(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】充放電制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240528BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/02 G
(21)【出願番号】P 2020162619
(22)【出願日】2020-09-28
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】密岡 重日
(72)【発明者】
【氏名】長内 弘樹
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-090376(JP,A)
【文献】特開2017-220966(JP,A)
【文献】特開2010-068558(JP,A)
【文献】特開2014-171369(JP,A)
【文献】特開2012-120347(JP,A)
【文献】特開2015-82350(JP,A)
【文献】特開2017-103996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0322193(US,A1)
【文献】国際公開第2015/156210(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110417068(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置と、
電気負荷と、
複数の電池モジュールと、
前記複数の電池モジュールが並列に接続された第1の接続路と、
前記第1の接続路と前記発電装置及び前記電気負荷との間に設けられ、前記第1の接続路と前記発電装置又は前記電気負荷とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第1のスイッチと、
前記発電装置又は前記電池モジュールから電力が供給される制御装置と、を備え、
前記電池モジュールは、
蓄電池と、
前記蓄電池と前記第1の接続路とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第2のスイッチと、
前記蓄電池の状態を管理し、前記第2のスイッチの切替を制御する蓄電池管理装置と、を有し、
前記蓄電池管理装置と前記第1の接続路との間には、前記蓄電池管理装置と前記第1の接続路とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第3のスイッチが前記蓄電池管理装置ごとに少なくとも1つ設けられ、
前記制御装置は、前記第1のスイッチ及び前記第3のスイッチの切替を制御するよう構成され、
前記複数の電池モジュールの充電を行う場合に、
前記蓄電池の電圧値が最も低い電池モジュールを第mの電池モジュール、前記蓄電池の電圧値が2番目に低い電池モジュールを第m+1の電池モジュールとしたとき、
充電中の前記第mの電池モジュールの蓄電池の電圧値が第m+1の電池モジュールの電圧値以上になったことを条件に、前記第m+1の電池モジュールに対応する前記第2のスイッチ及び前記第3のスイッチをオン状態に切り替えることを特徴とする充放電制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記発電装置の発電電圧が、前記複数の電池モジュールのいずれの蓄電池の電圧値よりも大きい第1の電圧以上である場合、前記第1のスイッチを前記第1の接続路と前記発電装置とが接続されるオン状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の充放電制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記複数の電池モジュールの全ての蓄電池の電圧値が、前記蓄電池を満充電とみなす満充電判定値以上であり、かつ、前記発電装置の発電電圧が、前記第1の電圧よりも小さい第2の電圧未満である場合、前記第1のスイッチをオフ状態に切り替えることを特徴とする請求項2に記載の充放電制御システム。
【請求項4】
前記発電装置は、再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の充放電制御システム。
【請求項5】
前記電気負荷は、発光体を負荷として有する装置によって構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の充放電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、並列に接続されたバッテリパックが同時に使用されると、負荷への配線距離が相対的に近いバッテリパックが、相対的に遠いバッテリパックよりも、その配線抵抗の小ささに応じた分だけ多くの電流が出力されてしまうため、各バッテリパックは、配線距離に伴って劣化の進行速度に差が生じてしまう虞があり、これを抑制することを目的とした電動車両の駆動制御装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の電動車両の駆動制御装置は、並列接続された複数のバッテリパックのうち、いずれか1つを駆動用バッテリパックとして選択するバッテリ制御ユニットと、選択されたバッテリパックからモータに電力を供給する電力供給部と、選択されたバッテリパックの電力容量情報を取得する電力容量取得部と、を含む。特許文献1に記載の電動車両の駆動制御装置は、選択されたバッテリパックの電力容量が所定値以下となった場合、バッテリ制御ユニットが、選択されたバッテリパック以外のバッテリパックを駆動用バッテリパックとして選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の電動車両の駆動制御装置では、電力容量が所定値以下となった場合に駆動用バッテリパックを切り替えるのみで、例えばバッテリパックの使用頻度等を考慮してバッテリパックの劣化の偏りを抑制することについては何ら考慮されていなかった。
【0006】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、複数の電池モジュール間における使用頻度の偏りを抑制し、複数の電池モジュール間における劣化の偏りを抑制することができる充放電制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、発電装置と、電気負荷と、複数の電池モジュールと、前記複数の電池モジュールが並列に接続された第1の接続路と、前記第1の接続路と前記発電装置及び前記電気負荷との間に設けられ、前記第1の接続路と前記発電装置又は前記電気負荷とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第1のスイッチと、前記発電装置又は前記電池モジュールから電力が供給される制御装置と、を備え、前記電池モジュールは、蓄電池と、前記蓄電池と前記第1の接続路とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第2のスイッチと、前記蓄電池の状態を管理し、前記第2のスイッチの切替を制御する蓄電池管理装置と、を有し、前記蓄電池管理装置と前記第1の接続路との間には、前記蓄電池管理装置と前記第1の接続路とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第3のスイッチが前記蓄電池管理装置ごとに少なくとも1つ設けられ、前記制御装置は、前記第1のスイッチ及び前記第3のスイッチの切替を制御するよう構成され、前記複数の電池モジュールの充電を行う場合に、前記蓄電池の電圧値が最も低い電池モジュールを第mの電池モジュール、前記蓄電池の電圧値が2番目に低い電池モジュールを第m+1の電池モジュールとしたとき、充電中の前記第mの電池モジュールの蓄電池の電圧値が第m+1の電池モジュールの電圧値以上になったことを条件に、前記第m+1の電池モジュールに対応する前記第2のスイッチ及び前記第3のスイッチをオン状態に切り替える構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の電池モジュール間における使用頻度の偏りを抑制し、複数の電池モジュール間における劣化の偏りを抑制することができる充放電制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る充放電制御システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る充放電制御システムにおける各電池モジュールの電圧値の遷移を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る充放電制御システムによって実行される充電制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る充放電制御システムの動作の一例を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係る充放電制御システムは、発電装置と、電気負荷と、複数の電池モジュールと、複数の電池モジュールが並列に接続された第1の接続路と、第1の接続路と発電装置及び電気負荷との間に設けられ、第1の接続路と発電装置又は電気負荷とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第1のスイッチと、発電装置又は電池モジュールから電力が供給される制御装置と、を備え、電池モジュールは、蓄電池と、蓄電池と第1の接続路とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第2のスイッチと、蓄電池の状態を管理し、第2のスイッチの切替を制御する蓄電池管理装置と、を有し、蓄電池管理装置と第1の接続路との間には、蓄電池管理装置と第1の接続路とを接続するオン状態又は切断するオフ状態を切替可能な第3のスイッチが蓄電池管理装置ごとに少なくとも1つ設けられ、制御装置は、第1のスイッチ及び第3のスイッチの切替を制御するよう構成され、複数の電池モジュールの充電を行う場合に、蓄電池の電圧値が最も低い電池モジュールを第mの電池モジュール、蓄電池の電圧値が2番目に低い電池モジュールを第m+1の電池モジュールとしたとき、充電中の第mの電池モジュールの蓄電池の電圧値が第m+1の電池モジュールの電圧値以上になったことを条件に、第m+1の電池モジュールに対応する第2のスイッチ及び第3のスイッチをオン状態に切り替えることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る充放電制御システムは、複数の電池モジュール間における使用頻度の偏りを抑制し、複数の電池モジュール間における劣化の偏りを抑制することができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る充放電制御システムについて図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施例に係る充放電制御システム1は、発電装置2と、電気負荷3と、複数の電池モジュール4と、第1の接続路5と、第1のスイッチ6と、制御装置7と、を含んで構成されている。
【0013】
本実施例に係る充放電制御システム1においては、電池モジュール4が1からn個設けられている。本実施例においては、複数の電池モジュール4のそれぞれを区別するために複数の電池モジュール4をそれぞれ電池モジュール4(a)から4(n)で示すこととする。電池モジュール4(a)から4(n)のうちいずれかの電池モジュールを特定せずに、1つの電池モジュールを示す場合には単に「電池モジュール4」と記す。
【0014】
発電装置2は、例えば太陽光発電装置や風力発電装置等の再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置によって構成されている。再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置としては、太陽光発電装置や風力発電装置に限らず、水力、地熱、バイオマス等の再生可能エネルギを利用した発電装置等も適用可能である。
【0015】
電気負荷3は、例えば照明や電光掲示板等のように、発光体を負荷として有する装置によって構成されている。電気負荷3は、発光体を負荷として有する装置に限られない。
【0016】
電池モジュール4(a)から4(n)は、第1の接続路5に対して互いに並列に接続されている。各電池モジュール4はそれぞれ、蓄電池41と、第2のスイッチ42と、蓄電池管理装置43と、を有している。
【0017】
本実施例においては、電池モジュール4(a)から4(n)のいずれの蓄電池41、第2のスイッチ42及び蓄電池管理装置43であるかを区別するため、電池モジュール4(a)から4(n)のそれぞれに対応する蓄電池41、第2のスイッチ42及び蓄電池管理装置43を、蓄電池41(a)から41(n)、第2のスイッチ42(a)から42(n)及び蓄電池管理装置43(a)から43(n)で示す。蓄電池41(a)から41(n)、第2のスイッチ42(a)から42(n)及び蓄電池管理装置43(a)から43(n)について、電池モジュール4(a)から4(n)のいずれのものであるかを特定せずに、1つの蓄電池、第2のスイッチ及び蓄電池管理装置を示す場合にはそれぞれ単に「蓄電池41」、「第2のスイッチ42」、「蓄電池管理装置43」と記す。
【0018】
蓄電池41は、例えばリチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池によって構成されている。蓄電池41としては、例えば車両に搭載されていたリチウムイオンバッテリをリユースしたものを用いることもできる。
【0019】
第2のスイッチ42は、蓄電池41と第1の接続路5とを接続するオン状態、又は、切断するオフ状態を切替可能なスイッチである。第2のスイッチ42のオン状態又はオフ状態の切替は、蓄電池管理装置43よって制御されるようになっている。
【0020】
蓄電池管理装置43は、蓄電池41の電圧値や残容量(SOC:state of charge)など、蓄電池41の状態を監視及び管理するようになっている。蓄電池管理装置43は、第2のスイッチ42のオン状態又はオフ状態の切替を制御するようになっている。蓄電池管理装置43は、蓄電池41の充放電電流に基づきSOCを算出する。
【0021】
蓄電池管理装置43は、制御装置7に接続されており、蓄電池41の電圧値やSOC等の各種情報を制御装置7に送信可能に構成されている。
【0022】
蓄電池管理装置43と第1の接続路5との間には、蓄電池管理装置43と第1の接続路5とを接続するオン状態、又は、切断するオフ状態を切替可能な第3のスイッチ8が設けられている。第3のスイッチ8は、蓄電池管理装置43ごとに少なくとも1つ設けられている。本実施例では、蓄電池管理装置43ごとに第3のスイッチ8が1つ設けられた例を説明するが、蓄電池管理装置43ごとに第3のスイッチ8が2つ以上設けられていてもよい。
【0023】
本実施例においては、蓄電池管理装置43(a)から43(n)のいずれの第3のスイッチ8であるかを区別するため、蓄電池管理装置43(a)から43(n)のそれぞれに対応する第3のスイッチ8を、第3のスイッチ8(a)から8(n)で示す。第3のスイッチ8(a)から8(n)について、蓄電池管理装置43(a)から43(n)のいずれのものであるかを特定せずに、1つの第3のスイッチを示す場合には単に「第3のスイッチ8」と記す。
【0024】
第3のスイッチ8のオン状態又はオフ状態の切替は、制御装置7よって制御されるようになっている。
【0025】
第1の接続路5には、電池モジュール4(a)から4(n)が並列に接続されている。第1の接続路5の一端には、第1のスイッチ6が接続されている。
【0026】
第1のスイッチ6は、第1の接続路5と発電装置2及び電気負荷3との間に設けられ、第1の接続路5と発電装置2又は電気負荷3とを接続するオン状態、又は、切断するオフ状態を切替可能なスイッチである。
【0027】
すなわち、第1のスイッチ6は、第1の接続路5と発電装置2とを接続する発電オン状態、又は、第1の接続路5と電気負荷3とを接続する放電オン状態のいずれかのオン状態と、発電装置2及び電気負荷3のいずれとも第1の接続路5を接続しないオフ状態と、に切替可能である。
【0028】
第1のスイッチ6の発電オン状態、放電オン状態又はオフ状態の切替は、制御装置7よって制御されるようになっている。充放電制御システム1の初回起動時等、制御装置7の電源投入がなされていない状態においては、充放電制御システム1を起動するための電力を確保する観点から第1のスイッチ6が発電オン状態に切り替えられているのが好ましい。
【0029】
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。コンピュータユニットのROMには、各種定数等とともに、当該コンピュータユニットを制御装置7として機能させるためのプログラムが格納されている。すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、コンピュータユニットは、本実施例における制御装置7として機能する。
【0030】
制御装置7は、第1の接続路5に接続されており、第1の接続路5を介して発電装置2又は電池モジュール4(a)から4(n)の少なくとも1つから電力が供給されるようになっている。制御装置7は、第1のスイッチ6及び第3のスイッチ8のオン状態又はオフ状態の切替を制御するようになっている。
【0031】
制御装置7には、各種センサ9が接続されている。本実施例においては、各種センサ9として、発電装置2の種類や電気負荷3の種類に応じて必要なセンサが接続されるようになっており、例えば、風力センサ、照度センサ、温度センサ等の外部環境の変化を検出可能なセンサ類が接続されている。また、制御装置7は、電気負荷3が照明である場合には、照明時間や照明時刻を管理するタイマを備えていてもよい。
【0032】
(充電制御)
次に、本実施例に係る充放電制御システム1における充電制御について説明する。
【0033】
本実施例において、n個の電池モジュール4の充電を行う場合に、これら全ての電池モジュール4のうち、蓄電池41の電圧値が最も低い電池モジュール4を第mの電池モジュール4(以下、「電池モジュール4(m)」という)、蓄電池41の電圧値が2番目に低い電池モジュール4を第m+1の電池モジュール4(以下、「電池モジュール4(m+1)」という)とすると、制御装置7は、次のような充電制御を行うようになっている。
【0034】
制御装置7は、n個の電池モジュール4の充電を行う場合に、電池モジュール4(m)に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替え、電池モジュール4(m)の充電を開始し、電池モジュール4(m)以外の電池モジュール4に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオフ状態に切り替える。
【0035】
制御装置7は、充電中の電池モジュール4(m)の蓄電池41の電圧値が電池モジュール4(m+1)の電圧値以上になったことを条件に、電池モジュール4(m+1)に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替え、電池モジュール4(m+1)の充電を開始する。
【0036】
このとき、電池モジュール4(m+1)の蓄電池41は、電池モジュール4(m)の蓄電池41と同一の電圧値となることから、電池モジュール4(m)と同様、蓄電池41の電圧値が最も低い電池モジュール4となる。
【0037】
これにより、上述の電池モジュール4(m+1)が新たな電池モジュール4(m)となり、上述の電池モジュール4(m+1)の次に電圧値の低い電池モジュール4、すなわち、充電が開始されていない電池モジュール4のうち蓄電池41の電圧値が最も低い電池モジュール4が新たな電池モジュール4(m+1)となる。
【0038】
制御装置7は、充電中の新たな電池モジュール4(m)の蓄電池41の電圧値が新たな電池モジュール4(m+1)の電圧値以上になったことを条件に、新たな電池モジュール4(m+1)に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替え、新たな電池モジュール4(m+1)の充電を開始する。
【0039】
制御装置7は、n個の電池モジュール4のうち満充電でない電池モジュール4の全てが満充電となるまで、上記のような充電の切替を行う。
【0040】
次に、
図2を参照して、本実施例の充電制御について、電池モジュールが4個(n=4)の場合であっていずれの電池モジュール4も満充電でない場合を例に説明する。
【0041】
図2に示すように、制御装置7は、n個の電池モジュール4の充電を行う場合、これら電池モジュール4の蓄電池41の電圧値(以下、「電池モジュール4の電圧値」ともいう)を低い順に、第1の充電切替閾値、第2の充電切替閾値、第n-1の充電切替閾値、第nの充電切替閾値として設定する。
【0042】
図2では、これら充電切替閾値に対応して蓄電池41の電圧値が低い順に、第1の電池モジュール4、第2の電池モジュール4、第n-1の電池モジュール4、第nの電池モジュール4として、各電圧値を示す棒グラフの下に「1」、「2」、「n-1」、「n」を明記している。
【0043】
制御装置7は、
図2(a)に示すように電圧値が最も低い第1の電池モジュール4(上述の電池モジュール4(m)に相当)から充電を開始する。そして、制御装置7は、
図2(b)に示すように第1の電池モジュール4の電圧値が第2の充電切替閾値以上になると、第2の電池モジュール4(上述の電池モジュール4(m+1)に相当)に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替え、第2の電池モジュール4の充電を開始する。これにより、第1の電池モジュール4と第2の電池モジュール4とがともに充電中となる。
【0044】
制御装置7は、
図2(c)に示すように充電中の第2の電池モジュール4(上述の電池モジュール4(m)に相当)の電圧値が第n-1の充電切替閾値以上になると、第n-1の電池モジュール4(上述の電池モジュール4(m+1)に相当)に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替え、第n-1の電池モジュール4の充電を開始する。これにより、第1の電池モジュール4、第2の電池モジュール4及び第n-1の電池モジュール4が充電中となる。
【0045】
制御装置7は、
図2(d)に示すように充電中の第n-1の電池モジュール4(上述の電池モジュール4(m)に相当)の電圧値が第nの充電切替閾値以上になると、第nの電池モジュール4(上述の電池モジュール4(m+1)に相当)に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替え、第nの電池モジュール4の充電を開始する。これにより、第1の電池モジュール4、第2の電池モジュール4、第n-1の電池モジュール4及び第nの電池モジュール4の全てが充電中となり、その後、全ての電池モジュール4が
図2(e)に示すように満充電に至る。
【0046】
次に、
図3を参照して、本実施例に係る充放電制御システム1によって実行される充電制御の処理の流れについて説明する。
【0047】
図3に示す充電制御における各処理の主体は、制御装置7又は蓄電池管理装置43である。
図3に示す充電制御は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0048】
図3に示すように、制御装置7は、発電装置2における発電電圧が第1の電圧以上であるか否かを判定する(ステップS1)。「第1の電圧」は、電池モジュール4を充電可能な発電電圧であり、少なくとも満充電の電池モジュール4の電圧値よりも大きい電圧であって、予め実験的に求めて制御装置7のROMに記憶されている。
【0049】
制御装置7は、ステップS1において発電装置2における発電電圧が第1の電圧以上でないと判定した場合には、処理をステップS12に移行する。制御装置7は、ステップS1において発電装置2における発電電圧が第1の電圧以上であると判定した場合には、第1のスイッチ6を発電オン状態に切り替える(ステップS2)。
【0050】
なお、充放電制御システム1の初回起動時など、制御装置7に電力が供給されていない場合には、第1のスイッチ6が発電オン状態に切り替えられているものとする。これにより、充放電制御システム1が停止していても、発電装置2が発電電圧を出力すれば、外部電源に依らずに、充放電制御システム1を起動させることができる。
【0051】
その後、制御装置7は、全ての電池モジュール4の第3のスイッチ8をオン状態に切り替え、蓄電池管理装置43が全ての電池モジュール4の電圧値を読み出す(ステップS3)。ステップS3の処理は、充放電制御システム1の初回起動時のみ実行される。
【0052】
充放電制御システム1の初回起動時は、全ての蓄電池管理装置43が未起動のため、各蓄電池41の電圧値が読み出せない。このため、充放電制御システム1の初回起動時には、ステップS3の処理を実行して全ての電池モジュール4の電圧値を読み出すこととしている。
【0053】
なお、充放電制御システム1の初回起動後は、各蓄電池管理装置43の起動中、又は、各蓄電池管理装置43がオフされるタイミングで各蓄電池41の電圧値が読み出され、制御装置7のRAMに記憶される。
【0054】
また、制御装置7は、起動していない電池モジュール4がある場合には、記憶した各電圧値のうち、起動していない電池モジュール4の電圧値を、自然放電分を予測して補正してもよい。さらに、制御装置7は、次回、電池モジュール4の電圧値を読み出した際に、補正した電圧値と実際の電圧値とを比較することで、補正量を変更したり、実際の電圧値が補正した電圧値よりも所定値以上低い場合には当該電池モジュール4が劣化していると判定したりしてもよい。
【0055】
次いで、制御装置7は、各電池モジュール4の電圧値を低い順に、第1、第2・・・第nの充電切替閾値として制御装置7のRAMに記憶する(ステップS4)。「n」は、電池モジュール4の数である。
【0056】
その後、制御装置7は、変数mを「1」に設定する、すなわちm=1とする(ステップS5)。変数mは、後述するステップS7以降で使用される。
【0057】
次いで、制御装置7は、電圧値が満充電判定値未満の電池モジュール4があるか否かを判定する(ステップS6)。満充電判定値は、電池モジュール4の蓄電池41を満充電とみなすことのできる電圧値である。
【0058】
制御装置7は、ステップS6において電圧値が満充電判定値未満の電池モジュール4がないと判定した場合には、処理をステップS12に移行する。この場合、制御装置7は、全ての電池モジュール4の電圧値が満充電判定値以上であると判断する。
【0059】
ステップS12において、制御装置7は、発電装置2における発電電圧が第2の電圧以上であるか否かを判定する。「第2の電圧」は、上述した「第1の電圧」よりも小さく、かつ、満充電の電池モジュール4の電圧値よりも大きい電圧である。
【0060】
制御装置7は、ステップS12において発電装置2における発電電圧が第2の電圧以上であると判定した場合には、本充電制御を終了して次回ループの充電制御を実行する。このとき、充放電制御システム1では、フロート充電が実行、維持される。フロート充電とは、充電電圧のみが蓄電池41に印加され、蓄電池41には充電電流が流れない状態で充電を行う充電方式である。フロート充電によって蓄電池41を長持ちさせることができる。
【0061】
制御装置7は、ステップS12において発電装置2における発電電圧が第2の電圧以上でないと判定した場合、すなわち、発電電圧が第2の電圧未満であると判定した場合には、第1のスイッチ6をオフ状態に切り替えて(ステップS13)、本充電制御を終了する。
【0062】
ステップS13において第1のスイッチ6をオフ状態に切り替えるのは、次の理由による。すなわち、発電電圧が第2の電圧未満であると、フロート充電を維持するための充電電圧を出力できないためである。さらに、発電電圧が満充電判定値より低い場合には、発電装置2側に電流が逆流するおそれもあり、この逆流による発電装置2の故障を回避するためである。また、蓄電池41から無駄な放電が発生しないようにするためでもある。
【0063】
制御装置7は、ステップS6において電圧値が満充電判定値未満の電池モジュール4があると判定した場合には、電圧値が第mの充電切替閾値以下の電池モジュール4の第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替える(ステップS7)。これにより、全ての電池モジュール4のうち、電圧値が低い電池モジュール4に対して優先的に充電を行うことができる。
【0064】
次いで、制御装置7は、本充電制御の初回ループにおいて、電圧値が第mの充電切替閾値以下の電池モジュール4以外の電池モジュール4の第3のスイッチ8をオフ状態に切り替える(ステップS8)。ステップS8の処理は、本充電制御の初回ループ以外の場合は省略される。これは、電圧値が第mの充電切替閾値以下の電池モジュール4以外の電池モジュール4で第3のスイッチ8がオン状態になっていると、余計な電力消費が生ずるためである。
【0065】
続いて、制御装置7は、充電中の電池モジュール4の電圧値が第(m+1)の充電切替閾値以上か否かを判定する(ステップS9)。充電中の電池モジュール4とは、上述のステップS7で第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8がオン状態に切り替えられた電池モジュール4の全てである。これにより、充電中の全ての電池モジュール4が第nの充電切替閾値以上となるまで充電が継続される。
【0066】
制御装置7は、ステップS9において充電中の電池モジュール4の電圧値が第(m+1)の充電切替閾値以上でないと判定した場合には、ステップS6に処理を戻す。
【0067】
制御装置7は、ステップS9において充電中の電池モジュール4の電圧値が第(m+1)の充電切替閾値以上であると判定した場合には、変数mが充放電制御システム1の電池モジュール4の数「n」よりも小さいか否かを判定する(ステップS10)。
【0068】
制御装置7は、ステップS10において変数mが「n」よりも小さくないと判定した場合には、ステップS6に処理を戻す。
【0069】
制御装置7は、ステップS10において変数mが「n」よりも小さいと判定した場合には、変数mを「+1」して(ステップS11)、ステップS6に処理を戻す。これにより、電圧の低い電池モジュール4の順に充電が行われる。
【0070】
このように、上述したステップS6からステップS9、ステップS10又はステップS11の処理を繰り返すことで、最も電圧値の低い電池モジュール4から充電を開始して、以後、電圧値の低い電池モジュール4の順に充電を開始し、満充電判定値以下の電池モジュール4の全てについて大電流が流れることを抑制しつつ、電圧値を均等化させて充電することができる。
【0071】
例えば、ステップS4で、電圧値が第1の充電切替閾値として記憶された電池モジュール4を第1の電池モジュール、第2の充電切替閾値として記憶された電池モジュール4を第2の電池モジュールとすると、次の通りである。
【0072】
すなわち、m=1であれば、最も電圧値の低い第1の電池モジュールから充電が開始され、第1の電池モジュールの電圧値が第2の充電切替閾値以上になると、第2の電池モジュールの充電が開始される。
【0073】
これにより、各電池モジュール4の電圧値が近いタイミングで第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替えることができ、各電池モジュール4間を接続した際の電圧変動を抑制することができる。さらに、大電流が流れることも抑制しつつ、各電池モジュール4の蓄電池41の電圧値を均等にすることができる。
【0074】
次に、
図4を参照して、本実施例に係る充放電制御システム1の動作の一例について、電池モジュール4(a)、4(b)及び4(n)を例に説明する。
【0075】
図4に示すように、時刻t1前においては、第1のスイッチ6が発電オン状態に切り替えられており、発電装置2が発電可能となっておらず、各電池モジュール4の第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8がオフ状態に切り替えられている状態である。
【0076】
時刻t1において、発電装置2における発電電圧が第1の電圧以上となると、制御装置7によって各電池モジュール4の電圧値を低い順に、第1、第2・・・第nの充電切替閾値として記憶される。
図4においては、電池モジュール4(a)、電池モジュール4(b)、電池モジュール4(n)の順に電圧値が低い。したがって、時刻t1時点での電池モジュール4(a)の電圧値が第1の充電切替閾値、電池モジュール4(b)の電圧値が第2の充電切替閾値、電池モジュール4(n)の電圧値が第nの充電切替閾値として決定される。
【0077】
また、時刻t1において、電池モジュール4(a)の第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8がオン状態に切り替えられる。これにより、電池モジュール4(a)の充電が開始される。
【0078】
その後、時刻t2において、電池モジュール4(a)の電圧値が、時刻t1で決定された電池モジュール4(b)の電圧値である第2の充電切替閾値以上となると、電池モジュール4(b)の第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8がオン状態に切り替えられる。これにより、電池モジュール4(b)の充電が開始される。
【0079】
その後、時刻t3において、電池モジュール4(b)の電圧値が、時刻t1で決定された電池モジュール4(n)の電圧値である第nの充電切替閾値以上となると、電池モジュール4(n)の第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8がオン状態に切り替えられる。これにより、電池モジュール4(n)の充電が開始される。
【0080】
その後、時刻t4において、発電装置2における発電電圧が第2の電圧以上の状態で、電池モジュール4(a)、4(b)及び4(n)の電圧値がそれぞれ満充電判定値以上となると、フロート充電に移行する。
【0081】
その後、電池モジュール4(a)、4(b)及び4(n)の電圧値がそれぞれ満充電判定値以上であっても、時刻t5において、発電装置2における発電電圧が第2の電圧を下回ると、第1のスイッチ6がオフ状態に切り替えられ、フロート充電が停止される。
【0082】
以上のように、本実施例に係る充放電制御システム1は、複数の電池モジュール4の充電を行う場合に、蓄電池41の電圧値が最も低い電池モジュールを第mの電池モジュール4(m)、蓄電池41の電圧値が2番目に低い電池モジュールを第m+1の電池モジュール4(m+1)としたとき、充電中の電池モジュール4(m)の蓄電池41の電圧値が電池モジュール4(m+1)の電圧値以上になったことを条件に、電池モジュール4(m+1)に対応する第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替えるよう構成されている。
【0083】
この構成により、本実施例に係る充放電制御システム1は、各電池モジュール4の電圧値が近いタイミングで第2のスイッチ42及び第3のスイッチ8をオン状態に切り替えることができ、各電池モジュール4間を接続した際の電圧変動を抑制することができる。さらに、大電流が流れることも抑制しつつ、各電池モジュール4の蓄電池41の電圧値を均等にすることができる。これにより、複数の電池モジュール4間における使用頻度の偏りを抑制し、複数の電池モジュール4間における劣化の偏りを抑制することができる。
【0084】
また、本実施例に係る充放電制御システム1は、発電装置2の発電電圧が、複数の電池モジュール4のいずれの蓄電池41の電圧値よりも大きい第1の電圧以上である場合、第1のスイッチ6を発電オン状態に切り替えるよう構成されている。
【0085】
この構成により、本実施例に係る充放電制御システム1は、発電電圧がいずれかの蓄電池41の電圧値よりも低い場合に電池モジュール4側から発電装置2側に電流が逆流してしまうことを防止でき、電流の逆流によって発電装置2が故障してしまうことを防止することができる。
【0086】
また、本実施例に係る充放電制御システム1は、複数の電池モジュール4の全ての蓄電池41の電圧値が満充電判定値以上であり、かつ、発電装置2の発電電圧が第1の電圧よりも小さい第2の電圧未満である場合、第1のスイッチ6をオフ状態に切り替えるよう構成されている。
【0087】
この構成により、本実施例に係る充放電制御システム1は、発電電圧が第2の電圧未満であると、フロート充電を維持するための充電電圧を出力できないことから、発電装置2と電池モジュール4との間における不要な接続を回避することができる。
【0088】
また、上記構成により、本実施例に係る充放電制御システム1は、発電電圧が満充電判定値より低い場合に発電装置2側に電流が逆流することによる発電装置2の故障を回避することができる。さらに、蓄電池41からの無駄な放電を抑制することもできる。
【0089】
また、本実施例に係る充放電制御システム1は、発電装置2が再生可能エネルギを利用して発電を行う発電装置によって構成されている。これにより、本実施例に係る充放電制御システム1を屋外に独立して設置することができる。
【0090】
また、本実施例に係る充放電制御システム1は、電気負荷3が発光体を負荷として有する装置によって構成されている。これにより、本実施例に係る充放電制御システム1を、屋外に独立して設置される照明や電光掲示板に用いることができる。
【0091】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0092】
1 充放電制御システム
2 発電装置
3 電気負荷
4、4(m)、4(m+1) 電池モジュール
4(m) 電池モジュール(第mの電池モジュール)
4(m+1) 電池モジュール(第m+1の電池モジュール)
5 第1の接続路
6 第1のスイッチ
7 制御装置
8 第3のスイッチ
9 各種センサ
41 蓄電池
42 第2のスイッチ
43 蓄電池管理装置