(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】管理装置、管理システム、管理方法および管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
G05B23/02 301Z
(21)【出願番号】P 2021058543
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 健太
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-150245(JP,A)
【文献】特開2001-356801(JP,A)
【文献】特開2005-44109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
G05B 19/04-19/05
G05B 11/00-13/04
G06Q 50/02-50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、前記各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶する記憶部と、
前記プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから前記共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信する第1更新部と、
前記複数の試運転用機器のいずれかから前記個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記設定データの個別データを更新する第2更新部と、
を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記プラントに関する基本設計から最終検査段階の検査工程により前記設定データを生成して前記記憶部に格納する設定部をさらに備え、
前記第1更新部は、
前記設定データを用いた前記プラントの現地受け入れ検査段階において、前記共通データの更新要求を用いて、前記設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信し、
前記第2更新部は、
前記現地受け入れ検査段階において、前記個別データの更新結果を用いて、前記設定データの個別データを更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記設定部は、
前記共通データと、前記複数の試運転用機器それぞれが担当する各個別データとを組み合わせた個別設定データを、前記複数の試運転用機器それぞれに配備する、
ことを特徴とする請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記設定部は、
前記設定データをクラウドサービス上のデータベースに格納する、
ことを特徴とする請求項2に記載の管理装置。
【請求項5】
前記第1更新部は、
制御ループに関するクラスモジュール、工業単位定義テーブル、またはグラフィックリンクパーツに関わるデータを含む前記共通データへの更新要求に基づき、前記設定データを更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項6】
前記第2更新部は、
入力信号、出力信号、タグ名、タグ情報、グラフィック、アラーム設定、チューニングパラメータ、アプリケーションモジュール、連続制御用シーケンス、または制御ループに関するデータを含む前記個別データの更新結果に基づき、前記設定データを更新する、
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項7】
コンピュータが、
プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、前記各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶部に保持し、
前記プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから前記共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信し、
前記複数の試運転用機器のいずれかから前記個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記設定データの個別データを更新する、
処理を実行することを特徴とする管理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから、前記プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信し、
前記複数の試運転用機器のいずれかから、前記各機器の設定に対応した個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記個別データを更新する、
処理を実行させることを特徴とする管理プログラム。
【請求項9】
プラントの試運転を管理する管理装置と、前記プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器とを備える管理システムにおいて、
前記管理装置は、
前記プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、前記各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶する記憶部と、
前記複数の試運転用機器のいずれかから前記共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信する第1更新部と、
前記複数の試運転用機器のいずれかから前記個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記設定データの個別データを更新する第2更新部と、を備え、
前記複数の試運転用機器は、
前記共通データと、試運転を担当する各機器の個別データである部分個別データとを含む個別設定データを記憶する記憶部と、
前記各機器の試運転を実行し、前記共通データへの更新が発生した場合には、前記更新要求を前記管理装置に送信し、前記管理装置から前記更新後のデータを受信して前記共通データを更新する第3更新部と、
前記各機器の試運転を実行し、前記部分個別データへの更新が発生した場合には、前記記憶部に記憶される前記部分個別データを更新する第4更新部と、を備える、
ことを特徴とする管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置、管理システム、管理方法および管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プロセスプラント建設において、モジュラー工法(適宜、「モジュール工法」)が主流になりつつある。ここで、モジュール工法とは、プラント建設地(適宜、「サイト」)での作業を最小限にするために、サイトとは別のヤード(適宜、「モジュールヤード」)で鉄骨、配管、機器等を配置した、ひとまとまりの構成要素(適宜、「モジュール」)を建造し、サイトに移送し、各モジュールを接合することによりプラントを完成させる工法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記モジュール工法において、モジュールヤードにおけるコミッショニング(適宜、「試運転」)作業を効率的に実行することは難しい。なぜならば、上記技術では、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業において、複数のマスターデータベース(適宜、「メインデータベース」)が必要となり、データベースを1つに統合するためのイコライズ作業に工数がかかるからである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る管理装置は、プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、前記各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶する記憶部と、前記プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから前記共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信する第1更新部と、前記複数の試運転用機器のいずれかから前記個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記設定データの個別データを更新する第2更新部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る管理方法は、コンピュータが、プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、前記各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶部に保持し、前記プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから前記共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信し、前記複数の試運転用機器のいずれかから前記個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記設定データの個別データを更新する、処理を実行することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る管理プログラムは、コンピュータに、プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから、前記プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信し、前記複数の試運転用機器のいずれかから、前記各機器の設定に対応した個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記個別データを更新する、処理を実行させることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る管理システムは、プラントの試運転を管理する管理装置と、前記プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器とを備える管理システムにおいて、前記管理装置は、前記プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、前記各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶する記憶部と、前記複数の試運転用機器のいずれかから前記共通データの更新要求を受信した場合には、前記更新要求を用いて、前記設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを前記複数の試運転用機器それぞれに送信する第1更新部と、前記複数の試運転用機器のいずれかから前記個別データの更新結果を受信した場合には、前記更新結果を用いて、前記設定データの個別データを更新する第2更新部と、を備え、前記複数の試運転用機器は、前記共通データと、試運転を担当する各機器の個別データである部分個別データとを含む個別設定データを記憶する記憶部と、前記各機器の試運転を実行し、前記共通データへの更新が発生した場合には、前記更新要求を前記管理装置に送信し、前記管理装置から前記更新後のデータを受信して前記共通データを更新する第3更新部と、前記各機器の試運転を実行し、前記部分個別データへの更新が発生した場合には、前記記憶部に記憶される前記部分個別データを更新する第4更新部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、マスターデータベースを一元管理し、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を効率的に実行することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るデータベース管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】従来のデータベース管理処理の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係るデータベース管理処理の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るデータベース管理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る共通データの更新処理の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る個別データの更新処理の一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るデータベース管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る共通データの更新処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【
図9】実施形態に係る個別データの更新処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係るデータベース管理装置(適宜、管理装置)、データベース管理システム(適宜、管理システム)、データベース管理方法(適宜、管理方法)およびデータベース管理プログラム(適宜、管理プログラム)の発明を実施するための形態(適宜、実施形態)を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態〕
以下に、本実施形態に係るデータベース管理システムの構成、データベース管理処理、設定データの更新処理、データベース管理処理の流れ、設定データの更新処理の流れを順に説明し、最後に本実施形態の効果を説明する。
【0013】
[システムの構成]
図1を用いて、本実施形態に係るデータベース管理システム(適宜、本システム)100の構成を詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係るデータベース管理システムの構成例を示す図である。
【0014】
本システム100では、モジュール工法を用いたプラントの建設およびプラントの稼働に向けて、コミッショニングオフィス、複数のモジュールヤードおよびサイト(プラント建設地)において、以下のように各種データベースの処理が行われる。
【0015】
第1に、コミッショニングオフィスでの処理について説明する。ここで、コミッショニングオフィスとは、コミッショニング(試運転)作業を管理する場所である。コミッショニングオフィスは、例えば、プラント内のオペレータの管理センター等であるが、特に限定されない。
【0016】
まず、コミッショニングオフィスでは、FAT(Factory Acceptance Test)システムによる検査が行われる。ここで、FATシステムとは、コミッショニング作業を行う前の機能検査や工場出荷検査等を含むプラントに関する基本設計から最終検査段階の検査工程に該当する社内検査システムである。次に、コミッショニングオフィスでは、FATシステムの検査済みDB20Aは、開発システムの管理用DB20Bとして設定される。ここで、開発システムとは、後述のサイトシステムに供するデータベースを管理するシステムである。
【0017】
第2に、モジュールヤードでの処理について説明する。ここで、モジュールヤードとは、後述のサイトシステムに供する機器の試運転を、プラント内での処理や作業が共通する機器ごとに行う場所である。モジュールヤードは、プロセス機器の試運転を行う場所であるが、特に限定されない。
【0018】
まず、モジュールヤードでは、複数のモジュールヤードにおけるコミッショニングシステムごとに、FATシステムによる検査済みDB20Aから、試運転用DB22が生成される。ここで、コミッショニングシステムとは、コミッショニング作業を実行するシステムである。また、試運転用DB22は、プラントに含まれる各機器の設定に共通するプロジェクト共通データ(適宜、「共通データ」)と、各機器の設定に対応したモジュールヤード個別データ(適宜、「個別データ」)とを含む設定データを記憶しているデータベースである。次に、モジュールヤードでは、コミッショニングシステムごとにコミッショニング作業が行われ、各モジュールヤードの試運転用DB22が最適化される。そして、モジュールヤードごとに最適化された試運転用DB22をもとに、開発システムの管理用DB20Bがイコライズされる。
【0019】
第3に、サイトでの処理について説明する。まず、サイトでは、開発システムの管理用DB20Bをもとに、サイトにおけるサイトシステムを起動する際に必要なサイト用DB20Cが設定される。ここで、サイトシステムとは、実際のプラント内の処理および管理を実行するシステムであり、例えば、SAT(Site Acceptance Test:現地受け入れ検査)を行うシステム等が該当する。そして、サイトでは、設定されたサイト用DB20Cは、定期的にイコライズされた開発システムの管理用DB20Bの共通データ、個別データが統合される。
【0020】
図1に示す上述した本システム100は、データベース管理装置10、各種のメインデータベース20(20A、20B、20C)、試運転用DB22(22-1、22-2、・・・、22-n)、複数の試運転用機器30A(30A-1、30A-2、・・・、30A-n)、およびサイト用機器40Aを有する。ここで、データベース管理装置10とメインデータベース20と複数の試運転用機器30Aとサイト用機器40Aとは、図示しない所定の通信網を介して、有線または無線により通信可能に接続される。なお、
図1に示したデータベース管理システム100には、複数台のデータベース管理装置10や、複数台のサイト用機器40Aが含まれてもよい。
【0021】
なお、各種のメインデータベース20、試運転用DB22において、「Com」と記載された部分は、共通データを記憶しているデータベースであることを表わし、「DB1」、「DB2」、・・・、「DBn」は、それぞれコミッショニングシステム1、2、・・・、nにおける設定に対応した個別データを記憶しているデータベースであることを表わす。以降、同様の構成であるデータベースについては、説明を省略する。
【0022】
データベース管理装置10は、コミッショニングオフィスにおいて使用される装置である。また、データベース管理装置10は、FATシステム内の検査済みDB20Aおよび開発システム内の管理用DB20Bと接続される。なお、
図1では、FATシステムと開発システムを実行するコミッショニングオフィスは同一のオフィスであるが、特に限定されない。FATシステムと開発システムは異なるオフィスであってもよいし、各システムはクラウド方式で実行することもできる。
【0023】
試運転用機器30Aは、モジュールヤードにおいて使用される機器である。また、試運転用機器30Aは、コミッショニングシステム内の試運転用DB22と接続される。なお、試運転用機器30Aは、プラント内で各処理、各作業を実行する機器の他、PCN(Process Control Network)や制御バスを介して相互に接続されるENG(Engineering Station)、HIS(Human Interface Station)、FCS(Field Control Station)、SCS(Safety Control Station)等も含まれる。
【0024】
サイト用機器40Aは、実際のプラント内の処理を行うサイトにおいて使用される機器である。また、サイト用機器40Aは、サイトシステム内のサイト用DB20Cと接続される。なお、サイト用機器40Aは、プラント内で各処理、各作業を実行する機器の他、PCNや制御バスを介して相互に接続される複数のENG、HIS、FCS、SCS等も含まれる。
【0025】
[データベース管理処理]
図2、
図3を用いて、従来のデータベース管理処理と本実施形態に係るデータベース管理処理とを対比して説明する。
図2は、従来のデータベース管理処理の一例を示す図である。
図3は、実施形態に係るデータベース管理処理の一例を示す図である。
【0026】
(従来のデータベース管理処理)
図2を用いて、従来のデータベース管理処理を説明する。まず、コミッショニングオフィスでは、データベース管理装置は、FATシステムの検査済みDB20Aを、複数のLCR(Local Control Room)におけるコミッショニングシステムごとに、マスターデータベースとしてコピーする。次に、LCRでは、試運転用機器30Bは、コミッショニングシステムごとにコミッショニング作業を行い、各LCRの試運転用DB20Dを最適化する。ここで、LCRとは、プラント各エリアに配置され、制御機器が納入された操作監視を行う場所である。そして、サイトでは、データベース管理装置は、LCRごとに最適化されたマスターデータベース20Dをもとに、サイトシステムのマスターデータベース20Cをイコライズする。
【0027】
上記の従来のデータベース管理処理では、FAT後、マスターデータベースがエンジニアにより、現場、すなわち各LCRでインストールされ、LCRのデータベースが全てマスターデータベースとなる。また、LCR間のネットワークが未構築で複数のLCRでコミッショニング作業が始まるときは、マスターデータベースをその分コピーし、LCRごとの変更をLCR間でイコライズする際は、手動で実施されている。したがって、従来のデータベース管理処理では、マスターデータベースが複数存在し、マスターデータベースを1つへ統合するとき、手動操作によるイコライズ作業が発生し、工数がかかり、手動操作によるヒューマンエラーのリスクがある。
【0028】
(本実施形態に係るデータベース管理処理)
図3を用いて、本実施形態に係るデータベース管理処理を説明する。まず、コミッショニングオフィスにおいて使用されるデータベース管理装置10は、FATシステムの検査済みDB20Aを、開発システムに転送し、管理用DB20Bとして設定する(ステップS1)。
図3では、FATシステムはコミッショニングオフィス1に所属し、開発システムはコミッショニングオフィス2に所属しているが、別々のコミッショニングオフィスに所属することに限定されず、FATシステムと開発システムとは、同一のコミッショニングオフィスに所属していてもよい。
【0029】
一方、FATシステムの検査済みDB20Aは、共通データとモジュールヤードのコミッショニングシステムで必要とされる個別データとを有するデータベース21(21-1、21-2、・・・、21-n)に分割される(ステップS2)。そして、データベース21は、モジュールヤードのコミッションシステムごとに試運転用DB22として設定される(ステップS3)。このとき、ステップS2、S3の処理は、データベース管理装置10や専用の機器によって行われてもよいし、オペレータによる操作によって行われてもよく、特に限定されない。
【0030】
次に、データベース管理装置10は、モジュールヤードのコミッションシステムごとに設定された試運転用DB22と、開発システムの管理用DB20Bをイコライズする(ステップS4)。具体的には、個別データについては、個々のモジュールヤードで更新(変更)されて、その更新結果が開発システムに通知されるが、共通データについては、個々のモジュールヤードでは更新されず、開発システム側で更新されたのち、開発システムから更新後のデータが各モジュールヤードに配信される。例えば、データベース管理装置10は、コミッショニングシステムにおいて使用されるいずれかの試運転用機器30Aから、共通データの変更要求があった場合には、当該変更要求に基づいて、試運転用DB22それぞれの共通データを変更する。一方、試運転用機器30Aから個別データの変更があった場合には、データベース管理装置10は、当該変更に基づいて、管理システムの管理用DB20Aを変更する。共通データおよび個別データの変更に関わる詳細な処理については、[設定データの更新処理]にて後述する。
【0031】
そして、データベース管理装置10は、ステップS4の処理でイコライズされた管理用DB20Bをサイトにおけるサイトシステムにサイト用DB20Cとして設定し、サイトシステムを起動させる(ステップS5)。また、データベース管理装置10は、管理用DB20Bの変更がある場合には、変更された共通データ、個別データをサイト用DB20Cに統合する(ステップS6)。さらに、データベース管理装置10は、ステップS6のデータの統合が終了していない場合には、共通データ、個別データをサイト用DB20Cに統合する処理を行う(ステップS7)。
【0032】
上述のステップS1~S7の処理を行うことにより、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を行う場合でも、マスターデータベースの一元管理を実行することができ、マスターデータベースが過去の情報に上書きされる先祖返りの防止、工数の削減、ヒューマンエラーの防止をすることが可能となる。
【0033】
[データベース管理システムの構成]
図4を用いて、本実施形態に係るデータベース管理装置10等の構成を詳細に説明する。
図4は、本実施形態に係るデータベース管理システムの構成例を示すブロック図である。
図4では、データベース管理装置10と、複数の試運転用機器30Aと、サイト用機器40Aとが、通信ネットワーク50を介して接続されている。
【0034】
(データベース管理装置10の構成)
データベース管理装置10は、入力部11、出力部12、通信部13、記憶部14および制御部15を有する。入力部11は、当該データベース管理装置10への各種情報の入力を司る。入力部11は、例えば、マウスやキーボード等で実現され、当該データベース管理装置10への設定情報等の入力を受け付ける。また、出力部12は、当該データベース管理装置10からの各種情報の出力を司る。出力部12は、例えば、ディスプレイ等で実現され、当該データベース管理装置10に記憶された設定情報等を出力する。
【0035】
通信部13は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部13は、各通信装置との間で、通信ネットワーク50を介してデータ通信を行う。また、通信部13は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0036】
記憶部14は、制御部15が動作する際に参照する各種情報や、制御部15が動作した際に取得した各種情報を記憶する。記憶部14は、プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、プラントに含まれる各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶する。なお、記憶部14は、共通データと個別データとを、異なる記憶領域に記憶してもよい。ここで、記憶部14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、
図4の例では、記憶部14は、データベース管理装置10の内部に設置されているが、データベース管理装置10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0037】
共通データは、モジュールヤード全般において、安全化、標準化のために必要なプラント設計データであり、例えば、クラスモジュール(代表的な制御ループ)、工業単位定義テーブル、グラフィックリンクパーツ等に関わるデータである。
【0038】
ここで、クラスモジュールは、代表的な制御ループであり、工業単位定義テーブルは、圧力、流量、温度等を定義する表であり、グラフィックリンクパーツは、監視画面上に表示するプラント、制御機器、配管等をグラフィックとして表現するための基礎パーツである。また、共通データは、上記のデータ以外の情報を含んでいてもよく、プラント個々に対応して任意に設定変更することができる。
【0039】
個別データは、各モジュールヤードにおいて、変更、追加、削除等が可能なプラント設計データであり、例えば、入力信号、出力信号、タグ名、タグ情報、グラフィック、アラーム設定、チューニングパラメータ、アプリケーションモジュール、連続制御用シーケンス、複雑な制御ループに関するデータである。
【0040】
ここで、入出力信号は、アナログ・デジタル入出力信号であり、タグ名・タグ情報は、各アナログ・デジタル入出力信号の名称、コメント等の情報であり、アラーム設定は、異常時にどのような条件でアラームを発報するかの設定であり、チューニングパラメータは、運転時の制御ループ挙動に関わる各種設定値の設定であり、アプリケーションモジュールは、クラスモジュールに対して実際の入出力信号を割り付けた制御ループであり、連続制御用シーケンスは、連続制御用のプログラミングであり、複雑な制御ループは、そのプラントで代表的でない、複雑な制御ループである。また、個別データは、上記のデータ以外の情報を含んでいてもよく、プラント個々に対応して任意に設定変更することができる。
【0041】
制御部15は、当該データベース管理装置10全体の制御を司る。制御部15は、設定部15a、受信部15b、第1更新部15cおよび第2更新部15dを有する。ここで、制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0042】
設定部15aは、プラントに関する基本設計から最終検査段階の検査工程により設定データを生成して記憶部14に格納する。例えば、設定部15aは、FATシステム稼働中に得られたデータより、共通データ、個別データを含む設定データを生成し、記憶部14に格納する。また、設定部15aは、共通データと、複数の試運転用機器それぞれが担当する各個別データとを組み合わせた個別設定データを、前記複数の試運転用機器それぞれに配備する。さらに、設定部15aは、設定データをクラウドサービス上のデータベースに格納する。
【0043】
受信部15bは、プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから共通データの更新要求を受信する。また、受信部15bは、プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから個別データの更新結果を受信する。さらに、受信部15bは、受信した共通データの更新要求を第1更新部15cに出力する。一方、受信部15bは、受信した個別データの更新結果を第2更新部15dに出力する。
【0044】
第1更新部15cは、プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器のいずれかから共通データの更新要求を受信した場合には、受信した更新要求を用いて、設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを複数の試運転用機器それぞれに送信する。例えば、第1更新部15cは、設定データを用いたプラントの現地受け入れ検査段階において、共通データの更新要求を用いて、設定データの共通データを更新するとともに、更新後の共通データを複数の試運転用機器それぞれに送信する。また、第1更新部15cは、クラスモジュール(代表的な制御ループ)、工業単位定義テーブル、グラフィックリンクパーツ等に関わるデータを含む共通データへの更新要求に基づき、設定データを更新する。
【0045】
第2更新部15dは、複数の試運転用機器のいずれかから個別データの更新結果を受信した場合には、受信した更新結果を用いて、設定データの個別データを更新する。例えば、第2更新部15dは、設定データを用いたプラントの現地受け入れ検査段階において、個別データの更新結果を用いて、設定データの個別データを更新する。また、第2更新部15dは、設定データの個別データとして、入力信号、出力信号、タグ名、タグ情報、グラフィック、アラーム設定、チューニングパラメータ、アプリケーションモジュール、連続制御用シーケンス、複雑な制御ループ等に関するデータを含む個別データの更新結果に基づき、設定データを更新する。
【0046】
(試運転用機器30Aの構成)
試運転用機器30Aは、図示しない記憶部、第3更新部および第4更新部を有する。試運転用機器30Aの記憶部は、共通データと、試運転を担当する各機器の個別データである部分個別データとを含む個別設定データを記憶する。例えば、当該記憶部は、クラスモジュール(代表的な制御ループ)、工業単位定義テーブル、グラフィックリンクパーツ等に関わるデータを含む共通データの他、試運転用機器30Aごとの入力信号、出力信号、タグ名、タグ情報、グラフィック、アラーム設定、チューニングパラメータ、アプリケーションモジュール、連続制御用シーケンス、複雑な制御ループ等に関するデータを含む部分個別データを記憶する。
【0047】
第3更新部は、各機器の試運転を実行し、共通データへの更新が発生した場合には、更新要求を管理装置10に送信し、管理装置10から更新後のデータを受信して共通データを更新する。また、第4更新部は、各機器の試運転を実行し、部分個別データへの更新が発生した場合には、試運転用機器30Aの記憶部に記憶される部分個別データを更新する。
【0048】
(サイト用機器40Aの構成)
サイト用機器40Aは、他の装置との間での各種データの送受信を司る送受信部(図示せず)と、記憶部(図示せず)に記憶された各種データの変更を反映する反映部(図示せず)、設定データ等を記憶する記憶部とを有する。
【0049】
[設定データの更新処理]
図5、
図6を用いて、本実施形態に係る設定データの更新処理を詳細に説明する。
図5は、実施形態に係る共通データの更新処理の一例を示す図である。
図6は、実施形態に係る個別データの更新処理の一例を示す図である。
【0050】
(共通データの更新処理)
図5を用いて、実施形態に係る共通データの更新処理の一例を説明する。まず、モジュールヤード1のコミッショニングシステム1において、試運転用DB22-1の共通データの変更要求が発生する(ステップS101)。このとき、試運転用機器30A-1は、共通データの変更要求を生成する。また、試運転用機器30Aは、変更要求とともに、変更を要求する箇所や内容を示したデータを生成する。なお、試運転用機器30Aは、試運転用DB22の共通データを直接変更することもできる。
【0051】
次に、試運転用機器30Aは、試運転用DB22の共通データの変更要求を、変更を要求する箇所や内容を示したデータとともに、開発システムのデータベース管理装置10に送信する(ステップS102)。なお、試運転用機器30Aは、試運転用DB22の共通データを変更した旨の通知をデータベース管理装置10に送信し、データベース管理装置10が変更後の共通データを取得するよう要求してもよい。
【0052】
続いて、コミッショニングオフィス2において、開発システム内のデータベース管理装置10は、変更後の共通データを生成し、管理用DB20Bの共通データを変更する(ステップS103)。このとき、データベース管理装置10は、複数の試運転用機器30Aから変更を要求する通知を受信した場合は、複数の試運転用DB22の共通データの変更を反映した共通データを生成する。
【0053】
そして、データベース管理装置10は、生成した共通データを試運転用機器30Aに配信し、全ての試運転用DB22の共通データを変更する(ステップS104)。また、データベース管理装置10は、変更要求を受信してから所定の期間経過後に、共通データを生成してもよい。
【0054】
図5では、共通データの変更を要求する試運転用機器30Aは、モジュールヤード1におけるコミッショニングシステム1の試運転用機器30A-1のみであるが、試運転用DB22-1の共通データのみならず、試運転用DB22-2、・・・、試運転用DB22-nの共通データも変更されることとなる。
【0055】
(個別データの更新処理)
図6を用いて、実施形態に係る個別データの更新処理の一例を説明する。まず、モジュールヤード1のコミッショニングシステム1の試運転用機器30A-1は、試運転用DB22-1の個別データを変更する(ステップS201)。このとき、試運転用機器30A-1は、変更後の個別データを生成し、生成した個別データを試運転用DB22-1に格納する。また、モジュールヤードnのコミッショニングシステムnの試運転用機器30A-nは、試運転用DB22-nの個別データを変更する(ステップS201)。このとき、試運転用機器30A-nは、変更後の個別データを生成し、生成した個別データを試運転用DB22-nに格納する。
【0056】
次に、試運転用機器30A-1は、変更後の個別データを、開発システムのデータベース管理装置10に送信する(ステップS202)。また、試運転用機器30A-nは、変更後の個別データを、開発システムのデータベース管理装置10に送信する(ステップS202)。そして、コミッショニングオフィス2において、開発システムのデータベース管理装置10は、受信した変更後の各個別データを管理用DB20Bに格納し、個別データの変更を反映する(ステップS203)。
【0057】
図6では、コミッショニングシステム1の試運転用DB22-1の個別データの変更、およびコミッショニングシステムnの試運転用DB22-nの個別データの変更が、管理用DB20Bに反映されることとなる。
【0058】
[データベース管理処理の流れ]
図7を用いて、本実施形態に係るデータベース管理処理の流れを詳細に説明する。
図7は、実施形態に係るデータベース管理処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0059】
まず、データベース管理装置10の設定部15aは、FATシステムの検査済みDB20Aを開発システムに転送し、管理用DB20Bを設定する(ステップS301)。このとき、設定部15aは、データベース管理装置10の記憶部14に管理用DB20Bを設定してもよいし、クラウドシステム上のデータベース等の記憶部14とは異なる記憶領域に管理用DB20Bを設定してもよい。
【0060】
次に、設定部15aは、検査済みDB20Aを共通データと、試運転用機器30A(30A-1、30A-2、・・・、30A-n)それぞれが担当する各個別データとに分割する(ステップS302)。また、設定部15aは、共通データと各個別データとを組み合わせた個別設定データ21-1、21-2、・・・、21-nを生成し、各モジュールヤード1、2、・・・、nにそれぞれ転送し、試運転用機器30Aに、対応する試運転用DB22(22-1、22-2、・・・、22-n)を配備する(ステップS303)。
【0061】
なお、上記のステップS302、S303の処理は、データベース管理装置10の設定部15aによる処理に限定されず、試運転用DB22を配備する専用の機器による処理であってもよいし、オペレータによる操作に基づいた処理であってもよい。また、上記のステップS302の処理において、モジュールヤードに属するコントローラ(FCS)をメインデータベースに保持し、残りの機器(FCS/HIS/UGS(Unified Gateway Station)/Exa OPC(Open Platform Communications)等)をデータベースから削除する処理がなされるが、特に限定されない。
【0062】
続いて、第1更新部15cと第2更新部15dによる処理が実行され、開発システムのデータベースとモジュールヤードのデータベースがイコライズされる(ステップS304)。このとき、第1更新部15cは、モジュールヤードの試運転用DB22の共通データの更新要求をもとに、開発システムの管理用DB20Bの共通データを更新し、更新後の共通データを試運転用機器30Aそれぞれに送信する。また、第2更新部15dは、試運転用機器30Aの更新結果をもとに、個別データを更新する。なお、第2更新部15dは、コミッショニング作業や全体的なシステム検証に必要な時間が経過すると、個別データを更新する。
【0063】
そして、設定部15aは、開発システムの管理用DB20Bをサイトシステムに転送し、サイト用DB20Cを設定し、サイトシステムを起動する(ステップS305)。このとき、最初にコミッショニング作業が終了したときに、開発システムの管理用DB20Bをコピーし、サイト用DB20Cを設定してもよい。
【0064】
さらに、設定部15aは、開発システムの管理用DB20Bをサイトシステムのサイト用DB20Cに統合(マージ)する(ステップS306)。このとき、設定部15aは、開発システムの管理用DB20Bの設定データを同時に統合してもよいし、ステップS304の処理によるイコライズが終了している設定データを優先して統合してもよい。また、設定部15aは、チェックシートを用いてシステム検証チェックを行い、チェックを通過した後に、管理用DB20Bをサイト用DB20Cに統合してもよい。
【0065】
最後に、設定部15aは、全ての管理用DB20Bの設定データがサイト用DB20Cに統合されている場合(ステップS307:Yes)、処理を終了する。一方、設定部15aは、管理用DB20Bの設定データのうちサイト用DB20Cに統合されていない設定データがある場合(ステップS307:No)、ステップS306の処理に移行し、設定データの統合を行う。
【0066】
[設定データの更新処理の流れ]
図8、9を用いて、本実施形態に係る設定データの更新処理の流れを詳細に説明する。
図8は、実施形態に係る共通データの更新処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図9は、実施形態に係る個別データの更新処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0067】
(共通データの更新処理の流れ)
図8を用いて、実施形態に係る共通データの更新処理の流れの一例を説明する。まず、モジュールヤードにおいて、コミッショニングシステム内の試運転用機器30A-1は、試運転用DB22-1(図示せず)の共通データの変更要求を生成し(ステップS401)、生成した変更要求を、開発システムのデータベース管理装置10に送信する(ステップS402)。
【0068】
次に、コミッショニングオフィスにおいて、開発システム内のデータベース管理装置10は、変更を要求された共通データを生成し(ステップS403)、生成したデータを試運転用機器30A-1に送信する(ステップS404)。一方、モジュールヤード1において、試運転用機器30A-1の第3更新部は、試運転用機器30A-1の記憶部の共通データを更新する(ステップS405)。
【0069】
一方、開発システム内のデータベース管理装置10は、生成したデータを試運転用機器30A-1以外の試運転用機器30A(30A-2、・・・、30A-n)にも送信する(ステップS406)。一方、各モジュールヤードにおいて、試運転用機器30A-2、・・・、30A-n各々の第3更新部は、試運転用機器30A-2、・・・、30A-n各々の記憶部の共通データを更新する(ステップS407)。
【0070】
なお、ステップS404、S406の処理による共通データの更新処理は、同時に行われてもよいし、S406の処理をステップS404の処理の前に行ってもよい。また、ステップS404~S407の処理の順序は一例であり、異なる順序で処理を行うこともできる。さらに、データベース管理装置10は、特定の試運転用機器30Aの試運転用DB22を優先的に更新してもよいし、特定の試運転用機器30Aの試運転用DB22を更新処理から除外することもできる。
【0071】
(個別データの更新処理の流れ)
図9を用いて、実施形態に係る個別データの更新処理の流れの一例を説明する。まず、モジュールヤード1において、コミッショニングシステム1の試運転用機器30A-1の第4更新部は、試運転用DB22-1(図示せず)の個別データを変更し(ステップS501)、変更した個別データをデータベース管理装置10に送信する(ステップS502)。そして、コミッショニングオフィスにおいて、データベース管理装置10は、開発システムの管理用DB20B(図示せず)に、試運転用DB22-1の個別データの変更を反映する(ステップS503)。
【0072】
一方、試運転用機器30A―nは、試運転用DB22-n(図示せず)の個別データを変更し(ステップS504)、変更した個別データをデータベース管理装置10に送信する(ステップS505)。そして、データベース管理装置10は、開発システムの管理用DB20Bに、試運転用DB22-nの個別データの変更を反映する(ステップS506)。
【0073】
なお、ステップS501~S503の一連の処理、ステップS504~S506の一連の処理は、同時に行われてもよいし、ステップS504~S506の一連の処理をステップS501~S503の一連の処理の前に行ってもよい。また、データベース管理装置10は、特定の試運転用機器30Aから送信された個別データを優先的に更新してもよいし、特定の試運転用機器30Aから送信された個別データの更新処理を除外することもできる。
【0074】
[実施形態の効果]
第1に、上述した本実施形態に係るデータベース管理処理では、プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データと、前記各機器の設定に対応した個別データとを含む設定データを記憶部14に保持し、プラントの試運転を担当する複数の試運転用機器30Aのいずれかから、プラントに含まれる各機器の設定に共通する共通データの更新要求を受信した場合には、受信した更新要求を用いて、共通データを更新するとともに、更新後の共通データを複数の試運転用機器30Aそれぞれに送信し、複数の試運転用機器30Aのいずれかから、プラントに含まれる各機器の設定に対応した個別データの更新結果を受信した場合には、受信した更新結果を用いて、個別データを更新する。このため、本処理では、マスターデータベース20を一元管理し、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を効率的に実行することができる。
【0075】
第2に、上述した本実施形態に係るデータベース管理処理では、プラントに関する基本設計から最終検査段階の検査工程により、共通データと個別データとを含む設定データを生成して検査済みDB20Aに格納し、設定データを用いたプラントの現地受け入れ検査段階において、共通データの更新要求を用いて、共通データを更新するとともに、更新後の共通データを複数の試運転用機器30Aそれぞれに送信し、設定データを用いたプラントの現地受け入れ検査段階において、個別データの更新結果を用いて、個別データを更新する。このため、本処理では、マスターデータベース20を一元管理し、プラントの最終検査段階から現地受け入れ検査段階において、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を効率的に実行することができる。
【0076】
第3に、上述した本実施形態に係るデータベース管理処理では、共通データと、複数の試運転用機器30Aそれぞれが担当する各個別データとを組み合わせた個別設定データを、複数の試運転用機器30Aそれぞれに配備する。このため、本処理では、マスターデータベース20を一元管理し、コミッショニング作業のためのデータベース22を用いることにより、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を効率的に実行することができる。
【0077】
第4に、上述した本実施形態に係るデータベース管理処理では、共通データと個別データとを含む設定データをクラウドサービス上のデータベース20Bに格納する。このため、本処理では、マスターデータベース20をより効果的に一元管理し、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を効率的に実行することができる。
【0078】
第5に、上述した本実施形態に係るデータベース管理処理では、クラスモジュール(代表的な制御ループ)、工業単位定義テーブル、グラフィックリンクパーツ等に関わるデータを含む共通データへの更新要求に基づき、設定データを更新する。このため、本処理では、マスターデータベース20の共通データをより効果的に一元管理し、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を効率的に実行することができる。
【0079】
第6に、上述した本実施形態に係るデータベース管理処理では、入力信号、出力信号、タグ名、タグ情報、グラフィック、アラーム設定、チューニングパラメータ、アプリケーションモジュール、連続制御用シーケンス、複雑な制御ループ等に関するデータを含む個別データの更新結果に基づき、設定データを更新する。このため、本処理では、マスターデータベース20の個別データをより効果的に一元管理し、モジュールヤードにおけるコミッショニング作業を効率的に実行することができる。
【0080】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0081】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0082】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0083】
〔ハードウェア〕
次に、データベース管理装置10のハードウェア構成例を説明する。なお、他の装置も同様のハードウェア構成とすることができる。
図10は、ハードウェア構成例を説明する図である。
図10に示すように、データベース管理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、
図10に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0084】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、
図4に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0085】
プロセッサ10dは、
図4に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、
図4等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、データベース管理装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、設定部15a、受信部15b、第1更新部15c、第2更新部15d等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、設定部15a、受信部15b、第1更新部15c、第2更新部15d等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0086】
このように、データベース管理装置10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する情報処理装置として動作する。また、データベース管理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施例と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施例でいうプログラムは、データベース管理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0087】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0088】
10 データベース管理装置(管理装置)
11 入力部
12 出力部
13 通信部
14 記憶部
15 制御部
15a 設定部
15b 受信部
15c 第1更新部
15d 第2更新部
20、21、22 各種データベース
30 試運転用機器
40 サイト用機器
50 通信ネットワーク
100 データベース管理システム