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特許7494679定着装置の製造方法及び定着装置の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】定着装置の製造方法及び定着装置の製造装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 530
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020160228
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053399
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 龍二
(72)【発明者】
【氏名】長 智章
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151601(JP,A)
【文献】特開2002-148023(JP,A)
【文献】特開2014-085655(JP,A)
【文献】特開2016-095360(JP,A)
【文献】特開平02-024678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に支持された円柱状の加熱部と、該加熱部と間隔をあけて該加熱部の軸方向に延び、該筐体に複数箇所で固定された板との距離の実測値を、該複数箇所で測定する工程と、
該複数箇所の内、該実測値が目標値外にある箇所の固定を解除して該実測値が該目標値に入るように該板を移動させる工程と、
を有する定着装置の製造方法。
【請求項2】
筐体に支持された円柱状の加熱部と該加熱部の軸方向に延びる板との距離が規格値内に入るように該板を該軸方向の複数箇所で移動させ、該筐体に該板を固定する工程と、
該加熱部と該板との距離の実測値を該複数箇所で測定する工程と、
該複数箇所の内、該実測値が目標値外にある箇所の固定を解除して該実測値が該目標値に入るように該板を移動させる工程と、
を有する定着装置の製造方法。
【請求項3】
前記実測値が前記目標値外にある箇所では、固定解除後に前記規格値と該実測値との差を該規格値に加えた更新規格値内に入るように前記板を移動させる、請求項2に記載の定着装置の製造方法。
【請求項4】
前記実測値が前記目標値外にある箇所では、固定解除後に前記板を移動させて、その状態で再固定する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の定着装置の製造方法。
【請求項5】
前記筐体と前記板を再固定した後で、前記加熱部と前記板との距離の実測値を、前記複数箇所の全てで再測定する、請求項4に記載の定着装置の製造方法。
【請求項6】
前記板は、前記筐体にねじ部材で固定され、
前記実測値が前記目標値外にある箇所において該ねじ部材による固定を解除する場合には、該ねじ部材を定められたトルクで締め付けた後で、定められた時間弛める、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の定着装置の製造方法。
【請求項7】
筐体に支持された円柱状の加熱部と、該加熱部と間隔をあけて該加熱部の軸方向に延び、該筐体に複数箇所で固定された板との距離の実測値を、該複数箇所で測定する測定部材と、
該板を、該加熱部に対して近接離間する方向に移動させる移動部材と、
該筐体と該板との固定を解除する解除部材と、
該移動部材及び該解除部材を制御し、該複数箇所のうち、該実測値が目標値外にある箇所では該解除部材で固定を解除すると共に該実測値が該目標値に入るように該移動部材で移動させる制御部と、
を備える定着装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置の製造方法及び定着装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、定着装置の製造技術について開示されている。この製造技術では、まず、筐体に支持された加熱部と、軸方向に延びる板の両端部との距離の実測値が予め定められた両端部の規格値内に入るように、板を移動させた後、加熱部と板の両端部及び中央部の距離を測定する。そして、予め定められた板の両端部及び中央部の規格値内に、実測値が入るように、板を移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-151601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、板と筐体が複数箇所で固定され、筐体に支持された加熱部と板との距離の実測値が目標値外の固定箇所があるときに、全ての箇所の固定を解除して板の位置を再調整する場合と比して、作業工数を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様の定着装置の製造方法は、筐体に支持された円柱状の加熱部と、該加熱部と間隔をあけて該加熱部の軸方向に延び、該筐体に複数箇所で固定された板との距離の実測値を、該複数箇所で測定する工程と、該複数箇所の内、該実測値が目標値外にある箇所の固定を解除して該実測値が該目標値に入るように該板を移動させる工程と、を有する。
【0006】
本発明の第2態様の定着装置の製造方法は、筐体に支持された円柱状の加熱部と該加熱部の軸方向に延びる板との距離が規格値内に入るように該板を該軸方向の複数箇所で移動させ、該筐体に該板を固定する工程と、該加熱部と該板との距離の実測値を該複数箇所で測定する工程と、該複数箇所の内、該実測値が目標値外にある箇所の固定を解除して該実測値が該目標値に入るように該板を移動させる工程と、を有する。
【0007】
本発明の第3態様の定着装置の製造方法は、第2態様の定着装置の製造方法において、前記実測値が前記目標値外にある箇所では、固定解除後に前記規格値と該実測値との差を該規格値に加えた更新規格値内に入るように前記板を移動させる。
【0008】
本発明の第4態様の定着装置の製造方法は、第1態様~第3態様のいずれか一態様において、前記実測値が前記目標値外にある箇所では、固定解除後に前記板を移動させて、その状態で再固定する。
【0009】
本発明の第5態様の定着装置の製造方法は、第4態様の定着装置の製造方法において、前記筐体と前記板を再固定した後で、前記加熱部と前記板との距離の実測値を、前記複数箇所の全てで再測定する。
【0010】
本発明の第6態様の定着装置の製造方法は、第1態様~第5態様のいずれか一態様において、前記板は、前記筐体にねじ部材で固定され、前記実測値が前記目標値外にある箇所において該ねじ部材による固定を解除する場合には、該ねじ部材を定められたトルクで締め付けた後で、定められた時間弛める。
【0011】
本発明の第7態様の定着装置の製造装置は、筐体に支持された円柱状の加熱部と、該加熱部と間隔をあけて該加熱部の軸方向に延び、該筐体に複数箇所で固定された板との距離の実測値を、該複数箇所で測定する測定部材と、該板を、該加熱部に対して近接離間する方向に移動させる移動部材と、該筐体と該板との固定を解除する解除部材と、該移動部材及び該解除部材を制御し、該複数箇所のうち、該実測値が目標値外にある箇所では該解除部材で固定を解除すると共に該実測値が該目標値に入るように該移動部材で移動させる制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
第1態様の定着装置の製造方法では、板と筐体が複数箇所で固定され、筐体に支持された加熱部と板との距離の実測値が目標値外の固定箇所があるときに、全ての箇所の固定を解除して板の位置を再調整する場合と比して、作業工数を低減することができる。
【0013】
第2態様の定着装置の製造方法では、板と筐体が複数箇所で固定され、筐体に支持された加熱部と板との距離の実測値が目標値外の固定箇所があるときに、全ての箇所の固定を解除して板の位置を再調整する場合と比して、作業工数を低減することができる。
【0014】
第3態様の定着装置の製造方法では、実測値が目標値外にある箇所において、固定解除後に規格値内に入るように板を移動させる場合と比して、実測値を目標値に近づけやすい。
【0015】
第4態様の定着装置の製造方法では、実測値が目標値外にある箇所において、固定解除後に板を移動させてから板を筐体に再固定する場合と比して、実測値を目標値に近づけやすい。
【0016】
第5態様の定着装置の製造方法では、筐体と板を再固定した後で、加熱部と板との距離の実測値を、一部の箇所のみ再測定する場合と比して、実測値を目標値に近づけやすい。
【0017】
第6態様の定着装置の製造方法では、実測値が目標値外にある箇所においてねじ部材を直ぐに弛める場合と比して、実測値を目標値に近づけやすい。
【0018】
第7態様の定着装置の製造装置では、板と筐体が複数箇所で固定され、筐体に支持された加熱部と板との距離の実測値が目標値外の固定箇所があるときに、全ての箇所の固定を解除して板の位置を再調整する場合と比して、作業工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造方法の再調整工程を示したフロー図である。
図2A】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置の調整装置を示した断面図である。
図2B】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置の調整装置を示した平面図である。
図2C】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置の調整装置を示した断面図である。
図3】本発明の本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置の測定装置を示した断面図である。
図4】本発明の本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置の測定装置を示した斜視図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置の調整装置を示した平面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造方法における制御部の制御系を示したブロック図である。
図7】(A)(B)(C)本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置によって製造された定着装置の動作を示した動作図である。
図8】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置によって製造された定着装置を示した断面図である。
図9】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置によって製造された定着装置を示した斜視図である。
図10】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置によって製造された定着装置を示した分解斜視図である。
図11】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置によって製造された定着装置が用いられた画像形成装置の画像形成ユニットを示した構成図である。
図12】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造装置によって製造された定着装置が用いられた画像形成装置を示した概略構成図である。
図13】本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造方法の調整工程を示したフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る定着装置の製造方法、及び定着装置の製造装置の一例を図1図13に従って説明する。なお、図中に示す矢印Hは、後述する画像形成装置10の装置上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Wは装置幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは装置奥行方向(水平方向)を示す。
【0021】
先ず、定着装置を備えた画像形成装置について説明し、その後、定着装置の製造装置、及び定着装置の製造方法を説明する。
【0022】
(画像形成装置)
画像形成装置10には、図12に示されるように、記録媒体としてのシート部材Pが収容される収容部14と、収容部14に収容されたシート部材Pを搬送する搬送部16とが備えられている。さらに、画像形成装置10には、収容部14から搬送部16によって搬送されるシート部材Pに画像形成を行う画像形成部20と、各部を制御する制御部12とが備えられている。
【0023】
〔収容部〕
収容部14には、画像形成装置10の装置本体10Aから装置奥行方向の手前側に引き出し可能な収容部材26が備えられており、この収容部材26にシート部材Pが積載されている。さらに、収容部14には、収容部材26に積載されたシート部材Pを、搬送部16を構成する搬送経路28に送り出す送出ロール30が備えられている。
【0024】
〔搬送部〕
搬送部16には、シート部材Pが搬送される搬送経路28に沿って、シート部材Pを搬送する複数の搬送ロール(符号省略)が備えられている。
【0025】
〔画像形成部〕
画像形成部20には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4つの画像形成ユニット18Y、18M、18C、18Kが備えられている。なお、以後の説明では、Y、M、C、Kを区別して説明する必要が無い場合は、Y、M、C、Kを省略して記載することがある。
【0026】
各色の画像形成ユニット18は、装置本体10Aに対して夫々着脱可能とされている。そして、各色の画像形成ユニット18には、図11に示されるように、図中矢印B方向に回転する感光体ドラム36と、感光体ドラム36の表面を帯電する帯電部材38とが備えられている。さらに、画像形成ユニット18には、帯電した感光体ドラム36に露光光を照射する露光装置34と、露光光を照射することで形成された静電潜像を現像してトナー画像として可視化する現像装置40とが備えられている。
【0027】
さらに、画像形成部20には、図中矢印A方向に周回する無端状の転写ベルト22と、各色の画像形成ユニット18によって形成されたトナー画像を転写ベルト22に転写する一次転写ロール32とが備えられている。
【0028】
また、画像形成部20には、図12に示されるように、転写ベルト22に転写されたトナー画像をシート部材Pに転写する二次転写ロール54と、トナー画像が転写されたシート部材Pを加熱・加圧して、トナー画像をシート部材Pに定着する定着装置50とが備えられている。
【0029】
(画像形成装置の作用)
画像形成装置10では、次のようにして画像が形成される。
【0030】
先ず、電圧が印加された各色の帯電部材38は、各色の感光体ドラム36の表面を予定の電位で一様にマイナス帯電する。続いて、外部から受け取った画像データに基づいて露光装置34は、帯電した各色の感光体ドラム36の表面に露光光を照射して静電潜像を形成する。
【0031】
これにより、画像データに対応した静電潜像が各色の感光体ドラム36の表面に形成される。さらに、各色の現像装置40は、この静電潜像を現像し、トナー画像として可視化する。また、各色の感光体ドラム36の表面に形成されたトナー画像は、一次転写ロール32によって転写ベルト22に順番に転写される。このようにして、転写ベルト22は、外周面にトナー画像を保持する。
【0032】
そこで、収容部材26から送出ロール30によって搬送経路28へ送り出されたシート部材Pは、転写ベルト22と二次転写ロール54とが接触する転写位置Tへ送り出される。転写位置Tでは、シート部材Pが転写ベルト22と二次転写ロール54との間で搬送されることで、転写ベルト22の外周面のトナー画像は、シート部材Pに転写される。
【0033】
また、シート部材Pに転写されたトナー画像が、定着装置50によってシート部材Pに定着される。そして、トナー画像が定着されたシート部材Pは、装置本体10Aの外部へ排出される。
【0034】
(要部構成)
次に、本実施形態に係る定着装置の製造方法によって製造される定着装置50について説明し、その後、定着装置の製造装置200、及び定着装置の製造方法について説明する。
【0035】
〔定着装置〕
定着装置50は、電磁誘導加熱方式を採用しており、図8に示されるように、筐体62と、筐体62の内部に配置されている加熱装置64、及び加圧装置66とを備えている。さらに、定着装置50は、加熱されたシート部材Pを加熱装置64から剥離させる剥離板100を備えている。剥離板100は、板の一例である。
【0036】
-加熱装置64-
加熱装置64は、装置奥行方向から見て、シート部材Pの搬送経路28に対して、装置幅方向の一方側(図中右側)に配置されている。そして、加熱装置64は、定着ベルト70と、定着ベルト70を支持する支持部材72と、電磁誘導機構74とを備えている。
【0037】
定着ベルト70は、無負荷状態で、装置奥行方向に延びる円柱状(円筒状)であって、内周面側から外周面側に向けて図示せぬ基層、発熱層、保護層、弾性層、及び離型層が積層されることで形成されている。また、定着ベルト70の端部には、図示せぬ駆動源から回転力が伝達されるギア76(図10参照)が取り付けられている。定着ベルト70は加熱部の一例である。
【0038】
支持部材72は、定着ベルト70の内部に配置され、装置奥行方向に延びている。そして、支持部材72は、本体部72Aと、磁性コア72Bと、弾性部材72Cとを備えている。
【0039】
本体部72Aは、金属材料で形成されている。そして、本体部72Aにおいて搬送経路28側とは反対側の部分は、装置奥行方向から見て、定着ベルト70の内周面に沿っている円弧状とされている。
【0040】
磁性コア72Bは、フェライト系の磁性体によって円弧状に形成されており、本体部72Aにおいて、円弧状とされた部分に取り付けられている。そして、磁性コア72Bと、定着ベルト70の内周面との間には、隙が設けられている。
【0041】
弾性部材72Cは、本体部72Aにおいて磁性コア72Bが取り付けられている側とは反対側の部分に取り付けられており、定着ベルト70の内周面と接触している。
【0042】
電磁誘導機構74は、装置奥行方向から見て、定着ベルト70に対してシート部材Pの搬送経路28の反対側に配置されている。そして、電磁誘導機構74は、ボビン78と、励磁コイル80と、磁性コア82とを備えている。
【0043】
ボビン78は、絶縁材で形成されており、定着ベルト70を挟んで磁性コア72Bの反対側に配置され、装置奥行方向から見て、定着ベルト70の外周面70Aに沿った円弧状とされている。そして、ボビン78において周方向の中央側の部分には、筐体62(図8の図中右側の筐体62)側に突出する凸部78Aが形成されている。
【0044】
励磁コイル80は、ボビン78の凸部78Aを中心としてボビン78に複数回巻き回されている。
【0045】
磁性コア82は、フェライト系の磁性体によって形成されており、ボビン78、及び励磁コイル80を挟んで定着ベルト70の反対側に配置されている。そして、磁性コア82は、装置奥行方向から見て、ボビン78に沿った円弧状とされている。
【0046】
-加圧装置66-
加圧装置66は、加圧部材68を備えており、加圧部材68は、装置奥行方向に延びる円柱状のシャフト68Aと、シャフト68Aが内部に挿入される円筒状のロール部材68Bと、ロール部材68Bの外周面を覆う表面層68Cとを有している。
【0047】
シャフト68Aは、金属材料で形成され、シャフト68Aの端部には、図示せぬ駆動源から回転力が伝達されるギア84(図10参照)が取り付けられている。ロール部材68Bは、熱硬化性シリコーンゴムで形成されており、内部にシャフト68Aが嵌め込まれている。
【0048】
そして、加圧部材68は、図示せぬ接離機構によって、装置幅方向(図8の図中矢印E方向)に移動して、定着ベルト70と接触する接触位置(図8参照)と、定着ベルト70と離間する離間位置とに移動するようになっている。
【0049】
この構成において、図示せぬ駆動源から回転力が伝達されて、接触位置の加圧部材68が矢印F方向へ回転し、かつ、定着ベルト70が矢印G方向へ周回するようになっている。このとき、励磁コイル80に交流電流が供給されると、励磁コイル80の周囲に磁気回路としての磁界Hが生成消滅を繰り返すようになっている。そして、磁界Hが定着ベルト70を横切ると、定着ベルト70の発熱層に渦電流が発生することで、定着ベルト70が加熱されるようになっている。
【0050】
さらに、定着ベルト70側にトナー画像が転写されたシート部材Pが、周回する定着ベルト70と回転する加圧部材68との間でニップされて(挟まれて)搬送されることで、トナー画像がシート部材Pに定着されるようになっている。
【0051】
-筐体62-
筐体62は、加熱装置64、及び加圧部材68を収容する収容空間62Aを有している。さらに、筐体62は、下方側から上方側へ搬送されるシート部材Pを収容空間62Aに受け入れる受入口62Bと、搬送されるシート部材Pを収容空間62Aから排出する排出口62Cとを有している。
【0052】
さらに、筐体62において排出口62Cを形成する開口縁には、板状のフランジ90が形成されている。具体的には、板状のフランジ90は、加熱装置64の上方側の開口縁に形成されており、装置奥行方向に延びている。そして、このフランジ90の板面は、装置幅方向を向いている。
【0053】
このフランジ90には、図10に示されるように、剥離板100を筐体62に取り付ける場合に、取付部材として用いられるネジ86が捻じ込まれるネジ穴92A、92B、92Cが形成されている。具体的には、ネジ穴92A、92B、92Cは、装置幅方向にフランジ90を貫通する雌ネジ(雌ネジ穴)であり、装置奥行方向に間隔を空けて配置されている。そして、フランジ90の装置奥行方向の手前側の部分に、ネジ穴92Aが形成され、フランジ90の装置奥行方向の奥側の部分に、ネジ穴92Cが形成されている。さらに、フランジ90の装置奥行方向の中央側の部分に、ネジ穴92Bが形成されている。なお、ネジ86は、ねじ部材の一例である。
【0054】
また、フランジ90において、ネジ穴92Aの装置奥行方向の奥側の部分、ネジ穴92Cの装置奥行方向の手前側の部分、及びネジ穴92Bの装置奥行方向の奥側の部分には、後述するピン254A、254B、254Cが夫々貫通する貫通孔94が形成されている。この貫通孔94の外径は、ピン254A、254B、254Cの外径よりも大きくされている。
【0055】
また、図8に示されるように、筐体62には、ボビン78及び磁性コア82を上方から覆う天板62Dが形成されている。装置奥行方向から見て、天板62Dの装置幅方向の一端(図中右端)は、天板62Dの装置幅方向の他端と比して下方に位置しており、天板62Dは、水平面に対して傾斜している。そして、この天板62Dには、後述するピン254A、254B、254Cが夫々貫通する貫通孔96が夫々形成されている。具体的には、貫通孔96は、天板62Dに3個形成されており、装置幅方向から見て、貫通孔96は、フランジ90の貫通孔94と重なる位置に形成されている。そして、この貫通孔96の装置幅方向から見た外径は、ピン254A、254B、254Cの外径よりも大きくされている。
【0056】
-剥離板100-
剥離板100は、樹脂材料で一体的に形成されており、図8図9に示されるように、筐体62の排出口62Cを臨むように配置されている。そして、剥離板100は、装置奥行方向に延びており、フランジ90に装置幅方向の他方側(図8の図中左側)から重なっている板状の本体部102と、本体部102の下端に基端104Aが連結されている剥離部104とを有している。この剥離部104の先端104Bは、搬送経路28側で、かつ、定着ベルト70の外周面70A側に延びている。
【0057】
剥離板100の本体部102には、図10に示されるように、ネジ86が貫通すると共に装置上下方向に延びる長孔102A、102B、102Cが形成されている。具体的には、長孔102A、102B、102Cは、装置奥行方向に間隔を空けて形成されている。そして、本体部102の装置奥行方向の手前側の部分に、長孔102Aが形成され、本体部102の装置奥行方向の奥側の部分に、長孔102Cが形成されている。さらに、本体部102の装置奥行方向の中央側の部分に、長孔102Bが形成されている。3個の長孔102A、102B、102Cは、装置奥行方向において、フランジ90のネジ穴92A、92B、92Cと夫々同様の位置に配置されている。また、長孔102A、102B、102Cの装置奥行方向の寸法は、ネジ86の外径と同様で、長孔102A、102B、102Cの装置上下方向の寸法は、ネジ86の外径よりも長くなっている。そして、図9図10に示されるように、ネジ86を、長孔102A、102B、102Cに貫通させて、ネジ穴92A、92B、92Cに夫々締め込むことで、剥離板100が筐体62に取り付けられるようになっている。
【0058】
また、本体部102において、長孔102Aの装置奥行方向の奥側の部分、長孔102Cの装置奥行方向の手前側の部分、及び長孔102Bの装置奥行方向の奥側の部分には、後述するピン254A、254B、254Cが夫々挿入される挿入孔106が形成されている。そして、この挿入孔106の外径は、ピン254A、254B、254Cの外径と同様とされている。
【0059】
さらに、剥離部104の先端104Bと、定着ベルト70の外周面70Aとの距離(図8の距離L)の実測値は、予め定められた目標値内に入っている。
【0060】
この構成において、周回する定着ベルト70と回転する加圧部材68との間でニップされて搬送されるシート部材Pは、シート部材P上のトナーによって定着ベルト70の外周面70Aに付着することがある。しかし、図7(A)(B)(C)に示されるように、搬送されるシート部材Pの先端が、剥離部104の先端104Bと接触することで、シート部材Pは、定着ベルト70から剥離するようになっている。
【0061】
〔定着装置の製造装置200〕
定着装置の製造装置200は、剥離板100を除く各部材を筐体62に組み付けるために用いる図示せぬ組立装置と、定着ベルト70と剥離部104の先端104Bとの距離Lを調整する調整装置210と、を備えている。
【0062】
調整装置210は、剥離板100を除く各部材が組立装置を用いることによって組み立てられ、さらに、剥離板100が筐体62に仮止めされた状態で、剥離部104の先端104Bと定着ベルト70の外周面70Aとの距離Lの実測値を予め定められた規格値内に入れるための装置である。なお、「剥離板100が筐体62に仮止めされた状態」とは、ネジ86のネジ穴92A、92B、92Cに対する締め込み量が充分ではないため、剥離板100が筐体62に対して自由に移動できる状態である。換言すると、「剥離板100が筐体62に仮止めされた状態(以下、「仮止め状態」と省略することがある。)」とは、剥離板100の板面と、筐体62の板面とが接触した状態を維持しつつ、長孔102A、102B、102Cと、ネジ86との隙間の範囲内で筐体62に対して剥離板100が自由に移動できる程度に、ネジ穴92A、92B、92Cに対してネジ86が仮締めされた状態をいう。つまり、調整装置210は、ネジ86が仮締めされ、剥離板100が筐体62に仮止めされた状態において、剥離板100を移動させて、剥離部104の先端104Bと定着ベルト70の外周面70Aとの距離Lの実測値を予め定められた規格値内に入れた後、ネジ穴92A、92B、92Cにネジ86を締結して剥離板100を筐体62に固定する装置である。ここで、ネジ86の仮締めとは、本締めに対するものであり、ネジ86を比較的緩く締め付けることをいう。ネジ86の本締めとは、ネジ86を予め定められたトルクで締め付け、筐体62に対する剥離板100の固定を完了することをいう。
【0063】
さらに、調整装置210は、ネジ86が本締めされ、剥離板100が筐体62に固定された後で、剥離部104の先端104Bと定着ベルト70の外周面70Aとの距離Lの実測値が予め定められた目標値外の場合に、当該実測値を目標値内に入るように剥離板100の位置を調整(再調整)することもできる装置である。
【0064】
調整装置210は、組立装置によって組み立てられた定着装置50が載せられる図示せぬ治具を備えている。さらに、調整装置210は、剥離部104の先端104Bと定着ベルト70の外周面70Aとの距離Lを測定する測定装置220と、剥離板100を筐体62に対して移動させる移動装置250と、仮止め状態の剥離板100を筐体62に締結固定するための締結装置280と、を備えている。また、調整装置210は、各部を制御する制御部270(図6参照)を備えている。以下、調整装置210を説明する上で用いる図2A図2C図3図4に示す矢印UPは、重力方向の上方側を示す。
【0065】
なお、定着装置50を、調整装置210の治具に載せた状態では、図3に示されるように、加圧部材68の下方側に加熱装置64が配置されるようになっている。
【0066】
-測定装置220-
測定装置220は、図4図5に示されるように、定着ベルト70の回転軸方向(以下「ベルト軸方向」、図中矢印M方向)に並んでいる測定部材222A、測定部材222B、及び測定部材222Cを備えている。測定部材222Aは、剥離板100の一端部における剥離部104の先端104Bと定着ベルト70の外周面70Aとの距離Lを測定するようになっている。また、測定部材222Cは、剥離板100の他端部における剥離部104の先端104Bと定着ベルト70の外周面70Aとの距離Lを測定するようになっている。さらに、測定部材222Bは、剥離板100のベルト軸方向の中央部における剥離部104の先端104Bと外周面70Aとの距離Lを測定するようになっている。なお、測定部材222A、222B、222Cはそれぞれ測定部材の一例である。
【0067】
また、「一端部」とは、ベルト軸方向における剥離板100の長さを100〔%〕とした場合に、剥離板100の一端から30〔%〕までの範囲であって、「他端部」とは、剥離板100の他端から30〔%〕までの範囲である。また、「中央部」とは、一端部及び他端部を除いた範囲である。つまり、この範囲の一点で、夫々の距離が測定されるようになっている。
【0068】
各測定部材222A、222B、222Cは、レーザ変位計であって、各部の距離L(図3参照)を測定する(実測する)ようになっている。
【0069】
なお、以下の説明では、便宜上、剥離板100の一端部の距離Lを距離L1と称し、剥離板100の中央部の距離Lを距離L2と称し、剥離板100の他端部の距離Lを距離L3と称する。
【0070】
また、剥離板100が仮止め状態の筐体62において、測定部材222Aによって測定された距離L1の実測値を、実測値J1と称し、測定部材222Bによって測定された距離L2の実測値を、実測値J2と称し、測定部材222Cによって測定された距離L3の実測値を、実測値J3と称する。
【0071】
また、剥離板100が筐体62に固定された状態の筐体62において、測定部材222Aによって測定された距離L1の実測値を、実測値J10と称し、測定部材222Bによって測定された距離L2の実測値を、実測値J20と称し、測定部材222Cによって測定された距離L3の実測値を、実測値J30と称する。なお、「剥離板100が筐体62に固定された状態(以下、「固定状態」と省略することがある。)」とは、ネジ86のネジ穴92A、92B、92Cに対する締め込み量が充分で(ネジ穴92A、92B、92Cにネジ86が本締めされ)、剥離板100が筐体62に対して自由に移動できない、すなわち拘束された状態である。
【0072】
また、測定部材222A、222B、222Cの測定結果に基づく制御部270による各部の制御については、後述する作用と共に説明する。
【0073】
-移動装置250-
移動装置250は、図2A図2B及び図5に示されるように、ベルト軸方向に並んでいる移動部材252A、移動部材252B、及び移動部材252Cを備えている。移動部材252Aは、剥離板100の一端部を筐体62に対して移動させる部材である。そして、移動部材252Cは、剥離板100の他端部を筐体62に対して移動させる部材である。さらに、移動部材252Bは、剥離板100の中央部を筐体62に対して移動させる部材である。つまり、移動部材252A、移動部材252B、及び移動部材252Cは、それぞれが独立して動くため、一の移動部材(例えば、移動部材252A)の動きが、他の移動部材(例えば、移動部材252B及び移動部材252C)の動きに影響しない。なお、移動部材252A、252B、252Cは、それぞれ移動部材の一例である。
【0074】
各移動部材252A、252B、252Cは、同様の構成とされているため、移動部材252Aを例にとって説明する。
【0075】
移動部材252Aは、図2A及び図2Bに示されるように、筐体62の貫通孔94、及び貫通孔96を貫通して、先端部(上端部)が挿入孔106に挿入されるピン254Aと、ピン254Aの基端部(下端部)が取り付けられているラックギア256Aとを備えている。さらに、移動部材252Aは、ラックギア256Aと噛合うピニオンギア258Aと、ピニオンギア258Aを回転させるステッピングモータ260A(以下「モータ260A」)とを備えている。
【0076】
ラックギア256Aは、上方から見て、定着ベルト70の短手方向(以下「ベルト短手方向」、図中矢印N方向)に延びるように配置されている(図2B参照)。
【0077】
この構成において、モータ260Aが、ピニオンギア258Aを回転(正逆回転)させることで、ラックギア256Aが、ベルト短手方向に移動するようになっている。そして、ラックギア256Aの移動に伴ってピン254Aが移動することで、剥離板100がベルト短手方向に移動するようになっている。これにより、定着ベルト70の外周面70Aとの距離L1が、変わるようになっている。
【0078】
移動部材252Aと同様に、移動部材252Bは、ピン254B、ラックギア256B、ピニオンギア258B、及びステッピングモータ260B(以下「モータ260B」)を備えている。さらに、移動部材252Cは、ピン254C、ラックギア256C、ピニオンギア258C、及びステッピングモータ260C(以下「モータ260C」)を備えている。
【0079】
また、制御部270によるモータ260A、260B、260Cの制御については、後述する作用と共に説明する。
【0080】
-締結装置280-
締結装置280は、図2Cに示されるように、仮止め状態の剥離板100のネジ86を、筐体62の各ネジ穴92A、92B、92Cにさらに捻じ込むための装置である。換言すると、締結装置280は、各ネジ穴92A、92B、92Cのそれぞれに仮締めされたネジ86を、本締めするための装置である。この締結装置280は、剥離板100を筐体62に固定するための各ネジ86を回すドライバ282A、282B、282Cを備えている。これらのドライバ282A、282B、282Cの上部には、ドライバ282A、282B、282Cを回転させるための駆動部284A、284B、284Cがそれぞれ設けられている。これらの駆動部284A、284B,284Cとしては、例えば、電動アクチュエータや電動モータ等が用いられる。また、駆動部284A、284B、284Cは、それぞれ図示せぬ昇降部に連結されている。この昇降部により、各組のドライバ及び駆動部が独立して装置上下方向(重力方向)に移動可能(すなわち、昇降可能)とされている。また、駆動部284A、284B、284Cの駆動は、制御部270によって制御されている。なお、ドライバ282A及び駆動部284Aの第1組は、剥離板100の一端部のネジ86を回し、ドライバ282B及び駆動部284Bの第2組は、剥離板100の中央部のネジ86を回し、ドライバ282C及び駆動部284Cの第3組は、剥離板100の他端部のネジ86を回すようになっている。つまり、各組の昇降は、それぞれ独立しており、一の組(例えば、第1組)の昇降が、他の組(例えば、第2組及び第3組)の昇降に影響しない。また、各組の駆動(ネジ86の締結)は、それぞれ独立しており、一の組の駆動(例えば、第1組によるネジ86の締結)が、他の組の駆動(例えば、第2組及び第3組によるネジ86の締結)に影響しない。
なお、ドライバ282A、282B、282Cはそれぞれ解除部材の一例である。
【0081】
-制御部270-
制御部270には、距離L1の実測値J1に対する規格値K1、距離L2の実測値J2に対する規格値K2、距離L3の実測値J3に対する規格値K3が入力(設定)されている。なお、ここでいう規格値とは、仮止め状態の剥離板100を筐体62に対して位置決めするときの制御目標となる値であり、予め決められた基準値に対して公差をもった幅のある値である。具体的には、規格値K1=3.51±0.3(mm)等である。この場合、規格値K1の基準値は3.51(mm)であり、公差は±0.3(mm)である。
【0082】
制御部270は、剥離板100が仮止め状態の場合に、各測定部材222A、222B、222Cによって測定された距離L1、L2、L3の実測値J1、J2、J3に基づいて、モータ260A、260B、260Cを制御するようになっている。換言すると、制御部270は、剥離板100の一端部のネジ86が仮締めされている場合に、測定部材222Aによって測定された距離L1の実測値J1が、規格値K1内に入るようにモータ260Aを制御して、剥離板100の一端部をベルト短手方向に移動させる。また、制御部270は、剥離板100の中央部のネジ86が仮締めされている場合に、測定部材222Bによって測定された距離L2の実測値J2が、規格値K2内に入るようにモータ260Bを制御して、剥離板100の中央部をベルト短手方向に移動させる。さらに、制御部270は、剥離板100の他端部のネジ86が仮締めされている場合に、測定部材222Cによって測定された距離L3の実測値J3が、規格値K3内に入るようにモータ260Cを制御して、剥離板100の他端部をベルト短手方向に移動させる。
【0083】
また、制御部270には、距離L1の実測値J10に対する目標値S1、距離L2の実測値J20に対する目標値S2、距離L3の実測値J30に対する目標値S3が入力(設定)されている。なお、ここでいう目標値とは、固定された剥離板100の距離Lが製品として(定着装置50としての機能を発揮させるために)満たすべき値であり、上記の規格値と異なる値である。また、目標値は、予め決められた基準値に対して公差をもった幅のある値である。具体的には、目標値S1=2.35±0.2(mm)等である。この場合、目標値S1の基準値は2.35(mm)であり、公差は±0.2(mm)である。
規格値は、ネジ86が仮締めされ、距離Lが規格値を充足している状態で、ネジ86を本締めすると、距離Lが目標値を充足するように(目標値を充足する可能性が高いように)、過去のデータに基づいて予め設定される。
【0084】
制御部270は、剥離板100が固定状態の場合に、各測定部材222A、222B、222Cによって測定された距離L1、L2、L3の実測値J10、J20、J30に基づいて、駆動部284A、284B、284C並びにモータ260A、260B、260Cを制御するようになっている。換言すると、制御部270は、剥離板100の一端部のネジ86が本締めされている場合に、測定部材222Aによって測定された距離L1の実測値J10が、目標値S1内に入っていない場合、当該ネジ86を仮締めされている状態に戻して駆動部284A及びモータ260Aを制御して剥離板100の一端部をベルト短手方向に移動させる。また、制御部270は、剥離板100の中央部のネジ86が本締めされている場合に、測定部材222Bによって測定された距離L2の実測値J20が、目標値S2内に入っていない場合、当該ネジ86を仮締めされている状態に戻して駆動部284B及びモータ260Bを制御して剥離板100の中央部をベルト短手方向に移動させる。さらに、制御部270は、剥離板100の他端部のネジ86が本締めされている場合に、測定部材222Cによって測定された距離L3の実測値J30が、目標値S3内に入っていない場合、当該ネジ86を仮締めされている状態に戻して駆動部284C及びモータ260Cを制御して剥離板100の他端部をベルト短手方向に移動させる。なお、制御部270による各部の制御については、後述する作用と共に説明する。
【0085】
(作用)
次に、定着装置の製造装置200を用いて定着装置50を製造する定着装置の製造方法について、まず、図13に示すフロー図を用いて仮止め状態の剥離板100を筐体62に固定するまでのフローを説明する。次に、図1に示すフロー図を用いて固定された剥離板100の距離Lを再調整するフローを説明する。なお、定着装置50が、調整装置210の治具に載せられていない状態では、測定部材222A、222B、222C、及びモータ260A、260B、260Cは、非稼働状態となっている。
【0086】
先ず、図示せぬ組立装置を用いて、剥離板100を除く図10に示す各部材を、筐体62に組み付けた後、ネジ86を仮締めして、剥離板100を筐体62に仮止めする。
【0087】
次に、剥離板100が仮止め状態の定着装置50を、調整装置210の治具に載せる。これにより、図2Aに示されるように、ピン254A、254B、254Cが、貫通孔94、及び貫通孔96を貫通し、ピン254A、254B、254Cの先端が剥離板100の挿入孔106に挿入される。
【0088】
剥離板100が仮止め状態の定着装置50が治具に載せられると、図示せぬスイッチがオン状態となり、図13に示すステップS100に移行して、制御部270が、測定部材222A、222B、222Cを稼動させる。そして、測定部材222Aは、図4に示されるように、剥離板100の一端部における剥離部104の先端104Bと、定着ベルト70の外周面70Aとの距離L1を測定する。また、測定部材222Bは、剥離板100の中央部における剥離部104の先端104Bと、定着ベルト70の外周面70Aとの距離L2を測定する。さらに、測定部材222Cは、剥離板100の他端部における剥離部104の先端104Bと、定着ベルト70の外周面70Aとの距離L3を測定する。
【0089】
そして、制御部270は、剥離板100が仮止め状態の定着装置50における距離L1の実測値J1と、距離L3の実測値J3とを入手する。制御部270が、距離L1の実測値J1と、距離L3の実測値J3を入手すると、ステップS200に移行する。
【0090】
ステップS200では、制御部270は、実測値J1と規格値K1とを比較し、さらに、実測値J3と規格値K3とを比較する。実測値J1、J3が、規格値K1、K3内である場合(実測値J1が規格値K1内、かつ実測値J3が規格値K3内である場合)は、ステップS300に移行し、実測値J1、J3が、規格値K1、K3外である場合(実測値J1が規格値K1外、及び/又は実測値J3が規格値K3外である場合)は、ステップS310に移行する。
【0091】
ステップS300では、制御部270は、剥離板100が仮止め状態の定着装置50における距離L2の実測値J2を入手する。そして、制御部270は、実測値J2と規格値K2とを比較する。実測値J2が、規格値K2内である場合は、ステップS490に移行し、実測値J2が、規格値K2外である場合は、ステップS410に移行する。
【0092】
一方、実測値J1、J3が、規格値K1、K3外で、ステップS310に移行した場合には、制御部270が、モータ260A、260Cを稼動させ、距離L1、L3の実測値J1、J3が、規格値K1、K3内に入るように、剥離板100を移動させる。具体的には、実測値J1が規格値K1外であり、実測値J3が規格値K3内である場合、制御部270は、実測値J1が規格値K1内に入るように、その差分について(実測値J1と規格値K1の差がなくなるように)モータ260Aのみを稼働させる。また、実測値J1が規格値K1内であり、実測値J3が規格値K3外である場合、制御部270は、実測値J3が規格値K3内に入るように、その差分について(実測値J3と規格値K3の差がなくなるように)モータ260Cのみを稼働させる。さらに、実測値J1が規格値K1外、かつ実測値J3が規格値K3外である場合、制御部270は、実測値J1が規格値K1内に入るように、その差分についてモータ260Aのみを稼働させた後、実測値J3が規格値K3内に入るように、その差分についてモータ260Cのみを稼働させる。この場合では、制御部270は、実測値J3が規格値K3内に入るように、その差分についてモータ260Cのみを稼働させた後、実測値J1が規格値K1内に入るように、その差分についてモータ260Aのみを稼働させてもよいし、モータ260A及び260Cを同時に稼働させてもよい。制御部270が剥離板100を移動させると、ステップS320に移行する。
【0093】
ステップS320で、制御部270が、測定部材222A、222B、222Cを稼働させる。そして、測定部材222A、222B、222Cが、距離L1、L2、L3を測定する。測定部材222A、222B、222Cが、距離L1、L2、L3を測定すると、実測値J1、J2、J3が更新され、ステップS200へ移行する。そして、距離L1、L3の実測値J1、J3が、規格値K1、K3内に入るまで、ステップS200、S310、S320の工程が繰り返される。
【0094】
一方、実測値J2が、規格値K2外で、ステップS410に移行した場合には、制御部270が、モータ260Bを稼動させ、距離L2の実測値J2が、規格値K2内に入るように、その差分について(実測値J2と規格値K2の差がなくなるように)剥離板100を移動させる。制御部270が剥離板100を移動させると、ステップS420に移行する。
【0095】
ステップS420で、制御部270が、測定部材222Bを稼動させる。そして、測定部材222Bが、距離L2を測定する。測定部材222Bが、距離L2を測定すると、実測値J2が更新され、ステップS300へ移行する。そして、実測値J2が、規格値K2内に入るまで、ステップS300、S410、S420の工程が繰り返される。
【0096】
以上の工程が終了して、距離L1、L2、L3の実測値J1、J2、J3が、規格値K1、K2、K3内に入ると(実測値J1が規格値K1内、かつ実測値J2が規格値K2内、かつ実測値J3が規格値K3内になると)、ステップS490へ移行し、制御部270は、締結装置280を稼働させて、各ネジ86を、各ネジ穴92A、92B、92Cにさらに捻じ込む。これにより、仮止め状態の剥離板100が筐体62に固定される(固定状態となる)。
【0097】
次に、図1に示すステップS500に移行して、制御部270が、測定部材222A、222B、222Cを再稼動させる。そして、測定部材222Aが距離L1を測定し、測定部材222Bが距離L2を測定し、測定部材222Cが距離L3を測定する。
【0098】
そして、制御部270は、剥離板100が固定された定着装置50における距離L1、L2、L3の実測値J10、J20、J30を入手する。制御部270が、距離L1、L2、L3の実測値J10、J20、J30を入手すると、ステップS600に移行する。
【0099】
ステップS600では、制御部270は、実測値J10と目標値S1とを比較し、実測値J20と目標値S2とを比較し、実測値J30と目標値S3とを比較する。実測値J10が目標値S1内であり、実測値J20が目標値S2内であり、実測値J30が目標値S3内である場合は、本作業を終了する。一方、実測値J10、J20、J30のいずれかが目標値外である場合は、ステップS700に移行する。
【0100】
ステップS700では、実測値が目標値外である箇所を数え、目標値外の箇所が固定箇所全体の半分以下の場合は、ステップS710に移行する。本実施形態では、固定箇所が3つのため、目標値外の箇所が1つの場合はステップS710に移行する。一方、目標値外の箇所が固定箇所全体の半分を超える場合は、本作業を中断し、手直し工程へ移行する。
【0101】
ステップS710では、実測値が目標値外である箇所(固定解除対象箇所)の剥離板100と筐体62との固定を解除する。具体的には、制御部270が、固定解除対象箇所を固定するネジ86に対応する締結装置280のドライバ及び駆動部を稼働させて、固定解除対象箇所を固定するネジ86を弛める。このように固定解除対象箇所を固定するネジ86を弛めることで剥離板100の固定解除対象箇所の固定が解除される。なお、締結装置280は、ネジ86を定められたトルクで一旦締め付けた後で、定められた時間ネジ86を弛める。これにより、剥離板100の固定解除対象箇所を固定するネジ86を仮締め状態とし、剥離板100を筐体62に対して仮止め状態に戻すことができる。例えば、実測値J10が目標値S1外の場合は、ドライバ282A及び駆動部284Aの第1組のみを稼働させて、剥離板100の一端部のネジ86を弛めて、ネジ穴92Aに本締めされたネジ86のみを仮締め状態に戻す。
【0102】
次に、ステップS720では、制御部270が、固定解除対象箇所に対応する移動部材のモータを稼動させ、距離Lの実測値が、目標値に入るように剥離板100を移動させる。具体的には、規格値と実測値との差を当該規格値に加えた値を更新規格値とし、この更新規格値内に入るように剥離板100を移動させる。例えば、実測値J10が目標値S1外の場合は、モータ260Aを稼働させ、規格値K1と実測値J10との差を規格値K1に加えた値を更新規格値U1として、更新規格値U1内に入るように剥離板100の一端部を移動させる。具体的には、剥離板100の一端部の実測値J10=2.77(mm)が目標値S1=2.35±0.2(mm)外であり、剥離板100の中央部及び他端部の実測値が共に目標値内である場合は、ドライバ282A及び駆動部284Aの第1組のみを稼働させて、剥離板100の一端部の本締めされたネジ86のみを仮締め状態に戻す。そして、規格値K1=3.51±0.3(mm)の基準値(3.51)と、実測値J10の差0.74(=3.51-2.77)を、規格値K1に加えた更新規格値U1=4.25±0.3(mm)内に入るように、モータ260Aのみを稼働させて剥離板100の一端部を移動させる。言うまでもないが、この間、剥離板100の中央部及び他端部のネジ86は、本締めされた状態が維持されている。
【0103】
次に、ステップS730では、剥離板100を移動させた状態を維持しつつ、弛めたネジ86を締め直して(仮締め状態に戻したネジ86のみを本締めして)、剥離板100を筐体62に再固定する。再固定が終了した後は、ステップS500に移行する。なお、距離L1、L2、L3の実測値J10、J20、J30が、それぞれ目標値S1、S2、S3内に入るまで、ステップS500、S600、S700、S710、S720、S730の工程が繰り返される。
【0104】
以上の工程が終了すると、距離L1、L2、L3の実測値J10、J20、J30が、目標値S1、S2、S3内に入った定着装置50が製造される。
【0105】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態に係る定着装置の製造装置200、及び定着装置の製造方法では、まず、距離Lの実測値を、剥離板100が筐体62に固定された複数箇所で測定する。次に、複数箇所のうち、実測値が目標値外にある箇所において(実測値が目標値外である箇所のみの)固定を解除する。そして、実測値が目標値に入るように剥離板100を移動させる。その後、固定が解除された箇所を再固定する。このように上記製造方法では、実測値が目標値外にある箇所において剥離板100と筐体62との固定を解除し、実測値が目標値に入るように剥離板100を移動させるため、実測値が目標値外の固定箇所があるときに、全ての箇所の固定を解除して剥離板100の位置を再調整する場合と比して、作業工数を低減することができる。
【0106】
具体的には、各測定部材によって測定された実測値に基づいて仮止め状態の剥離板100を移動させ、距離Lの実測値が規格値内に入った状態で、剥離板100を筐体62にネジ86で固定した場合は、その後、各測定部材によって距離Lを測定すると、実測値が目標値内である場合が多い。なぜなら、前述したように、規格値は、ネジ86が仮締めされ、距離Lが規格値を充足している状態で、ネジ86を本締めすると、距離Lが目標値内に入るように、各測定部材によって過去に測定されたデータ(実測値)に基づいて、予め設定されているからである。しかし、剥離板100を筐体62にネジ86で固定した後、各測定部材によって距離Lを測定すると、(1)筐体62における剥離板100の取付箇所の状態(フランジ90の反りや歪みの有無、フランジ90の板面におけるキズ等の凹凸の有無)や、(2)ネジ86の締め付け時の筐体62に対する剥離板100の位置ずれ(ネジ86を本締めする際に、ネジ86の頭部が剥離板100の板面上で擦れることによる筐体62に対する剥離板100の位置ずれ)等によって、剥離板100が固定された定着装置50の距離Lの実測値が目標値外となることがある。このように剥離板100の仮止め状態(ネジ86の仮締め状態)では規格値内に入っていた実測値が、剥離板100の固定(ネジ86の本締め)後に目標値に入っていない場合は、手直しのための作業が発生してしまう。
【0107】
これに対して、本実施形態では、前述したように、実測値が目標値外の固定箇所があるときに、対象となる箇所(当該固定箇所)のネジ86による固定を解除し、当該ネジ86を仮締め状態とした後、当該箇所の実測値が目標値に入るように剥離板100を移動させて、剥離板100の位置を再調整する。このため、本実施形態は、全ての箇所の固定を解除して剥離板100の位置を再調整する場合と比して、作業工数を低減することができる。
【0108】
また、本実施形態では、実測値が目標値外の固定箇所において、固定解除後に実測値が更新規格値に入るように剥離板100を移動させるため、実測値が規格値内に入るように剥離板100を移動させる場合と比して、実測値を目標値に近づけやすい。この理由について説明する。ネジ86の仮締め状態で距離Lの実測値を規格値内にした後、ネジ86を本締めすると、本来であれば、ネジ86の本締め状態の距離Lの実測値は、目標値内に入るはずである。それにもかかわらず、ネジ86の本締め状態の距離Lの実測値が目標値外である固定箇所は、上述した(1)、(2)等の外乱により影響を受けていると考えられる。そこで、この外乱による影響を、前記規格値と、ネジ86の本締め状態の距離Lの実測値との差として数値化し、再度ネジ86を本締めした際に、無くそうとするのが更新規格値(=前記差+前記規格値)である。実測値が目標値外の固定箇所のネジ86を本締め状態から仮締め状態に戻した後、当該箇所の剥離板100の部分を再度移動させる際に、実測値が更新規格値内に入るようにすれば、その後、ネジ86を本締めすると、外乱による影響を打ち消して実測値を目標値に近づけやすくなる。
【0109】
また、本実施形態では、筐体62と剥離板100を再固定した後で、距離Lの実測値を全ての箇所で再測定している。このため、一部の箇所のみ再測定する場合と比して、剥離板100の実測値を目標値に近づけやすい。
【0110】
前述の実施形態では、調整装置210で仮止め状態の剥離板100の筐体62に対する位置を調整し、剥離板100を筐体62に固定した後、引き続き調整装置210を用いて剥離板100の筐体62に対する固定位置を再測定(再検査)しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、既に剥離板100と筐体62が既に固定された状態の定着装置50の距離Lの検査に用いてもよい。具体的には、剥離板100と筐体62が固定状態の定着装置50を前述の実施形態同様に調整装置210にセットし、図1に示すフローを実行する。これにより、前述の実施形態と同等の作用を得ることができる。
【0111】
前述の実施形態では、ステップS700において、実測値が目標値外である箇所を数え、目標値外の箇所が固定箇所全体の半分以下の場合は、ステップS710に移行するようにしているが、本発明はこれに限定されない。例えば、実測値が目標値外である箇所が一箇所でもあれば、ステップS710に移行させもよいし、全ての箇所において実測値が目標値外でもステップS710に移行させてもよい。また、実測値が目標値外である箇所が一箇所を超えた場合は、手直し工程へ移行させてもよい。
【0112】
前述の実施形態では、剥離板100の筐体62に対する固定箇所を3箇所としているが、本発明はこれに限定されてない。例えば、剥離板100の筐体62に対する固定箇所を4箇所以上としてもよい。
【0113】
前述の実施形態では、距離L1、L2、L3の実測値J10、J20、J30が、それぞれ目標値S1、S2、S3内に入るまで、ステップS500、S600、S700、S710、S720、S730の工程を繰り返すが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記工程を予め定められた回数繰り返しても、実測値J10、J20、J30が、それぞれ目標値S1、S2、S3内に入らない場合は、作業を中断し、手直し工程へ移行してもよい。
【0114】
なお、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、定着装置50は、電磁誘導加熱方式を採用していたが、例えば、ハロゲンヒータを用いる等の他の加熱方式を採用してもよい。
【0115】
また、上記実施形態では、測定部材を複数(3個)設けたが、一個の測定部材をベルト軸方向に移動させることで、複数箇所(3箇所)の距離Lを測定してもよい。
【符号の説明】
【0116】
50 定着装置
62 筐体
70 定着ベルト(加熱部の一例)
86 ネジ(ねじ部材の一例)
100 剥離板(板の一例)
200 定着装置の製造装置
222A 測定部材(測定部材の一例)
222B 測定部材(測定部材の一例)
222C 測定部材(測定部材の一例)
252A 移動部材(移動部材の一例)
252B 移動部材(移動部材の一例)
252C 移動部材(移動部材の一例)
270 制御部
282A ドライバ(解除部材の一例)
282B ドライバ(解除部材の一例)
282C ドライバ(解除部材の一例)


図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13