(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】シート繰り出し装置、これを備えるシート搬送装置および画像読取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 3/06 20060101AFI20240528BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240528BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B65H3/06 340E
H04N1/00 567C
G03G15/00 107
(21)【出願番号】P 2020172033
(22)【出願日】2020-10-12
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】弁理士法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】権田 隆
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-63147(JP,A)
【文献】特開2000-327148(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0115151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00 - 3/68
G03G 15/00
13/04
13/045
13/056
15/04 -15/043
15/047
15/056
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ上のシートをローラーで繰り出すシート繰り出し装置であって、
ローラーを回転自在に支持するホルダーと、
ホルダーを上下に遊動自在に支持する支持部と、
ホルダーを上昇させる駆動部と、
ホルダーよりも上に位置する壁体と、
壁体よりも下方に存し、ホルダーと壁体のうち、一方に設けられた係止部材と、他方に設けられた緩衝部材と、を備え、
緩衝部材は、上昇するホルダーに押されて壁体との間で圧縮変形し、駆動停止後、緩衝部材の上下方向における一部に係止部材が係止することで、上昇したホルダーを壁体に係止部材を介してぶら下がった状態にすることを特徴とするシート繰り出し装置。
【請求項2】
前記緩衝部材は、圧縮コイルばねであり、
前記係止部材は、爪部を有し、
前記緩衝部材の一部は、圧縮コイルばねの巻き線の一部であり、
駆動停止後、前記爪部が前記巻き線の一部に引っ掛かることで、前記ホルダーが前記ぶら下がった状態になることを特徴とする請求項1に記載のシート繰り出し装置。
【請求項3】
前記係止部材は、前記ホルダーに突設され、
前記圧縮コイルばねは、軸方向における上端部が壁体の下面に支持され、下端部が自由端になっており、
前記爪部は、フック形状になっており、その外側に先端から基端側に向かうに連れて上昇している傾斜面が設けられ、その内側に前記巻き線の一部が引っ掛かる引っ掛かり面が設けられ、
前記ホルダーの上昇中に、前記圧縮コイルばねの下端部が前記ホルダーに押し上げられて前記圧縮コイルばねが圧縮変形しつつ、前記爪部が前記変形した圧縮コイルばねの内側空間内に入り込み、前記爪部の傾斜面がその傾斜角に応じた量、前記巻き線を内周側から外周側に押すことでその押圧方向にも変形させながら上に向かって動き、
駆動停止後、前記巻き線の一部が前記爪部の先端から前記引っ掛かり面に入り込むことで、前記爪部の前記巻き線への引っ掛かりが行われることを特徴とする請求項2に記載のシート繰り出し装置。
【請求項4】
前記係止部材は、前記ホルダーに突設され、
前記圧縮コイルばねは、軸方向における上端部が壁体の下面に支持され、下端部が自由端になっており、
前記爪部は、フック形状になっており、その外側に先端から基端側に向かうに連れて上昇している傾斜面が設けられ、その内側に前記巻き線の一部が引っ掛かる引っ掛かり面が設けられ、
前記ホルダーの上昇中に、前記圧縮コイルばねの下端部が前記ホルダーに押し上げられて前記圧縮コイルばねが圧縮変形しつつ、前記爪部が前記変形した圧縮コイルばねの巻き線を外側から前記爪部の傾斜面がその傾斜角に応じた量、内周側に押すことでその押圧方向にも変形させながら上に向かって動き、
駆動停止後、前記巻き線の一部が前記爪部の先端から前記引っ掛かり面に入り込むことで、前記爪部の前記巻き線への引っ掛かりが行われることを特徴とする請求項2に記載のシート繰り出し装置。
【請求項5】
前記係止部材は、壁体の下面に突設され、
前記圧縮コイルばねは、軸方向における下端部が前記ホルダーに支持され、上端部が自由端になっており、
前記爪部は、フック形状になっており、その外側に先端から基端側に向かうに連れて下降している傾斜面が設けられ、その内側に前記巻き線の一部が引っ掛かる引っ掛かり面が設けられ、
前記ホルダーの上昇中に、前記圧縮コイルばねの上端部が壁体に当たって停止し且つ下端部が前記ホルダーに押されることで圧縮変形しつつ、前記爪部の傾斜面が前記変形した圧縮コイルばねの巻き線を外側からその傾斜角に応じた量、内周側に押すことで、前記巻き線がその押圧方向にも変形させられながら上方に動き、
駆動停止後、前記巻き線の一部が前記爪部の先端から前記引っ掛かり面に入り込むことで、前記爪部の前記巻き線への引っ掛かりが行われることを特徴とする請求項2に記載のシート繰り出し装置。
【請求項6】
前記圧縮コイルばねは、円筒コイルばねであることを特徴とする請求項3~5のいずれか1項に記載のシート繰り出し装置。
【請求項7】
前記緩衝部材は、ジグザグばねであり、
前記係止部材は、爪部を有し、
前記緩衝部材の一部は、前記ジグザグばねにおける複数の屈曲部の一つであり、
駆動停止後、前記爪部が前記ジグザグばねの一つの屈曲部に引っ掛かることで、前記ホルダーが前記ぶら下がった状態になることを特徴とする請求項1に記載のシート繰り出し装置。
【請求項8】
前記係止を解除する解除部をさらに備えることを特徴とする請求項1、2または7に記載のシート繰り出し装置。
【請求項9】
前記係止を解除する解除部をさらに備え、
前記解除部は、
前記巻き線の一部が前記爪部に引っ掛かっている状態でその引っ掛かりを外す方向の押圧力を前記圧縮コイルばねの巻き線に付与して、その引っ掛かりを解除させる押圧部材を備えることを特徴とする請求項3に記載のシート繰り出し装置。
【請求項10】
前記係止を解除する解除部をさらに備え、
前記係止部材は、その基端部に対して突設方向先端側が突設方向に直交する方向に弾性的に撓む可撓性を有し、
前記解除部は、
前記巻き線の一部が前記爪部に引っ掛かっている状態でその引っ掛かりを外す方向の押圧力を前記係止部材に付与して当該係止部材を撓ませることで、その引っ掛かりを解除させる押圧部材を備えることを特徴とする請求項4に記載のシート繰り出し装置。
【請求項11】
前記駆動部は、前記ホルダーの駆動停止後、前記ホルダーが前記ぶら下がった状態になってから、前記ローラーの回転軸に回転駆動力を付与する伝達機構を含み、
前記押圧部材は、前記ローラーの回転軸に設けられ、前記ローラーの回転軸と一体で回転するカムであり、当該カムの周面で前記押圧力を押圧対象に付与することを特徴とする請求項9または10に記載のシート繰り出し装置。
【請求項12】
前記ローラーを繰り出しローラーとしたとき、この繰り出しローラーよりもシート搬送方向下流側に位置する給紙ローラーをさらに有し、
前記ホルダーは、前記繰り出しローラーと前記給紙ローラーを回転自在に支持し、
前記駆動部は、前記伝達機構を介して前記繰り出しローラーと前記給紙ローラーにシート搬送時の正転とこれとは逆方向の逆転のための駆動力を切り替えて付与可能であり、
前記支持部は、前記ホルダーを、前記給紙ローラーの回転軸を中心に前記繰り出しローラーが支持される側を上下に揺動かつ遊動自在に支持するとともに、前記正転のための駆動力が付与された場合に前記ホルダーに下降する方向の力が付与され、前記逆転のための駆動力が付与された場合に前記ホルダーに上昇する方向の力が付与されるように支持し、
前記カムは、ワンウエイクラッチを介して前記繰り出しローラーの回転軸に連結し、
前記ワンウエイクラッチは、前記繰り出しローラーの回転軸に前記正転のための駆動力が付与された場合にその駆動力を前記カムに伝達し、前記逆転のための駆動力が付与された場合にその駆動力を前記カムに伝達しないクラッチであり、
前記係止の解除の際に、前記駆動部から前記正転のための駆動力が前記伝達機構、前記繰り出しローラーの回転軸、前記ワンウエイクラッチを介して前記カムに伝達されることを特徴とする請求項11に記載のシート繰り出し装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のシート繰り出し装置を備え、当該シート繰り出し装置により繰り出されたシートを搬送することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項14】
シート搬送部により搬送されるシート上の画像を読み取って画像データを得る画像読取装置であって、
前記シート搬送部として、請求項13に記載のシート搬送装置を備えることを特徴とする画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トレイ上に載置されたシートを搬送路に向けて繰り出すシート繰り出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナーなどの画像読取装置として、トレイ上に載置されたシート状の原稿を繰り出し用のローラー(繰り出しローラー)で搬送路に向けて繰り出すシート繰り出し装置を備え、繰り出された原稿を搬送ローラーで搬送路上を読取位置まで搬送し、読取位置で原稿の画像を読み取る画像読取装置が開発されている(特許文献1)。
【0003】
図22(a)は、特許文献1に記載されたシート繰り出し装置900を説明するための概略図であり、左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向、これらに直交する方向をZ軸方向で示している。
【0004】
同図に示すようにシート繰り出し装置900は、繰り出しローラー901とこれよりもシート搬送方向(矢印A方向)下流側の給紙ローラー902とがホルダー903により回転自在に支持されるとともに、ホルダー903が給紙ローラー902の回転軸921を中心に、実線で示す位置と破線で示す位置とに上下に揺動可能な構成になっている。
【0005】
実線で示す位置は、繰り出しローラー901がトレイ930上の原稿束931の最上位の原稿932に接する位置であり、破線で示す位置は、繰り出しローラー901が原稿932から離隔する位置である。
【0006】
原稿932を繰り出す場合、ホルダー903が実線で示す位置に移動し、繰り出しローラー901が回転することにより原稿932が繰り出され、繰り出された原稿932が給紙ローラー902により搬送路905に沿ってシート搬送方向下流側に搬送される。この一連の動作を原稿給送という。原稿給送が終了すると、ホルダー903がモーターなどの駆動源(不図示)の駆動力により実線で示す位置から破線で示す位置に移動する。
【0007】
ホルダー903は、給紙ローラー902の回転軸921に回転方向に遊動自在に支持されており、駆動源の駆動力の付与が停止されると、ホルダー903が自重で下降する構造になっている。このため、ホルダー903が破線で示す位置まで上昇後、駆動が停止されると、実線で示す位置まで下降することになる。ホルダー903が勝手に下降してしまうと、繰り出しローラー901がトレイ930に当たったままになり、トレイ930上に新たな原稿をセットする操作などを行い難くなる。そこで、破線の位置まで上昇したホルダー903の自由な下降を阻止するように、ホルダー903をロックするロック部910が設けられている。
【0008】
図22(b)は、ロック部910の構成を説明するための概略拡大図である。
【0009】
同図に示すようにロック部910は、ホルダー903の右端に設けられたZ軸方向に平行な突起911と、装置本体側の上壁914に設けられた軸915を中心に矢印B方向とC方向に揺動自在な係合レバー912と、係合レバー912に矢印C方向の力を付勢するバネ913を備える。
【0010】
ホルダー903が矢印D方向に動いて上昇する際に、ホルダー903の突起911が係合レバー912の爪部919に設けられた斜面918を押し上げると、斜面918の斜角に応じた量だけ、係合レバー912が軸915を中心にバネ913の付勢力に抗して矢印B方向に揺動する(破線で示す姿勢)。
【0011】
その後、ホルダー903の突起911が斜面918を抜けて爪部919の内側の面917に入り込むと、係合レバー912がバネ913の付勢力で矢印C方向に揺動して元の実線の姿勢に戻ることで、ホルダー903の突起911が係合レバー912の爪部919に係合した状態になる(
図22(a)の破線で示す状態)。これにより、ホルダー903がロックされる。なお、特許文献1の
図11には、このロックを解除するための係合解除部(符号18)が別途、設けられている構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のロック部910の構成では、上昇中のホルダー903の突起911が係合レバー912の斜面918に当たったときの衝突音が大きく、斜面918を抜けるとその勢いのまま、ホルダー903の上面951が上壁914に衝突して衝突音が生じる。
【0014】
ホルダー903と上壁914の衝突音を軽減するには、上壁914の下面941にスポンジのような緩衝材955(
図22(a))を別途、貼り付ければ良いが、部品点数が多くなる。
【0015】
上記のような問題は、画像読取装置に限られず、例えば給紙カセットのトレイ上に載置された用紙を繰り出してその用紙に画像を形成する画像形成装置におけるシート繰り出し装置にも同様に生じ得る。
【0016】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、シートを繰り出すローラーを回転自在に支持するホルダーを駆動部の駆動力で上昇させた後、ロックする構成において、部品点数を減らしつつホルダー上昇時に生じる衝突音を軽減できるシート繰り出し装置、これを備えるシート搬送装置、および画像読取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本開示に係るシート繰り出し装置は、トレイ上のシートをローラーで繰り出すシート繰り出し装置であって、ローラーを回転自在に支持するホルダーと、ホルダーを上下に遊動自在に支持する支持部と、ホルダーを上昇させる駆動部と、ホルダーよりも上に位置する壁体と、壁体よりも下方に存し、ホルダーと壁体のうち、一方に設けられた係止部材と、他方に設けられた緩衝部材と、を備え、緩衝部材は、上昇するホルダーに押されて壁体との間で圧縮変形し、駆動停止後、緩衝部材の上下方向における一部に係止部材が係止することで、上昇したホルダーを壁体に係止部材を介してぶら下がった状態にすることを特徴とする。
【0018】
また、前記緩衝部材は、圧縮コイルばねであり、前記係止部材は、爪部を有し、前記緩衝部材の一部は、圧縮コイルばねの巻き線の一部であり、駆動停止後、前記爪部が前記巻き線の一部に引っ掛かることで、前記ホルダーが前記ぶら下がった状態になるとしても良い。
【0019】
ここで、前記係止部材は、前記ホルダーに突設され、前記圧縮コイルばねは、軸方向における上端部が壁体の下面に支持され、下端部が自由端になっており、前記爪部は、フック形状になっており、その外側に先端から基端側に向かうに連れて上昇している傾斜面が設けられ、その内側に前記巻き線の一部が引っ掛かる引っ掛かり面が設けられ、前記ホルダーの上昇中に、前記圧縮コイルばねの下端部が前記ホルダーに押し上げられて前記圧縮コイルばねが圧縮変形しつつ、前記爪部が前記変形した圧縮コイルばねの内側空間内に入り込み、前記爪部の傾斜面がその傾斜角に応じた量、前記巻き線を内周側から外周側に押すことでその押圧方向にも変形させながら上に向かって動き、駆動停止後、前記巻き線の一部が前記爪部の先端から前記引っ掛かり面に入り込むことで、前記爪部の前記巻き線への引っ掛かりが行われるとしても良い。
【0020】
また、前記係止部材は、前記ホルダーに突設され、前記圧縮コイルばねは、軸方向における上端部が壁体の下面に支持され、下端部が自由端になっており、前記爪部は、フック形状になっており、その外側に先端から基端側に向かうに連れて上昇している傾斜面が設けられ、その内側に前記巻き線の一部が引っ掛かる引っ掛かり面が設けられ、前記ホルダーの上昇中に、前記圧縮コイルばねの下端部が前記ホルダーに押し上げられて前記圧縮コイルばねが圧縮変形しつつ、前記爪部が前記変形した圧縮コイルばねの巻き線を外側から前記爪部の傾斜面がその傾斜角に応じた量、内周側に押すことでその押圧方向にも変形させながら上に向かって動き、駆動停止後、前記巻き線の一部が前記爪部の先端から前記引っ掛かり面に入り込むことで、前記爪部の前記巻き線への引っ掛かりが行われるとしても良い。
【0021】
さらに、前記係止部材は、壁体の下面に突設され、前記圧縮コイルばねは、軸方向における下端部が前記ホルダーに支持され、上端部が自由端になっており、前記爪部は、フック形状になっており、その外側に先端から基端側に向かうに連れて下降している傾斜面が設けられ、その内側に前記巻き線の一部が引っ掛かる引っ掛かり面が設けられ、前記ホルダーの上昇中に、前記圧縮コイルばねの上端部が壁体に当たって停止し且つ下端部が前記ホルダーに押されることで圧縮変形しつつ、前記爪部の傾斜面が前記変形した圧縮コイルばねの巻き線を外側からその傾斜角に応じた量、内周側に押すことで、前記巻き線がその押圧方向にも変形させられながら上方に動き、駆動停止後、前記巻き線の一部が前記爪部の先端から前記引っ掛かり面に入り込むことで、前記爪部の前記巻き線への引っ掛かりが行われるとしても良い。
【0022】
また、前記圧縮コイルばねは、円筒コイルばねであるとしても良い。
【0023】
また、前記緩衝部材は、ジグザグばねであり、前記係止部材は、爪部を有し、前記緩衝部材の一部は、前記ジグザグばねにおける複数の屈曲部の一つであり、駆動停止後、前記爪部が前記ジグザグばねの一つの屈曲部に引っ掛かることで、前記ホルダーが前記ぶら下がった状態になるとしても良い。
【0024】
さらに、前記係止を解除する解除部をさらに備えるとしても良い。
【0025】
また、前記係止を解除する解除部をさらに備え、前記解除部は、前記巻き線の一部が前記爪部に引っ掛かっている状態でその引っ掛かりを外す方向の押圧力を前記圧縮コイルばねの巻き線に付与して、その引っ掛かりを解除させる押圧部材を備えるとしても良い。
【0026】
また、前記係止を解除する解除部をさらに備え、前記係止部材は、その基端部に対して突設方向先端側が突設方向に直交する方向に弾性的に撓む可撓性を有し、前記解除部は、前記巻き線の一部が前記爪部に引っ掛かっている状態でその引っ掛かりを外す方向の押圧力を前記係止部材に付与して当該係止部材を撓ませることで、その引っ掛かりを解除させる押圧部材を備えるとしても良い。
【0027】
ここで、前記駆動部は、前記ホルダーの駆動停止後、前記ホルダーが前記ぶら下がった状態になってから、前記ローラーの回転軸に回転駆動力を付与する伝達機構を含み、前記押圧部材は、前記ローラーの回転軸に設けられ、前記ローラーの回転軸と一体で回転するカムであり、当該カムの周面で前記押圧力を押圧対象に付与するとしても良い。
【0028】
ここで、前記ローラーを繰り出しローラーとしたとき、この繰り出しローラーよりもシート搬送方向下流側に位置する給紙ローラーをさらに有し、前記ホルダーは、前記繰り出しローラーと前記給紙ローラーを回転自在に支持し、前記駆動部は、前記伝達機構を介して前記繰り出しローラーと前記給紙ローラーにシート搬送時の正転とこれとは逆方向の逆転のための駆動力を切り替えて付与可能であり、前記支持部は、前記ホルダーを、前記給紙ローラーの回転軸を中心に前記繰り出しローラーが支持される側を上下に揺動かつ遊動自在に支持するとともに、前記正転のための駆動力が付与された場合に前記ホルダーに下降する方向の力が付与され、前記逆転のための駆動力が付与された場合に前記ホルダーに上昇する方向の力が付与されるように支持し、前記カムは、ワンウエイクラッチを介して前記繰り出しローラーの回転軸に連結し、前記ワンウエイクラッチは、前記繰り出しローラーの回転軸に前記正転のための駆動力が付与された場合にその駆動力を前記カムに伝達し、前記逆転のための駆動力が付与された場合にその駆動力を前記カムに伝達しないクラッチであり、前記係止の解除の際に、前記駆動部から前記正転のための駆動力が前記伝達機構、前記繰り出しローラーの回転軸、前記ワンウエイクラッチを介して前記カムに伝達されるとしても良い。
【0029】
本開示に係るシート搬送装置は、上記のシート繰り出し装置を備え、当該シート繰り出し装置により繰り出されたシートを搬送することを特徴とする。
【0030】
本開示に係る画像読取装置は、シート搬送部により搬送されるシート上の画像を読み取って画像データを得る画像読取装置であって、前記シート搬送部として、上記のシート搬送装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
上記のようにすれば、緩衝部材が、上昇中のホルダーとの衝突エネルギーの吸収と上昇後のホルダーのロックの両方を兼用するので、部品点数を従来よりも減らしつつ、ホルダーとの衝突音を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施の形態1に係るMFPの構成を示す概略図である。
【
図3】繰り出しローラーが原稿トレイ上に載置されている原稿の上面に接している様子を示す図である。
【
図4】ホルダーを上下方向に揺動させるための駆動機構の構成を示す斜視図である。
【
図5】ロック部とロック解除部を
図4に示す矢印K方向から見たときの概略背面図である。
【
図6】
図5に示すロック部とロック解除部を矢印U方向から見たときの概略斜視図である。
【
図7】
図5に示すロック部とロック解除部を矢印V方向から見たときの概略斜視図である。
【
図8】駆動モーターの逆転により、ホルダーが第1位置から上昇する様子を示す概略背面図である。
【
図9】ホルダーが
図8に示す位置よりもさらに上昇したときの様子を示す概略背面図である。
【
図10】駆動停止後に係止突起の爪部が圧縮コイルばねの巻き線の一部に引っ掛かっている様子を示す概略背面図である。
【
図11】駆動停止後、正転駆動開始により係止突起の爪部が圧縮コイルばねの巻き線から外れる様子を示す概略背面図である。
【
図12】実施の形態2に係る係止突起の構成例を説明するための概略背面図である。
【
図13】(a)は、
図12に示す係止突起の概略斜視図であり、(b)は、
図12に示す係止突起の概略平面図である。
【
図14】ホルダーが第1位置から上昇してホルダーにより圧縮コイルばねが押されて圧縮変形している様子を示す概略背面図である。
【
図15】ホルダー24が
図14に示す位置よりもさらに上昇してから駆動停止したときの様子を示す概略背面図である。
【
図16】駆動停止後、正転駆動の開始により、給紙ローラーと繰り出しローラーが正転を開始した様子を示す概略背面図である。
【
図17】(a)は、実施の形態3に係るジグザグばねの概略斜視図であり、(b)は、概略背面図である。
【
図18】ジグザグばねに係止突起の爪部が引っ掛かった状態になっている様子をジグザグばねの周辺部分だけ抜き出して示す概略背面図である。
【
図19】駆動停止後、正転駆動の開始により、係止突起の爪部がジグザグばねの屈曲部から外れる様子を示す概略背面図である。
【
図20】(a)は、変形例に係る構成を示す概略背面図であり、(b)は、変形例に係る係合突起の概略拡大斜視図であり、(c)は、(a)に示す矢印W方向から係合突起を見たときの係合突起と圧縮コイルばねとカムの位置関係を示す概略図である。
【
図21】ホルダーの上昇後、駆動停止したときの係止突起とこれの周辺だけを抜き出して示す概略部分背面図である。
【
図22】(a)は、従来のシート繰り出し装置を説明するための概略図であり、(b)は、ロック部の構成を説明するための概略拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示に係るシート繰り出し装置を備える画像読取装置の実施の形態を、多機能複合機(以下、「MFP(Multi-Function Peripheral)」という。)を例にして図面を参照しながら説明する。
<実施の形態1>
〔1〕MFPの全体構成
図1は、本実施の形態に係るMFP100の構成を示す概略図であり、MFP100を正面から見たときの左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向、これらに直交する奥行方向をZ軸方向で示している。
【0034】
同図に示すように、MFP100は、画像読取装置101と画像形成装置102を備える。画像読取装置101は、原稿搬送装置111と読取装置本体112を有する。
【0035】
原稿搬送装置111は、トレイ上の原稿(シート)を1枚ずつ搬送路に向けて繰り出して、搬送路上を読取装置本体112の読取位置まで搬送する。
【0036】
読取装置本体112は、原稿搬送装置111により読取位置に搬送された原稿の画像を光学的に読み取って画像データを得る。
【0037】
画像形成装置102は、画像が形成される用紙(シート)を収容する給紙カセット、同図の例では121、122、123、124を有し、ジョブ実行に際し選択された給紙カセットから用紙を1枚ずつ繰り出して搬送路(不図示)上を搬送し、画像読取装置101により読み取られた画像データに基づく画像を、搬送される用紙上に形成して、画像が形成されたシートを出力する。
〔2〕原稿搬送装置111の構成
図2は、原稿搬送装置111のX-Y平面における概略断面図である。
【0038】
同図に示すように原稿搬送装置111は、原稿が載置される原稿トレイ1と、シート繰り出し部2と、シート搬送部3と、排紙トレイ4を備える。
【0039】
シート繰り出し部2は、原稿トレイ1上の原稿(シート)の給送を行うものであり、繰り出しローラー21と、繰り出しローラー21よりもシート搬送方向(矢印E方向)下流側に位置する給紙ローラー22と、給紙ローラー22の直下に配置された捌きローラー23と、繰り出しローラー21と給紙ローラー22のそれぞれを回転自在に支持するホルダー24を備える。
【0040】
ホルダー24は、給紙ローラー22の回転軸221にこれを中心に繰り出しローラー21が位置する側の端部241が矢印F方向(下方向)と矢印G方向(上方向)に揺動自在に支持されている。ホルダー24の上下方向の揺動は、後述の駆動機構25(
図4)の駆動力により行われる。
【0041】
図3は、
図2に記載のホルダー24が下方向に動き、繰り出しローラー21が原稿トレイ1上に載置されている原稿束5における最上位の原稿6の上面に接している様子を示す図である。
【0042】
繰り出しローラー21が原稿6に接している状態で繰り出しローラー21が矢印I方向に回転(正転)することで、繰り出しローラー21の回転駆動力が原稿6に付与されて、原稿6が矢印E方向に繰り出される。
【0043】
繰り出しローラー21により矢印E方向に繰り出された原稿6は、給紙ローラー22と捌きローラー23との間を通過する際に、矢印J方向に回転(正転)している給紙ローラー22の回転駆動力がさらに付加され、シート搬送方向下流側のシート搬送部3(
図2)に送られる(原稿給送)。なお、2枚以上の原稿が重なった状態で繰り出しローラー21により繰り出された場合(重送)、最上位の原稿6だけが給紙ローラー22と捌きローラー23との間を通過するように捌きローラー23により捌かれる。
【0044】
図2に戻って、シート搬送部3は、シート繰り出し部2からの原稿6を搬送路39に沿って搬送ローラー対31、32により搬送し、読取装置本体112の読取位置に配された読取部113上を通過させる。この通過の際、読取部113により原稿6の画像が読み取られる。読取部113上を通過した原稿6は、シート搬送方向下流側の搬送ローラー対33、排出ローラー対34により機外に排出され、排紙トレイ4に収容される。
【0045】
原稿給送が終了すると、ホルダー24が
図3に示す位置から上方に動いて
図2に示す位置、つまり繰り出しローラー21が原稿6よりも上の位置(原稿6から離隔する位置)に戻る。繰り出しローラー21の
図2に示す位置を退避位置、
図3に示す位置を繰り出し位置といい、繰り出しローラー21が繰り出し位置に位置しているときのホルダー24の位置を第1位置、退避位置に位置しているときのホルダー24の位置を第2位置という。繰り出しローラー21の退避位置は、繰り出し位置よりも上であり、繰り出しローラー21を回転自在に支持するホルダー24の直上に上壁98として、装置本体95の壁体98が位置する関係を有する。
〔3〕駆動機構25の構成
図4は、ホルダー24を上下方向に揺動させるための駆動力伝達機構25の構成を示す斜視図である。
【0046】
同図に示すように駆動力伝達機構25は、駆動源としての駆動モーター251の回転駆動力をギア列252、電磁クラッチ253を介して、給紙ローラー22の回転軸221に伝える。ここで、駆動モーター251の回転軸259は、矢印95a、96aのいずれの方向にも切り替えて回転可能になっている。電磁クラッチ253は、伝達される回転駆動力の入り切り(オンとオフ)を切り替える。給紙ローラー22の回転軸221は、ホルダー24に設けられた軸受部材245、246を介してホルダー24に正逆回転自在に支持されている。給紙ローラー22の回転軸221とホルダー24とが相対的に正逆回転自在であることから、給紙ローラー22の回転軸221と軸受部材245、246がホルダー24を上下に遊動自在に支持する支持部を構成するといえる。
【0047】
給紙ローラー22の回転軸221に伝わった回転力は、ギア列からなる駆動力伝達機構26を介して繰り出しローラー21の回転軸211に伝えられる。繰り出しローラー21への駆動力の伝達機構という意味で、駆動力伝達機構25、26を一つの駆動力伝達機構と捉えることができる。
【0048】
ここで、給紙ローラー22の回転軸221には、2つのトルクリミッター255、256が設けられており、それぞれのトルクリミッターは、駆動モーター251の回転軸259の回転方向が矢印95a、96aのいずれの場合でも伝達トルクが一定値よりも低いとき、その伝達トルクの大きさに応じた回転力をその方向にそのまま伝えるが、一定値以上になると滑る特性を有する。
【0049】
駆動モーター251の回転軸259が矢印95aの向きに回転(逆転)し、かつ電磁クラッチ253がオンになったときには、給紙ローラー22の回転軸221が矢印95の向きに回転(逆転)し、この回転軸221の回転力が駆動力伝達機構26を介して繰り出しローラー21の回転軸211に伝わる。これにより、繰り出しローラー21の回転軸211が矢印95bの向きに回転(逆転)する。
【0050】
給紙ローラー22の回転軸221が逆転(矢印95の向き)しているときに、給紙ローラー22の回転軸221とホルダー24に設けられた軸受部材245、246との間に生じる摩擦力により、ホルダー24に給紙ローラー22の回転軸221を中心に矢印95の向きに回転させるモーメントが発生する。このモーメントの発生は、ホルダー24に上昇する方向の力が付与されたことに相当する。これにより、ホルダー24が上昇し、繰り出しローラー21が
図2に示す退避位置に至る。
【0051】
ホルダー24の上昇中に、ホルダー24がロック部29の圧縮コイルばね52に当たり、圧縮コイルばね52が所定量だけ圧縮変形すると、以後、トルクリミッター255が滑るようになり、ホルダー24がこれ以上、上昇しなくなる。
【0052】
逆に、駆動モーター251の回転軸259が矢印96aの向きに回転(正転)し、かつ電磁クラッチ253がオンになったときには、給紙ローラー22の回転軸221が矢印96の向きに回転(正転)し、この回転軸221の回転力が駆動力伝達機構26を介して繰り出しローラー21の回転軸211に伝わる。これにより、繰り出しローラー21の回転軸211が矢印96bの向きに回転(正転)する。
【0053】
給紙ローラー22の回転軸221が正転(矢印96の向き)しているときに、給紙ローラー22の回転軸221とホルダー24に設けられた軸受部材245、246との間に生じる摩擦力により、ホルダー24に給紙ローラー22の回転軸221を中心に矢印96の向きに回転させるモーメントが発生する。このモーメントの発生は、ホルダー24に下降する方向の力が付与されたことに相当する。これにより、ホルダー24が下降し、繰り出しローラー21が
図3に示す繰り出し位置に至る。
【0054】
ホルダー24の下降中に、繰り出しローラー21が
図3に示すように原稿トレイ1上の原稿束5に押し当てられると、以後、トルクリミッター256が滑るようになり、繰り出しローラー21がこれよりも下降しなくなる。
【0055】
駆動モーター251の回転と停止は、不図示の制御部により制御される。この制御は、概略すると次のようになる。
【0056】
すなわち、原稿給送のときには、
図3に示すようにホルダー24が第1位置に存し、繰り出しローラー21が繰り出し位置に位置している状態で、駆動モーター251を正転(矢印96aの向き)しつつ電磁クラッチ253をオンする。繰り出しローラー21と給紙ローラー22の正転により原稿6が給送される。なお、複数枚の原稿を1枚ずつ給送する場合、N枚目の原稿の後端が繰り出しローラー21を通過すると、駆動モーター251の正転を継続しつつ電磁クラッチ253を一旦オフする。N枚目の原稿は、電磁クラッチ253がオフになっても、シート搬送部3の搬送力により搬送が継続される。その後、(N+1)枚目の原稿の給紙の開始タイミングになると、電磁クラッチ253をオンに切り替える。最後の原稿の給紙が終了するまで、電磁クラッチ253のオフとオンの切り替えが交互に実行される。
【0057】
原稿給送が終了、つまり最後の原稿の後端が給紙ローラー22を通過すると、駆動モーター251を逆転(矢印95aの向き)しつつ電磁クラッチ253をオンにする。これにより、ホルダー24が第1位置から第2位置まで上昇して、繰り出しローラー21が退避位置に至る(
図2)。ホルダー24が第2位置まで上昇すると、駆動モーター251をオフ(停止)しつつ電磁クラッチ253もオフにする。これにより、駆動モーター251の駆動力がホルダー24に付与されなくなる。
【0058】
ホルダー24は、背景技術の項で記載した機構と同様に、駆動モーター251の駆動力の付与が停止されると(または/および電磁クラッチ253がオフされると)、軸受部材245、246により給紙ローラー22の回転軸221に対して自由な回転が可能になり、自重による矢印96の向きのモーメントの作用で、給紙ローラー22の回転軸221を中心に矢印96の向きに回転して、第2位置から第1位置に下降する遊動自在な軸支構造になっている。この自重によるホルダー24の落下を阻止するために本実施の形態では、上記のロック部29が設けられており、さらにロック部29のロックを解除するためのロック解除部60が設けられている。
〔4〕ロック部29とロック解除部60の構成
図5は、ロック部29とロック解除部60を
図4に示す矢印K方向から見たときの概略背面図であり、
図6は、
図5に示すロック部29とロック解除部60を矢印U方向から見たときの概略斜視図であり、
図7は、
図5に示すロック部29とロック解除部60を矢印V方向から見たときの概略斜視図である。なお、
図5~
図7では、説明に不要な一部の部材、例えば駆動機構25などについては図示が省略されており、また、繰り出しローラー21が繰り出し位置に存し、ホルダー24が第1位置に位置する場合の例を示している。
【0059】
図5~
図7に示すようにロック部29は、係止突起51(係止部材)と圧縮コイルばね52(緩衝部材)を備える。
【0060】
係止突起51は、ホルダー24の背面242に立設された板状の台座243の上面244から基端部510が立ち上がってなり、基端部510に連続する上端部511にフック形状の爪部512が設けられている。係止突起51の全長(突出方向長さ)は、例えば10~15mm程度である。爪部512の外側に傾斜面515が設けられている。
【0061】
傾斜面515は、爪部512のフック先端から基端側(後端側)に向かうに連れて上昇しており、係止突起51が圧縮コイルばね52の直下に位置したと仮定した場合の圧縮コイルばね52の軸方向に対して所定角度、例えば30°~60°の範囲内の角度だけ傾く面に相当する。
【0062】
係止突起51は、PE(ポリエチレン)やPC(ポリカーボネート)などの樹脂により形成されるが、これに限られず、例えば鉄などの金属製でも良い。
【0063】
なお、上記では、台座243がホルダー24の一部であり、係止突起51は、ホルダー24とは別部材としたが、これに限られず、ホルダー24と台座243と係止突起51とが一体成型により形成されるとしても良い。いずれにしても係止突起51がホルダー24に設けられる構成に含まれる。
【0064】
圧縮コイルばね52は、鉄などの金属製の線材を螺旋状に一定のピッチ(等間隔)に巻いてなる弾性変形可能な円筒コイルばねであり、自由長の軸方向長さが例えば20~30mm程度になっている。
【0065】
圧縮コイルばね52は、長さ方向の一端部(上端部)521が壁体98の下面99に設けられた、2~3mm程度の高さの支持筒981の中に嵌り込んで壁体98に支持され、長さ方向の他端部(下端部)522が自由端になっており、
図5~
図7に示すように繰り出しローラー21が繰り出し位置に存するときには、下端部522が宙に浮いた状態になっている。なお、圧縮コイルばね52の上端部521の壁体98への支持は、支持筒981への嵌め込みに限られず、壁体98に接着等により固定するとしても良い。
【0066】
圧縮コイルばね52は、コイル部520の内径が係止突起51の爪部512の最大幅よりも大きく、ホルダー24が給紙ローラー22の回転軸221を中心に矢印95の向きに回転、つまり上昇したときに、ホルダー24に突設された係止突起51の爪部512が圧縮コイルばね52の内側空間528(
図7)に入り込みつつ、爪部512の傾斜面515がコイル部520の巻き線525を内周側から傾斜面515の傾斜角に応じた量、外周側に押すことでその押圧方向にも変形させながら上に向かって摺動するように、係止突起51との位置関係が予め決められている。なお、圧縮コイルばね52の素材は、金属に限られることはなく、例えばPEなどの樹脂でも良い。
【0067】
ロック解除部60は、ワンウエイクラッチ69(破線)が内蔵された板カム63を含む。板カム63は、偏心カムであり、ホルダー24に回転自在に支持された繰り出しローラー21の回転軸211の両端部のうち、ホルダー24の背面242から外に突出した軸部21aの先端部に嵌め込まれている。
【0068】
ワンウエイクラッチ69は、繰り出しローラー21の回転軸211が
図4に示す矢印96bの向きに回転するとき(駆動モーター251の正転時)、回転軸211の回転力を板カム63に伝え(オンになり)、回転軸211が
図4に示す矢印95bの向きに回転するとき(駆動モーター251の逆転時)、回転軸211の回転力を板カム63に伝えない(オフ)。なお、一方向にのみ回転駆動力を伝達するものであれば、ワンウエイクラッチに限られず、例えばワンウエイベアリングやラチェット機構などを用いることもできる。
【0069】
板カム63は、PEなどの樹脂により形成されるが、これに限られず、鉄などの金属製でも良い。
〔5〕ロック部29によるホルダー24のロックと解除部60によりロック解除の動作説明
図8は、駆動モーター251の逆転により、ホルダー24が第1位置から上昇する様子を示す概略背面図である。
【0070】
同図に示すように、繰り出しローラー21が
図5に示す繰り出し位置よりも上昇しており、係止突起51の上端部511が圧縮コイルばね52の内側空間528に入り込んで、爪部512の傾斜面515が巻き線525の内周側の面に接触しつつホルダー24の台座243の上面244が圧縮コイルばね52の下端部522を押し上げることで圧縮コイルばね52が圧縮変形している。この圧縮コイルばね52の圧縮変形が、圧縮コイルばね52を介するホルダー24と壁体98との衝撃エネルギーを吸収するので、衝突音が緩和される。
【0071】
ホルダー24の上昇中は、繰り出しローラー21の逆転により板カム63に内蔵されたワンウエイクラッチ69がオフになるので、繰り出しローラー21の回転軸211の回転力が板カム63には伝わらず、板カム63は、繰り出しローラー21の回転軸211に対して同図の反時計方向に滑ったようになる。このため、板カム63の先端部61(回転軸211から径方向に最も離れた部分)が圧縮コイルばね52の下端部522に当たっても、板カム63が圧縮コイルばね52に下から押し上げる力を付与することはない。
【0072】
なお、ホルダー24が給紙ローラー22の回転軸221を中心に上下に揺動する場合における繰り出しローラー21の回転軸211の移動軌跡249(一点鎖線)が
図8に示されている。同図に示すように移動軌跡249が圧縮コイルばね52から離隔しているので、繰り出しローラー21の回転軸211が圧縮コイルばね52に接触せず、板カム63においてその先端部61だけが圧縮コイルばね52に接触するように、板カム63の大きさと圧縮コイルばね52に対する繰り出しローラー21の回転軸211の位置関係が予め決められている。
【0073】
図9は、ホルダー24が
図8に示す位置よりもさらに上昇したときの様子を示す概略背面図であり、圧縮コイルばね52の変形量が
図8に示すときよりも大きくなっている。係止突起51が鉛直方向に対して少し右へ傾いた姿勢になっている。
【0074】
圧縮コイルばね52の圧縮変形量が大きくなるほど、フックの法則により圧縮コイルばね52の復元力Pが大きくなる。圧縮コイルばね52の復元力Pが大きくなるほど、ホルダー24を下方に押し下げる力、つまりホルダー24を給紙ローラー22の回転軸221を中心に下向きに回転させようとするモーメントMが大きくなる。
【0075】
ホルダー24の上昇中には、給紙ローラー22の回転軸221に、逆転する駆動モーター251からの回転駆動力Qが作用しているので、この回転駆動力Qに抗するように圧縮コイルばね52の復元力PによるモーメントMがホルダー24に同時に作用することになる。なお、回転駆動力Qは、上記のようにトルクリミッター255の滑りが作用するときの一定値が最大になる。
【0076】
ホルダー24に作用するモーメントMが駆動モーター251からの回転駆動力Qよりも十分に小さい場合、つまり
図8のように圧縮コイルばね52の圧縮変形量が小さいとき、圧縮コイルばね52がホルダー24に押し上げられることで、さらなる圧縮変形が進む。
【0077】
圧縮変形量が大きくなって圧縮コイルばね52の復元力Pが大きくなり、ホルダー24に作用するモーメントMと駆動モーター251からの回転駆動力Q(上記の最大値)とが釣り合うと、給紙ローラー22の回転軸221の回転が継続しつつホルダー24の上昇が停止して、ホルダー24が
図9に示す位置で静止する。このとき、巻き線525同士が密着していない状態になるように、圧縮コイルばね52のバネ定数が予め決められている。
【0078】
なお、板カム63の先端部61が巻き線525の外周側の面に当たった状態になっているが、上記のように板カム63が圧縮コイルばね52に下から押し上げる力を付与することはない。
【0079】
続いて、駆動モーター251と電磁クラッチ253の少なくとも一方がオフすると(以下、「駆動停止」という。)、回転駆動力Qが0になるので、ホルダー24には、圧縮コイルばね52の復元力Pと自重による下方へ向かう力が作用した状態になり、ホルダー24が下降しようとする。このとき、
図10に示すように係止突起51の爪部512が圧縮コイルばね52の巻き線525の一部529に引っ掛かる。具体的には、巻き線525の一部529が爪部512の先端から内側の引っ掛かり面517に入り込んだようになる。この巻き線525の一部529が、係止突起51に係止される、圧縮コイルばね52の上下方向における一部(被係止部)になる。
【0080】
係止突起51は、ホルダー24の台座243に突設されているので、係止突起51の爪部512が巻き線525に引っ掛かると、ホルダー24が係止突起51の爪部512を介して圧縮コイルばね52の一部529にぶら下がった状態になる。このぶら下がりがホルダー24の落下を阻止し(ホルダー24のロック)、ホルダー24が第2位置で静止した状態に維持される。
【0081】
駆動停止後、電磁クラッチ253がオンしつつ駆動モーター251が正転を開始(以下、「正転駆動を開始」という。)すると、
図11に示すように給紙ローラー22と繰り出しローラー21が正転(矢印96、96bの向き)を開始する。繰り出しローラー21の正転により、板カム63に内蔵されているワンウエイクラッチ69がオンになって、繰り出しローラー21の回転軸211の回転力が板カム63に伝わる。これにより、板カム63が回転軸211と一体で同方向に回転(正転)を開始する。
【0082】
板カム63が回転すると、板カム63の先端部61の周面62(
図7)が圧縮コイルばね52の巻き線525に当たり、圧縮コイルばね52をその上端部521に対して下端部522側を強制的に板カム63から遠ざかる方向(同図左方向)に押し込んで撓ませる。
【0083】
これにより、係止突起51の爪部512の、巻き線525との引っ掛かりが外れる(ロック解除)。この引っ掛かりが外れる動作が確実に行われるように、爪部512の形状や大きさ、板カム63の径方向長さが予め決められる。この意味で、板カム63は、係止突起51の爪部512の、巻き線525との引っ掛かりを外す方向の押圧力を巻き線525に付与する押圧部材として機能し、ワンウエイクラッチ69内蔵の板カム63に加えて、繰り出しローラー21の回転軸211と駆動力伝達機構25、26と駆動モーター251とがロック解除部60を構成するといえる。
【0084】
係止突起51の爪部512が巻き線525から外れると、ホルダー24の自重と、正転している駆動モーター251の回転駆動力により、ホルダー24が第2位置からこれよりも下の第1位置に向かう。これにより、繰り出しローラー21が下降して、原稿の給送動作が可能になる。
【0085】
以上、説明したように本実施の形態では、圧縮コイルばね52が、上昇中のホルダー24との衝突エネルギーの吸収(緩衝機能)と、上昇後に回転駆動力の付与が停止されたホルダー24のロック(ロック機能)の両方を兼用する。
【0086】
これにより、従来相当の構成、すなわち衝突エネルギーの吸収にために緩衝材を用いつつ、ホルダーをロックするための部材として突起とこれに係合する係合部材とバネの3つを用いる構成よりも部品点数を少なくしつつホルダーとの衝突音を軽減できる。
<実施の形態2>
上記実施の形態1では、ホルダー24に突設された係止突起51が圧縮コイルばね52の内側空間528に入り込んで、係止突起51の爪部512が巻き線525に引っ掛かる構成例を説明したが、本実施の形態2では、係止突起51が圧縮コイルばね52の外側から巻き線525に引っ掛かる構成としており、この点で実施の形態1と異なっている。以下、説明の重複を避けるため、実施の形態1と同じ内容についてはその説明を省略し、同じ構成要素については、同符号を付すものとする。
【0087】
図12は、実施の形態2に係る係止突起51の構成例を説明するための概略背面図であり、
図13(a)は、
図12に示す係止突起51の概略斜視図であり、
図13(b)は、
図12に示す係止突起51の概略平面図である。なお、
図12、
図13(a)、(b)では、繰り出しローラー21が繰り出し位置に存し、ホルダー24が第1位置に位置する場合の例を示している。
【0088】
図12、
図13(a)、
図13(b)に示すように係止突起51は、ホルダー24の台座243に立設された基端部510に上端部511が連続しており、上端部511の、板カム63が位置する側の面に、爪部512が設けられ、かつ、ホルダー24の背面242に対向する側の面に、平面視でL字状の屈曲片518が設けられてなる。
【0089】
係止突起51と圧縮コイルばね52とのX軸方向における位置関係は、
図12に示すホルダー24が上昇したときに係止突起51が圧縮コイルばね52に対して矢印X方向の側(左側)に位置し、ホルダー24の上昇により圧縮コイルばね52が圧縮変形しつつ、係止突起51の爪部512が圧縮変形した圧縮コイルばね52の巻き線525を外周側から傾斜面515の傾斜角に応じた量、内周側に押すことで、その押圧方向にも巻き線525を変形させながら上に向かって動き、駆動停止後に係止突起51の爪部512が巻き線525に引っ掛かるような位置関係になっている。
【0090】
係止突起51の屈曲片518は、ホルダー24の台座243よりも上に位置し、係止突起51の上端部511からホルダー24の背面242に向かって延出された第1部分581と、第1部分581の先端から板カム63が位置する方向に直角に折れ曲がってなる第2部分582を有する。
【0091】
第2部分582は、
図13(b)に示すように圧縮コイルばね52よりもホルダー24の背面242に近い側にあり、圧縮コイルばね52とは接触しない。
【0092】
また、第2部分582は、繰り出しローラー21の回転軸21aに嵌め込まれた板カム63とZ軸方向に同じ位置関係を有し、かつ、平面視において板カム63が
図12に示す角度位置にあるときに板カム63の先端部61と第2部分582の先端部585とが重なった状態になる位置関係を有する。このような位置関係としたのは、後述のように繰り出しローラー21の回転軸211と一体で板カム63が正転したときに、板カム63の先端部61の周面62が係止突起51の第2部分582を押圧して、係止突起51を矢印X方向に撓ませることで、係止突起51の爪部512の、巻き線525との引っ掛かりを外す(ロック解除する)ためである。
【0093】
以下、ホルダー24の上昇とロックとロック解除とを順に
図14~
図16により具体的に説明する。
【0094】
図14は、ホルダー24が第1位置から上昇してホルダー24により圧縮コイルばね52が押されて圧縮変形している様子を示す概略背面図である。
【0095】
同図に示すように、ホルダー24と一体で係止突起51が上昇すると、係止突起51の爪部512の傾斜面515がコイルばね52のコイル部520の外側から巻き線525の外側の面に接触しつつ、ホルダー24の台座243の上面244が圧縮コイルばね52の下端部522を押し上げることで圧縮コイルばね52が圧縮変形する。
【0096】
なお、ホルダー24の上昇中は、実施の形態1と同様に、板カム63に内蔵されているワンウエイクラッチ69の作用により、板カム63が繰り出しローラー21の回転軸211に対して滑ったようになる。このため、ホルダー24の上昇中に板カム63の先端部61の周面が係止突起51の屈曲片518の第2部分582に当たっても、係止突起51を撓ませる力を作用させることはなく、屈曲片518の第2部分582の下端に当たって静止した状態になる。
【0097】
図15は、ホルダー24が
図14に示す位置よりもさらに上昇してから駆動停止したときの様子を示す概略背面図であり、係止突起51の爪部512が圧縮コイルばね52の外側から巻き線525の一部529に引っ掛かる。これにより、ホルダー24が係止突起51の爪部512を介して圧縮コイルばね52にぶら下がった状態になり、ホルダー24が第2位置でロックされたことになる。この巻き線525の一部529が、係止突起51に係止される、圧縮コイルばね52の上下方向における一部(被係止部)になる。
【0098】
図16は、駆動停止後、正転駆動が開始されたことにより、給紙ローラー22と繰り出しローラー21が正転(矢印96、96bの向き)を開始した様子を示す概略背面図である。繰り出しローラー21の回転軸211が正転するので、板カム63に内蔵されているワンウエイクラッチ69がオンになって、板カム63が繰り出しローラー21の回転軸211と一体で同方向に回転を開始する。
【0099】
板カム63が矢印96bの向きに回転すると、板カム63の先端部61の周面が係止突起51の第2部分582の先端部585に当たって、第2部分582が矢印X方向に押圧される。この押圧により、板カム63の回転角に応じた偏心量だけ、第2部分582に連続している係止突起51の上端部511が基端部510に対してその押圧方向、つまり係止突起51の突設方向に直交する方向に弾性的に撓み、係止突起51の爪部512が圧縮コイルばね52の巻き線525から離隔して、係止突起51によるロックが解除される。
【0100】
なお、係止突起51は、この弾性的に撓む可撓性を有する素材、例えばPP(ポリプロピレン)やPEなどの樹脂または金属などが用いられる。
【0101】
係止突起51の爪部512が巻き線525から外れると、ホルダー24が第2位置からこれよりも下の第1位置に下降することは、実施の形態1と同じである。
【0102】
このように本実施の形態2では、係止突起51の爪部512が圧縮コイルばね52の外側から巻き線525に引っ掛かって、駆動停止後のホルダー24を第1位置よりも上の第2位置でロックする機構をとるとともに、ロック解除機構として、板カム63が圧縮コイルばね52ではなく、係止突起51の屈曲片518に当たって係止突起51を撓ませることで係止突起51の爪部512の、圧縮コイルばね52の巻き線525との引っ掛かりを外す構成をとっている。このようなロック機構およびロック解除機構をとることでも、実施の形態1と同様に部品点数を少なくしつつホルダーとの衝突音の軽減を実現できる。
<実施の形態3>
上記実施の形態2では、上昇するホルダー24との衝突エネルギーを緩和する緩衝部材として、圧縮コイルばね52を用いた構成例を説明したが、本実施の形態3では、圧縮コイルばね52に代えて、
図17(a)の概略斜視図と
図17(b)の概略背面図に示すようなジグザグ形状のばね352(以下、「ジグザグばね」という。)を用いている点で実施の形態2と異なっている。
【0103】
ジグザグばね352は、帯状の鋼板をジグザグ状に折り曲げてなり、その長さ方向の一端部(上端部)321が壁体98に支持され、他端部(下端部)322が自由端になっている。ジグザグばね352の複数の屈曲部325のそれぞれは、背面視において上から下にかけて順番に左右にジグザグ状に交互に並んでいる。
【0104】
それぞれの屈曲部325に上から順に1番目(最上位)、2番目、3番目・・・というように番号を付したとき、隣り合う2つの屈曲部325、具体的には1番目と2番目、3番目と4番目、5番目と6番目の間の長さがβ(
図17(b))であり、2番目と3番目、4番目と5番目の間の長さがα(<β)になっており、上下方向に隣り合う関係の2つの屈曲部、つまり1番目と3番目、2番目と4番目・・・についてX軸方向の位置が同じになるように設定されている。以下、
図17(b)の概略背面図において、屈曲部325の番号が奇数のものを第1グループ325a、偶数のものを第2グループ325bとして区別する。
【0105】
このようなジグザグばね352を備える構成において、ホルダー24が上昇すると、係止突起51の爪部512の傾斜面515がジグザグばね352の第1グループ325aに属する複数の屈曲部325にうち最下のものから1つずつ上のものに順番に接触しつつ、ホルダー24の台座243の上面244がジグザグばね352の下端部322を押し上げることでジグザグばね352が圧縮変形する。
【0106】
ホルダー24の上昇が進み、その後、駆動停止すると、
図18の部分概略背面図に示すように係止突起51の爪部512がジグザグばね352の複数の屈曲部325のうちの一つに引っ掛かって(ホルダー24のロック)、ホルダー24が係止突起51の爪部512を介してジグザグばね352にぶら下がった状態になる。この一つの屈曲部325が、係止突起51に係止される、ジグザグばね35の上下方向における一部になる。
【0107】
駆動停止後、正転駆動が開始されると、
図19に示すように板カム63が繰り出しローラー21の回転軸211と一体で同方向に回転を開始し、板カム63の先端部61の周面が係止突起51の第2部分582の先端部585を矢印X方向に押圧することで、係止突起51が撓み、係止突起51の爪部512の、ジグザグばね352の屈曲部325との引っ掛かりが外れる。これにより、係止突起51によるロックが解除される。このロック解除機構は、基本的に実施の形態2と同じである。
【0108】
このようにジグザグばね352を用いる実施の形態3の構成でも、実施の形態2と同様に部品点数を少なくしつつホルダーとの衝突音の軽減を実現できる。
【0109】
ジグザグばね352は、帯状の鋼板をジグザグ状に屈曲してなるものなので、板ばねの一種といえ、線状部材を螺旋状に巻いてなるコイルばねよりもバネ定数を大きな値にとり易い。バネ定数が小さいよりも大きい方が、圧縮変形量が同じ場合にホルダー24との衝突エネルギーをより多く吸収できる。ホルダー24との衝突エネルギーは、ホルダー24が上昇するときの運動エネルギーが大きいほど大きくなる。上昇中のホルダー24の運動エネルギーは、繰り出しローラー21や給紙ローラー22を含むホルダー24の全体質量が大きくなるほど軽質量のものよりも大きくなり、また、上昇速度が速くなるほど大きくなる。これらのことから、バネの配置スペースに一定の制限があり、かつホルダー24の全体質量が大きな構成や上昇速度が速い構成の場合に、ジグザグばね352を適用することで設計の自由度が広がり、より適した装置構成を実現できる。
【0110】
なお、ジグザグばね352は、プレスや電気鋳造などの加工方法で製造が可能である。ジグザグばね352は、鋼板に限られず、他の素材の金属製であっても良いし、またはPEなどの樹脂製であっても良い。
<変形例>
以上、本開示を実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示は、上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例が考えられる。
【0111】
〔1〕上記実施の形態1では、上昇するホルダー24との衝突エネルギーを吸収する緩衝部材として圧縮コイルばね52を用いたが、これに限られず、例えば円錐コイルばねなど他の形状のばねを用いることもできる。
【0112】
円錐コイルばねを用いる場合、円錐コイルばねの下端部522の方が上端部521よりも内径が大きくなるような姿勢で壁体98に上端部521が支持される。円錐コイルばねの下端部522は、自由端になる。
【0113】
円錐コイルばねを用いる場合も実施の形態1と同様に、ホルダー24の台座243に立設された係止突起51の爪部512が円錐コイルばねの巻き線525に円錐コイルばねの内側から引っ掛かることで、ホルダー24がロックされる。ロックの解除も実施の形態1と同様に板カム63の回転により行われる。
【0114】
円錐コイルばねを用いる場合、下端部522の方が上端部521よりも内径が大きいので、ホルダー24の上昇により係止突起51が円錐コイルばねの内側空間に入り始めるときには、係止突起51の爪部512が円錐コイルばねの下端部522の巻き線に当たらず、上昇途中で円錐コイルばねの中間部分の巻き線に初めて当たる構成をとり得る。
【0115】
このような構成の場合、係止突起51の爪部512の形状を、爪部512の外側に傾斜面515を設けることに代えて、例えば、係止突起51の上端部511が基端部510に対して直角の角度で折れ曲がる形状として、その屈曲部を爪部512とする構成とすることもできる。係止突起51の爪部が円錐コイルばねの中間部分の巻き線に当たってから駆動停止するような場合、傾斜面515を設けなくても円錐コイルばねに対して係止突起51がスムーズに上昇でき、その中間部分の巻き線に直角の屈曲部が引っ掛かることで、ホルダー24のロックが可能であるからである。
【0116】
また、緩衝部材として、圧縮コイルばね52やジグザグばね352などのばねを用いる構成に代えて、例えば実施の形態2、3において圧縮コイルばね52、ジグザグばね352の代わりに、弾性的な圧縮変形が可能な素材、例えば軟質ウレタンフォームからなる円柱形状または円筒形状のスポンジ体を配置する構成をとることもできる。
【0117】
スポンジ体は、上端部が壁体98に支持され、下端部が自由端になる。このことは、圧縮コイルばね52やジグザグばね352と同じである。スポンジ体は、バネのように巻き線や屈曲部が設けられていないので、係止突起51の爪部512が引っ掛かるための被係止部、例えばスポンジ体の外周面に凹部が予め設けられる。この凹部が、係止突起51に係止される、スポンジ体の上下方向における一部(被係止部)になる。
【0118】
このような構成において、ホルダー24の上昇のときには、係止突起51の爪部512がスポンジ体の外周面を摺動するようにスポンジ体に対して上に動く。駆動停止の際には、圧縮変形したスポンジ体の外周面に設けられた凹部に係止突起51の爪部512が引っ掛かる。これにより、ホルダー24がスポンジ体にぶら下がった状態になり、ロックが完了する。ロックの解除は、実施の形態2、3と同様にカム60が係止突起51の屈曲片518を押圧して係止突起51を撓ませることにより行われる。緩衝とロックの両機能を兼用する部材であれば、スポンジ体に限られず、他の素材のものを用いることもできる。
【0119】
このように緩衝部材をばね以外の圧縮変形可能な部材を用いることもでき、緩衝部材として用いる部材の選択肢が広がって、装置構成に応じてより適した素材からなる緩衝部材を配置することができる。
【0120】
〔2〕上記実施の形態1では、係止突起51をホルダー24の台座243に突設し、圧縮コイルばね52を壁体98に支持する構成、つまり上昇するホルダー24(移動する側)に係止突起51を設け、移動しない側(固定側)の装置本体95の壁体98に圧縮コイルばね52を設ける構成例としたが、これに限られない。例えば、移動側のホルダー24に圧縮コイルばね52を設け、固定側の装置本体に係止突起51を設ける構成例をとることもできる。
【0121】
図20(a)は、本変形例に係る構成を示す概略背面図であり、
図20(b)は、本変形例に係る係止突起51の概略拡大斜視図であり、
図20(c)は、
図20(a)に示す矢印W方向から係止突起51を見たときの係止突起51と圧縮コイルばね52とカム60の位置関係を示す概略図である。
【0122】
図20(a)に示すようにホルダー24の台座243に圧縮コイルばね52の下端部522が支持され、圧縮コイルばね52の上端部521が自由端になっており、壁体98の下面99に係止突起51が下に向けて突設されている。
【0123】
係止突起51は、
図20(b)に示すように基端部510と、爪部512が設けられた下端部511と、下端部511に設けられたL字状の屈曲片718を有している。
【0124】
爪部512は、フック形状であり、その外側にフック先端から基端(後端)側に向かうに連れて下降している傾斜面515が設けられ、その内側に引っ掛かり面517が設けられている。
【0125】
屈曲片718は、壁体98よりも下に位置し、
図20(b)、(c)に示すように係止突起51の下端部511からホルダー24の背面242に向かって延出された第1部分581と、第1部分581の先端から板カム63が位置する方向に直角に折れ曲がってなる第2部分582を有する。第2部分582は、圧縮コイルばね52よりもホルダー24の背面242に近い側にあり、圧縮コイルばね52とは接触しない。屈曲片718は、実施の形態2に係る屈曲片518と同じ機能、つまりロック解除時に板カム63により押圧されて係止突起51を撓わせるために用いられる。
【0126】
このような構成において、ホルダー24が上昇すると、圧縮コイルばね52もホルダー24と一体で上昇する。この上昇により、係止突起51の爪部512の傾斜面515がコイルばね52のコイル部520の外側から巻き線525の外側の面に接触した状態で摺動し、続いてコイルばね52の上端部521が壁体98に当たると、コイルばね52の上端部521の上昇が停止しつつホルダー24の台座243が圧縮コイルばね52の下端部522を押し上げることで圧縮コイルばね52が圧縮変形する。この圧縮変形により、圧縮コイルばね52を介するホルダー24と壁体98との衝撃エネルギーが吸収される。
【0127】
図21は、ホルダー24がさらに上昇してから駆動停止したときの係止突起51とこれの周辺だけを抜き出して示す概略部分背面図である。同図に示すように係止突起51の爪部512が圧縮コイルばね52の外側から巻き線525の一部529(被係止部)に引っ掛かる。これにより、ホルダー24が圧縮コイルばね52、係止突起51を介して壁体98にぶら下がった状態になり、ホルダー24が第2位置でロックされたことになる。
【0128】
なお、ロックの解除は、実施の形態2と同様にカム60の周面が係止突起51の屈曲片718を押圧して係止突起51を撓ませることにより行われる。
【0129】
本変形例に係る構成とすることでも、実施の形態と同様に、部品点数を少なくしつつホルダー24の上昇時に生じる衝突音を軽減できる。
【0130】
また、本変形例に係る圧縮コイルばね52を上記のジグザグばね352やスポンジ体に置き換えてなる別の変形例の構成をとることも可能であろう。
【0131】
〔3〕上記実施の形態では、ホルダー24を給紙ローラー22の回転軸221を中心に上下に揺動自在に支持する構成例を説明したが、ホルダー24がトレイ1に対して上下方向に遊動自在に支持される支持機構であれば良く、例えばホルダー24をその全体が上下方向にスライド移動自在に支持する支持機構をとることもできる。この支持機構をとる場合、駆動部25もホルダー24と一体で上下に移動するように構成しつつ、別の駆動源からの上方向の駆動力でホルダー24を第1位置から上方向にスライド移動させて、第2位置でホルダー24をロックすることができる。ロック解除は、実施の形態1と同様に駆動部25の駆動モーター251の正転により繰り出しローラー21を正転させることで実行できる。なお、ロック解除されると、ホルダー24と駆動部25が自重で下方向にスライド移動して、ホルダー24が第2位置から第1位置に下降する構成とすることができる。
【0132】
〔4〕上記実施の形態1では、板カム63が圧縮コイルばね52の巻き線525に押圧力を付与して巻き線525を撓ませ、実施の形態2では、板カム63が係止突起51に押圧力を付与して係止突起51を撓ませるとしたが、押圧力を押圧対象(巻き線525または係止突起51)に付与する押圧部材は板カム63に限られない。例えば、板カム63とは別に、ソレノイドなどの電動アクチュエーターを用い、その駆動力を押圧力として押圧対象に付与する構成をとることもできる。この構成の場合、ホルダー24を第2位置から第1位置に下降するタイミングで、その電動アクチュエーターがオン(動作)される。
【0133】
〔5〕上記実施の形態では、本開示に係るシート繰り出し部2(シート繰り出し装置)が、MFPの画像読取装置における原稿搬送装置111(シート搬送装置)に備えられる構成例を説明したが、これに限られず、複写機やファクシミリ装置などの画像形成装置に含まれる原稿搬送装置や画像読取装置に備えられるとしても良い。画像読取装置は、画像形成装置の一部となる構成に限られず、原稿の画像を読み取るスキャナーなどの画像読取専用の装置でも良く、このスキャナーが本開示に係るシート繰り出し装置やこれを備えるシート搬送装置を備える構成とすることもできる。
【0134】
また、シート繰り出し装置またはこれを備えるシート搬送装置が画像読取装置に備えられる構成に限られず、例えば給紙カセット121~124(
図1)のそれぞれごとに、給紙カセットのトレイ(不図示)上に載置されている用紙束の用紙を1枚ずつ繰り出して画像形成装置102の搬送路に給送するシート繰り出し装置またはこれを備えるシート搬送装置に用いることもできる。
【0135】
さらに、上記の係止突起51や板カム63を含む各部材の形状、大きさ、個数、素材などが上記のものに限られることはなく、装置構成に適した形状等のものが用いられる。
【0136】
また、上記実施の形態及び上記変形例の構成をそれぞれ可能な限り組み合わせるとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本開示は、トレイ上のシートを繰り出すシート繰り出し装置およびこれを備える画像読取装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0138】
1 原稿トレイ
2 シート繰り出し部
21 繰り出しローラー
22 給紙ローラー
24 ホルダー
25、26 駆動力伝達機構
29 ロック部
51 係止突起
52 圧縮コイルばね
60 ロック解除部
61 板カムの先端部
62 板カムの周面
63 板カム
69 ワンウエイクラッチ
98 壁体
101 画像読取装置
111 原稿搬送装置
243 台座
251 駆動モーター
325 ジグザグばねの屈曲部
352 ジグザグばね
512 爪部
515 爪部の外側の傾斜面
517 爪部の内側の引っ掛かり面
518、718 屈曲片
525 巻き線
529 巻き線の一部