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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】産業車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/48 20060101AFI20240528BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240528BHJP
【FI】
B60R19/48 B
G01S17/931
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021040382
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139834
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】森 博樹
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0317150(US,A1)
【文献】特開平11-249740(JP,A)
【文献】特開2000-085497(JP,A)
【文献】実開昭61-110451(JP,U)
【文献】特開平10-166968(JP,A)
【文献】中国実用新案第212675158(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/48
G01S 17/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷を運搬する産業車両において、
車両が走行可能な方向に存在する障害物を検知する検知センサを有し、
前記検知センサは、前記車両の前後方向の所定部位に配置されており、
前記所定部位は、前記車両が走行可能な方向において前記障害物が接触した際の衝撃を緩和するバンパー部にあり、
前記バンパー部は、前記検知センサが配置される前記所定部位の下方にバンパーとして機能するバンパー部材を有し、
前記バンパー部材は、前記検知センサの外面よりも前記車両が走行可能な方向に突出しており、
前記バンパー部は、前記バンパー部材と当該バンパー部材の上方に配置される前記検知センサよりも上方に位置するとともに前記検知センサの一部を覆うカバー部材を有し、
前記カバー部材は、前記バンパー部に着脱自在に取り付けられるとともに、前記バンパーとして機能する部材であり、
前記バンパー部材と前記カバー部材との間には、前記カバー部材で覆われていない前記検知センサの外面を前記車両の前方と側方に露出させる開放部が位置していることを特徴とする産業車両。
【請求項2】
前記開放部は、前記車両の前後方向に開口するとともに前記車両の左右方向に延びており、
前記カバー部材は、前記車両の左右方向に延びることによって前記開放部の上開口縁を当該カバー部材のみで形成し、
前記検知センサは、前記カバー部材の左右方向の端部から離れた位置に配置されている請求項1に記載の産業車両。
【請求項3】
前記バンパー部は、前記車両の前後方向の先端に向けて前記車両の左右方向の幅が徐々に狭くなるように構成されている請求項1又は請求項2に記載の産業車両。
【請求項4】
前記バンパー部は、前記車両の前方に位置している請求項1~請求項のうち何れか一項に記載の産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、作業用の車両に備える障害物検知システムを開示する。障害物検知システムは、車両前方の障害物との距離を測定するセンサや、車両側方の障害物との距離を測定するセンサを備える。これらのセンサは、車両の前方又は側方に配置されている。この種の車両によれば、車両周囲を検知することで障害物を回避しつつ、自動走行することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-174344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両は、その車両による直接的な要因又はその車両が直接的な要因にならない他の影響による要因などによって、障害物と接触する可能性がある。このため、障害物を検知するためにセンサを搭載している車両においては、障害物と接触する可能性を考慮した車両構造であることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する産業車両は、荷を運搬する産業車両において、車両が走行可能な方向に存在する障害物を検知する検知センサを有し、前記検知センサは、前記車両の前後方向の所定部位に配置されており、前記所定部位は、前記車両が走行可能な方向において前記障害物が接触した際の衝撃を緩和するバンパー部にあることを要旨とする。この構成によれば、車両が走行可能な方向において障害物と接触した場合でも検知センサを保護し得る。
【0006】
上記産業車両において、前記バンパー部は、前記検知センサが配置される前記所定部位の下方にバンパーとして機能するバンパー部材を有し、前記バンパー部材は、前記検知センサの外面よりも前記車両が走行可能な方向に突出している。この構成によれば、検知センサの下方にバンパー部材を配置することで例えば走行中の飛び石などからも検知センサを保護し得るとともに側方の障害物をバンパー部材に接触させることが可能である。
【0007】
上記産業車両において、前記バンパー部は、前記バンパー部材と当該バンパー部材の上方に配置される前記検知センサよりも上方に位置するとともに前記検知センサの一部を覆うカバー部材を有し、前記カバー部材は、前記バンパーとして機能する部材であり、前記バンパー部材と前記カバー部材との間には、前記カバー部材で覆われていない前記検知センサの外面を前記車両の前方と側方に露出させる開放部が位置している。この構成によれば、カバー部材によっても検知センサを保護し得る。
【0008】
上記産業車両において、前記バンパー部は、前記車両の前後方向の先端に向けて前記車両の左右方向の幅が徐々に狭くなるように構成されている。この構成によれば、車両の旋回半径に影響を与えないバンパー部とすることが可能である。
【0009】
上記産業車両において、前記バンパー部は、前記車両の前方に位置している。この構成によれば、車両の前方が障害物に接触した場合でも検知センサを保護し得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、障害物と接触する可能性を考慮した車両構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)はトーイングトラクタの斜視図、(b)はフロント部分の拡大図、(c)はサイド部分の拡大図。
図2】(a)トーイングトラクタの左側面図、(b)はサイド部分の拡大図。
図3】(a)はトーイングトラクタを前方から見た正面図、(b)はサイド部分の拡大図。
図4】トーイングトラクタを上方から見た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、トーイングトラクタに具体化した一実施形態を図1図4にしたがって説明する。
本実施形態のトーイングトラクタ10は、運転席が覆われたキャビンタイプである。以下の説明において、方向を特定する前、後、左、右、上及び下は、運転席にオペレータが着座して運転姿勢を取り得たときにトーイングトラクタ10の前進方向を向いた状態を基準とする。トーイングトラクタ10の前後方向は、トーイングトラクタ10の走行方向でもある。トーイングトラクタ10は、産業車両の一種である。本明細書において産業車両とは、荷役運搬用の車両である。
【0013】
[トーイングトラクタ10の全体構成]
図1(a)及び図2(a)に示すように、トーイングトラクタ10の車体11の中央付近には、運転席12が設けられている。車体11において運転席12の前方には、走行のための駆動力を付与する駆動手段の収容室13が位置している。トーイングトラクタ10の駆動手段は、エンジン又はモータの何れでもよい。収容室13の上方は、開閉可能なフード14で覆われている。車体11の下方には、車輪としての一対の前輪15と一対の後輪16が装着されている。トーイングトラクタ10は、前輪15及び後輪16の何れか一方が駆動輪であり、他方が操舵輪である。トーイングトラクタ10は、駆動手段によって付与される駆動力が動力伝達機構を通じて駆動輪へ伝達されることによって走行する。
【0014】
図2(a)に示すように、車体11の後方には、台車などの被牽引車を連結する連結装置17が設けられている。トーイングトラクタ10は、連結装置17に被牽引車を連結して牽引することで、被牽引車に積載された荷を運搬することができる。
【0015】
図2(a)に示すように、車体11には、制御装置18が搭載されている。制御装置18は、処理部と記憶部とを備える。記憶部には、トーイングトラクタ10の走行を制御するための種々のプログラムが記憶されている。制御装置18は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア、例えば、特定用途向け集積回路:ASICを備えていてもよい。制御装置18は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU、並びに、RAM及びROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆるものを含む。
【0016】
[トーイングトラクタ10の制御構成]
制御装置18は、記憶部に記憶されたプログラムにしたがい、駆動手段と操舵手段を制御することで、トーイングトラクタ10を動作させる。本実施形態のトーイングトラクタ10は、オペレータによる操作が行われることなく、制御装置18による制御によって自動で走行と操舵の各動作を行うことを可能とした車両である。
【0017】
本実施形態のトーイングトラクタ10は、複数の検知センサを有する。複数の検知センサには、車両の前方を検知範囲とする前方検知センサ20と、車両の側方を検知範囲とする側方検知センサ21と、を含む。本実施形態において車両の側方とは、左側方と右側方の両方である。このため、本実施形態のトーイングトラクタ10は、車両の左側方を検知範囲とする側方検知センサ21と、車両の右側方を検知範囲とする側方検知センサ21と、を有する。なお、車両の側方は、左側方と右側方の何れか一方としてもよい。つまり、左側方と右側方の何れか一方に側方検知センサ21を備えるようにしてもよい。
【0018】
前方検知センサ20と各側方検知センサ21は、点までの距離及び方向を測定可能なセンサである。本実施形態では、レーザー距離計を用いている。前方検知センサ20と各側方検知センサ21は、トーイングトラクタ10の周囲にレーザーを照射する照射部と、その反射光を受光する受光部を有する。本実施形態の前方検知センサ20と各側方検知センサ21は、センサを中心に180度の範囲を検知範囲とする。制御装置18には、前方検知センサ20と各側方検知センサ21による測定データが取り込まれる。これにより、制御装置18は、レーザーの照射から受光までの時間を計測することにより周囲に存在する物体までの距離を検出できる。つまり、制御装置18は、トーイングトラクタ10の周囲環境を把握できる。制御装置18は、周囲環境の検知結果をトーイングトラクタ10の走行制御に反映させる。なお、トーイングトラクタ10の周囲に存在する物体には、トーイングトラクタ10の進行の妨げとなる障害物、及びトーイングトラクタ10の進行の妨げとならない物体を含む。本実施形態において前方検知センサ20は、車両の走行可能な方向に存在する障害物を検知する検知センサである。車両の走行可能な方向とは前進方向と後進方向である。本実施形態において各側方検知センサ21は、車両の側方に存在する障害物を検知する検知センサである。
【0019】
[前方検知センサ20と側方検知センサ21の配置]
以下、図1図4にしたがって、車体11における前方検知センサ20及び各側方検知センサ21の配置部位の構造を詳しく説明する。
【0020】
最初に、前方検知センサ20について説明する。
前方検知センサ20は、車両の最前方に位置するフロント部22に配置されている。本実施形態のフロント部22は、フロントバンパーを兼ねている。前方検知センサ20は、フロント部22を取り外したときに露出する車体11の前方部分に固定されている。図1(b)及び図4に示すように、フロント部22は、車両の前方に向かうほど、車幅方向である左右方向に沿う長さが短くなる尖鋭部23を備える。フロント部22は、図4に示すように、車両上方から平面視したとき三角形の形状である。つまり、フロント部22は、車両の前後方向の先端に向けて車両の左右方向の幅が徐々に狭くなるように構成されている。フロント部22は、車両の左右方向の中央に尖鋭部23が配置されており、その尖鋭部23から車両の後方に向かって斜状に延びる一対の斜壁面24を有する。
【0021】
図1(b)及び図3(a)に示すように、フロント部22は、車両の前後方向に開口するとともに斜壁面24に沿って左右それぞれに斜状に延びる上開口部25を備える。上開口部25は、フロント部22の上方に位置している。上開口部25は、尖鋭部23を中心として左右対称の構造である。上開口部25の左右両端付近は、左右一対のヘッドライト26とそれぞれ対応するように位置している。各ヘッドライト26の光は、上開口部25を通過して車両前方を照らす。
【0022】
フロント部22は、車両の前後方向に開口するとともに斜壁面24に沿って左右それぞれに斜状に延びる下開口部27を備える。下開口部27は、フロント部22の下方であって、上開口部25よりも下方に位置している。下開口部27は、上開口部25に比して走行路面に近い位置にある。下開口部27は、尖鋭部23を中心として左右対称の構造である。下開口部27の左右方向の長さは、上開口部25の左右方向の長さに比して短い。また、下開口部27の左右両端付近は、図2(a)に示すように、車両の側方に向けてそれぞれ開口している。
【0023】
下開口部27の下開口縁28には、フロント板部材29が連設されている。フロント板部材29は、下開口縁28に沿って車両の左右方向に延びるとともに車両の前後方向にも延びる板状の部材である。本実施形態のフロント板部材29は所望の厚みを有する鉄板である。フロント板部材29は、下開口部27に連設されている状態で、尖鋭部23を中心として左右対称の構造である。
【0024】
前方検知センサ20は、尖鋭部23に対応する位置であって、車両の左右方向の中央に位置するように、下開口部27の開口領域内に配置されている。前方検知センサ20の下方には、フロント板部材29が配置されている。前方検知センサ20は、フロント板部材29の平面領域内に前方検知センサ20の外面が位置するように配置されている。換言すれば、フロント板部材29は、前方検知センサ20の外面よりも前方に突出している。前方に突出しているとは、車両の走行可能な方向に突出しているとも言える。また、前方検知センサ20は、下開口部27の開口縁よりも車両の前方や左右に飛び出さないように配置されている。前方検知センサ20は、フロント部22の外面よりも外側に飛び出さないように下開口部27の開口領域内に配置されている。前方検知センサ20は、図2(a)に示すように、下開口部27の左右両端付近が尖鋭部23よりも車両の後方に位置していることで、車両の側方から視認可能である。本実施形態において下開口部27の開口領域内は前方検知センサ20の配置部位であって、当該配置部位は車両の前後方向の所定部位に相当する。
【0025】
フロント部22には、下開口部27の一部分を閉塞するカバー部材としての前カバー30が着脱自在に取り付けられている。前カバー30は、下開口部27の上開口縁31に沿って左右に延びる形状である。前カバー30は、下開口部27に取り付けられた状態で、尖鋭部23を中心として左右対称の構造である。前カバー30の上下方向の長さは、下開口部27の上下方向の長さの半分である。前カバー30は、車両の前後方向に所望の厚みを有する。前カバー30は、フロント部22と同様の材料にて成形されている。例えば、材料はポリプロピレン、繊維強化プラスチック、又はABS樹脂である。前カバー30は、前方検知センサ20よりも前方に位置している。これにより、前方検知センサ20は、その一部の外面が前カバー30によって覆われている。つまり、前方検知センサ20は、レーザーの照射部と受光部が下開口部27の開口領域内において露出するように前カバー30で覆われている。下開口部27に前カバー30が取り付けられた状態では、フロント板部材29と前カバー30との間が開放されている。前カバー30で覆われていない前方検知センサ20の外面は、フロント板部材29と前カバー30との間が開放されることによって車両の前方と側方に露出される。本実施形態では、フロント板部材29と前カバー30との間で開放される下開口部27の開口領域の部分が、前方検知センサ20の外面を露出させる開放部となる。
【0026】
次に、側方検知センサ21について説明する。
車両の左右両側方に配置される側方検知センサ21の配置部位の構造は、左右対称の構造である。つまり、同一構造である。
【0027】
各側方検知センサ21は、車両の側方であって、前輪15と運転席12との間にそれぞれ位置する各サイド部35に配置されている。各サイド部35は、サイドバンパーを兼ねている。各側方検知センサ21は、各サイド部35を取り外したときに露出する車体11の側方部分に固定されている。
【0028】
各サイド部35は、図1(b)及び図2(b)に示すように、車両を側面視したときにほぼ矩形のブロック状である。各サイド部35は、車両の前方に配置される前方部36と当該前方部36よりも車両の後方に配置される後方部37とを有する。各サイド部35は、前方部36と後方部37とが一体化されている。前方部36は、図1(c)、図2(b)及び図4に示すように、車両を上方から平面視したときに車両の前方から後方に向かって車両の左右方向の幅を広げるように斜めに延びる第1前方部38と第2前方部39とを有する。第1前方部38は、図2に示すように、第2前方部39の上方に位置する。第1前方部38と第2前方部39のそれぞれは、サイド部35を車体11に取り付けた際に車両側面となり得る前側面40を有する。第2前方部39は、第1前方部38に比べて、車両の前方から後方に向かって車両の左右方向の幅を広げるように延びる量が少ない。つまり、第1前方部38と第2前方部39において前輪15に近い側の縁をそれぞれの始端としたとき、第2前方部39の終端は第1前方部38の終端よりも車両の後方に位置する。これにより、第2前方部39は、第1前方部38よりも、車両の左右方向の幅を広げるように延びている。
【0029】
後方部37は、第1前方部38に連続する第1後方部41と、第2前方部39に連続する第2後方部42と、を有する。第1後方部41及び第2後方部42は、図1(c)、図2(b)及び図4に示すように、車両を上方から平面視したときに車両の前方から後方に向かって真っ直ぐ又はほぼ真っ直ぐに延びる。第1後方部41は、第2後方部42の上方に位置する。第1後方部41と第2後方部42のそれぞれは、サイド部35を車体11に取り付けた際に車両側面となり得る後側面43を有する。第1後方部41は、第2後方部42に比べて、車両の前方から後方に向かって延びる量が多い。第1後方部41は、車両の左右方向において第2後方部42よりも内方に位置している。第1後方部41と第2後方部42は、段差部44を介して繋がっている。段差部44は、図2(b)及び図3(b)に示すように、第1後方部41の後側面43よりも車両の左右方向の外方に突出する面を有し、当該面は車両の前後方向及び左右方向のそれぞれに延びている。
【0030】
図1(a)及び図3(a)に示すように、各サイド部35の前方部36と後方部37は、前輪15と後輪16を車両に装着した際に外側に露出する各タイヤ側面よりも外方、つまり車両の左右方向に突出している。タイヤ側面は、ショルダー部、サイドウォール部及びビート部を含む面である。後方部37は、第1後方部41と第2後方部42とが段差状に繋がっていることで第1後方部41の部分が車両の左右方向に沿って内方に凹む凹部になる。
【0031】
前方部36と後方部37とを含む各サイド部35の最下方部位には、サイド板部材45がそれぞれ連設されている。サイド板部材45は、サイド部35の最下方部位に沿って車両の前後方向に延びるとともに車両の左右方向にも延びる板状の部材である。本実施形態の各サイド板部材45は、図1(a)及び図3(a)に示すように、前輪15と後輪16の各タイヤ側面よりも車両の左右方向に突出している。本実施形態のサイド板部材45は所望の厚みを有する鉄板である。また、本実施形態の各サイド板部材45は、図1(a)及び図2(a)に示すように、各サイド部35の最下方部位からさらに後方に延設されている。各サイド板部材45は、運転席12の下方まで延びている。これにより、各サイド板部材45において運転席12の乗降部12aの位置に対応する部分は、運転席12への乗降用のステップ46としても機能する。
【0032】
各側方検知センサ21は、第1後方部41と段差部44とを含む凹部の領域内に配置されている。各側方検知センサ21の下方には、サイド板部材45が配置されている。また、各側方検知センサ21は、サイド板部材45の平面領域内に側方検知センサ21の外面が位置するように配置されている。換言すれば、サイド板部材45は、側方検知センサ21の外面よりも車両の左右方向に突出している。各側方検知センサ21は、サイド部35及びサイド板部材45よりも車両の前方、後方及び左右に飛び出さないように配置されている。各側方検知センサ21は、図2(b)及び図3(b)に示すように、第1後方部41と第2後方部42とが段差状に繋がっていることで、車両の前方並びに後方のそれぞれから視認可能である。本実施形態において第1後方部41と段差部44を含む凹部の領域内は側方検知センサ21の配置部位であって、当該配置部位は車両の側方の所定部位に相当する。
【0033】
各サイド部35には、第1後方部41の一部分を閉塞するカバー部材としての側カバー47が着脱自在に取り付けられている。側カバー47は、第1後方部41の後側面43に沿って前後に延びる形状である。側カバー47の上下方向の長さは、第1後方部41の後側面43の上下方向の長さよりも短い。側カバー47は、車両の左右方向に所望の厚みを有する。側カバー47は、サイド部35と同様の材料にて成形されている。例えば、材料はポリプロピレン、繊維強化プラスチック、又はABS樹脂である。側カバー47は、側方検知センサ21よりも左右方向に位置している。これにより、側方検知センサ21は、その一部の外面が側カバー47によって覆われている。つまり、側方検知センサ21は、レーザーの照射部と受光部が第1後方部41と段差部44とを含む凹部の領域内において露出するように側カバー47で覆われている。第1後方部41に側カバー47が取り付けられた状態では、第2後方部42と側カバー47との間が開放されている。側カバー47で覆われていない側方検知センサ21の外面は、第2後方部42と側カバー47との間が開放されることによって車両の側方、前方及び後方に露出される。本実施形態では、第2後方部42と側カバー47との間で開放される部分が、側方検知センサ21の外面を露出させる開放部となる。
【0034】
[作用]
以下、本実施形態のトーイングトラクタ10の作用を説明する。
前方検知センサ20を、フロント板部材29よりも前方に露出しないようにフロント板部材29の上方に配置している。これにより、トーイングトラクタ10が車両前方において障害物と接触した際には、フロント板部材29がバンパーとして機能する。また、車両前方において障害物と接触した際には、前方検知センサ20の一部を覆う前カバー30もバンパーとして機能する。つまり、本実施形態において前方検知センサ20を配置したフロント部22は、障害物と接触した際の衝撃を緩和するバンパー部として機能する。また、フロント部22は、バンパーとして機能するフロント板部材29を有する。
【0035】
また、フロント部22の下開口部27により、フロント部22の前方と、フロント部22の左側面及び右側面は開放された状態となる。つまり、下開口部27は、前方検知センサ20の側方にも延びている。これにより、フロント部22の前方と、フロント部22の左側面及び右側面には、前方検知センサ20が発するレーザー光を遮るものが存在しない。このため、前方検知センサ20の検知範囲は、フロント部22の前方に加え、フロント部22の左側方及び右側方に及ぶ。つまり、下開口部27は、前方検知センサ20の検知範囲に影響を与えない。その結果、前方検知センサ20の検知範囲は、前方検知センサ20を中心に180度の範囲に及ぶ。
【0036】
また、フロント部22は、車両の前方に向かうほど、車両の左右方向に沿う長さが短くなる。つまり、フロント部22は、その後方に位置するフード14における左右方向の幅よりも拡幅されていない。このため、フロント部22を、フロントバンパーを兼ねる構造としても、トーイングトラクタ10の旋回半径には影響しない。図4には、トーイングトラクタ10が旋回するときのフロント部22の軌跡を二点鎖線で示す。
【0037】
側方検知センサ21を、サイド板部材45よりも左右に露出しないようにサイド板部材45の上方に配置している。これにより、トーイングトラクタ10が車両側方において障害物と接触した際には、サイド板部材45がバンパーとして機能する。また、車両側方において障害物と接触した際には、側方検知センサ21の一部を覆う側カバー47もバンパーとして機能する。つまり、本実施形態において側方検知センサ21を配置したサイド部35は、障害物と接触した際の衝撃を緩和するバンパー部として機能する。また、サイド部35は、バンパーとして機能するサイド板部材45を有する。
【0038】
また、第1後方部41と第2後方部42とを段差状に繋ぐ段差部44により、サイド部35を左右方向から正面視したときのサイド部35の正面は開放された状態となる。これにより、側方検知センサ21が発するレーザー光を遮るものが存在しない。また、第1後方部41と第2後方部42とを段差状に繋ぐ段差部44により、サイド部35を前後方向から正面視したときのサイド部35の前方及び後方は開放された状態となる。つまり、段差部44は、車両の前後方向に沿う側方検知センサ21の側方にも延びている。これにより、側方検知センサ21が発するレーザー光を遮るものが存在しない。このため、側方検知センサ21の検知範囲は、サイド部35の正面に加え、サイド部35の前方及び後方に及ぶ。つまり、段差部44によってサイド部35にも開口が存在することになり、サイド部35の開口は、側方検知センサ21の検知範囲に影響を与えない。その結果、側方検知センサ21の検知範囲は、側方検知センサ21を中心に180度の範囲に及ぶ。
【0039】
[実施形態の効果]
以上により、本実施形態のトーイングトラクタ10によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0040】
(1)フロント部22をバンパーとして機能させることで、トーイングトラクタ10の前方が障害物と接触したとしても、車両前方に配置した前方検知センサ20を保護することができる。その結果、障害物を検知するセンサを車両前方に搭載している車両として、車両前方において障害物と接触する可能性を考慮した車両構造を提供できる。
【0041】
(2)サイド部35をバンパーとして機能させることで、トーイングトラクタ10の側方が障害物と接触したとしても、車両側方に配置した側方検知センサ21を保護することができる。その結果、障害物を検知するセンサを車両側方に搭載している車両として、車両側方において障害物と接触する可能性を考慮した車両構造を提供できる。
【0042】
(3)障害物を検知するセンサを保護し得る車両構造により、仮に車両が障害物と接触したとしても、センサの破損を抑制し得る。その結果、車両における障害物の検知機能の低下を抑制できる。
【0043】
(4)フロント部22は、バンパーとして機能するフロント板部材29に加え、前方検知センサ20の一部を覆う前カバー30を備えている。これにより、前カバー30もバンパーとして機能させることができる。その結果、フロント部22における前方検知センサ20の保護機能をさらに強化できる。
【0044】
(5)フロント部22の下開口部27に前方検知センサ20を配置することで、前方検知センサ20の検知範囲を広く確保できる。その結果、車両前方における障害物の検知性能を向上させることができる。
【0045】
(6)フロント部22の形状を、前方に向かうほど車両の左右方向に沿う長さが短くなるように構成している。このため、フロント部22を搭載しても車両の旋回半径が大きくなることを抑制できる。その結果、小回りが利く車両を提供でき、走行性能を低下させることなく、障害物を検知するセンサを保護し得る車両構造を提供できる。
【0046】
(7)前方検知センサ20は、フロント板部材29の上方に配置しているが、フロント板部材29には固定されていない。つまり、前方検知センサ20とフロント板部材29は物理的に接続されていない。このため、車両前方が障害物に接触した際の衝撃がフロント板部材29を通じて前方検知センサ20へ伝播することを抑制できる。したがって、前方検知センサ20の破損を抑制できる。
【0047】
(8)サイド部35は、バンパーとして機能するサイド板部材45に加え、側方検知センサ21の一部を覆う側カバー47を備えている。これにより、側カバー47もバンパーとして機能させることができる。その結果、サイド部35における側方検知センサ21の保護機能をさらに強化できる。
【0048】
(9)サイド部35の第1後方部41と第2後方部42とを段差状に繋ぎ、その部位に側方検知センサ21を配置することで、側方検知センサ21の検知範囲を広く確保できる。その結果、車両側方における障害物の検知性能を向上させることができる。
【0049】
(10)側方検知センサ21は、サイド板部材45の上方に配置しているが、サイド板部材45には固定されていない。つまり、側方検知センサ21とサイド板部材45は物理的に接続されていない。このため、車両側方が障害物に接触した際の衝撃がサイド板部材45を通じて側方検知センサ21へ伝播することを抑制できる。したがって、側方検知センサ21の破損を抑制できる。
【0050】
(11)サイド板部材45を、運転席12の下方まで延設している。このため、サイド板部材45は、バンパーとしての機能に加え、運転席12への乗降用のステップ46としても機能させることができる。これにより、一部品に複数の機能を持たせることができ、部品点数の増加を抑制できる。
【0051】
[変更例]
上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。なお、上述した実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
○ フロント部22における前方検知センサ20の配置を変更してもよい。実施形態の前方検知センサ20は、フロント部22のほぼ最下方に配置しているが、例えばヘッドライト26を配置した上開口部25に配置してもよい。つまり、前方検知センサ20の上下位置を変更してもよい。前方検知センサ20は、路面に近く配置すれば、より小さな障害部を検知することが可能であるとともに、検知範囲も広げることが可能である。
【0053】
○ サイド部35における側方検知センサ21の配置を変更してもよい。実施形態の側方検知センサ21は、サイド部35の上下方向のほぼ中央付近に配置しているが、その上下位置を上又は下に変更してもよい。
【0054】
○ 前方検知センサ20を配置する個数や、側方検知センサ21を配置する個数を変更してもよい。
○ フロント部22の前カバー30や、サイド部35の側カバー47を省略してもよい。この場合、フロント部22はフロント板部材29によってバンパー機能を発揮する。また、サイド部35はサイド板部材45によってバンパー機能を発揮する。
【0055】
○ フロント板部材29は板状の部材であるが、バンパー部材としてその構成を変更してもよい。例えば、剛性を備えた複数本の柱状部材を車両の左右方向に所定間隔をおいて並設させてもよい。
【0056】
○ サイド板部材45は板状の部材であるが、バンパー部材としてその構成を変更してもよい。例えば、剛性を備えた複数本の柱状部材を車両の前後方向に所定間隔をおいて並設させてもよい。
【0057】
○ サイド板部材45は、ステップ46と兼用構成としているが、別体構成としてもよい。つまり、サイド板部材45は、サイド部35の下方のみに配置してもよい。一方で、ステップ46はサイド板部材45とは別体構成として配置してもよいし、トーイングトラクタ10としてステップ46を設けない構成としてもよい。
【0058】
○ トーイングトラクタ10は、自動走行及び手動走行の何れかを選択して走行させる構成としてもよい。なお、自動走行時、運転席12は有人及び無人の何れでもよい。
○ トーイングトラクタ10は運転席12を覆わない非キャビンタイプとしてもよい。
【0059】
○ 産業車両は、荷役運搬用の車両であればよく、例えばフォークリフトでもよい。フォークリフトに実施形態の技術を採用する場合、車両の後方に障害物を検知する検知センサを配置するとよい。加えて、フォークリフトの側方に障害物を検知する検知センサを配置するとよい。
【0060】
[付記]
上記実施形態及び別例から把握できる技術思想を以下に記載する。
(イ)荷を運搬する産業車両において、車両の側方に存在する障害物を検知する検知センサを有し、前記検知センサは、前記車両の側方の所定部位に配置されており、前記所定部位は、前記車両の側方に前記障害物が接触した際に衝撃を緩和するバンパー部にある。この構成によれば、車両の側方が障害物と接触した場合でも検知センサを保護し得る。
【0061】
(ロ)前記所定部位に配置された前記検知センサは、前記車両に装着された車輪の側面よりも外方に位置している。この構成によれば、車輪によって車両の側方における検知範囲が狭くなることを抑制し、検知範囲を広く確保し得る。
【0062】
(ハ)前記バンパー部は、前記検知センサが配置される前記所定部位の下方にバンパーとして機能するバンパー部材を有し、前記バンパー部材は、前記検知センサの外面よりも前記車両の左右方向に突出している。この構成によれば、検知センサの下方にバンパー部材を配置することで例えば走行中の飛び石などからも検知センサを保護し得るとともに側方の障害物をバンパー部材に接触させることが可能である。
【0063】
(ニ)前記バンパー部は、前記バンパー部材と当該バンパー部材の上方に配置される前記検知センサよりも上方に位置するとともに前記検知センサの一部を覆うカバー部材を有し、前記カバー部材は、前記バンパーとして機能する部材であり、前記バンパー部材と前記カバー部材との間には、前記カバー部材で覆われていない前記検知センサの外面を前記車両の側方に露出させる開放部が位置している。この構成によれば、カバー部材によっても検知センサを保護し得る。
【0064】
(ホ)前記車両は、車輪として前輪と後輪を有し、前記バンパー部は前記前輪寄りに位置しているとともに、前記バンパー部と前記後輪との間に運転席が位置しており、前記バンパー部材は、前記バンパー部の下方から前記車両の後方に向けて前記運転席の乗降部まで延設されており、乗降用のステップを兼用している。この構成によれば、バンパー部材をバンパーとしての機能に加え、車両への乗降用のステップとしても機能させることが可能である。
【符号の説明】
【0065】
10…トーイングトラクタ、12…運転席、12a…乗降部、15…前輪、16…後輪、20…前方検知センサ、21…側方検知センサ、22…フロント部、29…フロント板部材、30…前カバー、35…サイド部、45…サイド板部材、46…ステップ、47…側カバー。
図1
図2
図3
図4