(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04029 20160101AFI20240528BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240528BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240528BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20240528BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20240528BHJP
F24D 3/00 20220101ALI20240528BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240528BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/0432
F24H1/00 631A
F24D3/00 B
F24D3/00 E
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2020216154
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薮谷 元彦
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-20081(JP,A)
【文献】特開2005-11694(JP,A)
【文献】特開2018-165585(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109790(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0021320(US,A1)
【文献】特開2020-187940(JP,A)
【文献】特開2014-134355(JP,A)
【文献】特開2005-30211(JP,A)
【文献】特開2009-218052(JP,A)
【文献】特開2007-305429(JP,A)
【文献】特開2013-214430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
F24D 1/00-3/18
F24H 1/00
F24H 1/18-1/20
F24H 1/48-1/52
F24H 4/00-4/06
F24D 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を備える燃料電池システムであって、
熱交換液体との熱交換により前記燃料電池の排熱を回収する排熱回収用熱交換器と、
温水暖房装置において暖房用液体が循環する暖房用配管に接続され、前記熱交換液体との熱交換により前記暖房用液体を加熱する加熱用熱交換器と、
前記排熱回収用熱交換器と前記加熱用熱交換器とを接続する循環配管と、
前記循環配管内で熱交換液体を循環させるポンプと、
前記循環配管に設けられ、前記熱交換液体を加熱するヒータと、
前記燃料電池が発電している場合には、前記燃料電池の排熱を少なくとも用いて前記暖房用液体が加熱されるよう少なくとも前記ポンプを制御し、前記燃料電池が発電していない場合には、前記ヒータの熱により前記暖房用液体が加熱されるよう前記ヒータと前記ポンプとを制御する制御装置と、
を備える燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記加熱用熱交換器の暖房用液体の出口部における温度を検出する第1温度センサを備え、
前記制御装置は、前記燃料電池が発電している場合には、暖房強度が強いほど高くなるように温度目標値を設定し、前記第1温度センサにより検出される温度が前記温度目標値に一致するように前記ポンプを制御する、
燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記加熱用熱交換器の暖房用液体の入口部における温度を検出する第2温度センサを備え、
前記制御装置は、前記第1温度センサにより検出される温度と前記第2温度センサにより検出される温度との温度差が大きいほど高くなるように前記温度目標値を設定する、
燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池システムであって、
前記制御装置は、前記温度差が所定値未満である場合には、前記燃料電池の排熱により前記第1温度センサにより検出される温度が前記温度目標値に一致するように前記ポンプを制御し、前記温度差が前記所定値以上である場合には、前記燃料電池の排熱と前記ヒータの熱とにより前記第1温度センサにより検出される温度が前記温度目標値に一致するように前記ヒータと前記ポンプとを制御する、
燃料電池システム。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか1項に記載の燃料電池システムであって、
前記循環配管における、前記加熱用熱交換器の熱交換液体の出口部と前記排熱回収用熱交換器の熱交換液体の入口部との間に配置されたラジエータと、
前記ラジエータに送風する送風器と、
前記排熱回収用熱交換器の熱交換液体の入口部における温度を検出する第3温度センサと、
を備え、
前記制御装置は、前記燃料電池が発電している場合には、前記第3温度センサにより検出される温度が所定温度を超えないように前記送風器を制御する、
燃料電池システム。
【請求項6】
燃料電池を備える燃料電池システムであって、
熱交換液体との熱交換により前記燃料電池の排熱を回収する排熱回収用熱交換器と、
温水暖房装置において暖房用液体が循環する暖房用配管に接続され、前記熱交換液体との熱交換により前記暖房用液体を加熱する加熱用熱交換器と、
前記排熱回収用熱交換器と前記加熱用熱交換器とを接続する循環配管と、
前記循環配管内で熱交換液体を循環させるポンプと、
前記燃料電池システムとは別に設置されて前記暖房用液体を加熱可能な熱源装置と通信可能に接続され、前記燃料電池が発電している場合には、前記燃料電池の排熱を少なくとも用いて前記暖房用液体が加熱されるよう少なくとも前記ポンプを制御し、前記燃料電池が発電していない場合には、前記熱源装置に前記暖房用液体の加熱を指示する制御装置と、
を備える燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内に設置された床暖房パネルと、温水を生成する熱源機と、熱源機と床暖房パネルとを接続する温水通路を開閉する熱動弁と、熱源機および熱動弁の動作を制御する制御部と、を備える温水床暖房装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、室内の目標温度を設定する操作ボタンや室内温度を検知する室温センサを含むリモコンを備え、制御部は、室内温度が目標温度となるように、熱動弁を開状態としたまま温水を床暖房パネルに供給する運転状態と動熱弁を開閉させながら温水を供給する運転状態とを切り替えて熱動弁を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した装置では、専用の熱源機を用いて暖房するため、エネルギ効率の向上を図るには不利である。
【0005】
本発明は、快適性を維持しつつ、エネルギ効率の向上を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の第1の燃料電池システムは、
燃料電池を備える燃料電池システムであって、
熱交換液体との熱交換により前記燃料電池の排熱を回収する排熱回収用熱交換器と、
温水暖房装置において暖房用液体が循環する暖房用配管に接続され、前記熱交換液体との熱交換により前記暖房用液体を加熱する加熱用熱交換器と、
前記排熱回収用熱交換器と前記加熱用熱交換器とを接続する循環配管と、
前記循環配管内で熱交換液体を循環させるポンプと、
前記循環配管に設けられ、前記熱交換液体を加熱するヒータと、
前記燃料電池が発電している場合には、前記燃料電池の排熱を少なくとも用いて前記暖房用液体が加熱されるよう少なくとも前記ポンプを制御し、前記燃料電池が発電していない場合には、前記ヒータの熱により前記暖房用液体が加熱されるよう前記ヒータと前記ポンプとを制御する制御装置と、
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明の第1の燃料電池システムでは、燃料電池が発電しているときには、発電に伴って生じる燃料電池からの排熱を少なくとも用いて暖房用液体を加熱するため、専用の熱源装置を用いて暖房用液体を加熱するものに比して、エネルギ効率をより向上させることができる。また、燃料電池が発電していないときには、ヒータの熱を用いて暖房用液体を加熱するため、燃料電池の発電状態に拘わらず、暖房することができる。この結果、快適性を維持しつつ、エネルギ効率をより向上させることができる。
【0009】
こうした本発明の第1の燃料電池システムにおいて、前記加熱用熱交換器の暖房用液体の出口部における温度を検出する第1温度センサを備え、前記制御装置は、前記燃料電池が発電している場合には、暖房強度が強いほど高くなるように温度目標値を設定し、前記第1温度センサにより検出される温度が前記温度目標値に一致するように前記ポンプを制御するものとしてもよい。こうすれば、暖房強度に応じて暖房用液体を適切な温度に加熱することができ、快適性をより向上させることができる。
【0010】
この場合、前記加熱用熱交換器の暖房用液体の入口部における温度を検出する第2温度センサを備え、前記制御装置は、前記第1温度センサにより検出される温度と前記第2温度センサにより検出される温度との温度差が大きいほど高くなるように前記温度目標値を設定してもよい。こうすれば、温水暖房装置の運転状態を適正状態に素早く収束させることができる。
【0011】
さらに、この場合、前記制御装置は、前記温度差が所定値未満である場合には、前記燃料電池の排熱により前記第1温度センサにより検出される温度が前記温度目標値に一致するように前記ポンプを制御し、前記温度差が前記所定値以上である場合には、前記燃料電池の排熱と前記ヒータの熱とにより前記第1温度センサにより検出される温度が前記温度目標値に一致するように前記ヒータと前記ポンプとを制御してもよい。こうすれば、暖房運転に必要な熱量に不足が生じるのを抑制することができる。
【0012】
また、本発明の第1の燃料電池システムにおいて、前記循環配管における、前記加熱用熱交換器の熱交換液体の出口部と前記排熱回収用熱交換器の熱交換液体の入口部との間に配置されたラジエータと、前記ラジエータに送風する送風器と、前記排熱回収用熱交換器の熱交換液体の入口部における温度を検出する第3温度センサと、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池が発電している場合には、前記第3温度センサにより検出される温度が所定温度を超えないように前記送風器を制御してもよい。こうすれば、必要量の凝縮水を生成すると共に、温水暖房装置からの温水が過剰に加熱されるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の第2の燃料電池システムは、
燃料電池を備える燃料電池システムであって、
熱交換液体との熱交換により前記燃料電池の排熱を回収する排熱回収用熱交換器と、
温水暖房装置において暖房用液体が循環する暖房用配管に接続され、前記熱交換液体との熱交換により前記暖房用液体を加熱する加熱用熱交換器と、
前記排熱回収用熱交換器と前記加熱用熱交換器とを接続する循環配管と、
前記循環配管内で熱交換液体を循環させるポンプと、
前記燃料電池システムとは別に設置されて前記暖房用液体を加熱可能な熱源装置と通信可能に接続され、前記燃料電池が発電している場合には、前記燃料電池の排熱を少なくとも用いて前記暖房用液体が加熱されるよう少なくとも前記ポンプを制御し、前記燃料電池が発電していない場合には、前記熱源装置に前記暖房用液体の加熱を指示する制御装置と、
を備えることを要旨とする。
【0014】
この本発明の第2の燃料電池システムでは、燃料電池が発電しているときには、発電に伴って生じる燃料電池からの排熱を少なくとも用いて暖房用液体を加熱するため、熱源装置を停止することができ、エネルギ効率をより向上させることができる。また、燃料電池が発電していないときには、熱源装置に対して暖房用液体の加熱を指示するため、燃料電池の発電状態に拘わらず、暖房することができる。この結果、快適性を維持しつつ、エネルギ効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の燃料電池システムを含む床暖房システムの概略構成図である。
【
図3】ラジエータファン運転制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図4】温度TH1とファンデューティDfとの関係を示す説明図である。
【
図5】暖房制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図6】発電時暖房制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図7】制御範囲内用の暖房強度と目標温度TH8tagとの関係と、低温範囲内用の暖房強度と目標温度TH8tagとの関係と、高温範囲内用の暖房強度と目標温度TH8tagとの関係と、を示す説明図である。
【
図8】非発電時暖房制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態の床暖房システムの概略構成図である。
【
図10】燃料電池システムと給湯器と床暖房装置との接続関係を示す説明図である。
【
図11】第2実施形態における暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、第1実施形態の燃料電池システムを含む床暖房システムの概略構成図であり、
図2は、燃料電池システムの概略構成図である。第1実施形態の床暖房システムは、
図1に示すように、温水式の床暖房システムであり、床下に温水が循環する暖房配管101が敷設された温水床暖房装置100と、暖房配管101内を循環する温水を加熱する温水加熱装置60を含む本実施形態の燃料電池システム10と、を備える。
【0018】
燃料電池システム10は、
図2に示すように、筐体12と、アノードガス(燃料ガス)中の水素とカソードガス(酸化剤ガス)中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池スタック21を含む発電モジュール20と、発電モジュール20にアノードガスの原料となる原燃料ガス(例えば天然ガスやLPガス)を供給する原燃料ガス供給装置30と、発電モジュール20に原燃料ガスからアノードガスへの改質(水蒸気改質)に必要な改質水を供給する改質水供給装置40と、発電モジュール20(燃料電池スタック21)にカソードガスとしてのエアを供給するエア供給装置50と、発電モジュール20において発生した燃焼排ガスの熱(排熱)を用いて温水床暖房装置100からの温水を加熱する温水加熱装置60と、を備える。筐体12には、吸気口12aと排気口12bとが形成されており、吸気口12aの近傍には、外気を取り込んで筐体12の内部を換気するための換気ファン14が設置されている。
【0019】
発電モジュール20は、燃料電池スタック21や、気化器22、2つの改質器23を含み、これらは、断熱性を有するモジュールケース29に収容されている。本実施形態では、発電モジュール20は、2つの燃料電池スタック21を有し、2つの燃料電池スタック21は、間隔をおいて互いに対向するようにモジュールケース29内に配置されたマニホールド24上に設置される。
【0020】
各燃料電池スタック21は、酸化ジルコニウム等の電解質と当該電解質を挟持するアノード電極およびカソード電極とをそれぞれ有すると共に
図2中、左右方向(水平方向)に配列された複数の固体酸化物形の単セルを有する。各単セルのアノード電極内には、図示しないアノードガス通路が単セルの配列方向と直交する方向すなわち上下方向に延在するように形成されている。また、各単セルのカソード電極の周囲には、カソードガスを流通させる図示しないカソードガス通路が単セルの配列方向に直交する方向すなわち上下方向に延在するように形成されている。各単セルのアノードガス通路は、マニホールド24に接続され、各単セルのカソードガス通路は、モジュールケース29内のエア通路に接続される。更に、2つの燃料電池スタック21の間(近傍)には、両者との距離が同一となるように温度センサ82が設置されている。温度センサ84は、各燃料電池スタック21の温度に相関する温度(スタック温度)T4を検出する。
【0021】
発電モジュール20の気化器22および改質器23は、モジュールケース29内の2つの燃料電池スタック21の上方に両者と間隔をおいて配設される。本実施形態では、一方の燃料電池スタック21の上方に気化器22および一方の改質器23が配置され、他方の燃料電池スタック21の上方に他方の改質器23が配置される。更に、一方の燃料電池スタック21と気化器22および一方の改質器23との間、並びに他方の燃料電池スタック21と他方の改質器23との間には、燃料電池スタック21の作動や、気化器22および改質器23での反応に必要な熱を発生させる燃焼部25が画成されている。各燃焼部25には、着火ヒータ26が設置されている。
【0022】
気化器22は、燃焼部25からの熱により原燃料ガス供給装置30からの原燃料ガスと改質水供給装置40からの改質水とを加熱し、原燃料ガスを予熱すると共に改質水を蒸発させて水蒸気を生成する。気化器22により予熱された原燃料ガスは、水蒸気と混合され、その混合ガスは、当該気化器22から改質器23に流入する。また、改質器23には、当該改質器23に流入する混合ガスの温度(気化器温度)T1を検出する温度センサ81が設置されている。
【0023】
改質器23は、その内部に充填された例えばRu系またはNi系の改質触媒を有し、燃焼部25からの熱の存在下で、改質触媒による気化器22からの混合ガスの反応(水蒸気改質反応)によって水素ガスと一酸化炭素とを生成する。更に、改質器23は、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気との反応(一酸化炭素シフト反応)によって水素ガスと二酸化炭素とを生成する。これにより、改質器23によって、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、未改質の原燃料ガス等を含むアノードガスが生成されることになる。改質器23により生成されたアノードガスは、配管やマニホールド24を介して各単セルのアノードガス通路へ流入し、アノード電極に供給される。
【0024】
また、燃料電池スタック21の各単セルのカソード電極には、モジュールケース29内に形成されたエア通路を介してカソードガスとしてのエアが供給される。各単セルのカソード電極では、酸化物イオン(O2-)が生成され、当該酸化物イオンが電解質を透過してアノード電極で水素や一酸化炭素と反応することにより電気エネルギが得られる。各単セルにおいて電気化学反応(発電)に使用されなかったアノードガス(以下、「アノードオフガス」という)およびカソードガス(以下、「カソードオフガス」という)は、各単セルのアノードガス通路やカソードガス通路から上方の燃焼部25へと流出する。
【0025】
各単セルから燃焼部25に流入したアノードオフガスは、水素や一酸化炭素等の燃料成分を含む可燃性ガスであり、各単セルから燃焼部25に流入した酸素を含むカソードオフガスと混合される。以下、アノードオフガスとカソードオフガスとの混合ガスを「オフガス」という。そして、着火ヒータ26により点火させられて燃焼部25でオフガスが着火すると、当該オフガスの燃焼により、燃料電池スタック21の作動や、気化器22での原燃料ガスの予熱や水蒸気の生成、改質器23での水蒸気改質反応等に必要な熱が発生することになる。また、燃焼部25では、未燃燃料や水蒸気を含む燃焼排ガスが生成され、当該燃焼排ガスは、燃焼触媒27を介して凝縮用熱交換器62へ供給される。燃焼触媒27は、燃焼排ガス中の未燃燃料を再燃焼させるための酸化触媒である。
【0026】
原燃料ガス供給装置30は、原燃料ガスを供給する原燃料供給源1と気化器22とを接続する原燃料ガス供給管31と、当該原燃料ガス供給管31に設置された開閉弁(2連弁)32,33、オリフィス34、ガスポンプ35および脱硫器36とを有する。原燃料ガスは、ガスポンプ35を作動させることで、原燃料供給源1から脱硫器36を介して気化器22へと圧送(供給)される。脱硫器36は、例えば常温脱硫式の脱硫器として構成される。また、原燃料ガス供給管31の開閉弁33とオリフィス34との間には、原燃料ガス供給管31内の圧力を検出する圧力センサ37や、原燃料ガス供給管31を流れる原燃料ガスの単位時間当りの流量(ガス流量Qg)を検出する流量センサ38が設置されている。
【0027】
改質水供給装置40は、改質水を貯留する改質水タンク42と、改質水タンク42と気化器22とを接続する改質水供給管41と、改質水供給管41に設置された改質水ポンプ43とを有する。改質水タンク42内の改質水は、改質水ポンプ43を作動させることで、当該改質水ポンプ43により気化器22へと圧送(供給)される。
【0028】
エア供給装置50は、モジュールケース29内に形成されたエア通路に接続されるエア供給管51と、エア供給管51の入口に設けられたエアフィルタ52と、エア供給管51に設置されたエアポンプ53とを有する。エアポンプ53を作動させることで、カソードガスとしてのエアは、エアフィルタ52を介してエア供給管51に吸引され、モジュールケース29内のエア通路を経て各燃料電池スタック21(カソード電極)へと圧送(供給)される。
【0029】
温水加熱装置60は、発電モジュール20の燃焼部25で生成された燃焼排ガスと熱交換液体(例えばロングライフクーラント)とを熱交換する凝縮用熱交換器62と、熱交換液体と温水床暖房装置100からの温水とを熱交換する加熱用熱交換器63と、凝縮用熱交換器62と加熱用熱交換器63とに接続され両者間で熱交換液体が循環する循環配管61と、加熱用熱交換器63から凝縮用熱交換器62へ向かう循環配管61に設置された循環ポンプ65と、を有する。さらに、温水加熱装置60は、循環配管61に設置されたリザーバタンク64と、循環配管61の凝縮用熱交換器62と循環ポンプ65との間に設置されたラジエータ66と、ラジエータ66に送風するラジエータファン67と、循環配管61のラジエータ66と循環ポンプ65との間に設置されたヒータ68と、を有する。
【0030】
凝縮用熱交換器62は、例えば伝熱プレートを隔てて燃焼排ガスと熱交換液体とがそれぞれ流動するよう流路が形成されたプレート式の熱交換器として構成されている。凝縮用熱交換器62の熱交換液体側の流路は循環配管61に接続され、当該循環配管61内の熱交換液体は、循環ポンプ65を作動させることで、凝縮用熱交換器62へと導入され、凝縮用熱交換器62で燃焼排ガスとの熱交換によって昇温させられた後、加熱用熱交換器63へと送られる。凝縮用熱交換器62で熱交換液体との熱交換によって燃焼排ガス中の水蒸気が凝縮し、これにより凝縮水が生成される。凝縮用熱交換器62の燃焼排ガス側の流路は、凝縮水配管44を介して改質水タンク42に接続されており、燃焼排ガス中の水蒸気が凝縮することにより生成された凝縮水は、当該凝縮水配管44を介して改質水タンク42内へと導入される。凝縮用熱交換器62の熱交換液体側の流路における入口付近には、凝縮用熱交換器62に導入される直前の熱交換液体の温度TH1を検出する温度センサ83が設置され、熱交換液体側の流路における出口付近には、凝縮用熱交換器62を通過した直後の熱交換液体の温度TH3を検出する温度センサ84が設置されている。なお、凝縮水配管44には、図示しない水精製器が設置され、凝縮用熱交換器62で生成された凝縮水は、改質水タンク42へ導入される前に当該水精製器により精製される。更に、凝縮用熱交換器62の燃焼排ガス側の流路は、燃焼排ガス排出管45に接続されている。発電モジュール20の燃焼部25から排出されて凝縮用熱交換器62で水分が除去された排気ガスは、燃焼排ガス排出管45を介して大気中に排出される。
【0031】
加熱用熱交換器63は、例えば伝熱プレートを隔てて熱交換液体と温水とがそれぞれ流動するよう流路が形成されたプレート式の熱交換器として構成されている。加熱用熱交換器63の温水側の流路は入水ポート16aおよび出水ポート16bを介して温水床暖房装置100の暖房配管101に接続される加熱配管69に接続されており、温水床暖房装置100から入水ポート16aを介して導入された温水は、凝縮用熱交換器62から加熱用熱交換器63に導入された熱交換液体との熱交換によって加熱させられた後、出水ポート16bへ送られる。これにより、温水床暖房装置100へ加熱した温水を送ることができる。加熱用熱交換器63の熱交換液体側の流路における入口付近には、加熱用熱交換器63に導入される直前の熱交換液体の温度TH6を検出する温度センサ86が設置され、熱交換液体側の流路における出口付近には、加熱用熱交換器63を通過した直後の熱交換液体の温度TH4を検出する温度センサ85が設置されている。また、加熱用熱交換器63の温水側の流路における入口付近には、加熱用熱交換器63に導入される直前の温水の温度TH7を検出する温度センサ87が設置され、温水側の流路における出口付近には、加熱用熱交換器63を通過した直後の温水の温度TH8を検出する温度センサ88が設置されている。
【0032】
燃料電池スタック21の出力端子には、パワーコンディショナ95の入力端子が接続され、当該パワーコンディショナ95の出力端子には、図示しないリレーを介して電力系統2から負荷4への電力ライン3に接続される。パワーコンディショナ95は、燃料電池スタック21から出力された直流電圧を所定電圧(例えば、DC250V~300V)に変換するDC/DCコンバータや、変換された直流電圧を電力系統2と連系可能な交流電圧(例えば、AC200V)に変換するインバータを有する。燃料電池スタック21の出力端子には、当該燃料電池スタック21から出力される電流Iを検出する図示しない電流センサが設けられ、燃料電池スタック21の出力端子間には、燃料電池スタック21の端子間電圧を検出する図示しない電圧センサが設けられている。
【0033】
パワーコンディショナ95から分岐した電力ラインには電源基板96が接続されている。電源基板96は、燃料電池スタック21からの直流電圧や電力系統2からの交流電圧を補機類の作動に適した直流電圧に変換して当該補機類に供給するものである。実施形態では、補機類としては、換気ファン14や開閉弁32,33、ガスポンプ35、改質水ポンプ43、エアポンプ53、循環ポンプ65、ラジエータファン67、ヒータ68などを挙げることができる。
【0034】
制御装置70は、CPU71を中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPU71の他に処理プログラムを記憶するROM72と、データを一時的に記憶するRAM73と、計時を行なうタイマ74と、図示しない不揮発性メモリと、図示しない入出力ポートと、を備える。制御装置70には、圧力センサ37や流量センサ38、温度センサ81~88などからの各種検出信号が入力ポートを介して入力されている。また、制御装置70からは、換気ファン14のファンモータや開閉弁32,33のソレノイド、ガスポンプ35のポンプモータ、改質水ポンプ43のポンプモータ、エアポンプ53のポンプモータ、循環ポンプ65のポンプモータ、ラジエータファン67のファンモータ、ヒータ68のヒータスイッチ、パワーコンディショナ95のDC/DCコンバータやインバータ、電源基板96、着火ヒータ26などへの各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。また、制御装置70は、屋内に設置されたリモートコントローラ(リモコン)90と通信線を介して接続されており、互いにデータや制御信号のやり取りを行なう。
【0035】
リモコン90は、システムの運転状態を表示する表示装置や電源スイッチを備える。さらに、本実施形態では、図示しないが、温水床暖房装置100の暖房運転を入切する暖房スイッチや、暖房強度(強,中,弱)を設定する暖房強度設定スイッチなども備える。
【0036】
こうして構成された本実施形態の燃料電池システム10の動作について説明する。制御装置70のCPU71は、システムが起動し、発電が要求されると、要求される発電出力に応じた目標電流Itagが燃料電池スタック21から出力されるよう原燃料ガス、改質水およびエア(空気)の供給量を制御して発電を行なう。原燃料ガスの供給量の制御は、目標電流Itagに基づいて所定の燃料利用率Ufとなるように目標ガス流量Qgtagを設定し、流量センサ38により検出されるガス流量Qgが設定した目標ガス流量Qgtagに一致するようガスポンプ35を制御することにより行なわれる。改質水の供給量の制御は、改質器23におけるスチームカーボン比SC(原燃料ガス中の炭化水素に含まれる炭素と水蒸気改質のために添加される水蒸気とのモル比)が予め定められた目標比SCtagに一致するように目標ガス流量Qgtagに基づいて目標改質水流量Qwtagを設定し、設定した目標改質水流量Qwtagの改質水が供給されるよう改質水ポンプ43を制御することにより行なわれる。エアの供給量の制御は、温度センサ84により検出される温度T4が予め定められた目標温度T4tagに一致するようにフィードバック制御により目標エア流量Qatagを設定し、設定した目標エア流量Qatagのエアが供給されるようエアポンプ53を制御することにより行なわれる。
【0037】
次に、システム発電中のラジエータファン67の動作について説明する。
図3は、制御装置70のCPU71により実行されるラジエータファン運転制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0038】
ラジエータファン運転制御ルーチンでは、まず、システム発電中であるか否かを判定する(ステップS100)。システム発電中でないと判定すると、ラジエータファン運転制御ルーチンを終了する。一方、システム発電中であると判定すると、凝縮用熱交換器62の熱交換液体側の流路における出口付近に設置された温度センサ83からの温度TH1を入力し(ステップS110)、入力した温度TH1が設定温度Tset以上であるか否かを判定する(ステップS120)。ここで、設定温度Tsetは、燃焼排ガス中の水蒸気を凝縮させるための熱交換液体の適正温度範囲における上限値付近の値に定められる。温度TH1が設定温度Tset以上でなく設定温度Tset未満であると判定すると、熱交換液体の冷却は不要であると判断し、ラジエータファン67の運転を停止して(ステップS130)、ラジエータファン運転制御ルーチンを終了する。一方、温度TH1が設定温度Tset以上であると判定すると、温度TH1に基づいてファンデューティDfを設定し(ステップS140)、設定したファンデューティDfでラジエータファン67のファンモータを駆動制御して(ステップS150)、ラジエータファン運転制御ルーチンを終了する。ファンデューティDfの設定は、本実施形態では、温度TH1とファンデューティDfとの関係を予め求めてマップとしてROM72に記憶しておき、温度TH1が与えられると、マップから対応するファンデューティDfを導出することにより行われる。このマップの一例を
図4に示す。図示するように、ファンデューティDfは、最小値Dminから最大値Dmaxの範囲内で温度TH1が高いほど高くなるように定められる。最小値Dminは、温度TH1が設定温度Tsetのときに定められ、最大値Dmaxは、ラジエータファン67の騒音が許容値を超えないように定められる。
【0039】
次に、システム発電中あるいはシステム停止中に、温水床暖房装置100を運転する際の動作について説明する。
図5は、制御装置70のCPU71により実行される暖房制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎に繰り返し実行される。
【0040】
暖房制御ルーチンが実行されると、制御装置70のCPU71は、まず、リモコン90からの操作信号に基づいて暖房スイッチがオンされたか否かを判定する(ステップS200)。暖房スイッチがオンされていないと判定すると、暖房制御ルーチンを終了する。一方、暖房スイッチがオンされていると判定すると、リモコン90からの操作信号に基づいて暖房強度を入力し(ステップS210)、システム発電中であるか否かを判定する(ステップS220)。システム発電中であると判定すると、発電時暖房制御処理を実行して(ステップS230)、暖房制御ルーチンを終了し、システム発電中でないと判定すると、非発電時暖房制御処理を実行して(ステップS240)、暖房制御ルーチンを終了する。ここで、以下、発電時暖房制御処理と非発電時暖房制御処理について順に説明する。
【0041】
図6は、発電時暖房制御処理の一例を示すフローチャートである。発電時暖房制御処理では、まず、温度センサ87,88から加熱用熱交換器63の温水側の入口部おける温度TH7および出口部における温度TH8を入力する(ステップS300)。続いて、入力した温度TH8から温度TH7を減じて温度差ΔTH(=TH8-TH7)を算出し(ステップS310)、温度差ΔTHが低温判定値以上であるか否かを判定する(ステップS320)。温度差ΔTHが低温判定値以上でなく低温判定値未満であると判定すると、ヒータ通電制御フラグFに値0を設定し(ステップS330)、温度差ΔTHが高温判定値以下である否かを判定する(ステップS340)。ここで、低温判定値および高温判定値は、温水床暖房装置100の運転状態を判定するための温度判定値であり、温度差ΔTHは、低温判定値よりも小さく且つ高温判定値よりも大きいときには制御範囲内(適正温度内)にあると判断され、低温判定値以上であるときには低温範囲内にあり温水加熱の促進が必要と判断され、高温判定値以下であるときには高温範囲内にあり温水加熱の抑制が必要と判断される。
【0042】
S320で温度差ΔTHが低温判定値以上でないと判定し、S340で温度差ΔTHが高温判定値以下でもないと判定すると、暖房強度に基づいて制御範囲内用の目標温度TH8tagを設定する(ステップS350)。一方、S320で温度差ΔTHが低温判定値以上でないと判定し、S340で温度差ΔTHが高温判定値以下であると判定すると、暖房強度に基づく高温範囲内用の目標温度TH8tagを設定する(ステップS360)。ここで、目標温度TH8tagは、温度TH8をフィードバック制御する際の温度目標値であり、
図7に例示する関係を用いて設定することができる。図示するように、目標温度TH8tagは、暖房強度が強くなるほど高くなり、温度差ΔTHが低温範囲内にある場合には温水加熱を促進させるために制御範囲内にある場合よりも高くなり、温度差ΔTHが高温範囲内にある場合には温水加熱を抑制させるために制御範囲内にある場合よりも低くなるように設定される。
【0043】
目標温度TH8tagを設定すると、温度センサ88からの温度TH8を目標温度TH8tagに一致させるためのフィードバック制御によりデューティ(ポンプデューティ)を設定し(ステップS370)、設定したポンプデューティで循環ポンプ65(ポンプモータ)を駆動制御して(ステップS380)、発電時暖房制御処理を終了する。なお、暖房スイッチがオフで暖房が要求されていないときには、凝縮用熱交換器62の腐食を防止してその耐久性を向上させるため、凝縮用熱交換器62の熱交換液体の出口部に対して目標温度TH3tag(例えば50℃)を設定し、温度センサ83からの温度TH3を目標温度TH3tagに一致させるためのフィードバック制御により循環ポンプ65を駆動制御する。
【0044】
ステップS320で温度差ΔTHが低温判定値以上であると判定すると、ヒータ通電制御フラグFが値0であるか否かを判定する(ステップS390)。ヒータ通電制御フラグFは、ヒータ68がオンオフ状態を示すフラグであり、値1であればヒータ68がオン状態であることを示し、値0であればヒータ68がオフ状態であることを示す。ヒータ通電制御フラグFが値0でなく値1であると判定すると、ステップS420に進む。一方、ヒータ通電制御フラグFが値0であると判定すると、温度差ΔTHが低温判定値以上である状態が所定時間継続しているか否かを判定する(ステップS400)。所定時間継続していないと判定すると、ステップS340に進む。この場合、ステップS340で温度差ΔTHが高温判定値以下でないと判定されるため、制御範囲内用の目標温度TH8tagが設定され、当該制御範囲内用の目標温度TH8tagに基づいて循環ポンプ65が駆動制御される。一方、所定時間継続していると判定すると、ヒータ通電制御フラグFに値1を設定し(ステップS410)、一定のポンプデューティで循環ポンプ65(ポンプモータ)を駆動制御する(ステップS420)。そして、暖房強度に基づいて低温範囲内用の目標温度TH8tagを設定し(ステップS430)、温度センサ88からの温度TH8を目標温度TH8tagに一致させるためのフィードバック制御によりデューティ(ヒータデューティ)を設定し(ステップS440)、設定したヒータデューティでヒータ68を駆動制御して(ステップS450)、発電時暖房制御処理を終了する。このように、温度差ΔTHが低温範囲内にある場合には、燃焼排ガスの排熱に加えてヒータ68からの熱により熱交換液体を加熱し、加熱した熱交換液体を用いて加熱用熱交換器63において温水を加熱することで、温水加熱を促進させるのである。なお、ステップS390,S400において、温度差ΔTHが低温判定値以上となっても、その状態が所定時間継続するのを待ってからヒータ68をオンするのは、温度差ΔTHが低温判定値付近で変動した際に、ヒータ68のオンオフが短時間で繰り返されるのを防止(ハンチングを防止)するためである。
【0045】
図8は、非発電時暖房制御処理の一例を示すフローチャートである。非発電時暖房制御処理では、まず、一定のポンプデューティで循環ポンプ65(ポンプモータ)を駆動制御する(ステップS500)。続いて、温度センサ87,88から温度TH7,TH8を入力し(ステップS510)、温度TH8から温度TH7を減じて温度差ΔTHを算出する(ステップS520)。そして、温度差ΔTHが低温判定値以上であるか否か(ステップS530)、高温判定値以下であるか否か(ステップS540)、をそれぞれ判定する。
【0046】
ステップS530で温度差ΔTHが低温判定値以上でないと判定し、ステップS540で温度差ΔTHが高温判定値以下でもないと判定すると、暖房強度に基づいて制御範囲内用の目標温度TH8tagを設定する(ステップS550)。ステップS530で温度差ΔTHが低温判定値以上でないと判定し、ステップS540で温度差ΔTHが高温判定値以下であると判定すると、暖房強度に基づく高温範囲内用の目標温度TH8tagを設定する(ステップS560)。ステップS530で温度差ΔTHが低温判定値以上であると判定すると、暖房強度に基づいて低温範囲内用の目標温度TH8tagを設定する(ステップS570)。制御範囲内用の目標温度TH8tagの設定、高温範囲内用の目標温度TH8tagの設定および低温範囲内用の目標温度TH8tagの設定については上述した。
【0047】
こうして目標温度TH8tagを設定すると、温度センサ88からの温度TH8を目標温度TH8tagに一致させるためのフィードバック制御によりデューティ(ヒータデューティ)を設定し(ステップS580)、設定したヒータデューティでヒータ68を駆動制御して(ステップS590)、非発電時暖房制御処理を終了する。このように、非発電時暖房制御処理では、燃料電池システム10が発電していないときには、燃焼排ガスは生成されないため、電力系統2からの電力を用いてヒータ68を駆動することで、ヒータ68からの熱を用いて温水を加熱するのである。これにより、燃料電池システム10が発電していないときでも、温水床暖房装置100の運転を継続して行なうことができる。
【0048】
以上説明した本実施形態の燃料電池システム10は、発電しているときには、熱交換液体を循環させて凝縮用熱交換器62で回収した燃焼排ガスの熱を用いて加熱用熱交換器63で温水床暖房装置100の温水を加熱する。これにより、専用の熱源装置を用いて温水を加熱するものに比して、エネルギ効率をより向上させることができる。また、発電していないときには、循環配管61に設置されたヒータ68を駆動すると共にヒータ68の熱を用いて加熱用熱交換器63で温水床暖房装置100の温水を加熱する。これにより、燃料電池システム10の発電状態に拘わらず、暖房運転を継続することができる。また、暖房に熱源機が不要であり、燃料電池システム10単独で設置することができるため、設置の自由度を高めることができる。例えば、燃料電池システム10を床暖房装置100に近接して設置することで、配管の長さを短くすることができ、配管での放熱を抑制して、エネルギ効率をさらに向上させることが可能となる。さらに、凝縮用熱交換器62で回収した燃焼排ガスの熱を加熱用熱交換器63で放熱するため、ラジエータファン67の運転時間を少なくして寿命を延長したり、ラジエータファン67を小型化したりすることが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の燃料電池システム10は、暖房強度が強いほど高くなるように加熱用熱交換器63における出口部の温度目標値として目標温度TH8tagを設定し、温度センサ88からの温度TH8と目標温度TH8tagとの偏差に基づくフィードバック制御により循環ポンプ65を制御する。これにより、暖房強度に応じて温水を適切な温度に加熱することができ、快適性をより向上させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態の燃料電池システム10は、加熱用熱交換器63の温水の入口部における温度(水温)TH7と出口部における温度(水温)TH8との温度差ΔTHが大きいほど高くなるように目標温度TH8tagを設定する。これにより、温水床暖房装置100の運転状態を適正状態に素早く収束させることができる。さらに、温度差ΔTHが低温判定値以上である場合には、凝縮用熱交換器62と加熱用熱交換器63とを循環する熱交換液体をヒータ68により加熱し、燃焼排ガスの熱とヒータ68の熱とを用いて加熱用熱交換器63により温水床暖房装置100からの温水を加熱する。これにより、暖房運転に必要な熱量に不足が生じるのを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の燃料電池システム10は、発電しているときには、凝縮用熱交換器62の熱交換液体の入口部における温度TH3が設定温度Tset以上のときには、設定温度Tset未満となるようにラジエータファン67を駆動制御する。これにより、必要量の凝縮水を生成すると共に、温水床暖房装置100からの温水が過剰に加熱されるのを抑制することができる。
【0052】
次に、第2実施形態の床暖房システムについて説明する。
図9は、第2実施形態の床暖房システムの概略構成図であり、
図10は、燃料電池システムと給湯器と床暖房装置との接続関係を示す説明図である。第2実施形態の床暖房システムは、
図9に示すように、上述した燃料電池システム10および温水床暖房装置100に加えて、温水床暖房装置100の熱源機として、温水床暖房装置100と燃料電池システム10との間に介在するように設置された給湯器200を備える。給湯器200は、熱交換器211やバーナ装置212を搭載する周知のガス給湯器として構成され、暖房配管101の一端と燃料電池システム10の入水ポート16aとを接続する第1接続配管201と、暖房配管101の他端と燃料電池システム10の出水ポート16bとを接続する第2接続配管202と、第1接続配管201と第2接続配管202とからそれぞれ分岐して両者を接続すると共に熱交換器211が設置された加熱配管203と、第1接続配管201の分岐点に設置された第1三方弁204と、第2接続配管202の分岐点に設置された第2三方弁205と、装置全体を制御する制御装置220と、を備える。この給湯器200は、バーナ装置212で燃焼ガスを燃焼させて熱交換器211を加熱することにより、熱交換器211を通過する温水を加熱することができる。制御装置220は、図示しないが、CPUを中心としたマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、ROMやRAM,入出力ポートおよび通信ポートを備える。制御装置220からは、バーナ装置212への制御信号や、第1および第2三方弁204,205への制御信号が出力ポートを介して出力されている。また、制御装置220は、通信ポートを介して燃料電池システム10の制御装置70と通信しており、互いに制御信号やデータのやり取りを行なう。
【0053】
図11は、第2実施形態における暖房制御ルーチンを示すフローチャートである。第2実施形態の暖房制御ルーチンの各処理のうち第1実施形態の暖房制御ルーチンと同一の処理については同一のステップ番号を付し、その説明は重複するから省略する。第2実施形態の暖房制御ルーチンでは、ステップS220においてシステム発電中であると判定すると、
図6と同様の発電時暖房制御処理を実行し(ステップS230)、システム発電中でないと判定すると、給湯器200に対して暖房依頼を送信する(ステップS240)。暖房依頼を受信した給湯器200の制御装置220は、暖房配管101と燃料電池システム10の加熱配管69との接続を遮断すると共に暖房配管101と給湯器200の加熱配管203とを接続するように第1および第2三方弁204,205を制御し、加熱配管69に設置された熱交換器211を加熱するようバーナ装置212を制御する。
【0054】
第2実施形態の燃料電池システム10では、発電しているときには、第1実施形態と同様に、凝縮用熱交換器62で回収した燃焼排ガスの熱を用いて加熱用熱交換器63で温水床暖房装置100の温水を加熱する。これにより、給湯器200を停止することができ、エネルギ効率をより向上させることができる。また、発電していないときには、給湯器200に暖房依頼を送信して温水床暖房装置100の温水を加熱させる。これにより、燃料電池システム10の発電状態に拘わらず、暖房運転を継続することができる。
【0055】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、燃料電池スタック21が「燃料電池」に相当し、循環配管61が「循環配管」に相当し、循環ポンプ65が「ポンプ」に相当し、凝縮用熱交換器62が「排熱回収用熱交換器」に相当し、加熱用熱交換器63が「加熱用熱交換器」に相当し、ヒータ68が「ヒータ」に相当し、制御装置70が「制御装置」に相当する。また、温度センサ88が「第1温度センサ」に相当する。また、温度センサ87が「第2温度センサ」に相当する。また、ラジエータ66が「ラジエータ」に相当し、ラジエータファン67が「送風器」に相当し、温度センサ83が「第3温度センサ」に相当する。
【0056】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段
の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0057】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、発電システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 原燃料供給源、2 電力系統、3 電力ライン、4 負荷、10 燃料電池システム、12 筐体、12a 吸気口、12b 排気口、14 換気ファン、16a 入水ポート、16b 出水ポート、20 発電モジュール、21 燃料電池スタック、22 気化器、23 改質器、24 マニホールド、25 燃焼部、26 着火ヒータ、27 燃焼触媒、29 モジュールケース、30 原燃料ガス供給装置、31 原燃料ガス供給管、32,33 開閉弁、34 オリフィス、35 ガスポンプ、36 脱硫器、37 圧力センサ、38 流量センサ、40 改質水供給装置、41 改質水供給管、42 改質水タンク、43 改質水ポンプ、44 凝縮水配管、45 燃焼排ガス排出管、50 エア供給装置、51 エア供給管、52 エアフィルタ、53 エアポンプ、60 温水加熱装置、61 循環配管、62 凝縮用熱交換器、63 加熱用熱交換器、64 リザーバタンク、65 循環ポンプ、66 ラジエータ、67 ラジエータファン、68 ヒータ、69 加熱配管、70 制御装置、71 CPU、72 ROM、73 RAM、74 タイマ、76 開閉弁、81~88 温度センサ、90 リモートコントローラ(リモコン)、95 パワーコンディショナ、96 電源基板、100 温水床暖房装置、101 暖房配管、200 給湯器、201 第1接続配管、202 第2接続配管、203 加熱配管、204 第1三方弁、205 第2三方弁、211 熱交換器、212 バーナ装置、220 制御装置。