(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】車載ドアのラッチ構造および車両
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20240528BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20240528BHJP
B60J 10/84 20160101ALI20240528BHJP
B60R 3/00 20060101ALI20240528BHJP
B60P 1/43 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60J5/00 M
B62D25/20 G
B60J10/84
B60R3/00
B60P1/43 A
(21)【出願番号】P 2021015088
(22)【出願日】2021-02-02
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 宗志朗
(72)【発明者】
【氏名】大竹 和樹
(72)【発明者】
【氏名】金杉 英明
(72)【発明者】
【氏名】日高 大
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-095706(JP,A)
【文献】特開昭58-218567(JP,A)
【文献】実開昭53-050920(JP,U)
【文献】特開2019-116112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00 - 5/14
B62D 17/00 - 25/08
B62D 25/14 - 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周壁に形成されたドア開口を覆う閉状態と、前記ドア開口を開放する開状態と、に変化可能なドアと、
車内空間の床面を構成するフロアパネルと、
前記ドアに取り付けられたドア側係合部と、
前記フロアパネルに取り付けられ、前記ドアが前記閉状態において前記ドア側係合部と係合可能なフロア側係合部と、
を備え
、
前記フロアパネルは、複数のパネル片を含み、
複数の前記パネル片のうち、前記フロア側係合部が取り付けられた前記パネル片は、他の前記パネル片を前記車両に取り付けたまま、単独で前記車両から取り外し可能である、
ことを特徴とする車載ドアのラッチ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車載ドアのラッチ構造であって、
前記フロア側係合部は、前記フロアパネルに対して位置固定の固定部材を含み、
前記ドア側係合部は、前記固定部材と係合する係合位置と、前記固定部材との係合が解除された解除位置との間で移動可能な可動部材を含み、
前記固定部材および前記可動部材の一方は、係合用凹部または係合用孔を含み、他方は、前記係合用凹部または前記係合用孔に挿し込まれる係合用凸部を含む、
ことを特徴とする車載ドアのラッチ構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車載ドアのラッチ構造であって、
前記フロアパネルの上面には、窪み、または、上下に貫通する孔である収容凹部が形成されており、
前記フロア側係合部の少なくとも一部は、前記収容凹部内に埋もれている、
ことを特徴とする車載ドアのラッチ構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車載ドアのラッチ構造であって、
前記フロアパネルのうち、前記可動部材の移動軌跡と重複する位置には、前記収容凹部に繋がるとともに前記可動部材の通過を許容する通過溝が形成されている、ことを特徴とする車載ドアのラッチ構造。
【請求項5】
車両の周壁に形成されたドア開口を覆う閉状態と、前記ドア開口を開放する開状態と、に変化可能なドアと、
車内空間の床面を構成するフロアパネルと、
前記ドアに取り付けられたドア側係合部と、
前記フロアパネルに取り付けられ、前記ドアが前記閉状態において前記ドア側係合部と係合可能なフロア側係合部と、
を備え、
前記フロア側係合部は、前記フロアパネルに対して位置固定の固定部材を含み、
前記ドア側係合部は、前記固定部材と係合する係合位置と、前記固定部材との係合が解除された解除位置との間で移動可能な可動部材を含み、
前記固定部材および前記可動部材の一方は、係合用凹部または係合用孔を含み、他方は、前記係合用凹部または前記係合用孔に挿し込まれる係合用凸部を含み、
前記固定部材は、前記係合用凹部または前記係合用孔を含み、
前記可動部材は、前記係合用凸部を含み、
前記固定部材が設置される設置面には、上下に貫通し、異物を車外に落下させる放出孔が設けられている、
ことを特徴とする車載ドアのラッチ構造。
【請求項6】
車両の周壁に形成されたドア開口を覆う閉状態と、前記ドア開口を開放する開状態と、に変化可能なドアと、
車内空間の床面を構成するフロアパネルと、
前記ドアに取り付けられたドア側係合部と、
前記フロアパネルに取り付けられ、前記ドアが前記閉状態において前記ドア側係合部と係合可能なフロア側係合部と、
を備え、
前記フロアパネルは、その周縁にシール面を有し、
前記ドアは、前記閉状態において、前記シール面に密着して、前記ドアと前記フロアパネルとの間の間隙をシールするシール部材を有する、
ことを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項
6に記載の車両であって、さらに、
前記ドア開口の下端から路面に向かって延びる展開状態と、前記フロアパネルの下側の床下空間に収容された収容状態と、に変化可能なスロープ板を備え、
前記ドアは、前記閉状態において、前記収容状態から前記展開状態に、または、前記展開状態から前記収容状態に、変化する際の前記スロープ板の移動経路を確保する位置およびサイズに設けられており、
前記スロープ板は、前記ドアが前記閉状態のまま、前記収容状態から前記展開状態に、または、前記展開状態から前記収容状態に、変化可能である、
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両の周壁に形成されたドア開口を開閉自在に覆うドアを、規定の閉位置でラッチする車載ドアのラッチ構造、および、当該ラッチ構造を搭載した車両を開示する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両の周壁には、当該車両の内外を連通するドア開口と、当該ドア開口を開閉自在に覆うドアと、が設けられている。さらに、ドアを閉位置でラッチするために、車両には、ラッチ構造も搭載されている。
【0003】
特許文献1には、ドアをラッチするためのラッチ構造が開示されている。特許文献1のラッチ構造は、車体ドア枠の下側枠部に取り付けられたループ状部材と、ドアの下端近傍に設けられたラッチと、を有している。ラッチは、回転可能で、ループ状部材に係合可能なフック状部材である。
【0004】
ところで、近年、車両の軽量化などを目的として、車両の床面となるフロアパネルを中空板材で構成することが提案されている。例えば特許文献2には、トラック用床として、アルミニウムを押出成形して成る中空板材を用いることが開示されている。このように中空板材をフロアパネルとして利用することで、軽量化が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-26213号公報
【文献】特開平10-316053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フロアパネルは、乗員の重量等に起因して撓むことがあった。フロアパネルの撓みは、異音の発生や車室のシール性能の低下、さらには、フロアパネルそのものの劣化を招くおそれがあった。こうしたフロアパネルの撓みは、当該フロアパネルの肉厚を増加することで軽減できる。しかし、肉厚の増加は、フロアパネルの重量増加という別の問題を招く。なお、特許文献1等の従来のラッチは、フロアパネルには設けられておらず、こうしたフロアパネルの撓み抑制には寄与していなかった。
【0007】
そこで、本明細書では、フロアパネルの撓みを軽減できるラッチ構造、および、当該ラッチ構造を搭載した車両を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する車載ドアのラッチ構造は、車両の周壁に形成されたドア開口を覆う閉状態と、前記ドア開口を開放する開状態と、に変化可能なドアと、車内空間の床面を構成するフロアパネルと、前記ドアに取り付けられたドア側係合部と、前記フロアパネルに取り付けられ、前記ドアが前記閉状態において前記ドア側係合部と係合可能なフロア側係合部と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
かかる構成とすることで、ドアがフロアパネルにラッチされる。そして、これにより、フロアパネルに作用する荷重の一部が、ドアに伝達され、分散され、さらに、フロアパネルの動きがドアに拘束されるため、フロアパネルの撓みが軽減される。
【0010】
この場合、前記フロア側係合部は、前記フロアパネルに対して位置固定の固定部材を含み、前記ドア側係合部は、前記固定部材と係合する係合位置と、前記固定部材との係合が解除された解除位置との間で移動可能な可動部材を含み、前記固定部材および前記可動部材の一方は、係合用凹部または係合用孔を含み、他方は、前記係合用凹部または前記係合用孔に挿し込まれる係合用凸部を含んでもよい。
【0011】
フロアパネルに設けるフロア側係合部を、可動部材ではなく、固定部材とすることで、フロア側係合部が、乗員の歩行を邪魔しない。
【0012】
この場合、前記フロアパネルの上面には、窪み、または、上下に貫通する孔である収容凹部が形成されており、前記フロア側係合部の少なくとも一部は、前記収容凹部内に埋もれていてもよい。
【0013】
かかる構成とすることで、フロア側係合部のフロアパネル上面からの突出量を大幅に軽減でき、フロア側係合部が乗員の歩行を邪魔しない。
【0014】
この場合、前記フロアパネルのうち、前記可動部材の移動軌跡と重複する位置には、前記収容凹部に繋がるとともに前記可動部材の通過を許容する通過溝が形成されていてもよい。
【0015】
かかる構成とすることで、可動部材とフロアパネルとの干渉を防止できる。
【0016】
また、前記固定部材は、前記係合用凹部または前記係合用孔を含み、前記可動部材は、前記係合用凸部を含み、前記固定部材が設置される設置面には、上下に貫通し、異物を車外に落下させる放出孔が設けられていてもよい。
【0017】
かかる放出孔を設けることで、異物や水が係合用凹部または係合用孔周辺に留まることを防止でき、係合用凹部または係合用孔が、異物や氷で閉塞することを効果的に防止できる。
【0018】
また、前記フロアパネルは、複数のパネル片を含み、複数の前記パネル片のうち、前記フロア側係合部が取り付けられた前記パネル片は、他の前記パネル片を前記車両に取り付けたまま、単独で前記車両から取り外し可能であってもよい。
【0019】
かかる構成とすることで、フロア側係合部のメンテナンスの際、フロアパネル全体を取り外す必要がないため、フロア側係合部のメンテナンスを簡易化できる。
【0020】
また、前記フロアパネルは、その周縁にシール面を有し、前記ドアは、前記閉状態において、前記シール面に密着して、前記ドアと前記フロアパネルとの間の間隙をシールするシール部材を有してもよい。
【0021】
フロア側係合部およびドア側係合部で連結されたフロアパネルおよびドアに、シール面とシール部材を設けることで、ドアとフロアパネルとの間のシール性を高く維持できる。
【0022】
この場合、さらに、前記ドア開口の下端から路面に向かって延びる展開状態と、前記フロアパネルの下側の床下空間に収容された収容状態と、に変化可能なスロープ板を備え、前記ドアは、前記閉状態において、前記スロープ板が前記収容状態から前記展開状態に、または、前記展開状態から前記収容状態に、変化する際の前記スロープ板の移動経路を確保する位置およびサイズに設けられており、前記スロープ板は、前記閉状態のまま、前記収容状態から前記展開状態に、または、前記展開状態から前記収容状態に、変化可能であってもよい。
【0023】
かかる構成とすることで、スロープ板が完全に展開または収容されるまで、ドアを閉鎖しておくことが可能であり、乗降時における乗降のしやすさをより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ドアのラッチ構造を搭載した車両の斜視図である。
【
図7】ドアのラッチ構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して車載ドアのラッチ構造および当該ラッチ構造を搭載した車両10について説明する。
図1は、ラッチ構造を搭載した車両10の斜視図である。
図2は、フロア側係合部40周辺の断面図であり、
図3は、
図2の一部拡大図である。各図面において、「Fr」、「Up」、「Rh」は、それぞれ、車両10の前方、上方、右側方を意味している。
【0026】
車両10は、
図1に示すように、その周壁14、より具体的には側壁に、乗員が乗降するためのドア開口16が形成されている。ドア開口16は、ドア18により開閉自在に覆われている。ドア18は、ドア開口16を覆う閉状態と、ドア開口16を開放する開状態と、に変化可能である。本例のドア18は、車両の側壁に沿って前後方向にスライド移動することで、ドア開口16を開閉する。より具体的に説明すると、ドア18は、前後方向に並んで二つ配置されている。前側のドア18は、車両後方に移動することでドア開口16を閉鎖し、後側のドア18は、車両前方、すなわち、前側のドア18に近づく方向に移動することでドア開口16を開放する。つまり、本例のドア18は、両開きのスライド式ドアである。なお、以下では、ドア開口16を閉鎖するためのドア18の移動方向を「閉鎖方向」と呼ぶ。
【0027】
車内には、当該車内の床面を構成するフロアパネル12が配置されている。フロアパネル12は、適度な強度を有する略平板状の板材である。閉状態のドア18は、このフロアパネル12にラッチされる。このラッチを行うために、ドア18には、ドア側係合部48が、フロアパネル12にはフロア側係合部40が、それぞれ設けられている。
図1において、黒丸は、ドア側係合部48の配置位置を、破線の四角は、フロア側係合部40の配置位置を、それぞれ示している。この
図1に示すように、ドア側係合部48は、ドア18の下端近傍かつ閉鎖方向端部に設けられている。また、フロア側係合部40は、フロアパネル12のうち、閉状態においてドア側係合部48と対向する箇所に設けられている。このドア側係合部48およびフロア側係合部40の具体的構成は、後述する。
【0028】
車両10には、さらに、車椅子での乗降を補助するためのスロープ板20が設けられている。スロープ板20は、収容状態と、展開状態と、に変更可能となっている。
図1は、展開状態のスロープ板20を図示している。
図1に示す通り、展開状態において、スロープ板20は、ドア開口16の下端から路面に向かって延びる。また、
図2における二点鎖線は、収容状態のスロープ板20を示している。この
図2から明らかな通り、収容状態において、スロープ板20は、フロアパネル12の下側に設けられた床下空間24に収容される。床下空間24の車幅方向端部は、車外と連通しており、このスロープ板20の進退を許容する出入口25として機能する。
【0029】
また、床下空間24には、スロープ板20を移動させて、スロープ板を展開または収容する電動アクチュエータ(図示せず)も配置されている。スロープ板20を、収容状態から展開状態に変化させる場合、電動アクチュエータは、スロープ板20を、出入口25を通過させて、車両10外側に進出させた後、
図3に示すように、スロープ板20の上端を、フロアパネル12の周縁に形成されたスロープ連結部36に載置する。
【0030】
次に、各部材の構成についてより詳しく説明していく。ドア18は、
図3に示すように、アウタパネル30oと、当該アウタパネル30oより車幅方向内側に配されるインナパネル30iと、を有する。アウタパネル30oおよびインナパネル30iは、その上端および下端において互いに接合されており、両者30o,30iの間には、閉鎖された内部空間31が形成される。
【0031】
このドア18の下端高さは、フロアパネル12とほぼ同じである。換言すれば、ドア18は、閉状態において、出入口25およびスロープ連結部36のいずれも覆わない位置およびサイズに設定されている。ドア18の下端には、シール部材64が、固着されている。シール部材64は、閉状態において、フロアパネル12に設定されたシール面35に密着し、ドア18とフロアパネル12との間の間隙をシールする。
【0032】
シール部材64よりも車幅方向内側位置には、ドア側係合部48が設けられている。ドア側係合部48は、車両前後方向と平行な回転軸周りに揺動可能な可動フック62を有している。この可動フック62は、後述するアーチ状部材44の内側に挿し込まれる係合位置と、アーチ状部材44の内側から離脱した解除位置と、の間で揺動可能な可動部材である。
図3における実線は、係合位置における可動フック62を、二点鎖線は、解除位置における可動フック62を示している。解除位置において、可動フック62の一部または全ては、ドア18の内部空間31内に収容される。また、ドア18には、この可動フック62を揺動させる揺動機構(図示せず)も取り付けられている。揺動機構の構成は、特に限定されず、例えば、揺動機構は、可動フック62を閉位置に向かう方向に付勢する付勢部材と、当該付勢部材の付勢力に抗してユーザの操作力を開位置に向かう方向の力として伝達するワイヤと、を有してもよい。また、他の形態として、揺動機構は、電気的信号を受けて可動フック62を揺動させる電動アクチュエータを有してもよい。
【0033】
フロアパネル12は、
図3に示すように、その内部に車両前後方向に長尺な空洞が形成された中空板材である。かかるフロアパネル12は、例えば、アルミニウム等の金属素材を、押し出し成型して構成される。フロアパネル12を中空板材で構成することで、十分な強度を確保しつつ、軽量化が可能となる。
【0034】
フロアパネル12の車幅方向端部には、車幅方向外側に突出したスロープ連結部36が設けられている。このスロープ連結部36には、展開状態のスロープ板20の上端が載置される。また、フロアパネル12の車幅方向端部の側面は、シール部材64が密着するシール面35として機能する。
【0035】
フロアパネル12のうち、閉状態においてドア側係合部48と上下方向に対向する位置には、フロア側係合部40が設けられている。
図4は、フロア側係合部40周辺の斜視図であり、
図5は、フロア側係合部40単独の斜視図である。
【0036】
フロア側係合部40は、
図5に示すアーチ状部材44と固定プレート46とを有している。固定プレート46は、金属等からなる板材である。この固定プレート46は、フロアパネル12の下面に螺合締結される。固定プレート46の略中央からは、アーチ状部材44が立脚している。
【0037】
アーチ状部材44は、固定プレート46から立脚し、フロアパネル12に対して位置固定の固定部材である。より具体的には、アーチ状部材44は、下方に開口した略U字状であり、固定プレート46との間に、車幅方向に貫通する通路を形成する。この車幅方向に貫通する通路は、係合用孔として機能し、可動フック62は、この係合用孔(アーチ状部材44)に挿し込まれる係合用凸部として機能する。アーチ状部材44(すなわち固定部材)が設置される設置面である固定プレート46には、上下に貫通し、異物を車外に落下させる放出孔50が形成されている。
【0038】
フロアパネル12のうち、アーチ状部材44に対応する箇所には、当該アーチ状部材44を収容するための貫通孔である収容凹部32が形成されている。アーチ状部材44は、フロアパネル12の下側から収容凹部32に挿し込まれている。ここで、アーチ状部材44の上端は、フロアパネル12の上面とほぼ同じとなっている。その結果、アーチ状部材44は、フロアパネル12から殆ど突出することなく、その大部分がフロアパネル12の内部に埋もれている。かかる構成とすることで、当該アーチ状部材44が、乗員の歩行等を邪魔しない。
【0039】
フロアパネル12には、さらに、収容凹部32から車幅方向内側に延びる通過溝34が、形成されている。この通過溝34は、フロアパネル12のうち、ドア側係合部48(すなわち可動部材)の移動軌跡と重複する箇所に形成されている。かかる通過溝34を設けることで、ドア側係合部48が、フロアパネル12と干渉することなく、解除位置と係合位置との間を移動できる。
【0040】
以上の説明で明らかな通り、本例では、ドア側係合部48と係合する係合部(すなわちフロア側係合部40)を、フロアパネル12に取り付けている。換言すれば、本例では、ドア18をフロアパネル12にラッチしている。かかる構成とすることで、フロアパネル12に作用する荷重の一部を、係合部40,48を介して、ドア18にも伝達でき、分散することができる。また、本例によれば、フロアパネル12がドア18に連結されており、フロアパネル12およびドア18は、互いに、その動きを拘束する。その結果、フロアパネル12の撓みを軽減できる。
【0041】
また、ドア18をフロアパネル12にラッチした場合、ドア18を閉鎖した状態のまま、スロープ板20を展開することができ、乗員の乗降のしやすさをより向上できる。これについて、従来技術と比較して説明する。
【0042】
図2に示すように、車両10には、フロアパネル12より下側位置に、ロッカ22と呼ばれる骨格部材が配置されている。ロッカ22は、車両前後方向に延びる骨格部材である。従来、ドア側係合部48と係合する係合部を、フロアパネル12ではなく、ロッカ22に設けることが多かった。すなわち、従来の車両10では、ドア18を、フロアパネル12ではなく、ロッカ22にラッチすることが多かった。
【0043】
しかしながら、ドア18をロッカ22にラッチした場合、ドア18の下端は、ロッカ22近傍に位置している必要があり、この場合、スロープ板20が、出入りする出入口25、ひいては、スロープ板20の移動経路の一部が、閉状態のドア18により、遮られる。そのため、ドア18をロッカ22にラッチした場合、ドア18を開いてからでなければ、スロープ板20を移動させることができない。しかし、ドア18を開いた状態、すなわち、乗員が乗降可能な状態で、スロープ板20を移動させることは望ましくない。
【0044】
一方、本例では、上述した通り、ドア18はフロアパネル12に固定されており、ドア18は、出入口25およびスロープ連結部36のいずれも覆っていない。換言すれば、本例のドア18は、閉状態において、スロープ板20の移動経路を遮らない、換言すれば、移動経路を確保する位置およびサイズに設定されている。そのため、本例によれば、ドア18を閉鎖した状態のまま、スロープ板20を展開または収容することが可能となる。その結果、本例によれば、スロープ板20が完全に展開、または、完全に収容され、スロープ板20の動きが停止するまで、ドア18を閉鎖し続けることが可能である。
【0045】
さらに、ドア18をフロアパネル12にラッチすることで、ドア18をロッカ22にラッチする場合に比べて、フロアパネル12のドア18に対する動きを小さく抑えることができる。そして、フロアパネル12のドア18に対する動きが小さいことで、フロアパネル12に設けられたシール面35のシール部材64の対する動きを、ロッカ22にラッチした場合に比べて小さくできる。シール面35とシール部材64との相対的な動きが小さくなることで、シール面35とシール部材64との密着性が高まり、シール性能の更なる向上が図れる。
【0046】
また、上述した通り、固定プレート46のうち、アーチ状部材44の真下位置には、放出孔50が形成されている。かかる構成とすることで、アーチ状部材44の通路内に異物や水が侵入したとしても、これらは、放出孔50から車外に迅速に放出される。その結果、アーチ状部材44の通路、すなわち、可動フック62が進入する係合用孔が、異物で閉鎖される問題を効果的に防止できる。
【0047】
ところで、本例において、フロアパネル12は、複数のパネル片で構成されている。複数のパネル片のうち、フロア側係合部40が取り付けられたパネル片は、他のパネル片を車両10に取り付けたまま、単独で車両10から取り外し可能となっている。これについて、
図6を参照して説明する。
図6は、車内の斜視図である。
図6に示すように、フロアパネル12は、複数のパネル片13a,13b,13cを有している。このうち、フロア側係合部40は、ドア開口16から車室内に延びるパネル片13aに取り付けられている。このパネル片13aは、複数のボルト15を介して、車両10のボディに締結されており、他のパネル片13b,13cを車両10に取り付けたまま、単独で車両10から取り外すことができる。かかる構成とすることで、フロア側係合部40のメンテナンスや交換が必要な際、フロアパネル12全体を取り外す必要がなく、フロア側係合部40のメンテナンスを容易に実施できる。
【0048】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、ドア開口16を開閉自在に覆うドア18と、フロアパネル12と、ドア18に取り付けられたドア側係合部48と、フロアパネル12に取り付けられたフロア側係合部40と、を有するのであれば、その他の構成は変更されてもよい。例えば、これまでの説明では、フロア側係合部40のアーチ状部材44は、上方に向かって立脚しているが、
図7に示すように、アーチ状部材44は、フロアパネル12の側面に配置され、車幅方向外側に向かって立脚する構成であってもよい。
【0049】
また、これまでの説明では、フロアパネル12に位置固定の固定部材(すなわちアーチ状部材44)を、ドア18に可動の可動部材(すなわち可動フック62)を、それぞれ設けているが、これらは逆であってもよい。すなわち、ドア側係合部48を、ドア18に対して位置固定の固定部材とし、フロア側係合部40を、当該フロアパネル12に対して移動することで、固定部材に係合または係合解除できる可動部材としてもよい。さらに、上述の説明では、フロア側係合部40に係合用孔(すなわちアーチ状部材44の通路)を設け、ドア側係合部48に、係合用孔に挿し込まれる係合用凸部(すなわち可動フック62)を設けているが、これも、逆でもよい。例えば、フロア側係合部40に、係合用凸部を設け、ドア側係合部48に、当該係合用凸部が挿し込まれる係合用孔または係合用凹部を設けてもよい。
【0050】
また、これまでの説明では、ドア18として、車両10の側部ドアを例示したが、ドア18は、車両の周壁14に形成されたドア開口16を開閉自在に覆うドアであれば、側部ドア以外のドアでもよい。例えば、ドア18は、側部ドアではなく、車両10の後端面に設けられるバックドア(「テールゲート」ともいう)でもよい。また、車両10が、荷台のフロアパネル12の上にコンテナを配置したコンテナ車両の場合、当該コンテナを開閉するドアを、フロアパネル12にラッチしてもよい。さらに、上述の説明では、ドア18は、スライドドアとしているが、ドア18の形態は、適宜、変更されてもよい。したがって、ドア18は、例えば、上下方向に延びる揺動軸回りに揺動するスイングドアや、水平方向に延びる揺動軸回りに揺動する跳ね上げ式ドアでもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 車両、12 フロアパネル、13a~13c パネル片、14 側壁、15 ボルト、16 ドア開口、18 ドア、20 スロープ板、22 ロッカ、24 床下空間、25 出入口、30i インナパネル、30o アウタパネル、31 内部空間、32 収容凹部、34 通過溝、35 シール面、36 スロープ連結部、40 フロア側係合部、44 アーチ状部材(固定部材)、46 固定プレート、48 ドア側係合部、50 放出孔、62 可動フック(可動部材)、64 シール部材。