IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ 東洋インキ株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】オーバーコート剤および印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/06 20060101AFI20240528BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20240528BHJP
   C09D 167/00 20060101ALI20240528BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20240528BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240528BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C09D175/06
C09D127/06
C09D167/00
C09D11/102
B32B27/30 101
B32B27/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021075569
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169881
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2024-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004436
【氏名又は名称】東洋インキ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高畑 智明
(72)【発明者】
【氏名】石原 爾
(72)【発明者】
【氏名】杉 裕紀
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145283(JP,A)
【文献】特開2003-147265(JP,A)
【文献】特開2010-229300(JP,A)
【文献】特開2021-138856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷層上に配置される、透明保護層を形成するための、バインダー樹脂およびイソシアネート硬化剤を含有するオーバーコート剤であって、
前記バインダー樹脂は、塩化ビニル共重合樹脂および環構造を有するポリエステル系樹脂を含んでなり、前記塩化ビニル共重合樹脂を、バインダー樹脂総質量中に30質量%以上で含有する、オーバーコート剤。
【請求項2】
環構造を有するポリエステル系樹脂は、芳香族環構造を有するポリエステル系樹脂を含む、請求項1に記載のオーバーコート剤。
【請求項3】
オーバーコート剤の固形分総質量中の環構造含有量は、0.5~10質量%以下である、請求項1または2に記載のオーバーコート剤。
【請求項4】
塩化ビニル共重合樹脂と、環構造を有するポリエステル系樹脂との質量比が、80:20~40:60である、請求項1~3いずれかに記載のオーバーコート剤。
【請求項5】
環構造を有するポリエステル系樹脂が、環構造を有する植物油変性アルキド樹脂を含む、請求項1~4いずれかに記載のオーバーコート剤。
【請求項6】
イソシアネート硬化剤が、環構造を有する、請求項1~5いずれかに記載のオーバーコート剤。
【請求項7】
基材、印刷層および請求項1~6いずれかに記載のオーバーコート剤により形成された透明保護層を順次有する印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーバーコート剤、およびそれを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム等のフィルム基材を使用した軟包装パッケージその他の包装体には、意匠性、美粧性、或いは製品情報を付与するため、印刷インキが印刷されている。フィルム基材への印刷はフィルムの表面に直接印刷を行なう表刷り印刷構成と、インキをフィルムの裏面に印刷する裏刷り印刷構成に大別される。表刷り印刷構成で包装体とした場合には、最も外側に印刷層が配置され、当該印刷層を直接目視できる。一方、裏刷り印刷構成で包装体とした場合には、最も外側はフィルム基材であり、印刷層は当該基材とシーラントと呼ばれる熱可塑性基材で挟まれた(ラミネートという)配置となる。したがって裏刷り印刷の包装体では、表刷り印刷とは異なり、フィルム基材を通して当該印刷層を目視できる、という違いがある。
【0003】
表刷り印刷構成物は、最表面に印刷インキ層を形成するため、上記フィルム基材と比べれば光沢感が劣り、耐擦傷性や耐熱性でも劣る場合が多い(特許文献1)。一方、裏刷り印刷構成物(ラミネート積層体)では、包装体の最外層ではフィルム基材自体の諸物性が有効に活かされる事から、包装体の最外層が印刷層である表刷り印刷構成に比べて、高い光沢性や耐擦傷性が容易に得られるという特徴がある。しかし、この方法は、基材へ印刷インキを印刷したのち当該印刷層上に別のフィルムを貼り付けなければならず、工程として手間がかかるうえフィルム基材と印刷層の密着性、デラミネーション(浮き)など当該工程を経るがゆえの物性において不充分な場合が多く、また接着剤やラミネート工程などが必要であるためコスト的にも課題があった。
【0004】
そこで、表刷り印刷による構成物あるいは包装体でも高い光沢感や耐熱性を付与するために、表刷り印刷層の表面に、更にオーバーコート剤により保護層を形成する方法も検討が行われている。この方法によればラミネート積層体のように複雑な製造工程を経ることなくラミネート積層体と同程度に光沢感や耐擦傷性を付与することが期待できる。
しかしながら従来のオーバーコート剤としては、ウレタン樹脂系からなるコート剤(特許文献2)や、アクリル樹脂系からなるコート剤(特許文献3)、アミド樹脂系からなるコート剤(特許文献4)、ポリ乳酸系のオーバーコート剤(特許文献5)等が提案されているが、いずれもラミネート積層体に比べて、光沢感や耐熱性、更には臭気等において改善の余地を有するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-119824号公報
【文献】特開2018-145283号公報
【文献】特許第5828196号公報
【文献】特開2016-079306号公報
【文献】特開2003-147265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表刷り印刷構成物においても、密着性、耐熱性、臭気等の諸物性に加え、ラミネート積層体のフィルム表面と同等以上の高光沢を発現できるオーバーコート剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は本願課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載のオーバーコート剤を用いることで解決することを見出し、本発明を成すに至った。
【0008】
すなわち本発明は、印刷層上に配置される、透明保護層を形成するための、バインダー樹脂およびイソシアネート硬化剤を含有するオーバーコート剤であって、
前記バインダー樹脂は、塩化ビニル共重合樹脂および環構造を有するポリエステル系樹脂を含んでなり、前記塩化ビニル共重合樹脂を、バインダー樹脂総質量中に30質量%以上で含有する、オーバーコート剤に関する。
【0009】
また、本発明は、環構造を有するポリエステル系樹脂は、芳香族環構造を有するポリエステル系樹脂を含む、上記オーバーコート剤に関する。
【0010】
また、本発明は、オーバーコート剤の固形分総質量中の環構造含有量は、0.5~10質量%以下である、上記オーバーコート剤に関する。
【0011】
また、本発明は、塩化ビニル共重合樹脂と、環構造を有するポリエステル系樹脂との質量比が、80:20~40:60である、上記オーバーコート剤に関する。
【0012】
また、本発明は、環構造を有するポリエステル系樹脂が、環構造を有する植物油変性アルキド樹脂を含む、上記オーバーコート剤に関する。
【0013】
また、本発明は、イソシアネート硬化剤が、環構造を有する、上記オーバーコート剤に関する。
【0014】
また、本発明は、基材、印刷層および上記オーバーコート剤により形成された透明保護層を順次有する印刷物に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、密着性、耐熱性、臭気等の諸物性に加え、ラミネート積層体のフィルム表面と同等以上の高光沢を発現できるオーバーコート剤を提供することが可能となった。
また、従来は困難であった、表刷り構成においてもラミネート積層体同等以上の性能を有する印刷物の製造が可能となり、ラミネートその他の製造工程の簡略化、コスト削減、プラスチック基材使用量減少によるCO削減にも寄与できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態または要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0017】
本発明は、印刷層上に配置される、透明保護層を形成するための、バインダー樹脂およびイソシアネート硬化剤を含有するオーバーコート剤であって、
前記バインダー樹脂は、塩化ビニル共重合樹脂および環構造を有するポリエステル系樹脂を含んでなり、前記塩化ビニル共重合樹脂を、バインダー樹脂総質量中に60質量%以上で含有する、オーバーコート剤である。バインダー樹脂において塩化ビニル共重合樹脂および環構造を有するポリエステル系樹脂を含み、前記塩化ビニル共重合樹脂を、バインダー樹脂総質量中に60質量%以上で含有することで高光沢、密着性、耐熱性、臭気等を良好なものとすることができる。
当該透明保護層においては、その表面の光沢値(60°)が、80~135であることが好ましい。
当該オーバーコート剤は、ポリエステル系樹脂を含むバインダー樹脂とイソシアネート硬化剤を含む。オーバーコート剤中のポリエステル系樹脂は柔軟性と密着性を付与し、イソシアネート硬化剤は耐熱性や耐擦傷性を付与する。なお、光沢値および密着性を良好とするため、ポリエステル系樹脂が、環構造を有することが必要であり、当該環構造は、芳香族環構造であることが好ましい。
【0018】
上記光沢値とは、JISZ8741によって測定された値をいい、入射角60°、における測定値をいう。光沢値の測定には、例えばBYK-Gardner社製Micro-TRI-grossmeterを用いて、入射角60°、受光角60°の測定条件を用いて測定することができる。
【0019】
本発明のオーバーコート剤は表刷り用としての使用が好ましい。本明細書において、表刷りとは、紙基材またはプラスチック基材に印刷した場合、基材上に印刷インキ、オーバーコート剤の順で印刷され、印刷された面からみて印刷模様が確認できる場合を表刷りとする。なお、オーバーコート剤からなる透明保護層が本発明の印刷物において最外層となる。以下、本発明のオーバーコート剤を構成する各材料について説明する。
【0020】
<バインダー樹脂>
バインダー樹脂とはオーバーコート剤に含まれる、硬化剤、添加剤、溶剤以外の樹脂成分をいい、バインダー樹脂全量中に前記塩化ビニル共重合樹脂が30質量%以上で含まれる。好ましくは40質量%以上、なお好ましくは60質量%以上であり、上限値としては95質量%以下、90質量%以下あるいは80質量%以下であることが好ましい。
また環構造を有するポリエステル系樹脂は70質量%以下、60質量%以下50質量%以下で含まれることが好ましい。
【0021】
<環構造を有するポリエステル系樹脂>
環構造を有するポリエステル系樹脂は、例えば、多価アルコールとカルボン酸とを公知のエステル化重合反応を用いて反応させてなるポリエステル樹脂や以下に記載のアルキド樹脂などであって、前記多価アルコールおよびまたは前記カルボン酸が環構造を有してなるポリエステル樹脂が好適に挙げられる。
環構造を有するポリエステル系樹脂は、総質量中に、ポリエステル構造を50質量%以上含有していれば特に制限はなく、公知の方法により適宜製造される。当該ポリエステル系樹脂中の環構造の含有量は1~80質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。なお、環構造の含有量は、オーバーコート剤中の固形分総質量中0.5~10質量%であることが好ましい。なお、固形分とは、オーバーコート剤の不揮発成分の総質量をいう。
なお環構造は、芳香族環構造、脂環族環構造、複素環構造(ピラノース環構造など)が好適に挙げられ、中でも芳香族環構造を含むことが好ましい。
【0022】
ポリエステル系樹脂の重量平均分子量は500~200,000であることが好ましく、2,000~150,000であることがより好ましい。密着性や耐ブロッキング性、およびインキの印刷工程における作業効率、印刷適性などが良好となるためである。
【0023】
多価アルコールのうち脂環族アルコールとしては、多価アルコールとしては、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどが挙げられる。なお、単官能アルコールである、シクロヘキサノール、シクロヘキサンエタノール、4-tert-ブチルシクロヘキサノール、メントール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテニル)-2-ブテン-1-オール、4-イソプロピルシクロヘキサノール、2-(tert-ブチル)シクロヘキサノールなども併用することができる。
多価アルコールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0024】
多価アルコールのうち芳香族アルコールとしては、1,4-ベンゼンジメタノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ハイドロキノン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
二塩基酸のうち脂環族二塩基酸としては、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,1-シクロペンタン二酢酸、デカヒドロ-1,4-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0026】
二塩基酸のうち芳香族二塩基酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-フェニレン二酢酸、1,3-フェニレン二酢酸、1,4-フェニレン二酢酸、4-(カルボキシメチル)安息香酸、などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
なお、上記ポリエステル樹脂には環構造を有しない多価アルコールや、環構造を有しない二塩基酸も使用できる。
【0028】
脂環構造を持たない多価アルコールとしては、以下の例に限定されないが、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2ブチル-1,3プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4-ブチンジオール、1,4-ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエスリトールなどが挙げられる。
【0029】
環構造を持たない二塩基酸としては、以下の例に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸などが挙げられる。なお、必要に応じてギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、リノール酸などの一塩基酸を併用してもよい。
【0030】
さらに、酸無水物類を使用してもよく、例えば、無水コハク酸、メチル無水コハク酸物、2,2-ジメチル無水コハク酸、ブチル無水コハク酸、イソブチル無水コハク酸、ヘキシル無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、フェニル無水コハク酸、無水グルタル酸、3-アリル無水グルタル酸、2,4-ジメチル無水グルタル酸、2,4-ジエチル無水グルタル酸、ブチル無水グルタル酸、ヘキシル無水グルタル酸、無水マレイン酸、2-メチル無水マレイン酸、2,3-ジメチル無水マレイン酸、ブチル無水マレイン酸、ペンチル無水マレイン酸、ヘキシル無水マレイン酸、オクチル無水マレイン酸、デシル無水マレイン酸、ドデシル無水マレイン酸、2,3-ジクロロ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、2,3-ジフェニル無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、4-メチル無水フタル酸、ダイマー酸、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルブテニル-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸、無水ヘッド酸、ビフェニルジカルボン酸無水物、無水ハイミック酸、エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチル-3,6-エンドメチレン-1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、1-シクロペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、オクタヒドロ-1,3-ジオキソ-4,5-イソベンゾフランジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0031】
(アルキド樹脂)
アルキド樹脂は、上記環構造を有するポリエステル系樹脂の一形態であり、カルボン酸化合物,及び脂肪酸(動植物油である場合を含む)と、アルコール化合物の縮重合(縮合重合)によって合成されるアルキド樹脂や、上記脂肪酸またはその脂肪酸モノエステルと、カルボン酸化合物との反応後、アルコール化合物をエステル化反応させてなるアルキド樹脂などが挙げられる。いずれも油脂を変性したアルキド樹脂(油脂変性アルキド樹脂)に該当する。
本発明に使用するアルキド樹脂の水酸基価は5~200mgKOH/gであることが好ましく、20~150mgKOH/gであることがなお好ましい。アルキド樹脂の重量平均分子量としては500~200,000であることが好ましく、2,000~150,000であることがなお好ましい。アルキド樹脂全量中の環構造の含有量は1~80質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0032】
アルキド樹脂の合成に使用される上記カルボン酸化合物としては、二塩基酸などの多塩基酸が好ましく、当該二塩基酸としては、上記芳香族カルボン酸(無水物含む)、脂環族カルボン酸(無水物含む)、が好適に挙げられる。中でも芳香族カルボン酸(無水物含む)であることが好ましく、当該化合物としては無水フタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などが好適である。
【0033】
アルキド樹脂の合成に使用される上記アルコール化合物としては、脂環族アルコール、芳香族アルコールおよび環構造を有しないアルコールが好適に挙げられ、上記同様のものが好適に使用できる。中でも、環構造を有しないアルコールの使用が好ましく、当該アルコールとしては、二価のアルコール化合物としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネペンチルグリコールなどが好適に挙げられ、
三価以上のアルコール化合物として(モノまたはジまたはトリ)グリセリン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ-ルエタン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ-ルプロパン、(モノまたはジまたはトリ)トリメチロ-ルアルカン、(モノまたはジまたはトリ)ペンタエリスリト-ル、ソルビトール等の脂肪族多価アルコール等が例示される。
【0034】
上記脂肪酸としては、混合脂肪酸であってよく、脂肪酸としてはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などが好適に挙げられる。
【0035】
上記動植物油としては、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。
【0036】
上記脂肪酸モノエステルは、上記脂肪酸とアルコールにより形成されるアルキルエステルが挙げられ、当該アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、などのアルカノールが好適に挙げられる。
【0037】
(オーバーコート剤の固形分総質量中の環構造含有量)
オーバーコート剤の固形分総質量中の環構造の含有量は、以下の式により算出することができる。
環構造の含有率(%)=原料1分子中の環構造を構成する全原子の原子量の合計/原料の分子量
ここで、原料とはバインダー樹脂やイソシアネート系硬化剤等のオーバーコート剤を構成する化合物を指し、原料1分子中の環構造を構成する全原子とは、芳香環などの環構造そのものを構成する原子(炭素原子もしくは複素原子)と、当該環構造そのものを構成する原子と直結する水素原子とを意味し、メチル基やニトロ基といった置換基の原子は含まないものと定義する。
例えば、イソシアネート硬化剤の原料であるキシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト化合物(XDI-TMPアダクト)である場合、全体分子量698.7に対して、芳香族基である環構造(C)は3箇所あり、それらの合計である分子量(C1812)は228.3なので、環構造の含有率は228.3/698.7=33%となる。
なお、上記環構造含有量をバインダー樹脂基準で計算すればバインダー樹脂中の環構造含有量となり、固形分基準で計算すれば、固形分中の環構造含有量となる。
【0038】
<塩化ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニル由来の構造単位とその他モノマー由来の構造単位を含有するものであれば特に限定されない。中でも塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂および塩化ビニル-アクリル共重合樹脂が好ましい。
【0039】
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂>
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂としては、塩化ビニルと酢酸ビニルが共重合したものであり、分子量としては重量平均分子量で5,000~100,000のものが好ましく、20,000~70,000が更に好ましい。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂の固形分100質量%中の酢酸ビニルモノマー由来の構造は、1~30質量%が好ましく、塩化ビニルモノマー由来の構造は、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
また、有機溶剤への溶解性が向上するため、ケン化反応あるいは共重合でビニルアルコール由来の水酸基を含むものが更に好ましく、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましい。また、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0040】
<塩化ビニル-アクリル共重合樹脂>
塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、塩化ビニルモノマーとアクリルモノマーの共重合樹脂を主成分とするものであり、アクリルモノマーとしては、基材に対する接着性と有機溶剤に対する溶解性が向上するため(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルを含むことが好ましい。アクリルモノマーは、ポリ塩化ビニルの主鎖にブロックないしランダムに組み込まれていても良いし、ポリ塩化ビニルの側鎖にグラフト重合されていても良い。塩化ビニル-アクリル共重合樹脂は、重量平均分子量が10,000から100,000であることが好ましく、30,000から70,000であることが更に好ましい。また、水酸基価として20~200mgKOH/gであることが好ましく、ガラス転移温度は50℃~90℃であることが好ましい。
【0041】
また、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂中の塩化ビニルモノマー由来の構造は、塩化ビニル-アクリル共重合樹脂固形分100質量%中、70~95質量%であることが好ましい。この場合有機溶剤への溶解性が向上し、更に基材への密着性、被膜物性、ラミネート強度等が良好となる。
【0042】
以下の説明において、(メタ)アクリルないし(メタ)アクリレートはそれぞれメタクリルおよびアクリル、メタクリレートおよびアクリレートを意味する。
【0043】
上記アクリルモノマーは水酸基を有するものが好ましく、例としては(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルや、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのグリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミドなどが挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピルが溶剤に対する溶解性を向上させるため、より好ましい。これらは単独または2種以上を併用できる。なお上記以外のアクリルモノマーを随時含有しても良い。
【0044】
なお一実施形態において、バインダー樹脂は、上記塩化ビニル共重合樹脂とポリエステル系樹脂とを一定比率範囲で含むことが好ましい。この場合においてと塩化ビニル共重合樹脂とポリエステル系樹脂の使用比率は、質量比40:60~80:20であることが好ましく、質量比50:50~70:30であることがなお好ましい。上記ポリエステル系樹脂はアルキド樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂は、ポリエステル系樹脂と塩化ビニル共重合樹脂とを合計で70質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがなお好ましい。
【0045】
<併用樹脂>
本発明の実施形態においてバインダー樹脂は、上記ポリエステル系樹脂、塩化ビニル共重合樹脂以外にもその他樹脂を併用する場合も好適であり、例としては、以下に限定されるものではないが、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
<イソシアネート硬化剤>
本発明のオーバーコート剤には、耐熱性向上のために、イソシアネート硬化剤を使用する。光沢向上のため、イソシアネート硬化剤は環構造を有するものが好ましい。当該環構造は上記ポリエステル系樹脂の場合と同様の構造を好適に挙げることができる。中でも脂環族環構造および/または芳香族環構造がなお好ましい。
イソシアネート硬化剤における具体的態様としては、ポリイソシアネート化合物および変性イソシアネート化合物を好適に利用できる。変性イソシアネート化合物とは、具体的には、2量体のアロファネート型イソシアネート化合物、3量体のビウレット型イソシアネート化合物、アダクト型イソシアネート化合物、およびイソシアヌレート型イソシアネート化合物などが好適である。当該ビウレット型イソシアネート化合物とは尿素が2量化した構造を有するイソシアネート化合物である。また、イソシアヌレート型イソシアネート化合物とはポリイソシアネート化合物の環状3量体であるイソシアネート化合物をいう。アダクト型イソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物と多価アルコールとの付加体をいい、例えば、キシリレンジイソシアネートとの反応物などが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としてはジイソシアネートが好ましく、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、及び、α,α,α’,α′-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネートが好適である。
変性イソシアネート化合物のうち具体的な市販の製品としては、例えば、デュラネート24A-100、22A-75P、TPA-100、TKA-100、P301-75E(旭化成社製)、タケネートD-160N、D-170N、D-110N、D-101(三井化学製)、デスモジュールN3200、N3600、Z4470BA、L75(C)(コベストロ社製)等が例示できる。
イソシアネート硬化剤中に環構造含有量は5~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがなお好ましい。当該環構造は、脂環族基および/または芳香族基を有するものが好ましい。イソシアネート硬化剤は、JISK6806に規定されるイソシアネート基(NCO)含有量が、3~30%(質量%)であることが好ましく、5~25%であることがなお好ましい。
【0047】
イソシアネート硬化剤はバインダー樹脂の架橋性官能基(水酸基やアミノ基等)1当量に対して0.25~8当量配合するのが好ましく、より好ましくは0.8~3当量である。また、バインダー樹脂とイソシアネート硬化剤の使用比率は、質量比95:5~10:90で含むことが好ましく、質量比90:10~20:80で含むことがなお好ましい。この範囲であれば十分な架橋密度が得られ、耐熱性が良好となる。
【0048】
<添加剤>
本発明のオーバーコート剤は、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、オーバーコート剤の製造においては、必要に応じて添加剤、例えば湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、キレート架橋剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、上記以外のワックス成分、シランカップリング剤などを使用することができる。
【0049】
<有機溶剤>
本発明のオーバーコート剤は、液状媒体として有機溶剤を含むこと(有機溶剤系オーバーコート剤)が好ましい。以下に限定されるものではないが、使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤など公知の有機溶剤を使用でき、混合して使用しても良い。中でも、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)がより好ましい。更に好ましくはエステル系有機溶剤、アルコール系有機溶剤からなる有機溶剤が好ましい。この場合オーバーコート剤100質量%中、6質量%以下の量でグリコールエーテル系有機溶剤を含んでよい。なお、本発明のオーバーコート剤は、液状媒体として水を含んでいても良いが、その含有量は液状媒体100質量%中0.1~5質量%が好ましい。ただしこれらに限定されない。
【0050】
(オーバーコート剤の製造)
オーバーコート剤の製造は、特に限定はなく、攪拌羽根、回転翼等を供えた攪拌機に、バインダー樹脂と有機溶剤の溶解ないし分散させたバインダー樹脂溶液、溶剤を仕込み、混合、攪拌すればよい。撹拌速度としては特に制限されることはなく、50~300rpmで行うことが可能である。オーバーコート剤の取り扱い、塗布性等の向上のために、さらに溶剤を適宜追加することもできる。イソシアネート硬化剤は最初に仕込むことも可能だが、保存条件、イソシアネート硬化剤の種類によっては使用直前に混合することが好ましい。オーバーコート剤は、印刷方式等により使用されるため粘度としては20~200mPa・sであることが好ましい。
【0051】
(オーバーコート剤の塗布・印刷)
本発明のオーバーコート剤は公知の印刷方式で塗布できる。例えば、グラビア印刷方式やフレキソ印刷方式、マイクログラビア印刷方式等が挙げられ、好ましくはグラビア印刷方式である。グラビア印刷方式は円筒状のシリンダー表面に彫られた画線部となる凹部にオーバーコート剤が入り、ドクターと呼ばれる金属板で非画線部のオーバーコート剤を掻き取った後、シリンダーの凹部に残ったオーバーコート剤を印刷フィルム上に転移させて塗布層を形成する方式である。凹部の深さで塗布されるオーバーコート剤量を制御できる。印刷フィルムへの塗布は、塗布後の乾燥性、塗膜の光沢、耐擦り傷性、耐高温熱水性等の膜物性を考慮して、複数回塗布することもできる。オーバーコート剤の使用形態として塗布量、塗布回数を適宜選択することができる。本発明のオーバーコート剤により形成された透明保護層の厚みは0.5~10μmが好ましく、更に好ましくは1~6μmである。
【0052】
塗布されたオーバーコート剤の乾燥温度は40~80℃で行なうことが好ましく、強靱な透明保護層を有する印刷物となる。
【0053】
本発明のオーバーコート剤は、印刷インキにより形成された印刷層上に塗布され、印刷物となる。印刷インキはバインダー樹脂、顔料、溶剤、必要に応じて添加剤からなる印刷インキであることが好ましい。以下に限定されるものではないが、印刷インキを構成するバインダー樹脂として、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ニトロセルロース樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを含む印刷インキであることが好ましい。中でも、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、ニトロセルロース樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する印刷インキであることがなお好ましい。特にウレタン樹脂を含有する印刷インキはフィルム基材への密着性が良好なことから更に好ましい。
【0054】
上記ウレタン樹脂は、公知の方法、例えば、特開昭62-153366号公報、特開昭62-153367号公報、特開平1-236289号公報、特開平2-64173号公報、特開平2-64174号公報、特開平2-64175号公報などに開示されている方法により得ることができる。具体的には、ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られたプレポリマーを、適当な溶剤中で鎖伸長剤および/又は反応停止剤と反応させる二段法、あるいはポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および(または)反応停止剤を溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。これらの方法のなかでも、均一なウレタン樹脂を得るには、二段法によることが好ましい。
【0055】
印刷インキは、添加剤を含むことができ、添加剤としては顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、レベリング剤、ワックス、トラッピング剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、耐ブロッキング剤、帯電防止剤、難燃剤等が挙げられる。
【0056】
顔料としては、一般に印刷インキや塗料で使用できるカラーインデックスに記載のC.I.ピグメントを任意に使用することができる。例えば、酸化チタン、ベンガラ、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、および、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。更に有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾキレート顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料などを挙げることができる。これらの顔料の含有量としては、印刷インキ中に0.5~50重量%使用することができる。
【0057】
印刷インキに使用される溶剤としては、水、放射線硬化性モノマー、上記オーバーコート剤に使用できるものと同様のものが利用でき、公知のアルコール系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、エステル系有機溶剤、脂肪族炭化水素系有機溶剤、および脂環族炭化水素系有機溶剤を使用することができる。ウレタン樹脂、併用樹脂の溶解性や印刷時の乾燥性などを考慮して、混合して使用することが好ましい。
【0058】
印刷インキは、顔料を樹脂、溶剤等を用いてに分散する公知の方法により製造することができる。例えば、顔料をウレタン樹脂、併用樹脂、分散剤等により溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて樹脂、添加剤などを配合する方法で得られる。
【0059】
(基材)
本発明に用いられる基材は、フィルム上のプラスチック基材、紙基材等を好適に使用できる。中でもプラスチック基材の使用が好ましく、ヒートシールなどの工程を必要とするため熱可塑性を有するプラスチック基材であることが好ましい。
プラスチック基材としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸その他のポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート基材、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
【0060】
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
【0061】
上記プラスチック基材としては、(1)単一種からなるプラスチック基材、(2)複数種のプラスチック基材を多層化した多層プラスチック基材が挙げられる。本発明においては、強靭性、防湿性等の観点から多層プラスチック基材であることが好ましい。さらに、本発明において、多層プラスチック基材は、印刷される面とは反対側の面がヒートシール性(熱可塑性)を有している多層プラスチック基材であることが好ましい。多層プラスチック基材を用いると、オーバーコート剤を塗布後、後加工無く容易に製袋可能となり、包装体製造工程が簡素化される利点がある。
【0062】
多層プラスチック基材の構成例としては、PET/CPP、OPP/CPP、Ny/CPP等の2層構成、PET/アルミ/CPP、PET/Ny/CPP、Ny/PET/CPP、Ny/蒸着PET/CPP等の3層構成、PET/アルミ/Ny/CPPの4層構成等があり、アンカーコート剤、接着剤を介して積層される。このような多層プラスチック基材においても印刷面がコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などが施されていれば、印刷インキ層の接着性が向上するので好ましい。
【0063】
プラスチック基材同士の積層には公知の方法、例えばイミン系、ポリブタジエン系、チタン系等のアンカーコート剤を用い、溶融ポリエチレン樹脂等を積層する押し出しラミネート法。ウレタン系等の接着剤を塗布し、積層するドライラミネート法等がある。特に耐高温熱水性が要求される用途においてはドライラミネート法により得られた多層プラスチック基材が好ましい。
【0064】
本発明の印刷物は、プラスチック基材上に、印刷インキ層と、オーバーコート剤を順に印刷してなる。上述したように、プラスチック基材としては、ヒートシール可能な多層フィルムを用いることが後加工の簡便さの点で好ましい。
【0065】
このようにして得られた包装体は、食品、医薬品等の包装材料として幅広く利用する事ができる。また、表刷り構成で優れた耐高温熱水性を発現することから、従来の裏刷り構成で高耐性を必要とする用途においても適用できる。
【実施例
【0066】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表わす。
【0067】
<印刷インキ用ポリウレタン樹脂の合成>
[合成例1](ウレタン樹脂PU1溶液の作製)
アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールとの反応により得られる数平均分子量1,000のポリエステルポリオール(PMPA)150部、数平均分子量700のポリプロピレングリコール(PPG700)を50部、イソホロンジイソシアネート(IPDI)103.4部、および酢酸エチル(酢酸エチル)75.8部を窒素気流下に80℃で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。次いでイソホロンジアミン(IPDA)44.6部、酢酸エチル/イソプロパノール(IPA)=50/50(質量比)の混合溶剤736.2部を混合したものに、上記末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を40℃で徐々に添加しポリウレタン樹脂溶液PU1を得た。
【0068】
<オーバーコート剤用ポリエステル樹脂Aの合成>
[合成例2](ポリエステル樹脂A溶液の作製)
無水フタル酸190.1部、ヒマシ油207.9部、エチレングリコール38.6部、ペンタエリスリトール63.4部、酢酸エチル500.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160~240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。195℃で1時間以上反応し、酸価が15以下になったら反応缶を徐々に1~2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止し取り出し、ポリエステル樹脂Aを得た。ポリエステル樹脂Aは芳香族環構造を6質量%有する。
【0069】
<オーバーコート剤用ポリエステル樹脂Bの合成>
[合成例3](ポリエステル樹脂B溶液の作製)
テレフタル酸156.3部、イソフタル酸156.3部、エチレングリコール70.0部、ネオペンチルグリコール117.4部、酢酸エチル500.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160~240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。240℃で1時間以上反応し、酸価が15以下になったら反応缶を徐々に1~2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止し取り出し、ポリエステル樹脂Bを得た。ポリエステル樹脂Bは芳香族環構造を11質量%有する。
【0070】
[合成例4](ポリエステル樹脂C溶液の作製)
テレフタル酸143.1部、イソフタル酸100.1部、セバシン酸52.3部、エチレングリコール44.9部、ネオペンチルグリコール103.3部、ブチルエチルプロパンジオール56.3部、酢酸エチル500.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160~240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。240℃で1時間以上反応し、酸価が15以下になったら反応缶を徐々に1~2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止し取り出し、ポリエステル樹脂Cを得た。ポリエステル樹脂Cは芳香族環構造を24質量%有する。
【0071】
[合成例5](ポリエステル樹脂D溶液の作製)
ヘキサヒドロ無水フタル酸190.1部、ヒマシ油207.9部、エチレングリコール38.6部、ペンタエリスリトール63.4部、酢酸エチル500.0部を反応缶に仕込み、窒素気流下で攪拌しながら160~240℃まで徐々に加熱し、エステル化反応を行なった。195℃で1時間以上反応し、酸価が15以下になったら反応缶を徐々に1~2トールまで減圧し、所定の粘度に達した時、反応を停止し取り出した。ポリエステル樹脂Dを得た。ポリエステル樹脂Dは脂環族環構造を6質量%有する。
【0072】
[合成例6](ポリエステル樹脂E溶液の作製)
[比較合成例1](ポリエステル樹脂E溶液の作製)
DL-ラクチド100部、L-ラクチド100部、イセチオン酸ナトリウム0.2部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.5部、酢酸エチル200.7部を四つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で2時間加熱し、開環重合させ、ポリエステル樹脂Eを得た。ポリエステル樹脂Eは、二塩基酸と多価アルコールとに由来する構成単位を含有しない。ポリエステル樹脂Eは環構造を有さない。
[合成例7](ポリエステル樹脂F溶液の作製)
[比較合成例1](ポリエステル樹脂E溶液の作製)
メソ-ラクチド200部、イセチオン酸ナトリウム0.2部、開環重合触媒としてオクチル酸錫0.5部、酢酸エチル200.7部を四つ口フラスコに仕込み、窒素雰囲気下、180℃で2時間加熱し、開環重合させ、ポリエステル樹脂Eを得た。ポリエステル樹脂Fは、二塩基酸と多価アルコールとに由来する構成単位を含有しない。ポリエステル樹脂Fは環構造を有さない。
【0073】
<印刷インキの製造>
[製造例1](印刷インキR1の製造)
バインダー樹脂として、ウレタン樹脂溶液PU1(固形分30%)32部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学社製、ソルバインTAO、固形分30%、酢酸エチル溶液)3部、塩素化ポリプロピレン樹脂(日本製紙社製、370M、塩素含有率30%、固形分50%)を固形分換算で0.5部、ポリエチレンワックス(三井化学社製、ハイワックス320P、平均粒子径2.5μm)を固形分換算で0.8部、藍顔料(C.I.ピグメントブルー15:4)を10部、メチルエチルケトン(MEK)/酢酸n-プロピル(NPAC)/イソプロパノール(IPA)=40/40/20(質量比)の溶液53.7部を混合し、ビーズミルで15分間分散し、印刷インキR1を得た。
【0074】
[製造例1~3](印刷インキR1~R3の製造)
表1に示した原料及び配合比率を使用した以外は、製造例1と同様の手法により、印刷インキR1~R3を得た。
【0075】
以下に、表1中の原料の略称および詳細を示す。
・酸化チタン:テイカ社製、チタニックスJR-808
・ロジンマレイン酸樹脂:ロジン変性マレイン酸樹脂。荒川化学社製、マルキードNo.5、固形分30%、酢酸エチル溶液、軟化点145℃、水酸基価0mgKOH/g
・ポリアミド樹脂:オレイン酸およびリノール酸を原料とするダイマー酸由来の構成単位を50質量%以上含有する、アミン価3.5mgKOH/gであるポリアミド樹脂。重量平均分子量6,000、固形分30%、IPA溶液。
・セルロース樹脂:ニトロセルロース。固形分30%、酢酸エチル/IPA溶液、窒素分11.5~12.2%、重合度35~45、水酸基価175mgKOH/g
・キレート架橋剤:有機チタン系キレート架橋剤
【0076】
[実施例1](オーバーコート剤S1の作製)
ポリエステル樹脂A溶液(固形分50質量%)6.6部、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂(日信化学社製、ソルバインTAO、塩化ビニル91質量%、酢酸ビニル2質量%、ビニルアルコール7質量%、固形分50質量%)26.5部、XDI-TMPアダクト(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 NCO含有量12% 固形分50質量%)3.2部、カソザイDBS(豊国製油社製セバシン酸ジブチル)を1.8部、酢酸エチル61.8部を混合し、ディスパーで30分撹拌を行うことで、固形分20%のオーバーコート剤S1を得た。なお、XDI-TMPアダクトは印刷直前に配合した。
【0077】
[実施例2~17、比較例1~4](オーバーコート剤S2~S17、SS1~SS4の作製)
表2に示した原料及び配合比率を使用した以外は、実施例1と同様の手法により、オーバーコート剤S2~S17、SS1~SS4を得た。
【0078】
以下に、表2中の原料の略称および詳細を示す。
・TDI(トルエンジイソシアネート)-TMPアダクト体:固形分50%、NCO含有量13%
・HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)-TMPアダクト体:固形分50%、NCO含有量13%
・HDI-ビウレット:HDI-イソシアヌレート体、固形分50%、NCO含有量23.5%
塩化ビニル-ヒドロキシアルキルアクリレート共重合樹脂:日信化学社製、ソルバインVROH、塩化ビニル73質量%、酢酸ビニル16質量%、ヒドロキシアルキルアクリレート11質量%、固形分50質量%
【0079】
<印刷インキR2、オーバーコート剤S1を用いた印刷物の作成>
印刷インキR2及びオーバーコート剤S1を、各々、酢酸エチルを用いて、ザーンカップ#3(離合社製)25℃で粘度15秒になるように希釈した。
厚み30μmのポリプロピレン(OPP)フィルムに対し、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度40m/分、乾燥器温度50℃の条件下で、希釈した印刷インキR2を塗布し、印刷フィルムを得た。
次に、上記で作製した印刷フィルムの印刷層を有する面に、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度40m/分、乾燥器温度50℃の条件下で、希釈したオーバーコート剤S1を塗布し、プラスチック基材/印刷層/透明保護層の構成である印刷物を得た。
【0080】
<各印刷インキ、オーバーコート剤を用いた印刷物の作製>
上記で得られた印刷インキ、オーバーコート剤について表2に記載された組み合わせにて、上記印刷物の作製と同様の手順で、実施例1~実施例17に係る印刷物をそれぞれ作製した。
【0081】
<特性評価>
上記実施例および比較例において得られたオーバーコート剤、それらの印刷物を用いて以下に記載の評価を行った。評価結果については表2に示した。
【0082】
<光沢>
上記実施例および比較例で作製した印刷物の透明保護層側より、BYK-Gardner社製Micro-TRI-grossmeterを用いて、入射角60°、受光角60°の光沢値を測定した。評価基準を下記に示す。
A(優):光沢値が90以上である。
B(可):光沢値が80以上、90未満である。
C(不可):光沢値が80未満である。
A,Bは実用上問題がない範囲である。
【0083】
<密着性(耐テープ接着性)>
上記実施例および比較例で作製した印刷物を、ニチバン社製セロハンテープ(12mm幅)を透明保護層上に貼り、急激に引き剥がした時の印刷層または透明保護層の剥離程度を評価した。評価基準を下記に示す。
A(優):印刷層または透明保護層が全く剥離しない。
B(可):50%未満の面積の印刷層または透明保護層が剥離する。
C(不可):50%以上の面積の印刷層または透明保護層が剥離する。
A,Bは実用上問題がない範囲である。
【0084】
<耐熱性>
上記実施例および比較例で作製した印刷物を、それぞれ3cm×13cmの大きさに切り、同じ大きさに切ったアルミ箔(厚さ30μm)の艶面と印刷物の印刷された面とを重ねあわせた。センチネル社製ヒートシーラーを用いて、2×9.8N/cmの圧力で、120℃1秒間アルミ箔を押圧し、アルミ箔を剥がしたときの印刷層または透明保護層の剥がれ具合を目視で判定した。評価基準を下記に示す。
A(優):シールバー温度160℃で全く剥離しないもの。
B(可):シールバー温度120℃で剥離しないが、160℃で剥離するもの。
C(不可):シールバー温度120℃で剥離するもの。
A,Bは実用上問題がない範囲である。
【0085】
<耐ブロッキング性>
上記実施例および比較例で作製した印刷物を以下の条件にて耐ブロッキング性の評価を行った。
(試料および圧力)
OPP印刷物の印刷面/OPP基材非コロナ処理面 10kg/cm
(静置条件)40℃-80%RH 48時間
(評価方法)印刷面と基材とを引き剥がし、印刷面からのインキ被膜の剥離具合を目視で判定。
(判定基準)
A(優):印刷面のインキ被膜が全く剥離せず、剥離抵抗の小さいもの
B(可):インキ被膜の剥離面積が5%以上20%未満のもの
C(不可):インキ被膜の剥離面積が20%以上のもの
A,Bは実用上問題がない範囲である。
【0086】
<耐もみ性>
上記実施例および比較例で作製した印刷物をそれぞれ両手で30回もみほぐし、以下の評価基準で評価を行った。尚、測定条件は、試験片100mm四方とした。
A(優):インキ被膜の剥離浮きおよび剥がれなし
B(可):インキ被膜に剥離浮きが観られるが、剥がれなし
C(不可):インキ被膜剥がれあり
A,Bは実用上問題がない範囲である。
【0087】
<耐摩擦性>
上記実施例および比較例で作製した印刷物をそれぞれ被膜強度につきテスター産業(株)製学振型摩擦堅牢度試験器を用いて測定し、以下の評価基準で評価を行った。尚、測定条件は、試験片20mm幅、荷重500g、100回往復、対カナキン3号とした。
A(優):インキ被膜の剥がれなし
B(可):インキ被膜の剥がれる面積が10%以上30%未満
C(不可):インキ被膜の剥がれる面積が30%以上
A,Bは実用上問題がない範囲である。
【0088】
<参考例1:印刷インキの表刷り印刷物のみの評価>
印刷インキR2を、各々、酢酸エチル/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、ザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるように希釈した。
厚み30μmのOPPフィルムに対し、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度40m/分、乾燥器温度50℃の条件下で、希釈した印刷インキR3を塗布し、表刷り構成の印刷物A1を得た。
表刷り構成の印刷物A1につき上記と同様の評価を行ったところ、光沢:C、密着性:A、耐熱性:A、耐ブロッキング性:B、耐もみ性:B、耐摩擦性:Bであった。
【0089】
<参考例2:ラミネート積層体の評価>
印刷インキR2を、各々、酢酸エチル/IPAの混合溶剤(質量比70/30)を用いて、ザーンカップ#3(離合社製)25℃で15秒になるように希釈した。
厚み30μmのOPPフィルムに対し、版深35μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機を用いて、印刷速度40m/分、乾燥器温度50℃の条件下で、希釈した印刷インキR2を塗布し、印刷物A2を得た。
次に、ドライラミネート機を用いて、印刷物A2の印刷層上にドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製TM-340V/CAT-29B)を塗布し、ライン速度40m/分にてVMCPP(アルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム 厚さ25μm)と貼り合わせ、OPP基材/印刷層/接着剤層/VMCPP基材の順で積層されたラミネート積層体B1を得た。
ラミネート積層体B1につき上記と同様の評価を行ったところ、光沢:B、密着性:A、耐熱性:A、耐ブロッキング性:A、耐もみ性:A、耐摩擦性:Aであった。なお当該光沢の評価はOPP基材面から評価を行った。
【0090】
上記の評価結果より、本発明の実施形態のオーバーコート剤を用いることで、フィルムをラミネートした積層体以上に印刷層の光沢を向上させ、軟包装表刷り構成において良好な密着性、耐熱性を発現し、さらに臭気の良好な印刷物が得られることが示された。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】