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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電気装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021119545
(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公開番号】P2023015638
(43)【公開日】2023-02-01
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390001812
【氏名又は名称】株式会社デンソーエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮田 晋
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/017139(WO,A1)
【文献】特開平10-021988(JP,A)
【文献】特開2013-239881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/02
G10K 9/12-9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気装置であって、
基板孔(7a)が形成された電気基板(7)と、
前記電気基板を収容する筐体(1)と、
前記筐体内に配置され、先端(301a、302a)と前記筐体に固定された基端(301b、302b)とを有し、前記基板孔に挿通された軸部(30、301、302)と、
前記筐体内に配置され、前記筐体に固定され、前記軸部の前記先端に対向するように窪んだ凹形状(44a)を有する凹部(44)と、
前記電気基板のうち前記基板孔の周縁を成す孔周縁部(73)と前記凹部との間、および、前記軸部と前記凹部との間に介在し、接着剤(451)で構成され、前記軸部と前記孔周縁部と前記凹部とを接着する接着部(45)と
前記筐体内に配置された駆動部(63)と、
前記電気基板と前記筐体の外部とを電気的に接続するターミナル(5)とを備え、
前記基板孔は、前記孔周縁部と前記軸部との間に隙間が生じる大きさとされており、
前記電気基板には、前記駆動部を駆動させるための回路が形成され、
前記ターミナルは、前記筐体の内壁面(21a)から露出して前記電気基板に向かって突出したターミナル突出部(51)を備えており、前記ターミナル突出部の端部(511)において前記電気基板に接続されている、電気装置。
【請求項2】
前記ターミナルは、前記筐体を貫通する部分(53)と前記ターミナル突出部との間にターミナル曲げ部(52)を備えており、
前記ターミナル曲げ部は、前記筐体の内壁面から露出している、請求項に記載の電気装置。
【請求項3】
前記駆動部と前記電気基板とを電気的に接続する端子金具(65)を備え、
前記端子金具は、前記駆動部を支持するフレーム(61)から露出して前記電気基板に向かって突出した端子金具突出部(652)を備えており、前記端子金具突出部の端部(652a)において前記電気基板に接続されており、
前記端子金具突出部は、前記ターミナル突出部よりも長くされている、請求項またはに記載の電気装置。
【請求項4】
前記端子金具は、前記駆動部に電気的に接続された端部(651)と前記端子金具突出部との間に端子金具曲げ部(653)を備えており、
前記端子金具突出部は、前記端子金具曲げ部によって、前記電気基板に向かって突出している、請求項に記載の電気装置。
【請求項5】
前記筐体内に配置された第1基板取付部(281)と第2基板取付部(282)とを備え、
前記軸部と前記凹部と前記基板孔と前記孔周縁部と前記接着部はそれぞれ複数設けられ、
前記第1基板取付部は、複数の前記軸部に含まれる第1軸部(301)と前記筐体との間に設けられ、前記第1軸部を前記筐体に固定し、
前記第2基板取付部は、複数の前記軸部に含まれる第2軸部(302)と前記筐体との間に設けられ、前記第2軸部を前記筐体に固定し、前記第1基板取付部よりも前記ターミナルと前記電気基板との接続部から遠い位置に配置され、前記第1基板取付部よりも柔軟性が高くされている、請求項ないしのいずれか1つに記載の電気装置。
【請求項6】
前記第1基板取付部は、
前記筐体の内部に形成された隔壁(22)から突出しており、
前記第1基板取付部の側面から突出した連結部(283)によって前記筐体の内壁面に連結されている、請求項に記載の電気装置。
【請求項7】
前記第2基板取付部は、
前記筐体の内部に形成された隔壁(22)から突出しており、
前記筐体の内壁面から離されている、請求項またはに記載の電気装置。
【請求項8】
前記駆動部は、発音体(6)のダイヤフラム(62)を振動させて音を発生させるためのものである、請求項ないしのいずれか1つに記載の電気装置。
【請求項9】
前記接着部は弾力性を有し、前記軸部と前記凹部とに比して柔らかい、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の電気装置。
【請求項10】
前記凹部は、前記軸部と前記孔周縁部とに対し離れて配置され、
前記接着部は、前記孔周縁部と前記凹部との間の隙間と、前記軸部と前記凹部との間の隙間とを埋めるように形成されている、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の電気装置。
【請求項11】
前記筐体は、前記軸部の前記基端が固定されたベース(2)と、該ベースに対し前記軸部の軸方向(Da)の一方側に配置され前記凹部が固定された一方側カバー(4)とを有し、
前記凹部は、前記電気基板と前記軸部とに対し前記軸方向の前記一方側に配置され、
前記一方側カバーは、該一方側カバーの周縁にカバー周縁部(41)を有し、
前記ベースは、該ベースの周縁にベース周縁部(211)を有し、
前記カバー周縁部と前記ベース周縁部は、前記一方側カバーと前記ベースとの境目が密封されるように互いに接着されている、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の電気装置。
【請求項12】
前記凹部の凹形状は、前記軸方向の前記一方側へ窪んでおり、
前記カバー周縁部は、前記軸方向の前記一方側へ窪んだ溝形状を有し、
前記ベース周縁部は、前記カバー周縁部の前記溝形状に挿入され該カバー周縁部に接着された溝挿入部(211a)を有している、請求項11に記載の電気装置。
【請求項13】
前記筐体は、前記電気基板が有する一面(71)に対向し該一面に沿って拡がる対向部(42)を有し、
前記対向部は前記一面に接着されている、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の電気装置。
【請求項14】
前記電気基板は、前記軸方向の前記一方側に設けられた一面(71)を有し、
前記一方側カバーは、前記一面に対向し該一面に沿って拡がり該一面に接着された対向部(42)を有している、請求項11または12に記載の電気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用警報器や車両用接近通報装置等に用いられる車両用発音器として、例えば特許文献1に記載されたものがある。この発音器では、ボイスコイルに電流を流して、ボイスコイルに連結されたダイヤフラムを振動させることで音が発生するようになっている。ボイスコイルは、発音体の金具とコネクタのターミナルとを介して、外部ハーネスに電気的に接続されるようになっている。
【0003】
また、この種の発音器において、発音体に加えて、発音体を駆動するための回路が形成された電気基板も発音器の筐体の内部に配置される場合がある。この場合には、ターミナルと端子金具は、この電気基板上の回路を介して接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-121249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1に記載の発音器などの電気装置は、例えば車両のエンジンルームに搭載される場合があり、その場合、電気装置は、低温から高温の温度環境にさらされることになる。このような環境で使用される電気装置は、温度変化による膨張収縮のストレスに起因して、不具合を生じるおそれがある。
【0006】
例えば、電気装置を構成する複数の構成部品が温度変化により膨張収縮することに起因して、電気装置が有する電気基板を変形させる力がその電気基板に加わることが想定される。そして、そのようにして電気基板が変形させられると、例えば、電気基板に実装された電気部品のハンダ付け部分においてクラックが発生し導通不良を生じる可能性がある。発明者の詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、温度変化に起因した不具合が電気基板で発生することを抑制することが可能な電気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の電気装置は、
基板孔(7a)が形成された電気基板(7)と、
電気基板を収容する筐体(1)と、
筐体内に配置され、先端(301a、302a)と筐体に固定された基端(301b、302b)とを有し、基板孔に挿通された軸部(30、301、302)と、
筐体内に配置され、筐体に固定され、軸部の先端に対向するように窪んだ凹形状(44a)を有する凹部(44)と、
電気基板のうち基板孔の周縁を成す孔周縁部(73)と凹部との間、および、軸部と凹部との間に介在し、接着剤(451)で構成され、軸部と孔周縁部と凹部とを接着する接着部(45)と
筐体内に配置された駆動部(63)と、
電気基板と筐体の外部とを電気的に接続するターミナル(5)とを備え、
基板孔は、孔周縁部と軸部との間に隙間が生じる大きさとされており、
電気基板には、駆動部を駆動させるための回路が形成され、
ターミナルは、筐体の内壁面(21a)から露出して電気基板に向かって突出したターミナル突出部(51)を備えており、ターミナル突出部の端部(511)において電気基板に接続されている
【0009】
このようにすれば、接着部と軸部とにより電気基板を保持すると共に、孔周縁部と軸部との間の隙間と、接着部の変形とによって、温度変化による筐体と電気基板との膨張収縮差を吸収することができる。従って、例えば軸部が基板孔に隙間無く嵌合している場合と比較して、筐体と電気基板との膨張収縮差に起因した電気基板の曲げ変形が生じにくい。そのため、温度変化に起因した不具合が電気基板で発生することを抑制することできる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】第1実施形態の電気装置である発音器の正面図である。
図1B】第1実施形態の発音器の右側面図、すなわち、図1AのIB方向の矢視図である。
図1C】第1実施形態の発音器の下面図、すなわち、図1AのIC方向の矢視図である。
図1D】第1実施形態の発音器の背面図、すなわち、図1BのID方向の矢視図である。
図2図1AのII-II断面を示した断面図である。
図3図1DのIII-III断面を示した断面図であって、第2軸部の近傍を拡大して示した図である。
図4】第1実施形態の発音器が有する背面カバーの単体を、図2の矢印IVの方向視で示した図である。
図5】第1実施形態において、電気基板と背面カバーとを取り付ける前の発音器を示した背面図である。
図6】第1実施形態において、電気基板と背面カバーとを取り付ける前の発音器を部材配置方向の一方側から見た斜視図であって、コネクタが紙面上側へ向いた姿勢でその発音器を示した図である。
図7】第1実施形態において、電気基板と背面カバーとを取り付ける前の発音器を部材配置方向の一方側から見た斜視図であって、コネクタが紙面下側へ向いた姿勢でその発音器を示した図である。
図8図5のうち端子金具の近傍を拡大して示した拡大図である。
図9】第1実施形態の発音器が有する電気基板の単体を、図2の矢印IXの方向視で示した図である。
図10図3のX-X断面を示した断面図であって、基板孔に挿入された第2軸部およびその近傍を拡大して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。なお、後述する他の実施形態を含む以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
本実施形態の電気装置である発音器10は、自動車に搭載されるものであり、例えば自動車の車室外に設置され、警報音を発生させるために使用される。なお、以下の説明では、自動車を単に車両と称することもある。
【0014】
図1A図1D図2に示すように、発音器10は、内部に空間が形成された筐体1と、複数のターミナル5と、発音体6と、電気基板7とを備えている。筐体1はベース2と正面カバー3と背面カバー4とで構成されており、そのベース2と正面カバー3と背面カバー4は何れも樹脂製である。その背面カバー4はベース2に対し部材配置方向Daの一方側に配置され、正面カバー3はベース2に対し部材配置方向Daの他方側に配置されている。また、発音体6と電気基板7は、筐体1内に収容されている。背面カバー4は本開示の一方側カバーに対応する。
【0015】
図2に示すように、ベース2は、ベース筒部21と隔壁22と遮蔽板24とコネクタ27とを備えている。ベース筒部21は略四角筒状に形成されているので、ベース筒部21は、ベース筒部21の内側を向いた内壁面であるベース内壁面21aを有している。そして、ベース筒部21は、部材配置方向Daの一方側に設けられた一端側開口部と、部材配置方向Daの他方側に設けられた他端側開口部とを有している。ベース筒部21の一端側開口部には、一端側開口部を覆う板状の背面カバー4が接合されている。
【0016】
詳細には、図3図5に示すように、背面カバー4は、その背面カバー4の周縁にカバー周縁部41を有し、そのカバー周縁部41は、背面カバー4の周縁の全長にわたって設けられ、環状に形成されている。これに対し、ベース筒部21は、そのベース筒部21における部材配置方向Daの一方側の端縁(すなわち、一端側開口部の周縁)にベース周縁部211を有している。そのベース筒部21における部材配置方向Daの一方側の端縁とは、言い換えれば、ベース2の周縁のうち部材配置方向Daの一方側に設けられた端縁である。ベース周縁部211は、そのベース筒部21における部材配置方向Daの一方側の端縁の全長にわたって設けられ、環状に形成されている。そして、カバー周縁部41とベース周縁部211は、背面カバー4とベース筒部21との境目が密封されるように互いに接着されている。
【0017】
更に詳しく言うと、カバー周縁部41は、部材配置方向Daの一方側へ窪んだ溝形状を有し、その溝形状は、背面カバー4の周縁の全長にわたって環状に延伸している。そして、ベース周縁部211は、カバー周縁部41の溝形状に挿入された溝挿入部211aを有し、その溝挿入部211aは、カバー周縁部41に対し接着剤411によって気密に接着されている。その接着剤411の種類としては種々想定されるが、その接着剤411は例えばシリコーン系接着剤である。
【0018】
図2に示すように、ベース筒部21の他端側開口部には、他端側開口部を覆う板状の正面カバー3が嵌合されている。
【0019】
筐体1内の空間は、ベース筒部21内に設けられた隔壁22によって、部材配置方向Daの一方側(別言すると、背面側)と他方側(別言すると、正面側)とに2分割されている。すなわち、筐体1の内部は、ベース筒部21と隔壁22と正面カバー3とによって形成された空間と、ベース筒部21と隔壁22と背面カバー4とによって形成された空間とに分かれている。このように、隔壁22は筐体1の内部に形成され、その筐体1内の空間を部材配置方向Daに仕切っている。
【0020】
隔壁22の内周部には、円形の貫通孔23が形成されている。その貫通孔23は、発音体6によって塞がれている。具体的には、隔壁22は、貫通孔23の開口端において、正面カバー3に向かって突出している。この突出した部分の先端部は内側に折り返されており、これにより形成された凹部に後述するフレーム61が嵌合されている。
【0021】
発音体6に対する部材配置方向Daの他方側には、遮蔽板24が配置されている。遮蔽板24は、正面カバー3の表面に付着した水等が発音体6に到達することを抑制し、水等の付着による発音体6の破損を防止するためのものである。遮蔽板24は、部材配置方向Daの他方側ほど拡径する中空の円錐台形状の外周部241と、部材配置方向Daの他方側に凸となるドーム状の内周部242とを含んで構成されている。遮蔽板24は、図示しない梁状の部材によって隔壁22に連結されている。
【0022】
発音体6によって発生した音は、隔壁22の突出部と、遮蔽板24との間を通って筐体1の外部へ向かう。この隔壁22と遮蔽板24とで構成された音の通路を、音通路81とする。
【0023】
遮蔽板24は、音通路81を通過した音の音圧を増幅するための構成を備えている。具体的には、遮蔽板24は、内周部242の外縁から正面カバー3に向かって突出した円筒部243を有している。そして、遮蔽板24の外周部241と円筒部243と正面カバー3とによって、共鳴室82が形成されている。また、遮蔽板24の内周部242と円筒部243と正面カバー3とによって、共鳴室83が形成されている。
【0024】
図5図6に示すように、隔壁22には、貫通孔23および発音体6から離れた場所に通気孔25が形成されている。この通気孔25は、ベース筒部21と隔壁22と正面カバー3とによって形成された空間と、ベース筒部21と隔壁22と背面カバー4とによって形成された空間との間に、温度変化に起因した圧力差が発生することを抑制するためのものである。また、通気孔25には、通気膜26が張られている。通気膜26は、空気を通し、水を遮断するように構成されている。
【0025】
図1A図2に示すように、正面カバー3は、ベース筒部21に対応して略四角形状とされている。正面カバー3の内周部には、遮蔽板24の外周部241に対応する位置に、円周状の貫通孔31が形成されている。貫通孔31は、音通路81を通って共鳴室82、83により音圧が増幅された音を筐体1の外部に放出するためのものである。
【0026】
また、正面カバー3は、梁状の連結部32と、筒部33とを有している。正面カバー3の貫通孔31の内側と外側は、その連結部32によって連結されている。連結部32は複数形成されており、複数の連結部32によって貫通孔31が複数に分けられている。この複数に分けられた貫通孔31によって、筐体1の内部の空間が筐体1の外部へ開放され、発音体6が発生させた音を外部に放出するための放音孔84が構成されている。
【0027】
図2に示すように、正面カバー3の筒部33は正面カバー3の外周部に設けられており、筐体1の内部に向かって部材配置方向Daの一方側に突出する円筒状に形成されている。筒部33は、ベース筒部21と隔壁22と正面カバー3の側壁とで囲まれた空間に突出するように配置されている。ベース筒部21と隔壁22と正面カバー3の側壁とで囲まれた空間のうち、筒部33の内側の部分が共鳴室85とされ、筒部33の外側の部分が共鳴室86とされている。
【0028】
発音体6が発生させた音は、音通路81を通り、共鳴室82、83、85、86によって音圧が増幅されて、放音孔84から筐体1の外部に放出される。
【0029】
図1A図1D図2図7に示すように、ベース2のコネクタ27は、ベース筒部21の外側に設けられ、ベース筒部21から部材配置方向Daに垂直な向きで突出した略四角筒状に形成されている。コネクタ27は、ベース筒部21の下面に配置されており、筐体1の下方向に開口している。
【0030】
図1C図2に示すように、コネクタ27の内部には、複数のターミナル5が配置されている。ターミナル5は、電気基板7と筐体1の外部とを電気的に接続するものである。別言すると、ターミナル5は、電気基板7と筐体1の外部とを通電可能に接続するものである。
【0031】
ターミナル5は、ベース筒部21の側壁を貫通しているので、ターミナル5のうちの一部は、筐体1の内壁面であるベース内壁面21aから筐体1内へ露出している。ターミナル5のうちベース内壁面21aから筐体1内へ露出した部分は、接着剤91によって根元が覆われ、ベース筒部21に固定されている。
【0032】
ターミナル5のうち、ベース内壁面21aおよび接着剤91から筐体1内へ露出した部分(すなわち、筐体内露出部分)は、ターミナル突出部51とターミナル曲げ部52とを含んでいる。ターミナル突出部51は、ターミナル5の筐体内露出部分のうち先端側を構成しており、電気基板7に向かって突出している。例えば、ターミナル突出部51は、部材配置方向Daの他方側を根元側として、部材配置方向Daの一方側へ向かって突出している。すなわち、ターミナル突出部51は、背面カバー4に向かって突出している。
【0033】
また、電気基板7は、ベース筒部21と隔壁22と背面カバー4とによって形成された空間において、部材配置方向Daで、ターミナル突出部51の根元よりも背面カバー4に近い部分に配置されている。そして、ターミナル5は、ターミナル突出部51の先端部511において、はんだにより電気基板7に接続されている。
【0034】
ターミナル5のターミナル曲げ部52は、ターミナル5のうちベース筒部21を貫通する貫通部分53とターミナル突出部51との間に設けられ、曲がった形状とされている。すなわち、ターミナル5は、ターミナル曲げ部52にて屈曲している。
【0035】
このように、ターミナル5の貫通部分53とターミナル突出部51はそれぞれ直線状に延伸し、且つターミナル5はターミナル曲げ部52で垂直または略垂直に屈曲している。要するに、ターミナル5はL字状に形成されている。図1C図2図6に示すように、本実施形態のコネクタ27には6つのターミナル5が配置されており、6つのターミナル5は、それぞれ、ターミナル突出部51とターミナル曲げ部52と貫通部分53とを備えてL字状とされている。
【0036】
図2図6図8に示すように、発音体6は、フレーム61とダイヤフラム62と駆動部63と複数のリード線64と複数の端子金具65とを備えている。
【0037】
フレーム61は、ダイヤフラム62および駆動部63を支持するものである。フレーム61は略段付円筒状とされており、部材配置方向Daの他方側では一方側に比してより大きく開口している。また、フレーム61における部材配置方向Daの他方側の開口部は、ダイヤフラム62によって塞がれている。発音体6は、フレーム61における部材配置方向Daの他方側の開口部が有する端縁において隔壁22の凹部に嵌合され、接着剤66による接着にて気密的に接合されている。フレーム61は、樹脂で構成されている。
【0038】
ダイヤフラム62は、部材配置方向Daの他方側ほど拡径する中空の円錐台形状の外周部と、部材配置方向Daの他方側に凸となるドーム状の内周部とを含んで構成されている。上述したように遮蔽板24も同様の形状とされている。そして、遮蔽板24の内周部242はダイヤフラム62の内周部に対向し、遮蔽板24の外周部241はダイヤフラム62の外周部に対向している。ダイヤフラム62の背面には、駆動部63が接続されている。
【0039】
図2に示すように、駆動部63は、ダイヤフラム62を振動させて音を発生させるためのものである。駆動部63は、ボビン631とボイスコイル632と磁気回路部633とを備えている。
【0040】
ボビン631は円筒状とされ、ダイヤフラム62の内周部の外縁に接合されている。ボビン631の外側には、ボイスコイル632が巻かれている。
【0041】
磁気回路部633は、ボイスコイル632に磁界を印加するものである。磁気回路部633は、有底筒状のヨークと、ヨークの内底面に配置された円板状の磁石と、磁石に積層された円板状のトッププレートとを備えている。ヨークおよびトッププレートは、磁性体で構成されている。ヨークは、ダイヤフラム62に向かって開口し、フレーム61における部材配置方向Daの一方側の開口部を塞ぐように配置されている。
【0042】
磁石およびトッププレートのそれぞれとヨークの側壁との間には隙間が形成されており、この隙間にボイスコイル632が入ることで、トッププレートとヨークの側壁との間に発生する磁界がボイスコイル632に印加される。この状態でボイスコイル632に電流を流すことで、ボビン631が軸方向に変位し、ダイヤフラム62が振動して、音が発生する。
【0043】
図2図8に示すように、ボイスコイル632は、リード線64と端子金具65とによって電気基板7に通電可能に接続されている。すなわち、リード線64の一端はボイスコイル632に接続され、リード線64の他端は端子金具65に接続されている。
【0044】
端子金具65は、駆動部63と電気基板7とを電気的に接続する金属部品である。端子金具65は、インサート成型によってフレーム61と一体に構成され、端子金具65の両方の端部が、フレーム61から部材配置方向Daの一方側へそれぞれ露出している。図2図6図8に示すように、端子金具65の一方の端部はリード線64にはんだ付けされており、他方の端部は電気基板7に向かって突出している。
【0045】
端子金具65は、そのリード線64にはんだ付けされた一方の端部を、駆動部63に電気的に接続された駆動部側端部651として有している。そして、端子金具65は、上記他方の端部を含んで電気基板7に向かって突出した部分を、端子金具突出部652として有している。
【0046】
その端子金具突出部652は、フレーム61から部材配置方向Daの一方側に露出し、フレーム61から電気基板7に向かって突出すると共に、部材配置方向Daに沿って直線状に延伸している。端子金具65は、端子金具突出部652の先端部652aにおいて、はんだによって電気基板7に接続されている。
【0047】
また、端子金具突出部652は、ターミナル突出部51よりも長くされている。詳細には、端子金具突出部652の根元から電気基板7との接続部までの長さHaが、ターミナル突出部51の根元から電気基板7との接続部までの長さHbよりも長くされている。
【0048】
図8に示すように、駆動部側端部651は、部材配置方向Daの一方側から見た形状がクランク状とされている。駆動部側端部651のうちの一部はフレーム61から露出しており、駆動部側端部651は、この露出した部分においてリード線64にはんだ付けされている。
【0049】
図2図8に示すように、端子金具65は、曲がった形状の端子金具曲げ部653を、駆動部側端部651と端子金具突出部652との間に備えている。すなわち、端子金具65は、この端子金具曲げ部653にて屈曲している。端子金具曲げ部653はフレーム61に覆われている。
【0050】
この端子金具曲げ部653の曲げ形状は、端子金具突出部652の突出方向を電気基板7へ向けるように定められている。言い換えると、端子金具突出部652は、端子金具曲げ部653によって、電気基板7に向かって突出している。具体的には、端子金具65は端子金具曲げ部653にて屈曲することによりL字状に形成され、これにより、端子金具65のうち端子金具突出部652は、電気基板7に向かって突出した姿勢になっている。
【0051】
図2図5図6に示すように、本実施形態の発音体6は2つの端子金具65を備えている。2つの端子金具65は、それぞれ駆動部側端部651と端子金具突出部652と端子金具曲げ部653とを備えている。
【0052】
上述したように、電気基板7は、筐体1内の空間のうちベース筒部21と隔壁22と背面カバー4とによって形成された空間に配置されている。すなわち、電気基板7は、筐体1内の空間のうち発音体6に対し部材配置方向Daの一方側に配置されている。電気基板7には、ボイスコイル632に電流を流して駆動部63を駆動するための回路が、図示しない抵抗、コンデンサ等によって形成されている。この抵抗、コンデンサ等の回路部品は、電気基板7と隔壁22との間、または電気基板7とフレーム61との間に配置されている。
【0053】
電気基板7上の駆動回路は、リード線64と端子金具65とによってボイスコイル632に接続されている。また、この駆動回路は、ターミナル5によって車両のECU等に接続されるようになっている。そして、ECU等からターミナル5を介して駆動回路に信号が送信されると、この信号に応じてボイスコイル632に電流が流される。
【0054】
電気基板7には、ターミナル5のうちターミナル突出部51の先端部511を通すための貫通孔が形成されている。ターミナル5は、この貫通孔において、はんだによって電気基板7上の駆動回路に接続されている。また、電気基板7には、端子金具65のうち端子金具突出部652の先端部652aを通すための貫通孔も形成されている。端子金具65は、この貫通孔において、はんだによって電気基板7上の駆動回路に接続されている。
【0055】
図2図3に示すように、電気基板7は、部材配置方向Daを電気基板7の厚み方向とした姿勢で、筐体1内に収容されている。すなわち、電気基板7は、部材配置方向Daに対し垂直な方向へ拡がった平板形状を成している。そして、電気基板7は、部材配置方向Daの一方側に設けられた一面71と、部材配置方向Daの他方側に設けられた他面72とを有している。
【0056】
図3図9図10に示すように、電気基板7には、電気基板7をベース2に連結するための複数の基板孔7aが形成されている。この基板孔7aは、電気基板7を部材配置方向Daに貫通した円形断面の貫通孔であり、本実施形態では4つ設けられ電気基板7の四隅に配置されている。
【0057】
また、図2図3図5図7に示すように、発音器10は、基板孔7aを利用して電気基板7を筐体1内で支持するために、筐体1内に配置された複数の基板取付部28と複数の軸部30と複数の凹部44と複数の接着部45とを備えている。その複数の軸部30はそれぞれ部材配置方向Daの軸心を有する円柱形状を成し、複数の基板取付部28にそれぞれ固定されている。基板取付部28と軸部30と凹部44と接着部45は基板孔7a毎に1つずつ設けられるので、本実施形態では4つずつ設けられている。
【0058】
上述したように基板孔7aが電気基板7の四隅に配置されているので、4つの基板取付部28は、ベース筒部21の内側空間の四隅にそれぞれ配置されている。例えば、複数の基板取付部28と複数の軸部30はベース2と一体成形され、その複数の基板取付部28と複数の軸部30とベース2は単一の樹脂部品を構成している。
【0059】
なお、本実施形態では、4つの基板取付部28のうち、ターミナル5に近い側の2つを第1基板取付部281と称し、その2つの第1基板取付部281に比してターミナル5から遠い側の2つを第2基板取付部282と称する。また、4つの軸部30のうち、第1基板取付部281に固定される2つを第1軸部301と称し、第2基板取付部282に固定される2つを第2軸部302と称する。但し、第1基板取付部281と第2基板取付部282とを区別する必要がない場合には、まとめて、単に基板取付部28と称することがある。これと同様に、第1軸部301と第2軸部302とを区別する必要がない場合には、まとめて、単に軸部30と称することがある。
【0060】
第1基板取付部281および第2基板取付部282は、ベース2の隔壁22から背面カバー4に向かって突出し、部材配置方向Daに延伸している。第1基板取付部281は、その隔壁22と第1軸部301との間に設けられ、その第1軸部301を筐体1のうち隔壁22に固定している。これと同様に、第2基板取付部282は、隔壁22と第2軸部302との間に設けられ、その第2軸部302を筐体1のうち隔壁22に固定している。
【0061】
図2図5に示すように、2つの第1基板取付部281は、2つの第2基板取付部282に対し、第1基板面方向D1の一方側に設けられている。そして、2つの第1基板取付部281は第2基板面方向D2に並んでおり、2つの第2基板取付部282も第2基板面方向D2に並んでいる。この第1基板面方向D1と第2基板面方向D2は平板状の電気基板7に沿った方向であり、第1基板面方向D1と第2基板面方向D2と部材配置方向Daは互いに交差する方向、厳密に言えば互いに垂直な方向である。例えば、第1基板面方向D1の一方側は、発音器10を搭載する車両の下側になる。
【0062】
また、複数のターミナル突出部51は、2つの第1基板取付部281の間で、ベース筒部21のうち第1基板面方向D1の一方側に設けられた側壁に沿って並んでいる。従って、第2基板取付部282は、第1基板取付部281よりもターミナル5と電気基板7との接続部から遠い位置に配置されている。そのターミナル5と電気基板7との接続部とは、具体的に言えば、ターミナル突出部51と電気基板7とがはんだ付けにより接合されている部分である。
【0063】
また、2つの端子金具突出部652は、筐体1内における第1基板面方向D1の一方側に偏った位置に配置され、6つのターミナル突出部51の並びに沿って並んでいる。
【0064】
第2基板取付部282は、第1基板取付部281よりも柔軟性が高くされている。具体的には、図5に示すように、第1基板取付部281は、その第1基板取付部281の側面から突出した板状の連結部283によってベース内壁面21aに連結されている。そして、第1基板取付部281と連結部283とベース筒部21は、一体に構成されている。一方、第2基板取付部282は、ベース内壁面21aから離された状態で隔壁22から突出しているため、第1基板取付部281よりも変形しやすくなっている。なお、第1基板取付部281の側面とは、言い換えれば、部材配置方向Daに延伸する第1基板取付部281の外周面である。
【0065】
図3図5図6図10に示すように、第1軸部301および第2軸部302はそれぞれ、部材配置方向Daを軸方向とした円柱形状を成している。すなわち、第1軸部301の軸方向および第2軸部302の軸方向は部材配置方向Daと同じである。
【0066】
第1軸部301および第2軸部302はそれぞれ、部材配置方向Daの一方側に設けられた先端301a、302aと、部材配置方向Daの他方側に設けられた基端301b、302bとを有している。なお、図3図10は、電気基板7が第2軸部302と背面カバー4とに支持された状態を示しているが、電気基板7が第1軸部301と背面カバー4とに支持された状態も、この図3図10と同様である。
【0067】
第1軸部301および第2軸部302は、基板孔7aにそれぞれ挿通されている。また、第1軸部301および第2軸部302は、電気基板7の一面71に対し部材配置方向Daの一方側に飛び出ている。すなわち、第1軸部301の先端301aと第2軸部302の先端302aはそれぞれ、電気基板7の一面71に対し部材配置方向Daの一方側に位置している。
【0068】
第1軸部301の基端301bは、第1基板取付部281における部材配置方向Daの一方側の端に固定されている。すなわち、第1軸部301の基端301bは、第1基板取付部281を介してベース2に固定されている。
【0069】
そして、第2軸部302の基端302bは、第2基板取付部282における部材配置方向Daの一方側の端に固定されている。すなわち、第2軸部302の基端302bは、第2基板取付部282を介してベース2に固定されている。
【0070】
第1軸部301は、その第1軸部301が連結された第1基板取付部281の端に対し小径に形成されているので、第1軸部301と第1基板取付部281との境目に段差が形成されている。また、第2軸部302は、その第2軸部302が連結された第2基板取付部282の端に対し小径に形成されているので、第2軸部302と第2基板取付部282との境目に段差が形成されている。
【0071】
上記複数の境目の段差に対し電気基板7の他面72は複数の基板孔7aの周りでそれぞれ当接し、これにより、電気基板7が筐体1に対し位置決めされている。
【0072】
第1軸部301が挿通された基板孔7aは、電気基板7のうち基板孔7aの周縁を成す孔周縁部73と第1軸部301との間に径方向隙間が生じる大きさとされている。これと同様に、第2軸部302が挿通された基板孔7aは、電気基板7の孔周縁部73と第2軸部302との間に径方向隙間が生じる大きさとされている。
【0073】
4つの凹部44はそれぞれ、筐体1のうち背面カバー4に固定されている。具体的には、4つの凹部44と背面カバー4は一体成形されている。
【0074】
また、4つの凹部44はそれぞれ、部材配置方向Daの他方側から一方側へ窪んだ凹形状44aを有している。詳細に言うと、図3図5に示すように、4つの凹部44のうち、第1軸部301に対し同軸上に設けられた2つの凹部44は、第1軸部301と電気基板7とに対し部材配置方向Daの一方側に配置されている。そして、その2つの凹部44が有する凹形状44aは、第1軸部301の先端301aに対向するように窪んだ形状を成している。
【0075】
これと同様に、4つの凹部44のうち、第2軸部302に対し同軸上に設けられた2つの凹部44は、第2軸部302と電気基板7とに対し部材配置方向Daの一方側に配置されている。そして、その2つの凹部44が有する凹形状44aは、第2軸部302の先端302aに対向するように窪んだ形状を成している。
【0076】
4つの接着部45はそれぞれ、固化した接着剤451で構成されている。また、接着部45は弾力性を有している。例えば、第1軸部301、第2軸部302、および凹部44は何れも、筐体1を構成する樹脂製であり、弾力性を有する接着部45は、その第1軸部301、第2軸部302、および凹部44に比して柔らかい。接着部45を構成する接着剤451の種類としては種々想定されるが、その接着剤451は例えばシリコーン系接着剤であり、固化した状態で弾力性を有している。
【0077】
4つの接着部45のうち、2つの接着部45は、第1軸部301と凹部44との間、および、その第1軸部301周りの孔周縁部73と凹部44との間に介在し、その第1軸部301と孔周縁部73と凹部44とを接着している。残り2つの接着部45は、第2軸部302と凹部44との間、および、その第2軸部302周りの孔周縁部73と凹部44との間に介在し、その第2軸部302と孔周縁部73と凹部44とを接着している。
【0078】
詳細には、例えば第2軸部302周りでは、図3に示すように、凹部44は、第2軸部302と電気基板7の孔周縁部73とに対し部材配置方向Daに僅かに離れて配置されている。そして、接着部45は、その孔周縁部73と凹部44との間の隙間と、第2軸部302と凹部44との間の隙間とを埋めるように形成されている。
【0079】
そして、第1軸部301周りでも、これと同様である。すなわち、凹部44は、第1軸部301と電気基板7の孔周縁部73とに対し部材配置方向Daに僅かに離れて配置されている。そして、接着部45は、その孔周縁部73と凹部44との間の隙間と、第1軸部301と凹部44との間の隙間とを埋めるように形成されている。
【0080】
図2図4に示すように、背面カバー4は、電気基板7の一面71に対向しその一面71に沿って拡がる対向部42を有している。詳細に言うと、対向部42は、筐体1内の空間に向かって部材配置方向Daの他方側へ突き出た凸形状を成している。そして、対向部42には、電気基板7の一面71に沿って第1基板面方向D1および第2基板面方向D2へ拡がる平坦面421が形成され、この平坦面421が電気基板7の一面71に対向している。
【0081】
背面カバー4の対向部42は、接着剤422によって電気基板7の一面71に接着されている。その接着剤422の種類としては種々想定されるが、その接着剤422は例えばシリコーン系接着剤である。例えば、凹部44と電気基板7との間の接着部45(図3参照)を構成する接着剤451と同様に、この接着剤422も、固化した状態で弾力性を有している。
【0082】
具体的に、対向部42の平坦面421は、電気基板7の一面71に対し部材配置方向Daに僅かに離れて配置されている。そして、その電気基板7の一面71と対向部42の平坦面421との間の隙間を埋めるように接着剤422が充填され固化されており、これにより、対向部42は、接着剤422を介して電気基板7の一面71に接着されている。この対向部42と電気基板7との接着により、例えば対向部42と電気基板7とが接着されずに単に接触している場合と比較して、電気基板7と背面カバー4との間で熱が伝わりやすくなっている。
【0083】
なお、本実施形態では、この接着剤422、溝挿入部211aとカバー周縁部41とを接着する接着剤411(図3参照)、および接着部45を構成する接着剤451(図3参照)としては、何れも同一の接着剤が用いられる。
【0084】
本実施形態の効果について説明する。上述したように、本実施形態によれば、図3図10に示すように、複数の接着部45は、軸部30と凹部44との間、および、電気基板7の孔周縁部73と凹部44との間に介在し、その軸部30と孔周縁部73と凹部44とを接着している。そして、基板孔7aは、電気基板7の孔周縁部73と軸部30との間に径方向隙間が生じる大きさとされている。
【0085】
これにより、接着部45と軸部30とにより電気基板7を筐体1に対し保持すると共に、孔周縁部73と軸部30との間の径方向隙間と、接着部45の変形とによって、温度変化による筐体1と電気基板7との膨張収縮差を吸収することができる。言い換えると、その膨張収縮差に応じて基板孔7aが軸部30に対し第1基板面方向D1または第2基板面方向D2にずれることを許容しつつ、電気基板7を筐体1に対し保持することが可能である。
【0086】
従って、例えば軸部30が基板孔7aに隙間無く嵌合している場合と比較して、筐体1と電気基板7との膨張収縮差に起因した電気基板7の曲げ変形が生じにくい。そのため、温度変化に起因した不具合が電気基板7で発生することを抑制することできる。
【0087】
そして、接着部45が凹部44との界面で仮に剥がれたとしても、接着部45が凹部44と電気基板7との間から脱落することを、凹部44の凹形状44aにより防止することが可能である。
【0088】
また、発音器10の製造工程において、固化前の接着剤451を凹部44の凹形状44aにより凹部44と電気基板7との間に保持しやすいというメリットがある。
【0089】
また、本実施形態によれば、接着部45は弾力性を有し、軸部30と凹部44とに比して柔らかい。これにより、温度変化による筐体1と電気基板7との膨張収縮差を接着部45の弾性変形で吸収しやすくなる。そして、その膨張収縮差が生じる前の元位置に基板孔7aが接着部45の弾性力によって戻るように、電気基板7を筐体1に対し保持することが可能である。
【0090】
また、本実施形態によれば、凹部44は、軸部30と電気基板7の孔周縁部73とに対し離れて配置され、接着部45は、孔周縁部73と凹部44との間の隙間と、軸部30と凹部44との間の隙間とを埋めるように形成されている。
【0091】
これにより、接着部45は、孔周縁部73と軸部30と凹部44との僅かな相対変位を吸収するための厚みを、孔周縁部73および軸部30のそれぞれと凹部44との間に有することができる。従って、例えば凹部44が軸部30または孔周縁部73に接触している場合に比して、温度変化に起因した筐体1と電気基板7との膨張収縮差を吸収しやすくなる。
【0092】
また、本実施形態によれば、図2図3に示すように、背面カバー4に固定された凹部44が電気基板7に接着されていることに加え、背面カバー4のカバー周縁部41とベース周縁部211は、背面カバー4とベース2との境目が密封されるように互いに接着されている。
【0093】
従って、電気基板7を筐体1内で保持する機能と、背面カバー4とベース2との境目を密封し防水する機能とである2つの機能を背面カバー4に備えさせることが可能である。このような接着剤411、451を用いた複数の機能を背面カバー4に集約することで、例えば、発音器10を生産する際の生産性向上を期待できる。
【0094】
また、本実施形態によれば、複数の凹部44の凹形状44aは部材配置方向Daの一方側へ窪んでいる。そして、背面カバー4のカバー周縁部41は、部材配置方向Daの一方側へ窪んだ溝形状を有し、ベース周縁部211は、カバー周縁部41の溝形状に挿入されカバー周縁部41に接着された溝挿入部211aを有している。
【0095】
従って、発音器10の製造工程で背面カバー4をベース2に取り付ける際に、固化前の接着剤411、451をそれぞれ背面カバー4側に予め塗布することで、その固化前の接着剤411、451の塗布位置を、カバー周縁部41の溝形状と凹部44の凹形状44aとで或る程度保持できる。これにより、背面カバー4をベース2に取り付ける際の作業性を向上させることが可能である。
【0096】
また、本実施形態によれば、図2に示すように、背面カバー4は、電気基板7の一面71に対向しその一面71に沿って拡がる対向部42を有している。そして、その対向部42は電気基板7の一面71に接着されている。従って、例えば対向部42と電気基板7とが接着されずに単に接触している場合に比して、電気基板7と背面カバー4との間で熱が伝わりやすい。そのため、電気基板7から発せられる熱を対向部42を介して筐体1の外部の空気中へ放散させることが可能である。
【0097】
また、本実施形態によれば、図2図3に示すように、背面カバー4に固定された凹部44が電気基板7に接着されていることと、背面カバー4のカバー周縁部41とベース周縁部211とが互いに接着されていることとに加え、背面カバー4の対向部42は電気基板7の一面71に接着されている。
【0098】
従って、電気基板7を筐体1内で保持する機能と、背面カバー4とベース2との境目を密封し防水する機能と、電気基板7から筐体1の外部への放熱を促進する機能とである3つの機能を背面カバー4に備えさせることが可能である。このような接着剤411、422、451を用いた複数の機能を背面カバー4に集約することで、例えば、発音器10を生産する際の生産性向上を期待できる。
【0099】
また、発音器10の製造工程では、固化前の接着剤411、422、451を、カバー周縁部41と対向部42と凹部44との3箇所である背面カバー4側の部位にまとめて塗布することができる。これにより、背面カバー4をベース2に取り付ける際の作業性を向上させることが可能である。
【0100】
また、本実施形態によれば、図2に示すように、ターミナル5は、ベース内壁面21aから露出して電気基板7に向かって突出したターミナル突出部51を備えており、そのターミナル突出部51の先端部511において電気基板7に接続されている。これにより、ターミナル突出部51の根元からターミナル5と電気基板7との接続部までの距離が長くなる。その結果、ターミナル5が温度変化に追従して柔軟に変形するようになり、ターミナル5と電気基板7との接続部に加わるストレスが低減される。従って、ワイヤ線等を用いずにターミナル5と電気基板7とを接続して製造コストを抑えつつ、不具合の発生を抑制して、発音器10の製品寿命を延ばすことができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、ターミナル5は、ターミナル5のうちベース筒部21を貫通する貫通部分53とターミナル突出部51との間にターミナル曲げ部52を備えており、そのターミナル曲げ部52は、ベース内壁面21aから露出している。従って、ターミナル曲げ部52によって、ターミナル5がさらに柔軟に変形するようになるので、ターミナル5と電気基板7との接続部に加わるストレスをさらに低減することができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、駆動部63と電気基板7とを電気的に接続する端子金具65は、駆動部63を支持するフレーム61から露出して電気基板7に向かって突出した端子金具突出部652を備えている。そして、端子金具65は、端子金具突出部652の先端部652aにおいて電気基板7に接続され、端子金具突出部652は、ターミナル突出部51よりも長くされている。
【0103】
このようにすることで、端子金具突出部652の根元から端子金具65と電気基板7との接続部までの距離が長くなる。これにより、端子金具65が温度変化に追従して柔軟に変形するようになり、端子金具65と電気基板7との接続部に加わるストレスが低減されて、端子金具65と電気基板7とを接続するはんだ付け部におけるクラックの発生等を抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態によれば、端子金具65は、駆動部63に電気的に接続された駆動部側端部651と端子金具突出部652との間に、曲がった形状の端子金具曲げ部653を備えている。そして、端子金具突出部652は、端子金具曲げ部653によって、電気基板7に向かって突出している。これにより、端子金具突出部652の先端部652aを電気基板7に接続することができる。
【0105】
また、本実施形態によれば、図2図3図6に示すように、第1基板取付部281は、基板孔7aに挿通された第1軸部301をベース2に固定し、第2基板取付部282は、基板孔7aに挿通された第2軸部302をベース2に固定する。そして、その第2基板取付部282は、第1基板取付部281よりもターミナル5と電気基板7との接続部から遠い位置に配置され、第1基板取付部281よりも柔軟性が高くされている。これにより、温度変化によってベース2が変形した場合に、第2基板取付部282が大きく変形することで第1基板取付部281の変形が低減される。従って、第1基板取付部281の近傍にあるターミナル5と電気基板7との接続部に加わるストレスをさらに低減することができる。
【0106】
また、本実施形態によれば、図2図5図6に示すように、第1基板取付部281は、筐体1の内部に形成された隔壁22から突出しており、第1基板取付部281の側面から突出した連結部283によってベース内壁面21aに連結されている。このようにすることで、例えばその連結部283が無く第1基板取付部281がベース内壁面21aから離されている場合と比較して、第1基板取付部281を変形しにくくできる。
【0107】
また、本実施形態によれば、第2基板取付部282は、筐体1の内部に形成された隔壁22から突出しており、ベース内壁面21aから離されている。このようにすることで、例えば第2基板取付部282の側面がベース内壁面21aに連結されている場合と比較して、第2基板取付部282を撓みやすくできる。
【0108】
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態では、図3図9に示すように、電気基板7に設けられた基板孔7aは4つであるが、その基板孔7aは、1つ、2つ、3つ、または5つ以上設けられていてもよい。
【0109】
(2)上述の第1実施形態では、図2図3に示すように、溝挿入部211aとカバー周縁部41とを接着する接着剤411、背面カバー4の対向部42と電気基板7とを接着する接着剤422、および接着部45を構成する接着剤451としては、同一の接着剤が用いられる。しかしながら、これは一例であり、例えば、それらの接着剤411、422、451は互いに異なるものであっても差し支えない。
【0110】
(3)上述の第1実施形態では、図1A図1D図2に示すように、本開示の電気装置として発音器10について説明したが、本開示の電気装置は、発音器10以外の電気装置であっても差し支えない。
【0111】
(4)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0112】
また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0113】
1 筐体
7 電気基板
7a 基板孔
10 発音器
30、301、302 軸部
44 凹部
44a 凹形状
45 接着部
73 孔周縁部
451 接着剤
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10