(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】深度推定方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20240528BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20240528BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240528BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
A61B5/11 120
G06T7/70 A
G06T7/00 660B
A61H1/02 R
(21)【出願番号】P 2020169785
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓磨
(72)【発明者】
【氏名】中島 一誠
(72)【発明者】
【氏名】松本 大河
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-061577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107-5/113
A61H 1/00-1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行訓練装置のトレッドミル上を歩行訓練する対象者
の足首関節の深度を推定する方法であって、
前記歩行訓練装置の後側に向かって当該歩行訓練装置の前側に配置された第1のカメラを用いて、前記対象者の2次元画像を取得する工程と、
前記歩行訓練装置の後側に向かって当該歩行訓練装置の前側に配置された第2のカメラを用いて、前記対象者の深度画像を取得する工程と、
前記2次元画像に基づいて、前記2次元画像内での前記
対象者の膝関節及び
足首関節の2次元座標を取得する工程と、
前記
膝関節の2次元座標と前記
足首関節の2次元座標とに基づいて、前記2次元画像内での前記
膝関節と前記
足首関節と
の中間箇所の2次元座標を取得する工程と、
前記深度画像と前記
膝関節の2次元座標とに基づいて、前記
膝関節の深度を取得する工程と、
前記深度画像と前記
中間箇所の2次元座標とに基づいて、前記
中間箇所の深度を取得する工程と、
前記
膝関節と前記
足首関節と前記
中間箇所との前記2次元座標での位置関係と、前記
膝関節の深度と、前記
中間箇所の深度と、
の関係に基づいて、
前記中間箇所の深度から前記膝関節の深度を差し引いた値を2倍にして当該膝関節の深度に加えて、前記
足首関節の深度を推定する工程と、
を備える、深度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、深度推定方法に関し、例えば、対象者の上肢又は下肢の第1の関節に隣接する第2の関節の深度を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、対象者の足の座標を取得できない場合、対象者の体幹の傾きと、対象者の脚における膝から下の部分の傾きと、に基づいて、対象者の足の座標を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願人は、以下の課題を見出した。対象者の体幹の傾きにおいて当該対象者の状態によって複数の足の座標を推定することができ、特許文献1の技術は、対象者の足の座標を精度良く推定することが難しく、例えば、対象者の関節の深度を精度良く推定することが難しい場合があった。
【0005】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、対象者の関節の深度を精度良く推定可能な深度推定方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る深度推定方法は、対象者の上肢又は下肢の第1の関節に隣接する第2の関節の深度を推定する方法であって、
前記対象者の2次元画像を取得する工程と、
前記対象者の深度画像を取得する工程と、
前記2次元画像に基づいて、前記2次元画像内での前記第1の関節及び前記第2の関節の2次元座標を取得する工程と、
前記第1の関節の2次元座標と前記第2の関節の2次元座標とに基づいて、前記2次元画像内での前記第1の関節と前記第2の関節との間の予め設定された箇所の2次元座標を取得する工程と、
前記深度画像と前記第1の関節の2次元座標とに基づいて、前記第1の関節の深度を取得する工程と、
前記深度画像と前記予め設定された箇所の2次元座標とに基づいて、前記予め設定された箇所の深度を取得する工程と、
前記第1の関節と前記第2の関節と前記予め設定された箇所との前記2次元座標での位置関係と、前記第1の関節の深度と、前記予め設定された箇所の深度と、に基づいて、前記第2の関節の深度を推定する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、対象者の関節の深度を精度良く推定可能な深度推定方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の深度推定方法によって対象者の足首関節の深度を推定する様子を示す図である。
【
図2】対象者の膝関節、足首関節及び予め設定された箇所の位置を説明するための側面図である。
【
図3】対象者の膝関節、足首関節及び予め設定された箇所の位置を説明するための正面図である。
【
図4】予め設定された箇所の深度を算出するための深度画像の画素を示す図である。
【
図5】実施の形態3の深度推定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態の深度推定方法によって対象者の足首関節の深度を推定する様子を示す図である。本実施の形態の深度推定方法は、例えば、
図1に示すように、歩行補助装置1を脚に装着した対象者Uが歩行訓練装置2のトレッドミル21上を歩行訓練する際に、対象者Uの足首関節の深度を推定する。つまり、対象者Uは、歩行補助装置1及び歩行訓練装置2を備える歩行訓練システムを用いて歩行訓練を行うユーザである。
【0011】
先ず、本実施の形態の深度推定方法が実現される深度推定システムの構成を説明する。深度推定システムは、例えば、第1のカメラ3、第2のカメラ4及び処理装置5を備えている。第1のカメラ3は、
図1に示すように、歩行訓練装置2のトレッドミル21上で歩行訓練する対象者Uの2次元画像を撮像可能に当該歩行訓練装置2に固定されており、対象者Uの2次元画像を示す情報を処理装置5に出力する。
【0012】
第1のカメラ3は、例えば、歩行訓練装置2の後側に向かって当該歩行訓練装置2の前側に配置されており、対象者Uを当該対象者Uの前方から撮像するとよい。そして、第1のカメラ3は、例えば、一般的なRGBカメラで構成することができる。但し、第1のカメラ3は、対象者Uの2次元画像を撮像できればよく、第1のカメラ3の構成及び配置は限定されない。
【0013】
第2のカメラ4は、
図1に示すように、歩行訓練装置2のトレッドミル21上で歩行訓練する対象者Uの深度画像を撮像可能に当該歩行訓練装置2に固定されており、対象者Uの深度画像を示す情報を処理装置5に出力する。
【0014】
第2のカメラ4は、例えば、歩行訓練装置2の後側に向かって当該歩行訓練装置2の前側に配置されており、対象者Uを当該対象者Uの前方から撮像するとよい。そして、第2のカメラ4は、例えば、一般的な赤外線カメラで構成することができる。但し、第2のカメラ4は、対象者Uの深度画像を撮像できればよく、第2のカメラ4の構成及び配置は限定されない。
【0015】
処理装置5は、例えば、コンピュータである。処理装置5は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)など備えており、2次元画像内での2次元座標と深度画像内での2次元座標とを対応させて、以下の深度推定方法を実現するプログラムを実行する。処理装置5は、歩行補助装置1や歩行訓練装置2を制御するための処理装置で構成することができる。
【0016】
次に、本実施の形態の深度推定方法の流れを説明する。ここで、
図2は、対象者の膝関節、足首関節及び予め設定された箇所の位置を説明するための側面図である。
図3は、対象者の膝関節、足首関節及び予め設定された箇所の位置を説明するための正面図である。
【0017】
先ず、処理装置5は、例えば、図示を省略した入力装置を介して介護者が入力した、深度を推定する関節を示す情報を取得する。以下の説明では、処理装置5は、深度を推定する関節が左脚の足首関節であることを示す情報を取得したものとする。
【0018】
次に、処理装置5は、第1のカメラ3を介して対象者Uの2次元画像を示す情報を取得し、当該情報が示す2次元画像に基づいて、2次元画像内での左脚の膝関節K及び足首関節Aの2次元座標を算出する。
【0019】
このとき、例えば、処理装置5は、2次元画像内の予め設定された位置(例えば、左上)を原点Oとする、左脚の膝関節Kの2次元座標K(X,Y)、及び左脚の足首関節Aの2次元座標A(X,Y)を算出する。
【0020】
次に、処理装置5は、2次元画像内での左脚の膝関節Kと足首関節Aとの間の予め設定された箇所Mの2次元座標M(X,Y)を算出する。例えば、予め設定された箇所Mとして、左脚の膝関節Kの2次元座標K(X,Y)と、足首関節Aの2次元座標A(X,Y)と、の中間座標を算出する。
【0021】
つまり、中間座標M(X,Y)は、以下の<数1>で算出することができる。
<数1> M(X,Y)=(K(X,Y)+A(X,Y))/2
【0022】
次に、処理装置5は、第2のカメラ4を介して対象者Uが映し出された深度画像を示す情報を取得し、当該情報が示す深度画像及び膝関節Kの2次元座標K(X,Y)に基づいて、深度画像内での膝関節Kの深度K(D)を算出する。また、処理装置5は、深度画像及び中間座標M(X,Y)に基づいて、深度画像内での予め設定された箇所Mの深度M(D)を算出する。
【0023】
ここで、例えば、第2のカメラ4を赤外線カメラで構成した場合、対象者Uが履いている靴などの色や材質によって赤外線光が乱反射し、対象者Uの足首関節Aの深度を精度良く検出できない場合がある。
【0024】
そこで、処理装置5は、予め設定された箇所Mの深度M(D)から膝関節Kの深度K(D)を差し引いた値を当該予め設定された箇所Mの深度M(D)に加えて、左脚の足首関節Aの深度A(D)を推定する。言い換えると、予め設定された箇所Mの深度M(D)から膝関節Kの深度K(D)を差し引いた値を2倍して当該膝関節Kの深度K(D)に加えて、左脚の足首関節Aの深度A(D)を推定する。
【0025】
このように本実施の形態の座標推定方法は、第1のカメラ3で撮像した対象者Uの2次元画像及び第2のカメラ4で撮像した対象者Uの深度画像を用いて精度良く取得可能な、対象者Uの膝関節Kの2次元座標K(X,Y)、対象者Uの足首関節Aの2次元座標A(X,Y)、対象者Uの膝関節Kと足首関節Aとの間の予め設定された箇所Mの2次元座標M(X,Y)、及び対象者Uの膝関節Kの深度K(D)、予め設定された箇所Mの深度M(D)を用いて、対象者Uの足首関節Aの深度A(D)を推定する。
【0026】
そのため、対象者Uの足首関節Aの深度A(D)を精度良く推定することができる。しかも、簡単な計算によって、対象者Uの足首関節Aの深度A(D)を推定することができる。なお、本実施の形態では、予め設定された箇所Mの2次元座標として、左脚の膝関節Kの2次元座標K(X,Y)と、足首関節の2次元座標A(X,Y)と、の中間座標を算出しているが、左脚の膝関節Kと足首関節Aとの間の2次元座標であればよい。
【0027】
<実施の形態2>
図4は、予め設定された箇所の深度を算出するための深度画像の画素を示す図である。予め設定された箇所Mの深度M
(D)を算出する場合、深度画像内での予め設定された箇所Mでの1個の画素Pxで示される深度(Depth値)だけではなく、
図4に示すように周辺の画素Pxで示される深度の平均値を算出することで、深度の測定誤差を抑制することができる。このとき、深度が測定できなかった画素(例えば、深度が0の画素Px)を排除して平均値を算出するとよい。
【0028】
<実施の形態3>
図5は、本実施の形態の深度推定方法を説明するための図である。
図5に示すように、対象者Uの膝関節Kと足首関節Aとの間の複数の箇所Pの2次元座標及び深度を用いて最小二乗法により直線L1を引き、直線L1上での足首関節Aの深度を算出することで、対象者Uの足首関節Aの深度A
(D)を精度良く推定することができる。
【0029】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施の形態では、歩行訓練装置2のトレッドミル21上を歩行訓練する対象者Uの関節の深度を推定しているが、対象者Uの状況は限定されない。
例えば、上記実施の形態では、脚(下肢)の関節の深度を推定しているが、腕(上肢)の関節の深度を推定する場合も同様に実施することができる。つまり、上肢や下肢の第1の関節に隣接する第2の関節の深度を推定する場合、上記実施の形態と略同様に実施することができる。このとき、予め設定された箇所は、必ずしも第1の関節と第2の関節とを結んだ直線上の位置に設定する必要はなく、第1の関節及び第2の関節との位置関係が導き出せる位置に設定すればよい。
【符号の説明】
【0030】
1 歩行補助装置
2 歩行訓練装置
3 第1のカメラ
4 第2のカメラ
5 処理装置
21 トレッドミル
A 対象者の足首関節
K 対象者の膝関節
M 予め設定された箇所
P 予め設定された箇所
Px 画素
U 対象者