機能する。
【0121】
処理部541Bは、各印刷システム100から波形情報D2を取得し、取得した波形情報D2を記憶回路530に記憶させる機能と、各印刷システム100からの要求に応じて、記憶回路530に記憶された波形情報D2に基づいて、駆動パルスPDの波形を決定し、その決定に関する波形情報D2を通信回路550に送信させる機能と、を有する。これらの機能を用いて、サーバー500は、印刷システム100_1、100_2、100_3および100_4に対して、駆動パルスPDの波形を決定するサービスを提供する。
【0122】
また、処理部541Bは、駆動パルスPDを用いたインクの吐出特性、インクまたはヘッドについて、ユーザーからのレビュー等の評価に関する情報を受け付ける機能を有する。当該機能は、例えば、ユーザーが当該評価を入力するための表示を表示装置510に実行させるとともに、入力装置520を用いたユーザーからの入力を受け付けることにより実現される。
【0123】
図11は、第3実施形態に係る駆動波形決定方法を示すフローチャートである。図11では、印刷システム100_1において用いる第1駆動パルスPD_1の波形を決定する場合における印刷システム100_1および100_2とサーバー500との間における処理の流れが例示される。なお、図11では、印刷システム100_3および100_4の図示が省略されるが、印刷システム100_3または100_4における処理は、印刷システム100_1または100_2における処理と同様である。
【0124】
以下では、印刷システム100_2が事前に駆動パルスPDの波形の決定に伴って波形情報D2として生成された第2波形情報D2_2を有する場合が例示される。なお、詳細な説明を省略するが、印刷システム100_2が第2波形情報D2_2を有しない場合、サーバー500Aは、他の印刷システムからの波形情報D2を取得するか、または、波形情報D2を用いずに、駆動パルスPDの波形を決定する。
【0125】
まず、図11に示すように、ステップS301において、前述の第2実施形態のステップS201と同様、第2処理部441_2は、サーバー500Bに対して、波形情報D2として第2波形情報D2_2を送信する。なお、ステップS301は、「第3工程」の一例である。また、この送信は、サーバー500Bから要求があった場合に行ってもよい。
【0126】
その後、ステップS302において、前述の第2実施形態のステップS202と同様、サーバー500Bは、第2波形情報D2_2を取得する。
【0127】
次に、ステップS303において、サーバー500Bは、プログラムP2をアップデートする。このアップデートは、例えば、インクの種類またはヘッドの構成等が変更になった場合、その変更に対応して修正された情報を有する。なお、ステップS303の実行タイミングは、図11に示す例に限定されず、任意である。また、ステップS303は、必要に応じて行えばよく、省略してもよい。
【0128】
その後、印刷システム100_1が駆動パルスPDの波形を決定する指示をユーザー等から受け付けると、ステップS304において、第1処理部441_1は、サーバー500に対して、駆動パルスPDの決定を要求する。
【0129】
次に、ステップS305において、前述の第1実施形態のステップS104と同様、サーバー500Bは、第2波形情報D2_2に基づいて、印刷システム100_1で用いる駆動パルスPDである第1駆動パルスPD_1を決定する。なお、ステップS305は、「第2工程」の一例である。
【0130】
そして、ステップS306において、サーバー500Bは、印刷システム100_1に対して、波形情報D2として第1波形情報D2_1を送信する。この送信は、通信回路550を介して行われる。なお、ステップS306は、「第6工程」の一例である。
【0131】
その後、ステップS307において、第1処理部441_1は、第1波形情報D2_1を取得する。この取得により、第1処理部441_1において、第1波形情報D2_1に基づいて第1駆動パルスPD_1の波形を生成することができる。
【0132】
次に、ステップS308において、第1処理部441_1は、評価情報D3の入力を受け付ける。その入力があった場合、ステップS309において、第1処理部441_1は、サーバー500Bに対して、評価情報D3を送信する。サーバー500Bに送信された評価情報D3は、サーバー500Bの記憶回路530に記憶される。その後、ステップS310において、サーバー500Bは、例えば、印刷システム100_2から要求があった場合、必要に応じて、評価情報D3を印刷システム100_2に対して送信する。
【0133】
以上の第3実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、第1駆動パルスPD_1の決定に必要な処理工数を低減することができる。本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、「第3工程」の一例であるステップS301と、「第6工程」の一例であるステップS306と、をさらに含み、第1駆動パルスPD_1の波形を決定するステップS305は、サーバー500Bにて行われる。ここで、ステップS301は、第2液体吐出ヘッド210_2に対応して設けられた第2処理部441_2から、サーバー500Bに、第2波形情報D2_2を送信する。ステップS306は、サーバー500Bから、第1液体吐出ヘッド210_1に対応して設けられた第1処理部441_1に、第1駆動パルスPD_1の波形に関する第1波形情報D2_1を送信する。このため、本実施形態のように通信方式としてサーバークライアント方式を用いる駆動波形決定システム10Bにおいて、サーバー500Bで第1駆動パルスPD_1の波形を決定することができる。
【0134】
また、本実施形態の駆動波形決定方法は、前述のように、「第7工程」の一例であるステップS303をさらに含む。ここで、ステップS303は、第2液体吐出ヘッド210_2に対応して設けられた「記憶部」の一例である記憶回路530に記憶されたプログラムP2をアップデートする。プログラムP2は、第1駆動パルスPD_1の波形を決定する機能をサーバー500Bに実現させる。このようなアップデートにより、複数のクライアントである印刷システム100に対して、新規のインクまたは新規のヘッドの構造に対応したサービスを一括して提供することができる。
【0135】
4.第4実施形態
第4実施形態では、第1~第3実施形態における図6のフローチャートと異なる方法で駆動パルスPDを決定する。図12は、第4実施形態でのステップS104における駆動パルスPDの波形を自動的に決定する処理の一例を示すフローチャートである。当該フローチャート以外は、第1~第3実施形態と同様である。なお、第4実施形態におけるステップS21、S24~S31は、第1~第3実施形態におけるステップS1、S4~S11と実質的に同じであるため、説明を省略する。
【0136】
第4実施形態では、ステップS21で目標値または評価値を設定した後、ステップS22において、波形情報D2が示す波形候補を取得する。つまり、ある対象の印刷システム100の駆動波形を決定するに際し、別の印刷システム100で駆動パルスPDを決定したときに用いた駆動波形候補を取得する。
【0137】
次に、ステップS22において、波形情報D2を用いて、波形候補情報D1を決定する。
【0138】
例えば、ベイズ最適化を用いる場合、対象の印刷システム100での波形候補に加え、別の印刷システム100での駆動パルスPDの決定に際して用いられた波形候補(第2駆動パルスPD_2の波形候補)も用いて、獲得関数によるパラメーターp1、p2、p3、…の探索を行う。このとき、別の印刷システム100での波形非候補を更に用いても良い。なお、ステップS21の直後に行われるステップS22においては、別の印刷システム100での波形情報D2のみを用いて波形候補情報D1を決定し、ステップS27の後に行われるステップS22においては、別の印刷システム100での波形情報D2とそれまでに得られた対象の印刷システム100での波形候補情報D1を用いて次の波形候補情報D1を決定することになる。
【0139】
また、Nelder-Mead法を用いる場合、探索点のうちの少なくとも一部を別の印刷システム100での波形情報D2にしてパラメーターp1、p2、p3、…の探索を行う。特に探索開始点等、探索の初期において、波形情報D2を用いることが有効である。なお、この場合、別の印刷システム100での波形非候補も用いても良いが、波形候補(第2駆動パルスPD_2の波形候補)の方を用いる方がより好ましい。なお、ステップS27の後にステップS23を行う、つまり探索がある程度進んだ場合、以前のステップS26で得られた評価値に基づいて探索点を一部置き換えても良い。
【0140】
以上記載したように、第1~第3実施形態では波形候補情報D1から好ましくない波形を除外するために波形情報D2を用いたが、第4実施形態では波形候補情報D1を決定するために波形情報D2を用いる。この場合も、第1駆動パルスPD_1の波形の決定に要する処理工数を低減することができる。なお、第1~第3実施形態のように波形候補情報D1からの除外において波形情報D2を用い、且つ、第4実施形態のように波形候補情報D1の決定においても波形情報D2を用いても良い。
【0141】
なお、本実施形態では、波形情報D2として、第2駆動パルスPD_2の波形候補や波形非候補を示す情報に加え、第2駆動パルスPD_2の波形を決定する過程で測定されたインク量や吐出速度等の吐出特性を示す情報を用いると、より好適に波形候補情報D1を決定することができる。
【0142】
5.第5実施形態
図13は、第5実施形態に係る駆動波形決定方法に用いる液体吐出装置200Cの構成例を示す概略図である。液体吐出装置200Cは、表示装置281、入力装置282、通信回路283および測定装置300Cを有するとともに、プログラムPの実行を行う以外は、前述の液体吐出装置200と同様である。
【0143】
表示装置281は、前述の第1実施形態における表示装置410と同様に構成される。入力装置282は、前述の第1実施形態における入力装置420と同様に構成される。通信回路283は、前述の第1実施形態における通信回路450と同様に構成される。測定装置300Cは、前述の第1実施形態における測定装置300と同様に構成される。なお、表示装置281、入力装置282および測定装置300Aのうちの少なくとも1つは、液体吐出装置200の外部に設けられてもよい。
【0144】
本実施形態の記憶回路260には、プログラムP、波形候補情報D1および波形情報D2が記憶される。本実施形態の処理回路270は、コンピューターの一例であり、プログラムPを実行することにより、処理部271として機能する。
【0145】
処理部271は、前述の第1実施形態の処理部441と同様、波形情報D2を取得した場合、波形候補情報D1および波形情報D2を用いて駆動パルスPDの波形を決定する。
【0146】
以上の第5実施形態によっても、前述の第1実施形態と同様、第1駆動パルスPD_1の決定に必要な処理工数を低減することができる。
【0147】
なお、本実施形態では、液体吐出装置200Cが第1実施形態と同様の構成及び機能を有する場合について説明したが、第2実施形態、第3実施形態、或いは第4実施形態と同様の構成及び機能を有していても良い。
【0148】
6.変形例
以上、本発明の駆動波形決定方法、駆動波形決定プログラム、液体吐出装置および駆動波形決定システムについて図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されない。また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成に置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0149】
6-1.変形例1
前述の形態では、プログラムPは、インストールされる記憶回路と同一の装置に設けられる処理回路により実行される構成が例示されるが、当該構成に限定されず、インストールされる記憶回路と異なる装置に設けられる処理回路により実行されてもよい。例えば、第1実施形態のように、情報処理装置400の記憶回路430に記憶されるプログラムPを液体吐出装置200の処理回路270により実行してもよい。
【0150】
6-2.変形例2
前述の形態では、駆動パルスPDの波形の決定に実測およびシミュレーションの両方を用いる構成が例示されるが、当該構成に限定されず、例えば、実測およびシミュレーションのうちのいずれか一方を省略してもよいし、インクの吐出特性に関する目標値、インクの種類、ヘッド構成等の条件が印刷システム100間で互いに同一である場合には、実測およびシミュレーションの両方を用いずに別の印刷システム100からの波形情報D2のみを用いて駆動パルスPDの波形を決定してもよい。
【0151】
6-3.変形例3
前述の実施形態では、駆動パルスPDの波形の決定を自動的に行う構成が例示されるが、当該構成に限定されず、当該決定の処理の少なくとも一部が手動で行われてよい。例えば、別の印刷システム100からの波形情報D2が示す情報を表示装置410に表示させ、その表示を手掛かりとしてユーザーが入力装置420を用いて手動により駆動パルスPDの波形を決定してもよい。
【符号の説明】
【0152】
10…駆動波形決定システム、10A…駆動波形決定システム、10B…駆動波形決定システム、200…液体吐出装置、200C…液体吐出装置、210…液体吐出ヘッド、210_1…第1液体吐出ヘッド、210_2…第2液体吐出ヘッド、210_3…第3液体吐出ヘッド、211…圧電素子(駆動素子)、271…処理部、400…情報処理装置(コンピューター)、441…処理部、441_1…第1処理部、441_2…第2処理部、441_3…第3処理部、500…サーバー、500A…サーバー、500B…サーバー、541…処理部、541B…処理部、D1…波形候補情報、D2…波形情報、D2_1…第1波形情報、D2_2…第2波形情報、D3…評価情報、P…プログラム(駆動波形決定プログラム)、P1…プログラム(駆動波形決定プログラム)、P2…プログラム(駆動波形決定プログラム)、PD…駆動パルス、PD_1…第1駆動パルス、PD_2…第2駆動パルス、PD_3…第3駆動パルス、S102…ステップ(第5工程)、S103…ステップ(第1工程)、S104…ステップ(第2工程)、S109…ステップ(第9工程)、S112…ステップ(第8工程)、S201…ステップ(第3工程)、S204…ステップ(第4工程)、S301…ステップ(第3工程)、S303…ステップ(第7工程)、S306…ステップ(第6工程)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13