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特許7494672フォトマスクブランクス、フォトマスクブランクスの製造方法、学習方法およびフォトマスクブランクスの検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】フォトマスクブランクス、フォトマスクブランクスの製造方法、学習方法およびフォトマスクブランクスの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/84 20120101AFI20240528BHJP
   G03F 1/50 20120101ALI20240528BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G03F1/84
G03F1/50
G01N21/956 A
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020154038
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047966
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】寳田 庸平
(72)【発明者】
【氏名】林 賢利
(72)【発明者】
【氏名】八神 高史
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-298858(JP,A)
【文献】特開2017-015692(JP,A)
【文献】特開2007-170914(JP,A)
【文献】特開2004-193269(JP,A)
【文献】特開2009-251412(JP,A)
【文献】特開平03-182752(JP,A)
【文献】特開2010-020335(JP,A)
【文献】特開2002-057097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00-1/86
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を成膜してフォトマスクブランクスを形成する工程と、
前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、
前記第1の検査工程の後、前記フォトマスクブランクスを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後、前記第1の検査工程で特定された前記位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2の検査工程と、
前記第2情報に基づいて、ハーフピンホールを検出するハーフピンホール検出工程と、を有するフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項2】
請求項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記第1の層は遮光層であり、前記第2の層は反射防止層である、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項3】
請求項またはに記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記第1の層はクロムを含有し、前記第2の層はクロムと酸素とを含有する、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項4】
請求項からまでのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記第1の検査工程において、前記積層膜からの散乱光を検出する、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項5】
請求項からまでのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記第2の検査工程において、前記積層膜からの反射光を撮像する、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項6】
請求項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記ハーフピンホール検出工程で検出された前記ハーフピンホールに関して、所定の判定基準を満たすか否かを判定する判定工程を有し、
前記判定工程において、前記反射光の強度に基づいて、前記判定基準を満たすか否かを判定する、
フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項7】
請求項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記判定基準は、前記積層膜における直径が1μm以上3μm以下の前記ハーフピンホールの個数が0.003個/cm以下であることを含む、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項8】
請求項からまでのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記第2の検査工程において、50倍以上の倍率にて前記撮像情報を生成する、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、前記洗浄工程では、少なくとも一部分が前記積層膜の内部に含まれている前記異物を前記積層膜から取り除く、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記ハーフピンホールは、前記積層膜において前記第1の層を貫通し、前記第2の層を貫通していない開口である、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項11】
ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を成膜してフォトマスクブランクスを形成する工程と、
前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、
前記異物の大きさに関する情報を取得する工程と、
前記第1の検査工程の後、前記フォトマスクブランクスを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後、前記第1の検査工程で特定された前記位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2の検査工程と、
前記第1情報と、前記異物の大きさに関する情報と、前記第2情報との関係を学習する学習工程と、を有する学習方法。
【請求項12】
請求項11に記載の学習方法において、
前記第1の検査工程において、前記積層膜からの散乱光を検出し、かつ前記積層膜からの反射光を撮像する、学習方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の学習方法において、
前記第2の検査工程において、前記積層膜からの反射光を撮像する、学習方法。
【請求項14】
請求項11から13までのいずれか一項に記載の学習方法において、
前記第2の検査工程において、倍率が50倍以上の対物レンズを用いて前記撮像情報を生成する、学習方法。
【請求項15】
ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を成膜してフォトマスクブランクスを形成する工程と、
前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、
前記異物の大きさに関する情報を取得する工程と、
請求項11から14までのいずれか一項に記載の学習方法により学習された学習部に前記第1情報と前記異物の大きさに関する情報とを入力し、洗浄後の前記フォトマスクブランクスが所定の判定基準を満たすか否かを判定する判定工程と、を有するフォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載のフォトマスクブランクスの製造方法において、
前記判定基準は、前記積層膜における直径が1μm以上3μm以下のハーフピンホールの個数が0.003個/cm以下であることを含む、フォトマスクブランクスの製造方法。
【請求項17】
ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を有するフォトマスクブランクスの検査方法であって、
前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、
前記異物の大きさに関する情報を取得する工程と、
請求項11から14までのいずれか一項に記載の学習方法により学習された学習部に前記第1情報と前記異物の大きさに関する情報とを入力し、洗浄後の前記フォトマスクブランクスが所定の判定基準を満たすか否かを判定する判定工程と、を有するフォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項18】
請求項17に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記判定基準は、前記積層膜における直径が1μm以上3μm以下のハーフピンホールの個数が0.003個/cm以下であることを含む、フォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項19】
ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を有するフォトマスクブランクスの検査方法であって、
前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、
前記第1の検査工程の後、前記フォトマスクブランクスを洗浄する洗浄工程と、
前記洗浄工程の後、前記第1の検査工程で特定された前記位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2の検査工程と、
前記第2情報に基づいて、ハーフピンホールを検出するハーフピンホール検出工程と、を有するフォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項20】
請求項19に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記第1の層は遮光層であり、前記第2の層は反射防止層である、フォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項21】
請求項19または20に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記第1の層はクロムを含有し、前記第2の層はクロムと酸素とを含有する、フォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項22】
請求項19から21までのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記第1の検査工程において、前記積層膜からの散乱光を検出する、フォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項23】
請求項19から22までのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記第2の検査工程において、前記積層膜からの反射光を撮像する、フォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項24】
請求項23に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記ハーフピンホール検出工程で検出された前記ハーフピンホールに関して、所定の判定基準を満たすか否かを判定する判定工程を有し、
前記判定工程において、前記反射光の強度に基づいて、前記判定基準を満たすか否かを判定する、フォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項25】
請求項24に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記判定基準は、前記積層膜における直径が1μm以上3μm以下の前記ハーフピンホールの個数が0.003個/cm以下であることを含む、前記判定工程において、前記反射光の強度に基づいて、前記判定基準を満たすか否かを判定する、フォトマスクブランクスの検査方法。
【請求項26】
請求項19から25までのいずれか一項に記載のフォトマスクブランクスの検査方法において、
前記第2の検査工程において、倍率が50倍以上の対物レンズを用いて前記撮像情報を生成する、フォトマスクブランクスの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクブランクス、フォトマスクブランクスの製造方法、学習方法およびフォトマスクブランクスの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フォトマスクブランクスからの反射光を利用して欠陥を検査している(例えば、特許文献1)。しかしながら、反射光を測定するのみでは、微小なハーフピンホールと呼ばれる欠陥を検査することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-120211号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によれば、ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を有するフォトマスクブランクスであって、前記積層膜における1μm以上3μm以下のハーフピンホールが0.003個/cm以下である。
第2の態様によれば、フォトマスクブランクスの製造方法は、ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を成膜してフォトマスクブランクスを形成する工程と、前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、前記第1の検査工程の後、前記フォトマスクブランクスを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程の後、前記第1の検査工程で特定された前記位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2の検査工程と、前記第2情報に基づいて、ハーフピンホールを検出するハーフピンホール検出工程と、を有する。
第3の態様によれば、学習方法は、ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を成膜してフォトマスクブランクスを形成する工程と、前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、前記異物の大きさに関する情報を取得する工程と、前記第1の検査工程の後、前記フォトマスクブランクスを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程の後、前記第1の検査工程で特定された前記位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2の検査工程と、前記第1情報と、前記異物の大きさに関する情報と、前記第2情報との関係を学習する学習工程と、を有する。
第4の態様によれば、ガラス基板上に第1の層と第2の層とを含む積層膜を有するフォトマスクブランクスの検査方法であって、前記積層膜における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1の検査工程と、前記第1の検査工程の後、前記フォトマスクブランクスを洗浄する洗浄工程と、前記洗浄工程の後、前記第1の検査工程で特定された前記位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2の検査工程と、前記第2情報に基づいて、ハーフピンホールを検出するハーフピンホール検出工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】実施の形態におけるフォトマスクブランクスの断面構造を模式的に示す図である。
図2】実施の形態におけるフォトマスクブランクスの製造方法を説明するフローチャートである。
図3】実施の形態による検査装置の要部構成の一例を説明するブロック図である。
図4】検査工程時における検査位置の移動経路の一例を模式的に示す図である。
図5】実施例における第1検査工程にて検査位置にて検出された異物と、同じ場所において第2検査工程にて検出された欠陥との関係を示す図である。
図6】変形例1における検査装置の要部工程の一例を説明するブロック図である。
図7】変形例1における学習方法を説明するフローチャートである。
図8】変形例1におけるフォトマスクブランクスの製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明を行う。
本実施の形態のフォトマスクブランクスは、ガラス基板上に成膜された積層膜における大きさ1μm以上3μm以下のハーフピンホールが0.003個/cm以下である。
図1に、本実施の形態のフォトマスクブランクス1の断面構造を模式的に示す。なお、説明の都合上、X軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を図1に示すように設定する。すなわち、図1の紙面の水平方向にX軸を、紙面の垂直方向にZ軸を、X軸およびZ軸に直交する方向(紙面奥方向)にY軸を設定する。図1においては、フォトマスクブランクス1の上面をXY平面と平行となるように示す。
【0007】
図1(a)はフォトマスクブランクスの断面構造を模式的に示す。積層膜11は、ガラス基板10上の第1の層である遮光層12と第2の層である反射防止層13とを含む。ガラス基板10は、例えば合成石英ガラスである。遮光層12は、例えばクロム等の金属薄膜であり、反射防止層13は、例えば酸化クロム等の金属酸化物薄膜である。本実施の形態においては、図示の通り、遮光層12の膜厚は反射防止層13の膜厚よりも大きい。遮光層12の膜厚は、例えば80nmであり、反射防止層13の膜厚は、例えば20nmである。
【0008】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、上述したフォトマスクブランクス1の製造方法および検査方法について説明する。
ステップS1においては、ガラス基板10上に積層膜11である遮光層12と反射防止層13とを成膜してフォトマスクブランクス1を形成する(形成工程)。ステップS2では、後述する検査装置を用いて、フォトマスクブランクス1の積層膜11における異物の位置を特定し、この異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する(第1検査工程)。なお、異物としては、例えば、スパッタリング法により積層膜11を成膜した際のターゲットからの材料の破片や、成膜装置内のシールドから剥離した材料などが含まれる。
【0009】
ステップS3においては、第1検査工程後のフォトマスクブランクス1の洗浄を行う(洗浄工程)。ステップS4においては、洗浄工程後のフォトマスクブランクス1に対して、第1検査工程にて特定された異物の位置における撮像情報を含む第2情報を取得する(第2検査工程)。ステップS5においては、第2情報に基づいて、所定の判定基準を満たすか否かを判定する(判定工程)。
以下、上記の各ステップにて行われる工程について詳細に説明する。なお、検査方法としては、上記のステップS2(第1検査工程)からステップS5(判定工程)までが行われれば良い。
【0010】
<形成工程>
ガラス基板10上に積層膜11を形成する際には、例えば、公知のスパッタリング法等を適用できる。スパッタリング方法としては、2極スパッタリング法でも、あるいは、マグネトロンスパッタリング法のいずれも適用可能である。また、スパッタリング用の電源としては、直流電源でも、あるいは、高周波電源のいずれも適用可能である。スパッタリング法等により、ガラス基板10上に遮光層12を形成し、さらに、遮光層12上に反射防止層13を形成する。
【0011】
<検査装置>
ここで、第1検査工程及び第2検査工程に用いられる検査装置20の説明をする。図3は、検査装置20の要部構成を説明するブロック図である。検査装置20は、光源21と、第1検出部22と、第2検出部23と、第3検出部24と、撮像部25と、駆動部26と、制御部27と、載置台28と、光源29と、光源31とを有する。光源21と、第1検出部22と、第2検出部23と、第3検出部24と、撮像部25と、光源29と、光源31とは、同一の検査ユニット30内に収容される。なお、図3においても、図1と同様にX軸、Y軸、Z軸からなる直交座標系を設定する。
光源21は、例えばレーザー光を、載置台28に載置されたフォトマスクブランクス1に向けて、すなわち図3のZ方向-側へ出射する。光源21は、例えば波長が532nmのレーザー光を出射する。
【0012】
第1検出器22は、フォトマスクブランクス1に対して光源21と同じ側(すなわちZ方向+側)に配置される。第1検出器22は、例えば光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)であり、光源21からのレーザー光の光軸からずれた位置に配置される。これにより、光源21からのレーザー光のうち、フォトマスクブランクス1にて散乱してZ方向+側へ進む散乱光(後方散乱光)を受光する。第1検出器22は、受光した後方散乱光の強度に応じた検出信号(第1検出信号)を制御部27へ出力する。
【0013】
第2検出器23は、フォトマスクブランクス1に対して光源21と反対側(すなわちZ方向-側)に配置される。第2検出器23は、例えば光電子増倍管(フォトマルチプライヤ)であり、光源21からのレーザー光の光軸からずれた位置に配置される。これにより、光源21からのレーザー光のうち、フォトマスクブランクス1を透過してZ方向-側へ進む散乱光(前方散乱光)を受光する。第2検出器23は、受光した前方散乱光の強度に応じた検出信号(第2検出信号)を制御部27へ出力する。
【0014】
第3検出器24は、フォトマスクブランクス1に対して光源21と同じ側(Z方向+側)に配置される。第3検出器24は、例えば撮像素子(フォトダイオード)であり、光源21からのレーザー光のうち、フォトマスクブランクス1にて反射してZ方向+側へ進む反射光を受光する。なお、第3検出器24は、フォトマスクブランクス1にて散乱した散乱光(後方散乱光)も受光するが、当該散乱光は第3検出器24の感度では検出困難なほど強度が弱いため、実質的に反射光のみを検出することになる。第3検出器24は、受光した反射光の強度に応じた検出信号(第3検出信号)を制御部27へ出力する。
撮像部25は、例えば微分干渉観察により得られる像を撮像する。微分干渉観察は比較的高い倍率の対物レンズを用いて行われ、例えば対物レンズの倍率は50倍以上であることが好ましい。撮像部25は、光源29からの光のうち、フォトマスクブランクス1の表面(すなわち反射防止層13)にて反射してZ方向+側へ進む反射光を撮像する。また、フォトマスクブランクス1のZ方向-側に設けられた光源31からの光のうち、フォトマスクブランクス1をZ方向+側に透過する透過光を撮像する。なお、光源29及び光源31は、例えば白色LEDである。撮像により得られた画像信号は、制御部27へ出力される。
【0015】
駆動部26は、例えばモータおよびガイドレール等を有し、制御部27により制御され、検査ユニット30と載置台28(すなわちフォトマスクブランクス1)との相対的な位置関係を変更する。駆動部26は、例えば、検査ユニット30を、X方向およびY方向の少なくとも一方に移動させることにより、検査ユニット30と載置台28との相対的な位置関係を変更する。なお、駆動部26は、載置台28をX方向およびY方向の少なくとも一方に移動させて相対的な位置関係を変更してもよい。駆動部26により検査ユニット30(すなわち、光源21、第1検出器22、第2検出器23、第3検出器24、撮像部25)がフォトマスクブランクス1に対してXY平面上を二次元移動することにより、検査ユニット30はXY平面上におけるフォトマスクブランクス1の表面に対して二次元走査が可能となる。
【0016】
制御部27は、マイクロプロセッサやその周辺回路等を有し、不図示の記憶媒体(例えばフラッシュメモリ等)に予め記憶されている制御プログラムを読み込んで実行することにより、検査装置20の各部を制御するプロセッサーである。なお、制御部27は、CPUや、ASICや、プログラマブルMPU等により構成されてよい。制御部27は、光源制御部271と、駆動制御部272と、受光制御部273と、検査部274と、画像生成部275と、判定部276とを備える。光源制御部271は、光源21の動作(例えば、レーザー光の出射強度や出射タイミング等)を制御する。駆動制御部272は、上記の二次元走査を行うために、検査ユニット30の載置台28に対する移動量と移動方向とを指示する信号を駆動部26へ出力する。受光制御部273は、第1検出器22、第2検出器23、第3検出器24および撮像部25を制御して、それぞれから第1検出信号、第2検出信号、第3検出信号および撮像信号を出力させる。検査部274は、第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号に基づいて、フォトマスクブランクス1の積層膜11における欠陥の位置や欠陥の状態を検査する。画像生成部275は、撮像部25から出力された撮像信号に基づいて、フォトマスクブランクス1の積層膜11の画像データを生成し、表示モニタ(不図示)に積層膜11の画像を表示する。
【0017】
<第1検査工程>
形成工程により形成されたフォトマスクブランクス1の積層膜11の検査を上記の構成を有する検査装置20を用いて行う。第1検査工程においては、積層膜11における異物の位置と、その検出強度と、を含む第1情報を取得する。以下に、第1検査工程の詳細を説明する。なお、以下の例では、第1検査工程において第1検出信号、第2検出信号、第3検出信号のすべてを検出する例について説明するが、第1検出信号のみを検出するようにしてもよい。
駆動制御部272は、駆動部26を制御して、検査ユニット30をフォトマスクブランクス1に対してXY平面において所定の位置(検査位置)へ移動させる。検査ユニット30が検査位置に到達すると、光源制御部271は、光源21から所定の強度でレーザー光を出射させる。受光制御部273は、第1検出器22、第2検出器23および第3検出器24を制御して、第1検出器22から第1検出信号を出力させ、第2検出器23から第2検出信号を出力させ、第3検出器24から第3検出信号を出力させる。第1検出信号は、光源21からのレーザー光のうちフォトマスクブランクス1の積層膜11にて散乱した散乱光のうち、上述した後方散乱光の強度に応じた信号である。第2検出信号は、光源21からのレーザー光のうち積層膜11にて散乱した散乱光のうち、上述した前方散乱光の強度に応じた信号である。第3検出信号は、光源21からのレーザー光のうち積層膜11で反射した反射光の強度に応じた光電変換信号である。
検査部274は、出力された第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号と、検査位置の座標等を示す位置情報とを関連付けてメモリ(不図示)に格納する。なお、必ずしも第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号のすべてが位置情報に関連付けられなくともよく、いずれか1つ以上の検出信号と位置情報とが関連付けられてもよい。
【0018】
次に、駆動制御部272は、駆動部26を制御して検査ユニット30を上記の検査位置とは異なる検査位置へ移動させる。このときの移動量は、予め決められている所定の移動量であってもよいし、ユーザが例えば入力装置(不図示)等を介して設定した移動量であってもよい。新たな検査位置においても、上述した動作と同様の動作が行われることにより、異なる検査位置における第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号と、位置情報とが関連付けされてメモリに格納される。
【0019】
駆動制御部272による検査ユニット30の検査位置の移動は、フォトマスクブランクス1の積層膜11の全面を検査するように行われる。
図4に検査位置の移動経路の一例を模式的に示す。なお、図4は、フォトマスクブランクス1のXY平面における形状を矩形とした場合を示している。本実施の形態においては、駆動制御部272は、例えば図4の矢印Arにて示すような経路に沿って検査ユニット30がXY平面を移動するように駆動部26を制御する。この経路上における複数の検査位置における、第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号のそれぞれと位置情報とが関連付けされてメモリに格納される。
【0020】
検査部274は、取得された第1検出信号の信号強度に基づいて、積層膜11の異物を検出する。
ここで、検査部274により検出される積層膜11の異物の例を図1(b)、(c)に模式的に示す。図1(b)、(c)は、フォトマスクブランクス1の断面を模式的に示し、異物が積層膜11に存在している状態を示す。図1(b)は、積層膜11の遮光層12と反射防止層13とに跨る異物F1が含まれる場合を示す。図1(c)は、積層膜11の反射防止層13のみに異物F2が含まれ、遮光層12には含まれない場合を示す。なお、これら図1(b)、(c)に示す異物は、後の洗浄工程により脱落するが、このとき図1(d)、(e)に示すように積層膜11の部分的な剥離が生じ得る。図1(d)は、積層膜11の遮光層12と反射防止層13とを貫通する開口(以下、ピンホールと呼ぶ)F3を示す。図1(e)は、積層膜11の反射防止層13のみを貫通し、遮光層12の上面の一部が暴露した開口(以下、ハーフピンホールを呼ぶ)F4を示す。
【0021】
積層膜11に存在する異物に光源21からのレーザー光が照射された場合、異物により散乱光が生じる。検査部274は、第1検出器22で当該散乱光(後方散乱光)を受光し、第1検出信号を検出する。第1検出信号の信号強度が所定の第1閾値以上の場合に異物であると判定される。第1閾値は、本実施の形態において例えば500と設定されるが、任意単位であり使用される装置等に応じて適宜設定可能である。本実施の形態において、信号強度が500未満である第1検出信号はノイズレベルであると見なされる。
積層膜11に存在するピンホールに光源21からのレーザー光が照射された場合、ピンホールのエッジで散乱光が生じる。検査部274は、第2検出器23でフォトマスクブランクス1を通過する当該散乱光(前方散乱光)を受光し、第2検出信号を検出する。第2検出信号の信号強度が所定の第2閾値以上の場合に、ピンホール(図1(d)参照)であると判定される。第2閾値は、本実施の形態において、例えば300と設定されるが、任意単位であり使用される装置等に応じて適宜設定可能である。本実施の形態において、信号強度が300未満である第2検出信号はノイズレベルであると見なされる。
積層膜11に存在するハーフピンホール1に光源21からのレーザー光が照射された場合、露出している遮光層12からの反射光が生じる。正常に反射防止層13が形成されている領域においても反射光は生じ得るが、ハーフピンホールには反射防止層13が形成されていない分、より強く反射光が生じる。検査部274は、第3検出器24で当該反射光を受光し、第3検出信号を検出する。第3検出信号の信号強度が所定の第3閾値以上の場合に、ハーフピンホールであると判定される。第3閾値は、本実施の形態において、例えば370と設定されるが、任意単位であり、使用される装置等に応じて適宜設定可能である。本実施の形態において、信号強度が370未満である第3検出信号はノイズレベルであると見なされる。
検査部274は、上述のように欠陥を検出すると、その欠陥についての各検出信号の信号強度と、関連付けされたその欠陥の位置情報とを第1情報として取得し、メモリ(不図示)に記録する。なお、検査部274は、欠陥を検出したときの検出信号に関連付けされた位置情報のみを第1情報として、メモリに記録してもよい。なお、本実施の形態における欠陥とは、上述した異物、ピンホール、ハーフピンホールのことである。
上述したように、駆動制御部272により検査ユニット30はフォトマスクブランクス1をXY面内で二次元走査する。これにより、検査部274は、フォトマスクブランクス1の積層膜11のうち欠陥が生じている位置を検出して、検出した位置に関する情報を含む第1情報を取得する。
【0022】
<洗浄工程>
洗浄は、硫酸等の酸による洗浄や、オゾン水やUVオゾンによるオゾン洗浄等の公知の方法により行われ、積層膜11に付着した異物等を除去する。
洗浄工程により積層膜11に付着した異物が剥離する。上記の通り、図1(b)に示す異物F1が剥離すると、積層膜11には図1(d)に示すピンホールF3が生じ得る。また、図1(c)に示す異物F2が剥離すると、積層膜11には図1(e)に示すハーフピンホールF4が生じ得る。
【0023】
<第2検査工程>
洗浄工程により積層膜11が洗浄されたフォトマスクブランクス1の積層膜11の検査を行う。第2検査工程においては、第1検査工程により異物が検出された位置(すなわち、第1検査工程における第1検出信号の信号強度が所定の第1閾値以上であった位置)において、光源29及び光源31により光を照射し撮像部25により積層膜11の表面の反射画像と透過画像の撮像を行い、検査を行った位置における撮像情報を含む第2情報を取得する。
【0024】
駆動制御部272は、駆動部26を制御して、第1情報により特定された位置(特定検査位置)へ撮像部25を移動させる。撮像部25は、駆動部26により移動した位置において、フォトマスクブランクス1の積層膜11の表面の撮像を行い、撮像により得られた信号を制御部27へ出力し、画像生成部275は入力した信号に基づいて、上記の特定された位置における積層膜11の画像データを生成する。上記の処理を全ての特定検査位置にて行うことにより、特定検査位置におけるフォトマスクブランクス1の積層膜11の状態に関する画像データが生成される。
【0025】
なお、洗浄工程後、必要に応じて第1検査工程と同様の検査を行ってもよい。第1検査工程と同様の検査は、第2検査工程の前に行われてよいし、第2検査工程の後に行われてよいし、第2検査工程と同時に行われてもよい。
【0026】
<判定工程>
判定部276は、第2検査工程にて取得した第2情報に基づいて、積層膜11のハーフピンホールが所定の判定基準を満たすか否かを判定する。より具体的には、まず、異物が検出された位置(すなわち、第1検査工程における第1検出信号の信号強度が所定の第1閾値以上であった位置)における反射画像と透過画像のうち反射画像のみに欠陥が検出された場合にハーフピンホールでると判断する。なお、反射画像と透過画像の両方に欠陥が検出された場合はピンホールであると判断する。そして、上述の画像データに基づいてハーフピンホールの大きさを求め、所定の判定基準を満たすか否かを判定する。所定の判定基準の一例として、積層膜11における1μm以上3μm以下のハーフピンホールの個数が0.003個/cm以下(すなわち、800mm×920mmの大きさのフォトマスクブランクス1の場合には22個以下、1220mm×1400mmの大きさのフォトマスクブランクス1の場合には51個以下)とする。
【0027】
上記の所定の判定基準である1μm以上3μm以下のハーフピンホール(以下、微小ハーフピンホールと呼ぶ)は、例えば、図1(c)に示すような異物F2が洗浄工程により剥離することにより生じた図1(e)に示すようなハーフピンホールF4に相当する。このような微小ハーフピンホールは、レーザー光を照射した際の後方散乱光の強度が極めて小さく、第1検査工程で行った検査では検出が困難である。このため、第2検査工程を行わなければ、微小ハーフピンホールを検出することが困難である。
【0028】
本実施の形態においては、第1検査工程の第1検出信号に基づいて、洗浄工程後に微小ハーフピンホールが生ずる原因となる異物F2(図1(c)参照)の位置に関する第1情報が特定検査位置として特定される。さらに、洗浄工程後の第2検査工程において、第1情報により特定された特定検査位置における第2情報が取得される。判定部276は、第2情報に基づいて上記の微小ハーフピンホールが所定値(0.003個/cm)以下であるか否かを判定する。
【0029】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
フォトマスクブランクス1の製造方法は、ガラス基板10上に遮光層12と反射防止層13とを含む積層膜11を成膜してフォトマスクブランクス1を形成する形成工程と、積層膜11における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1検査工程と、第1検査工程の後、フォトマスクブランクス1を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程の後、第1検査工程で特定された位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2検査工程と、第2情報に基づいて、所定の判定基準を満たすか否かを判定する判定工程と、を有する。
ガラス基板10上に遮光層12と反射防止層13とを含む積層膜11を有するフォトマスクブランクス1の検査方法は、積層膜11における異物の位置に関する情報を含む第1情報を取得する第1検査工程と、第1検査工程の後、フォトマスクブランクス1を洗浄する洗浄工程と、洗浄工程の後、第1検査工程で特定された位置の撮像情報を含む第2情報を取得する第2検査工程と、第2情報に基づいて、所定の判定基準を満たすか否かを判定する判定工程と、を有する。
これにより、積層膜11に生じる微小ハーフピンホールを検出するので、検査精度を向上させることが可能となり、フォトマスクブランクス1の品質向上に寄与する。また、洗浄前に異物の位置を特定しているため、洗浄後は第2検査工程で当該位置を検査するだけで微小ハーフピンホールを検出することができる。積層膜11の全体に亘って撮像部25で検査し、微小ハーフピンホールを検出することも可能ではあるが、撮像部25で撮像可能な領域を1点ずつ撮像していく必要があるため膨大な時間がかかる。本実施の形態においては、予め特定した異物の位置を洗浄後に撮像部25で検査することで微小ハーフピンホールを検出することができるため、積層膜11の全面を撮像部25で検査する場合に比べて検査時間を大幅に短縮することができる。
【0030】
[実施例]
図5において、計測データ1~5はいずれも、洗浄工程前の第1検査工程で異物が存在すると判定された位置において計測された各データを示す。各計測データには、検査位置と、洗浄工程前と洗浄工程後のそれぞれにおける第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号の検出値とが含まれる。検査位置は、フォトマスクブランクス1において、計測データ1~5が計測された位置のX座標およびY座標の値を示す。図5において、分類1は、第1検査工程において異物であるとの判定結果、および、倍率が50倍の対物レンズを用いて撮像部25により撮像した異物の画像信号を用いて測定した異物の大きさを示し、分類2は、第2検査工程に基づいたピンホールかハーフピンホールかの判定結果、および、倍率が50倍の対物レンズを用いて撮像部25により撮像した画像データを用いて測定したそれらの大きさを示す。
【0031】
図5に示すように、洗浄工程前においては、第1検出信号は第1閾値(本実施例においては500)以上であり、第2検出信号は第2閾値(本実施例においては300)未満であり、第3検出信号は第3閾値(本実施例においては370)未満である。すなわち、分類1に示されるとおり、洗浄工程前の第1検査工程により異物であると判定される。洗浄工程前においてこのような計測結果が得られたフォトマスクブランクス1を洗浄工程後に同様にして計測すると、計測データ1および計測データ2は、第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号の値はいずれも検出限界を下回り、信号を検出できていない。一方、計測データ3は第2検出信号の信号強度が第2閾値以上、計測データ4は第3検出信号の信号強度が第3閾値以上、計測データ5は第3検出信号の信号強度が第3閾値以上となっている。
【0032】
以上より、次のことがわかる。洗浄工程後のフォトマスクブランクス1に対して第1検査工程と同じ検査のみを実施した場合、計測データ3~5においては、第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号に基づいて欠陥を検出可能であるが、計測データ1及び2においては、第1検出信号、第2検出信号および第3検出信号が検出限界を下回るため異物が検出された位置に欠陥が存在しないと判定されることになる。しかし、洗浄工程後において、撮像部25で積層膜を検査することにより、分類2に示されるとおりそれぞれ大きさ1μmおよび1.2μmのハーフピンホールを検出できていることがわかる。つまり、洗浄工程後に大きさが3.0μm以下の微小ハーフピンホールを検査する場合、第3検出器では検出ができず、本実施例のように高い倍率の対物レンズを有する撮像部25で積層膜を検査することが有効である。そして、本実施例では、フォトマスクブランクス1の洗浄工程前に第1検査工程を実施して異物の位置を特定し、特定された異物の位置を洗浄工程後に撮像部25で検査(第2検査工程)して微小ハーフピンホールを検出している。このように検査することで、洗浄工程後に積層膜の全面を撮像部25で検査する場合に比べて検査時間を大幅に短縮することができる。
【0033】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(変形例1)
上述した実施の形態における検査装置20による第1検査工程で取得した第1情報と、異物の大きさに関する情報と、第2検査工程で取得した第2情報との関係を学習するようにしてもよい。異物の大きさに関する情報は、例えば、撮像部25により撮像した異物の画像または当該画像を用いて測定した異物の大きさである。この場合、図6のブロック図に示すように、検査装置201の制御部27は学習部279を有する。他の構成については、図3に示す実施の形態の検査装置20が有する構成と同様の構成を有する。学習部279は、取得された第1情報と、異物の大きさに関する情報と、第2情報とを用いて、例えば、ニューラルネットワークによる学習を行う。なお、ニューラルネットワークによる学習には、公知の方法を用いるものとする。このニューラルネットワークは、例えば、第1情報と、異物の大きさに関する情報とを入力データとし、第1情報に含まれる位置における微小ハーフピンホールに関する情報を出力データとする。制御部27は、例えば、第1情報と異物の大きさに関する情報と第2情報とが取得されて、第1情報と異物の大きさに関する情報と第2情報との関係を登録する際に、第2情報を教師データ(正解データ)として、ニューラルネットワークによる学習を実行する。
【0034】
図7は、検査装置201が学習を行う際の学習方法を説明するフローチャートである。
ステップS11(形成工程)からステップS14(第2検査工程)までの各処理は、図2に示すステップS1(形成工程)からステップS4(第2検査工程)までの各処理と同様に示してあるが、ここでは異物の大きさに関する情報を取得する工程をステップ12(第1検査工程)と同時に実施しているものとする。異物の大きさに関する情報は、ステップ12(第1検査工程)と同時に撮像部25により取得してよいが、ステップ12(第1検査工程)の後に取得してもよい。ステップS15においては、学習部279は、第1検査工程で取得した第1情報と、異物の大きさに関する情報と、第2検査工程で取得した第2情報との関係を学習し(学習工程)、処理を終了する。
【0035】
上記のように検査装置201が学習を行い、学習結果を用いる場合、フォトマスクブランクス1を製造する際に、制御部27の判定部276は、上記の学習方法により学習された学習部279に第1検査工程で取得された第1情報と、異物の大きさに関する情報とを入力し、洗浄工程後のフォトマスクブランクス1が所定の判定基準を満たすか否かを判定する。すなわち、実施の形態の場合とは異なり、検査装置201は第2検査工程を行わない。第1検査工程で取得された第1情報と、異物の大きさに関する情報とを入力することにより、学習部279は学習結果に基づいて特定位置における欠陥が微小ハーフピンホールであるか否かを示す情報を出力する。判定部276は、学習部279が出力した情報のうち微小ハーフピンホールであることを示す情報の個数をカウントし、カウントした個数が所定値(0.003個/cm)以下の場合に、フォトマスクブランクス1を良品として判定する。
【0036】
図8は、検査装置201によって行われるフォトマスクブランクス1の製造方法を説明するフローチャートである。
ステップS21(形成工程)からステップS23(洗浄工程)までの各処理は、図2に示すステップS1(形成工程)からステップS3(洗浄工程)までの各処理と同様である。ステップS24においては、判定部276は、学習部279に第1検査工程にて取得された第1情報と、異物の大きさに関する情報とを入力し、学習部279から出力された情報に基づいて微小ハーフピンホールの個数をカウントし、カウントした個数が所定値以下の場合に、フォトマスクブランクス1を良否として判定して(判定工程)、処理を終了する。
【0037】
以上の処理により、第2検査工程を行うことなく、積層膜11に生じた微小ハーフピンホールを検出し、フォトマスクブランクス1の良品判定を行うことができる。その結果、フォトマスクブランクス1の製造に係る時間を短縮することが可能となる。なお、図8に示す工程においては、洗浄工程の後に判定工程を行う態様について説明したが、これに限られない。例えば、第1検査工程の後かつ洗浄工程の前に判定工程を行ってもよい。また、第1検査工程の後に判定工程を行い、洗浄工程を行わずに出荷してもよい。なお、この場合、洗浄工程は別の工場等で実施されてよい。
【0038】
(変形例2)
判定部276は、第2検査工程時に撮像部25により取得された透過画像のみに基づいて微小ハーフピンホールを検出し、検出した微小ハーフピンホールの個数に基づいてフォトマスクブランクス1の良否判定を行っても良い。この場合、画像生成部275は、撮像部25からの信号に基づいて生成した画像データに基づいて、欠陥およびその周辺の所定個数の画素を階調化する。画像生成部275は、最大となる階調の値(すなわち、欠陥に対応する画像のうち最も明るい箇所)を抽出する。
【0039】
一般的にピンホールの方がハーフピンホールよりも撮像画像にはより明るい部分が存在する。すなわち、撮像画像上における階調の最大値が大きい。判定部276は、階調の最大値が所定値よりも小さい場合に、その欠陥を微小ハーフピンホールであると判定する。この場合、所定値は、シミュレーションや試験等により好ましい値が設定されればよい。判定部276は、上記のようにして微小ハーフピンホールであると判定された欠陥の個数をカウントし、カウントした個数が所定値(0.003個/cm)以下の場合に、フォトマスクブランクス1を良品として判定する。
【0040】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1…フォトマスクブランクス
10…ガラス基板
11…積層膜
12…遮光層
13…反射防止層
20、201…検査装置
22…第1検出器
23…第2検出器
24…第3検出器
27…制御部
274…検査部
276…判定部
279…学習部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8