(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ファーサイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20240528BHJP
B60R 21/2338 20110101ALI20240528BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/2338
(21)【出願番号】P 2021100775
(22)【出願日】2021-06-17
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 敦
(72)【発明者】
【氏名】河村 功士
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】林 丈樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 周司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠矢
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111269(JP,A)
【文献】特開2019-137307(JP,A)
【文献】特開2019-034710(JP,A)
【文献】特開2006-008105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0229369(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第113002472(CN,A)
【文献】国際公開第2018/212021(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0029334(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/2338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート内に折り畳まれた状態で固定されるエアバッグを備え、前記シートが搭載された乗物の側壁部に対して衝撃が加わったときに膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを前記乗物の幅方向に並ぶ複数の前記シート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側の前記シートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置であって、
前記エアバッグは、
前記乗員の胸部から頭部にかけての部位と側方で対応する位置に展開及び膨張するメイン保護部と、
展開及び膨張時における前記メイン保護部の前部と前記シートとを前記乗員側で連結するテザーと、
を備えて
おり、
展開及び膨張時における前記メイン保護部の前部と前記テザーとの連結位置は、前記シートと前記テザーとの連結位置よりも高い位置にあり、
前記エアバッグは、展開及び膨張時における前記メイン保護部の前記乗員側の面に前記メイン保護部と連通して設けられて前記乗員の頭部の前方に展開及び膨張するサブ保護部を備えており、
前記サブ保護部は、前記メイン保護部における前記テザーとの連結位置よりも後側に位置していることを特徴とするファーサイドエアバッグ装置。
【請求項2】
前記エアバッグは、前記テザーを第1テザーとした場合に、展開及び膨張時における前記メイン保護部の後部と前記シートとを連結する第2テザーを備えていることを特徴とする請求項
1に記載のファーサイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の乗物の側壁部に対して衝撃が加わった場合に、隣り合う乗物用シート間でエアバッグを展開及び膨張させることで、側壁部から遠い側の乗物用シートに着座している乗員を保護するファーサイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のファーサイドエアバッグ装置として、例えば特許文献1に示すものが知られている。こうしたファーサイドエアバッグ装置におけるエアバッグは、シートバック内のフレームに一部が固定された状態で配置され、メイン保護部とサブ保護部と複数のテザーとを備えている。
【0003】
メイン保護部は、シートに着座した乗員の側方で展開及び膨張するように構成されている。サブ保護部は、メイン保護部の前端部から突出し、乗員の頭部の前方にて展開及び膨張するように構成されている。複数のテザーは、メイン保護部とシートバック内のフレームとを連結することで、展開及び膨張したメイン保護部を乗員側に引っ張るように構成されている。
【0004】
そして、これら複数のテザーの作用により、乗物の側壁部に対する衝撃によって乗物の幅方向に移動する乗員が展開及び膨張したメイン保護部に当たった場合、次のようになる。すなわち、乗員が展開及び膨張したメイン保護部に当たると、エアバッグ全体がシートバック内のエアバッグの固定部分を回転中心として乗員から離れるように回転しようとするが、このエアバッグの回転が複数のテザーの作用によって抑制される。この結果、エアバッグによる乗員に対する拘束性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようなファーサイドエアバッグ装置では、上述したようにエアバッグによる乗員に対する拘束性を確保できるが、複数(4つ)のテザーを必要とするため、構造が複雑になってしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するファーサイドエアバッグ装置は、シート内に折り畳まれた状態で固定されるエアバッグを備え、前記シートが搭載された乗物の側壁部に対して衝撃が加わったときに膨張用ガスの供給を通じて前記エアバッグを前記乗物の幅方向に並ぶ複数の前記シート間で後方から前方に向けて展開及び膨張させることにより、衝撃が加わった前記側壁部から遠い側の前記シートに着座している乗員の胸部から頭部にかけての部位を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置であって、前記エアバッグは、前記乗員の胸部から頭部にかけての部位と側方で対応する位置に展開及び膨張するメイン保護部と、展開及び膨張時における前記メイン保護部の前部と前記シートとを前記乗員側で連結するテザーと、を備えていることを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、展開及び膨張時のメイン保護部の前部がテザーによって乗員側に引っ張られるので、展開及び膨張時のメイン保護部が乗員から離れるように移動することを抑制できる。すなわち、展開及び膨張時におけるメイン保護部の前部とシートとをテザーによって乗員側で連結するだけで、展開及び膨張時のメイン保護部が乗員から側方へ離れるように移動することを抑制できる。したがって、簡単な構造でエアバッグによる乗員に対する拘束性を確保することができる。
【0009】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、展開及び膨張時における前記メイン保護部の前部と前記テザーとの連結位置は、前記シートと前記テザーとの連結位置よりも高い位置にあることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、展開及び膨張時におけるメイン保護部がテザーによって下側に引っ張られるので、展開及び膨張時におけるメイン保護部の浮き上がりを抑制できる。すなわち、メイン保護部の展開及び膨張時の位置が上方へずれることを抑制できる。
【0011】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグは、展開及び膨張時における前記メイン保護部の前記乗員側の面に前記メイン保護部と連通して設けられて前記乗員の頭部の前方に展開及び膨張するサブ保護部を備えており、前記サブ保護部は、前記メイン保護部における前記テザーとの連結位置よりも後側に位置していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、展開及び膨張時のメイン保護部がテザーによって乗員側に引っ張られることで、乗員の頭部の前方においてサブ保護部を精度よく展開及び膨張させることができる。したがって、乗員の頭部の前方への移動をサブ保護部によって効果的に抑制できる。
【0013】
上記ファーサイドエアバッグ装置において、前記エアバッグは、前記テザーを第1テザーとした場合に、展開及び膨張時における前記メイン保護部の後部と前記シートとを連結する第2テザーを備えていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、展開及び膨張時のメイン保護部の後部が第2テザーによって乗員側に引っ張られるので、展開及び膨張時のメイン保護部の乗員に対する拘束力を向上できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な構造でエアバッグによる乗員に対する拘束性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態のファーサイドエアバッグ装置が搭載される車両の平面図。
【
図2】同車両における側壁部及びシートを示す断面図。
【
図3】シートのシートバックのフレームに対するファーサイドエアバッグ装置の取り付け状態を示す要部拡大断面図。
【
図4】エアバッグの展開及び膨張時のシート及び乗員を側方から見た状態を示す模式図。
【
図5】エアバッグの展開及び膨張時のシート及び乗員を前方から見た状態を示す断面模式図。
【
図6】展開及び膨張時のエアバッグとシートに着座した乗員の頭部との位置関係を示す平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、ファーサイドエアバッグ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び
図2に示すように、乗物の一例としての車両10においては、その幅方向(
図1及び
図2では左右方向)の両側にドア及びピラー等からなる側壁部11,12が設けられている。側壁部11,12間には、車両10の幅方向に並ぶ複数(本例では2つ)のシート13,14が設けられている。シート13,14は、それぞれ、シートクッション16と、シートバック17と、ヘッドレスト18とを備えている。
【0018】
シートクッション16は、乗員P1,P2の下半身を載せることが可能に構成されている。シートバック17は、シートクッション16の後端部から起立して乗員P1,P2の上半身を支えることが可能に構成されている。ヘッドレスト18は、シートバック17の上端部に設けられて乗員P1,P2の頭部Tを支えることが可能に構成されている。
【0019】
こうした車両10の側壁部11または側壁部12に対して側方から衝撃が加わると、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、衝撃が加わった方の側壁部11,12側に倒れ込もうとする。このため、車両10には、側壁部11,12に対して側方から衝撃が加わったときに、その衝撃が加わった方の側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2を拘束して保護するファーサイドエアバッグ装置19が設けられている。
【0020】
図2及び
図3に示すように、ファーサイドエアバッグ装置19は、車両10におけるシート13,14のシートバック17内のフレーム20の上部における幅方向(左右方向)の内側にそれぞれ固定されている。シート13のシートバック17内のフレーム20に固定されたファーサイドエアバッグ装置19は、シート14に最も近い部分に位置している。シート14のシートバック17内のフレーム20に固定されたファーサイドエアバッグ装置19は、シート13に最も近い部分に位置している。
【0021】
ファーサイドエアバッグ装置19は、折り畳まれた状態で車両10におけるシート13,14のシートバック17内のフレーム20の上部に固定されたエアバッグ21及びインフレータ22を備えている。インフレータ22は、エアバッグ21に対して膨張用ガスを供給する装置である。インフレータ22は、リテーナ23によって覆われた状態で支持されている。リテーナ23は、インフレータ22を支持した状態でフレーム20に対してエアバッグ21と一緒にボルト30及びナット31によって固定されている。
【0022】
なお、シート13とシート14とにおけるファーサイドエアバッグ装置19周りの構造は、車両10の幅方向について対称(左右対称)であること以外は同一の構造となっている。このため、以下ではシート14におけるファーサイドエアバッグ装置19周りの構造についてのみ詳しく説明する。
【0023】
図4に示すように、ファーサイドエアバッグ装置19は、インフレータ22によるエアバッグ21への膨張用ガスの供給を制御する制御装置24を備えている。制御装置24には、側壁部11,12(
図1及び
図2参照)等に設けられた加速度センサ等からなる衝撃センサ25が電気的に接続されている。衝撃センサ25は、車両10(
図1及び
図2参照)の側方から側壁部11,12に対して加えられた衝撃を検出する。制御装置24は、衝撃センサ25からの検出信号に基づきインフレータ22を作動させてエアバッグ21に対して膨張用ガスを供給する。
【0024】
図3及び
図4に示すように、エアバッグ21に対してインフレータ22から膨張用ガスが供給されると、エアバッグ21が展開及び膨張してインフレータ22付近の部分をシートバック17内に残しつつシートバック17から前方に飛び出す。シートバック17から飛び出したエアバッグ21は、シート13とシート14(
図1及び
図2参照)との間で後方から前方に向けて展開及び膨張する。
【0025】
側壁部11,12に対して衝撃が加えられたとき、その衝撃が加わった側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2が、衝撃が加わった方の側壁部11,12側に倒れ込もうとすることは、上述したとおりである。しかし、そのときの乗員P1,P2の胸部から頭部Tにかけての部位は、シート13とシート14との間で後方から前方に展開及び膨張するエアバッグ21によって拘束されて保護される。
【0026】
すなわち、衝撃が加わった方の側壁部11,12から遠い側のシート13,14に着座している乗員P1,P2は、エアバッグ21により、衝撃が加わった方の側壁部11,12に近い側のシート13,14に着座している他の乗員P1,P2や車両10の内装品などと干渉しないようにされる。
【0027】
次に、エアバッグ21の構成について説明する。
図4~
図6に示すように、エアバッグ21は、一枚の基布を二つ折りにして厚さ方向に重ね、その重ねられた部分の周縁部同士を縫製することによって袋状に形成されている。エアバッグ21は、袋状のメイン保護部26と、メイン保護部26よりも小さい袋状のサブ保護部27と、帯状のテザーとしての第1テザー28と、帯状の第2テザー29とを備えている。メイン保護部26は、乗員P2の胸部から頭部Tにかけての部位と側方(幅方向)で対応する位置に展開及び膨張する。メイン保護部26の後端部は、インフレータ22と一緒にフレーム20の上部に固定されている。
【0028】
第1テザー28は、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の前部の外縁における上下方向の中央部とシート14のシートバック17内のフレーム20の上部とを乗員P2側で連結している。すなわち、第1テザー28は、前端部がメイン保護部26の前部の外縁における上下方向の中央部に縫い付けて固定され、後端部がフレーム20の上部にメイン保護部26の後端部及びインフレータ22と一緒に固定されている。
【0029】
この場合、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の前部の外縁と第1テザー28の前端部との連結位置は、フレーム20の上部と第1テザー28の後端部との連結位置よりも高い位置にある。すなわち、第1テザー28は、前端部が後端部よりも高くなるように配置されている。第1テザー28の長さは、メイン保護部26の展開及び膨張時にメイン保護部26の前端部が第1テザー28によって後方に引っ張られて乗員P2側に湾曲する程度に設定されている。
【0030】
サブ保護部27は、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の乗員P2側の面にメイン保護部26と連通して設けられて乗員P2の頭部Tの前方に展開及び膨張する。サブ保護部27とメイン保護部26とは、2つの連通孔32を通じて互いに連通している。サブ保護部27は、メイン保護部26における第1テザー28との連結位置よりも若干後側に位置している。展開及び膨張時におけるサブ保護部27の上端の高さは、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の上端の高さよりも若干高くなっている。
【0031】
第2テザー29は、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の後部の外縁とシート14のシートバック17内のフレーム20の上部とを連結している。すなわち、第2テザー29は、前端部がメイン保護部26の後部の外縁における上部寄りの位置に縫い付けて固定され、後端部がフレーム20の上部にメイン保護部26の後端部及びインフレータ22と一緒に固定されている。
【0032】
次に、ファーサイドエアバッグ装置19の作用について説明する。
図2~
図4に示すように、車両10の側壁部11,12のうち、例えば側壁部11に対して側方から衝撃が加わると、側壁部11から遠い側のシート14に着座している乗員P2が、側壁部11側に倒れ込もうとする。このとき、シート14におけるシートバック17の内部で折り畳まれているエアバッグ21がインフレータ22からの膨張用ガスの供給を通じて車両10の幅方向に並ぶ2つのシート13,14間で後方から前方に向けて展開及び膨張する。
【0033】
すなわち、
図2及び
図4~
図6に示すように、エアバッグ21は、メイン保護部26が乗員P2の胸部から頭部Tにかけての部位と側方で対応する位置に展開及び膨張するとともに、サブ保護部27が乗員P2の頭部Tの前方に展開及び膨張する。これにより、側壁部11側に倒れ込もうとする乗員P2の特に頭部Tがメイン保護部26にぶつかる。すると、メイン保護部26が乗員P2によって側壁部11側に押されてエアバッグ21がフレーム20の上部に対する固定部分であるメイン保護部26の後端部を回転中心として回転しようとする。
【0034】
しかしながら、メイン保護部26は、第1テザー28及び第2テザー29によって乗員P2側に引っ張られるので、上述のエアバッグ21の回転が抑制される。このため、メイン保護部26にぶつかった乗員P2は、メイン保護部26からの反力を受けるので、特に頭部Tにおいてメイン保護部26によって受け止められて拘束される。なお、側壁部11に対して衝撃が加わって乗員P2が前方または右斜め前方に倒れ込もうとした場合には、乗員P2の頭部Tがサブ保護部27によって受け止められて拘束される。このため、乗員P2の頭部Tがサブ保護部27によって効果的に保護される。
【0035】
このように、ファーサイドエアバッグ装置19のエアバッグ21では、車両10の側壁部11に加わった衝撃によって移動される乗員P2の特に頭部Tを、メイン保護部26及びサブ保護部27によって拘束することができる。このため、エアバッグ21による乗員P2の特に頭部Tに対する拘束性を向上させることができる。したがって、エアバッグ21により乗員P2の頭部Tを特に効果的に拘束して保護することができる。
【0036】
なお、車両10の側壁部12に対して側方から衝撃が加わったときには、上述と同様に、側壁部12から遠い側のシート13に着座している乗員P1が側壁部12側に倒れ込もうとする。そして、この倒れ込もうとする乗員P1は、上述と同様に、シート13のシートバック17から展開及び膨張するエアバッグ21によって効果的に拘束されて保護される。
【0037】
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)ファーサイドエアバッグ装置19において、エアバッグ21は、乗員P1、P2の胸部から頭部Tにかけての部位と側方で対応する位置に展開及び膨張するメイン保護部26と、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の前部とシートバック17内のフレーム20とを乗員P1,P2側で連結する第1テザー28とを備えている。
【0038】
この構成によれば、展開及び膨張時のメイン保護部26の前部が第1テザー28によって乗員P1,P2側に引っ張られるので、展開及び膨張時のメイン保護部26が乗員P1,P2から離れるように移動することを抑制できる。すなわち、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の前部とシートバック17内のフレーム20とを第1テザー28によって乗員P1,P2側で連結するだけで、展開及び膨張時のメイン保護部26が乗員P1,P2から側方へ離れるように移動することを抑制できる。したがって、簡単な構造でエアバッグ21による乗員P1,P2に対する拘束性を確保することができる。
【0039】
(2)ファーサイドエアバッグ装置19において、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の前部と第1テザー28との連結位置は、シートバック17内のフレーム20と第1テザー28との連結位置よりも高い位置にある。
【0040】
この構成によれば、展開及び膨張時におけるメイン保護部26が第1テザー28によって下側にも引っ張られるので、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の浮き上がりを抑制できる。すなわち、メイン保護部26の展開及び膨張時の位置が上方へずれることを抑制できる。
【0041】
(3)ファーサイドエアバッグ装置19において、エアバッグ21は、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の乗員P1,P2側の面にメイン保護部26と連通して設けられて乗員P1,P2の頭部Tの前方に展開及び膨張するサブ保護部27を備えている。サブ保護部27は、メイン保護部26における第1テザー28との連結位置よりも後側に位置している。
【0042】
この構成によれば、展開及び膨張時のメイン保護部26が第1テザー28によって乗員P1,P2側に引っ張られることで、乗員P1,P2の頭部Tの前方においてサブ保護部27を精度よく展開及び膨張させることができる。したがって、乗員P1,P2の頭部Tの前方への移動をサブ保護部27によって効果的に抑制できる。
【0043】
(4)ファーサイドエアバッグ装置19において、エアバッグ21は、展開及び膨張時におけるメイン保護部26の後部とシートバック17内のフレーム20とを連結する第2テザー29を備えている。
【0044】
この構成によれば、展開及び膨張時のメイン保護部26の後部が第2テザー29によって乗員P1,P2側に引っ張られるので、展開及び膨張時のメイン保護部26の乗員P1,P2に対する拘束力を向上できる。
【0045】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0046】
・第2テザー29は、省略してもよい。
・サブ保護部27は、省略してもよい。
・展開及び膨張時におけるメイン保護部26の前部と第1テザー28との連結位置は、必ずしもシートバック17内のフレーム20と第1テザー28との連結位置よりも高い位置にある必要はない。
【0047】
・展開及び膨張時のサブ保護部27の乗員P1,P2側の面における先端部に、サブ保護部27よりも小さい袋状の小膨張部をサブ保護部27と連通して設けるようにしてもよい。このようにすれば、乗員P1,P2が前方へ倒れ込もうとした場合に、乗員P1,P2が上記小膨張部に引っ掛かり易くなるので、乗員P1,P2の前方への移動を効果的に抑制できる。
【0048】
・ファーサイドエアバッグ装置19を幅方向に3つ以上のシートが並ぶ車両に適用してもよい。
・ファーサイドエアバッグ装置19を車両以外の乗物、例えば航空機や船舶に適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…車両
11,12…側壁部
13,14…シート
16…シートクッション
17…シートバック
18…ヘッドレスト
19…ファーサイドエアバッグ装置
20…フレーム
21…エアバッグ
22…インフレータ
23…リテーナ
24…制御装置
25…衝撃センサ
26…メイン保護部
27…サブ保護部
28…第1テザー(テザー)
29…第2テザー
30…ボルト
31…ナット
32…連通孔
P1,P2…乗員
T…頭部