(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電子装置の測定方法、測定装置および測定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/06 20060101AFI20240528BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01B11/06 G
H01L21/60 321Y
H01L21/60 311Q
(21)【出願番号】P 2021022797
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】夏目 和俊
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-005627(JP,A)
【文献】特開平11-326710(JP,A)
【文献】特開2015-184123(JP,A)
【文献】特開2017-075791(JP,A)
【文献】特許第6758736(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
H01L 21/447-21/449
21/60-21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する工程と、
前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を用いる分光干渉法により、前記電子装置のうち少なくとも一部の厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する工程と、を有し、
前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域で
あり、
前記測定する工程は、前記分光干渉法により、前記第1のチップの厚さ、前記第2のチップの厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する工程であり、
前記第1のチップの前記第2のチップとは反対側の面で反射された反射光と、前記第2のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第1のチップの厚さを測定し、
前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光と、前記第1のチップとは反対側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第2のチップの厚さを測定し、
前記第1のチップの前記第2のチップ側の面で反射された反射光と、前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記距離を測定する電子装置の測定方法。
【請求項2】
前記光を照射する工程は、前記第1のチップの前記第2のチップとは反対側の面、または前記第2のチップの前記第1のチップとは反対側の面から光を照射する工程である請求項
1に記載の電子装置の測定方法。
【請求項3】
バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する工程と、
前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を用いる分光干渉法により、前記電子装置のうち少なくとも一部の厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する工程と、を有し、
前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域であり、
前記透過領域は、第1透過領域と第2透過領域とを含み、
前記第1透過領域は、前記第1のチップに設けられ、前記第1のチップのうち前記第1透過領域以外の領域よりも前記光を透過しやすい領域であり、
前記第2透過領域は、前記第2のチップに設けられ、前記第2のチップのうち前記第2透過領域以外の領域よりも前記光を透過しやすい領域であり、
前記第1のチップと前記第2のチップとは、前記第1透過領域が前記第2透過領域に対向するようにフリップチップボンディングされ、
前記光を照射する工程において、前記光を前記第1透過領域および前記第2透過領域に照射する
電子装置の測定方法。
【請求項4】
前記第1のチップは、受光層および第1金属層を有し、
前記受光層および前記第1金属層は、前記第1透過領域以外の部分に設けられている請求項
3に記載の電子装置の測定方法。
【請求項5】
前記受光層は、インジウムガリウム砒素を含み、
前記第1透過領域は、インジウムリンを含む請求項
4に記載の電子装置の測定方法。
【請求項6】
前記第2のチップは、前記第2透過領域以外の部分に設けられた第2金属層を有する請求項
3から請求項
5のいずれか一項に記載の電子装置の測定方法。
【請求項7】
前記第2透過領域は、シリコンを含む請求項
3から請求項
6のいずれか一項に記載の電子装置の測定方法。
【請求項8】
前記電子装置は、複数の前記透過領域を有し、
前記複数の透過領域は、前記電子装置の面内方向において互いに離間し、
前記光を照射する工程において、前記複数の透過領域のそれぞれに前記光を照射し、
前記測定する工程は、前記複数の透過領域のそれぞれにおいて前記分光干渉法による測定を行う工程である請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の電子装置の測定方法。
【請求項9】
前記透過領域は、前記電子装置のうち前記バンプが設けられる部分よりも外側に位置する請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の電子装置の測定方法。
【請求項10】
バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する光源と、
前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を分光する分光器と、
前記分光器による分光に基づいて分光干渉法を行い、前記第1のチップの厚さ、前記第2のチップの厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離のうち少なくとも1つを測定する測定部と、を具備し、
前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域であ
り、
前記測定部は、前記分光干渉法により、前記第1のチップの厚さ、前記第2のチップの厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定し、
前記第1のチップの前記第2のチップとは反対側の面で反射された反射光と、前記第2のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第1のチップの厚さを測定し、
前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光と、前記第1のチップとは反対側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第2のチップの厚さを測定し、
前記第1のチップの前記第2のチップ側の面で反射された反射光と、前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記距離を測定する電子装置の測定装置。
【請求項11】
コンピュータに、
バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する処理と、
前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を用いる分光干渉法により、前記電子装置のうち少なくとも一部の厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する処理と、を実行させ、
前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域であ
り、
前記測定する処理は、前記分光干渉法により、前記第1のチップの厚さ、前記第2のチップの厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する処理であり、
前記第1のチップの前記第2のチップとは反対側の面で反射された反射光と、前記第2のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第1のチップの厚さを測定し、
前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光と、前記第1のチップとは反対側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第2のチップの厚さを測定し、
前記第1のチップの前記第2のチップ側の面で反射された反射光と、前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記距離を測定する電子装置の測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電子装置の測定方法、測定装置および測定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バンプを用いて、チップを基板にフリップチップボンディングすることで、電子装置を形成する。静電容量を測定することで、バンプ高さなどの実装状態を評価する技術がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フリップチップボンディングの実施後に、光学的な方法によって、チップと基板との間の距離(ギャップ)および厚さなどを測定することは困難であった。そこで、厚さおよび距離を測定することが可能な電子装置の測定方法、測定装置および測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る電子装置の測定方法は、バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する工程と、前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を用いる分光干渉法により、前記電子装置のうち少なくとも一部の厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する工程と、を有し、前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域である。
【0006】
本開示に係る電子装置の測定装置は、バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する光源と、前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を分光する分光器と、前記分光器による分光に基づいて分光干渉法を行い、前記第1のチップの厚さ、前記第2のチップの厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離のうち少なくとも1つを測定する測定部と、を具備し、前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域である。
【0007】
本開示に係る電子装置の測定プログラムは、コンピュータに、バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する処理と、前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を用いる分光干渉法により、前記電子装置のうち少なくとも一部の厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する処理と、を実行させ、前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば厚さおよび距離を測定することが可能な電子装置の測定方法、測定装置および測定プログラムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】
図1Aは、実施形態に係る測定装置を例示する模式図である。
【
図1B】
図1Bは、制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、測定方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0011】
本開示の一形態は、(1)バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する工程と、前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を用いる分光干渉法により、前記電子装置のうち少なくとも一部の厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する工程と、を有し、前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域である電子装置の測定方法である。厚さおよび距離を測定することができる。
(2)前記測定する工程は、前記分光干渉法により、前記第1のチップの厚さ、前記第2のチップの厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する工程であり、前記第1のチップの前記第2のチップとは反対側の面で反射された反射光と、前記第2のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第1のチップの厚さを測定し、前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光と、前記第1のチップとは反対側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記第2のチップの厚さを測定し、前記第1のチップの前記第2のチップ側の面で反射された反射光と、前記第2のチップの前記第1のチップ側の面で反射された反射光とを用いる分光干渉法により、前記距離を測定してもよい。第1のチップの厚さ、第2のチップの厚さ、および距離を一回の工程で測定する。簡潔かつ精度の高い測定が可能である。
(3)前記光を照射する工程は、前記第1のチップの前記第2のチップとは反対側の面、または前記第2のチップの前記第1のチップとは反対側の面から光を照射する工程でもよい。光が入射面から反対側の面に達するまでに、電子装置の面で反射される。反射光を用いた分光干渉法により、厚さおよび距離を測定することができる。
(4)前記透過領域は第1透過領域と第2透過領域とを含み、前記第1透過領域は、前記第1のチップに設けられ、前記第1のチップのうち前記第1透過領域以外の領域よりも前記光を透過しやすい領域であり、前記第2透過領域は、前記第2のチップに設けられ、前記第2のチップのうち前記第2透過領域以外の領域よりも前記光を透過しやすい領域であり、前記第1のチップと前記第2のチップとは、前記第1透過領域が前記第2透過領域に対向するようにフリップチップボンディングされ、前記光を照射する工程において、前記光を前記第1透過領域および前記第2透過領域に照射してもよい。光は、第1透過領域および第2透過領域を透過し、かつ電子装置の面で反射される。反射光を用いた分光干渉法により、厚さおよび距離を測定することができる。
(5)前記第1のチップは、受光層および第1金属層を有し、前記受光層および前記第1金属層は、前記第1透過領域以外の部分に設けられてもよい。第1透過領域は第1金属層を有さないため、高い透過率を示す。
(6)前記受光層は、インジウムガリウム砒素を含み、前記第1透過領域は、インジウムリンを含んでもよい。第1透過領域の光の吸収率は、受光層に比べて低い。
(7)前記第2のチップは、前記第2透過領域以外の部分に設けられた第2金属層を有してもよい。第2透過領域は第2金属層を有さないため、高い透過率を示す。
(8)前記第2透過領域は、シリコンを含んでもよい。光が、シリコンを透過する際に反射光が生じる。反射光を用いた分光干渉法により、厚さおよび距離を測定することができる。
(9)前記電子装置は、複数の前記透過領域を有し、前記複数の透過領域は、前記電子装置の面内方向において互いに離間し、前記光を照射する工程において、前記複数の透過領域のそれぞれに前記光を照射し、前記測定する工程は、前記複数の透過領域のそれぞれにおいて前記分光干渉法による測定を行う工程でもよい。厚さのばらつきおよび距離のばらつきを検出することができる。
(10)前記透過領域は、前記電子装置のうち前記バンプが設けられる部分よりも外側に位置してもよい。厚さのばらつきおよび距離のばらつきを検出することができる。
(11)バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する光源と、前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を分光する分光器と、前記分光器による分光に基づいて分光干渉法を行い、前記第1のチップの厚さ、前記第2のチップの厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離のうち少なくとも1つを測定する測定部と、を具備し、前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域である電子装置の測定装置である。厚さおよび距離を測定することができる。
(12)コンピュータに、バンプを用いて第1のチップと第2のチップとをフリップチップボンディングして形成される電子装置のうち透過領域に光を照射する処理と、前記光が前記電子装置で反射されて生じる反射光を用いる分光干渉法により、前記電子装置のうち少なくとも一部の厚さ、および前記第1のチップと前記第2のチップとの間の距離を測定する処理と、を実行させ、前記透過領域は、前記電子装置のうち前記透過領域以外の領域に比べて、厚さ方向に光を透過しやすい領域である電子装置の測定プログラムである。厚さおよび距離を測定することができる。
【0012】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る電子装置の測定方法、測定装置および測定プログラムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
(測定装置)
図1Aは、実施形態に係る測定装置100を例示する模式図である。
図1Aに示すように、測定装置100は、制御部10、光源20、ステージ21、分光器22、受光部24、ビームスプリッタ26、およびカメラ28を備える。測定装置100は、Z軸方向における電子装置30内の少なくとも一部の厚さ、および距離を測定する。Z軸方向は、光の伝搬方向である。X軸方向およびY軸方向は、電子装置30の辺の延伸方向である。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、互いに直交する。
【0014】
ステージ21の主面は、XY平面内に位置する。ステージ21の主面の法線方向は、Z軸方向である。ステージ21の主面に電子装置30が配置されている。ステージ21は、モータなどを備えた可動式のステージである。ステージ21上の電子装置30のXY平面内の位置およびZ軸方向の高さを変えることができる。
【0015】
光源20は、光を出射する。光源20から出射される光は、波長の異なる複数の光を含む。波長は、例えば800nmから1100nmなど赤外帯域である。光源20は、例えばスーパールミネッセンスダイオード(SLD:Superluminescent diode)光源、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)光源、およびハロゲン光源などである。
【0016】
ビームスプリッタ26は、ハーフミラーを備え、入射される光の強度の一部を透過させ、別の一部を光が入射される入射方向に対して垂直な方向に反射させる。分光器22は、例えばプリズムまたは回折格子などを備え、入射される光を波長ごとに分光する。受光部24は、例えばフォトダイオードなどの受光素子を備え、光を受光することで、光の強度に応じた電気信号を出力する。カメラ28は、例えば赤外光に感度を有し、例えば電子装置30のマークなどを撮影する。
【0017】
光源20とビームスプリッタ26との間にレンズを配置してもよい。ビームスプリッタ26と電子装置30との間にレンズを配置してもよい。ビームスプリッタ26と分光器22との間にレンズを配置してもよい。光源20とビームスプリッタ26との間、ビームスプリッタ26と電子装置30との間、ビームスプリッタ26と分光器22との間、それぞれにおいて光ファイバを通じて光を伝搬させてもよい。
【0018】
制御部10は、例えばコンピュータを備え、光源20、ステージ21、受光部24およびカメラ28と電気的に接続されている。制御部10は、位置制御部12、光制御部13、および測定部14として機能する。位置制御部12は、ステージ21の電子装置30の位置を変え、電子装置30と光学系(光源20、分光器22、受光部24、ビームスプリッタ26)との位置合わせを行う。光制御部13は、光源20のオン・オフの切り替え、および光源20から出射される光の波長の制御などを行う。測定部14は、受光部24が受光する光の波長ごとの強度に応じて、厚さおよび距離の測定を行う。
【0019】
図1Bは、制御部10のハードウェア構成を示すブロック図である。
図1Bに示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit、中央演算処理装置)101、RAM(Random Access Memory)102、記憶装置104、インターフェース106を備える。CPU101、RAM102、記憶装置104およびインターフェース106は互いにバスなどで接続されている。RAM102は、プログラムおよびデータなどを一時的に記憶する揮発性メモリである。記憶装置104は、例えばROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなどのソリッド・ステート・ドライブ(SSD:Solid State Drive)、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disc Drive)などである。記憶装置104は、後述の測定プログラムなどを記憶する。
【0020】
CPU101がRAM102に記憶されるプログラムを実行することにより、制御部10に
図1Aの位置制御部12、光制御部13および測定部14などが実現される。制御部10の各部は、回路などのハードウェアでもよい。
【0021】
図1Aに示す破線は光を表す。光源20から出射される光は、ビームスプリッタ26に入射する。光の一部はビームスプリッタ26において反射され、Z軸方向に伝搬し、電子装置30に入射する。後述のように、光が電子装置30内の複数の面で反射されることで、複数の反射光が生じる。電子装置30において反射された光は、Z軸方向に伝搬し、ビームスプリッタ26に入射する。反射光の一部は、ビームスプリッタ26を透過し、分光器22に入射する。分光器22に入射した光は、分光器22において分光された後、受光部24に入射する。受光部24は、光の強度を測定する。制御部10は、強度を取得し、分光干渉法を用いて厚さおよび距離を測定する。
【0022】
(電子装置)
図2Aは、電子装置30を例示する平面図である。
図2Bは、
図2Aの線A-Aに沿った断面図である。
図3は、透過領域付近の拡大図である。
図3は、断面図であるが、基板41、n型半導体層60および基板51のハッチングは省略している。
【0023】
図2Aから
図3に示すように、電子装置30は、センサチップ40(第1のチップ)とIC(集積回路、Integrated Circuit)チップ50(第2のチップ)とを備える。センサチップ40は、例えばFPA(Focal Plane Array)センサなどである。ICチップ50は、回路基板であり、例えば読み出し回路(ROIC:Readout Integrated Circuit)を有する。センサチップ40は、赤外光を受光することで電気信号を出力する。ICチップ50は、センサチップ40から電気信号を受信する。電子装置30は、赤外光などの光を感知する受光装置である。
【0024】
図2Aに示すように、XY平面内におけるセンサチップ40の形状およびICチップ50の形状は、四角形である。センサチップ40のY軸方向の長さY1は、例えば5.5mmである。X軸方向の長さX1は、例えば10.0mmである。ICチップ50のY軸方向の長さY2は、例えば7.5mmである。X軸方向の長さX2は、例えば12.0mmである。
【0025】
図2Bに示すように、センサチップ40と、ICチップ50とは、Z軸方向において対向し、複数のバンプ34を用いてフリップチップボンディングされる。Z軸方向においてセンサチップ40とICチップ50とは離間しており、これらの間にはアンダーフィル36が充填される。
【0026】
(センサチップ)
センサチップ40は、基板41と半導体層42とを有する。半導体層42は、基板41のICチップ50に対向する面に設けられている。センサチップ40の表面のうち、ICチップ50側の面を面48とする。面48とは反対側の面を面47とする。面47には、光の反射防止膜43がコーティングされている。反射防止膜43は例えば窒化シリコン(SiN)または二酸化珪素(SiO2)などの絶縁体で形成されている。
【0027】
図3に示すように、半導体層42は、n型半導体層60、受光層62、p型半導体層64、およびコンタクト層66を含む。n型半導体層60は、基板41のICチップ50側の面全体を覆う。面48はn型半導体層60で形成されている。n型半導体層60のうち、XY平面内における外周部には、受光層62、p型半導体層64、およびコンタクト層66が設けられておらず、複数の電極45、およびマーク46が設けられている。外周部には透過領域32も設けられている。透過領域32については後述する。
【0028】
n型半導体層60のICチップ50側の面のうち外周部を除く部分に、受光層62、半導体層63、およびp型半導体層64が順に積層される。半導体層63およびp型半導体層64は、複数のメサ67を形成する。複数のメサ67は、XY平面内にアレイ状に並んでいる。1つのメサ67が例えば1つの画素に対応する。メサ67は、ICチップ50側に突出する。コンタクト層66は、p型半導体層64の表面であって、メサ67のICチップ50側の先端に設けられる。コンタクト層66に電極44が設けられる。複数のメサ67は、互いに離間している。電極44および45は、例えば金(Au)および白金(Pt)などの金属で形成される。電極44は、信号用の電極である。電極45は、グランド電極である。マーク46は、金(Au)などの金属で形成されている。マーク46は、実装時にアライメントマークとして用いられる。
【0029】
基板41は、例えばインジウムリン(InP)などで形成された半導体基板である。n型半導体層60は、例えばn型のInPなどで形成されている。p型半導体層64は、例えばp型のInPなどで形成されている。受光層62は、例えばインジウムガリウム砒素(InGaAs)などで形成されている。半導体層63は、例えばn型のInPなどで形成されている。コンタクト層66は、例えばp型のInGaAsなどで形成されている。受光層62は、例えば赤外光を吸収し、特に波長1100nmから1700nmの範囲の光に対して高い吸収率を有する。受光層62は、光を吸収し、電子および正孔を発生させる。基板41、n型半導体層60およびp型半導体層64のバンドギャップは、赤外光のエネルギーよりも大きい。基板41、n型半導体層60およびp型半導体層64の光の吸収率は、受光層62に比べて小さい。
【0030】
(ICチップ)
ICチップ50は、基板51、電極52および53を有する。基板51は、例えばシリコン(Si)で形成されている。基板51の表面のうち、センサチップ40側の面を面56とする。面56とは反対側の面を面55とする。複数の電極52、および複数の電極53、マーク54は、基板51の面56に設けられている。電極52および53は、例えばアルミニウム(Al)および白金(Pt)などの金属で形成される。電極52は、信号用の電極である。電極53は、グランド電極である。マーク54は、Auなどの金属で形成されている。マーク54は、実装時にアライメントマークとして用いられる。基板51は、例えば面55、面56、および基板51の内部に配線パターンを有してもよい。
【0031】
センサチップ40の電極44とICチップ50の電極52とは、対向し、バンプ34により電気的に接続される。センサチップ40の電極45とICチップ50の電極53とは、対向し、バンプ34により電気的に接続される。バンプ34は、例えば半田などの金属で形成されている。
【0032】
センサチップ40の受光層62は、例えば赤外光などの光を受光することで、キャリア(電子および正孔)を発生させる。センサチップ40が生成する電気信号(電流)は、電極45および44、ならびにバンプ34を通じて、ICチップ50に入力される。ICチップ50は、電気信号を読み出し、例えば画像情報などを生成する。
【0033】
(製造方法)
電子装置30の製造方法について説明する。電子回路および配線パターンが形成されたシリコンウェハ(基板51)に、真空蒸着法などで電極52および53、ならびにマーク54を設ける。シリコンウェハに研磨およびダイシングなどを行うことで、ICチップ50を形成する。
【0034】
InPのウェハ(基板41)の表面に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)などで、半導体層42をエピタキシャル成長する。例えばドライエッチングなどによりメサ67を形成する。真空蒸着などにより電極44および45、ならびにマーク46を設ける。化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)などにより、ウェハの裏面に反射防止膜43を堆積する。ウェハにダイシングなどを行うことでセンサチップ40を形成する。
【0035】
電極44、45、52および53それぞれに半田を配置する。マーク46とマーク54とを対向させることで、センサチップ40とICチップ50とを位置合わせする。電極44と電極52とは対向し、電極45と電極53とは対向する。リフロー処理を行い、センサチップ40とICチップ50とをフリップチップボンディングする。溶融した半田が互いに接続し、バンプ34を形成する。フリップチップボンディングの後、センサチップ40とICチップ50との間に、例えばエポキシなどの樹脂を充填し、アンダーフィル36を形成する。
【0036】
図1Aに示した測定装置100は、完成後の電子装置30における厚さおよび距離の測定を行う。具体的には、
図3に示す、Z軸方向におけるセンサチップ40の面47と面48との間の厚さT1、ICチップ50の面55と面56との間の厚さT2、センサチップ40とICチップ50との間の距離(ギャップ)gを測定する。測定装置100は、電子装置30の3つの透過領域32に光を照射する。3つの透過領域32をそれぞれ透過領域32a、32bおよび32cとする。
【0037】
図2Aに示すように、3つの透過領域32a、32bおよび32cは、電子装置30のうちバンプ34が設けられる部分よりも外側に位置する。XY平面内におけるセンサチップ40の4つの頂点のうち1つの近傍に透過領域32aが位置し、もう1つの頂点の近傍に透過領域32bが位置し、さらに1つの頂点の近傍に透過領域32cが位置する。透過領域32aと透過領域32bとは、X軸方向に並ぶ。透過領域32aと透過領域32cとは、Y軸方向に並ぶ。透過領域32a、32bおよび32cは、それぞれ円形である。1つの透過領域32の直径D1は、例えば80μmなどである。
【0038】
図2Bおよび
図3に示すように、1つの透過領域32は、透過領域37および38を含む。透過領域37(第1透過領域)は、センサチップ40の透過領域である。透過領域38(第2透過領域)は、ICチップ50の透過領域である。透過領域37と透過領域38とはZ軸方向において対向し、透過領域32を形成する。透過領域32は、Z軸方向において電子装置30の面47から面55までを含む。
【0039】
透過領域37は、センサチップ40のうち透過領域37以外の領域に比べ、光を透過させやすい。透過領域37は、基板41およびn型半導体層60を有する。透過領域37に、反射防止膜43は設けられておらず、面47が露出する。反射防止膜43は、例えばエッチングなどで除去することができる。
図3に示すように、透過領域37に受光層62、p型半導体層64、コンタクト層66、電極44および45、マーク46は設けられていない。X軸方向においてマーク46と透過領域37とは、離間している。
図3に示すマーク46と透過領域37との間の距離D2は、例えば数μmから数十μmである。
【0040】
センサチップ40のうち透過領域37以外の部分には受光層62が設けられている。赤外光の例えば90%以上は、受光層62に吸収されてしまい、受光層62より下側にはほとんど透過しない。透過領域37には受光層62が設けられていないため、赤外光は吸収されにくく、透過しやすい。センサチップ40のうち透過領域37以外の部分には、金属(電極44および45、バンプ34)が設けられている。金属の光に対する反射率は、基板41よりも高く、例えば赤外光に対して90%以上である。透過領域37には電極44および45、マーク46ならびにバンプ34が設けられていない。このため透過領域37は、センサチップ40のうち透過領域37以外の領域に比べて光を透過しやすい。透過領域37は、960nm以上の波長を有する光に対して、特に高い透過率を有する。例えばZ軸方向から照射される、波長が960nm以上の光の50%以上は、透過領域37を透過する。
【0041】
ICチップ50のうち透過領域38以外の領域には、電極52および53、バンプ34、マーク54、不図示の配線パターンなどの金属層(第2金属層)が設けられている。一方、透過領域38には金属層が設けられていない。透過領域38とマーク54との間は、
図3の距離D2と同程度離れている。透過領域38は、ICチップ50のうち透過領域37以外の領域に比べて光の透過率が高い。透過領域38は、960nm以上の波長を有する光に対して、特に高い透過率を有する。例えばZ軸方向から照射される、波長が960nm以上の光の50%以上は、透過領域38を透過する。
【0042】
(測定方法)
図4は、測定方法を例示するフローチャートである。
図4に示すように、電子装置30の透過領域32と、測定装置100の光学系との位置合わせを行う(ステップS10)。
図1Aに示すカメラ28は、電子装置30のうちマーク46および54を撮影する。制御部10は、カメラ28から画像を取得し、マーク46および54の位置を認識する。マーク46および54の位置から例えばX軸方向に数μmシフトした位置が透過領域32である。制御部10は、マーク46および54の位置から透過領域32を認識する。位置制御部12は、ステージ21を用いて電子装置30を移動させ、透過領域32と光学系との位置合わせを行う。3つの透過領域32a、32bおよび32cのうち1つと、ビームスプリッタ26から入射される光の光軸とが、Z軸方向に並ぶ。
【0043】
光制御部13は、光源20に光を出射させる。光は、複数の波長を含む広帯域の赤外光である。含まれる波長の範囲は、例えば800nmから1100nmである。光は、ビームスプリッタ26で反射され、電子装置30に入射する(ステップS12)。光が電子装置30で反射されることで、反射光が発生する。反射光は、ビームスプリッタ26を透過し、分光器22に入射する。測定部14は、反射光を利用した分光干渉法を行い、厚さおよびギャップを測定する(ステップS14)。測定装置100は、3つの透過領域32の全てにおいて上記の測定を行う。
【0044】
図3を参照して、反射光について詳細に説明する。
図3に示すように、光L0は、Z軸方向に伝搬し、センサチップ40の面47側から電子装置30の透過領域32に入射する。
【0045】
電子装置30は、ステージ21上において例えば空気に露出している。
図3に示すように、透過領域32では、Z軸方向に、センサチップ40の基板41、n型半導体層60、アンダーフィル36、ICチップ50の基板51が並ぶ。透過領域32は、空気と基板41との界面、n型半導体層60とアンダーフィル36との界面、アンダーフィル36と基板51との界面、および基板51と空気との界面を含む。
【0046】
空気の屈折率は、1.0である。基板41およびn型半導体層60の屈折率は、約3.2である。アンダーフィル36は例えば樹脂で形成されており、屈折率は約1.5である。基板51の屈折率は、3.2から3.4程度である。上記の4つの界面において、屈折率が変化する。界面の両側の層の屈折率は、互いに異なる。光L0が界面に入射すると、一部が光L0とは反対方向に反射される。
【0047】
面47に入射する光L0の一部は、空気と基板41との界面(面47)で反射される。センサチップ40を透過する光の一部は、n型半導体層60とアンダーフィル36との界面(面48)で反射される。アンダーフィル36を透過した光の一部は、アンダーフィル36と基板51との界面(面56)で反射される。ICチップ50を透過する光の一部は、基板51と空気との界面(面55)で反射される。面47で生じる反射光を反射光L1とする。面48で生じる反射光を反射光L2とする。面56で生じる反射光を反射光L3とする。面55で生じる反射光を反射光L4とする。
【0048】
光L0は、面47に対して垂直であり、
図3中のZ軸上方向から下方向に伝搬し、面47から電子装置30に入射する。反射光L1、L2、L3およびL4は、Z軸下方向から上方向に伝搬し、
図1Aのビームスプリッタ26を透過し、分光器22に入射する。
【0049】
反射光L1と反射光L2とが干渉し、干渉光が発生する。分光器22は干渉光を分光し、受光部24は干渉光の波長ごとの強度を検出する。測定部14は、波長および強度に基づき、センサチップ40の面47と面48との間の厚さT1を測定する。反射光L2と反射光L3とが干渉し、干渉光が発生する。分光器22および受光部24により、波長ごとの強度を検出する。測定部14は、ギャップgを測定する。反射光L3と反射光L4とが干渉し、干渉光が発生する。分光器22および受光部24により、波長ごとの強度を検出する。測定部14は、ICチップ50の面56と面55との間の厚さT2を測定する。
【0050】
実施形態によれば、光L0を電子装置30の透過領域37に照射する。透過領域37は、電子装置30の透過領域37以外の部分に比べて光を透過しやすい。光L0は、例えば電子装置30の面47から入射し、反対側の面55まで達する。光L0の一部が電子装置30の複数の面(面47、48、55および56)で反射されることで、反射光が生じる。反射光を用いる分光干渉法により、センサチップ40の厚さT1、ICチップ50の厚さT2、およびセンサチップ40とICチップ50との距離(ギャップg)を、一回の工程で測定することができる。
【0051】
光の散乱および球面収差などで、マーク46および54の画像がぼやけるため、画像を用いると精度の高い測定は困難である。また、画像では厚さの測定も難しい。
【0052】
実施形態によれば、透過領域32に光L0を照射し、戻ってくる反射光を用いた分光干渉法を行う。制御部10は、反射光L1と反射光L2とを用いる分光干渉法により、センサチップ40の厚さT1を測定する。制御部10は、反射光L2と反射光L3とを用いる分光干渉法により、ギャップgを測定する。制御部10は、反射光L3と反射光L4とを用いる分光干渉法により、ICチップ50の厚さT2を測定する。厚さT1およびT2、ならびにギャップgを一度の工程で測定することができる。簡潔かつ精度が高い測定が可能である。制御部10は、厚さT1およびT2のうち一方と、ギャップgとを測定してもよい。制御部10は、反射光L1と反射光L4とを用いる分光干渉法により、電子装置30の厚さを測定することもできる。制御部10は、電子装置30のうち少なくとも一部の厚さを測定する。
【0053】
図3に示すようにセンサチップ40の面47から光L0を入射してもよいし、ICチップ50の面55から光L0を入射してもよい。電子装置30の最も外側の面から光L0を入射することで、電子装置30内の複数の面(面47、48、55および56)で反射光L1、L2、L3およびL4が発生する。分光干渉法により、厚さT1およびT2とギャップgとを一挙に測定することができる。
【0054】
光L0がZ軸方向から傾斜していると、傾斜した方向における厚さおよびギャップを測定することになり、精度が悪化する。そこで
図3に示すように、光L0は、Z軸方向に沿って伝搬し、面47および面55に対して垂直に入射することが好ましい。Z軸方向における厚さT1およびT2、ギャップgを正確に測定することができる。
【0055】
図2Bに示すように、透過領域32は、センサチップ40の透過領域37と、ICチップ50の透過領域38とを含む。透過領域37と透過領域38とは、Z軸方向において対向する。光L0は、Z軸方向に伝搬し、透過領域37と透過領域38とに入射する。透過領域37は、面47および48を含む。透過領域38は、面55および56を含む。これらの面で反射光が発生する。分光干渉法により、厚さT1およびT2とギャップgとを測定することができる。
【0056】
例えば厚さT1およびギャップgを測定し、厚さT2を測定しない場合、ICチップ50は透過領域38を有さなくてもよい。光L0は、面47から入射し、透過領域37を通り、面56に達する。面47、面48および面56のそれぞれで反射光が発生する。分光干渉法により、厚さT1およびギャップgを測定することができる。例えば厚さT2およびギャップgを測定し、厚さT1を測定しない場合、センサチップ40は、透過領域37を有さなくてもよい。光L0は、面55から入射し、面48に達する。分光干渉法により、厚さT2およびギャップgを測定する。
【0057】
センサチップ40は、例えば赤外光を検知するセンサであり、受光層62、および金属層(電極44および45、マーク46、第1金属層)を有する。受光層62は、例えばInGaAs層であり、赤外光に対して感受性を有する。光L0が受光層62に照射されると、吸収されるため、反射光L2、L3およびL4が生じにくい。金属は、例えば90%以上など高い反射率を示す。光L0がマーク46などの金属で反射されると、ICチップ50で生じる反射光L3およびL4の強度が低下してしまう。このため分光干渉法による測定が困難となる。
【0058】
センサチップ40の透過領域37は、受光層62を有さない。透過領域37は、InPの基板41およびn型半導体層60で形成されている。InPのバンドギャップは、赤外光のエネルギーよりも大きい。基板41およびn型半導体層60の吸収率は、受光層62よりも低い。つまり、透過領域37の光の吸収率は、センサチップ40のうち透過領域37以外の部分よりも低い。また、透過領域37には、金属層(電極44および45、マーク46など)が設けられていない。透過領域37の反射率は、透過領域37以外の部分よりも低い。反射防止膜43も設けられていない。すなわち、透過領域37は、透過領域37以外の部分に比べて高い透過率を有する。
【0059】
ICチップ50は、金属層(電極52および53、マーク54など)を有する。透過領域38は、Siで形成され、金属層を有さない。透過領域38の反射率は、透過領域38以外の部分よりも低い。すなわち、透過領域38は、透過領域38以外の部分に比べて高い透過率を有する。
【0060】
光L0が、センサチップ40の透過領域37を透過し、ICチップ50まで伝搬し、ICチップ50の透過領域38を透過する。光L0が、面47、48、56および55で反射される。反射光を用いた分光干渉法により、厚さT1およびT2、ギャップgの測定が可能である。
【0061】
透過領域37の光の透過率は、例えば50%以上である。面47から入射する光L0が、十分な強度を維持したままICチップ50まで到達する。ICチップ50で生じる反射光L3およびL4の強度は、分光干渉法に適した大きさになる。透過率が高すぎると、反射光L1の強度が低くなる。透過領域37の透過率は、例えば90%以下が好ましい。アンダーフィル36の透過率は、例えば50%以上である。透過領域38の透過率は、例えば50%以上である。面56から入射する光L0が、十分な強度を維持したまま面55まで到達する。反射光L4の強度は、分光干渉法に適した大きさになる。透過率が高すぎると、反射光L3の強度が低くなる。透過領域38の透過率は、例えば90%以下が好ましい。面を挟む両側の材料の屈折率差が小さすぎると、当該の面における透過率が高くなり、反射光の強度が低くなる。屈折率差は、例えば1以上が好ましい。面47を挟む空気と基板41との屈折率差は約2.2である。面56を挟むアンダーフィル36(屈折率が約1.5)と透過領域38(基板51)との屈折率差は、1.7以上1.8以下である。
【0062】
実施形態において、センサチップ40は、複数のメサ67を含み、赤外光を検知するアレイチップである。ICチップ50は、読み取り回路(ROIC)を含む回路基板である。電子装置30は、センサチップ40以外のチップを有してもよいし、ICチップ50以外のチップを有してもよい。
【0063】
電子装置30は、3つの透過領域32a、32bおよび32cを有する。3つの透過領域32a、32bおよび32cは、互いに離間する。3つの透過領域32a、32bおよび32cそれぞれにおいて、
図4の測定を行うことで、3つの透過領域32a、32bおよび32cそれぞれにおける厚さT1およびT2、ならびにギャップgを取得する。厚さT1のばらつき、厚さT2のばらつき、およびギャップgのばらつきを検出することができる。
【0064】
図2Aに示すように、3つの透過領域32a、32bおよび32cは、電子装置30のうちバンプ34が設けられる部分よりも外側に位置することが好ましく、特に電子装置30の頂点の近傍に位置することが好ましい。厚さT1のばらつき、厚さT2のばらつき、およびギャップgのばらつきを精度よく検出することができる。
【0065】
センサチップ40とICチップ50とは、XY平面内で平行であることが好ましい。しかしフリップチップボンディングの際に、センサチップ40がICチップ50に対して傾斜して実装される恐れがある。ギャップgのばらつきを測定することが重要である。透過領域32aにおけるギャップgと、透過領域32bにおけるギャップgとを比較することで、X軸方向における傾斜を検知することができる。透過領域32aにおけるギャップgと、透過領域32cにおけるギャップgとを比較することで、Y軸方向における傾斜を検出することができる。ギャップgは例えば0.03mm±0.02mmである。透過領域32の数は3つ以上でもよく、例えば4つの透過領域32が電子装置30の4つの頂点の近傍に設けられてもよい。
【0066】
ICチップ50の製造工程では、シリコンウェハを研磨し、研磨後のウェハを切断する。研磨においてウェハの厚さにばらつきが生じることで、厚さT2にもばらつきが発生することがある。実施形態によれば、厚さT2のばらつきを検出することができる。例えば厚さT2は、0.58mm±0.02mmであることが好ましい。センサチップ40の製造工程でも厚さT1にばらつきが発生する恐れがある。実施形態によれば、厚さT1のばらつきを検出することができる。センサチップ40の厚さT1は、例えば0.58mm±0.02mmであることが好ましい。
【0067】
以上、本開示の実施形態について詳述したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0068】
10 制御部
12 位置制御部
13 光制御部
14 測定部
20 光源
21 ステージ
22 分光器
24 受光部
26 ビームスプリッタ
28 カメラ
30 電子装置
32、32a、32b、32c、37、38 透過領域
34 バンプ
36 アンダーフィル
40 センサチップ
41、51 基板
42、63 半導体層
43 反射防止膜
44、45、52、53 電極
46、54 マーク
47、48、55、56 面
50 ICチップ
60 n型半導体層
62 受光層
64 p型半導体層
66 コンタクト層
67 メサ
100 測定装置
101 CPU
102 RAM
104 記憶装置
106 インターフェース