(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】シール剤注入治具,シール剤注入方法,電気機器装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/00 20060101AFI20240528BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H05K7/00 M
F16J15/00 C
(21)【出願番号】P 2021019635
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 隆一
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-107579(JP,U)
【文献】特開平10-022312(JP,A)
【文献】実開昭50-071794(JP,U)
【文献】実開平06-066069(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2006/0014439(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器を収容可能な筐体の一端側に位置している筐体一端壁部の外壁面に対し、当該筐体一端壁部の外壁面に沿った方向に延在した姿勢状態で配置される治具基体部と、
治具基体部において前記延在方向を交差する方向に貫通して設けられたシール剤注入孔と、
治具基体部の前記交差方向の一方側の一端面においてシール剤注入孔の外周側に設けられた接続ケーブルガイド部と、
前記姿勢状態において筐体一端壁部と治具基体部との両者により挟持される環状のスペーサと、
を備え、
筐体一端壁部には、当該筐体一端壁部において筐体内外方向に貫通したケーブル接続孔が、設けられており、
シール剤注入孔は、前記姿勢状態においてケーブル接続孔と同軸状に対向する位置に、設けられており、
前記姿勢状態における接続ケーブルガイド部は、ケーブル接続孔に挿通されている接続ケーブルを支持し、
スペーサは、前記姿勢状態において、
ケーブル接続孔およびシール剤注入孔と同軸状に位置し、
ケーブル接続孔における筐体外側の開口縁面と、シール剤注入孔における前記交差方向の他方側の開口縁面と、の両者により挟持される、
ことを特徴とするシール剤注入治具。
【請求項2】
スペーサの内径は、ケーブル接続孔における筐体外側の開口径よりも大きく、
スペーサの外径は、シール剤注入孔における前記交差方向の他方側の開口径よりも大きい、
ことを特徴とする請求項1記載のシール剤注入治具。
【請求項3】
治具基体部におけるシール剤注入孔の外周側には、前記交差方向の他方側に突出した治具係止部が設けられており、
筐体は、筐体一端壁部の外周縁から当該筐体一端壁部の内壁面側方向に折曲して延在している側壁部を、有しており、
前記側壁部の外壁面は、前記姿勢状態において治具係止部と対向する位置に、筐体内側方向に窪んだ形状の外周面窪み部が形成されており、
治具係止部は、
前記姿勢状態における外周面窪み部と対向する位置に、当該治具係止部の係止方向に突出した形状の係止突出部が形成されており、
前記姿勢状態において、前記係止突出部が前記外周面窪み部内に嵌入するように前記側壁部に係止する、
ことを特徴とする請求項1または2記載のシール剤注入治具。
【請求項4】
スペーサは、フッ素ゴムを用いてなることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のシール剤注入治具。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のシール剤注入治具を用いるシール剤注入方法であって、
ケーブル接続孔に挿通されている接続ケーブルを、前記姿勢状態の接続ケーブルガイド部により支持する支持工程と、
支持工程により接続ケーブルを支持している状態で、シール剤注入孔からケーブル接続孔内にシール剤を注入する注入工程と、
を有することを特徴とするシール剤注入方法。
【請求項6】
請求項5記載のシール剤注入方法を用いてなる電気機器装置であって、
前記筐体内の電気機器は、ケーブル接続孔に挿通されている接続ケーブルを介して、外部機器に接続自在であることを特徴とする電気機器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール剤注入治具,シール剤注入方法,電気機器装置に係るものであって、例えば電気機器装置に設けられた外部機器接続用のケーブル接続孔にシール剤を注入することが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータ駆動用の電源コントローラなどのように、種々の車体(例えばバッテリーフォークリフト,電気自動車等)に搭載して適用される電気機器装置においては、筐体内部(例えば複数の筐体部材を組み付けて接合してなる筐体内部)の保護空間に、半導体スイッチング素子等の電子部品や制御回路等を具備した電気機器(電子部品ユニット等)を収容した構成が知られている。
【0003】
この電気機器装置は、筐体内部に収容した電気機器と、外部機器と、の間を種々の接続ケーブル(例えば電源や制御信号等を供給する接続ケーブル)で接続されている(例えば特許文献1)。この接続ケーブルの接続においては、例えば筐体に設けられたケーブル接続孔に接続ケーブルを挿通した状態(以下、単に被挿通状態と適宜称する)で、当該ケーブル接続孔にシール剤(接着剤等)を注入して孔埋めすることにより、当該接続ケーブルを固定したりケーブル接続孔をシールする手法(以下、単に従来手法と適宜称する)が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
被挿通状態のケーブル接続孔においては、シール剤を十分に注入して所望のシール性が得られるようにすることが好ましい。例えば、単に被挿通状態のケーブル接続孔を孔埋めするだけでなく、シール剤の余剰分がケーブル接続孔から溢れ出る程度(例えば均一に分散して流動するように溢れ出る程度)で、当該シール剤を注入することが挙げられる。
【0006】
しかしながら、従来手法では、シール剤を注入している間に、接続ケーブルが所定位置から位置ズレしたり、当該シール剤の注入に不具合(例えば、シール剤がケーブル接続孔から不均一に分散して溢れ出る等の不具合)が生じること等が起こり得る。このような場合、被挿通状態のケーブル接続孔において所望のシール性が得られないことが考えられる。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたものであって、電気機器装置の筐体に設けられているケーブル接続孔に対してシール剤を所望通りに注入し易くし、当該電気機器装置のシール性に貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るシール剤注入治具,シール剤注入方法,電気機器装置は、前記の課題の解決に貢献できるものであり、シール剤注入治具の一態様は、電気機器を収容可能な筐体の一端側に位置している筐体一端壁部の外壁面に対し、当該筐体一端壁部の外壁面に沿った方向に延在した姿勢状態で配置される治具基体部と、治具基体部において前記延在方向を交差する方向に貫通して設けられたシール剤注入孔と、治具基体部の前記交差方向の一方側の一端面においてシール剤注入孔の外周側に設けられた接続ケーブルガイド部と、前記姿勢状態において筐体一端壁部と治具基体部との両者により挟持される環状のスペーサと、を備えたものである。
【0009】
そして、筐体一端壁部には、当該筐体一端壁部において筐体内外方向に貫通したケーブル接続孔が、設けられており、シール剤注入孔は、前記姿勢状態においてケーブル接続孔と同軸状に対向する位置に、設けられており、前記姿勢状態における接続ケーブルガイド部は、ケーブル接続孔に挿通されている接続ケーブルを支持し、スペーサは、前記姿勢状態において、ケーブル接続孔およびシール剤注入孔と同軸状に位置し、ケーブル接続孔における筐体外側の開口縁面と、シール剤注入孔における前記交差方向の他方側の開口縁面と、の両者により挟持される、ことを特徴とするものである。
【0010】
また、スペーサの内径は、ケーブル接続孔における筐体外側の開口径よりも大きく、スペーサの外径は、シール剤注入孔における前記交差方向の他方側の開口径よりも大きい、ことを特徴としても良い。
【0011】
また、治具基体部におけるシール剤注入孔の外周側には、前記交差方向の他方側に突出した治具係止部が設けられており、筐体は、筐体一端壁部の外周縁から当該筐体一端壁部の内壁面側方向に折曲して延在している側壁部を、有しており、前記側壁部の外壁面は、前記姿勢状態において治具係止部と対向する位置に、筐体内側方向に窪んだ形状の外周面窪み部が形成されており、治具係止部は、前記姿勢状態における外周面窪み部と対向する位置に、当該治具係止部の係止方向に突出した形状の係止突出部が形成されており、前記姿勢状態において、前記係止突出部が前記外周面窪み部内に嵌入するように前記側壁部に係止する、ことを特徴としても良い。
【0012】
また、スペーサは、フッ素ゴムを用いてなることを特徴としても良い。
【0013】
シール剤注入方法の一態様は、前記シール剤注入治具を用いるシール剤注入方法であって、ケーブル接続孔に挿通されている接続ケーブルを、前記姿勢状態の接続ケーブルガイド部により支持する支持工程と、支持工程により接続ケーブルを支持している状態で、シール剤注入孔からケーブル接続孔内にシール剤を注入する注入工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
電気機器装置の一態様は、前記シール剤注入方法を用いてなる電気機器装置であって、前記筐体内の電気機器は、ケーブル接続孔に挿通されている接続ケーブルを介して、外部機器に接続自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上示したように本発明によれば、電気機器装置の筐体に設けられているケーブル接続孔に対し、シール剤を所望通りに注入し易くし、当該電気機器装置のシール性に貢献することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施例によるシール剤注入治具3の適用例を説明するための電気機器装置10の概略斜視図(カバー12側から臨んだ注入姿勢状態の斜視図)。
【
図2】実施例によるシール剤注入治具3の適用例を説明するための電気機器装置10の概略斜視図(ベース11側から臨んだ注入姿勢状態の斜視図)。
【
図3】実施例によるシール剤注入治具3を説明するための概略構成図(注入姿勢状態の接続ケーブルCも併せて描写している概略構成図)。
【
図4】注入姿勢状態におけるスペーサ8の周辺(シール剤注入治具3および電気機器装置10)を説明するための部分断面図(注入姿勢状態およびシール剤Sを注入した状態であって、接続ケーブルCに沿った断面図)。
【
図5】従来手法によるシール剤Sの注入方法の一例を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態によるシール剤注入治具と、当該シール剤注入治具を用いたシール剤注入方法や電気機器装置は、例えば単に被挿通状態のケーブル接続孔にシール剤を注入する従来手法とは、全く異なるものである。
【0018】
従来手法の場合、例えば
図5に示すように筐体1に設けられている被挿通状態のケーブル接続孔2に対し、注入ノズルNを用いてシール剤Sを注入することにより、当該ケーブル接続孔2を孔埋めしてシールすることが挙げられる。
【0019】
しかしながら、シール剤Sを注入している間に、接続ケーブルCが所定位置から位置ズレしたり、シール剤Sの注入に不具合(例えば
図5に描写するように、シール剤Sがケーブル接続孔2から外側に不均一に分散して溢れ出たり、隙間20が形成される等の不具合)が生じること等が起こり得る。
【0020】
これにより、ケーブル接続孔2において十分なシール性が得られない場合には、ケーブル接続孔2に対して接続ケーブルCを挿通し直したり、シール剤Sを再注入することが考えられるが、これにより電気機器装置の品質のバラツキが生じたり、製造工数が増加してしまうおそれもある。
【0021】
一方、本実施形態によるシール剤注入治具は、ケーブル接続孔が設けられている筐体一端壁部(後述の
図1では上壁部14)の外壁面に対して当該外壁面に沿った方向に延在した姿勢状態(以下、単に注入姿勢状態と適宜称する)で配置される治具基体部と、当該治具基体部においてケーブル接続孔と同軸状に対向して位置するように設けられたシール剤注入孔と、当該治具基体部においてシール剤注入孔の外周側に設けられた接続ケーブルガイド部と、注入姿勢状態において筐体一端壁部と治具基体部との両者により挟持される環状のスペーサと、を備えたものである。
【0022】
そして、スペーサは、注入姿勢状態において、ケーブル接続孔およびシール剤注入孔と同軸状に位置し、ケーブル接続孔における筐体外側の開口縁面と、シール剤注入孔における前記交差方向の他方側の開口縁面と、の両者により挟持されるものである。
【0023】
このような本実施形態によれば、被挿通状態のケーブル接続孔にシール剤を注入している間においても、接続ケーブルの位置ズレを接続ケーブルガイド部により抑制できる。
【0024】
また、注入したシール剤がケーブル接続孔から外側に溢れ出るような場合であっても、当該溢れ出たシール剤は、スペーサの内周側に留まるように流動し易い。例えば、当該溢れ出たシール剤は、スペーサの内周側の空間を埋めるように流動し易くなる。そして、例えば
図5に示すような隙間20が形成され得る場合であっても、当該隙間を覆うように(あるいは埋めるように)シール剤が流動し易く、ケーブル接続孔を十分にシール(例えば後述の
図4に示すようにシール)することが可能となる。
【0025】
したがって、本実施形態によれば、ケーブル接続孔に対してシール剤を所望通りに注入でき、電気機器装置において十分なシール性を得ることが可能となる。
【0026】
本実施形態は、前述のように接続ケーブルの位置ズレを接続ケーブルガイド部により抑制したり、ケーブル接続孔から外側に溢れ出たシール剤をスペーサの内周側に留まり易くできる構成であれば良い。すなわち、種々の分野(例えば、電気機器装置分野,シール剤分野,スペーサ分野等)の技術常識を適宜適用し、必要に応じて先行技術文献等を適宜参照して設計変形することが可能であり、その一例として以下の実施例が挙げられる。
【0027】
なお、以下の実施例では、例えば重複する内容について同一符号を適用する等により、詳細な説明を適宜省略しているものとする。
【0028】
≪実施例≫
図1~
図4は、本実施形態の一例であるシール剤注入治具3、および当該シール剤注入治具3が適用可能な電気機器装置10を説明するためのものである。
【0029】
〈電気機器装置10の主な構成〉
まず、電気機器装置10においては、特に
図1,
図2に示すように、図外の車体(例えばバッテリーフォークリフトのモータルームの車体パネルや支持フレーム等)に取り付けられる略板状のベース11と略箱状のカバー12とを互いに対向して配置して接合(例えば、図外のガスケット,シール材等を介して液密または/および気密に接合)してなる筐体1と、各種電子部品や制御回路を実装した回路基板等からなり筐体1内部の保護空間に収容される電気機器(図示省略;以下、内部機器と適宜称する)と、により大略構成されている。
【0030】
図中の電気機器装置10の場合、ベース11は、当該ベース11の外周縁の底面11a側に、電気機器装置10の車体側への取付に供するブラケット部13が複数個(
図1,
図2では4個)設けられている。これら各ブラケット部13には、電気機器装置10を車体に取り付ける方向に貫通した取付孔13aがそれぞれ設けられている。
【0031】
カバー12は、例えばベース11における底面11aの反対側(筐体1の内部側)に着座された内部機器を覆う上壁部14と、その上壁部14の外周縁から当該上壁部14の内壁面14b側方向に折曲して延在し当該上壁部14の四方を囲う側壁部15と、を備えており、所定厚さの肉厚を有した形状となっている。
【0032】
側壁部15のベース11側の四隅には、筐体1内側方向に窪んだ形状の固定用窪み部15aが設けられている。これら各固定用窪み部15aにおいては、車体取付方向に貫通した取付孔15bがそれぞれ設けられている。これら各取付孔15bに締結ボルト15cを貫装してベース11の四隅に螺合することにより、当該ベース11の四隅それぞれの角部11bに、各固定用窪み部15aを共締めすることができる。
【0033】
側壁部15の四方のうち一方側部16の外壁面16aには、例えば外部のコネクタを接続するためのコネクタ接続部16bが設けられている。また、外壁面16aには、筐体1内側方向に窪んだ形状(後述の治具係止部52が対向する位置において当該治具係止部52の係止方向に窪んだ形状)の窪み部16cが、形成されている。
【0034】
上壁部14の中央部には、筐体1内外方向に貫通した形状のケーブル接続孔2(図中では2個のケーブル接続孔2)が、設けられている。このケーブル接続孔2には、図外の外部機器と内部機器とを接続するための接続ケーブルCが挿通される。この接続ケーブルCにおいては、例えば複数個の接続配線C1を束ねて外層C2で覆った構造であって、外部機器と内部機器との間で電源や制御信号等を供給できるものが適用される。
【0035】
また、上壁部14におけるケーブル接続孔2の外周側には、当該筐体1内外方向に貫通した形状の端子接続孔4が、複数個(
図1中では2個)設けられている。この端子接続孔4は、例えば内部機器の各種端子(例えばインバータ回路の直流端子や交流端子)と電気的に接続され、当該端子接続孔4を介して当該各種端子を外部直流電源等に接続できるように構成されている。
【0036】
〈シール剤注入治具3の主な構成〉
シール剤注入治具3は、上壁部14の外壁面14aに沿った方向(以下、単に延在方向と適宜称する)に延在した姿勢(注入姿勢状態)で当該外壁面14aに配置される治具基体部5と、当該治具基体部5の肉厚方向(延在方向を交差する方向;以下、単に交差方向と適宜称する)に貫通した形状のシール剤注入孔6(図中ではケーブル接続孔2の個数に合わせて2個のシール剤注入孔6)と、治具基体部5の交差方向一方側(注入姿勢状態において上壁部14の反対側)の一端面5aにおいてシール剤注入孔6の外周側に設けられた接続ケーブルガイド部7と、注入姿勢状態において上壁部14と治具基体部5との両者により挟持される環状のスペーサ8と、により大略構成されている。
【0037】
〈治具基体部5〉
治具基体部5は、前述のように上壁部14の外壁面14aに配置して注入姿勢状態を維持できるものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0038】
図中に示す治具基体部5の場合、上壁部14の外壁面14aに沿って延在する平板状となっている。また、延在注入姿勢状態におけるシール剤注入治具3の位置ズレを抑制すること等を目的として、位置決め孔51と治具係止部52が設けられている。
【0039】
位置決め孔51は、治具基体部5におけるシール剤注入孔6の外周側で交差方向に貫通して形成されたものあって、注入姿勢状態において端子接続孔4と同軸状に対向する位置(図中では、2個の端子接続孔4それぞれに対向する位置)に、設けられている。
【0040】
この位置決め孔51に対し、注入姿勢状態において対向する端子接続孔4と共に、共通の条状体53を挿通することにより、シール剤注入治具3の位置ズレを抑制できることとなる。条状体53においては、例えば端子接続孔4に螺合自在な締結ボルト等を適用することが挙げられる、
治具係止部52は、治具基体部5におけるシール剤注入孔6の外周側で交差方向他方側(注入姿勢状態において上壁部14側)の他端面5bから突出した形状であって、注入姿勢状態において一方側部16の窪み部16cと対向する位置に、設けられている。図中の治具係止部52の場合、当該治具係止部52の突出方向先端側(注入姿勢状態における窪み部16cと対向する位置)に、注入姿勢状態において窪み部16cと対向する方向(治具係止部52の係止方向)に突出した形状の係止突出部52aが、形成されている。
【0041】
このような治具係止部52により、注入姿勢状態において当該治具係止部52が一方側部16の外壁面16aに係止し、シール剤注入治具3の位置ズレを抑制できることとなる。特に、図中の治具係止部52の場合、注入姿勢状態において当該係止突出部52aが窪み部16c内に嵌入して係止するため、当該シール剤注入治具3の位置ズレがより抑制され易い。
【0042】
なお、位置決め孔51および治具係止部52は、図示するようにシール剤注入孔6を挟んで対向する位置に設け、シール剤注入治具3の位置ズレを抑制し易くなるように構成することが好ましい。また、治具係止部52(得に係止突出部52a)は、シール剤Sの注入後にシール剤注入治具3の取り外しが妨げられないように、適宜設けることが好ましい。
【0043】
〈シール剤注入孔6〉
シール剤注入孔6は、注入姿勢状態において、被挿通状態のケーブル接続孔2と同軸状に対向して位置し、当該ケーブル接続孔2内にシール剤Sを注入できるものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0044】
図中のシール剤注入孔6は、注入姿勢状態の治具基体部5において2個のケーブル接続孔2に対向する位置それぞれに対し、治具基体部5を交差方向に貫通して形成されたものとなっている。
【0045】
また、ケーブル接続孔2における他端面5b側の開口縁面61には、当該開口縁面61から突出するように延在した段差面62が設けられている。この段差面62は、注入姿勢状態におけるスペーサ8の外周面81に対して係合可能な形状となっており、当該スペーサ8の位置ズレを抑制できるように構成されている。
【0046】
〈接続ケーブルガイド部7〉
接続ケーブルガイド部7は、注入姿勢状態においてケーブル接続孔2に挿通されている接続ケーブルCを、交差方向に対して案内自在に支持できるものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0047】
図中の接続ケーブルガイド部7の場合、治具基体部5の一端面5aに立設する柱状部71と、当該柱状部71の立設方向先端側からシール剤注入孔6側方向(注入姿勢状態の接続ケーブルCと対向する方向)に突出した形状のガイド部72(図中では接続ケーブルCの個数に合わせて2個のガイド部72)と、を備えたものとなっている。ガイド部72は、例えば図示するように略U字を成しており、当該U字内周側により、接続ケーブルCを交差方向に対して案内自在に支持できる形状となっている。
【0048】
〈スペーサ8,シール剤S〉
スペーサ8は、注入姿勢状態においてケーブル接続孔2およびシール剤注入孔6と同軸状に位置し、ケーブル接続孔2における筐体1外側の開口縁面21と、シール剤注入孔6における交差方向他方側(他端面5b側)の開口縁面61と、の両者により挟持されるものであれば良く、種々の態様を適用することが可能である。
【0049】
図中のスペーサ8の場合、環状に成形されたものであって、当該スペーサ8の内径d81が、ケーブル接続孔2における筐体外側の開口径d2よりも大きくなっている。また、スペーサの外径d82は、シール剤注入孔6における他端面5b側の開口径d2よりも大きくなっている。
【0050】
なお、スペーサ8は、シール剤Sの注入後(硬化後)において治具基体部5と共に取り外すことになる。このため、当該スペーサ8とシール剤Sと両者においては、互いに固着し難いもの(非粘着性,滑り性等を有するもの)を組み合わせて適用することが好ましい。例えば、電気機器装置10おいて一般的に適用されている接着剤をシール剤Sとする場合、フッ素ゴムを用いてなるもの(ゴムワッシャ等)を、セパレータ8として適用することが挙げられる。
【0051】
また、スペーサ8は、単に環状に一体成形されたものに限られるものではなく、例えば当該環状方向に分割して複数個のスペーサ部材に分離可能な構造にし、注入姿勢状態において適宜環状に組み付けて一体化できるようにしても良い。具体例としては、2個の半円弧状(ケーブル接続孔2の開口縁面61に沿って周方向に半周して延在したような形状)のスペーサ部材からなり、当該2個のスペーサ部材を環状に組み付け自在な構成が挙げられる。
【0052】
また、シール剤Sは、前述のようにスペーサ8との組み合わせを考慮する他に、目的とする電気機器装置10の使用環境等を考慮して適宜適用することが挙げられる。一例として、適度な粘度を有し、ケーブル接続孔2に注入された後に所望のシール性を維持できるようなシール剤Sが挙げられる。具体例としては、シール性,接着性,耐久性(耐腐食性,耐熱性,耐候性,耐圧縮永久歪性等)等を有する各種接着剤が挙げられる。
【0053】
〈シール剤Sの注入方法の一例〉
シール剤注入治具3を用いてシール剤Sの注入する場合、種々の方法を適用することが可能であり、その一例として以下に示す方法が挙げられる。
【0054】
まず、筐体1のベース11とカバー12とを接合する前に、
図1~
図4に示すように、当該ベース11の上壁部14の外壁面14aに治具基体部5,スペーサ8を適宜配置して注入姿勢状態にし、ケーブル接続孔2に接続ケーブルCを挿通して被挿通状態にする。そして、当該接続ケーブルCの接続配線C1を内部機器の所定箇所に接続してから、ベース11とカバー12とを接合する。
【0055】
次に、ケーブル接続孔2に挿通されている接続ケーブルCを、接続ケーブルガイド部7により、交差方向に対して案内自在に支持することにより、当該接続ケーブルCの位置ズレを抑制した状態にする(支持工程)。
【0056】
そして、例えば
図5に示すような注入ノズルNを用い、当該注入ノズルNの先端をシール剤注入孔6からケーブル接続孔2内に侵入させるように配置して、当該先端からシール剤Sを注入することにより、当該ケーブル接続孔2を孔埋めする(注入工程)。この後、治具基体部5,スペーサ8においては、前記注入したシール剤Sが所望通りに硬化してから、例えば接続ケーブルCに沿って外部機器側方向に移動させることにより、上壁部14の外壁面14aから取り外す。
【0057】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0058】
10…電気機器装置
1…筐体
2…ケーブル接続孔
3…シール剤注入治具
4…端子接続孔
5…治具基体部
6…シール剤注入孔
7…接続ケーブルガイド部
8…スペーサ
C…接続ケーブル
S…シール剤