(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ボールねじ
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
F16H25/22 C
(21)【出願番号】P 2020197509
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 俊郎
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-144244(JP,U)
【文献】特開2020-98034(JP,A)
【文献】特開2007-211898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に螺旋状の第1ねじ溝を有し、かつ、径方向に貫通する円形の貫通孔と前記貫通孔の径方向外側に位置し前記貫通孔に径方向で重なる有底穴とが設けられる筒状のナットと、
前記ナットの内方に挿入され、外周面に螺旋状の第2ねじ溝を有するねじ軸と、
前記第1ねじ溝と前記第2ねじ溝とで囲まれる転動路に収容される複数のボールと、
一方側の端面に前記第1ねじ溝同士を連通する連通溝が設けられ、かつ、前記ナットの前記貫通孔に嵌まる円柱部と、前記円柱部の他方側の端部と重なる楕円形状を有するフック部と、を有するふた部材と、
を備え、
前記ナットの前記有底穴は、長手方向の第1距離が前記フック部の長径よりも大きく、かつ、短手方向の第2距離が前記フック部の短径よりも大きい長穴であり、前記有底穴を挟んで対向する一対の内周壁のそれぞれに前記有底穴から遠ざかる方向に凹む一対の凹部が設けられ、前記フック部の一部は、前記凹部に挿入されている、
ボールねじ。
【請求項2】
前記一対の凹部のうちの一方の凹部と他方の凹部との最大距離は、前記フック部の長径よりも小さい、
請求項1に記載のボールねじ。
【請求項3】
前記ナットの前記内周壁の前記凹部は、前記ナットの径方向から見た状態で、前記フック部の前記一部の曲率よりも小さい曲率の円弧形状を有する、
請求項1又は2に記載のボールねじ。
【請求項4】
前記ふた部材の外表面には、前記フック部の長軸又は短軸に沿って直線状に延びる凹溝が設けられる、
請求項1から3のいずれか1項に記載のボールねじ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボールねじに関する。
【背景技術】
【0002】
ボールねじは、ねじ軸とナットとを備え、例えば、ねじ軸を回転運動させることでナットを直線運動させる運動変換機構として使用されている。詳細には、ねじ軸の外周面に螺旋状のねじ溝が設けられ、ナットの内周面に螺旋状のねじ溝が設けられ、対向する両ねじ溝により転動路が形成され、この転動路に複数のボールが収容される。また、ボールねじは、ナットのねじ溝間を接続して、転動路にボールを循環させる循環機構を備えている。循環機構としては形式が異なる種々のものがあり、その一つに駒式と呼ばれるものがある。この駒式のボールねじは、ナットの隣接するねじ溝間を接続する連通溝を有し、ボールの転動路を周回経路とする循環用のふた部材をナットに装着しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のふた部材は、接着剤を用いてナットに固定するため、接着剤が実用強度に達するまでにはある程度の時間が必要であり、接着剤が十分硬化するまでの組立て時間が掛かることになる。さらに、適量の接着剤を決められた部位に塗布する為の設備のコストや、接着剤を保管管理する手間がかかる。
【0005】
本開示は、前記の課題に鑑みてなされたものであって、ふた部材をナットに装着する作業をより簡素化することができるボールねじを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本開示の一態様のボールねじは、内周面に螺旋状の第1ねじ溝を有し、かつ、径方向に貫通する円形の貫通孔と前記貫通孔の径方向外側に位置し前記貫通孔に径方向で重なる有底穴とが設けられる筒状のナットと、前記ナットの内方に挿入され、外周面に螺旋状の第2ねじ溝を有するねじ軸と、前記第1ねじ溝と前記第2ねじ溝とで囲まれる転動路に収容される複数のボールと、一方側の端面に前記第1ねじ溝同士を連通する連通溝が設けられ、かつ、前記ナットの前記貫通孔に嵌まる円柱部と、前記円柱部の他方側の端部と重なる楕円形状を有するフック部と、を有するふた部材と、を備え、前記ナットの前記有底穴は、長手方向の第1距離が前記フック部の長径よりも大きく、かつ、短手方向の第2距離が前記フック部の短径よりも大きい長穴であり、前記有底穴を挟んで対向する一対の内周壁のそれぞれに前記有底穴から遠ざかる方向に凹む一対の凹みが設けられ、前記フック部の一部は、前記凹みに挿入されている。
【0007】
このように、フック部の一部は、凹みに挿入されているため、接着剤を用いないで、ふた部材をナットに装着することができる。従って、接着剤を塗布する作業工程が省略することにより、ふた部材をナットに装着する作業をより簡素化することができる。また、フック部の一部は、凹みに挿入されているため、ふた部材に対して荷重が入力されても、ふた部材がナットから抜けずに保持される。そして、ナットの有底穴は、長手方向の第1距離がフック部の長径よりも大きく、かつ、短手方向の第2距離がフック部の短径よりも大きい長穴である。従って、ナットの有底穴にふた部材を容易に挿入することができる。
【0008】
前記ボールねじの望ましい態様として、前記一対の凹みのうちの一方の凹みと他方の凹みとの最大距離は、前記フック部の長径よりも小さい。これにより、フック部の一部が凹みによって圧縮された状態となる。従って、接着剤を用いずに摩擦力によってふた部材がナットに、より確実に固定され、また、ナットに対して、ふた部材の径方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0009】
前記ボールねじの望ましい態様として、前記ナットの前記内周壁の前記凹みは、前記ナットの径方向から見た状態で、前記フック部の前記一部の曲率よりも小さい曲率の円弧形状を有する。これにより、ふた部材を回転させるという簡単な動作で、フック部の一部を凹みにスムーズに挿入させることができる。
【0010】
前記ボールねじの望ましい態様として、前記ふた部材の外表面には、前記フック部の長軸又は短軸に沿って直線状に延びる凹溝が設けられる。これにより、先端が尖った、例えばマイナスドライバーのような工具や治具を凹溝に差し込んで回転させることにより、ふた部材を容易に回転させることができる。また、ふた部材の回転角度を凹溝の向きを視認することにより、容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るボールねじによれば、ふた部材をナットに装着する作業をより簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態のボールねじを示す一部が断面の側面図である。
【
図6】
図6は、実施形態のふた部材を表面側から見た正面図である。
【
図7】
図7は、
図6のふた部材を裏面側から見た背面図である。
【
図10】
図10は、
図6のふた部材を表面側から見た正面図であり、ナットの収容部に挿入した状態を示している。
【
図11】
図11は、
図6のふた部材を表面側から見た正面図であり、
図10の状態から90°回転させてフック部が弾性変形している状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0014】
実施形態のボールねじについて説明する。
図1は、実施形態のボールねじを示す一部が断面の側面図である。
図2は、
図1のナットの側面図である。
図3は、
図1のナットを軸方向から見た正面図である。
【0015】
図1に示すように、ボールねじ1は、ナット2と、ねじ軸3と、ボール4と、ふた部材5と、を備える。
【0016】
図1に示すように、ねじ軸3は、軸心Axに沿って延びる。ねじ軸3は、外周面に、螺旋状のねじ溝31(第2ねじ溝)とねじ山32とを備える。
図1から
図3に示すように、ナット2は、円筒部21とフランジ部22とを備える。円筒部21は、ねじ軸3の外周側に位置する円筒形状を有する。即ち、円筒部21の内方にねじ軸3が挿入される。円筒部21の内周面215に、螺旋状のねじ溝213(第1ねじ溝)が設けられる。円筒部21には、ふた部材5を収容可能な収容部210が設けられる。収容部210及びふた部材5については、詳細に後述する。
【0017】
なお、円筒部21の外周面216には、軸方向(
図1の左右方向)の一端部に窪み211が設けられ、他端部に面取部212が設けられる。フランジ部22は、円筒部21の一端部からナット2の径方向外側に向けて円板状に広がる。ねじ溝213(第1ねじ溝)とねじ溝31(第2ねじ溝)とで囲まれる部位は、転動路40である。転動路40には、複数のボール4が収容され、転動路40内をボール4が移動(転動)する。
【0018】
図4は、
図2のIV-IV線による断面図である。
図5は、
図2のV-V線による断面図である。なお、
図4および
図5は、貫通孔233の中心CLを含む平面での断面を示す。
【0019】
図4及び
図5に示すように、収容部210は、円形の貫通孔233と有底穴234とを含む。貫通孔233は、ナット2の径方向内側(
図4及び
図5の下側)に位置し、径方向(
図4及び
図5の上下方向)に貫通して延びる円形の貫通孔である。貫通孔233の直径はL10である。
図2に示すように、有底穴234は、ナット2の径方向から見て周方向に延びる長方形状の長穴である。具体的には、円筒部21の周方向に延びる一対の長辺218と、軸方向に延びる一対の短辺217とによって長方形状の有底穴234となる。ただし、本発明の有底穴は、長方形状に限定されず、例えば、楕円形状等でもよい。なお、有底穴234の底は、
図5に示す底部235であり、円筒部21の外周面の一部を切り取った面となっている。
図5に示すように、有底穴234の長辺218の長さは、第1距離L1である。
図4に示すように、短辺217の長さは、第2距離L2である。
【0020】
また、
図4に示すように、一対の長辺218は、有底穴234を挟んで対向して配置される。つまり、有底穴234を挟んで対向する一対の内周壁231が一対の長辺218に対応する。内周壁231には、有底穴234から遠ざかる方向(
図4の左右方向)に凹む一対の凹み214が設けられる。有底穴234から遠ざかる方向とは、有底穴234の短辺方向外側の方向でもある。具体的には、
図4の左側の内周壁231には、
図4の左側に凹む凹み214が設けられ、
図4の右側の内周壁231には、
図4の右側に凹む凹み214が設けられる。一方の凹み214と他方の凹み214との最大距離である第3距離L3は、後述するフック部52の長径L20よりも小さい。即ち、一方の凹み214と他方の凹み214との距離のうちで最大となるのは、
図2に示す貫通孔233の中心CLを通る位置での距離であり、
図4の断面に示す第3距離L3である。
【0021】
また、
図2に示すように、凹み214は、ナット2の円筒部21の径方向から見て、中心CLを中心とする円弧の形状を有する。凹み214は、
図4に示すように、断面形状が矩形状である。凹み214は、
図4の断面において、深さがL4であり、有底穴234の軸方向における高さがL5である。凹み214は、例えばキーシードカッターを用いたキーシード加工によって成形される。
【0022】
図6は、実施形態のふた部材を表面側から見た正面図である。
図7は、
図6のふた部材を裏面側から見た背面図である。
図8は、
図6のふた部材を側方から見た側面図である。
図9は、
図6のふた部材を上方から見た平面図である。
【0023】
図6から
図9に示すように、ふた部材5は、円柱部51と、フック部52と、を備える。ふた部材5は、弾性を有する樹脂製である。円柱部51は、ナット2の貫通孔233に嵌まる円柱形状を有する。円柱部51の軸方向の端面55は、
図8に示すように、ナット2の円筒部21の内周面215に沿って湾曲している。端面55には、連通溝54が設けられる。連通溝54は、ナット2のねじ溝213(第1ねじ溝)同士を連通する。
図7に示すように、連通溝54は、略S字状に湾曲している。これにより、連通溝54は、ナット2の隣接するねじ溝213(第1ねじ溝)間を滑らかに接続する。ふた部材5の材料としては、アルミニウム、真鍮、銅などの金属材料を使用することもできる。
【0024】
フック部52は、円柱部51の軸方向(
図8及び
図9の左右方向)の端部に固定され円柱部51の軸方向から見て円柱部51と重なる楕円形状を有する。
図6及び
図7において、フック部52の長軸(長辺)はD1であり、短軸(短辺)はD2である。長軸D1は
図6及び
図7の左右方向に延び、短軸D2は
図6及び
図7の上下方向に延びる。また、
図6及び
図7に示すように、フック部52の周縁部のうち長軸D1と交差する部位は第1周縁部57と称し、フック部52の周縁部のうち短軸D2と交差する部位は第2周縁部58と称する。
図6に示すように、凹溝53は、短軸D2に沿って直線状に延びる。ふた部材5の外表面56には、フック部52の短軸D2に沿って直線状に延びる凹溝53が設けられる。
【0025】
ここで、ナット2の有底穴234は、長手方向の第1距離L1がフック部52の長径L20(
図6参照)よりも大きく、かつ、短手方向の第2距離L2がフック部52の短径L30(
図6参照)よりも大きい。
図2に示すように、ナット2の凹み214は、ナット2の径方向から見た状態で、フック部52の第1周縁部57の縁の曲率よりも小さい曲率の円弧形状を有する。換言すれば、ナット2の凹み214の円弧の曲率半径は、第1周縁部57の縁の曲率半径よりも大きい。凹み214の軸方向高さL5は、フック部52の第1周縁部57の厚さよりも大きい。これにより、ふた部材5の径方向位置を容易に調整することができ、ナット2のねじ溝213と連通溝54との段差を小さく設定することができる。
【0026】
図10は、
図6のふた部材を表面側から見た正面図であり、ナットの収容部に挿入した状態を示している。
図11は、
図6のふた部材を表面側から見た正面図であり、
図10の状態から90°回転させてフック部が弾性変形している状態を示している。
【0027】
ふた部材5をナット2の収容部210に収容する手順を簡単に説明する。
【0028】
まず、
図10に示すように、ふた部材5を長軸D1を、ナット2の円筒部21の周方向に配置した状態で、
図2に示す収容部210の有底穴234にふた部材5を挿入する。このとき、凹溝53は、
図10に示すように、円筒部21の軸方向(短軸D2の方向)に延びている。
【0029】
次に、ふた部材5の径方向の位置決めを行う。このとき、ふた部材5の連通溝54とナット2のねじ溝213(第1ねじ溝)との接続部分における径方向の段差が小さくなるように、いわゆる現物合わせにて調整する。具体的には、位置決め用の治具により、ねじ溝213を基準として連通溝54が所定の径方向位置となるように、ふた部材5の径方向位置を決める。
【0030】
さらに、ふた部材5は、径方向の位置を維持した状態で、時計回り方向又は反時計回り方向に、例えば90°の角度で回転される。このとき、連通溝54とねじ溝213との接続部分における軸方向の段差が小さくなるように、現物合わせにて調整する。すると、
図11に示すように、凹溝53は、円筒部21の周方向に延びた状態となる。また、凹み214(
図4参照)の軸方向高さL5は、フック部52の第1周縁部57の厚さよりも大きく、その寸法差は、上述した現物合わせにおける最大調整寸法よりも大きい。このため、フック部52の第1周縁部57は、内周壁231と干渉することなく、凹み214に挿入される。また、一方の凹み214と他方の凹み214との最大距離である第3距離L3はフック部52の長径L20よりも小さい(L3<L20)。このため、フック部52の第1周縁部57は、左右の凹み214から圧縮されて弾性変形し、
図11に示すように第1周縁部57は、長軸D1に沿った方向の距離がL40の撓んだ形状となる。これにより、第1周縁部57は弾性変形による摩擦力により、凹み214に位置決め固定される。このように、ふた部材5は、現物合わせにより、ふた部材5の連通溝54とナット2のねじ溝213との接続部分の段差を小さくした状態で、収容部210に位置決め固定される。このため、ナット2(収容部210)の加工精度を高める(寸法公差を小さくする)必要がなく、ナット2のコストダウンが可能となる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係るボールねじ1は、内周面215に螺旋状のねじ溝213(第1ねじ溝)を有し、かつ、径方向に貫通する円形の貫通孔233と貫通孔233の径方向外側に位置し貫通孔233に径方向で重なる有底穴234とが設けられる筒状のナット2と、ナット2の内方に挿入され、外周面に螺旋状のねじ溝31(第2ねじ溝)を有するねじ軸3と、ねじ溝213とねじ溝31とで囲まれる転動路40に収容される複数のボール4と、一方側の端面55にねじ溝213同士を連通する連通溝54が設けられ、かつ、ナット2の貫通孔233に嵌まる円柱部51と、円柱部51の他方側の端部と重なる楕円形状を有するフック部52と、を有するふた部材5と、を備える。ナット2の有底穴234は、長手方向の第1距離L1がフック部52の長径L20よりも大きく、かつ、短手方向の第2距離L2がフック部52の短径L30よりも大きい長穴であり、有底穴234を挟んで対向する一対の内周壁231のそれぞれに有底穴234から遠ざかる方向に凹む一対の凹み214が設けられ、フック部52の第1周縁部57(一部)は、凹み214に挿入されている。
【0032】
このように、フック部52の第1周縁部57(一部)は、凹み214に挿入されるため、接着剤を用いないで、ふた部材5をナット2に装着することができる。従って、接着剤を塗布する作業工程が省略することにより、ふた部材5をナット2に装着する作業をより簡素化することができる。また、フック部52の第1周縁部57(一部)は、凹み214に挿入されているため、ふた部材5に対して荷重が入力されても、ふた部材5がナット2から抜けずに保持される。ここで、ふた部材5に入力する荷重の例は、例えば、ボール4が転動路40に詰まることでふた部材5に与えられる荷重である。そして、ナット2の有底穴234は、長手方向の第1距離L1がフック部52の長径L20よりも大きく、かつ、短手方向の第2距離L2がフック部52の短径L30よりも大きい長穴である。従って、ナット2の有底穴234にふた部材5を容易に挿入することができる。
【0033】
一対の凹み214のうちの一方の凹み214と他方の凹み214との第3距離L3(最大距離)は、フック部52の長径L20よりも小さい。これにより、フック部52の第1周縁部57(一部)が凹み214によって圧縮された状態となる。従って、接着剤を用いずに摩擦力によってふた部材5がナットに、より確実に固定され、また、ナット2に対して、ふた部材5の径方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0034】
ナット2の内周壁231の凹み214は、ナット2の径方向から見た状態で、フック部52の第1周縁部57の曲率よりも小さい曲率の円弧形状を有する。これにより、ふた部材5を回転させるという簡単な動作で、フック部52の第1周縁部57を凹み214にスムーズに挿入させることができる。
【0035】
ふた部材5の外表面には、フック部52の短軸D2に沿って直線状に延びる凹溝53が設けられる。これにより、先端が尖った、例えばマイナスドライバーのような工具や治具を凹溝53に差し込んで回転させることにより、ふた部材5を容易に回転させることができる。また、ふた部材5の回転角度を凹溝53の向きを視認することにより、容易に確認することができる。
【0036】
以上、実施形態を説明したが、前述した内容により実施形態が限定されるものではない。例えば、ふた部材5の外表面には、フック部52の短軸D2に沿って直線状に延びる凹溝53が設けられるが、凹溝53は、フック部52の長軸D1に沿って設けてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ボールねじ
2 ナット
3 ねじ軸
4 ボール
5 ふた部材
31 ねじ溝(第2ねじ溝)
40 転動路
51 円柱部
52 フック部
53 凹溝
54 連通溝
55 端面
57 第1周縁部(一部)
213 ねじ溝(第1ねじ溝)
214 凹み
215 内周面
231 内周壁
233 貫通孔
234 有底穴
L1 第1距離
L2 第2距離
L3 第3距離(最大距離)
L20 長径
L30 短径