(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】電気自動車
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240528BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240528BHJP
G09B 9/042 20060101ALI20240528BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B60L15/20 K
B60L9/18 J
G09B9/042 A
G09B19/00 H
(21)【出願番号】P 2021127454
(22)【出願日】2021-08-03
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2020141254
(32)【優先日】2020-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勇 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】大島 享之
(72)【発明者】
【氏名】高野 誠
(72)【発明者】
【氏名】塚田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】早水 京介
(72)【発明者】
【氏名】小寺 広明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良雄
(72)【発明者】
【氏名】今村 達也
(72)【発明者】
【氏名】西峯 明子
(72)【発明者】
【氏名】江渕 弘章
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104875629(CN,A)
【文献】特開2018-166386(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167601(WO,A1)
【文献】実開昭56-156056(JP,U)
【文献】特公昭52-044247(JP,B1)
【文献】特開2003-106210(JP,A)
【文献】特開2017-181852(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0083958(US,A1)
【文献】特開2019-008364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
G09B 9/042
G09B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータから電力が供給され、車輪に伝達するトルクを出力する回転電機と、
運転者による操作に応じて、前記回転電機から前記車輪へのトルクの断接を疑似的に切り替え可能なクラッチ装置と、
前記クラッチ装置が操作されている状態において操作することにより、模擬的に再現された複数のギア段からいずれか一つを選択可能なシフト装置と、
前記運転者による前記クラッチ装置および前記シフト装置のうち少なくとも一方の操作または当該操作のタイミングに基づいて、前記運転者の操作内容を採点するスコア算出部と、
前記スコア算出部の採点結果を前記運転者に通知可能な出力装置と、を備え
、
前記スコア算出部は、前記運転者が前記シフト装置の操作により選択したギア段の変更先と車速に対応したギア段の変更先との乖離量、及び、前記クラッチ装置の操作量と前記シフト装置の操作タイミングとの関係に基づいて、前記運転者の操作内容を採点する、電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪に伝達するトルクを出力する回転電機を備えた電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動モータによって駆動される電気自動車において、疑似的なシフトチェンジを演出する技術が開示されている。この電気自動車では、疑似的なシフトチェンジを演出する所定の契機で、駆動モータのトルクを、設定変動量だけ減少させた後、増加させるトルク変動制御を所定時間で遂行することによって変速感を演出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された電気自動車は、マニュアルトランスミッション車両(以下、「MT車両」と表記する)が備える変速操作用のクラッチ装置やシフト装置を有していない。そのため、運転者による変速操作を介在しない疑似的なシフトチェンジでは、MT車両を操る運転者の運転感覚に違和感を与える虞がある。そこで、電気自動車に変速操作用のクラッチ装置とシフト装置とを設けて、運転者によるクラッチ装置とシフト装置との変速操作に応じて疑似的なシフトチェンジを行うことが考えられる。
【0005】
しかしながら、単にクラッチ装置とシフト装置とを設けただけの電気自動車では、実際のMT車両とは異なりクラッチ装置の操作ミスやシフト装置の操作ミスがあっても走行可能である。このため、運転者が車速やギア段等の車両の状態に応じたクラッチ装置およびシフト装置の最適な操作を学習したり訓練したりすることができない虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、運転者が車両の状態に応じたクラッチ装置およびシフト装置の最適な操作を学習したり訓練したりすることのできる電気自動車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる電気自動車は、インバータから電力が供給され、車輪に伝達するトルクを出力する回転電機と、運転者による操作に応じて、前記回転電機から前記車輪へのトルクの断接を疑似的に切り替え可能なクラッチ装置と、前記クラッチ装置が操作されている状態において操作することにより、模擬的に再現された複数のギア段からいずれか一つを選択可能なシフト装置と、前記運転者による前記クラッチ装置および前記シフト装置のうち少なくとも一方の操作または当該操作のタイミングに基づいて、前記運転者の操作内容を採点するスコア算出部と、前記スコア算出部の採点結果を前記運転者に通知可能な出力装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、出力装置によって、運転者がクラッチ装置およびシフト装置のうち少なくとも一方の操作または当該操作のタイミングに基づいたスコア算出部による操作内容の採点結果を知ることができる。これにより、運転者が車両の状態に応じたクラッチ装置およびシフト装置の最適な操作を学習したり訓練したりすることのできる電気自動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態の電気自動車の例示的かつ模式的な構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態の電気自動車の回転電機のトルク制御に関する制御装置の機能ブロックを示した図である。
【
図3】
図3は、実施形態の電気自動車の仮想エンジン出力トルクの算出マップを示した図である。
【
図4】
図4は、実施形態の電気自動車のトルク伝達ゲインの算出マップを示した図である。
【
図5】
図5は、実施形態の電気自動車のギア比の算出マップを示した図である。
【
図6】
図6は、実施形態の電気自動車の運転者によって実行される疑似的な手動変速動作の手順を示した動作フロー図である。
【
図7】
図7は、実施形態の電気自動車のMT訓練モードの一例を示したフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例の電気自動車の複数のモードに対応する回転電機のトルク特性を例示した図である。
【
図9】
図9は、変形例の電気自動車のトルク特性設定処理に関する構成及び機能を示したブロック図である。
【
図10】
図10は、変形例の電気自動車のタッチパネルを用いたトルク特性設定処理の一例を示した図である。
【
図11】
図11は、変形例の電気自動車の制御装置の機能ブロックを示した図である。
【
図12】
図12は、変形例の電気自動車の仮想排出ガス量の算出マップを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の例示的な実施形態および変形例が開示される。以下に示される実施形態および変形例の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態および変形例に開示される構成以外によっても実現可能である。また、本発明によれば、構成によって得られる種々の効果(派生的な効果も含む)のうち少なくとも一つを得ることが可能である。
【0011】
また、以下に開示される実施形態および変形例には、同様の構成要素が含まれる。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号が付与されるとともに、重複する説明が省略される。なお、以下の実施形態および変形例において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本発明が限定されるものではない。また、以下の実施形態において説明する構造やステップなどは、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本発明に必ずしも必須のものではない。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態の電気自動車10の例示的かつ模式的な構成図である。
図1に示されるように、電気自動車10は、駆動源としての回転電機2を備えている。回転電機2は、例えば、三相交流モータである。回転電機2の出力軸3は、ギア機構4を介してプロペラシャフト5の一端に接続されている。プロペラシャフト5の他端は、デファレンシャルギア6を介して、車両前方のドライブシャフト7に接続されている。電気自動車10は、前車輪としての駆動輪8と、後車輪としての従動輪12と、を備えている。駆動輪8は、ドライブシャフト7の両端にそれぞれ設けられている。プロペラシャフト5には、シャフト回転速度Npを検出するための回転速度センサ40が配置されている。
【0013】
電気自動車10は、バッテリ14と、インバータ16と、を備えている。バッテリ14は、回転電機2の駆動に利用する電気エネルギを蓄える。インバータ16は、例えば、パルス幅変調処理(PWM;Pulse Width Modulation)を行うことによってバッテリ14に蓄えられている直流電流を三相交流電流に変換する。また、インバータ16は、後述するECU(Electronic Control Unit)50から入力される目標駆動トルクに基づいて、回転電機2の駆動トルクを制御する機能を有している。
【0014】
電気自動車10は、運転者が電気自動車10に対する動作要求を入力するための動作要求入力装置として、加速要求を入力するためのアクセルペダル22と、制動要求を入力するためのブレーキペダル24と、を備えている。アクセルペダル22には、アクセル開度Pap(%)を検出するためのアクセルポジションセンサ32が設けられている。また、ブレーキペダル24には、ペダル踏込量を検知するブレーキポジションセンサ34が設けられている。アクセルポジションセンサ32及びブレーキポジションセンサ34により検知された信号は、それぞれ後述するECU50に出力される。
【0015】
電気自動車10は、動作要求入力装置として、更にシフトレバー26およびクラッチペダル28を備えている。シフトレバー26は、シフト装置の一例であり、クラッチペダル28は、クラッチ装置の一例である。ただし、本実施形態の電気自動車10は、回転電機2により駆動される車両でありエンジンを備えていないため、MT車両が備える変速機及びクラッチ機構を備えていない。そのため、シフトレバー26及びクラッチペダル28には、実際の変速機及びクラッチ機構を機械的に操作する機能に換えて以下の機能が与えられている。
【0016】
シフトレバー26は、回転電機2の回転速度に対するトルク特性が段階的に規定された複数のモードの中から運転者が1つのモードを選択するためのシフト装置として機能する。ここでの複数のモードは、MT車両のギア段を模擬したシフトモードであり、例えば、疑似的に再現された複数のギア段である、前進段としての1速~6速、後進段としてのリバース、及びニュートラルに対応した各モードを含んでいる。各モードのトルク特性は、MT車両のギア段を模擬したトルク特性にプリセットされている。ただし、これらの各モードはあくまでもMT車両のギア段を模擬的に再現したものであるため、実際の固定ギア比に対応させるためのトルク特性の制約はない。つまり、複数のモードのそれぞれのトルク特性は、回転電機2の出力範囲内であれば自由にプリセットすることができる。
【0017】
シフトレバー26は、MT車両が備えるシフトレバーを模擬した構造を有している。シフトレバー26の配置及び操作感は、実際のMT車両と同等である。シフトレバー26は、トルク特性の異なる複数のモードに対応した各ポジションが設けられている。シフトレバー26には、モードの位置を表すシフトポジションGpを検知するシフトポジションセンサ36が設けられている。シフトポジションセンサ36により検知された信号は、後述するECU50に出力される。
【0018】
クラッチペダル28は、MT車両が備えるクラッチペダルを模擬した構造を有したクラッチ装置として機能する。クラッチペダル28は、運転者によって操作され、回転電機2から駆動輪8へのトルクの断接を疑似的に切り替え可能である。クラッチペダル28は、運転者がシフトレバー26を操作する際に踏み込まれる。クラッチペダル28の配置及び操作感は、実際のMT車両と同等である。クラッチペダル28には、クラッチペダル28の操作量であるクラッチペダル踏込量Pc(%)を検出するためのクラッチポジションセンサ38が設けられている。クラッチポジションセンサ38により検知された信号は、後述するECU50に出力される。
【0019】
電気自動車10の回転電機2は、ECU50によって制御される。ECU50は、制御装置の一例である。ECU50の処理回路は、少なくとも入出力インタフェース52と、少なくとも1つのメモリ54と、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)56と、を備えている。入出力インタフェース52は、電気自動車10に取り付けられた各種センサからセンサ信号を取り込むとともに、電気自動車10が備える各種アクチュエータに対して操作信号を出力するために設けられている。ECU50が信号を取り込むセンサには、上述した各種センサのほか、電気自動車10の制御に必要な各種のセンサが含まれる。ECU50が操作信号を出すアクチュエータには、上述した回転電機2等の各種アクチュエータが含まれる。メモリ54には、電気自動車10を制御するための各種の制御プログラム、最新のシフトポジションGp、マップ等が記憶されている。CPU(プロセッサ)56は、制御プログラム等をメモリから読み出して実行し、取り込んだセンサ信号に基づいて操作信号を生成する。
【0020】
なお、ECU50の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。また、ECU50の処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェアを備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらを組み合わせたものである。ECU50の各部の機能がそれぞれ処理回路で実現されても良い。また、ECU50の各部の機能がまとめて処理回路で実現されても良い。また、ECU50の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、他の一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、ECU50の各機能を実現する。
【0021】
ECU50により行われる電気自動車10の制御には、駆動輪8に伝達されるトルクを制御するトルク制御が含まれる。ここでのトルク制御では、プロペラシャフト5に伝達される回転電機2の駆動トルクTpが回転電機2の要求駆動トルクTpreqとなるように、回転電機2の駆動トルクTpを制御する。つまり、ECU50は、電気自動車10が備えるトルク制御部として機能する。
【0022】
ここで、回転電機2のトルク制御では、ECU50は、電気自動車10の走行状態が仮想のエンジン及び変速機を搭載したMT車両により実現されている仮定した演算を行う。そして、ECU50は、変速機から出力される変速機出力トルクTgoutを算出し、算出された変速機出力トルクTgoutを回転電機2の要求駆動トルクTpreqとして使用する。以下の説明では、電気自動車10に仮想的に搭載されたエンジンを「仮想エンジン」を表記し、仮想エンジンのエンジン出力トルクを「仮想エンジン出力トルクTeout」と表記し、そして仮想エンジンの回転速度を「仮想エンジン回転速度Ne」と表記する。
【0023】
図2は、回転電機2のトルク制御に関するECU50の機能ブロックを示した図である。
図2に示されるように、ECU50は、回転電機2のトルク制御に関連する機能ブロックとしてトルク制御部520を有している。トルク制御部520は、例えば、仮想エンジン回転速度算出部500と、仮想エンジン出力トルク算出部502と、トルク伝達ゲイン算出部504と、クラッチ出力トルク算出部506と、ギア比算出部508と、変速機出力トルク算出部510と、を備えている。以下、それぞれの機能ブロックについて詳細に説明する。
【0024】
電気自動車10の走行中、ECU50は、運転状態に基づいて仮想エンジン回転速度Neを動的に演算している。例えば、ECU50は、プロペラシャフト5のシャフト回転速度Npと、シフトポジションGpに対応するギア比rと、クラッチペダル踏込量Pc等から演算されるクラッチ機構のスリップ率slipと、を用いた以下の式(1)から、走行中の仮想エンジン回転速度Neを逆算する。
【0025】
Ne=Np×(1/r)×slip ・・・(1)
【0026】
なお、エンジンから出力されたエネルギのうち、プロペラシャフト5へのトルク伝達に使用されない運動エネルギが、仮想エンジン回転速度Neの上昇に使用されたと仮定することができる。そこで、仮想エンジン回転速度Neは、運動エネルギをベースとした運動方程式に基づいて動的に算出する方法でもよい。
【0027】
また、MT車両のアイドリング中は、エンジン回転速度を一定回転速度に維持するアイドルスピードコントロール制御(ISC制御)が行われる。そこで、ECU50は、仮想エンジンでのISC制御を考慮して、例えばシャフト回転速度Npが0(ゼロ)であり且つアクセル開度Papが0%であるときは、仮想エンジンがアイドリング中であることを想定して、仮想エンジン回転速度Neを所定のアイドリング回転速度(例えば1000rpm)として出力する。算出された仮想エンジン回転速度Neは、仮想エンジン出力トルク算出部502に出力される。
【0028】
仮想エンジン出力トルク算出部502は、仮想エンジン出力トルクTeoutを算出する処理を実行する機能ブロックである。仮想エンジン出力トルク算出部502には、アクセル開度Papと仮想エンジン回転速度Neが入力される。ECU50のメモリ54は、仮想エンジン回転速度Neに対する仮想エンジン出力トルクTeoutがアクセル開度Pap毎に規定されたマップを記憶している。
【0029】
図3は、仮想エンジン出力トルクTeoutの算出マップを示した図である。仮想エンジン出力トルク算出部502では、
図3に示されるマップを用いて、入力されたアクセル開度Papと仮想エンジン回転速度Neに対応する仮想エンジン出力トルクTeoutが算出される。算出された仮想エンジン出力トルクTeoutは、クラッチ出力トルク算出部506に出力される。
【0030】
トルク伝達ゲイン算出部504は、トルク伝達ゲインkを算出する処理を実行する機能ブロックである。トルク伝達ゲインkは、仮想エンジンのクラッチの踏込量に応じたトルク伝達度合を演算するためのゲインである。トルク伝達ゲイン算出部504には、クラッチペダル踏込量Pcが入力される。ECU50のメモリ54は、クラッチペダル踏込量Pcに対するトルク伝達ゲインkが規定されたマップを記憶している。
【0031】
図4は、トルク伝達ゲインkの算出マップを示した図である。
図4に示されるように、トルク伝達ゲインkは、クラッチペダル踏込量Pcがpc0からpc1の範囲では1となり、クラッチペダル踏込量PcがPc1からPc2の範囲では、クラッチペダル踏込量Pcが増大するほど0に向かって徐々に減少し、クラッチペダル踏込量PcがPc2からPc3の範囲では0となるように規定されている。ここで、Pc0はクラッチペダル踏込量Pcが0%の位置に対応し、Pc1はPc0からの踏み込み時の遊び限界の位置に対応し、Pc3はクラッチペダル踏込量Pcが100%の位置に対応し、Pc2はPc3からの戻し時の遊び限界の位置に対応している。トルク伝達ゲイン算出部504では、
図4に示されるマップを用いて、入力されたクラッチペダル踏込量Pc対応するトルク伝達ゲインkが算出される。算出されたトルク伝達ゲインkは、クラッチ出力トルク算出部506に出力される。
【0032】
なお、
図4に示されるクラッチペダル踏込量Pcの増大に対するトルク伝達ゲインkの変化は、0に向かう広義単調減少(単調非増加)であればその変化曲線に限定はない。例えば、Pc1からPc2の範囲のトルク伝達ゲインkの変化は、直線的な単調減少に限らず、上に凸となる単調減少曲線でもよいし、また、下に凸となる単調減少曲線でもよい。
【0033】
クラッチ出力トルク算出部506は、クラッチ出力トルクTcoutを算出する処理を実行する機能ブロックである。クラッチ出力トルクTcoutは、仮想エンジンに接続されたクラッチ機構から出力されるトルクである。トルク伝達ゲイン算出部504には、仮想エンジン出力トルクTeoutとトルク伝達ゲインkが入力される。クラッチ出力トルク算出部506では、仮想エンジン出力トルクTeoutにトルク伝達ゲインkを乗算する以下の式(2)を用いて、クラッチ出力トルクTcoutが算出される。算出されたクラッチ出力トルクTcoutは、変速機出力トルク算出部510に出力される。
【0034】
Tcout=Teout×k ・・・(2)
【0035】
なお、実際のクラッチ機構は、バネやダンパ等の減衰装置を含むことが多い。このため、クラッチ出力トルクTcoutは、各々の特性を加味して動的な伝達トルクを算出してもよい。
【0036】
ギア比算出部508は、ギア比rを算出する処理を実行する機能ブロックである。ギア比rは、複数のモードに対応する回転電機2のトルク特性であり、変速機のギア比を模擬したものである。ギア比算出部508には、シフトポジションGpが入力される。ECU50のメモリ54は、シフトポジションGpに対するギア比rが規定されたマップを記憶している。
【0037】
図5は、ギア比rの算出マップを示した図である。
図5に示されるように、ギア比rは、シフトポジションGpがハイギアであるほどギア比rが低くなるように規定されている。ギア比算出部508では、
図5に示されるマップを用いて、入力されたシフトポジションGp対応するギア比が算出される。算出されたギア比rは、変速機出力トルク算出部510に出力される。
【0038】
変速機出力トルク算出部510は、変速機出力トルクTgoutを算出する処理を実行する機能ブロックである。変速機出力トルクTgoutは、変速機から出力されるトルクである。変速機出力トルク算出部510には、クラッチ出力トルクTcoutとギア比rとが入力される。変速機出力トルク算出部510では、クラッチ出力トルクTcoutにギア比rを乗算する以下の式(3)を用いて、変速機出力トルクTgoutが算出される。
【0039】
Tgout=Tcout×r ・・・(3)
【0040】
ECU50は、トルク制御において、仮想エンジン出力トルク算出部502、トルク伝達ゲイン算出部504、クラッチ出力トルク算出部506、ギア比算出部508、及び変速機出力トルク算出部510における処理を順に実行する。算出された変速機出力トルクTgoutは、回転電機2の要求駆動トルクTpreqとしてインバータ16へ出力される。インバータ16では、回転電機2の駆動トルクTpが算出された回転電機2の要求駆動トルクTpreqに近づくように、回転電機2への指令値を制御する。トルク制御では、このような処理が所定の制御周期で繰り返し実行されることにより、回転電機2の駆動トルクTpが回転電機2の要求駆動トルクTpreqに制御される。
【0041】
図6は、運転者によって実行される疑似的な手動変速動作の手順を示した動作フロー図である。電気自動車10の運転者は、運転中の任意のタイミングで手動変速動作を行う。
図6に示されるように、本実施形態の電気自動車10において運転者が疑似的な手動変速動作を行う場合、運転者は、先ずクラッチペダル28を踏み込む(ステップS100)。クラッチペダル踏込量PcがPc1を超えると、クラッチペダル踏込量Pcが大きくなるにつれてクラッチ出力トルクTcoutが0に向かって変化する。そして、クラッチペダル踏込量PcがPc2を超えると、クラッチ出力トルクTcoutが0になる。このようなクラッチペダル28の踏み込み動作によれば、クラッチペダル28の踏み込み動作に対応して回転電機2の駆動トルクTpが0に向かって変化するので、運転者は、MT車両のクラッチペダルを踏み込んだときのトルクが抜ける感覚を実感することができる。
【0042】
次に、運転者は、クラッチペダル28を踏み込んだ状態でシフトレバー26を操作する(ステップS102)。ここでは、例えば、シフトレバー26のモードが1速から2速に操作される。このようなクラッチペダル28の踏み込みを伴うシフトレバー26の操作によれば、運転者は、MT車両の手動変速動作に近い感覚を得ることができる。
【0043】
次に、運転者は、クラッチペダル28を戻す(ステップS104)。クラッチペダル踏込量PcがPc2を下回ると、クラッチペダル踏込量Pcが小さくなるにつれてクラッチ出力トルクTcoutが仮想エンジン出力トルクTeoutに向かって変化する。そして、クラッチペダル踏込量PcがPc1を下回ると、クラッチ出力トルクTcoutが仮想エンジン出力トルクTeoutになる。このようなクラッチペダル28の戻し動作によれば、クラッチペダル28の戻し動作に対応して回転電機2の駆動トルクTpが現在のモードが反映された回転電機2の駆動トルクTpに向かって変化するので、運転者は、MT車両のクラッチペダルを戻したときのトルクが繋がる感覚を実感することができる。
【0044】
このように、本実施形態の電気自動車10によれば、クラッチペダル28の操作に応じてトルクが変化するので、運転者は手動変速動作によるMT車両の独特の挙動を疑似的に体感することができる。
【0045】
また、本実施形態では、ECU50は、運転者による疑似的なシフトチェンジに関連する機能ブロックとして、
図2に示される検出部512と、スコア算出部514と、出力制御部516と、を有している。以下、それぞれの機能ブロックについて詳細に説明する。
【0046】
検出部512は、運転者によるクラッチペダル28の操作やシフトレバー26の操作、またはその操作のタイミング等を検出する機能ブロックである。検出部512は、例えば、クラッチペダル28の踏込量や、シフトレバー26のアップシフトやダウンシフトのシフト操作、上述したクラッチペダル28を踏み込む操作(ステップS100)と、シフトレバー26のシフト操作(ステップS102)と、のタイミング等を検出可能である。
【0047】
スコア算出部514は、上述した検出部512が検出した操作に基づいて、運転者の操作内容を採点する機能ブロックである。スコア算出部514は、例えば、上述した検出部512が検出した操作と、車速やギア段に応じて設定された操作の手本(模範)となるデータベースと、の乖離量に基づいて、運転者の操作内容(運転)を採点可能に構成されている。
【0048】
具体的には、スコア算出部514は、運転者がシフトレバー26の操作により選択したギア段の変更先と、車速に対応したギア段の変更先と、の乖離量が大きいほどスコアを減点し、乖離量が小さいほどスコアを加点することができる。
【0049】
また、スコア算出部514は、例えば、運転者がクラッチペダル28を踏み込んでいない状態または踏み込みが浅い状態、言い換えると疑似的にクラッチが切れていない状態でシフトレバー26の操作が行われた場合にスコアを減点し、疑似的にクラッチが切れている状態でシフトレバー26の操作が行われた場合にスコアを加点することができる。
【0050】
また、スコア算出部514は、例えば、運転者がシフトレバー26のアップシフトまたはダウンシフトの一度の操作で二度クラッチペダル28を踏み込む、所謂ダブルクラッチ操作が正しく行われた場合にスコアを加点し、ダブルクラッチ操作が正しく行われなかった場合にスコアを減点することができる。
【0051】
出力制御部516は、スコア算出部514の採点結果に基づいて、スピーカー60や表示装置62等を制御する。本実施形態では、スピーカー60は、運転者に音声ガイド等によってスコア算出部514による採点結果を通知可能に構成されている。スピーカー60は、出力装置の一例である。
【0052】
表示装置62は、例えば、インストルメントパネルや、センターモニター等である。本実施形態では、表示装置62は、運転者に採点結果のスコアを数字で直接的に表示することの他、スコアに応じて色彩や、マーク、文字を異ならせること等によって、スコア算出部514による採点結果を通知可能に構成されている。表示装置62は、出力装置の一例である。
【0053】
図7は、電気自動車10のMT訓練モードの一例を示したフローチャートである。
図7に示されるように、電気自動車10は、例えば、運転者によるクラッチペダル28およびシフトレバー26の操作内容を採点するMT訓練モードと、運転者によるクラッチペダル28およびシフトレバー26の操作内容を採点しないMT通常モードと、を切替可能に構成されている。この場合、電気自動車10は、例えば、MT訓練モードとMT通常モードとをスイッチ等によって切り替える構成を備えていればよい。
【0054】
図7に示されるように、MT訓練モードでは、まず、ECU50は、運転者によるクラッチペダル28およびシフトレバー26のうち少なくとも一方の操作またはその操作のタイミングを検出する(ステップS200)。次に、ECU50は、検出したクラッチペダル28の操作やシフトレバー26の操作またはその操作のタイミングから運転者の操作内容のスコアを算出する(ステップS202)。次に、ECU50は、算出したスコアをスピーカー60や表示装置62から運転者に通知する(ステップS204)。そして、ECU50は、一連の制御を終了する。
【0055】
以上のように、本実施形態では、電気自動車10は、運転者による操作に応じて、回転電機2から駆動輪8(車輪)へのトルクの断接を疑似的に切り替え可能なクラッチペダル28(クラッチ装置)と、クラッチペダル28が操作されている状態において操作することにより、模擬的に再現された複数のギア段からいずれか一つを選択可能なシフトレバー26(シフト装置)と、運転者によるクラッチペダル28およびシフトレバー26のうち少なくとも一方の操作または当該操作のタイミングに基づいて、運転者の操作内容を採点するスコア算出部514と、スコア算出部514の採点結果を運転者に通知可能なスピーカー60および表示装置62(出力装置)と、を備える。
【0056】
このような構成によれば、例えば、スピーカー60および表示装置62のうち少なくとも一方によって、運転者がクラッチペダル28およびシフトレバー26のうち少なくとも一方の操作または当該操作のタイミングに基づいたスコア算出部514による操作内容の採点結果を知ることができる。これにより、運転者が車両の状態に応じたクラッチペダル28およびシフトレバー26の最適な操作を学習したり訓練したりすることのできる電気自動車10を提供することができる。
【0057】
実施形態の電気自動車10は、以下のように変形した態様を採用してもよい。なお、以下に幾つかの変形例について説明するが、これらの変形例は、適宜組み合わせた構造としてもよい。
【0058】
[変形例1]
電気自動車10は、疑似的な手動変速動作を伴う走行を行うMT走行モード(MT訓練モードおよびMT通常モード)と、疑似的な手動変速動作を伴わない一般的なEV走行を行うEV走行モードと、を切替可能に構成されていてもよい。この場合、電気自動車10は、MT走行モードとEV走行モードとをスイッチ等によって切り替える構成を備えていればよい。
【0059】
また、電気自動車10が目的地までの自律走行を行う自動運転機能を備えている場合、MT走行モードとEV走行モードとに加えて、更に自律走行を行う自律走行モードを備えていてもよい。このような走行モードを切り替える構成によれば、使用目的に応じた走行モードの切り替えを行うことができるので、例えば当該電気自動車10を、父、母及び子の3人で使用している場合に、父の運転時はMT走行モードを選択し、母の運転時はEV走行モードを選択し、子の運転時は自律走行モードを選択する等、多様な使用形態に対応することが可能となる。
【0060】
[変形例2]
MT車両では、クラッチペダルを踏み込まなければギア段を変更することができない。そこで、本変形例の電気自動車10では、MT車両の実際の操作感に近づけるために、シフトレバー26の操作によるモードの選択動作は、運転者がクラッチペダル28を踏み込んだときのみに許可する構成としてもよい。このような構成は、例えばECU50が、クラッチペダル踏込量Pcが所定の踏込量Pcthよりも大きい場合に入力されたシフトポジションGpのみ、最新のシフトポジションとしてメモリ54への書き込みを許可する構成とすればよい。
【0061】
なお、MT車両では、ニュートラルポジションへのモードの変更はクラッチペダルを踏み込まなくとも行うことができるのが通常である。そこで、本変形例の電気自動車10では、MT車両と同様に、ニュートラルポジションへのモードの変更はクラッチペダル28の踏込み有無に限らず許可する構成としてもよい。これにより、MT車両の手動変速動作の操作感に更に近づけることができる。
【0062】
[変形例3]
電気自動車10では、回転電機2の出力範囲内であれば、トルク特性を自由に設定することができる。そこで、本変形例の電気自動車10では、複数のモードに対応したトルク特性のプリセットパターンを複数種類備えることとし、これらのプリセットパターンの中から運転者が好みのプリセットパターンを選択可能とする構成を採用してもよい。
【0063】
図8は、複数のモードに対応する回転電機2のトルク特性を例示した図である。この図では、トルク特性の第一プリセットパターンと、第一プリセットパターンよりもクロスレシオに設定されたトルク特性の第二プリセットパターンを例示している。ECU50のメモリ54には、第一プリセットパターンに対応したギア比の算出マップと、第二プリセットパターンに対応したギア比の算出マップとが、それぞれ記憶されている。運転者は、車内のモード切替スイッチを操作して、希望するパターンを選択する。パターン選択結果は、ECU50に出力される。なお、トルク特性のプリセットパターンの数及びそのパターン内容には限定はない。
【0064】
ギア比算出部508には、シフトポジションGpに加えて、パターン選択結果が入力される。ギア比算出部508では、パターン選択結果に対応するギア比の算出マップを用いて、入力されたシフトポジションGpに対応するギア比が算出される。このような構成によれば、運転者は、その日の気分によってトルク特性のパターンを選択することができる。これにより、運転者の気分に合わせた運転感覚を実現することが可能となる。
【0065】
[変形例4]
複数のモードに対応したトルク特性は、運転者が任意に設定可能に構成されていてもよい。以下の説明では、運転者によってトルク特性を設定する処理を「トルク特性設定処理」と表記し、設定されるトルク特性のパターンを「ユーザープリセットパターン」と表記する。
【0066】
図9は、トルク特性設定処理に関する構成及び機能を示したブロック図である。
図9に示されるように、ユーザープリセットパターンは、例えばタッチパネル70を用いて設定することができる。タッチパネル70は、ディスプレイ上の接触操作を入力情報として受信する入力装置72と、ディスプレイ上に出力情報を表示する出力装置74と、を備えている。ECU50は、トルク特性設定処理を実行する機能ブロックとしてトルク特性設定部518を備えている。トルク特性設定部518は、入力装置72から運転者によって入力された入力情報に基づいてユーザープリセットパターンを設定し、その結果を出力装置74に出力する。
【0067】
図10は、タッチパネル70を用いたトルク特性設定処理の一例を示した図である。トルク特性設定処理では、トルク特性設定部518は、
図10に示されるようなトルク特性曲線のベースパターンをタッチパネル70の出力装置74に表示させる。ベースパターンは、記憶されているプリセットパターンから運転者が選択する構成でもよいし、トルク特性設定部518が任意のベースパターンを表示させてもよい。
【0068】
運転者がタッチパネル70に表示されているベースパターンのトルク曲線に対してタッチ・アンド・ドラッグ等の操作を行うと、その情報が入力情報としてトルク特性設定部518に入力される。トルク特性設定部518は、入力情報に基づいて、運転者がドラッグした方向にトルク曲線を変形させる。トルク特性設定部518は、変形後のトルク曲線を出力装置74に表示させる。
図10では、運転者が6速の高回転領域を回転電機2の駆動力が増大する方向に変化させた場合を例示している。このようなトルク特性設定処理によれば、運転者は好みに合わせた任意のユーザープリセットパターンを設定することができる。
【0069】
なお、上述の変形例では、運転者がベースパターンを任意のパターンに変形する例について説明したが、タッチパネル70の入力装置72を用いて運転者が0からパターンを設定する構成でもよい。また、入力装置72についてもタッチパネル70に限らず、釦による入力や音声入力等、他の入力手段を用いる構成でもよい。
【0070】
[変形例5]
エンジン音を付加してエンジン搭載のMT車両を運転している感覚をさらに高めることとしてもよい。このような構成は、例えば、ECU50が仮想エンジン回転速度Neに応じたエンジン音を生成し、スピーカー60から出力する構成とすればよい。なお、エンジン音は、例えばエンジン型式に応じた複数種類の中から運転者が好みのエンジン音を選択可能に構成されていてもよい。この場合、ECU50は、運転者によって選択されたエンジン型式(例えばV8)と仮想エンジン回転速度Neに基づいて、選択されたエンジン型式のサウンドを模したエンジン音を生成すればよい。このような構成によれば、運転者は電気自動車10を運転しながらV8サウンドを楽しむといった多様な使い方が可能となる。また、仮想エンジン回転速度Neに応じてエンジン音を生成しているので、MT車両での空吹かしや半クラッチ等の状況のエンジン音も再現することができる。
【0071】
[変形例6]
電気自動車10は、四輪のMT車両に限らず二輪のMT車両として構成されていてもよい。一般的な二輪のMT車両は、手で操作するクラッチレバーと、足で操作するシフトペダルと、を備えている。そこで、電気自動車10としての二輪車両では、四輪車両のシフトレバー26に換えてシフト装置の機能をシフトペダルに持たせ、四輪車両のクラッチペダル28に換えてクラッチ装置の機能をクラッチレバーに持たせるように構成すればよい。これにより、電気自動二輪車において、MT車両の手動変速動作を疑似的に再現することが可能となる。
【0072】
[変形例7]
図11は、変形例の電気自動車10のECU50の機能ブロックを示した図である。
図11に示されるように、ECU50は、電気自動車10を使用したことによる環境保護への自身の貢献度を把握させるために、仮想排出ガス量算出部515を有してもよい。
【0073】
仮想排出ガス量算出部515は、上述したMT走行モード(MT訓練モードやMT通常モード)等での走行時に仮想エンジンから排出されたと予想される排出ガス量を算出する機能ブロックである。仮想排出ガス量算出部515には、例えば、運転者によるアクセルペダル22の操作や、クラッチペダル28の操作、シフトレバー26の操作等が入力される。
【0074】
仮想排出ガス量算出部515は、例えば、上述した運転者によるMT走行モード中の操作データと車両の走行距離とに基づいて、電気自動車10の使用燃料量を算出する。そして、仮想排出ガス量算出部515は、この電気自動車10の使用燃料量から仮想排出ガス量、具体的には、仮想CO2発生量を算出する。
【0075】
出力制御部516は、仮想排出ガス量算出部515の算出結果に基づいて、スピーカー60や表示装置62等を制御する。この場合、例えば、スピーカー60は、音声ガイドによって運転者に仮想排出ガス量を通知可能であり、表示装置62は、表示画面によって運転者に仮想排出ガス量を表示可能である。
【0076】
図12は、変形例の電気自動車10の仮想排出ガス量の算出マップを示したフローチャートである。
図12に示されるように、まず、運転者がイグニッション電源をONの状態とする(ステップS300)。次に、ECU50は、運転者によるMT走行モード中の操作データと車両の走行距離とに基づいて、電気自動車10の仮想排出ガス量を算出する(ステップS302)。
【0077】
次に、運転者がイグニッション電源をOFFの状態とする(ステップS304)。そして、ECU50は、算出した仮想排出ガス量をスピーカー60や表示装置62等から運転者に通知する(ステップS306)。仮想排出ガス量算出部515は、例えば、イグニッション電源がONの状態からOFFの状態となるまでの運転者による操作データと車両の走行距離とに基づいて、仮想排出ガス量を算出することができる。
【0078】
なお、仮想排出ガス量算出部515は、この例には限定されず、例えば、運転者による以前の操作データと走行距離とに基づいて、仮想排出ガス量を算出してもよい。また、仮想排出ガス量は、車両単体(Tank to Wheel)の算出でも、LCA(Life Cycle Assessment)に基づいた算出でもよい。
【0079】
また、ECU50は、例えば、仮想排出ガス量に応じて色彩や、マーク、文字等の表示を異ならせたり、他のサービスと連携してポイント等を付与したりしても良い。また、例えば、仮想排出ガス量算出部515が算出した仮想排出ガス量と、車両の走行距離等に応じて予め設定された排出ガス量の目安となるデータベースと、の乖離量に基づいて、運転者の操作内容(運転)が採点可能に構成されてもよい。これにより、運転者が環境に配慮した最適な運転操作を学習したり訓練したりすることができる。
【0080】
このように、本変形例では、電気自動車10は、仮想排出ガス量算出部515を有するため、運転者がMT走行モード等での走行時に発生したと予想される仮想排出ガス量を知ることができる。これにより、運転者に電気自動車10を使用したことによる環境保護への自身の貢献度を把握させることのできる電気自動車10を提供することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態および変形例が例示されたが、上記実施形態および変形例は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0082】
2…回転電機
8…駆動輪(車輪)
10…電気自動車
16…インバータ
26…シフトレバー(シフト装置)
28…クラッチペダル(クラッチ装置)
50…ECU(制御装置)
60…スピーカー(出力装置)
62…表示装置(出力装置)
514…スコア算出部