(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】制御装置、プログラム、車両、車両制御システム及び動作方法
(51)【国際特許分類】
B60W 40/09 20120101AFI20240528BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240528BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240528BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240528BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60W40/09
B60W50/14
B60W60/00
G08G1/16 C
G08G1/09 V
(21)【出願番号】P 2021113073
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100139491
【氏名又は名称】河合 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 豊和
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 寛之
(72)【発明者】
【氏名】桜田 伸
(72)【発明者】
【氏名】松下 真人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 行成
(72)【発明者】
【氏名】松谷 慎太郎
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-18185(JP,A)
【文献】特開2016-184276(JP,A)
【文献】特開2015-83417(JP,A)
【文献】特開2015-210680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が運転者による
安全な走行に支障を来しうる不適切な所定の状態を呈する運転操作に対し第1の介入を行う程度を示す情報を格納する記憶部と、
前記程度の上昇に応じて、前記運転操作が前記所定の状態を呈する前に、前記車両に前記運転操作に対し第2の介入を行わせるための指示を出力する制御部とを有
し、
前記程度は、前記第1の介入の頻度、又は当該第1の介入の対象とされた運転操作の項目の数に対応する、
制御装置。
【請求項2】
請求項1
において、
前記記憶部には前記運転者の年齢の情報が格納され、
前記制御部は、前記年齢を加味して前記車両に前記第2の介入を行わせる、
制御装置。
【請求項3】
請求項
1又は2において、
前記第1及び第2の介入の対象とされる運転操作の項目は、ステアリング操作、アクセル操作、及びブレーキ操作を含む、
制御装置。
【請求項4】
請求項
3において、
前記第2の介入は、更に、前記運転者に提示する経路の変更、及び照明操作を含む、
制御装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかにおいて、
前記制御部は、前記車両に前記程度を示す情報を出力させるための指示を更に出力する、
制御装置。
【請求項6】
コンピュータに実行されることで当該コンピュータを請求項1~
5のいずれかに記載の制御装置として動作させる、プログラム。
【請求項7】
請求項
5において、
前記制御装置からの前記程度を示す情報を出力させるための指示に応じ、当該程度を示す情報を前記運転者に向け出力する、
車両。
【請求項8】
車両と、当該車両と通信する制御装置とを有する車両制御システムであって、
前記制御装置は、
前記車両が運転者による
安全な走行に支障を来しうる不適切な所定の状態を呈する運転操作に対し第1の介入を行う程度を示す情報を格納する記憶部と、
前記程度の上昇に応じて、前記運転操作が前記所定の状態を呈する前に、前記車両に前記運転操作に対し第2の介入を行わせるための指示を出力する制御部とを有
し、
前記程度は、前記第1の介入の頻度、又は当該第1の介入の対象とされた運転操作の項目の数に対応する、
車両制御システム。
【請求項9】
請求項
8において、
前記記憶部には前記運転者の年齢の情報が格納され、
前記制御部は、前記年齢を加味して前記車両に前記第2の介入を行わせる、
車両制御システム。
【請求項10】
請求項
8~9のいずれかにおいて、
前記第1及び第2の介入の対象とされる運転操作の項目は、ステアリング操作、アクセル操作、及びブレーキ操作を含む、
車両制御システム。
【請求項11】
請求項
10において、
前記第2の介入は、更に、前記運転者に提示する経路の変更、及び照明操作を含む、
車両制御システム。
【請求項12】
請求項
8~11のいずれかにおいて、
前記制御部は、前記車両に前記程度を示す情報を出力させるための指示を更に出力する、
車両制御システム。
【請求項13】
車両と、当該車両と通信する制御装置とを有する車両制御システムの動作方法であって、
前記制御装置は、前記車両が運転者による
安全な走行に支障を来しうる不適切な所定の状態を呈する運転操作に対し第1の介入を行う程度を示す情報を格納し、前記程度の上昇に応じて、前記運転操作が前記所定の状態を呈する前に、前記車両に前記運転操作に対し第2の介入を行わせるための指示を出力し、
前記車両は、前記指示に応答して前記第2の介入を行い、
前記程度は、前記第1の介入の頻度、又は当該第1の介入の対象とされた運転操作の項目の数に対応する、
動作方法。
【請求項14】
請求項
13において、
前記制御装置は、前記運転者の年齢の情報を有し、前記年齢を加味して前記車両に前記第2の介入を行わせる、
動作方法。
【請求項15】
請求項
13又は14において、
前記第1及び第2の介入の対象とされる運転操作の項目は、ステアリング操作、アクセル操作、及びブレーキ操作を含む、
動作方法。
【請求項16】
請求項
15において、
前記第2の介入は、更に、前記運転者に提示する経路の変更、及び照明操作を含む、
動作方法。
【請求項17】
請求項
13~16のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記車両に前記程度を示す情報を出力させるための指示を更に出力する、
動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、プログラム、車両、車両制御システム及び動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の制御装置が運転者による不適切な運転操作に介入することで、規範的な走行状態を得るための技術が提案されている(例えば、特許文献1)。また、車両の制御装置が介入の内容を運転者に通知して、運転操作についての反省を促す技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-219830号公報
【文献】特開2017-218055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転操作に対する介入を行う際、運転者にとって利便性を向上させる余地がある。
【0005】
本開示は、運転者における利便性を向上させることが可能な制御装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における制御装置は、車両が運転者による所定の状態を呈する運転操作に対し第1の介入を行う程度を示す情報を格納する記憶部と、前記程度の上昇に応じて、前記運転操作が前記所定の状態を呈する前に、前記車両に前記運転操作に対し第2の介入を行わせるための指示を出力する制御部とを有する。
【0007】
本開示における車両制御システムは、車両と、当該車両と通信する制御装置とを有する車両制御システムであって、前記制御装置は、前記車両が運転者による所定の状態を呈する運転操作に対し第1の介入を行う程度を示す情報を格納する記憶部と、前記程度の上昇に応じて、前記運転操作が前記所定の状態を呈する前に、前記車両に前記運転操作に対し第2の介入を行わせるための指示を出力する制御部とを有する。
【0008】
本開示における車両制御システムの動作方法は、車両と、当該車両と通信する制御装置とを有する車両制御システムの動作方法であって、前記制御装置は、前記車両が運転者による所定の状態を呈する運転操作に対し第1の介入を行う程度を示す情報を格納し、前記程度の上昇に応じて、前記運転操作が前記所定の状態を呈する前に、前記車両に前記運転操作に対し第2の介入を行わせるための指示を出力し、前記車両は、前記指示に応答して前記第2の介入を行う。
【発明の効果】
【0009】
本開示における制御装置等によれば、運転者における利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】車両制御システムの動作例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、一実施形態における車両制御システムの構成例を示す図である。車両制御システム1は、ネットワーク11を介して互いに情報通信可能に接続される、それぞれ一以上のサーバ装置10及び車両12を有する。サーバ装置10は、例えば、クラウドコンピューティングシステム又はその他のコンピューティングシステムに属し、各種機能を実装するサーバとして機能するサーバコンピュータである。車両12は、通信機能と情報処理機能とを備える乗用車、商用車等であって、移動通信ネットワークを介してネットワーク11に接続される。車両12は、運転手によって運転されるが、運転の一部が自動化されていてもよい。車両12は、運転者による運転操作が車両12の安全な走行に支障を来しうるような不適切な状態を呈すると、運転操作に介入して安全な走行を確保する。ネットワーク11は、例えばインターネットであるが、アドホックネットワーク、LAN、MAN(Metropolitan Area Network)、もしくは他のネットワーク又はこれらいずれかの組合せが含まれる。
【0013】
本実施形態において、「制御装置」としてのサーバ装置10は、車両12による運転者の運転操作に対する介入を制御する。サーバ装置10は、車両12が運転者による所定の状態、つまり車両12の安全な走行に支障を来しうる不適切な状態を呈する運転操作(以下、不適切運転操作という)に対し介入(以下、対処的介入という)を行う程度を示す情報を格納する記憶部と、対処的介入の程度の上昇に応じて、運転操作が所定の状態を呈する、つまり不適切運転操作に該当する前に、車両12に運転操作に対し介入(以下、予備的介入という)を行わせるための指示を出力する制御部とを有する。車両12による対処的介入の程度の上昇を、予備的介入の発生として運転者が察知することで、自らの運転技量が低下していることを運転者が自覚する可能性が高くなる。かかる態様で運転技量の低下を運転者に自覚させることで、運転技量の低下を直接的に評価する情報を通知する場合と比較して、運転者における心理的抵抗を低減させることが可能となる。よって、運転者における利便性を向上させることが可能となる。
【0014】
図2は、サーバ装置10の構成例について説明するための図である。サーバ装置10は、通信部21、記憶部22、制御部23、入力部25、及び出力部26を有する。サーバ装置10は、例えば、一のコンピュータである。または、サーバ装置10は、情報通信可能に接続されて連携動作する二以上のコンピュータで構成されてもよい。その場合、
図2に示す構成は二以上のコンピュータに適宜に配置される。
【0015】
通信部21は、一以上の通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LANインタフェースである。通信部21は、サーバ装置10の動作に用いられる情報を受信し、またサーバ装置10の動作によって得られる情報を送信する。サーバ装置10は、通信部21によりネットワーク11に接続され、ネットワーク11経由で車両12と情報通信を行う。
【0016】
記憶部22は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する一以上の半導体メモリ、一以上の磁気メモリ、一以上の光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)である。RAMは、例えば、SRAM(Static RAM)又はDRAM(Dynamic RAM)である。ROMは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)である。記憶部22は、サーバ装置10の動作に用いられる情報と、サーバ装置10の動作によって得られた情報とを格納する。
【0017】
制御部23は、一以上のプロセッサ、一以上の専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)等の専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等である。制御部23は、サーバ装置10の各部を制御しながら、サーバ装置10の動作に係る情報処理を実行する。
【0018】
入力部25は、一以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイクロフォンである。入力部25は、サーバ装置10の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付け、入力される情報を制御部23に送る。
【0019】
出力部26は、一以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイである。出力部26は、サーバ装置10の動作によって得られる情報を出力する。
【0020】
サーバ装置10の機能は、制御プログラムを、制御部23に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。制御プログラムは、サーバ装置10の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、そのステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。すなわち、制御プログラムは、コンピュータをサーバ装置10として機能させるためのプログラムである。また、サーバ装置10の一部又は全ての機能が、制御部23に含まれる専用回路により実現されてもよい。また、制御プログラムは、サーバ装置10に読取り可能な非一過性の記録・記憶媒体に格納され、サーバ装置10が媒体から読み取ってもよい。
【0021】
図3は、本実施形態に関する車両12の構成例を示す。車両12は、通信部31、記憶部32、制御部33、測位部34、入力部35、出力部36、及び検知部37を有する。これらは、一の制御装置として構成されてもよいし、二以上の制御装置により構成されてもよい。制御装置は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。また、制御装置は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン端末、ナビゲーション装置等を含んで構成されてもよい。各部は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワークにより、互いに又は車両12の他の機器、装置と情報通信可能に接続される。
【0022】
通信部31は、一以上の通信用インタフェースを含む。通信用インタフェースは、例えば、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、若しくは5G(5th Generation)などの移動通信規格に対応したインタフェースである。通信部31は、制御部33の動作に用いられる情報を受信し、また制御部33の動作によって得られる情報を送信する。制御部33は、通信部31により、移動体通信の基地局を介してネットワーク11に接続され、ネットワーク11経由で他の装置と情報通信を行う。
【0023】
記憶部32は、一以上の半導体メモリ、一以上の磁気メモリ、一以上の光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせを含む。半導体メモリは、例えば、RAM又はROMである。RAMは、例えば、SRAM又はDRAMである。ROMは、例えば、EEPROMである。記憶部32は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部32は、制御部33の動作に用いられる情報と、車載装置30の動作によって得られた情報とを格納する。
【0024】
制御部33は、一以上のプロセッサ、一以上の専用回路、又はこれらの組み合わせを含む。プロセッサは、CPUなどの汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA又はASICである。制御部33は、制御部33の各部を制御しながら、車両12の動作に係る情報処理を実行する。
【0025】
測位部34は、一以上のGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を含む。GNSSには、例えば、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)、BeiDou、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、及びGalileoの少なくともいずれかが含まれる。測位部34は、車両12の位置情報を取得する。
【0026】
入力部35は、一以上の入力用インタフェースを含む。入力用インタフェースは、例えば、物理キー、静電容量キー、ポインティングデバイス、ディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン、又は音声入力を受け付けるマイクロフォンである。入力インタフェースは、さらに、撮像画像又は画像コードを取り込むカメラ、又はICカードリーダーを含んでもよい。入力部35は、制御部33の動作に用いられる情報を入力する操作を受け付け、入力される情報を制御部33に送る。
【0027】
出力部36には、一以上の出力用インタフェースを含む。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD又は有機ELディスプレイである。出力部36は、制御部33の動作によって得られる情報を出力する。
【0028】
検知部37は、車両12の各部の状態を検知する一以上のセンサ類、又はセンサ類とのインタフェースを有し、センサ類による検知結果を示す情報を制御部33へ送る。センサ類は、エンジンの始動・停止操作、ステアリング操作、シフトレンジ操作、アクセル操作、ブレーキ操作、照明操作といった運転者による各種運転操作を検知するセンサ、各種運転操作により駆動されるエンジン、ステアリング、シフトレンジ、ブレーキといった駆動機構又は照明装置等の動作を検知するセンサ、車輪速、加減速度、ヨーレートといった車両12の運動状態を検知するセンサ、レーダ、カメラといった車両12の周辺状況を検知するセンサ等を含む。
【0029】
制御部33の機能は、制御プログラムを、制御部33に含まれるプロセッサで実行することにより実現される。制御プログラムは、制御部33の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、そのステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムである。すなわち、制御プログラムは、コンピュータを制御部33として機能させるためのプログラムである。また、制御部33の一部又は全ての機能が、制御部33に含まれる専用回路により実現されてもよい。
【0030】
制御部33は、車両12の各種機構、装置を制御するための情報を生成し、各種機構、装置の制御回路へ制御のための情報を送ってそれらを制御する。制御部33は、運転操作を受け付ける機構を制御することで、運転操作に対し介入を行う。
【0031】
図4は、本実施形態における車両制御システムの動作手順を説明するためのシーケンス図である。
図4は、サーバ装置10と車両12との連係動作にかかる手順を示す。
図4におけるサーバ装置10及び車両12の各種情報処理に係るステップは、それぞれサーバ装置10の制御部23及び車両12の制御部33により実行される。また、サーバ装置10と車両12との各種情報の送受に係るステップは、サーバ装置10の制御部23と車両12の制御部33がそれぞれ通信部21及び31を介して互いに情報を送受することにより実行される。サーバ装置10の制御部23及び車両12の制御部33は、送受する情報を記憶部22及び32にそれぞれ適宜格納する。なお、サーバ装置10は、一以上の車両12のそれぞれについて、
図4で示す手順を実行することが可能である。
【0032】
ステップS400において、車両12は、運転者の運転操作に対処的介入を行い、履歴情報を格納する。制御部33は、例えば、エンジンの動作、車両12の位置の変化等に基づいて運転開始を検出すると、運転操作の検出、及び不適切運転操作の判定を開始する。そして、制御部33は、不適切運転操作と判定した運転操作に対し対処的介入のための制御を行い、履歴情報を記憶部32に格納する。
【0033】
車両12の制御部33は、検知部37による検知結果から車両12に対する運転者の運転操作とその操作量を検出する。運転操作の操作量は、ステアリングの操舵角、アクセル又はブレーキの踏込み量等である。そして、制御部33は、運転操作が不適切運転操作に該当するか否かを判定する。その際、制御部33は、検知部37による検知結果から車両12の運動状態及び車両12の周辺状況を、測位部34により検知される位置情報と記憶部32に格納される地図情報から車両12の周辺環境の情報を、それぞれ導出し、通信部31により取得される道路交通情報、天候情報等と共に、判定に加味する。例えば、制御部33は、車両12の走行路の形状、他車両又は障害物の位置、道路環境、天候に起因する路面状態、天候又は時間帯に起因する光量等に応じ、場面ごとの規範的な車両12の運動状態と、規範的な運動状態を得るための運転操作の規範的な操作量の範囲を任意のアルゴリズムにより導出する。規範的な操作量の範囲は、その範囲の操作量であれば車両12の運転の安全性に支障はなく、その範囲を逸脱すると安全性に支障を来す蓋然性が高まるような、操作量の範囲であって、予め任意に定められて記憶部32に格納される。制御部33は、規範的な操作量の範囲を逸脱する操作量を伴う運転操作を、不適切運転操作と判定する。例えば、直線路又はカーブを走行中の車両12が車線を逸脱しうるようなステアリング、アクセル又はペダル操作、他車両等に接触しうるようなステアリング、アクセル又はペダル操作、冠水路面又は凍結路面においてスリップしうるようなステアリング、アクセル又はペダル操作といった運転操作が、不適切運転操作と判定される。日照が少ない天候時又は夜間に照明の点灯操作をせずに運転する無灯火運転も、不適切運転操作に含まれる。
【0034】
制御部33は、不適切運転操作と判定した運転操作に対し、対処的介入を行う。制御部33は、不適切運転操作と判定した運転操作における操作量が、その運転操作に対応する規範的操作量の範囲に入るような制御量を、運転操作を受け付ける機構に指示する。各機構が指示された制御量に応じ、規範的な操作量の範囲で動作することで、場面に応じた規範的な、又はそれに近い車両12の運動状態が得られる。あるいは、制御部33は、車両12において運転操作に応じて動作する機構を制御して、車両12の規範的な運動状態を得てもよい。また、制御部33は、不適切運転操作に対する運転者の注意を喚起するために音声等の通知を出力部36により出力してもよい。かかる通知の出力も対処的介入に含まれる。
【0035】
また、制御部33は、運転操作に対し行った対処的介入の履歴の情報(以下、履歴情報という)を記憶部32に格納する。履歴情報は、対処的介入の程度を示す情報と、対処的介入の状況を示す情報とを含む。対処的介入の程度を示す情報は、対処的介入が行われた日時、対処的介入の対象の運転操作の項目(以下、介入項目という)、介入項目毎の制御量等を示す。介入項目は、ステアリング操作、アクセル操作、ブレーキ操作といった項目を含む。対処的介入の状況を示す情報は、対処的介入が行われたときの車両12の運動状態、周辺状況等を示す。
【0036】
ステップS402において、車両12は、履歴情報をサーバ装置10へ送る。例えば、制御部33は、予め設定される、例えば1日~数日にわたる任意のモニタリング期間が経過するごとに、直近のモニタリング期間における履歴情報を記憶部32から読み出してサーバ装置10へ送る。そして、サーバ装置10は、履歴情報を受けて記憶部22に格納する。ここにおいて、サーバ装置10は、運転操作に対し対処的介入を行う程度を示す履歴情報を記憶部22に格納する。
【0037】
ステップS404において、サーバ装置10は、履歴情報に基づいて、予備的介入の要否を判断する。制御部23は、履歴情報に含まれる対処的介入の程度が任意の基準以上の場合には予備的介入が必要と判断し(ステップS404の必要)、基準に満たなければ予備的介入が不要と判断する(ステップS404の不要)。
【0038】
対処的介入の程度は、例えば対処的介入の頻度である。頻度は、一のモニタリング期間における対処的介入の回数であってもよいし、複数のモニタリング期間における回数の合計又は平均(加重平均を含む)であってもよい。対処的介入の回数は、一の介入項目における対処的介入の回数であってもよいし、二以上の介入項目における回数の合計又は平均であってもよい。また、対処的介入の程度は、介入項目の数である。あるいは、対処的介入の程度は、一以上の介入項目における制御量の合計、平均値といった代表値である。複数の介入項目についての制御量の代表値を求める場合、制御部33は、異なる介入項目の制御量を予め定める任意の係数等により正規化した後、代表値を求める。さらに、制御部33は、車両12が走行した経路を求め、任意の区間ごとに設定される運転の難易度に応じて、対処的介入の程度を平準化してもよい。例えば、制御部33は、難度が高い区間における対処的介入の程度を低めに、難度が低い区間における程度を高めに補正するような重み付けを行うことが可能である。運転操作の難度は、例えば、標準的な技量の運転手において予想される、又は実際に集計された、ステアリングの回数、加減速の回数等が大きいほど高く、小さいほど低くなるように予め設定されて記憶部32に格納される。制御部23は、例えば、モニタリング期間(例えば1日)の対処的介入の程度が基準値以上の場合に予備的介入が必要と判断し、基準値を下回る場合に予備的介入は不要と判断する。例えば、制御部23は、対処的介入の回数が基準回数(例えば5回)以上、又は介入項目の個数が基準個数(例えば、5個)以上といった場合に予備的介入が必要と判断し、いずれも基準回数又は基準個数を下回る場合に予備的介入が不要と判断する。
【0039】
ステップS404で予備的介入が必要と判断された場合、ステップS406が実行される。一方、予備的介入が必要と不要された場合、ステップS406以降は実行されず、処理サイクルが終了する。そして、ステップS400からの処理が繰り返される。
【0040】
ステップS406において、サーバ装置10は、対処的介入の程度の通知と予備的介入の開始とを車両12に指示するための情報を生成する。制御部23は、通知すべき対処的介入の程度の情報を生成する。また、制御部23は、予備的介入を開始するための運転操作の操作量の基準範囲を設定する。かかる基準範囲は、規範的な操作量の範囲より狭く設定される。よって、運転操作の操作量は不適切運転操作に該当するより早いタイミングで基準範囲を逸脱するので、その分早いタイミングで予備的介入が必要と判断される。制御部23は、予備的介入のための操作量の基準範囲を対処的介入の程度に応じて段階的に設定してもよい。例えば、対処的介入の程度が高いほど狭い基準範囲が設定される。
【0041】
ステップS408において、サーバ装置10は、対処的介入の程度の通知と予備的介入の開始とを車両12に指示するための情報を、車両12へ送る。ここにおいて、制御部23は、対処的介入の程度の上昇に応じて、運転操作が不適切状態を呈する前に、車両12に運転操作に対し予備的介入を行わせるための指示を出力する。車両12は、サーバ装置10から送られる情報を受ける。
【0042】
ステップS410おいて、車両12は、対処的介入の程度を運転者に通知する。例えば、車両12のエンジン始動直後、シフトレンジのパーキングポジションが解除された直後といったタイミングで、制御部33は、出力部36により、運転者に対し対処的介入の程度を通知する。例えば、直近のモニタリング期間における対処的介入の回数、介入項目の個数が、ディスプレイに表示される。そうすることで、運転者に、自らの運転技術の低下を自覚し得る機会を提供することが可能となる。
【0043】
ステップS412において、車両12は、予備的介入を開始する。制御部33は、サーバ装置10にて設定された操作量の基準範囲を、検出した運転操作の操作量が逸脱したときに、つまり、運転操作が不適切な状態を呈する前に、予備的介入を行う。制御部33は、予備的介入の対象である運転操作の操作量が、その運転操作に対応する規範的操作量の範囲に入るような制御量を、運転操作を受け付ける機構に指示する。例えば、直線路又はカーブを走行中の車両12が車線を逸脱しうるようなステアリング、アクセル又はペダル操作、他車両等に接触しうるようなステアリング、アクセル又はペダル操作、冠水路面又は凍結路面においてスリップしうるようなステアリング、アクセル又はペダル操作といった運転操作について、不適切運転操作と判定されるよりも早い段階で予備的介入が行われる。各機構が指示された制御量に応じて動作することで、場面に応じた車両12の運動状態が得られる。あるいは、制御部33は、車両12において運転操作に応じて動作する機構を制御して、車両12の規範的な運動状態を得てもよい。なお、運転操作が不適切運転操作に該当するより早い段階で運転者の注意を喚起するために音声等の通知を出力することも、予備的介入に含まれる。また、運転者の入力に応じて出発地から目的地までの経路を導出して運転者に提示する際、運転操作の難度が低く、運転操作が比較的容易な経路を優先的に提示することも、予備的介入に含まれる。運転操作の難度は、経路に含まれる区間ごとに、ステアリングの回数、加減速の回数等が大きいほど高く、小さいほど低くなるように予め設定されて記憶部32に格納されている。更に、夜間(例えば、任意に設定される日没時刻から日の出時刻まで)に至る前に照明装置を点灯することも、予備的介入に含まれる。
【0044】
車両12において予備的介入が行われると、運転者は、介入が行われたことを、運転操作を通じて察知することが可能となる。
【0045】
ステップS412で予備的介入を行ったとき車両12は、対処的介入の程度を示す情報と同様の予備的介入の程度を示す情報を、履歴情報の一部として記憶部32に格納しておくことが可能である。車両12から履歴情報をサーバ装置10へ送り、サーバ装置10において、予備的介入の程度を示す情報に応じて、更に早い段階の予備的介入の要否を判定してもよい。
【0046】
サーバ装置10がステップS406において、予備的介入の開始のための操作量の基準範囲を設定するとき、制御部23は、車両12の運転者の属性を加味してもよい。例えば、記憶部22には、運転者についての運転者情報が格納される。運転者情報は、車両12ごとに、車両の識別情報とこれに対応付けられた運転者の識別情報、及び運転者の属性の情報を有する。運転者の属性は、運転者の性別、年齢、運転経験等を含む。運転者情報は、例えば、車両12の運転者の操作に応じて車両12からサーバ装置10へ送られる。あるいは、車両12の運転者が操作する任意の通信端末装置から運転者情報がサーバ装置10へ送られる。制御部23は、例えば、運転者の年齢に応じて、予備的介入のための操作量の基準範囲を変化させることが可能である。例えば、運転者の年齢が高くなるほど、より早い段階で予備的介入が開始されるように、基準範囲が狭く設定される。そうすることで、高齢の運転者ほどより早い段階で予備的介入が開始されることを、運転操作を通じて実感することが可能となり、運転技術の低下を自覚する機会が増加する。よて、高齢者が運転免許証の返納を検討する契機を提供することが可能となる。
【0047】
上述のように、本実施形態によれば、運転者の心理的抵抗を低減させつつ運転技量の低下を自覚させることが可能となる。よって、運転者における利便性を向上させることが可能となる。
【0048】
上述における「制御装置」に対応するサーバ装置10の動作の一部以上は、適宜、車両12の制御部33が担うことが可能である。その場合、サーバ装置10及び車両12の制御部33、あるいは車両12の制御部33が、「制御装置」に対応する。車両12の制御部33が、「制御装置」に対応する場合、車両12の制御部33は、他の車両と情報通信を行ってサーバとして機能するとともに、自車両の動作を制御するように構成される。
【0049】
上述において、実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 車両制御システム
10 サーバ装置
11 ネットワーク
12 車両
21、31 通信部
22、32 記憶部
23、33 制御部
34 測位部
25、35 入力部
26、36 出力部
37 検知部