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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】サイクロン容器
(51)【国際特許分類】
   B04C 5/22 20060101AFI20240528BHJP
   B05B 14/45 20180101ALI20240528BHJP
   B04C 5/08 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B04C5/22
B05B14/45
B04C5/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020183498
(22)【出願日】2020-11-02
(65)【公開番号】P2022073484
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】迫田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】中村 彩乃
(72)【発明者】
【氏名】清水 智朗
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-053858(JP,U)
【文献】特開平06-206011(JP,A)
【文献】特開2011-083697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04C 1/00-11/00
B05B 14/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料ミストの遠心分離に用いられるサイクロン容器であって、
上記塗料ミストが流通する筒内空間を有する筒状体と、
上記筒状体を構成する複数の円弧構成部と、
を備え、
上記複数の円弧構成部は、上記筒状体の内壁面を展開可能に互いに組み付けられており、
上記複数の円弧構成部には、展開方向に撓み変形自在に構成されたシート状の第1円弧構成部と、上記第1円弧構成部の周方向の両端部と係合する係合部を有する第2円弧構成部と、が含まれている、サイクロン容器。
【請求項2】
上記複数の円弧構成部には、上記第1円弧構成部の外面を上記第2円弧構成部に向けて押圧した状態で上記第2円弧構成部に組み付けられる第3円弧構成部が含まれている、請求項に記載のサイクロン容器。
【請求項3】
上記第2円弧構成部と上記第3円弧構成部は、上記筒状体の径方向に互いにスライドさせることによって組み付けられ或いは組み付け解除されるように構成されている、請求項に記載のサイクロン容器。
【請求項4】
上記複数の円弧構成部は、上記筒状体の中心軸の方向の吸引力を受けたときに周方向の係合力が強まるように係合する、請求項1~3のいずれか一項に記載のサイクロン容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロン容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディやその関連部品などのワークに塗膜を形成する工程では、塗装ブースで発生した噴霧状の塗料ミストから塗料を回収する塗料回収装置が知られている。下記の特許文献1には、この種の塗料回収装置として、塗料ミストを旋回させて塗料と空気に遠心分離するサイクロン容器を有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-196863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の塗料回収装置では、サイクロン容器の内壁面に塗料が付着して堆積し易く、塗料の堆積量が増えると、圧力損失が増加して排気風量が低下する。そこで、定期的に設備を停止して、サイクロン容器の内部の清掃を行うが、塗料の堆積が進行して塗膜の膜厚が増えると清掃作業するのが難しい。とりわけ、2液硬化型の塗料を処理するサイクロン容器の場合、内壁面に厚くて強固な塗膜を形成し易いため、使用後のメンテナンスに高圧ジェット洗浄や苛性洗浄などの強力な洗浄方法を要するという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、メンテナンス性に優れたサイクロン容器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
塗料ミストの遠心分離に用いられるサイクロン容器であって、
上記塗料ミストが流通する筒内空間を有する筒状体と、
上記筒状体を構成する複数の円弧構成部と、
を備え、
上記複数の円弧構成部は、上記筒状体の内壁面を展開可能に互いに組み付けられており、
上記複数の円弧構成部には、展開方向に撓み変形自在に構成されたシート状の第1円弧構成部と、上記第1円弧構成部の周方向の両端部と係合する係合部を有する第2円弧構成部と、が含まれている、サイクロン容器、
にある。
【発明の効果】
【0007】
上記のサイクロン容器によれば、筒状体を構成する複数の円弧構成部は、筒状体の内壁面を展開可能に互いに組み付けられている。このため、サイクロン容器のメンテナンス時に、複数の円弧構成部の組み付けを解除することによって、筒状体の内壁面を展開して外側に露出させることができる。筒状体の内壁面が外側に露出した状態では、内壁面に付着している塗膜を除去する清掃作業を容易に行うことが可能になる。
【0008】
以上のごとく、上記の態様によれば、メンテナンス性に優れたサイクロン容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1のサイクロン容器の側面図。
図2図1のサイクロン容器の大径筒部の斜視図。
図3図2の大径筒部の平面図。
図4図2の大径筒部の分解斜視図。
図5図3の大径筒部についてサイクロン容器の運転時の様子を示す平面図。
図6図2の大径筒部の組み付け及び組み付け解除の様子を示す平面図。
図7図2の大径筒部の内壁面に付着した塗膜を剥離させる様子を模式的に示す図。
図8図1のサイクロン容器の別の配置形態を示す斜視図。
図9】実施形態2のサイクロン容器の大径筒部について図3に対応した平面図。
図10図9の大径筒部の組み付け及び組み付け解除の様子を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
上述の態様の好ましい実施形態について以下に説明する。
【0011】
上記のサイクロン容器において、上記複数の円弧構成部には、展開方向に撓み変形自在に構成されたシート状の第1円弧構成部と、上記第1円弧構成部の周方向の両端部と係合する係合部を有する第2円弧構成部と、が含まれているのが好ましい。
【0012】
このサイクロン容器によれば、シート状の第1円弧構成部の両端部と第2円弧構成部の係合部との係合を解除した状態で、第1円弧構成部を展開方向に撓み変形させることによって、この第1円弧構成部の内壁面に付着している塗膜を内壁面から容易に剥離させて除去することが可能になる。
【0013】
上記のサイクロン容器において、上記複数の円弧構成部には、上記第1円弧構成部の外面を上記第2円弧構成部に向けて押圧した状態で上記第2円弧構成部に組み付けられる第3円弧構成部が含まれているのが好ましい。
【0014】
このサイクロン容器によれば、第1円弧構成部と第2円弧構成部を、第3円弧構成部を利用して強固に組み付けることができる。
【0015】
上記のサイクロン容器において、上記第2円弧構成部と上記第3円弧構成部は、上記筒状体の径方向に互いにスライドさせることによって組み付けられ或いは組み付け解除されるように構成されているのが好ましい。
【0016】
このサイクロン容器によれば、第2円弧構成部と第3円弧構成部の組み付け或いは組み付け解除の作業を、第2円弧構成部と第3円弧構成部の径方向のスライド操作によって容易に行うことが可能になる。
【0017】
上記のサイクロン容器において、上記複数の円弧構成部は、上記筒状体の中心軸の方向の吸引力を受けたときに周方向の係合力が強まるように係合するのが好ましい。
【0018】
このサイクロン容器によれば、サイクロン容器を内部が負圧の状態で使用するとき、筒状体の中心軸の方向に生じる吸引力によって、複数の円弧構成部の周方向の係合力が強まる。これにより、この吸引力を利用して筒状体の形状を維持することが可能になる。
【0019】
以下、塗料回収装置を構成するサイクロン容器の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
この実施形態を説明するための図面において、特にことわらない限り、サイクロン容器の軸方向を矢印Xで示し、サイクロン容器の径方向を矢印Yで示し、サイクロン容器の周方向を矢印Zで示すものとする。
【0021】
(実施形態1)
図1に示されるように、実施形態1のサイクロン容器1は、塗装ブースで発生した噴霧状の塗料ミストMを含むガスを旋回させて塗料Nと空気Aに遠心分離する機能を有する。このサイクロン容器1は、自らの回転を伴わない固定式の容器であり、横断面の中心を通る中心軸Cが鉛直方向に延びるように配置される。
【0022】
サイクロン容器1は、概して、最大内径を有する筒状体である大径筒部10と、大径筒部10の筒径を下回る最小内径を有する小径筒部51と、大径筒部10と小径筒部51との間に設けられた円錐筒部50と、を有する。
【0023】
円錐筒部50は、大径筒部10側から小径筒部51側に向けて内径が漸減するように構成されたテーパー形状を有する。円錐筒部50と小径筒部51は一体化されており、大径筒部10と円錐筒部50は、それぞれのフランジ部分においてボルト部材Bによって分離可能に固定されている。
【0024】
大径筒部10において、その内壁面10aによって囲まれる筒内空間Sは塗料ミストMが流通する空間である。大径筒部10には、筒内空間Sにいずれも連通する排気管12及び吸気管38が設けられている。
【0025】
排気管12は、大径筒部10の上部を塞ぐ天板部11の貫通穴11aに取り付けられている。排気管12は、円筒形状を有し、その筒軸が中心軸C上に位置するように配置されている。排気管12の下流には吸気ファン12aが設けられている。
【0026】
吸気ファン12aを運転することによって、サイクロン容器1の内部に内壁面10aに沿って中心軸Cまわりに旋回流が形成される。この旋回流によって、塗料ミストMを含むガスが塗料Nと空気Aに遠心分離される。このとき、大径筒部10の筒内空間Sから排気管12に向かう排気流れが形成され、遠心分離後の空気Aが排気管12を通じて排気される。一方で、遠心分離後の塗料Nは、小径筒部51の下方に設けられた回収部52によって回収される。
【0027】
図2及び図3に示されるように、筒状体である大径筒部10は、3つの円弧構成部20,30,40によって構成されている。これら3つの円弧構成部20,30,40によって、大径筒部10の周方向Zの円弧部分が形成されている。3つの円弧構成部20,30,40は、大径筒部10の内壁面10aを展開可能に互いに組み付けられている。なお、必要に応じて、円弧構成部の数を2つ或いは4つ以上にすることもできる。
【0028】
大径筒部10の内壁面10aは、第1円弧構成部20の内壁面20aと、第2円弧構成部30の内壁面30aと、によって形成される。第2円弧構成部30には、吸気管38に連通する吸気開口30bが設けられている。
【0029】
図3に示されるように、大径筒部10は、第2円弧構成部30に設けられているフランジ31と、第3円弧構成部40に設けられているフランジ41と、を互いに突き合せた状態で、留め具39によって組み付けられる。留め具39の種類は特に限定されないが、一例として、「パッチン錠」或いは「スナップ錠」と称呼されるものを、留め具39として使用できる。これにより、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の組み付け作業及び組み付け解除作業が簡単になる。
【0030】
図4に示されるように、第1円弧構成部20は、展開方向D1,D2に撓み変形自在に構成されたシート状のシート部材からなる。この第1円弧構成部20を展開方向D1,D2に撓ませつつ口開きすることによって、大径筒部10の内壁面10aの一部を形成する内壁面20aを外側に展開することができる。
【0031】
第1円弧構成部20の材質は特に限定されないが、可撓性を有するものであって、塗料が付着しにくい難付着性、或いは付着した塗料が剥離しやすい高剥離性を有するシート部材を採用するのが好ましい。一例として、ポリエチレンやポリプロピレンからなるシート部材を採用したり、難付着性や高剥離性を有するコーティング層をシート状の鋼材の表面に設けたものをシート部材として採用したりすることができる。
【0032】
第2円弧構成部30は、ベース部分を構成する略三角形のフランジ31と、フランジ31の上面に立設された立設壁32と、立設壁32に連接して設けられ内壁面30aを有する立設壁33と、2つの係合壁34,35と、2つの係合壁34,35によって形成される係合溝36と、係合片37と、を有する。係合溝36及び係合片37は、第1円弧構成部20の周方向Zの両端部21,22と係合する係合部として構成されている。
【0033】
第2円弧構成部30の材質は特に限定されないが、大径筒部10の内壁面10aの一部を形成する内壁面30aを有しており、この内壁面30aに塗料が付着するため、難付着性や高剥離性を有するコーティング層を使用するのが好ましい。
【0034】
第2円弧構成部30を、サイクロン容器1の軸方向Xについてみたとき、立設壁32の周方向Zの一端側の部位がフランジ31からはみ出すように構成されている。立設壁33に吸気開口30bが開口形成されている。
【0035】
第3円弧構成部40は、ベース部分を構成する略三角形のフランジ41と、フランジ41の上面に立設された立設壁42と、を有する。第3円弧構成部40を軸方向Xについてみたとき、立設壁42の周方向Zの一端側の部位がフランジ41からはみ出すように構成されている。
【0036】
第2円弧構成部30と第3円弧構成部40を組み付けるとき、フランジ31の端面31aとフランジ41の端面41aとを互いに突き合せ、且つフランジ31の端面31bとフランジ41の端面41bとを互いに突き合せる。また、立設壁32の周方向Zの一方の端面32aと立設壁42の周方向Zの一方の端面42aとを互いに突き合せる。
【0037】
第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の組み付け状態で、第1円弧構成部20は、周方向Zの一端部21が第2円弧構成部30の係合溝36に嵌め込まれ、且つ周方向Zの他端部22が第2円弧構成部30の係合片37に当接するように組み付けられる。このとき、第1円弧構成部20の他端部22を係合片37と立設壁42の周方向Zの端面42bとで挟み込むようにしてもよい。これにより、第3円弧構成部40は、その立設壁42において第1円弧構成部20の外面を第2円弧構成部30に向けて押圧した状態で第2円弧構成部30に組み付けられる。
【0038】
図5に示されるように、サイクロン容器1の使用時には、吸気ファン12a(図1を参照)の吸引によって筒内空間Sが負圧になる。ここで、第1円弧構成部20と第2円弧構成部30は、負圧によって中心軸Cの方向の吸引力(図5中の矢印を参照)を受けたときに周方向Zの係合力が強まるように係合している。即ち、第1円弧構成部20は、その一端部21aが第2円弧構成部30側の係合溝36に周方向Zにスライド可能に係合しており、中心軸Cの方向の吸引力によって一端部21aが係合溝36により深く進入するように付勢される。これにより、第1円弧構成部20は縮径するように締め付けられ、大径筒部10の形状を維持することが可能になる。
【0039】
図6には、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の組み付け状態を、サイクロン容器1の軸方向Xについてみたときの様子が示されている。ここで、第3円弧構成部40の立設壁42の2つの端面42a,42bを直線的に結ぶ仮想線L1と、第2円弧構成部30のフランジ31と第3円弧構成部40のフランジ41との突き合わせ面を通る仮想線L2としたとき、仮想線L1と想線L2は、互いに周方向Zにずれた位置にある。仮想線L1は、図6中の径方向Yと概ね直交する方向に延びている。
【0040】
このため、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40は、大径筒部10の径方向Yに互いに干渉することなくスライド可能であり、このスライドによって互いに組み付けられ或いは組み付け解除されるように構成されている。図6では、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の組み付け解除方向(互いに離間する方向)を矢印で示している。
【0041】
また、2つの仮想線L1,L2がずれているため、サイクロン容器1の軸方向Xについて、第2円弧構成部30の立設壁32が第3円弧構成部40のフランジ41と重なり、且つ第3円弧構成部40の立設壁42が第2円弧構成部30のフランジ31と重なる。このとき、軸方向Xの一方向について第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の相対移動が規制される。このため、立設壁32をフランジ41上で摺動させ、立設壁42をフランジ31上で摺動させながら、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の組み付け及び組み付け解除を行うことができる。その結果、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40を、組み付け時及び組み付け解除時に径方向Yに容易にスライドさせることができる。
【0042】
大径筒部10は、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の組み付けを解除した後、第1円弧構成部20を取り外すことによって、第1円弧構成部20の清掃作業が可能になる。
【0043】
図7に示されるように、第1円弧構成部20の内壁面20aに付着して堆積した塗膜Naを除去する場合、例えば、第1円弧構成部20の一端部21を把持して展開方向D1に撓ませつつ口開きする。このとき、第1円弧構成部20を外側に捲ることによって、大径筒部10の内壁面10aの一部を形成する内壁面20aを外側に展開することができる。これにより、塗膜Naが厚くて捲ることができないような場合、第1円弧構成部20を外側に捲ることによって、第1円弧構成部20の内壁面20aから塗膜Naを容易に剥離させて除去することができる。例えば、2液硬化型の塗料の処理時のように、第1円弧構成部20の内壁面20aに厚く強固な塗膜Naが形成されたとき、この塗膜Naを内壁面20aから剥離させるのに有効である。勿論、第1円弧構成部20の内壁面20aに付着している塗膜Naが薄い場合には、塗膜Na自体を捲って剥離させるようにしてもよい。
【0044】
なお、図8に示されるように、サイクロン容器1を、図1に示される配置形態とは異なる配置形態で使用することもできる。この使用形態では、大径筒部10側が高所となり小径筒部51側が低所となるように傾斜した状態でサイクロン容器1が使用される。このとき、サイクロン容器1は、中心軸Cが水平方向に対して傾斜角度θで傾斜している。
【0045】
上述の実施形態1によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0046】
実施形態1のサイクロン容器1によれば、大径筒部10を構成する3つの円弧構成部20,30,40は、大径筒部10の内壁面10aを展開可能に互いに組み付けられている。このため、サイクロン容器1のメンテナンス時に、3つの円弧構成部20,30,40の組み付けを解除することによって、大径筒部10の内壁面10aを展開して外側に露出させることができる。大径筒部10の内壁面10aが外側に露出した状態では、内壁面10aに付着している塗膜Naを除去する清掃作業を容易に行うことが可能になる。
【0047】
従って、実施形態1によれば、メンテナンス性に優れたサイクロン容器1を提供することができる。
【0048】
上記のサイクロン容器1によれば、シート状の第1円弧構成部20の両端部21,22と第2円弧構成部30の係合部36,37との係合を解除した状態で、第1円弧構成部20を展開方向D1或いはD2に撓み変形させることによって、この第1円弧構成部20の内壁面20aに付着している塗膜Naを内壁面20aから容易に剥離させて除去することが可能になる。
【0049】
上記のサイクロン容器1によれば、第1円弧構成部20と第2円弧構成部30を、第3円弧構成部40を利用して強固に組み付けることができる。
【0050】
上記のサイクロン容器1によれば、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の組み付け或いは組み付け解除の作業を、第2円弧構成部30と第3円弧構成部40の径方向Yのスライド操作によって容易に行うことが可能になる。
【0051】
上記のサイクロン容器1によれば、サイクロン容器1を内部が負圧の状態で使用するとき、大径筒部10の中心軸Cの方向に生じる吸引力によって、第1円弧構成部20と第2円弧構成部30の周方向Zの係合力が強まる。これにより、この吸引力を利用して大径筒部10の形状を維持することが可能になる。
【0052】
次に、上述の実施形態1に関連する他の実施形態について図面を参照しつつ説明する。他の実施形態において、実施形態1の要素と同一の要素には同一の符号を付しており、当該同一の要素についての説明は省略する。
【0053】
(実施形態2)
図9に示されるように、実施形態2のサイクロン容器101は、大径筒部110の構造が実施形態1の大径筒部10のものと相違している。大径筒部110は、同形状の複数の円弧構成部120に分割されており、各円弧構成部120がヒンジ部121を介して別の円弧構成部120に連結されている。即ち、複数の円弧構成部120が一体化されている。各円弧構成部120は、全周アーチ構造(「樽構造」ともいう。)の側板に類似の形状を有する。なお、円弧構成部120の数は、必要に応じて適宜に変更が可能である。
【0054】
複数の円弧構成部120には、周方向Zの一端部となる円弧構成部120Aと、周方向Zの他端部となる円弧構成部120Bと、が含まれている。複数の円弧構成部120は、円弧構成部120Aと円弧構成部120Bが留め具39によって分離可能に、且つ大径筒部110の内壁面110aを展開可能に互いに組み付けられている。
【0055】
また、各円弧構成部120の内側端部には、隣接する円弧構成部120との間の隙間に塗料が侵入するのを防止するための襞122が設けられている。
【0056】
複数の円弧構成部120は、その組み付け状態で、負圧によって中心軸Cの方向の吸引力(図9中の矢印を参照)を受けたときに周方向Zの係合力が強まるように係合している。即ち、隣接する2つの円弧構成部120は、中心軸Cの方向の吸引力を受けて互いに圧縮される圧縮方向(周方向Zについて互いに近づく方向)に付勢される。これにより、大径筒部110の変形を抑制するとともに、隣接する2つの円弧構成部120の間の隙間を埋めることができる。
【0057】
図10に示されるように、複数の円弧構成部120の組み付けを解除するときには、留め具39を外す操作の後、円弧構成部120Aと円弧構成部120Bを分離する。そして、円弧構成部120Bを外側にめくるようにして、円弧構成部120Aから引き離す。これにより、大径筒部110の内壁面110aを展開して外側に露出させることができる。一方で、複数の円弧構成部120を組み付けるときには、円弧構成部120Aと円弧構成部120Bを接合させて留め具39を留めるように操作する。
【0058】
その他の構成は、実施形態1と同様である。
【0059】
実施形態2によれば、実施形態1の場合と同様に、メンテナンス性に優れたサイクロン容器101を提供することができる。また、複数の円弧構成部120が一体化されているため、大径筒部110の組み付け或いは組付けを解除する作業を容易に行うことができる。
【0060】
その他、実施形態1と同様の作用効果を奏する。
【0061】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の応用や変更が考えられる。例えば、各実施形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0062】
上述の実施形態では、大径筒部10,110と、円錐筒部50と、小径筒部51と、を有するサイクロン容器1,101について例示したが、実施形態の特徴を、少なくとも大径筒部10,110を有するサイクロン容器の構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
1,101 サイクロン容器
10,110 大径筒部(筒状体)
10a,110a 内壁面
20 第1円弧構成部(円弧構成部)
21,22 両端部
30 第2円弧構成部(円弧構成部)
36 係合溝(係合部)
37 係合片(係合部)
40 第3円弧構成部(円弧構成部)
C 中心軸
D1,D2 展開方向
M 塗料ミスト
S 筒内空間
Y 径方向
Z 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10