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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/512 20060101AFI20240528BHJP
   H01R 13/42 20060101ALI20240528BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALI20240528BHJP
【FI】
H01R13/512
H01R13/42 F
H01R13/6592
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021051900
(22)【出願日】2021-03-25
(65)【公開番号】P2022149652
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】大澤 清司
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-341583(JP,A)
【文献】特開2012-216336(JP,A)
【文献】特開2007-234600(JP,A)
【文献】特開2010-268562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/512
H01R 13/42
H01R 13/6592
H01R 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子と、
前記複数の端子を保持するインナハウジングと、
前記インナハウジングを覆う筒状のアウタハウジングと、
前記アウタハウジングの外側から前記アウタハウジングを貫通しつつ前記インナハウジングまで挿入され、前記インナハウジングと前記アウタハウジングとを締結するボルトと、
を備え、
前記インナハウジングには、前記複数の端子それぞれを収容する複数のキャビティと、前記ボルトを収容する凹部とが形成され、
前記複数のキャビティと前記凹部とは互いに仕切られており、
前記複数の端子及び前記複数のキャビティの組は、複数段、複数列に分かれて配置され、
前記ボルトの挿入方向から観察されたときに、前記複数のキャビティのうち一部のキャビティが前記凹部と重なり、
前記ボルトの挿入方向及び前記端子の挿入方向の2つ方向に直交する方向から観察されたときに、前記複数のキャビティのうち他の一部のキャビティが前記凹部と重なる、コネクタ。
【請求項2】
請求項に記載のコネクタであって、
前記端子及び前記キャビティが3組設けられており、
前記端子の挿入方向から観察されたときに、3つの前記キャビティがL字状に並び、かつ、前記インナハウジングのうち3つの前記キャビティのない空いた一角に前記凹部が設けられる、コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタであって、
前記インナハウジングの外面と前記アウタハウジングの内面との間に設けられたシール部材を備え、
前記凹部は、前記端子の挿入方向に沿って、前記シール部材よりも前記インナハウジングの背面側に設けられている、コネクタ。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記アウタハウジングは金属製であり、
前記インナハウジングの背面から延び出る電線を覆うシールド部材と、
前記シールド部材を前記アウタハウジングに電気的に接続しつつ取付ける取付部材と、
を備え、
前記取付部材が、前記端子の挿入方向に沿って、前記凹部よりも前記インナハウジングの背面側に設けられている、コネクタ。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のコネクタであって、
前記インナハウジングの背面側に取付けられて、前記端子の抜けを抑制する第1リテーナ及び第2リテーナを備え、
前記第1リテーナ及び前記第2リテーナは、互いに同じ形状に形成されて、それぞれが複数の電線挿通部を有し、
前記第1リテーナの前記複数の電線挿通部にはそれぞれ電線が通され、
前記第2リテーナの前記複数の電線挿通部のうち前記端子の挿入方向から観察されたときに前記凹部と重なる位置の電線挿通部には電線が通されていない、コネクタ。
【請求項6】
請求項に記載のコネクタであって、
前記電線挿通部に前記電線挿通部の内面から前記電線に向けて突出する複数のリブが設けられ、
前記複数のリブは、前記電線の周方向に互いに間隔をあけつつ電線と接触する、コネクタ。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載のコネクタであって、
固定対象に固定するためのブラケットを備え、
前記ブラケットは、前記ボルトによって前記アウタハウジングに取付けられている、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、端子付きの電線を保持するハウジングと、ハウジングを覆うカバーとを備えるコネクタを開示している。当該コネクタにおいて、上下一対の半割部材が、筒状に合体しつつハウジングの外周部に装着されてカバーとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-172009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジング(インナハウジング)とカバー(アウタハウジング)とがしっかり固定されることが望まれている。
【0005】
そこで、インナハウジングとアウタハウジングとをしっかり固定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、複数の端子と、前記複数の端子を保持するインナハウジングと、前記インナハウジングを覆う筒状のアウタハウジングと、前記アウタハウジングの外側から前記アウタハウジングを貫通しつつ前記インナハウジングまで挿入され、前記インナハウジングと前記アウタハウジングとを締結するボルトと、を備え、前記インナハウジングには、前記複数の端子それぞれを収容する複数のキャビティと、前記ボルトを収容する凹部とが形成され、前記複数のキャビティと前記凹部とは互いに仕切られている、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、インナハウジングとアウタハウジングとがしっかり固定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかるコネクタを示す斜視図である。
図2図2は実施形態1にかかるコネクタ及びこれと嵌合する相手側コネクタを示す平面図である。
図3図3は実施形態1にかかるコネクタを示す側面図である。
図4図4は実施形態1にかかるコネクタ及びこれと嵌合する相手側コネクタの嵌合面を示す正面図である。
図5図5は実施形態1にかかるコネクタを示す背面図である。
図6図6図2のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7図2のVII-VII線に沿った断面図である。
図8図8はリテーナ及びインナハウジングを示す分解背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のコネクタは、次の通りである。
【0011】
(1)複数の端子と、前記複数の端子を保持するインナハウジングと、前記インナハウジングを覆う筒状のアウタハウジングと、前記アウタハウジングの外側から前記アウタハウジングを貫通しつつ前記インナハウジングまで挿入され、前記インナハウジングと前記アウタハウジングとを締結するボルトと、を備え、前記インナハウジングには、前記複数の端子それぞれを収容する複数のキャビティと、前記ボルトを収容する凹部とが形成され、前記複数のキャビティと前記凹部とは互いに仕切られている、コネクタである。ボルトによって、インナハウジングとアウタハウジングとをしっかり固定できる。また複数のキャビティと凹部とが互いに仕切られているため、ボルトと端子とが短絡することが抑制される。
【0012】
(2)(1)のコネクタにおいて、前記複数の端子及び前記複数のキャビティの組は、複数段、複数列に分かれて配置され、前記ボルトの挿入方向から観察されたときに、前記複数のキャビティのうち一部のキャビティが前記凹部と重なり、前記ボルトの挿入方向及び前記端子の挿入方向の2つ方向に直交する方向から観察されたときに、前記複数のキャビティのうち他の一部のキャビティが前記凹部と重なってもよい。これにより、インナハウジングが一方に長くなることが抑制される。また、2つの方向から観察されたときに、凹部がキャビティと重なるように配置されることによって、ボルト分のスペースを設けることによるコネクタの大型化が抑制される。
【0013】
(3)(2)のコネクタにおいて、前記端子及び前記キャビティが3組設けられており、前記端子の挿入方向から観察されたときに、3つの前記キャビティがL字状に並び、かつ、前記インナハウジングのうち3つの前記キャビティのない空いた一角に前記凹部が設けられてもよい。これにより、インナハウジングに無駄なスペースが生じにくくなり、コネクタの大型化が抑制される。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか1つのコネクタにおいて、前記インナハウジングの外面と前記アウタハウジングの内面との間に設けられたシール部材を備え、前記凹部は、前記端子の挿入方向に沿って、前記シール部材よりも前記インナハウジングの背面側に設けられていてもよい。これにより、凹部よりも前面側で、インナハウジングの外面とアウタハウジングの内面との間がシールされることができる。
【0015】
(5)(1)から(4)のいずれか1つのコネクタにおいて、前記アウタハウジングは金属製であり、前記インナハウジングの背面から延び出る電線を覆うシールド部材と、前記シールド部材を前記アウタハウジングに電気的に接続しつつ取付ける取付部材と、を備え、前記取付部材が、前記端子の挿入方向に沿って、前記凹部よりも前記インナハウジングの背面側に設けられていてもよい。これにより、アウタハウジング及びシールド部材によって、端子及び電線をシールドすることができる。
【0016】
(6)(1)から(5)のいずれか1つのコネクタにおいて、前記インナハウジングの背面側に取付けられて、前記端子の抜けを抑制する第1リテーナ及び第2リテーナを備え、前記第1リテーナ及び前記第2リテーナは、互いに同じ形状に形成されて、それぞれが複数の電線挿通部を有し、前記第1リテーナの前記複数の電線挿通部にはそれぞれ電線が通され、前記第2リテーナの前記複数の電線挿通部のうち前記端子の挿入方向から観察されたときに前記凹部と重なる位置の電線挿通部には電線が通されていなくてもよい。これにより、リテーナの部品種類数の増加を抑制できる。
【0017】
(7)(6)のコネクタにおいて、前記電線挿通部に前記電線挿通部の内面から前記電線に向けて突出する複数のリブが設けられ、前記複数のリブは、前記電線の周方向に互いに間隔をあけつつ電線と接触してもよい。これにより、車両が振動しても、リテーナと電線とががたつきにくくなることによって、電線と端子との接続部ががたつきにくくなる。
【0018】
(8)(1)から(7)のいずれか1つのコネクタにおいて、固定対象に固定するためのブラケットを備え、前記ブラケットは、前記ボルトによって前記アウタハウジングに取付けられていてもよい。これにより、ブラケットをコネクタに取付ける部材が別に設けられずに済み、部品点数増加が抑制される。また、ボルトによって、インナハウジング、アウタハウジング及びブラケットの固定を、一度に行うことができるため、コネクタの組立工数の増加を抑制できる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかるコネクタについて説明する。図1は実施形態1にかかるコネクタ10を示す斜視図である。図2は実施形態1にかかるコネクタ10及びこれと嵌合する相手側コネクタ90を示す平面図である。図3は実施形態1にかかるコネクタ10を示す側面図である。図4は実施形態1にかかるコネクタ10及びこれと嵌合する相手側コネクタ90を示す正面図である。図5は実施形態1にかかるコネクタ10を示す背面図である。図6図2のVI-VI線に沿った断面図である。図7図2のVII-VII線に沿った断面図である。
【0021】
コネクタ10は、複数の端子12とインナハウジング20とアウタハウジング30とボルトB1とを備える。インナハウジング20は複数の端子12を保持する。アウタハウジング30は、インナハウジング20を覆う。ボルトB1は、インナハウジング20とアウタハウジング30とを締結する。本例のコネクタ10は、電線80の端部に設けられる。
【0022】
本開示において、図2に示されるように、互いに直交するX方向、Y方向及びZ方向のうち、Y方向がコネクタ10及び相手側コネクタ90の嵌合方向に平行な方向とされる。Y方向は、アウタハウジング30へのインナハウジング20の挿入方向でもあり、インナハウジング20への端子12の挿入方向でもある。インナハウジング20のうち相手側コネクタ90と嵌合する面(Y方向正の側を向く面)が前面とされ、その反対側の面(Y方向負の側を向く面)が背面とされる。コネクタ10における各部について取付状態にない場合でも、取付状態とされた場合のX方向、Y方向及びZ方向に対応する方向を用いて説明される。
【0023】
各端子12は電線80と接続されている。また各端子12は、相手側コネクタ90の端子92と接続される。端子12は、電線接続部14と相手側接続部16とを有する。例えば、端子12は、金属板が曲げ加工されるなどして形成される。電線接続部14は、電線80と接続される部分である。電線80は、芯線82と被覆層84とを有する被覆電線80である。電線80の端部において、被覆層84の一部が剥がされて芯線82が露出する。ここでは電線接続部14として、溶接部14が設けられている。溶接部14は、芯線82と溶接される。これにより、溶接部14と芯線82とが電気的に接続されつつ固定される。ここでは端子には被覆圧着部15が設けられる。被覆圧着部15は、電線80のうち被覆層84のある部分に圧着される。これにより、端子12と電線80との保持力が高まる。なお、電線接続部14は溶接部14である必要は無く、例えば、芯線圧着部などであってもよい。また被覆圧着部15は省略されていてもよい。相手側接続部16は、相手側コネクタ90の端子92と接続される部分である。ここでは、相手側接続部16は、タブ状の雄端子形状に形成され、相手側の端子92が筒状の雌端子形状に形成されている。相手側接続部16は、筒状の雌端子形状に形成されていてもよい。
【0024】
インナハウジング20には、複数のキャビティ22及びボルト用凹部24が形成されている。複数のキャビティ22が複数の端子12それぞれを収容する。複数の端子12は、所定のキャビティ22に収容される。ボルト用凹部24は、ボルトB1の先端部を収容する。インナハウジング20は、例えば、絶縁性を有する樹脂を材料として形成される。インナハウジング20は、例えば、射出成形品である。
【0025】
複数のキャビティ22とボルト用凹部24とは互いに仕切られている。ボルト用凹部24は、底のある穴である。ボルト用凹部24はインナハウジング20の上面にのみ開口する。ボルト用凹部24の内面には、孔が形成されていない。
【0026】
アウタハウジング30は、両端が開口する筒状に形成されている。一端部の開口からアウタハウジング30の内部にインナハウジング20が挿入される。アウタハウジング30には、ボルトB1が貫通する挿通孔32が形成されている。ここではアウタハウジング30は金属製である。アウタハウジング30は、シールド性を有する。アウタハウジング30は、樹脂製であってもよい。
【0027】
ボルトB1は、アウタハウジング30の外側からアウタハウジング30を貫通しつつインナハウジング20まで挿入される。ここではボルトB1はZ方向に挿入される。ボルトB1は、X方向に挿入されるように構成されていてもよい。ボルトB1は、XZ平面において、X方向及びZ方向と交差する方向に挿入されてもよい。ボルトB1の中間部は、アウタハウジング30の挿通孔32に収まっている。ボルトB1の先端部は、ボルト用凹部24に収まっている。X方向に沿ったボルトB1の中心軸は、ボルト用凹部24とZ方向に重なるキャビティ22のX方向に沿った中心とはずれている。X方向に沿ったボルトB1の中心軸は、当該キャビティ22のX方向に沿った中心よりも、X方向に沿ってインナハウジング20の中心側に寄っている。これにより、X方向に沿ってなるべくインナハウジング20の中心側に、ボルトB1が締結されることができる。
【0028】
ボルト用凹部24には、ボルトB1の締結用のナットN1が設けられている。例えば、インナハウジング20がナットN1をインサート部品とせずに成形されて、ナットN1がボルト用凹部24に圧入されていてもよい。例えば、インナハウジング20がナットN1をインサート部品としてインサート成形されていてもよい。
【0029】
複数の端子12及び複数のキャビティ22の組は、複数段、複数列に分かれて配置される。なお、複数の端子12及び複数のキャビティ22の組が複数段に分かれて配置されるとは、少なくとも1つの列において、端子12及びキャビティ22の組が複数段に分かれて配置されていればよい。同様に、複数の端子12及び複数のキャビティ22の組が複数列に分かれて配置されるとは、少なくとも1つの段において、端子12及びキャビティ22の組が複数列に分かれて配置されていればよい。ここではZ方向に沿って端子12及びキャビティ22の組が並ぶ部分が段とされ、X方向に沿って端子12及びキャビティ22の組が並ぶ部分が列とされる。ボルトB1の挿入方向(Z方向)から観察されたときに、複数のキャビティ22のうち一部のキャビティ22がボルト用凹部24と重なる。ボルトB1の挿入方向(Z方向)及び端子12の挿入方向(Y方向)の2つ方向に直交する方向(X方向)から観察されたときに、複数のキャビティ22のうち他の一部のキャビティ22がボルト用凹部24と重なる。
【0030】
ここでは、3組の端子12及びキャビティ22が設けられる。端子12の挿入方向(Y方向)から観察されたときに、3つのキャビティ22がL字状に並ぶ。インナハウジング20のうち3つのキャビティ22のない空いた一角にボルト用凹部24が設けられる。より詳細には、3組の端子12及びキャビティ22は、第1段及び第2段に分かれて配置されている。3組の端子12及びキャビティ22のうち2組の端子12及びキャビティ22が、第1段において第1列及び第2列に分かれて配置されている。3組の端子12及びキャビティ22のうち1組の端子12及びキャビティ22が、第2段において第1列に配置される。第2段の第2列には端子12及びキャビティ22の組が配置されていない。第2段の第2列に対応する位置にボルト用凹部24が形成される。
【0031】
インナハウジング20のうち端子12及びキャビティ22の組がない空いた一角には、肉抜き凹部25も形成される。肉抜き凹部25は、インナハウジング20の前面及び背面のそれぞれからボルト用凹部24に向けて凹む。肉抜き凹部25は有底穴であることによって、肉抜き凹部25とボルト用凹部24との間も仕切られている。
【0032】
ボルト用凹部24の背面側に、アウタハウジング30へのインナハウジング20の所定量以上の挿入を規制する挿入規制部が設けられている。挿入規制部は、アウタハウジング30に生じる段差部34と、インナハウジング20のフランジ部28とによって構成されている。段差部34は、アウタハウジング30のうち挿通孔32が設けられる部分が、それよりも背面側の部分よりも小さく形成されることによって生じる。フランジ部28は、インナハウジング20のうちボルト用凹部24が設けられる部分よりも背面側の部分が、ボルト用凹部24が設けられる部分よりも外周側に突出して形成されている。段差部34のうちY方向負の側を向く面と、フランジ部28のうちY方向正の側を向く面とが接触して、アウタハウジング30へのインナハウジング20の所定量以上の挿入が規制されている。フランジ部28とボルト用凹部24とがY方向に近い位置に設けられることによって、ボルト用凹部24と挿通孔32とが、Y方向に高精度に位置決めできる。
【0033】
またインナハウジング20とアウタハウジング30とは、ボルトB1が締結される前の状態で、係止凸部21及び係止凹部31によって、互いに係止することができる。これにより、ボルトB1の締結作業が行いやすい。係止凸部21はインナハウジング20の外面に設けられる。係止凹部31はアウタハウジング30に貫通孔状に形成される。もっとも、係止凸部21及び係止凹部31は設けられていなくてもよい。
【0034】
本例のコネクタ10は、シール部材40とシールド部材50と取付部材52とリテーナ60とブラケット70とをさらに備える。なお、シール部材40、シールド部材50、取付部材52、リテーナ60及びブラケット70は一部の図にのみ記載されて、他の一部の図では省略されている。
【0035】
シール部材40は、図6に示されている。シール部材40は、インナハウジング20の外面とアウタハウジング30の内面との間に設けられている。シール部材40は、例えば、エラストマなどの弾性材料によってリング状に形成される。シール部材40は例えばゴムリングである。シール部材40は、インナハウジング20の外面に装着される。シール部材40は、インナハウジング20の外面よりも外側に突出している。シール部材40は、インナハウジング20の外面とアウタハウジング30の内面との間で潰されて、圧縮変形している。
【0036】
インナハウジング20の外面にはY方向に平行な軸回りに沿って環状の溝29が形成される。当該溝29にシール部材40が装着されることによって、Y方向に沿ったシール部材40の位置ずれが抑制される。本例では、インナハウジング20の外面にシール部材40が装着された状態で、シール部材40付きのインナハウジング20がアウタハウジング30に挿入される。この際、シール部材40とアウタハウジング30との間にY方向に沿った摩擦力が生じても、シール部材40が溝29に収まっていることによって、位置ずれが抑制される。
【0037】
溝29は、端子12の挿入方向に沿って、ボルト用凹部24よりもインナハウジング20の前面側に設けられている。従って、ボルト用凹部24は、端子12の挿入方向に沿って、シール部材40よりもインナハウジング20の背面側に設けられている。
【0038】
シールド部材50及び取付部材52は図6に記載されている。シールド部材50は、インナハウジング20の背面から延び出る電線80を覆う。シールド部材50の一端部はアウタハウジング30に被さっている。シールド部材50は、例えば、金属製の複数の素線が筒状に編み込まれた金属編組である。筒状の金属編組は、筒の大きさが変わるような変形が容易である。金属編組は、電線80の曲げに追従可能な柔軟性を有する。
【0039】
取付部材52は、シールド部材50をアウタハウジング30に電気的に接続しつつ取付ける。取付部材52が、端子12の挿入方向に沿って、ボルト用凹部24よりもインナハウジング20の背面側に設けられている。取付部材52は、アウタハウジング30の端部に取付けられている。取付部材52は、カシメ部材である。取付部材52は、シールド部材50がアウタハウジング30に被さる部分の周りにカシメられている。シールド部材50は、アウタハウジング30と取付部材52との間に挟まれる。取付部材52は、シールド部材50をアウタハウジング30に固定する。取付部材52は、シールド部材50とアウタハウジング30とを電気的に接続している。
【0040】
取付部材52は、リング部54と、突出部56とを有する。リング部54は、カシメられる部材(ここではシールド部材50)の周りに密着する。リング部54は、アウタハウジング30との間にシールド部材50を挟んで保持する。突出部56は、リング部54の周方向に沿った一部が外周側に突出する部分である。例えば、取付部材52は、アウタハウジング30よりも大きいリング部54を有する金属製のリング状部材が、リング部54及び突出部56を有するようにカシメ変形されて形成される。取付部材52がカシメられる際、リング部54の径が小さくなるように突出部56が塑性変形される。
【0041】
リテーナ60は、図1図5及び図6に記載されている。リテーナ60については、これらの図に加えて、図8を参照しつつ説明する。図8はリテーナ60及びインナハウジング20を示す分解背面図である。
【0042】
リテーナ60は、インナハウジング20の背面側に取付けられて、端子12の抜けを抑制する。リテーナ60として、第1リテーナ60A及び第2リテーナ60Bが設けられている。第1リテーナ60A及び第2リテーナ60Bは、互いに同じ形状に形成されている。各リテーナ60は、複数(ここでは2つ)の電線挿通部62を有する。第1リテーナ60Aの2つの電線挿通部62にはそれぞれ電線80が通される。第2リテーナ60Bにおける2つの電線挿通部62のうち1つの電線挿通部62には電線80が通され、他の一つの電線挿通部62には電線80が通されていない。電線80が通されていない電線挿通部62は、端子12の挿入方向(Y方向)から観察されたときにボルト用凹部24と重なる位置に配置される。
【0043】
電線挿通部62に複数(ここでは6つ)のリブ64が設けられている。各リブ64は、電線挿通部62の内面から電線80に向けて突出する。6つのリブ64は、電線80の周方向に互いに間隔をあけつつ電線80と接触する。これにより、電線80は、リテーナ60にしっかり保持される。
【0044】
本例のリテーナ60は、2つの半割体を有する。各半割体は、2つの電線挿通部62が半割された部分を有する。2つの半割体が合わさってリテーナ60とされる。これにより、電線80にリテーナ60を簡易に装着できる。2つの半割体の一端部はヒンジ66で開閉可能に連結されている。
【0045】
電線挿通部62の外面には、複数の突起68、69が設けられている。1つの突起68は、リテーナ60の向きを示す位置決め突起68である。4つの突起69は、リテーナ60をインナハウジング20に係止させる係止突起69である。
【0046】
インナハウジング20の背面には、リテーナ60を保持するリテーナ用凹部26が形成されている。リテーナ用凹部26は、複数の電線挿通部62及び1つの突起68に応じた形状に形成されている。リテーナ用凹部26は、2つのキャビティ22の開口部と、2つのキャビティ22の開口部の間が凹んだ部分と、1つのキャビティ22の周りが部分的に凹んだ部分とによって構成される。インナハウジング20の背面よりも内側には、突起69と係止する係止凹部27が形成されている。突起69が係止凹部27に係止して、リテーナ60がインナハウジング20の背面に取付けられる。リテーナ60がリテーナ用凹部26に収まりつつ突起69が係止凹部27に係止して、半割体が開くことが抑制される。
【0047】
図6に示すように、電線80にはゴム栓86が装着されている。ゴム栓86は電線80のうち端子12の挿入方向(Y方向)に沿って端子12とリテーナ60との間に装着される。インナハウジング20には、キャビティ22の内面から突出し、ゴム栓86の前面に当たる壁が設けられる。ゴム栓86の背面はリテーナ60に当たる。これらより、ゴム栓86が端子12の挿入方向(Y方向)に位置決めされる。
【0048】
ブラケット70は、図1から図4に記載されている。ブラケット70は、コネクタ10を固定対象FTに固定するための部材である。固定対象FTは例えば、コネクタ10の周辺に配置される筐体又はパネルなどである。ブラケット70は、金属製であってもよいし、樹脂製であってもよい。固定対象FTとアウタハウジング30とを電気的に接続する場合、ブラケット70は金属製であるとよい。
【0049】
ブラケット70は、第1固定部72と、第2固定部74とを有する。第1固定部72はコネクタ10に固定される部分である。第2固定部74は固定対象FTに固定される部分である。ブラケット70は、ボルトB1によってアウタハウジング30に取付けられている。第1固定部72には、ボルトB1を挿通可能な貫通孔が形成されている。ここでは、ブラケット70は、ボルトB1及びナットN1とは別のボルトB2及びナットN2によって固定対象FTに取付けられている。第2固定部74には、ボルトB2を挿通可能な貫通孔が形成されている。ブラケット70は板材が曲がった形状を有している。第1固定部72は、コネクタ10の外面に沿うU字状に形成されている。第2固定部74は、第1固定部72の両端部からそれぞれ外側(ここではX方向に沿って外側)に突出する。もっとも、ブラケット70は、ボルトB2以外の態様で固定対象FTに固定されてもよい。
【0050】
図2及び図4を参照しつつ、コネクタ装置100及び相手側コネクタ90について説明する。
【0051】
コネクタ装置100は、コネクタ10及び相手側コネクタ90を備える。コネクタ10及び相手側コネクタ90は互いに嵌合して電気的に接続される。本例では、相手側コネクタ90も相手側電線98の端部に設けられる。従って、コネクタ装置100は、電線80、98同士を接続する。コネクタ装置100は、いわゆるワイヤトゥワイヤのコネクタ装置である。相手側コネクタ90のハウジング94には、複数のキャビティ96が形成されている。複数のキャビティ96の配列は、コネクタ10における複数のキャビティ22の配列と対応する。より詳細には、図4に示すように、コネクタ10の嵌合面(前面)及び相手側コネクタ90の嵌合面(前面)が観察されたときに、コネクタ10のキャビティ22の配列と、相手側コネクタ90のキャビティ96の配列とは線対称となる。相手側コネクタ90のハウジング94において、コネクタ10のボルト用凹部24に対応する部分にキャビティ96が形成されていない。
【0052】
<効果等>
以上のように構成されたコネクタ10によると、ボルトB1によって、インナハウジング20とアウタハウジング30とをしっかり固定できる。また複数のキャビティ22とボルト用凹部24とが互いに仕切られているため、ボルトB1と端子12とが短絡することが抑制される。
【0053】
また、複数の端子12及び複数のキャビティ22の組が、複数段、複数列に分かれて配置されることにより、インナハウジング20が一方に長くなることが抑制される。また、凹部が、キャビティ22と重なるように配置されることによって、ボルトB1分のスペースを設けることによるコネクタ10の大型化が抑制される。
【0054】
端子12が3つ設けられており、端子12の挿入方向から観察されたときに、複数のキャビティ22がL字状に並び、かつ、インナハウジング20のうち複数のキャビティ22のない空いた一角にボルト用凹部24が設けられる。これにより、インナハウジング20に無駄なスペースが生じにくくなり、コネクタ10の大型化が抑制される。
【0055】
また、インナハウジング20の外面と前記アウタハウジング30の内面との間に設けられたシール部材40を備え、ボルト用凹部24は、端子12の挿入方向に沿って、シール部材40よりもインナハウジング20の背面側に設けられている。これにより、ボルト用凹部24よりも前面側で、インナハウジング20の外面とアウタハウジング30の内面との間がシールされることができる。
【0056】
また、アウタハウジング30は金属製であり、インナハウジング20の背面から延び出る電線80を覆うシールド部材50と、シールド部材50をアウタハウジング30に電気的に接続しつつ取付ける取付部材52とを備え、取付部材52が、端子12の挿入方向に沿って、ボルト用凹部24よりもインナハウジング20の背面側に設けられている。これにより、アウタハウジング30及びシールド部材50によって、端子12及び電線80をシールドすることができる。
【0057】
また、第1リテーナ60A及び第2リテーナ60Bは、互いに同じ形状に形成されており、第1リテーナ60Aの複数の電線挿通部62にはそれぞれ電線80が通され、第2リテーナ60Bの複数の電線挿通部62のうち端子12の挿入方向から観察されたときに凹部と重なる位置の電線挿通部62には電線80が通されていない。これにより、リテーナ60の部品種類数の増加を抑制できる。
【0058】
また、電線挿通部62に電線挿通部62の内面から電線80に向けて突出する複数のリブ64が設けられ、複数のリブ64は、電線80の周方向に間隔をあけて接触する。これにより、車両が振動しても、リテーナ60と電線80とががたつきにくくなることによって、電線80と端子12との接続部ががたつきにくくなる。
【0059】
また、コネクタ10を固定対象FTに固定するためのブラケット70を備え、ブラケット70は、ボルトB1によってアウタハウジング30に取付けられている。これにより、ブラケット70をコネクタ10に取付ける部材が別に設けられずに済み、部品点数増加が抑制される。また、ボルトB1によって、インナハウジング20、アウタハウジング30及びブラケット70の固定を、一度に行うことができるため、コネクタ10の組立工数の増加を抑制できる。
【0060】
[変形例]
これまで、複数の端子12は、複数段、複数列に分かれて配置されるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。複数の端子12は、一段、複数列に分かれて配置されてもよい。また、複数の端子12が、複数段、複数列に分かれて配置される場合でも、X方向及びZ方向のそれぞれから観察されたときに、ボルト用凹部24と一部のキャビティ22とが重なることは必須の構成ではない。X方向又はZ方向から観察されたときに、ボルト用凹部24がキャビティ22と重なっていなくてもよい。
【0061】
またこれまで、端子12及びキャビティ22が3組設けられており、Y方向から観察されたときに、複数のキャビティ22がL字状に並び、かつ、インナハウジング20のうち複数のキャビティ22のない空いた一角にボルト用凹部24が設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。端子12及びキャビティ22は4組以上設けられてもよい。例えば、m段、n列(m、nは2以上の整数)に区画された箇所のうちの最も外側の1箇所にボルト用凹部24が形成され、他の箇所に端子12及びキャビティ22が配置されてもよい。
【0062】
またこれまで、コネクタ10がシール部材40を備えるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。コネクタ10は、シール部材40を備えていなくてもよい。また、コネクタ10がシール部材40を備える場合でも、ボルト用凹部24が、端子12の挿入方向(Y方向)に沿って、シール部材40よりもインナハウジング20の背面側に設けられていることは必須の構成ではない。例えば、シール部材40が、端子12の挿入方向(Y方向)に沿って、ボルト用凹部24よりもインナハウジング20の背面側に設けられていてもよい。
【0063】
またこれまで、コネクタ10がシールド部材50及び取付部材52を備えるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。コネクタ10は、シールド部材50及び取付部材52を備えていなくてもよい。また、コネクタ10がシールド部材50及び取付部材52を備える場合でも、取付部材52がボルト用凹部24よりも端子12の挿入方向(Y方向)に沿って背面側に位置することは必須の構成ではない。ボルト用凹部24が取付部材52よりも端子12の挿入方向(Y方向)に沿って背面側に位置してもよい。ボルト用凹部24と取付部材52とが端子12の挿入方向(Y方向)に沿って同じ位置にあってもよい。
【0064】
またこれまで、コネクタ10がリテーナ60を備えるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。コネクタ10は、リテーナ60を備えていなくてもよい。また、コネクタ10がリテーナ60を備える場合でも、互いに同じ形状の第1リテーナ60A及び第2リテーナ60Bが設けられることは必須の構成ではない。例えば、第2リテーナ60Bに代えて、電線挿通部62が1つのみのリテーナが設けられてもよい。また例えば、複数の電線80のすべてが1つのリテーナに通されてもよい。また、コネクタ10がリテーナ60を備える場合でも、電線挿通部62に複数のリブ64が設けられることは必須の構成ではない。電線挿通部62において、複数のリブ64が省略されていてもよい。
【0065】
またこれまで、コネクタ10がブラケット70を備えるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。コネクタ10は、ブラケット70を備えていなくてもよい。また、コネクタ10がブラケット70を備える場合でも、ブラケット70がボルトB1によってアウタハウジング30に取付けられていることは必須の構成ではない。ブラケット70は、ボルトB1とは、別の固定手段によって、アウタハウジング30に取付けられていてもよい。またブラケット70の第2固定部74に相当する部分、つまり固定対象FTへ固定される部分が、予めアウタハウジング30の一部として設けられていてもよい。
【0066】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 コネクタ
12 端子
14 溶接部(電線接続部)
15 被覆圧着部
16 相手側接続部
20 インナハウジング
22 キャビティ
24 ボルト用凹部
25 肉抜き凹部
26 リテーナ用凹部
27 係止凹部
28 フランジ部
29 溝
30 アウタハウジング
32 挿通孔
34 段差部
40 シール部材
50 シールド部材
52 取付部材
54 リング部
56 突出部
60 リテーナ
60A 第1リテーナ
60B 第2リテーナ
62 電線挿通部
64 リブ
66 ヒンジ
68、69 突起
70 ブラケット
72 第1固定部
74 第2固定部
80 電線
82 芯線
84 被覆層
86 ゴム栓
90 相手側コネクタ
92 端子
94 ハウジング
96 キャビティ
98 相手側電線
100 コネクタ装置
FT 固定対象
B1、B2 ボルト
N1、N2 ナット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8