(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】タイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/04 20060101AFI20240528BHJP
B29C 35/04 20060101ALI20240528BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
B29C33/04
B29C35/04
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2020169510
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永緑 健一
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/090042(WO,A1)
【文献】特開昭57-87347(JP,A)
【文献】特開2016-210136(JP,A)
【文献】特開平9-76239(JP,A)
【文献】特開平8-80530(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/04
B29C 35/04
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第一流路を通じて高圧流体をブラダーに供給しつつ、第二流路を通じて低圧流体を前記ブラダーに供給する工程、
(B)前記高圧流体を前記ブラダーに供給することなく、前記第二流路を通じて前記低圧流体を前記ブラダーに供給し、前記ブラダーにてローカバーを低圧で押圧する工程
及び
(C)前記第一流路を通じて前記高圧流体を前記ブラダーに供給し、前記ブラダーにて前記ローカバーを高圧で押圧する工程
を含む、タイヤの製造方法。
【請求項2】
前記高圧流体と前記低圧流体との圧力差が500(kPa)以上である、請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記第二流路の流路断面積が前記第一流路の流路断面積より小さい、請求項1又は2に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
ローカバーを押圧するブラダーと、
前記ブラダーに供給される高圧流体が通される第一流路と、
前記ブラダーに供給される低圧流体が通される第二流路と、
前記高圧流体の供給と前記低圧流体の供給とを制御する制御装置と
を備え、
前記制御装置の、前記低圧流体を前記ブラダーに供給する制御が、
前記第一流路を通じて前記高圧流体を供給しつつ前記第二流路を通じて前記低圧流体を供給した後に、前記高圧流体を供給することなく前記第二流路を通じて前記低圧流体を供給する制御である、タイヤの加硫装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、ローカバーをモールド内で加圧加熱して、得られる。この加圧加熱では、ブラダーにスチームが充填され、ブラダーによってローカバーが押圧される。このブラダーによって、ローカバーは、モールドのキャビティ面に押圧される。このキャビティ面には、エアー抜きのためのベントホールが形成されている。ローカバーが加圧加熱されることで、ベントホールにローカバーのゴムが流入する。このゴムによってスピューが形成される。このスピューは、タイヤの外観を損なう。このスピューの除去は、タイヤの生産性を低下させる。
【0003】
このスピューの形成を抑制するために、ブラダーに供給されるスチームの圧力を内圧コントロール弁によって制御する方法が、特許文献1に開示されている。この方法では、低圧にされたスチームをブラダーに充填して、ブラダーが低圧でローカバーを押圧する。ゴム流れが収まった後に、高圧にされたスチームをブラダーに充填して、ブラダーが高圧でローカバーを押圧する。この方法は、ベントホールにゴムが流入することを抑制する。この方法では、スピューの形成が抑制される。この方法では、形成されるスピューの長さが短い。この方法では、スピューの除去作業が軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のタイヤの製造方法では、スチームの圧力を調整するため、加硫装置は内圧コントロール弁を備える。内圧コントロール弁を備える加硫装置は高価である。このタイヤの製造方法では、設備コストが高い。
【0006】
設備コストを抑制する観点から、高圧スチームを供給する高圧配管と低圧スチームを供給する低圧配管とを切替えて、スチームをブラダーに供給する方法が考えられる。この方法は、内圧コントロール弁は不要である。このタイヤの製造方法は、設備コストを抑制しうる。
【0007】
高圧配管と低圧配管とを切替えてスチームをブラダーに供給する方法で、タイヤを製造したところ、加硫装置の圧力異常や不良タイヤの発生頻度が、引用文献1の方法でのそれに比べて高かった。この圧力異常や不良タイヤの発生は、タイヤの生産性を損なう。
【0008】
本発明の目的は、生産性を損なうことを抑制しつつ、安価にスピューの形成を抑制しうるタイヤの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
(A)第一流路を通じて高圧流体をブラダーに供給しつつ、第二流路を通じて低圧流体を前記ブラダーに供給する工程、
(B)前記高圧流体を前記ブラダーに供給することなく、前記第二流路を通じて前記低圧流体を前記ブラダーに供給し、前記ブラダーにてローカバーを低圧で押圧する工程
及び
(C)前記第一流路を通じて前記高圧流体を前記ブラダーに供給し、前記ブラダーにて前記ローカバーを高圧で押圧する工程
を含む。
【0010】
好ましくは、前記高圧流体と前記低圧流体との圧力差は、500(kPa)以上である。
【0011】
好ましくは、前記第二流路の流路断面積が前記第一流路の流路断面積より小さい。
【0012】
本発明に係るタイヤの加硫装置は、ローカバーを押圧するブラダーと、前記ブラダーに供給される高圧流体が通される第一流路と、前記ブラダーに供給される低圧流体が通される第二流路と、前記高圧流体の供給と前記低圧流体の供給とを制御する制御装置とを備える。
前記制御装置の、前記低圧流体を前記ブラダーに供給する制御は、
前記第一流路を通じて前記高圧流体を供給しつつ前記第二流路を通じて前記低圧流体を供給した後に、前記高圧流体を供給することなく前記第二流路を通じて前記低圧流体を供給する制御である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタイヤの製造方法は、第一流路を通じて高圧流体をブラダーに供給しつつ、第二流路を通じて低圧流体をブラダーに供給する。この製造方法は、ブラダーに低圧流体を供給する際に、圧力上昇の遅れを抑制する。この圧力上昇の遅れを抑制することで、この製造方法は、圧力異常の発生や不良タイヤの製造を抑制しうる。この製造方法は、タイヤの生産性を損なうことを抑制しつつ、安価にスピューの形成を抑制しうる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの加硫装置が、ローカバーと共に示された概念図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るタイヤの製造方法における、圧力Pと経過時間tとの関係が示されたグラフである。
【
図3】
図3は、実施例及び比較例の圧力Pと経過時間tとの関係が示されたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1に示されたタイヤの加硫装置2は、モールド4、ブラダー6、一対のクランプリング8、センターポスト10、軸12、第一流路としての第一配管14、第一開閉弁16、第二流路としての第二配管18及び第二開閉弁20を備える。この加硫装置2は、更に、第一開閉弁16及び第二開閉弁20の開閉を制御する制御装置22を更に備える。
【0017】
図1には、加硫装置2と共に、ローカバー24が示されている。このローカバー24は、複数の未加硫のゴム部材が組み合わされて形成されている。
図1の上下方向が加硫装置2及びローカバー24の軸方向であり、左右方向が半径方向であり、紙面に垂直な方向が周方向である。
【0018】
モールド4は、複数のセグメント4Aと一対のサイドプレート4Bとを備える。複数のセグメント4Aは周方向に並べられリング状にされている。一対のサイドプレート4Bは、リング状であり、セグメント4Aの軸方向端部に当接している。このモールド4は、閉姿勢にされている。この複数のセグメント4Aと一対のサイドプレート4Bとは、タイヤの外周面を成形するキャビティ面4Cを形成している。
【0019】
ブラダー6は、流体が充填されて膨張している。ブラダー6の両端は、一対のクランプリング8に取付けられている。ブラダー6は、流体の充填排出によって、膨張収縮可能である。クランプリング8の一方は、センターポスト10に支持されている。このセンターポスト10は、軸12に支持されている。クランプリング8の他方が軸12に支持されている。
【0020】
軸12には、供給流路26及び排出流路28が形成されている。供給流路26及び排出流路28のそれぞれが、一対のクランプリング8の間に開口している。
図1に示される様に、この供給流路26は、ブラダー6に流体を供給可能である。排出流路28は、ブラダー6から流体を排出可能である。
【0021】
第一配管14の一方の端部は、供給流路26に接続されている。この第一配管14の他方の端部は、高圧流体の供給源に接続されている。第一開閉弁16は、第一配管14の流路を開閉可能である。第二配管18の一方の端部は、第一配管14に接続されて、第一配管14を介して供給流路26の接続されている。第二配管18の他方の端部は、低圧流体の供給源に接続されている。第二開閉弁20は、第二配管18の流路を開閉可能である。
【0022】
この第二配管18は、第一配管14の迂回配管として設けられてもよい。この場合、第二配管18の一方端部及び他方端部は、第一配管14に接続される。加硫装置2は図示されない減圧弁を備え、この減圧弁によって第二配管18の流体の圧力が低圧にされる。なお、ここでいう減圧弁は、設定された所定圧力に減圧する機能を備えるもので、複数の設定圧力に調整可能な内圧コントロール弁に比べ安価である。
【0023】
図示されないが、この加硫装置2は、第一配管14を通じて供給される流体より、更に高圧な流体を供給する流路としての第三配管と、この第三配管を開閉する第三開閉弁とを備える。この第三配管は、供給流路26に接続されている。この第三配管は、第一配管14に接続されてもよい。
【0024】
図示されないが、この加硫装置2は、大気圧より高圧な且つ第二配管18を通じて供給される流体より低圧な流体を供給する流路としての第四配管と、この第四配管を開閉する第四開閉弁とを備える。この第四配管は、供給流路26に接続されている。この第四配管は、第一配管14に接続されてもよい。
【0025】
図2には、この加硫装置2を用いたタイヤの製造方法の、加硫における圧力Pと経過時間tとの関係が示されている。この加硫の開始前に、制御装置22によって、第四開閉弁が開かれている。第四配管を通して、大気圧より高い圧力Ppの流体がブラダー6に供給されている。圧力Ppは、第二配管18を通じて供給される流体の圧力より低い。ブラダー6の圧力は、圧力Ppにされている。ここでは、第四配管を通して圧力Ppの流体が供給されたが、第四配管を通して圧力Ppより高い圧力の流体が供給されてもよい。
【0026】
加硫の開始時に、制御装置22によって、第四開閉弁が閉じられ、第一開閉弁16と第二開閉弁20とが開かれる。第一配管14を通じて圧力P1の高圧流体がブラダー6に供給されつつ、第二配管18を通じて圧力P2の低圧流体がブラダー6に供給される。その後、制御装置22によって、第二開閉弁20は開かれた状態で、第一開閉弁16が閉じられる。ブラダー6の圧力は、急速に圧力Ppから圧力P2にされる。この圧力P2は、特に限定されないが、乗用車用タイヤでは、例えば、600(kPa)以上800(kPa)以下である。
【0027】
ここでは、第一配管14を通じて圧力P1の流体が供給されたが、第一配管14を通して圧力P1より高い圧力の流体が供給されてもよい。また、ここでは、第二配管18を通じて圧力P2の流体が供給されたが、第二配管18を通して圧力P2より高い圧力の流体が供給されてもよい。
【0028】
加硫の開始時から経過時間t1で、制御装置22によって、第二開閉弁20が閉じられ、第一開閉弁16が開かれる。第一配管14を通じて高圧流体がブラダー6に供給される。ブラダー6の圧力は、急速に圧力P2から圧力P1にされる。この圧力P1は、特に限定されないが、乗用車用タイヤでは、例えば、1300(kPa)以上1700(kPa)以下である。
【0029】
この開始時から経過時間t2で、制御装置22によって、第一開閉弁16が開じられ、第三開閉弁が開かれる。第三配管を通じて、更に高い圧力P3の流体がブラダー6に供給される。ブラダー6の圧力は、急速に圧力P1から圧力P3にされる。ここでは、第三配管を通じて圧力P3の流体が供給されたが、第三配管を通して圧力P3より高い圧力の流体が供給されてもよい。この圧力P3は、特に限定されないが、乗用車用タイヤでは、例えば、2000(kPa)以上2400(kPa)以下である。
【0030】
この開始時から経過時間t3で、制御装置22によって、第三開閉弁が閉じられ、排出流路28を開閉する排出開閉弁が開かれる。ブラダー6に充填された流体が排出される。ブラダー6の圧力は、圧力P3から低下する。この様にして、
図2に示される様に、ブラダー6の圧力が変化する。
【0031】
図1及び
図2を参照しつつ、加硫装置2を用いて、タイヤの製造方法が説明される。ここでは、第一配管14及び第二配管18から供給する流体は、スチームである。なお、このスチームは例示である。これらの流体は、ブラダー6によって、ローカバー24を加圧加熱可能な加熱流体であればよく、特に限定されない。第三配管を通じて供給される流体は、窒素ガスである。この流体も、特に限定されないが、不活性ガスが好適である。第四配管を通じて供給される流体は、例えば窒素ガスである。この流体も、特に限定されず、例えば、空気、スチームであってよい。
【0032】
図示されないが、モールド4は、複数のセグメント4Aと一対のサイドプレート4Bとが互いに離れた開姿勢にされている。モールド4の開姿勢では、ブラダー6は収縮している。この開姿勢のモールド4の所定の位置にローカバー24が配置される。この様にして、モールド4に、ローカバー24が投入される(STEP1)。
【0033】
第四流路を通じて圧力Ppの窒素ガスが供給され、ブラダー6は膨張する。圧力Ppにされたブラダー6は、所定の位置に配置されたローカバー24を支持する。複数のセグメント4Aと一対のサイドプレート4Bとが互いに当接する位置に移動する。モールド4は、
図1に示される様に、閉姿勢にされる(STEP2)。
【0034】
第一開閉弁16及び第二開閉弁20が開かれる。第一配管14を通じて圧力P1のスチームがブラダー6に供給されつつ、第二配管18を通じて圧力P2のスチームがブラダー6に供給される(STEP3-1)。ブラダー6は、加熱されつつ膨張する。その後、第二開閉弁20を開いた状態で、第一開閉弁16が閉じられる。圧力P1のスチームがブラダー6に供給されることなく、第二配管18を通じて圧力P2のスチームがブラダー6に供給される(STEP3-2)。これにより、ブラダー6は、所定の温度でされる。このブラダー6は、圧力P2で、ローカバー24を、モールド4のキャビティ面4Cに向けて押圧する。
【0035】
経過時間t1で、第二開閉弁20が閉じられ、第一開閉弁16が開かれる。第一配管14を通じて圧力P1のスチームがブラダー6に供給される(STEP4)。これにより、ブラダー6は、所定の温度且つ圧力P1で、ローカバー24を、モールド4のキャビティ面4Cに向けて押圧する。
【0036】
経過時間t2で、第一開閉弁16が閉じられ、第三開閉弁が開かれる。圧力P3の窒素ガスがブラダー6に供給される(STEP5)。これにより、ブラダー6の圧力は、更に高い圧力P3にされる。このブラダー6は、圧力P3で、ローカバー24を、モールド4のキャビティ面4Cに向けて押圧する。
【0037】
この工程(STEP3-1)から工程(STEP5)での加熱加圧によって、ローカバー24からタイヤが得られる。経過時間t3で、制御装置22は、第三開閉弁を閉じて排出開閉弁を開く。ブラダー6から流体が排出される(STEP6)。ブラダー6は収縮し、モールド4は開姿勢にされる(STEP7)。このモールド4からタイヤが取り出される(STEP8)。
【0038】
このタイヤの製造方法の工程(STEP3-1)及び工程(STEP3-2)において、圧力P2で、ブラダー6がローカバー24をモールド4に向かって押圧する。ローカバー24の表面層のゴム流れが収まるまでの時間、ここでは経過時間t1まで、圧力P2のブラダー6がローカバー24を押圧する。その後の工程(STEP3-2)で、圧力P1のブラダー6がローカバー24を押圧する。このタイヤの製造方法では、モールド4のベントホールにゴムが流入することが抑制される。この製造方法で得られるタイヤでは、スピューの発生が抑制されている。
【0039】
この製造方法は、工程(STEP3-1)及び工程(STEP3-2)を備える。工程(STEP3-1)では、第一配管14を通じて圧力P1のスチームがブラダー6に供給される。この製造方法では、ブラダー6の昇圧が速い。この製造方法では、ブラダー6の昇圧遅れが抑制されている。この製造方法は、昇圧遅れによる、圧力異常の発生や不良タイヤの製造を抑制しうる。この製造方法は、圧力コントロール弁を必要としない。この製造方法は、タイヤの生産性を損なうことを抑制しつつ、安価にスピューの形成を抑制しうる。
【0040】
工程(STEP3-1)を備えない製造方法では、第二配管18を通じて低圧流体をブラダー6に供給するときに、ブラダー6と第一配管14とに圧力P2のスチームが供給される。圧力P2のスチームの供給では、ブラダー6の昇圧は遅れる。このスチームが第一配管14にも供給されることで、ブラダー6の昇圧は更に遅れる。工程(STEP3-1)を備える製造方法では、圧力P2のスチームが第一配管14に供給されることによって、昇圧が遅れることが防止される。
【0041】
圧力P1と圧力P2との圧力差が大きい場合に、この製造方法では、ブラダー6の昇圧を速くする効果が大きい。この観点から、この圧力差は、好ましくは500(kPa)以上であり、更に好ましくは600(kPa)以上であり、特に好ましくは700(kPa)以上である。
【0042】
第二配管18の流路断面積が第一配管14の流路断面積より小さい場合に、この製造方法では、ブラダー6の昇圧を速くする効果が大きい。言い換えると、第一配管14の流路断面積に対する第二配管18の流路断面積の比が小さい加硫装置2で、大きな効果が得られる。この観点から、第一配管14の流路断面積に対する第二配管18の流路断面積の比は、好ましくは0.7以下であり、更に好ましくは0.5以下であり、特に好ましくは0.4である。
【0043】
この加硫装置2では、第一配管14に第二配管18が接続されている。更に、図示されにない第三配管及び第四配管が、供給流路26を介して第一配管14に連通している。供給流路26に複数の配管が接続されている場合に、この製造方法では、ブラダー6の昇圧を速くする効果が大きい。この観点から、この製造方法は、供給流路26に複数の配管が接続されている場合や第一配管14に複数の配管が接続されている加硫装置2で、大きな効果が得られる。
【0044】
この制御装置22の、圧力P2のスチームをブラダー6に供給する制御は、第一配管14を通じて圧力P1のスチームを供給しつつ第二配管18を通じて圧力P2のスチームを供給した後に、圧力P1のスチームを供給することなく第二配管18を通じて圧力P2のスチームを供給する制御である。この加硫装置2は、内圧コントロール弁を用いることなく、ブラダー6の圧力を圧力P1と圧力P2とに切替えられる。更に、この加硫装置2は、圧力P2への昇圧の遅れが抑制されている。この加硫装置2は、安価に、ブラダー6の昇圧遅れを抑制しうる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0046】
[実施例1]
図1に示される加硫装置を用いて、ブラダーの昇圧テストが実施された。本発明の製造方法の工程(STEP3-1)及び工程(STEP3-2)で、ブラダーの圧力が圧力Ppから500(kPa)まで昇圧された。
図3には、このときの経過時間t(sec)と圧力P(kPa)との関係が、一点鎖線で示されている。
【0047】
[比較例1]
図1に示される加硫装置を用いて、ブラダーの昇圧テストが実施された。本発明の製造方法の工程(STEP3-1)を備えない他は、実施例1と同様にして、ブラダーの圧力が圧力Ppから500(kPa)まで昇圧された。
図3には、このときの経過時間t(sec)と圧力P(kPa)との関係が、実線で示されている。
【0048】
[昇圧評価]
図3に示される様に、実施例1の方が、比較例1に比べて、ブラダーの昇圧が速い。実施例1では、昇圧遅れが抑制される。
【0049】
[実施例2]
図1に示される加硫装置を用いて、本発明に係るタイヤの製造方法で、一ヶ月間タイヤが製造された。ここでは、タイヤサイズは195/65R15であり、圧力P1は1500(kPa)であり、圧力P2は700(kPa)であり、圧力P3は2200(kPa)であり、経過時間t1は90(sec)であり、経過時間t2は200(sec)であり、経過時間t3は540(sec)であった。
【0050】
[比較例2]
工程(STEP3-1)を備えない他は、実施例2と同様にして、一ヶ月間タイヤが製造された。
【0051】
[評価]
実施例2及び比較例2のそれぞれで、加硫装置の圧力異常の発生率が算出された。比較例2の圧力異常の発生率を1とするとき、実施例2のそれは0.1であった。また、実施例2の、圧力異常に起因するタイヤの不良率は、比較例2のそれより低かった。
【0052】
これらの結果から明らかに、実施例の製造方法での評価結果は、比較例の製造方法でのそれに比べて、高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明された方法は、タイヤの製造に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0054】
2・・・加硫装置
4・・・モールド
6・・・ブラダー
14・・・第一配管(第一流路)
16・・・第一開閉弁
18・・・第二配管(第二流路)
20・・・第二開閉弁
22・・・制御装置
24・・・ローカバー