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特許7494765連系インバータおよび連系インバータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】連系インバータおよび連系インバータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240528BHJP
【FI】
H02M7/48 R
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021040343
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139804
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朝川 幸二朗
(72)【発明者】
【氏名】林 和仁
(72)【発明者】
【氏名】中村 育弘
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143055(JP,A)
【文献】特開2015-73407(JP,A)
【文献】特表2005-524378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/339724(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの直流電力を交流電力に変換して交流電力線に出力するインバータ回路と、
前記インバータ回路から前記交流電力線への出力電圧の電圧値を取得する電圧センサによってそれぞれ取得された電圧値を、前記出力電圧に関する位相の角度を示す電気角情報に変換するレゾルバデジタルコンバータと、
前記レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度が所定角度となるタイミングを用いて前記交流電力線を流れる交流に同期した交流を出力するよう前記インバータ回路を制御する制御ユニットとを備える、連系インバータ。
【請求項2】
前記インバータ回路、前記レゾルバデジタルコンバータ、および、前記制御ユニットは、モータ駆動用のシステムからの転用である、請求項1に記載の連系インバータ。
【請求項3】
前記モータ駆動用のシステムは、車両である、請求項2に記載の連系インバータ。
【請求項4】
前記交流電力線は、三相交流の電力線である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の連系インバータ。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度が0度または±180度となるタイミングを用いて前記交流電力線を流れる交流電力に同期した交流電力を出力するよう前記インバータ回路を制御する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の連系インバータ。
【請求項6】
前記交流電力線は、単相交流の電力線である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の連系インバータ。
【請求項7】
連系インバータの製造方法であって、
前記製造方法は、
直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路からの交流電力を用いて駆動力を発生するモータと、前記モータの回転に関する値を検出するレゾルバと、前記レゾルバからの値を、回転に関する位相の角度を示す電気角情報に変換するレゾルバデジタルコンバータと、前記レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度を用いて前記インバータ回路を制御する制御ユニットとを備えるシステムに搭載されていた、前記レゾルバデジタルコンバータと前記インバータ回路と前記制御ユニットとを転用する方法であり、
前記インバータ回路への直流電力の入力を直流電源に接続するための端子を設ける工程と、
前記モータに接続されていた前記インバータ回路からの出力を交流電力線に接続するための端子を設ける工程と、
前記交流電力線への出力電圧の電圧値を取得する電圧センサからの信号線を前記レゾルバデジタルコンバータに接続するための端子を設ける工程と、
前記レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度が所定角度となるタイミングを用いて前記交流電力線を流れる交流に同期した交流を出力するよう前記インバータ回路を制御するように、前記制御ユニットによる制御方法を変更する工程とを含む、連系インバータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、連系インバータおよび連系インバータの製造方法に関し、特に、直流電力を交流電力の電力線に連系させるのに適した連系インバータおよび連系インバータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直流電力から、交流電力系統の交流電圧に同期した交流電力に変換する系統連系インバータが知られている(たとえば、特許文献1参照)。このような系統連系インバータは、系統側の受電点で三相交流の電圧と同期するために、電圧センサ値を受けるためのA/Dポートを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-271176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両に搭載されたインバータは一般的に電圧センサ値を受けるためのA/Dポートを有さないため、車載のインバータを系統連系インバータに転用しようとした場合、A/Dポートを新設することが必要となる。このため、このような転用には、コストが余分に掛かるといった問題があった。
【0005】
この開示は、上述した課題を解決するためになされたものであって、その目的は、転用に掛かる余分なコストを削減することが可能な連系インバータおよび連系インバータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係る連系インバータは、直流電源からの直流電力を交流電力に変換して交流電力線に出力するインバータ回路と、インバータから交流電力線への出力電圧の電圧値を取得する電圧センサによってそれぞれ取得された電圧値を、出力電圧に関する位相の角度を示す電気角情報に変換するレゾルバデジタルコンバータと、レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度が所定角度となるタイミングを用いて交流電力線を流れる交流に同期した交流を出力するようインバータ回路を制御する制御ユニットとを備える。
【0007】
このような構成によれば、電圧センサによって取得された交流電力線の交流電力の電圧値がレゾルバデジタルコンバータに入力されると、交流電力の電気角と、レゾルバデジタルコンバータから出力される電気角とが、特定の角度において同期する。交流電力線の交流電力の周波数は既知(たとえば、50Hz,60Hz)である場合、特定の角度で同期が取れれば、インバータ回路の出力と、交流電力線の交流電力とを同期させることができる。これにより、電圧センサの電圧値を受けるA/Dポートを新設しなくてよくなる。その結果、転用に掛かる余分なコストを削減することができる。
【0008】
インバータ回路、レゾルバデジタルコンバータ、および、制御ユニットは、モータ駆動用のシステムからの転用であるようにしてもよい。モータ駆動用のシステムは、車両であるようにしてもよい。その結果、転用によりコストを削減することができる。
【0009】
交流電力線は、三相交流の電力線であるようにしてもよい。制御ユニットは、レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度が0度または±180度となるタイミングを用いて交流電力線を流れる交流電力に同期した交流電力を出力するようインバータ回路を制御するようにしてもよい。交流電力が三相交流である場合、レゾルバデジタルコンバータからは、交流電力の電気角(電圧位相)の0度または±180度となるタイミングで同期する信号が出力される。このため、これらのタイミングを用いることで正確に同期をとることができる。交流電力線は、単相交流の電力線であるようにしてもよい。
【0010】
この開示の他の局面によれば、連系インバータの製造方法は、直流電源からの直流電力を交流電力に変換するインバータ回路と、インバータ回路からの交流電力を用いて駆動力を発生するモータと、モータの回転に関する値を検出するレゾルバと、レゾルバからの値を、回転に関する位相の角度を示す電気角情報に変換するレゾルバデジタルコンバータと、レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度を用いてインバータ回路を制御する制御ユニットとを備えるシステムに搭載されていた、レゾルバデジタルコンバータとインバータ回路と制御ユニットとを転用する方法である。
【0011】
連系インバータの製造方法は、インバータ回路への直流電力の入力を直流電源に接続するための端子を設ける工程と、モータに接続されていたインバータ回路からの出力を交流電力線に接続するための端子を設ける工程と、交流電力線への出力電圧の電圧値を取得する電圧センサからの信号線をレゾルバデジタルコンバータに接続するための端子を設ける工程と、レゾルバデジタルコンバータから与えられる電気角情報で示される角度が所定角度となるタイミングを用いて交流電力線を流れる交流に同期した交流を出力するようインバータ回路を制御するように、制御ユニットによる制御方法を変更する工程とを含む。このような構成によれば、転用に掛かる余分なコストを削減することができる。
【発明の効果】
【0012】
この開示によれば、転用に掛かる余分なコストを削減することが可能な連系インバータおよび連系インバータの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この実施の形態における車載時のインバータ周辺のシステムの構成の概略を示す図である。
図2】この実施の形態のレゾルバから出力されるsin信号およびcos信号ならびにそれらから得られる回転角度を示すグラフである。
図3】第1実施形態における車載用から系統連系用に転用した後のインバータ周辺のシステムの構成の概略を示す図である。
図4】第1実施形態においてRDCに三相交流の2つの相の電圧を入力した場合に出力される信号を示すグラフである。
図5】第2実施形態における車載用から系統連系用に転用した後のインバータ周辺のシステムの構成の概略を示す図である。
図6】第2実施形態においてRDCに互いに逆位相の2つの単相交流の電圧を入力した場合に出力される信号を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、この開示の実施の形態は説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰り返されない。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、この実施の形態における車載時のインバータ周辺のシステムの構成の概略を示す図である。図1を参照して、車両1は、PCU(Power Control Unit)10と、蓄電装置20と、モータジェネレータ30と、レゾルバ31と、電流センサ32U,32V,32Wとを備える。PCU10は、ECU(Electronic Control Unit)110と、インバータ120と、昇圧コンバータ130と、レゾルバデジタルコンバータ(以下「RDC」という)140と、コンデンサ150と、電圧センサ151とを含む。ECU110は、CPU(Central Processing Unit)(不図示)およびメモリ(不図示)に加えて、アナログデジタル変換回路111と、デューティ指令値演算部112とを含む。
【0016】
蓄電装置20は、複数のセルを含む組電池を含む。各セルは、たとえば、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。蓄電装置20は、車両1の駆動力を発生させるための電力をモータジェネレータ30に供給するとともに、モータジェネレータ30により発電された電力を蓄える。
【0017】
昇圧コンバータ130は、蓄電装置20からインバータ120に印加される電圧を昇圧する一方、インバータ120から蓄電装置20に充電される電圧を降圧する。コンデンサ150は、昇圧コンバータ130で昇圧された電圧を平滑化する。電圧センサ151は、コンデンサ150の両端子間の電圧VHを検出して、検出した電圧VHを示すアナログ信号を出力する。
【0018】
インバータ120は、昇圧コンバータ130からの直流電力を、ECU110からの制御信号に応じた出力の交流電力に変換して、モータジェネレータ30に供給する一方、モータジェネレータ30によって回生された交流電力を直流電力に変換して、昇圧コンバータ130を介して蓄電装置20に供給する。
【0019】
モータジェネレータ30は、インバータ120から供給された交流電力に応じて回転することによって車両1の車輪を駆動する一方、車輪からの減速力を回生することによって回生された交流電力をインバータ120に供給する。
【0020】
レゾルバ31は、ロータの回転角度を2相の交流電圧(アナログ信号)として出力する角度センサであり、励磁コイルと、中継コイルを含むロータと、ロータの回転軸を中心として90度をなすように配置される2相の出力コイルとを含む。この実施においては、レゾルバ31のロータは、モータジェネレータ30の回転軸に接続されているため、レゾルバ31は、モータジェネレータ30の角度センサとして機能する。
【0021】
レゾルバ31において、一次側の励磁コイルに励磁信号を印加すると、モータジェネレータ30の軸に接続されたロータが回転し、励磁信号が回転するロータの中継コイルに誘導起電力を発生させ、中継コイルの誘導起電力が、出力コイルに誘導起電力を発生させることで、ロータの角度に対応したsin信号およびcos信号が、二次側の2相の出力コイルからそれぞれ出力される。
【0022】
図2は、この実施の形態のレゾルバ31から出力されるsin信号およびcos信号ならびにそれらから得られる回転角度を示すグラフである。図2を参照して、1段目のグラフがsin信号の変化を示し、2段目のグラフがcos信号の変化を示し、3段目のグラフが回転角度を示す。図2の1段目のグラフにおいては、波形の振幅を示す線がサインカーブとなっている。図2の2段目のグラフにおいては、波形の振幅を示す線がコサインカーブとなっている。
【0023】
図1に戻って、RDC140は、レゾルバ31から入力された信号を用いてレゾルバ31のロータの回転角度(以下「レゾルバ角」という。)を算出し、回転角度を示すデジタル信号を出力するIC(Integrated Circuit)である。この実施の形態においては、レゾルバ31のロータは、モータジェネレータ30の回転軸に接続されているため、RDC140は、モータジェネレータ30の回転角度を算出する。
【0024】
図2を再び参照して、3段目のグラフにおいては、RDC140によって算出されたレゾルバ角の変化が示されている。1段目のグラフで示されるサインカーブの値が0となる点が、レゾルバ角の0度、180度および360度の点として算出され、2段目のグラフで示されるコサインカーブの値が0となる点が、レゾルバ角の90度および270度の点として算出されている。
【0025】
図1に戻って、電流センサ32U,32V,32Wは、それぞれ、インバータ120とモータジェネレータ30との間を流れる三相交流のU相、V相およびW相の電流Iu,Iv,Iwを検出し、検出した電流Iu,Iv,Iwを示すアナログ信号を出力する。
【0026】
アナログデジタル変換回路111は、電圧センサ151および電流センサ32U,32V,32Wから入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0027】
デューティ指令値演算部112は、ECU110のCPUによってメモリに記憶されたプログラムが実行されることによってECU110の内部に仮想的に構成される部分である。デューティ指令値演算部112は、RDC140から入力された信号で示されるレゾルバ角と、電圧センサ151からの信号で示される電圧VHと、電流センサ32U,32V,32Wからの信号でそれぞれ示される電流Iu,Iv,Iwとを用いて、車両1の運転者によるアクセル操作などに応じた駆動力をモータジェネレータ30が発生するようにインバータ120を制御するデューティ指令値を演算し、演算したデューティ指令値をインバータ120に出力する。
【0028】
従来、直流電力から、交流電力系統の交流電圧に同期した交流電力に変換する系統連系インバータが知られている。このような系統連系インバータは、系統側の受電点で三相交流の電圧と同期するために、電圧センサ値を受けるためのA/Dポートを備えている。
【0029】
しかし、上述した車両1に搭載されたインバータ120を制御するECU110は、一般的に電圧センサ値を受けるためのA/Dポートを有さないため、車載のインバータ120を系統連系インバータに転用しようとした場合、A/Dポートを新設することが必要となる。このため、このような転用には、コストが余分に掛かるといった問題があった。
【0030】
また、RDC140を転用しない場合、電圧位相の演算のためのソフトウェアをECU110に追加したり、電圧位相の演算のためのハードウェアを別途設けたりすることが考えられる。このため、ソフトウェアの改造またはハードウェアの増設(ECU110の制御基板の改造)のための手間が掛かるといった問題があった。
【0031】
そこで、この開示においては、車両1に搭載されたインバータから転用された系統連系用のインバータのシステムは、直流電源からの直流電力を交流電力に変換して交流電力線に出力するインバータ120と、インバータ120から交流電力線への出力電圧の電圧値を取得する電圧センサによってそれぞれ取得された電圧値を、出力電圧に関する位相の角度を示す電気角情報に変換するRDC140と、RDC140から与えられる電気角情報で示される角度が所定角度となるタイミングを用いて交流電力線を流れる交流に同期した交流を出力するようインバータ回路を制御するECU110とを備えるようにする。
【0032】
これにより、電圧センサの電圧値を受けるA/Dポートを新設しなくてよくなる。また、RDC140に変わるソフトウェアまたはハードウェアを設ける手間を無くすることができる。その結果、転用に掛かる余分なコストおよび手間を削減することができる。
【0033】
図3は、第1実施形態における車載用から系統連系用に転用した後のインバータ周辺のシステムの構成の概略を示す図である。図3を参照して、系統連系用のシステムの、PCU10の内部、および、電流センサ32U,32V,32Wは、図1で示した車載用のシステムと同様であるので、重複する説明は繰返さない。
【0034】
まず、系統連系用のシステムには、車載用のシステムに加えて、昇圧コンバータ130の電池側に、端子51P,51Mが設けられ、インバータ120の出力側の三相の電線に、それぞれ端子61U,61V,61Wが設けられ、RDC140のsin信号およびcos信号の入力線に、それぞれ端子72S,72Cが設けられる。
【0035】
電力系統90には、インバータ120の電圧を電力系統90の電圧に変換するための変圧器80が接続される。変圧器80の電力系統90と反対の側には、コイル60U,60V,60Wおよびコンデンサ70U,70V,70Wでそれぞれ構成される三相の各相用のLCフィルタが接続される。LCフィルタは、インバータ120からの三相交流の高周波成分を除去する。端子61U,61V,61Wは、それぞれ、LCフィルタのコイル60U,60V,60Wの変圧器80と反対の側に接続される。電圧センサ71U,71Vは、それぞれ、LCフィルタのコンデンサ70U,70Vの両端子間の電圧Vu,Vvを検出して、検出した電圧Vu,Vvを示すアナログ信号を出力する。
【0036】
系統連系用のシステムに転用するときに、端子51P,51Mに、一次電池、二次電池、太陽電池および燃料電池などの電池50を接続し、端子61U,61V,61Wに、それぞれ、コイル60U,60V,60Wの変圧器80と反対の側を接続し、端子72S,72Cに、それぞれ、電圧センサ71U,71Vからの信号線を接続する。また、電池50に替えてキャパシタを端子51P,51Mに接続するようにしてもよい。
【0037】
これにより、RDC140には、電力系統90の三相交流のU相の電圧信号およびV相の電圧信号が、RDC140に本来入力されるsin信号およびcos信号に替えて入力される。
【0038】
図4は、第1実施形態においてRDC140に三相交流の2つの相の電圧を入力した場合に出力される信号を示すグラフである。図4を参照して、図1で示したように、モータジェネレータ30のレゾルバ31からのsin信号およびcos信号がRDC140に入力される場合は、図2の3段目のグラフで示した波形と同様の図4の理想角で示されるグラフで示される信号が、RDC140からデューティ指令値演算部112に出力される。
【0039】
図3のように、電力系統90の三相交流のU相の電圧信号およびV相の電圧信号がRDC140に入力される場合、図4のUV角のグラフで示される信号が、RDC140からデューティ指令値演算部112に出力される。
【0040】
なお、電力系統90の三相交流のU相の電圧信号およびW相の電圧信号がRDC140に入力された場合、図4のUW角のグラフで示される信号が、RDC140からデューティ指令値演算部112に出力される。
【0041】
デューティ指令値演算部112は、このようなUV角の出力信号の変化またはUW角の出力信号の変化から、電力系統90の三相交流の位相が0度または±180度となるタイミングを検出することができる。これにより、1周期の時間が算出できるため、電圧位相の変化の角速度が算出できる。電力系統90の三相交流の周波数は既知(たとえば、日本国内においては50Hzまたは60Hz)であるため、デューティ指令値演算部112は、電力系統90の三相交流に同期した電圧位相の三相交流を出力するデューティ指令値を、生成して、インバータ120に出力することができる。
【0042】
なお、このようなデューティ指令値を出力するために、デューティ指令値演算部112を構成するためのソフトウェアを変更することが考えられる。具体的には、車載時のソフトウェアは、RDC140から入力された信号で示されるレゾルバ角と、電圧センサ151からの信号で示される電圧VHと、電流センサ32U,32V,32Wからの信号でそれぞれ示される電流Iu,Iv,Iwとを用いて、車両1の運転者によるアクセル操作などに応じた駆動力をモータジェネレータ30が発生するようにインバータ120を制御するデューティ指令値を演算し、このデューティ指令値をインバータ120に出力する、ように構成される。
【0043】
このように構成されていた車載時のソフトウェアを、RDC140から入力された信号で示される電圧位相角と、電圧センサ151からの信号で示される電圧VHと、電流センサ32U,32V,32Wからの信号でそれぞれ示される電流Iu,Iv,Iwとを用いて、電力系統90の三相交流の0度または±180度のタイミングを特定し、このタイミングに合った、電力系統90の三相交流と同じ電圧位相の三相交流を発生するようにインバータ120を制御するデューティ指令値を演算し、このデューティ指令値をインバータ120に出力する、ように変更する。
【0044】
[第2実施形態]
第1実施形態においては、車載のインバータ周辺のシステムを、三相交流の電力系統90と系統連系するためのシステムに転用する場合について説明した。第2実施形態においては、車載のインバータ周辺のシステムを、単相交流の電力系統91,92と系統連系するためのシステムに転用する場合について説明する。
【0045】
図5は、第2実施形態における車載用から系統連系用に転用した後のインバータ周辺のシステムの構成の概略を示す図である。図5を参照して、系統連系用のシステムの、PCU10の内部、および、電流センサ32U,32Wは、図1で示した車載用のシステムと同様であるので、重複する説明は繰返さない。単相交流の系統連系用のシステムの、端子51P,51M,61U,61W,72S,72C、および、コイル60U,60Wは、図3で示した三相交流の系統連系用のシステムと同様であるので、重複する説明は繰返さない。
【0046】
なお、図5においては、単相三線式の単相交流について説明しているが、図5において、W相に関する部分を取除いて、U相に関する部分のみとすることにより、単相二線式の単相交流にも同様に適用することができる。
【0047】
単相交流の系統連系用のシステムは、三相交流の系統連系用のシステムの三相交流の電力系統90ではなく、単相三線式の第1相の単相交流の電力系統91および第1相と逆位相の第2相の単相交流の電力系統92と連系される。電圧センサ93U,93Wは、それぞれ、電力系統91,92の電圧Vu,Vwを検出して、検出した電圧Vu,Vwを示すアナログ信号を出力する。
【0048】
電力系統91,92には、グランドと反対側に、コイル60U,60Wが接続される。コイル60U,60Wは、インバータ120からの交流の高周波成分を除去する。端子61U,61Wは、それぞれ、コイル60U,60Wの電力系統91,92と反対の側に接続される。
【0049】
系統連系用のシステムに転用するときに、端子51P,51Mに、一次電池、二次電池、太陽電池および燃料電池などの電池50を接続し、端子61U,61Wに、それぞれ、コイル60U,60Wの電力系統91,92と反対の側を接続し、端子72S,72Cに、それぞれ、電圧センサ93U,93Wからの信号線を接続する。
【0050】
これにより、RDC140には、電力系統91,92の単相交流の電圧信号が、RDC140に本来入力されるsin信号およびcos信号に替えて入力される。
【0051】
図6は、第2実施形態においてRDC140に互いに逆位相の2つの単相交流の電圧を入力した場合に出力される信号を示すグラフである。図6を参照して、図1で示したように、モータジェネレータ30のレゾルバ31からのsin信号およびcos信号がRDC140に入力される場合は、図2の3段目のグラフで示した波形と同様の図6の理想角で示されるグラフで示される信号が、RDC140からデューティ指令値演算部112に出力される。
【0052】
図5のように、電力系統91,92の互いに逆位相の単相交流の電圧信号がRDC140に入力される場合、図6の入力角のグラフで示される信号が、RDC140からデューティ指令値演算部112に入力される。
【0053】
デューティ指令値演算部112は、このような入力角の信号の変化から、電力系統91,92の単相交流の位相が90度または-90度となるタイミングを検出することができる。これにより、1周期の時間が算出できるため、電圧位相の変化の角速度が算出できる。電力系統91,92の単相交流の周波数は既知(たとえば、日本国内においては50Hzまたは60Hz)であるため、デューティ指令値演算部112は、電力系統91,92の単相交流に同期した電圧位相の単相交流を出力するデューティ指令値を、生成して、インバータ120に出力することができる。
【0054】
なお、このようなデューティ指令値を出力するために、デューティ指令値演算部112を構成するためのソフトウェアを変更することが考えられる。具体的には、車載時のソフトウェアは、RDC140から入力された信号で示されるレゾルバ角と、電圧センサ151からの信号で示される電圧VHと、電流センサ32U,32Wからの信号でそれぞれ示される電流Iu,Iwとを用いて、車両1の運転者によるアクセル操作などに応じた駆動力をモータジェネレータ30が発生するようにインバータ120を制御するデューティ指令値を演算し、このデューティ指令値をインバータ120に出力する、ように構成される。
【0055】
このように構成されていた車載時のソフトウェアを、RDC140から入力された信号で示される電圧位相角と、電圧センサ151からの信号で示される電圧VHと、電流センサ32U,32Wからの信号でそれぞれ示される電流Iu,Iwとを用いて、電力系統91,92の単相交流の90度または-90度のタイミングを特定し、このタイミングに合った、電力系統91,92の単相交流と同じ電圧位相の単相交流を発生するようにインバータ120を制御するデューティ指令値を演算し、このデューティ指令値をインバータ120に出力する、ように変更する。
【0056】
[変形例]
(1) 前述した実施の形態においては、図1で示したように、モータジェネレータ30は発電機能を有することにした。しかし、これに替えて、発電機能を有さないモータであるようにしてもよい。
【0057】
(2) 前述した実施の形態においては、図1で示したように、車両1に搭載されていたモータジェネレータ30のインバータのシステムを転用することを説明した。しかし、これに限定されず、車両1と異なる装置に搭載されていたモータのインバータのシステムを転用するようにしてもよい。
【0058】
(3) 前述した第1実施形態においては、図3で示したように、三相交流のU相,V相の電圧Vu,Vvを示す信号がRDC140に入力されるようにした。しかし、これに限定されず、RDC140に入力される信号は、三相交流のV相,W相の電圧Vv,Vwを示す信号であってもよいし、三相交流のW相,U相の電圧Vw,Vuを示す信号であってもよい。
【0059】
(4) 前述した第2実施形態においては、図5で示したように、単相三線式の単相交流の場合について説明した。しかし、これに限定されず、図5において、W相に関する部分を取除いて、U相に関する部分のみとすること、または、U相に関する部分を取除いて、W相に関する部分のみとすることにより、単相二線式の単相交流にも第2実施形態を同様に適用することができる。
【0060】
(5) 前述した実施の形態においては、図3および図5で示したように、電力系統90,91,92に連系する場合について説明した。しかし、これに限定されず、電力系統から独立した電力線にインバータ120から交流を出力するものであってもよい。
【0061】
(6) 前述した実施の形態においては、図3および図5で示したように、電池50の直流電力を、車載から転用したインバータ120で交流電力に変換して、電力系統90,91,92等の交流の電力線に供給することを説明した。しかし、これに限定されず、交流の電力線の交流電力を、車載から転用したインバータ120で直流電力に変換して、電池50に充電するようにしてもよい。
【0062】
(7) 前述した実施の形態を、図3または図5で示したような連系インバータ(電力系統90,91,92に連系するものだけでなく、電力系統から独立した電力線に連系するものも含む。)のシステムの開示と捉えてもよいし、車載用のインバータシステムを連系インバータのシステムに転用することにより連系インバータを製造する方法の開示と捉えてもよいし、車載用のインバータシステムを連系インバータのシステムに転用する方法の開示と捉えてもよいし、連系インバータにより電力系統または独立電力線に連系する方法の開示と捉えてもよい。
【0063】
[まとめ]
(1) 図3および図5で示したように、連系インバータのシステムは、直流電源からの直流電力を交流電力に変換して交流電力線に出力するインバータ120と、インバータ120から交流電力線(たとえば、電力系統90,91,92)への出力電圧のうちの2つ(単相二線式の場合、1つ)の電圧値をそれぞれ取得する2つ(単相二線式の場合、1つ)の電圧センサ71U,71V,93U,93Wによってそれぞれ取得された2つ(単相二線式の場合、1つ)の電圧値を、出力電圧に関する位相の角度を示す電気角情報に変換するRDC140と、RDC140から与えられる電気角情報で示される角度が所定角度となるタイミングを用いて交流電力線を流れる交流に同期した交流を出力するようインバータ120を制御するECU110とを備える。
【0064】
これにより、電圧センサ71U,71V,93U,93Wによって取得された交流電力線の交流電力の電圧値がRDC140に入力されると、交流電力の電気角と、RDC140から出力される電気角とが、特定の角度(たとえば、図4では0度または180度,図6では90度または-90度)において同期する。電力系統90,91,92等の交流電力線の交流電力の周波数は既知(たとえば、50Hz,60Hz)である場合、特定の角度で同期が取れれば、インバータ120の出力と、交流電力線の交流電力とを同期させることができる。これにより、電圧センサ71U,71V,93U,93Wの電圧値を受けるA/Dポートを新設しなくてよくなる。その結果、転用に掛かる余分なコストを削減することができる。
【0065】
(2) 図1図3および図5で示したように、インバータ120、RDC140、および、ECU110は、モータ駆動用のシステムからの転用であるようにしてもよい。その結果、転用によりコストを削減することができる。
【0066】
(3) 図1で示したように、モータ駆動用のシステムは、車両1であるようにしてもよい。その結果、転用によりコストを削減することができる。
【0067】
(4) 図3で示したように、交流電力線は、三相交流の電力線(たとえば、電力系統90)であるようにしてもよい。
【0068】
(5) 図3および図4で示したように、ECU110は、RDC140から与えられる電気角情報で示される角度が0度または±180度となるタイミングを用いて交流電力線を流れる交流電力に同期した交流電力を出力するようインバータ120を制御するようにしてもよい。交流電力が三相交流である場合、RDC140からは、交流電力の電気角(電圧位相)の0度または±180度となるタイミングで同期する信号が出力される。このため、これらのタイミングを用いることで正確に同期をとることができる。
【0069】
(6) 図5で示したように、交流電力線は、単相交流の電力線(たとえば、電力系統91,92)であるようにしてもよい。
【0070】
(7) 図1図3および図5で示したように、連系インバータの製造方法は、直流電源(たとえば、蓄電装置20)からの直流電力を交流電力に変換するインバータ120と、インバータ120からの交流電力を用いて駆動力を発生するモータジェネレータ30と、モータジェネレータ30の回転に関する値を検出するレゾルバ31と、レゾルバ31からの値を、回転に関する位相の角度を示す電気角情報に変換するRDC140と、RDC140から与えられる電気角情報で示される角度を用いてインバータ120を制御するECU110とを備えるシステムに搭載されていた、RDC140とインバータ120とECU110とを転用する方法である。
【0071】
連系インバータの製造方法は、インバータ120への直流電力の入力を直流電源(たとえば、電池50)に接続するための端子51P,51Mを設ける工程と、モータジェネレータ30に接続されていたインバータ120からの出力を交流電力線(たとえば、電力系統90,91,92)に接続するための端子61U,61V,61Wを設ける工程と、交流電力線への出力電圧のうちの2つ(単相二線式の場合、1つ)の電圧値をそれぞれ取得する2つ(単相二線式の場合、1つ)の電圧センサ(たとえば、電圧センサ71U,71V,93U,93W)からの信号線をRDC140に接続するための端子72S,72Cを設ける工程と、RDC140から与えられる電気角情報で示される角度が所定角度となるタイミングを用いて交流電力線を流れる交流に同期した交流を出力するようインバータ120を制御するように、ECU110による制御方法を変更する工程とを含む。これにより、転用に掛かる余分なコストを削減することができる。
【0072】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0073】
1 車両、10 PCU、20 蓄電装置、30 モータジェネレータ、31 レゾルバ、32U,32V,32W 電流センサ、50 電池、51M,51P,61U,61V,61W,72C,72S 端子、60U,60V,60W コイル、70U,70V,70W,150 コンデンサ、71U,71V,93U,93W,151 電圧センサ、80 変圧器、90,91,92 電力系統、110 ECU、111 アナログデジタル変換回路、112 デューティ指令値演算部、120 インバータ、130 昇圧コンバータ、140 RDC。
図1
図2
図3
図4
図5
図6