(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】熱伝導構造体および熱伝導構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240528BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240528BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240528BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20240528BHJP
F21V 29/76 20150101ALI20240528BHJP
F21V 29/85 20150101ALI20240528BHJP
F21V 7/30 20180101ALI20240528BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240528BHJP
【FI】
H05K7/20 F
H01L23/12 J
H01L23/36 C
H01L23/36 D
F21V29/502 100
F21V29/76
F21V29/85
F21V7/30
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020210760
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正寛
(72)【発明者】
【氏名】北原 浩司
(72)【発明者】
【氏名】四谷 真一
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-174166(JP,A)
【文献】特開2019-176060(JP,A)
【文献】特表2018-510499(JP,A)
【文献】特開2010-182855(JP,A)
【文献】特開昭62-263660(JP,A)
【文献】特開2017-130494(JP,A)
【文献】特開2014-165058(JP,A)
【文献】国際公開第2019/035437(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/12
H01L 23/36
F21V 29/502
F21V 29/76
F21V 29/85
F21V 7/30
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源に接続され、互いに接合されている複数のダイヤモンド基板を有するマウント基板と、
前記マウント基板の前記熱源とは反対側に接合され、前記ダイヤモンド基板より厚い熱伝導基板と、
を備えることを特徴とする熱伝導構造体。
【請求項2】
前記熱源をさらに備え、
前記熱源は、前記マウント基板と接続される接続面を有し、
前記ダイヤモンド基板は、互いに表裏の関係を持つ2つの主面を有し、
2つの前記主面は、前記接続面より小さい請求項1に記載の熱伝導構造体。
【請求項3】
前記ダイヤモンド基板は、
ダイヤモンドを主材料とする基部と、
前記基部の表面に設けられ、金属材料を含む表面改質膜と、
を含む請求項1または2に記載の熱伝導構造体。
【請求項4】
前記ダイヤモンド基板同士は、前記表面改質膜を介して接合されている請求項3に記載の熱伝導構造体。
【請求項5】
前記ダイヤモンド基板同士は、接合材を介して接合されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱伝導構造体。
【請求項6】
前記ダイヤモンド基板同士は、ダイヤモンド同士の直接接合により一体化している請求項1または2に記載の熱伝導構造体。
【請求項7】
前記熱伝導基板の前記マウント基板とは反対側に接合されている冷却機構を備える請求項1ないし6のいずれか1項に記載の熱伝導構造体。
【請求項8】
前記熱伝導基板は、前記マウント基板に臨む面に開口する凹部を有し、
前記ダイヤモンド基板の一部が前記凹部に挿入されている請求項1ないし7のいずれか1項に記載の熱伝導構造体。
【請求項9】
前記マウント基板は、前記凹部に挿入されている前記ダイヤモンド基板である第1基板と、前記マウント基板に臨む面に設けられている前記ダイヤモンド基板である第2基板と、を有し、
前記第1基板の厚さは、前記第2基板より厚い請求項8に記載の熱伝導構造体。
【請求項10】
前記熱源は、蛍光体である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の熱伝導構造体。
【請求項11】
前記ダイヤモンド基板は、単結晶ダイヤモンドを含む請求項1ないし10のいずれか1項に記載の熱伝導構造体。
【請求項12】
ダイヤモンドを主材料とする個片の表面に金属材料を含む表面改質膜を形成し、ダイヤモンド基板を得るステップと、
前記ダイヤモンド基板同士を接合してマウント基板を得るステップと、
前記マウント基板を、前記ダイヤモンド基板より厚い熱伝導基板に接合するステップと、
前記マウント基板の前記熱伝導基板とは反対側に熱源を接続するステップと、
前記熱伝導基板の前記マウント基板とは反対側に冷却機構を接合するステップと、
を有することを特徴とする熱伝導構造体の製造方法。
【請求項13】
化学気相合成法により種結晶基板にダイヤモンド膜をエピタキシャル成長させるステップと、
前記種結晶基板から前記ダイヤモンド膜を剥離するステップと、
前記ダイヤモンド膜を切断して前記個片を得るステップと、
を有する請求項12に記載の熱伝導構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導構造体および熱伝導構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、青色光を射出する光源と、青色光を吸収して蛍光に変換する波長変換光学系と、を備える光源装置が開示されている。波長変換光学系は、光を集光するレンズと、蛍光体と、蛍光体と熱的に接触している基板と、基板と接着されているヒートシンクと、を備えている。
【0003】
蛍光体は、光源からの青色光が照射されるため、高温になって特性が低下するおそれがある。このため、基板やヒートシンクを介して蛍光体の放熱を図る必要がある。特許文献1には、基板の材質として、熱抵抗が低いAlやCuを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の材質として特許文献1に開示されているAlやCuは、金属材料の中では熱伝導率が高いものの、蛍光体の熱を十分に放熱するには、まだ熱抵抗が大きい。このため、蛍光体に照射される青色光の強度によっては、蛍光体が高温になり、蛍光の励起効率が低下する。
【0006】
また、放熱基板の材質として、グラファイトやグラフェン等の炭素材料が知られている。これらの材料は十分に高い熱伝導率を有している一方、熱伝導に異方性を持つ。この異方性は、蛍光体とヒートシンクとの間の熱伝達効率を低下させる一因となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の適用例に係る熱伝導構造体は、
熱源に接続され、互いに接合されている複数のダイヤモンド基板を有するマウント基板と、
前記マウント基板の前記熱源とは反対側に接合され、前記ダイヤモンド基板より厚い熱伝導基板と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の適用例に係る熱伝導構造体の製造方法は、
ダイヤモンドを主材料とする個片の表面に金属材料を含む表面改質膜を形成し、ダイヤモンド基板を得るステップと、
前記ダイヤモンド基板同士を接合してマウント基板を得るステップと、
前記マウント基板を、前記ダイヤモンド基板より厚い熱伝導基板に接合するステップと、
前記マウント基板の前記熱伝導基板とは反対側に熱源を接続するステップと、
前記熱伝導基板の前記マウント基板とは反対側に冷却機構を接合するステップと、
を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る熱伝導構造体を有する光源装置を示す平面図である。
【
図4】マウント基板の第1変形例を示す断面図である。
【
図5】マウント基板の第2変形例を示す断面図である。
【
図6】第2実施形態に係る熱伝導構造体を有する光源装置を示す平面図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る熱伝導構造体を有する光源装置を示す断面図である。
【
図9】第3実施形態に係る熱伝導構造体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図9に示す熱伝導構造体の製造方法を説明するための断面図である。
【
図11】
図9に示す熱伝導構造体の製造方法を説明するための断面図である。
【
図12】
図9に示す熱伝導構造体の製造方法を説明するための断面図である。
【
図13】
図9に示す熱伝導構造体の製造方法を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の熱伝導構造体および熱伝導構造体の製造方法を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
1.第1実施形態
まず、第1実施形態に係る熱伝導構造体について説明する。
【0012】
1.1.熱伝導構造体
図1は、第1実施形態に係る熱伝導構造体を有する光源装置を示す平面図である。
図2は、
図1のA-A断面図である。なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸としてX軸、Y軸およびZ軸を設定している。各軸を矢印で表し、先端側を「プラス」、基端側を「マイナス」とする。また、以下の説明では、Z軸プラス側を「上」、Z軸マイナス側を「下」として説明している。さらに、本明細書では、Z軸上の位置から見ることを「平面視」という。また、本明細書における「接続」および「接合」は、それぞれ、対象となる部材同士が直接に接続または接合した状態だけでなく、任意の部材を介して間接的に接続または接合した状態も含む。
【0013】
図1および
図2に示す光源装置1は、平凸レンズ11と、スペーサー13と、熱伝導構造体15と、を有している。熱伝導構造体15は、蛍光体14(熱源)と、マウント基板12と、熱伝導基板16と、ヒートシンク17と、を備えている。
【0014】
平凸レンズ11は、一方の面が光軸方向の外側に凸の曲面形状で、他方の面が平らな平坦面11aとなっている凸レンズである。
図2に示すように、平凸レンズ11は、その平坦面11a側がスペーサー13の凹部13bに嵌めこまれている。平凸レンズ11の平坦面11aは、スペーサー13の凹部13bの底面13cと、蛍光体14の上面14aと、に接着されている。
【0015】
平凸レンズ11の構成材料としては、透明な材料であれば特に限定されないが、例えば、ガラス、石英等が挙げられる。
【0016】
マウント基板12は、平板状の板材である。マウント基板12は、熱源である蛍光体14と熱的に接続されている。マウント基板12の平面視形状は、特に限定されず、
図1に示す矩形状であってもよいし、円形状であってもよい。マウント基板12の大きさは、マウント基板12の上面12aにスペーサー13および蛍光体14を設置できる大きさであれば、特に限定されない。
【0017】
マウント基板12は、互いに接合されている複数のダイヤモンド基板120を有する。ダイヤモンド基板120は、熱伝導率が特に高く、かつ、熱伝導の異方性も少ない。このため、ダイヤモンド基板120を有するマウント基板12は、蛍光体14の熱を効率よく拡散して放熱させることができる。ダイヤモンド基板120については、後述する。
【0018】
スペーサー13は、
図2に示すように、接着剤31を介してマウント基板12の上面12aに接着されている。スペーサー13は、上面13dの平面視中央部に開口する凹部13bと、凹部13bの平面視中央部を厚さ方向に貫通する貫通孔13aと、を有する。
【0019】
スペーサー13の構成材料としては、熱抵抗が低い材料であれば特に限定されないが、例えば、無酸素銅、純アルミニウム等が挙げられる。
【0020】
蛍光体14は、励起光LEを受けて蛍光LFを発する。このため、蛍光体14は、励起光LEの受光に伴う熱を発し、熱源となる。蛍光体14としては、例えば、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体等が挙げられる。
【0021】
なお、蛍光体14は、熱伝導構造体15によって放熱する熱源の一例であるが、他の熱源に置き換え可能である。蛍光体14以外の熱源としては、例えば、発光ダイオード、半導体レーザーのような発光素子、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラートランジスター)、パワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスター)のようなパワー半導体等が挙げられる。なお、熱源の種類に応じて、平凸レンズ11やスペーサー13を別の部材に置き換えてもよいし、省略してもよい。
【0022】
蛍光体14は、平凸レンズ11と、スペーサー13と、マウント基板12と、に囲まれている。また、蛍光体14は、前述したように、マウント基板12と熱的に接続されている。蛍光体14の上面14aと平凸レンズ11との間には、図示しない充填剤が設けられている。これにより、蛍光体14の上面14aと平凸レンズ11との隙間が埋められ、蛍光体14から射出される光を平凸レンズ11に効率よく取り込むことができる。
【0023】
蛍光体14の下面14bは、後述する反射膜140および熱伝導接着剤21を介してマウント基板12の上面12aと接着され、熱的な接続が図られている。熱伝導接着剤21は、熱伝導性を有する接着剤であれば、特に限定されず、導電性高分子を主材料とする接着剤であってもよいが、好ましくは導電性粒子を含むペースト状接着剤やシート状接着剤の硬化物で構成される。導電性粒子としては、例えば、銀粒子、金粒子、アルミニウム粒子、導電性金属で被覆された樹脂粒子等が挙げられる。導電性粒子の平均粒径は、0.1μm以上100μm以下程度であるのが好ましく、1.0μm以上10μm以下程度であるのがより好ましい。また、導電性粒子の形状としては、例えば、球状、フレーク状、繊維状等が挙げられる。なお、下面14bと上面12aとの間は、熱的に接続されていれば、接触しているだけでもよい。
【0024】
蛍光体14の下面14bには、反射膜140が設けられている。反射膜140は、蛍光体14が発する光を反射する薄膜である。反射膜140の構成材料には、熱伝導率が高い材料、例えば、銀が用いられる。
【0025】
平凸レンズ11、スペーサー13およびマウント基板12で囲まれた空間は、好ましくは密閉されており、密閉空間19となっている。この密閉空間19内には不活性ガスが充填されているのが好ましい。これにより、蛍光体14の酸化や吸湿による変性を抑制することができる。不活性ガスとしては、例えば窒素が挙げられる。
【0026】
熱伝導基板16の上面16aは、熱伝導接着剤22を介してマウント基板12の下面12bに接合されている。熱伝導基板16は、マウント基板12より厚い基板である。このため、熱伝導基板16は、マウント基板12より熱容量が大きいものとなり、マウント基板12の熱を効率よく取り込むことができる。これにより、蛍光体14に連続して光が照射された場合でも、蛍光体14の温度が上昇し続けるのを抑制することができる。
【0027】
熱伝導基板16の厚さは、マウント基板12が有するダイヤモンド基板120より厚ければ、特に限定されない。熱伝導基板16に期待する熱容量と、ダイヤモンド基板120に期待する熱拡散性と、のバランスを考慮すると、両者の厚さの差は、0.1mm以上であるのが好ましく、0.3mm以上であるのがより好ましく、0.5mm以上であるのがさらに好ましい。
【0028】
なお、差の上限値は、特に限定されないが、光源装置1の小型化、軽量化等を図るためには、10mm以下であるのが好ましく、5mm以下であるのがより好ましい。
【0029】
熱伝導基板16の構成材料としては、熱伝導率が高い材料であれば、特に限定されないものの、例えば、アルミニウム単体またはアルミニウム合金、銅単体または銅合金、銅単体または銅合金とカーボンとの複合材料等が挙げられる。
【0030】
熱伝導接着剤22には、熱伝導接着剤21として用いられる接着剤の中から適宜選択して用いられる。なお、熱伝導接着剤22の種類や組成が熱伝導接着剤21と異なっていてもよい。
【0031】
ヒートシンク17は、熱伝導接着剤23を介して熱伝導基板16の下面16bに接着されている。ヒートシンク17は、基部172と、基部172から延在する複数の平板状のフィン174と、を備えている。複数のフィン174は、基部172の下面に沿って等間隔に並んでいる。
【0032】
ヒートシンク17の構成材料としては、熱伝導基板16の熱を放熱できる材料であれば、特に限定されないものの、例えば、アルミニウム単体またはアルミニウム合金、銅単体または銅合金等が挙げられる。
【0033】
また、ヒートシンク17は、冷却機構の一種であるが、その他の冷却機構で代替されてもよい。その他の冷却機構としては、例えば、ヒートパイプ、ベイパーチャンバー等が挙げられる。
【0034】
熱伝導接着剤23には、熱伝導接着剤21として用いられる接着剤の中から適宜選択して用いられる。なお、熱伝導接着剤23の種類や組成が熱伝導接着剤21と異なっていてもよい。
【0035】
以上のような光源装置1では、蛍光体14が発する光を、反射膜140で上方に反射する。そして、反射膜140で反射した光は、平凸レンズ11を介して、外部へ射出される。このため、光源装置1は、例えば、プロジェクター用の反射型波長変換素子として好適に用いられる。なお、熱伝導基板16およびヒートシンク17に図示しない貫通孔を設けることにより、熱伝導構造体15を透過型波長変換素子に適用することもできる。
【0036】
また、熱伝導構造体15は、蛍光体14およびヒートシンク17を備えていなくてもよい。つまり、熱伝導構造体15は、少なくともマウント基板12と熱伝導基板16とで構成されていてもよい。
【0037】
このように、本実施形態に係る熱伝導構造体15は、一例として、熱源としての蛍光体14の放熱に用いられる。これにより、蛍光体14に連続して光が照射される場合でも、蛍光体14が高温になりすぎるのを防止することができる。よって、例えば、反射型または透過型の波長変換素子を実現することができる。
【0038】
1.2.タイヤモンド基板
マウント基板12は、前述したように、互いに接合された複数のダイヤモンド基板120を有する。ダイヤモンド基板120同士の接合方法は、特に限定されず、例えば、表面改質膜(メタライズ被膜)を介して接合する方法、接合材を介して接合する方法、ダイヤモンド基板同士の直接接合により一体化する方法等が挙げられる。
【0039】
図3は、
図2の部分拡大図である。
図3に示すダイヤモンド基板120は、ダイヤモンドで構成されている基部121と、基部121の表面に設けられ、金属材料を含む表面改質膜122と、を含んでいる。このような表面改質膜122を設けることにより、基部121の表面に、他の部材に対する接着性を付与することができる。これにより、ダイヤモンドが有する優れた熱伝導性と、表面改質膜122が有する優れた接着性と、を両立するダイヤモンド基板120を実現することができる。
【0040】
基部121は、ダイヤモンドを主材料とする部位である。本明細書において「主材料」とは、体積分率で70%以上を占める材料のことをいう。基部121の主材料は、単結晶ダイヤモンドであってもよいし、多結晶ダイヤモンドであってもよい。
【0041】
蛍光体14の熱は、まず、
図3の熱の流れHF1に示すように、基部121の面内方向に沿って速やかに流れる。これにより、蛍光体14の熱を速やかに拡散させることができる。そして、拡散させた熱は、
図3の熱の流れHF2に示すように、基部121から表面改質膜122および熱伝導接着剤22を介して熱伝導基板16に伝達される。このように、マウント基板12は、ヒートスプレッダーとして機能する。
【0042】
マウント基板12が有するダイヤモンド基板120は、単結晶ダイヤモンドを含むことが好ましい。つまり、基部121は、単結晶ダイヤモンドで構成されているのが好ましい。単結晶ダイヤモンドは、ダイヤモンド系材料の中でも、とりわけ熱伝導率が高い。また、単結晶ダイヤモンドの熱伝導性は、異方性も非常に小さい。このため、単結晶ダイヤモンドを含むダイヤモンド基板120は、蛍光体14の熱を面内方向に効率よく広げるとともに、厚さ方向に効率よく伝導させ、熱伝導基板16に伝達することができる。その結果、蛍光体14を効率よく冷却することができ、蛍光体14に連続して光が照射された場合でも、蛍光体14の特性が低下するのを抑制することができる。
【0043】
基部121の製造方法としては、例えば、高温高圧法、化学気相合成(CVD)法が挙げられる。このうち、後述する化学気相合成法によれば、基板状の単結晶ダイヤモンドを比較的低コストで製造することができる。
【0044】
基部121を構成するダイヤモンドの熱伝導率は、1000[W/m・K]以上であるのが好ましく、1500[W/m・K]以上であるのがより好ましい。
【0045】
ダイヤモンド基板120の平面視形状は、特に限定されないが、一例として辺の長さが、好ましくは2mm以上50mm以下、より好ましくは3mm以上10mm以下の四角形とされる。これにより、複数のダイヤモンド基板120をタイル状に並べるとき、ダイヤモンド基板120の枚数が著しく多くなるのを防止してタイリングの作業効率を高めることができ、かつ、ダイヤモンド基板120が著しく高コストになるのを避けることができる。また、ダイヤモンド基板120の枚数が著しく多くなるのが防止されることで、マウント基板12の内部の熱抵抗が大きくなるのを防止することができる。
【0046】
なお、
図1に示すダイヤモンド基板120の平面視形状は、正方形である。これにより、ダイヤモンド基板120のX-Y面の面内方向における熱伝導の等方性を高めることができる。
【0047】
図1に示すダイヤモンド基板120の一辺の長さをL2とする。また、蛍光体14の下面14bは、マウント基板12に対する接続面であって、
図1では正方形をなしている。下面14bの一辺の長さをL1とする。長さL2は、長さL1以上であってもよいが、本実施形態では、長さL2が、長さL1より短く設定されている。
【0048】
つまり、
図1および
図2に示す熱伝導構造体15は、マウント基板12との接続面である下面14bを有する蛍光体14(熱源)を備えているが、ダイヤモンド基板120が有する上面120aおよび下面120bは、それぞれ下面14bより小さく設定されている。なお、上面120aおよび下面120bは、ダイヤモンド基板120の互いに表裏の関係を持つ2つの主面である。
【0049】
このような構成によれば、蛍光体14とマウント基板12との接続面である下面14bが大きい場合でも、ダイヤモンド基板120を小さくすることができるので、マウント基板12の低コスト化を容易に図ることができる。すなわち、ダイヤモンド基板120の熱伝導率が十分に高いため、小さなダイヤモンド基板120を複数並べても、マウント基板12全体では十分に高い熱伝導性を確保することができる。このため、熱源である蛍光体14のサイズによらず、十分に低コスト化が図られた光源装置1を実現することができる。
【0050】
なお、一例として、ダイヤモンド基板120の面積は、接続面である下面14bの面積の90%以下であるのが好ましく、10%以上80%以下であるのがより好ましい。
【0051】
また、このような大小関係は、必須ではなく、ダイヤモンド基板120の上面120aおよび下面120bは、蛍光体14の下面14bより大きくても構わない。
【0052】
また、
図1に示すマウント基板12では、4枚のダイヤモンド基板120が2行×2列の行列状に並べられている。これにより、マウント基板12のX-Y面の面内方向における熱伝導の等方性を高めることができる。そして、面内方向に均等に広げた熱を、熱伝導基板16に対して伝えることができるので、熱伝導基板16の熱容量を最大限に活かした放熱が可能になる。なお、マウント基板12が有するダイヤモンド基板120の枚数は、複数枚であれば特に限定されない。また、マウント基板12が有するダイヤモンド基板120の大きさや形状は、互いに同じであっても互いに異なっていてもよい。
【0053】
なお、熱伝導の等方性という観点からすれば、マウント基板12の中心を対称の中心としたとき、マウント基板12におけるダイヤモンド基板120の配置は、任意の角度の回転対称性を有する配置であるのが好ましい。任意の角度としては、例えば、45°、60°、90°、120°、180°等が挙げられる。
図1に示すマウント基板12では、4枚のダイヤモンド基板120が2行×2列の行列状に並べられているため、その配置は、90°の回転対称性を有しているといえる。
【0054】
さらに、
図1に示す光源装置1では、マウント基板12の平面視における中央部に蛍光体14が配置されている。このため、平面視において、蛍光体14と各ダイヤモンド基板120の一部とが重なることになる。つまり、平面視において、蛍光体14は各ダイヤモンド基板120にまたがるように配置されている。これにより、蛍光体14と各ダイヤモンド基板120との間の熱抵抗のバラつきが小さくなる。よって、このような観点でも、
図1に示すマウント基板12では、面内方向における熱の広がりを均等化することができ、より効率よく熱を拡散させることができる。
【0055】
ダイヤモンド基板120の厚さは、0.1mm以上2.0mm以下であるのが好ましく、0.2mm以上1.0mm以下であるのがより好ましい。このような厚さのダイヤモンド基板120は、蛍光体14の熱をX-Y面の面内方向に広げるのに十分な断面積を確保しつつ、低コスト化が容易に図られる。
【0056】
表面改質膜122は、前述したように金属材料を含む。これにより、基部121の表面を金属化して、ダイヤモンド基板120に対する接着剤31や熱伝導接着剤21、22の密着性を高めることができる。その結果、接着強度を高めるとともに、蛍光体14とダイヤモンド基板120との間、および、ダイヤモンド基板120と熱伝導基板16との間の熱抵抗を下げることができる。これにより、ヒートサイクル等による接着部の剥離を抑制することができる。なお、熱伝導接着剤21、22がダイヤモンドに対する十分な接着性を有している場合には、表面改質膜122を省略してもよい。
【0057】
表面改質膜122の形成方法としては、例えば、めっき法、気相成膜法、液相成膜法、金属ペースト法、金属膜転写法等が挙げられる。
【0058】
このうち、めっき法としては、例えば、銅めっき、金めっき、銀めっき、ニッケルめっき等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、コストや接着性、熱伝導性等の観点で、銅めっきが好ましく用いられる。
【0059】
また、気相成膜法としては、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法等が挙げられる。このうち、スパッタリング法が好ましく用いられる。スパッタリング法で成膜される材料としては、例えば、銅、金、銀等が挙げられる。なお、スパッタリング法でこれらの材料を成膜する場合には、下地膜を併用するのが好ましい。下地膜の構成材料としては、例えば、チタン(Ti)、チタン-タングステン(TiW)、窒化チタン(TiN)等が挙げられる。
【0060】
表面改質膜122を形成する前には、必要に応じて、基部121に対して表面処理を行うようにしてもよい。表面処理としては、例えば、粗面化処理、プラズマ処理、オゾン処理等が挙げられる。このような表面処理を施すことにより、基部121に対する表面改質膜122の密着性を高めることができる。粗面化処理としては、例えば、スパッタエッチング処理等が挙げられる。
【0061】
表面改質膜122の平均厚さは、0.05μm以上50μm以下であるのが好ましく、0.10μm以上10μm以下であるのがより好ましい。これにより、基部121の表面を金属化するために十分な厚さを確保するとともに、表面改質膜122の熱抵抗を十分に下げることができる。
【0062】
図3に示すマウント基板12では、ダイヤモンド基板120同士が、表面改質膜122を介して接合されている。例えば、表面改質膜122が銅めっきである場合、銅めっき同士の直接接合によってダイヤモンド基板120同士が接合されている。これにより、基部121同士の間に介在するのは、表面改質膜122のみになるので、基部121同士の距離を短くして、接合に伴う熱抵抗を小さく抑えることができる。
【0063】
直接接合を行うには、まず、接合面に表面活性化処理を行って酸化膜や吸着層を除去した後、処理面同士を接触させる。表面活性化処理としては、例えば、イオン照射処理、中性原子ビーム照射処理等が挙げられる。
【0064】
図4は、マウント基板の第1変形例を示す断面図である。
図4に示すマウント基板12Aでは、ダイヤモンド基板120同士が、接合材24を介して接合されている。接合材24としては、例えば、前述した熱伝導接着剤21、22と同様の接着剤が挙げられる。なお、接合材24としてこの接着剤を用いた場合には、ダイヤモンド基板120を並べる工程と、マウント基板12Aを熱伝導基板16に接合する工程と、を同時に行うこともできるため、工数の削減という観点でも有用である。
【0065】
図5は、マウント基板の第2変形例を示す断面図である。
図5に示すマウント基板12Bでは、ダイヤモンド基板120同士が、ダイヤモンド同士の直接接合により一体化している。これにより、基部121同士が直接接合されるため、両者間の熱抵抗を最小化することができる。また、マウント基板12の機械的強度を特に高めることができる。
【0066】
マウント基板12Bの製造方法としては、例えば、モザイク法によりダイヤモンド同士が一体化した大型基板を作製した後、その大型基板に表面改質膜122を形成する方法が挙げられる。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る熱伝導構造体15は、蛍光体14(熱源)に接続されるマウント基板12と、マウント基板12に接合されている熱伝導基板16と、を少なくとも備える。マウント基板12は、互いに接合されている複数のダイヤモンド基板120を有する。また、熱伝導基板16は、マウント基板12の蛍光体14とは反対側に接合され、ダイヤモンド基板120より厚い基板である。
【0068】
このような構成によれば、ダイヤモンドに由来した、異方性が少なくかつ高い熱伝導性により、マウント基板12を高性能なヒートスプレッダーとして機能させることができる。このため、蛍光体14の熱を効率よく拡散して放熱させることができる。また、マウント基板12にはダイヤモンド基板120よりも厚い熱伝導基板16が接合されているため、マウント基板12で拡散させた熱を、熱容量が大きい熱伝導基板16に移動させることによって、マウント基板12の熱を熱伝導基板16へ効率よく取り込むことができる。これにより、蛍光体14の熱を効率よく伝達し、蛍光体14の冷却効率に優れた熱伝導構造体15を実現することができる。
【0069】
また、マウント基板12は、互いに接合されている複数のダイヤモンド基板120で構成されているため、大きな1つのダイヤモンド基板を用いる場合に比べて、製造容易性に優れている。よって、熱伝導構造体15は、低コスト化が図られやすいという観点でも有用である。
【0070】
このような熱伝導構造体15を備えることにより、光源装置1では蛍光体14の波長変換効率の低下が抑制されるため、高輝度および高光束を実現することができる。また、熱伝導構造体15は、ダイヤモンドに由来する高い熱伝導性によって、小型化が図られている。このため、光源装置1およびそれを備えるプロジェクター等の電子機器を小型化することも容易に実現することができる。
【0071】
また、本実施形態に係る熱伝導構造体15は、熱伝導基板16のマウント基板12とは反対側に接合されているヒートシンク17(冷却機構)を備えている。
【0072】
このようなヒートシンク17を備えることにより、熱伝導基板16の冷却を特に効率よく行える。このため、例えば、蛍光体14に連続して光が照射された場合でも、蛍光体14の温度が上昇し続けるのを抑制することができる。
【0073】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る熱伝導構造体について説明する。
【0074】
図6は、第2実施形態に係る熱伝導構造体を有する光源装置を示す平面図である。
図7は、
図6のB-B断面図である。
【0075】
以下、第2実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図6および
図7において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
第2実施形態は、マウント基板の構成が異なること以外、第1実施形態と同様である。
【0076】
前述した第1実施形態では、マウント基板12が4枚のダイヤモンド基板120を有している。これに対し、本実施形態では、
図6および
図7に示すように、マウント基板12Cが9枚のダイヤモンド基板120を有している。具体的には、
図6に示すマウント基板12Cでは、9枚のダイヤモンド基板120が3行×3列の行列状に並べられている。これにより、マウント基板12CのX-Y面の面内方向における熱伝導の等方性を高めることができる。
【0077】
また、本実施形態では、第1実施形態に比べてダイヤモンド基板120の枚数が多いので、仮にマウント基板12Cの大きさが変わらなければ、第1実施形態に比べてダイヤモンド基板120の1枚当たりの大きさを小さくすることができる。その結果、マウント基板12Cの低コスト化を図ること、または、より大きな蛍光体14に対応すること、が可能なマウント基板12Cを実現することができる。
【0078】
図8は、第2実施形態の変形例に係る熱伝導構造体を有する光源装置を示す断面図である。
【0079】
前述した
図7に示すマウント基板12Cでは、9枚のダイヤモンド基板120の厚さが互いに等しい。これに対し、
図8に示すマウント基板12Dでは、9枚のダイヤモンド基板120のうち、中央に位置する1枚の第1基板1201の厚さt1が、それ以外の8枚の第2基板1202の厚さt2より厚くなっている。
【0080】
また、
図8に示す熱伝導基板16Dは、マウント基板12Dに臨む上面16aに開口する凹部16cを有する。そして、複数のダイヤモンド基板120の一部、すなわち中央に位置する1枚の第1基板1201が、凹部16cに挿入されている。
【0081】
このような構成によれば、中央に位置する第1基板1201は、蛍光体14の熱をX-Y面の面内方向に広げつつ、Z軸方向にも効率よく伝達することができる。中央に位置する第1基板1201には、最も多くの熱が流れるため、その熱を熱伝導基板16Dに向けて速やかに拡散させることができる。また、熱伝導基板16Dが凹部16cを有しているため、第1基板1201と凹部16cとの接触面積を、
図7の形態に比べて広げることができる。その結果、マウント基板12Dと熱伝導基板16Dとの熱抵抗を十分に下げることができ、蛍光体14の冷却効率を特に高めることができる。
【0082】
以上のように、
図8に示すマウント基板12Dは、凹部16cに挿入されているダイヤモンド基板120である第1基板1201と、マウント基板12Dに臨む上面16aに設けられているダイヤモンド基板120である第2基板1202と、を有する。そして、第1基板1201の厚さt1が第2基板1202の厚さt2より厚くなっている。
【0083】
このような構成によれば、マウント基板12Dの上面12aを平坦面にすることができる。その結果、蛍光体14とマウント基板12Dとの間に隙間が生じにくくなり、熱抵抗を十分に下げることができる。
【0084】
なお、厚さt1を1としたとき、厚さt2は、1.05以上2.00以下であるのが好ましく、1.10以上1.80以下であるのがより好ましく、1.15以上1.70以下であるのがさらに好ましい。これにより、上記効果をより顕著に得ることができる。
【0085】
また、凹部16cの深さは、上述した厚さの差t1-t2に応じて適宜設定される。
以上のような第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る熱伝導構造体の製造方法について説明する。
【0087】
図9は、第3実施形態に係る熱伝導構造体の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図10ないし
図13は、それぞれ
図9に示す熱伝導構造体の製造方法を説明するための断面図である。
【0088】
以下、第3実施形態について説明するが、以下の説明では、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、
図10ないし
図13において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。
【0089】
図9に示す熱伝導構造体の製造方法は、ダイヤモンド成膜ステップS102と、剥離ステップS104と、切断ステップS106と、表面改質ステップS108と、マウント基板作製ステップS110と、積層ステップS112と、熱源接続ステップS114と、ヒートシンク接合ステップS116と、を有する。以下、各工程について順次説明する。なお、以下の説明では、
図2に示す熱伝導構造体15を製造する方法を例にして説明している。
【0090】
3.1.ダイヤモンド成膜ステップ
ダイヤモンド成膜ステップS102では、ダイヤモンドを主材料とする基部121を製造する方法の一例として、化学気相合成(CVD)法により種結晶基板上にダイヤモンド膜をエピタキシャル成長させる。種結晶基板には、例えば単結晶ダイヤモンド基板が用いられる。
【0091】
3.2.剥離ステップ
剥離ステップS104では、種結晶基板上に成膜されたダイヤモンド膜を、種結晶基板から剥離する。これにより、自立のダイヤモンド膜を得る。剥離には、例えば、レーザーアブレーションを用いたリフトオフ法等の剥離加工技術を用いることができる。
【0092】
3.3.切断ステップ
切断ステップS106では、剥離したダイヤモンド膜を所望の形状に切断し、個片化する。これにより、
図10に示す基部121(個片)を得る。ダイヤモンド膜の切断には、例えばレーザー加工が用いられる。
【0093】
3.4.表面改質ステップ
表面改質ステップS108では、
図11に示すように、基部121の表面に表面改質膜122を形成する。これにより、ダイヤモンド基板120(表面改質個片)を得る。表面改質膜122の形成方法は、前述した通りである。
【0094】
3.5.マウント基板作製ステップ
マウント基板作製ステップS110では、ダイヤモンド基板120同士を接合する。これにより、
図12に示すマウント基板12を得る。ダイヤモンド基板120同士の接合には、前述した各種の接合方法が用いられる。
【0095】
3.6.積層ステップ
積層ステップS112では、
図13に示すように、マウント基板12を熱伝導基板16に積層し、両者を接合する。接合には、例えば前述した熱伝導接着剤22を用いる。熱伝導基板16には、あらかじめ表面洗浄処理を施しておくのが好ましい。これにより、マウント基板12と熱伝導基板16との接合強度、および、熱伝導基板16とヒートシンク17との接合強度をそれぞれ高めることができ、ヒートサイクル等による接合部の剥離を抑制することができる。また、接合強度を高めるだけでなく、熱抵抗を下げることもできる。表面洗浄処理としては、例えば、酸素プラズマ洗浄、有機溶剤による洗浄等が挙げられる。
【0096】
3.7.熱源接続ステップ
熱源接続ステップS114では、マウント基板12の熱伝導基板16とは反対側の面、すなわちマウント基板12の上面12aに、蛍光体14(熱源)を接続する。接続には、例えば前述した熱伝導接着剤21を用いる。
【0097】
3.8.ヒートシンク接合ステップ
ヒートシンク接合ステップS116では、熱伝導基板16のマウント基板12とは反対側の面、すなわち熱伝導基板16の下面16bに、ヒートシンク17(冷却機構)を接合する。接合には、例えば前述した熱伝導接着剤23を用いる。これにより、
図2に示す熱伝導構造体15が得られる。
【0098】
なお、以上の各ステップの順序は、上述した本実施形態の順序に限定されない。また、一部のステップが省略されていてもよい。例えば、
図5に示すマウント基板12Bを有する熱伝導構造体15を作製する場合には、まず、ダイヤモンド成膜ステップS102において同一の種結晶基板から複数のダイヤモンド膜をエピタキシャル成長させた後、剥離ステップS104でダイヤモンド膜を剥離し、複数の基部121(個片)を得る。その後、切断ステップS106を省略して、マウント基板作製ステップS110で基部121同士を直接接合した後、表面改質ステップS108で接合後の基部121に表面改質膜122を形成する。これにより、
図5に示すマウント基板12Bが得られる。
【0099】
以上のように、本実施形態に係る熱伝導構造体の製造方法は、表面改質ステップS108と、マウント基板作製ステップS110と、積層ステップS112と、熱源接続ステップS114と、ヒートシンク接合ステップS116と、を有する。表面改質ステップS108では、ダイヤモンドを主材料とする基部121(個片)の表面に金属材料を含む表面改質膜122を形成し、ダイヤモンド基板120を得る。マウント基板作製ステップS110では、ダイヤモンド基板120同士を接合してマウント基板12を得る。積層ステップS112では、マウント基板12を、ダイヤモンド基板120より厚い熱伝導基板16に接合する。熱源接続ステップS114では、マウント基板12の熱伝導基板16とは反対側に蛍光体14(熱源)を接続する。ヒートシンク接合ステップS116では、熱伝導基板16のマウント基板12とは反対側にヒートシンク17(冷却機構)を接合する。
【0100】
このような構成によれば、蛍光体14の熱を効率よく拡散して放熱させる熱伝導構造体15が得られる。また、複数のダイヤモンド基板120を接合するというプロセスを経ることにより、1枚の大きなダイヤモンド基板を製造することなく、ダイヤモンドを主材料とする大型のマウント基板12を実現することができる。このため、ダイヤモンドに由来した、異方性が少なくかつ高い熱伝導性を持つマウント基板12を備える熱伝導構造体15を、容易かつ低コストで製造することができる。
【0101】
また、ダイヤモンド基板120の枚数を適宜変更することにより、マウント基板12の設計変更にも容易に対応することができる。
【0102】
また、本実施形態に係る熱伝導構造体の製造方法は、さらに、ダイヤモンド成膜ステップS102と、剥離ステップS104と、切断ステップS106と、を有する。ダイヤモンド成膜ステップS102では、化学気相合成法により種結晶基板にダイヤモンド膜をエピタキシャル成長させる。剥離ステップS104では、種結晶基板からダイヤモンド膜を剥離する。切断ステップS106では、ダイヤモンド膜を切断して基部121(個片)を得る。
【0103】
このような構成によれば、化学気相合成法により、ダイヤモンド膜を安定して製造し、その後、切断によって板状の基部121を大量に製造することができる。このため、ダイヤモンド基板120を効率的に低コストで製造することができる。
【0104】
以上、本発明の熱伝導構造体および熱伝導構造体の製造方法を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明の熱伝導構造体は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、前記実施形態の各部が同様の機能を有する任意の構成のものに置換されたものであってもよく、前記実施形態に任意の構成物が付加されたものであってもよい。また、本発明の熱伝導構造体の製造方法は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、前記実施形態に任意の目的の工程が追加されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1…光源装置、11…平凸レンズ、11a…平坦面、12…マウント基板、12A…マウント基板、12B…マウント基板、12C…マウント基板、12D…マウント基板、12a…上面、12b…下面、13…スペーサー、13a…貫通孔、13b…凹部、13c…底面、13d…上面、14…蛍光体、14a…上面、14b…下面、15…熱伝導構造体、16…熱伝導基板、16D…熱伝導基板、16a…上面、16b…下面、16c…凹部、17…ヒートシンク、19…密閉空間、21…熱伝導接着剤、22…熱伝導接着剤、23…熱伝導接着剤、24…接合材、31…接着剤、120…ダイヤモンド基板、120a…上面、120b…下面、121…基部、122…表面改質膜、140…反射膜、172…基部、174…フィン、1201…第1基板、1202…第2基板、HF1…熱の流れ、HF2…熱の流れ、L1…長さ、L2…長さ、LE…励起光、LF…蛍光、S102…ダイヤモンド成膜ステップ、S104…剥離ステップ、S106…切断ステップ、S108…表面改質ステップ、S110…マウント基板作製ステップ、S112…積層ステップ、S114…熱源接続ステップ、S116…ヒートシンク接合ステップ、t1…厚さ、t2…厚さ