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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電力システムおよびサーバ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20240528BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240528BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240528BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240528BHJP
   H02J 9/00 20060101ALI20240528BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/46
H02J13/00 311T
H02J3/38 170
H02J3/38 160
H02J9/00 120
H02J7/34 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020213624
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099683
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浜田 成孝
(72)【発明者】
【氏名】広瀬 遥
(72)【発明者】
【氏名】堀井 雄介
(72)【発明者】
【氏名】中村 達
(72)【発明者】
【氏名】佐野 隆章
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/079891(WO,A1)
【文献】特開2006-345621(JP,A)
【文献】特表2019-536401(JP,A)
【文献】特開2015-002590(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0039145(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0174090(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0262007(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 3/46
H02J 13/00
H02J 9/00
H02J 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクログリッドに電気的に接続された複数の電力調整リソースと、
前記複数の電力調整リソースを制御し、前記マイクログリッドの電力管理を行なう管理装置とを備え、
前記マイクログリッドは、商用電力系統に並列および解列可能に構成され、
前記複数の電力調整リソースは、前記商用電力系統と解列されて前記マイクログリッドが自立運転する場合において、電力の供給を受ける第1電力調整リソースと、電力を供給する第2電力調整リソースとを含み、
前記第2電力調整リソースは、
前記マイクログリッドに接続された定置式の発電機と、
前記マイクログリッドに接続された、定置式の電池、および自然変動電源と、
前記マイクログリッドに接続された充電設備に電気的に接続可能な電動車両とを含み、
前記自立運転する場合に、前記管理装置は、
前記第1電力調整リソースへの電力供給の優先度に関する情報に基づいて、前記自立運転の実行期間としての所定の期間中の前記マイクログリッドの運転計画を生成し、
前記運転計画に従って、前記複数の電力調整リソースを制御し、
前記情報は、
前記自立運転において、前記第1電力調整リソースへの電力供給の停止を許容しない前記優先度である第1優先度と、
前記自立運転において、前記第1電力調整リソースへの電力供給の停止を許容する前記優先度である第2優先度と、
前記自立運転において、前記第1電力調整リソースへの電力供給の停止を許容する前記優先度であり、かつ、前記第2優先度よりも低い第3優先度とを含み、
前記情報は、前記優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースの情報である第2リソース情報をさらに含み、
前記第2リソース情報は、
前記第1優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースが前記発電機を含むことと、
前記第2優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースが前記電池および前記自然変動電源を含むことと、
前記第3優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースが前記電動車両を含むこととを表す情報であり、
前記管理装置は、前記第2電力調整リソースから前記第1優先度が設定された前記第1電力調整リソースへの電力供給が停止しないように前記運転計画を生成
前記管理装置は、前記発電機、前記電池および前記自然変動電源、ならびに前記電動車両の各々の、前記所定の期間中の発電可能電力量に基づいて前記運転計画を生成する、電力システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記所定の期間継続して、前記第1優先度が設定された前記第1電力調整リソースへの電力供給が可能なように前記運転計画を生成する、請求項1に記載の電力システム。
【請求項3】
記管理装置は、前記運転計画の生成に、前記所定の期間の気象情報を用いる、請求項に記載の電力システム。
【請求項4】
前記自然変動電源は、太陽光発電システムを含む、請求項に記載の電力システム。
【請求項5】
前記第2電力調整リソースは、水素を貯留する水素タンクを有する水素発電システムを含み、
前記管理装置は、前記運転計画の生成に、前記水素タンクの残量を用いる、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項6】
記管理装置は、前記発電機の発電電力を前記第1優先度が設定された前記第1電力調整リソースへ供給する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項7】
記管理装置は、前記電動車両の電力を前記第優先度が設定された前記第1電力調整リソースへ供給する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項8】
複数の電力調整リソースが電気的に接続されたマイクログリッドの電力管理を行なうサーバであって、
前記マイクログリッドは、商用電力系統に並列および解列可能に構成され、
前記複数の電力調整リソースは、前記商用電力系統と解列されて前記マイクログリッドが自立運転する場合において、電力の供給を受ける第1電力調整リソースと、電力を供給する第2電力調整リソースとを含み、
前記第2電力調整リソースは、
前記マイクログリッドに接続された定置式の発電機と、
前記マイクログリッドに接続された、定置式の電池、および自然変動電源と、
前記マイクログリッドに接続された充電設備に電気的に接続可能な電動車両とを含み、
前記サーバは、
前記第1電力調整リソースへの電力供給の優先度に関する情報を記憶する記憶装置と、 前記自立運転する場合に、前記情報に基づいて、前記自立運転の実行期間としての所定の期間中の前記マイクログリッドの運転計画を生成し、前記運転計画に従って、前記複数の電力調整リソースを制御する制御装置とを備え、
前記情報は、
前記自立運転において、前記第1電力調整リソースへの電力供給の停止を許容しない前記優先度である第1優先度と、
前記自立運転において、前記第1電力調整リソースへの電力供給の停止を許容する前記優先度である第2優先度と、
前記自立運転において、前記第1電力調整リソースへの電力供給の停止を許容する前記優先度であり、かつ、前記第2優先度よりも低い第3優先度とを含み、
前記情報は、前記優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースの情報である第2リソース情報をさらに含み、
前記第2リソース情報は、
前記第1優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースが前記発電機を含むことと、
前記第2優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースが前記電池および前記自然変動電源を含むことと、
前記第3優先度に対応して割り当てられた前記第2電力調整リソースが前記電動車両を含むこととを表す情報であり、
前記制御装置は、前記第2電力調整リソースから前記第1優先度が設定された前記第1電力調整リソースへの電力供給が停止しないように前記運転計画を生成
前記制御装置は、前記発電機、前記電池および前記自然変動電源、ならびに前記電動車両の各々の、前記所定の期間中の発電可能電力量に基づいて前記運転計画を生成する、サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力システムおよびサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-148679号公報(特許文献1)には、複数の施設間で、移動型蓄電装置(電気自動車)を介して電力を調整するアグリゲーション制御システムが開示されている。このアグリゲーション制御システムでは、デマンドレスポンスを実施して外部の電力系統と連系する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-148679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
災害等が発生すると、外部の電力系統(たとえば商用電力系統)からマイクログリッドへの電力供給が途絶される場合がある。この場合、マイクログリッドの自立運転により、マイクログリッド内の電力の需給バランスが図られる。ここで、たとえば、電力調整リソースの中には、病院、災害対策本部、および/またはデータセンタ等のような、電力の停止を許容できないものがある。マイクログリッドの自立運転においては、上記のような電力調整リソースへの電力の供給が停止しないように、マイクログリッド内の電力の需給バランスを図ることが求められる。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的は、マイクログリッドの自立運転時において、電力の停止を許容できない電力調整リソースへの電力の供給が停止されることを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示のある局面に係る電力システムは、マイクログリッドに電気的に接続された複数の電力調整リソースと、複数の電力調整リソースを制御し、マイクログリッドの電力管理を行なう管理装置とを備える。マイクログリッドは、商用電力系統に並列および解列可能に構成される。複数の電力調整リソースは、商用電力系統と解列されてマイクログリッドが自立運転する場合において、電力の供給を受ける第1電力調整リソースと、電力を供給する第2電力調整リソースとを含む。自立運転する場合に、管理装置は、第1電力調整リソースへの電力供給の優先度に関する情報に基づいて、マイクログリッドの運転計画を生成し、運転計画に従って、複数の電力調整リソースを制御する。情報は、自立運転において、電力供給の停止を許容しない優先度である第1優先度を含む。管理装置は、第2電力調整リソースから第1優先度が設定された第1電力調整リソースへの電力供給が停止しないように運転計画を生成する、電力システム。
【0007】
上記構成によれば、マイクログリッドが自立運転する場合において、第1電力調整リソースへの電力供給の優先度に関する情報に基づいた運転計画が生成される。情報には、電力供給の停止を許容しない優先度である第1優先度が含まれる。たとえば、病院、災害対策本部、および/またはデータセンタ等のような、電力供給の停止が許容されない電力調整リソースには、第1優先度が設定される。これにより、マイクログリッドが自立運転する場合において、第1優先度が設定された電力調整リソースへの電力供給が停止されることを抑制することができる。
【0008】
(2)ある実施の形態においては、管理装置は、所定の期間継続して、第1優先度が設定された第1電力調整リソースへの電力供給が可能なように運転計画を生成する。
【0009】
たとえば、災害等の発生により商用電力系統がダウンした場合、商用電力系統の復旧が見込まれるまでの間、第1優先度が設定された第1電力調整リソースへの電力供給を停止しないように、マイクログリッドの需給を適切に管理することが望まれる。上記構成によれば、所定の期間継続して、第1優先度が設定された第1電力調整リソースへの電力供給を行なうことができる。
【0010】
(3)ある実施の形態においては、第2電力調整リソースは、自然変動電源を含む。管理装置は、運転計画の生成に、所定の期間の気象情報を用いる。
【0011】
自然変動電源は、気象条件によって、所定の期間の発電電力量が変動する。運転計画の生成に、所定の期間の気象情報を用いることによって、所定の期間のにおける自然変動電源の発電電力量を精度よく予測することが可能となり、より適切な運転計画を生成することが可能となる。
【0012】
(4)ある実施の形態においては、自然変動電源は、太陽光発電システムを含む。
所定の期間の気象情報を用いて、所定の期間の太陽光発電システムの発電電力量を予測することによって、より適切な運転計画を生成することが可能となる。
【0013】
(5)ある実施の形態においては、第2電力調整リソースは、水素を貯留する水素タンクを有する水素発電システムを含む。管理装置は、運転計画の生成に、水素タンクの残量を用いる。
【0014】
運転計画の生成に、水素タンクの残量を用いることによって、所定の期間のにおける水素発電システムの発電電力量を精度よく予測することが可能となり、より適切な運転計画を生成することが可能となる。
【0015】
(6)ある実施の形態においては、上記情報は、優先度に割り当てられた第2電力調整リソースの情報を含む。第1優先度に割り当てられた第2電力調整リソースは、定置式の発電機である。管理装置は、発電機の発電電力を第1優先度が設定された第1電力調整リソースへ供給する。
【0016】
上記構成によれば、第1優先度が設定された第1電力調整リソースへは、定置式の発電機の発電電力が供給される。定置式の発電機は、他の第2電力調整リソース(たとえば、自然変動電源、電気自動車等)に比べ、安定して、かつ、即座に電力の供給を開始することができる。それゆえに、災害等の発生により商用電力系統がダウンした場合にも、安定して、かつ、即座に第1優先度が設定された第1電力調整リソースへ電力を供給することが可能となる。
【0017】
(7)ある実施の形態においては、第2電力調整リソースは、マイクログリッドに電気的に接続された充電設備と、充電設備に接続可能な電動車両を含む。上記情報は、自立運転において、電力供給の停止を許容する優先度である第2優先度を含む。第2優先度に割り当てられた第2電力調整リソースには、電動車両が含まれる。管理装置は、電動車両の電力を第2優先度が設定された第1電力調整リソースへ供給する。
【0018】
上記構成によれば、第2優先度が設定された第1電力調整リソースへは、第2優先度に割り当てられる第2電力調整リソース(電動車両を含む)の電力が供給される。たとえば、災害等の発生により商用電力系統がダウンした場合、電動車両は、充電設備の設置場所への移動時間等、電力の供給を開始するまでに幾らかの時間を要する場合がある。このような電動車両は、電力供給の停止が許容される第2優先度に割り当てる。これにより、優先度に適した第2電力調整リソースの割り当てを行なうことができ、マイクログリッドの電力の需給バランスを図ることができる。
【0019】
(8)本開示の他の局面に係るサーバは、複数の電力調整リソースが電気的に接続されたマイクログリッドの電力管理を行なうサーバである。マイクログリッドは、商用電力系統に並列および解列可能に構成される。複数の電力調整リソースは、商用電力系統と解列されてマイクログリッドが自立運転する場合において、電力の供給を受ける第1電力調整リソースと、電力を供給する第2電力調整リソースとを含む。サーバは、第1電力調整リソースへの電力供給の優先度に関する情報を記憶する記憶装置と、マイクログリッドが自立運転する場合に、上記情報に基づいて、マイクログリッドの運転計画を生成し、運転計画に従って、複数の電力調整リソースを制御する制御装置とを備える。上記情報は、自立運転において、電力供給の停止を許容しない優先度である第1優先度を含む。制御装置は、第2電力調整リソースから第1優先度が設定された第1電力調整リソースへの電力供給が停止しないように運転計画を生成する。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、マイクログリッドの自立運転時において、電力の停止を許容できない電力調整リソースへの電力の供給が停止されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係る電力システムの概略的な構成を示す図である。
図2】優先度の設定情報(電力供給の優先度に関する情報)の一例を説明するための図である。
図3】運転計画における第1電力調整リソースの目標稼働率を説明するための図である。
図4】CEMSサーバの構成要素を機能別に示す機能ブロック図である。
図5】マイクログリッドの連系運転中にCEMSサーバによって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
図6】マイクログリッドの自立運転中にCEMSサーバによって実行される処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0023】
[実施の形態]
<電力システムの全体構成>
図1は、実施の形態に係る電力システムの概略的な構成を示す図である。電力システム1は、電力系統PGと、マイクログリッドMGと、CEMS(Community Energy Management System)サーバ100と、送配電事業者サーバ200と、電力調整リソース群500と、受変電設備501とを含む。
【0024】
マイクログリッドMGは、1つの街(たとえば、スマートシティ)全体に電力を供給する電力網である。マイクログリッドMG内の電力の需給は、CEMSサーバ100によって管理される。マイクログリッドMGにおいて複数の電力調整リソースをネットワーク化するための電力線は、自営電力線であってもよい。マイクログリッドMGは、電力系統PGに並列および解列可能に構成される。
【0025】
送配電事業者サーバ200は、電力系統PGの需給を管理するコンピュータである。電力系統PGは、図示しない発電所および送配電設備によって構築される電力網である。本実施の形態では、電力会社が発電事業者および送配電事業者を兼ねる。電力会社は、一般送配電事業者に相当し、電力系統PG(商用電力系統)を保守および管理する。電力会社は、電力系統PGの管理者に相当する。送配電事業者サーバ200は、電力会社に帰属する。
【0026】
受変電設備501は、マイクログリッドMGの連系点(受電点)に設けられ、電力系統PGとマイクログリッドMGとの並列(接続)および解列(切離し)を切替え可能に構成される。受変電設備501は、マイクログリッドMGと電力系統PGとの接続点に位置する。
【0027】
マイクログリッドMGが電力系統PGと接続された状態で連系運転しているときには、受変電設備501は、電力系統PGから交流電力を受電し、受電した電力を降圧してマイクログリッドMGへ供給する。マイクログリッドMGが電力系統PGから切り離された状態で自立運転しているときには、電力系統PGからマイクログリッドMGへの電力供給は行なわれない。受変電設備501は、高圧側(一次側)の開閉装置(たとえば、区分開閉器、断路器、遮断器、および負荷開閉器)、変圧器、保護リレー、計測機器、および制御装置を含んで構成される。CEMSサーバ100は、マイクログリッドMGに関する情報(たとえば、電力波形)を受変電設備501から受信するとともに、受変電設備501へ並列および解列を指示するように構成される。
【0028】
CEMSサーバ100は、送配電事業者サーバ200および電力調整リソース群500の各々と通信可能に構成される。通信プロトコルは、OpenADRであってもよい。電力調整リソース群500は、マイクログリッドMGに電気的に接続可能な複数の電力調整リソースを含む。CEMSサーバ100は、電力調整リソース群500に含まれる複数の電力調整リソースを管理するように構成される。CEMSサーバ100は、送配電事業者サーバ200から電力系統PGの需給調整を要請されたときに、電力調整リソース群500に対してDR(デマンドレスポンス)を実施してもよい。また、CEMSサーバ100は、需給調整市場の要請に応じて電力調整リソース群500に対してDRを実施してもよい。また、CEMSサーバ100は、マイクログリッドMGの需給調整を行なうために、電力調整リソース群500に対してDRを実施してもよい。
【0029】
電力調整リソース群500は、EVSE(Electric Vehicle Supply Equipment)20と、住宅30と、施設40と、工場50と、ESS(Energy Storage System)60と、FCS(Fuel Cell System)70と、発電機80と、自然変動電源90とを含む。これらの各々が、電力調整リソースとして機能し得る。電力調整リソース群500に含まれる上記の複数の電力調整リソースの各々は、マイクログリッドMGを介して相互に電気的に接続されている。
【0030】
電力調整リソース群500は、電動車両をさらに含む。本実施の形態における電動車両は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)11と、燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)12と、プラグインハイブリッド自動車(PHV:Plug-in Hybrid Vehicle)13とを含む。EVSE20は、電動車両(たとえば、EV、FCVまたはPHV)と電気的に接続された状態で電力調整リソースとして機能する。たとえば、EVSE20の充電コネクタが電動車両のインレットに挿入(プラグイン)されることによって、EVSE20と電動車両とが電気的に接続される。
【0031】
なお、電力調整リソース群500に含まれる電動車両の数は任意である。電力調整リソース群500は、個人が所有する電動車両(POV)を含んでもよいし、MaaS(Mobility as a Service)車両を含んでもよい。MaaS車両は、MaaS事業者が管理する車両である。また、電力調整リソース群500に含まれるEVSE20、住宅30、施設40、工場50、ESS60、FCS70、発電機80、および自然変動電源90の各々の数も任意である。
【0032】
EV11は、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)10aと、バッテリB1と、通信装置C1とを含む。ECU10aは、EV11に搭載された各機器を制御するように構成される。通信装置C1は、CEMSサーバ100と無線通信が可能に構成される。バッテリB1は、たとえば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池を含んで構成される。バッテリB1に蓄えられた電力は、EV11の走行用モータ(図示せず)を駆動するために使用されたり、EV11に搭載された各機器を駆動するために使用されたりする。
【0033】
FCV12は、ECU10bと、発電装置H2と、バッテリB2と、通信装置C2とを含む。発電装置H2は、いずれも図示しないが、水素を貯留する水素タンクと、水素と酸素との化学反応によって発電する燃料電池とを含む。燃料電池は、水素タンクから供給される水素を使って発電を行なう。発電装置H2によって発電された電力は、FCV12の走行用モータ(図示せず)を駆動するために使用されたり、FCV12に搭載された各機器を駆動するために使用されたり、バッテリB2に蓄えられたりする。FCV12のユーザは、街の中に設置された水素ステーション(図示せず)で水素を補給できる。通信装置C2は、CEMSサーバ100と無線通信が可能に構成される。バッテリB2は、たとえば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池を含んで構成される。バッテリB2に蓄えられた電力は、FCV12の走行用モータ(図示せず)を駆動するために使用されたり、FCV12に搭載された各機器を駆動するために使用されたりする。
【0034】
PHV13は、ECU10cと、エンジンENGと、バッテリB3と、通信装置C3とを含む。ECU10cは、PHV13に搭載された各機器を制御するように構成される。通信装置C3は、CEMSサーバ100と無線通信が可能に構成される。エンジンENGは、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジン等の燃料(ガソリンまたは軽油)を燃焼させて動力を出力する公知の内燃機関である。エンジンENGが発生した動力は、PHV13の駆動力として使用されたり、発電用モータ(図示せず)の駆動に使用されたりする。バッテリB3は、たとえば、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等の二次電池を含んで構成される。バッテリB3に蓄えられた電力は、PHV13の走行用モータ(図示せず)を駆動するために使用されたり、PHV13に搭載された各機器を駆動するために使用されたりする。
【0035】
EVSE20は、たとえば、街に設置された充電設備である。EVSE20は、車両ユーザが所定の認証を行なうことによって利用できる公共のEVSEである。認証の方式は、充電カード方式であってもよいし、通信による認証(たとえば、Plug and Charge)であってもよい。なお、本実施の形態では、電力調整リソース群500には複数のEVSE20が含まれている。
【0036】
住宅30は、各種の家庭用電気機械器具(たとえば、照明器具、空調設備、調理器具、情報機器、テレビ、冷蔵庫、および洗濯機など)を含む。また、住宅30は、充放電器(たとえば、家庭用EVSE)と、自然変動電源(たとえば、屋根に設置される太陽光パネル)と、ESSと、FCSと、コージェネレーションシステム(たとえば、自家発電時に発生する熱を利用した給湯機、またはヒートポンプ給湯機)との少なくとも1つを備えてもよい。住宅30におけるエネルギーの需給は、たとえばHEMS(Home Energy Management System)31によって管理されている。マイクログリッドMGと住宅30とは電力授受可能に接続されている。本実施の形態では、CEMSサーバ100と各住宅30とがHEMS31を介して通信する。また、本実施の形態では、電力調整リソース群500には複数の住宅30が含まれている。
【0037】
施設40は、たとえば、オフィスビル、病院、災害発生時の災害対策本部、データセンタ、および、商店を含む。商店の例としては、デパート、ショッピングセンタ、スーパーマーケット、またはコンビニエンスストアが挙げられる。各施設におけるエネルギーの需給は、たとえばBEMS(Building Energy Management System)41によって管理されている。BEMS41は、施設ごとに個別にエネルギーの需給を管理してもよいし、複数の施設におけるエネルギーの需給をまとめて管理してもよい。施設40に含まれる各施設とマイクログリッドMGとは電力授受可能に接続されている。本実施の形態では、CEMSサーバ100がBEMS41を介して施設40と通信する。
【0038】
工場50は、たとえば自動車製造工場であってもよいし、他の工場であってもよい。工場50は、たとえば、生産ラインと、空調用の集中熱源とを含む。また、工場50は、自然変動電源(たとえば、太陽光発電システムまたは風力発電システム)と、EVSEと、ESSと、FCSと、発電機(たとえば、ガスタービン発電機またはディーゼル発電機)と、コージェネレーションシステムとの少なくとも1つを備えてもよい。工場50におけるエネルギーの需給は、たとえばFEMS(Factory Energy Management System)51によって管理されている。マイクログリッドMGと工場50とは電力の授受が可能に接続されている。本実施の形態では、CEMSサーバ100と工場50とがFEMS51を介して通信する。
【0039】
ESS60は、マイクログリッドMGに対して充放電可能に構成される定置式のバッテリを含む。ESS60に含まれるバッテリとしては、たとえば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、レドックスフロー電池、またはNAS(ナトリウム硫黄)電池が採用されてもよい。自然変動電源90によって発電された余剰電力がESS60に蓄えられてもよい。
【0040】
FCS70は、水素と酸素との化学反応によって発電する定置式の燃料電池を含む。FCS70は水素タンク71と接続されている。水素タンク71は水素生成装置72と接続されている。FCS70は、水素タンク71から供給される水素を使って発電し、発電した電力をマイクログリッドMGに対して供給するように構成される。水素生成装置72は、種々の公知の方法を採用することができる。たとえば、水素生成装置72において、副生水素法、水分解法、化石燃料改質法、バイオマス改質法、またはIS(ヨウ素/硫黄)プロセスのような方法を採用することができる。水素生成装置72は、マイクログリッドMGから供給される電力を使って水素を生成してもよいし、自然変動電源90によって発電された余剰電力を使って水素を生成してもよい。CEMSサーバ100は、水素タンク71内の水素残量が所定値を下回らないように、水素生成装置72を制御してもよい。
【0041】
発電機80は、化石燃料を用いて発電する定置式の発電機である。発電機80は、たとえばガスタービン発電機またはディーゼル発電機であってもよい。発電機80は、非常用の電源として使用されてもよい。
【0042】
自然変動電源90は、気象条件によって発電出力が変動する電源であり、発電した電力をマイクログリッドMGへ出力する。自然変動電源90は、たとえば太陽光発電システムおよび風力発電システムを含む。自然変動電源90によって発電された電力は、変動性再生可能エネルギー(VRE)に相当する。
【0043】
CEMSサーバ100は、プロセッサ110と、記憶装置120と、通信装置130とを含んで構成される。プロセッサ110、記憶装置120、および、通信装置130は、バス140により接続されている。プロセッサ110は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶装置120は、各種情報を保存可能に構成される。記憶装置120には、プロセッサ110によって実行されるプログラムのほか、プログラムで使用される情報(たとえば、マップ、数式、および各種パラメータ)が記憶されている。通信装置130は、各種の通信I/Fを含む。CEMSサーバ100は、通信装置130を通じて外部と通信するように構成される。
【0044】
CEMSサーバ100は、マイクログリッドMGに接続される電力調整リソース群500を制御することにより、電力調整リソース群500をVPP(仮想発電所)として機能させる。より具体的には、CEMSサーバ100は、IoT(モノのインターネット)を利用したエネルギーマネジメント技術により、電力調整リソース群500を遠隔制御および統合制御することによって、電力調整リソース群500をあたかも1つの発電所のように機能させる。
【0045】
本実施の形態では、マイクログリッドMGの管理者が電力会社と電力契約を結んでいる。電力会社は、電力契約に従って、マイクログリッドMGに電力を供給する。この電力契約において、マイクログリッドMGが電力系統PGから供給を受ける電力が決められている。この電力を以下では「契約電力」とも称する。なお、「供給電力が契約電力を満たす」とは、供給電力が契約電力に対して過不足がない(契約電力として決められた範囲内に含まれる)ことを意味する。
【0046】
マイクログリッドMGが電力系統PGと接続された状態で、マイクログリッドMGが電力系統PGと連系運転する場合には、CEMSサーバ100は、電力系統PGからマイクログリッドMGに供給される電力が契約電力を満たすように、マイクログリッドMGの電力需給を調整するように構成されている。マイクログリッドMGの連系運転中に、CEMSサーバ100は、マイクログリッドMGの調整力として機能する電力調整リソースを制御することにより、電力需給を調整する。
【0047】
電力系統PGからの電力の供給が停止され、マイクログリッドMGが自立運転する場合には、CEMSサーバ100は、電力系統PGから電力供給を受けることなく、マイクログリッドMGの電力需給を調整するように構成されている。マイクログリッドMGの自立運転中に、CEMSサーバ100は、電力調整リソース群500の各電力調整リソースを制御することにより、電力需給を調整する。なお、電力調整リソース群500に含まれる各電力調整リソースは、マイクログリッドMGが自立運転する場合において、電力の供給を受ける電力調整リソース(以下「第1(受電)電力調整リソース」とも称する)と、電力を供給する電力調整リソース(以下「第2(給電)電力調整リソース」とも称する)とに大別される。
【0048】
ここで、災害等が発生すると、電力系統PGからの電力の供給が途絶(停止)される場合がある。この場合にも、上述のとおり、マイクログリッドMGの自立運転が行なわれるが、電力調整リソース群500に含まれる第1電力調整リソースの中には、病院、災害対策本部、および/またはデータセンタ等のような、電力の停止を許容できない電力調整リソースが含まれている。電力系統PGが復旧するまでの間、電力の停止を許容できない電力調整リソースへの電力の供給が停止しないように、マイクログリッド内の電力の需給バランスを図ることが求められる。なお、以下においては、電力系統PGからの電力の供給が途絶してから、電力系統PGが復旧すると見込まれるまでの期間を「所定の期間」とも称する。
【0049】
そこで、本実施の形態に係るCEMSサーバ100は、第1電力調整リソースに対して、第1電力調整リソースへの電力供給の優先度を設定し、優先度に基づいて、所定の期間に渡るマイクログリッドMGの運転計画を生成する。優先度は、電力供給の優先度合いを示すものであり、段階的に設定される。
【0050】
図2は、優先度の設定情報(電力供給の優先度に関する情報)の一例を説明するための図である。図2に示す例においては、A,B,Cの3つの優先度が定められている。A,B,Cの優先度は、A>B>Cの順に優先度が高いものである。Aの優先度は、電力の停止を許容しない優先度である。すなわち、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースには、所定の期間継続して電力が供給されるように運転計画が生成される。B,Cの優先度は、電力の停止を許容する優先度である。B,Cと優先度が低下するに連れて、電力の供給量が絞られるように運転計画が生成される。
【0051】
図2に示す例においては、Aの優先度が設定される第1電力調整リソースは、病院、災害対策本部およびデータセンタである。Aの優先度に割り当てられる第2電力調整リソースは、発電機80である。すなわち、病院、災害対策本部およびデータセンタには、発電機80の発電電力が供給される。発電機80は、ESS60、FCS70、自然変動電源90、および、電動車両に比べて、安定して、かつ、即座に電力の供給が可能である。Bの優先度が設定される第1電力調整リソースは、一般の住宅30および生活必需品を取り扱う商店である。Bの優先度に割り当てられる第2電力調整リソースは、ESS60、FCS70および自然変動電源90である。すなわち、一般の住宅30および生活必需品を取り扱う商店には、ESS60、FCS70および自然変動電源90の発電電力が供給される。ESS60、FCS70および自然変動電源90は、電動車両に比べて、即座に電力の供給が可能である。Cの優先度が設定される第1電力調整リソースは、オフィスビルおよび生活必需品以外のものを取り扱う商店である。Cの優先度に割り当てられる第2電力調整リソースは、電動車両(EV11,FCV12,PHV13)である。すなわち、オフィスビルおよび生活必需品以外のものを取り扱う商店には、電動車両の発電電力が供給される。
【0052】
なお、上記の優先度付けは一例であり、それぞれの優先度に設定される第1電力調整リソース、および、それぞれの優先度に割り当てられる第2電力調整リソースは、マイクログリッドMGの属性等に応じて、適宜変更すればよい。
【0053】
図3は、運転計画における第1電力調整リソースの目標稼働率を説明するための図である。たとえば、連系運転から自立運転に切り替わると、CEMSサーバ100は、図3に示す目標稼働率を満たすように運転計画を生成する。図3に示す例においては、所定の期間は7日間である。すなわち、災害の発生等によって電力系統PGからの電力の供給が途絶(停止)されると、CEMSサーバ100は、図3の目標稼働率に基づいて、7日間の運転計画を生成する。目標稼働率の情報は、予め定められて記憶装置120に記憶されていてもよいし、電力系統PGからの電力の供給が途絶した時点におけるマイクログリッドMG内の電力量に基づいて設定されてもよい。
【0054】
図3に示す例においては、1日目および2日目の第1電力調整リソースの目標稼働率は、50%である。すなわち、CEMSサーバ100は、電力調整リソース群500に含まれる第1電力調整リソースのうちの50%を稼働させるように運転計画を生成する。3日目および4日目の第1電力調整リソースの目標稼働率は、40%である。5日目から7日目の第1電力調整リソースの目標稼働率は、30%である。たとえば、電力調整リソース群500に含まれる第1電力調整リソースのうち、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースが10%であるとする。1日目および2日目では、CEMSサーバ100は、稼働率50%のうち、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースを稼働させるための10%を差し引いた40%分をB,Cの優先度が設定された第1電力調整リソースの稼働に割り当てる。3日目および4日目では、CEMSサーバ100は、稼働率40%のうち、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースを稼働させるための10%を差し引いた30%分をB,Cの優先度が設定された第1電力調整リソースの稼働に割り当てる。5日目から7日目では、CEMSサーバ100は、稼働率30%のうち、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースを稼働させるための10%を差し引いた20%分をB,Cの優先度が設定された第1電力調整リソースの稼働に割り当てる。
【0055】
さらに、たとえば、災害等の影響によって使用できない発電機80が発生したような場合には、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースへの電力供給が停止しないように、B,Cの優先度に割り当てられた第2電力調整リソースの発電電力を、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースへ供給するようにしてもよい。
【0056】
CEMSサーバ100は、7日間に渡って計画的に各電力調整リソースへの電力供給を行なう。これにより、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースには、7日間に渡って継続的に電力供給を行なうことが可能となる。
【0057】
図4は、CEMSサーバ100の構成要素を機能別に示す機能ブロック図である。図1とともに図4を参照して、CEMSサーバ100のプロセッサ110は、情報取得部111と、情報管理部112と、運転切替部113と、連系運転部114と、自立運転部115と、情報読み出し部116と、計画生成部117とを含む。たとえば、プロセッサ110は、記憶装置120に記憶されたプログラムを実行することにより、情報取得部111、情報管理部112、運転切替部113、連系運転部114、自立運転部115、情報読み出し部116、および、計画生成部117として機能する。なお、情報取得部111、情報管理部112、運転切替部113、連系運転部114、自立運転部115、情報読み出し部116、および、計画生成部117は、たとえば、専用のハードウェア(電子回路)により実現されてもよい。
【0058】
情報取得部111は、通信装置130を介して種々の情報を取得する。たとえば、情報取得部111は、住宅30、施設40、および工場50の各々の消費電力を示す情報を取得する。また、情報取得部111は、ESS60のバッテリのSOCを示す情報、および、残容量(kWh)を示す情報を取得する。また、情報取得部111は、FCS70の水素タンク71内の水素残量を示す情報を取得する。また、情報取得部111は、EV11のバッテリB1のSOCを示す情報、および、バッテリB1の残容量(kWh)を示す情報を取得する。また、情報取得部111は、FCV12のバッテリB2のSOCを示す情報、バッテリB2の残容量(kWh)を示す情報、および、発電装置H2の水素残量を示す情報を取得する。また、情報取得部111は、PHV13のバッテリB3のSOCを示す情報、バッテリB3の残容量(kWh)を示す情報、および、ガソリン残量を示す情報を取得する。
【0059】
また、情報取得部111は、通信装置130を介した通信の可否に基づいて、第1電力調整リソースおよび第2電力調整リソースの各々の状態(稼働可能か否か)の情報を取得する。
【0060】
さらに、情報取得部111は、通信装置130を介して、たとえば図示しない気象情報センタ等から気象情報を取得する。情報取得部111は、たとえば、所定の期間分の気象情報を取得する。気象情報には、天候の情報、日照の情報、風力の情報等が含まれる。
【0061】
情報管理部112は、CEMSサーバ100に登録された電力調整リソースの情報(以下「リソース情報」とも称する)を管理する。電力調整リソース群500に含まれる各電力調整リソースには、個別に識別情報(ID)が割り当てられて、記憶装置120に記憶されている。情報管理部112は、情報取得部111により収集された上記の情報を用いて、所定の制御周期毎にリソース情報を更新し、更新されたリソース情報を記憶装置120に記憶させる。
【0062】
さらに、リソース情報には、ESS60の充放電電力を示す情報、FCS70の発電電力を示す情報、発電機80の発電電力を示す情報、自然変動電源90の発電電力を示す情報、EV11の充放電電力を示す情報、FCV12の発電電力を示す情報、および、PHV13の充放電電力を示す情報が含まれてもよい。これらの情報は、たとえば、各電力調整リソースのマイクログリッドMGへの登録時に、各電力調整リソースの仕様に基づいて、リソース情報として記憶装置120に記憶されてもよい。
【0063】
運転切替部113は、マイクログリッドMGの連系運転と自立運転との切り替えを判断し、連系運転部114および自立運転部115に通知する。マイクログリッドMGの連系運転時には、運転切替部113は、電力系統PGに不具合が発生しているか否かを監視する。上記監視は、たとえば、所定の制御周期毎に繰り返し行なわれる。不具合とは、たとえば、停電や断線等により、電力系統PGからマイクログリッドMGへの電力の供給ができなくなることを意味する。電力系統PGに不具合が発生していない場合には、運転切替部113は、第1通知を連系運転部114へ通知する。第1通知は、連系運転を指示する通知である。第1通知を受けると、連系運転部114は、連系運転を継続する。電力系統PGに不具合が発生している場合には、運転切替部113は、第2通知を自立運転部115へ通知する。第2通知は、自立運転を指示する通知である。第2通知を受けると、自立運転部115は、自立運転を開始する。
【0064】
マイクログリッドMGの自立運転時には、運転切替部113は、不具合が発生した電力系統PGの復旧を監視する。上記監視は、たとえば、所定の制御周期毎に繰り返し行なわれる。電力系統PGが復旧していない場合には、運転切替部113は、第2通知を自立運転部115へ通知する。第2通知を受けると、自立運転部115は、自立運転を継続する。電力系統PGが復旧した場合には、運転切替部113は、第1通知を連系運転部114へ通知する。第1通知を受けると、連系運転部114は、連系運転を開始する。
【0065】
自立運転が行なわれる場合に用いられる運転計画は、計画生成部117により生成される。まず、自立運転部115は、自立運転を開始するにあたり、情報読み出し部116に、各種の情報の読み出しを指示する。具体的には、自立運転部115は、優先度の設定情報(図2)、所定の期間の第1電力調整リソースの稼働率の情報(図3)、気象情報、および、リソース情報の読み出しを、情報読み出し部116に指示する。情報読み出し部116は、上記の情報を記憶装置120から読み出して、自立運転部115へ出力する。さらに、自立運転部115は、情報読み出し部116から取得した上記の情報を計画生成部117へ出力する。なお、情報読み出し部116は、記憶装置120から読み出した上記の情報を計画生成部117へ出力してもよい。
【0066】
計画生成部117は、自立運転部115あるいは情報読み出し部116から取得した、上記情報(優先度の設定情報(図2)、所定の期間の第1電力調整リソースの稼働率の情報(図3)、気象情報、および、リソース情報)を用いて、運転計画を生成する。具体的には、計画生成部117は、所定の期間の第1電力調整リソースの稼働率の情報に基づいて、各日における第1電力調整リソースの稼働率を決定する。そして、計画生成部117は、第1電力調整リソースの各々の状態(稼働可能か否か)、および、第2電力調整リソースの各々の状態(稼働可能か否か)、ならびに、第2電力調整リソースの各々の所定の期間の発電可能な電力量に基づいて、所定の期間の運転計画を生成する。運転計画は、所定の期間継続して、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースへの電力供給が可能なように生成される。FCS70の所定の期間の発電可能な電力量には、水素タンク71の残量が考慮される。自然変動電源90の所定の期間の発電可能な電力量には、気象情報(たとえば、天候の情報、日照の情報、風力の情報等)が考慮される。また、FCV12の所定の期間の発電可能な電力量には、マイクログリッドMG内あるいはマイクログリッドMG周辺の水素ステーションの水素残量が考慮されてもよい。
【0067】
計画生成部117は、生成した運転計画を自立運転部115へ出力する。自立運転部115は、運転計画に基づいて、自立運転を行なう。
【0068】
<CEMSサーバにより実行される処理>
<<連系運転中の処理>>
図5は、マイクログリッドMGの連系運転中にCEMSサーバ100によって実行される処理の手順を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートの処理は、マイクログリッドMGの連系運転中にCEMSサーバ100によって所定の制御周期毎に繰り返し実行される。なお、図5および後述する図6に示すフローチャートの各ステップ(以下ステップを「S」と略す)は、CEMSサーバ100によるソフトウェア処理によって実現される場合について説明するが、その一部あるいは全部がCEMSサーバ100内に作製されたハードウェア(電子回路)によって実現されてもよい。
【0069】
S1において、CEMSサーバ100は、マイクログリッドMGの電力が電力系統PGの電力と同期するように、たとえば、各電力調整リソースを電流制御で運転する。CEMSサーバ100は、電力調整リソースによってマイクログリッドMGの電流(ひいては、マイクログリッドMGの需給バランス)を調整する。
【0070】
S3において、CEMSサーバ100は、電力系統PG(外部グリッド)に、たとえば停電のような不具合が発生したか否か、すなわち、電力系統PGからの電力の供給が意図せずに停止されたか否かを判定する。電力系統PGに不具合が発生していない場合(正常である場合)には(S3においてNO)、CEMSサーバ100は、連系運転を継続するために、処理をS1に返す。電力系統PGに不具合が発生した場合には(S3においてYES)、CEMSサーバ100は、連系運転から自立運転へ切り替えるために、処理をS5に進める。
【0071】
S5において、CEMSサーバ100は、電力系統PGに不具合が発生したため、連系運転から自立運転へ切り替える処理を実行する。そして、CEMSサーバ100は、図5に示す一連の処理を終了させ、以下に説明する図6に示す処理を開始する。
【0072】
<<自立運転中の処理>>
図6は、マイクログリッドMGの自立運転中にCEMSサーバ100によって実行される処理の手順を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートの処理は、マイクログリッドMGの自立運転中にCEMSサーバ100によって所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0073】
S11において、CEMSサーバ100は、記憶装置120から各種情報(優先度の設定情報(図2)、所定の期間の第1電力調整リソースの稼働率の情報(図3)、気象情報、および、リソース情報)を読み出す。
【0074】
S13において、CEMSサーバ100は、S11で読み出した各種情報を用いて、所定の期間の運転計画を生成する。
【0075】
S15において、CEMSサーバ100は、S13で生成した運転計画に基づいて、たとえば、各電力調整リソースをマスタスレーブ制御で運転する。
【0076】
S17において、CEMSサーバ100は、不具合が発生した電力系統PG(外部グリッド)が復旧したか否かを判定する。電力系統PGがまだ復旧していない場合には(S17にてNO)、CEMSサーバ100は、処理をS15に返す。電力系統PGが復旧した場合には(S17にてYES)、CEMSサーバ100は、処理をS19に進める。
【0077】
S19において、CEMSサーバ100は、マイクログリッドMGを自立運転から連系運転に切り替える。より具体的には、CEMSサーバ100は、受変電設備501の遮断器(連系遮断器)を投入することで、電力系統PGに対してマイクログリッドMGを並列させる。また、CEMSサーバ100は、マイクログリッドMGの電力制御モードを、マスタスレーブ制御から、電力系統PGと同期をとる電流制御へ切り替える。S19の処理が実行されると、CEMSサーバ100は、図6に示す一連の処理を終了させ、上述した図5の処理を開始する。
【0078】
以上のように、本実施の形態においては、マイクログリッドMGが自立運転する場合において、第1電力調整リソースの優先度を定めた情報(優先度の設定情報)に基づいて、所定の期間の運転計画が生成される。優先度の設定情報には、電力供給の停止を許容しない優先度であるAの優先度が含まれている。たとえば、病院、災害対策本部、および/またはデータセンタ等のような電力調整リソースにAの優先度が設定される。CEMSサーバ100が、運転計画に基づいて、マイクログリッドMGを自立運転することにより、所定の期間継続して、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースに電力を供給することができる。さらに、Aの優先度が設定された第1電力調整リソースには、発電機80等の比較的安定して、かつ、即座に電力の供給が可能な第2電力調整リソースから電力の供給が行なわれる。それゆえに、災害等の発生により電力系統PGがダウンした場合にも、安定して、かつ、即座にAの優先度が設定された第1電力調整リソースへ電力を供給することが可能となる。よって、マイクログリッドMGが自立運転する場合において、所定の期間継続して、Aの優先度が設定された電力調整リソースへの電力供給が停止されることを抑制することができる。
【0079】
また、CEMSサーバ100は、運転計画の生成に、所定の期間の気象情報を用いる。たとえば、CEMSサーバ100は、所定の期間の天候情報および日照情報を用いて、太陽光発電システムの発電可能な電力量を予測する。また、CEMSサーバ100は、所定の期間の天候情報および風力の情報を用いて、風力発電システムの発電量を予測する。これらの予測値を運転計画の生成に用いることにより、CEMSサーバ100は、適切な運転計画を生成することが可能となる。
【0080】
また、CEMSサーバ100は、運転計画の生成に、FCS70の水素タンク71の残量を用いる。たとえば、CEMSサーバ100は、水素タンク71の残量から所定の期間のFCS70の発電可能な電力量を予測する。この予測値を運転計画の生成に用いることにより、CEMSサーバ100は、適切な運転計画を生成することが可能となる。
【0081】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 電力システム、10a,10b,10c ECU、11 EV、 12 FCV、13 PHV、20 EVSE、30 住宅、31 HEMS、40 施設、41 BEMS、50 工場、51 FEMS、60 ESS、70 FCS、71 水素タンク、72 水素生成装置、80 発電機、90 自然変動電源、100 CEMSサーバ、110 プロセッサ、111 情報取得部、112 情報管理部、113 運転切替部、114 連系運転部、115 自立運転部、116 情報読み出し部、117 計画生成部、120 記憶装置、130 通信装置、140 バス、200 送配電事業者サーバ、500 電力調整リソース群、501 受変電設備、B1,B2,B3 バッテリ、C1,C2,C3 通信装置、ENG エンジン、H2 発電装置、MG マイクログリッド、PG 電力系統。
図1
図2
図3
図4
図5
図6