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特許7494827運転支援装置、車両、運転支援方法及び運転支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】運転支援装置、車両、運転支援方法及び運転支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/17 20200101AFI20240528BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240528BHJP
   B60W 40/06 20120101ALI20240528BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20240528BHJP
【FI】
B60W30/17
B60W40/04
B60W40/06
B60W40/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021168854
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023058997
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇輝
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009885(JP,A)
【文献】特開2018-179503(JP,A)
【文献】特開2010-254003(JP,A)
【文献】特開2002-283874(JP,A)
【文献】特開2016-021099(JP,A)
【文献】特開2019-188941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0120911(US,A1)
【文献】特開2016-020816(JP,A)
【文献】特開2016-020119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 40/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方に存在する他車両と、前記車両の前方に延在する区画線と、を検出し、前記検出された他車両及び区画線に関する情報を周囲情報として取得する周囲センサと、
前記周囲情報に基づいて先行車両の有無を判定し、前記先行車両が存在すると判定された場合、前記先行車両との車間距離が、前記車両の速度増加に伴い大きくなる所定の目標車間距離に一致するように加速制御及び減速制御を実行し、前記先行車両が存在しないと判定された場合、前記車両の速度が所定の目標車速に一致するように加速制御及び減速制御を実行するアダプティブクルーズ制御を実行し、
車高調整により前記車両の車高が通常高さより高くなっている場合において前記アダプティブクルーズ制御が開始されるとき又は前記アダプティブクルーズ制御が実行中であるときは、前記車両が停止するときの前記目標車間距離である停止時目標車間距離を、前記車高が前記通常高さである場合と比較して長くする、
ように構成された制御ユニットと、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記車高調整により前記車高が前記通常高さから変更されたときの前記車高の変化量である車高変化量を取得し、
前記車高が前記通常高さより高くされたときの前記車高変化量を正の値と規定し、前記車高が前記通常高さより低くされたときの前記車高変化量を負の値と規定すると、
前記車高変化量が大きくなるにつれて前記停止時目標車間距離を長くする、
ように構成された運転支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
正の値を有する前記車高変化量と、前記停止時目標車間距離の増加量と、を比例関係に維持する、
ように構成された運転支援装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
正の値を有する前記車高変化量が所定の許可閾値以上である場合、前記アダプティブクルーズ制御を実行しない、
ように構成された運転支援装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4の何れか一項に記載の運転支援装置において、
前記制御ユニットは、
前記車高変化量がゼロ以下の場合の前記停止時目標車間距離を、前記車高が前記通常高さのときの前記停止時目標車間距離に維持する、
ように構成された運転支援装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の運転支援装置が搭載された車両。
【請求項7】
車両の前方に存在する他車両と、前記車両の前方に延在する区画線と、を検出し、前記検出された他車両及び区画線に関する情報を周囲情報として取得することと、
前記周囲情報に基づいて先行車両の有無を判定し、前記先行車両が存在すると判定された場合、前記先行車両との車間距離が、前記車両の速度増加に伴い大きくなる所定の目標車間距離に一致するように加速制御及び減速制御を実行し、前記先行車両が存在しないと判定された場合、前記車両の速度が所定の目標車速に一致するように加速制御及び減速制御を実行するアダプティブクルーズ制御を実行することと、
車高調整により前記車両の車高が通常高さより高くなっている場合において前記アダプティブクルーズ制御が開始されるとき又は前記アダプティブクルーズ制御が実行中であるときは、前記車両が停止するときの前記目標車間距離である停止時目標車間距離を、前記車高が前記通常高さである場合と比較して長くすることと、
を含む運転支援方法。
【請求項8】
車両の前方に存在する他車両と、前記車両の前方に延在する区画線と、を検出し、前記検出された他車両及び区画線に関する情報を周囲情報として取得する処理と、
前記周囲情報に基づいて先行車両の有無を判定し、前記先行車両が存在すると判定された場合、前記先行車両との車間距離が、前記車両の速度増加に伴い大きくなる所定の目標車間距離に一致するように加速制御及び減速制御を実行し、前記先行車両が存在しないと判定された場合、前記車両の速度が所定の目標車速に一致するように加速制御及び減速制御を実行するアダプティブクルーズ制御を実行する処理と、
車高調整により前記車両の車高が通常高さより高くなっている場合において前記アダプティブクルーズ制御が開始されるとき又は前記アダプティブクルーズ制御が実行中であるときは、前記車両が停止するときの前記目標車間距離である停止時目標車間距離を、前記車高が前記通常高さである場合と比較して長くする処理と、
をコンピュータに実行させる運転支援プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アダプティブクルーズ制御を実行可能な運転支援装置、車両、運転支援方法及び運転支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載され、アダプティブクルーズ制御(Adaptive Cruise Control。以下、単に「ACC」とも称する。)を実行可能な運転支援装置が知られている。ACCは、先行車両が存在する場合は先行車両との車間距離が所定の目標車間距離(車両の速度増加に伴い大きくなる距離)に一致するように加速制御及び減速制御を実行し、先行車両が存在しない場合は車両の速度(車速)が所定の目標車速に一致するように加速制御及び減速制御を実行する制御である。なお、先行車両とは、車両の前方において自車線(車両が現在走行している車線)を走行する車両である。
【0003】
運転支援装置は、車両の前方に存在する立体物を検出可能な周囲センサ(例えば、カメラセンサ及びレーダセンサ)を備える。先行車両との車間距離は、この周囲センサにより演算される。具体的には、周囲センサは、検出された立体物の中に先行車両が含まれている場合、車両から当該先行車両の後端部までの距離を先行車両との車間距離として演算する。
【0004】
ところで、車高を調整するためのサスペンションを用いて車体を上昇又は下降させることにより車高を調整することが従来から行われている。サスペンションは、車高調整式サスペンション及びエアサスペンションを含む。車高調整は、外観を向上させる目的で行われる他、車高を通常時の高さより高くする場合は、悪路での乗り心地を改善する目的等で行われる。なお、「通常時の高さ(以下、「通常高さ」とも称する。)」とは、車高調整が行われていないときの高さを意味する。以下では、車高を通常高さより高くすることを、単に「車高を高くする」とも称する。また、車高が高くされた状態を「高車高状態」又は「高車高時」とも称する。
【0005】
一般に、周囲センサは車体に取り付けられているので、車高調整されると周囲センサの取付高さが変化する。周囲センサが立体物を検出可能な範囲(以下、「検出範囲」とも称する。)は、周囲センサの位置から前方に離間するにつれて略円錐形状に拡がっている。このため、車高を高くして周囲センサの取付高さが高くなると、検出範囲が上方に移動することにより、車高調整前には検出できていた先行車両の後端部が検出範囲に含まれなくなり、周囲センサが先行車両との車間距離を正確に演算できなくなる事態が発生する場合がある。一般的な車高変化量(厳密には、正の車高変化量)及び周囲センサの検出範囲によれば、上記事態は、先行車両が低床車両(荷台の高さが比較的に低く設計されている車両)の場合において車両が先行車両に接近したときに発生する。
【0006】
従って、車両が高車高状態でACCにより低床車両である先行車両に追従走行している場合において、先行車両の減速に伴い目標車間距離が徐々に短くなっていくと、途中で先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れて車間距離を正確に演算できなくなるため、ACCが適切に実行されなくなる可能性がある。具体的には、周囲センサが先行車両の後端部を検出できなくなった時点でACCによる加速制御が実行されて車両が先行車両に過度に接近したり追突したりする可能性がある。
【0007】
そこで、運転支援装置の中には、車高を高くする場合はACCを利用できないように構成されているものがある。この構成によれば、上述した問題は解決できるものの、高車高時にはACCを利用できないという別の問題が発生する。
【0008】
ここで、特許文献1には、ACCの実行中に周囲センサ又は車速センサ等に異常が検出された場合にはACCを終了するように構成されたオートクルーズ制御装置が記載されている。「先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れることにより周囲センサが当該後端部を検出できなくなること」を周囲センサの異常と解釈すると、運転支援装置は、特許文献1のオートクルーズ制御装置のように、先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れた時点でACCを終了するように構成され得る。なお、特許文献1では、ACC及び周囲センサは、それぞれ「車間クルーズ」及び「レーダ装置」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平11-20498号公報
【発明の概要】
【0010】
特許文献1の構成によれば、高車高時にACCによる加速制御により車両が先行車両に過度に接近したり追突したりするという問題を解決できるとともに、高車高時であっても少なくとも先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れる時点まではACCを利用することができる。しかしながら、この構成によれば、先行車両が減速(停止を含む)して先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れる度にACCが終了されてしまうので、車両の運転者はACCが終了される度に運転操作を行わなければならず、ACCの利便性が損なわれるという更に別の問題が発生する。
【0011】
本発明は、上述した問題に対処するためになされたものである。即ち、本発明の目的の一つは、車高が通常高さより高くされた場合であってもACCを適切に実行することが可能な技術を提供することにある。
【0012】
本発明による運転支援装置(以下、「本発明装置」とも称する。)は、
車両(V)の前方に存在する他車両と、前記車両の前方に延在する区画線と、を検出し、前記検出された他車両及び区画線に関する情報を周囲情報として取得する周囲センサ(11)と、
前記周囲情報に基づいて先行車両(Vp)の有無を判定し、前記先行車両が存在すると判定された場合、前記先行車両との車間距離(d)が、前記車両の速度増加に伴い大きくなる所定の目標車間距離(dtgt)に一致するように加速制御及び減速制御を実行し、前記先行車両が存在しないと判定された場合、前記車両の速度(v)が所定の目標車速に一致するように加速制御及び減速制御を実行するアダプティブクルーズ制御(ACC)を実行し、
車高調整により前記車両の車高が通常高さ(hn)より高くなっている場合において前記アダプティブクルーズ制御が開始されるとき又は前記アダプティブクルーズ制御が実行中であるときは、前記車両が停止するときの前記目標車間距離である停止時目標車間距離(dtgts)を、前記車高が前記通常高さである場合と比較して長くする、
ように構成された制御ユニット(10)と、
を備える。
【0013】
本発明装置では、車高調整により車両の車高が通常高さより高くなっている場合、アダプティブクルーズ制御(ACC)の停止時目標車間距離が、車高が通常高さである場合と比較して長くされる。この構成によれば、車高が通常高さより高くなることにより周囲センサの検出範囲が上方に移動しても、先行車両(低床車両を含む)の停止に伴い車両が減速して停止する過程において先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れ難くなる。このため、先行車両との車間距離を適切に演算でき、結果として、車高が通常高さより高くされた場合であってもACCを適切に実行することができる。
【0014】
本発明の一側面では、
前記制御ユニット(10)は、
前記車高調整により前記車高が前記通常高さ(hn)から変更されたときの前記車高の変化量である車高変化量(Δh)を取得し、
前記車高が前記通常高さより高くされたときの前記車高変化量を正の値と規定し、前記車高が前記通常高さより低くされたときの前記車高変化量を負の値と規定すると、
前記車高変化量が大きくなるにつれて前記停止時目標車間距離(dtgts)を長くする、
ように構成されている。
【0015】
周囲センサの検出範囲は、車高変化量が大きくなるにつれて上方に移動していく。このため、先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れる時点における先行車両との車間距離は、車高変化量が大きくなるにつれて長くなる。従って、車高変化量が大きくなるにつれて停止時目標車間距離を長くすることにより、車高変化量が大きくなっても先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れ難くなる。結果として、車高変化量が大きくなってもACCを適切に実行することができる。
【0016】
この場合、
前記制御ユニット(10)は、
正の値を有する前記車高変化量(Δh)と、前記停止時目標車間距離(dtgts)の増加量と、を比例関係に維持する、
ように構成されている。
【0017】
先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れる時点における先行車両との車間距離は、車高変化量が大きくなるにつれて線形増加する。このため、正の値を有する車高変化量と停止時目標車間距離の増加量とを比例関係に維持することにより、停止時目標車間距離が過度に短くなったり長くなったりすることを抑制でき、車高変化量に応じた適切な値に設定することができる。
【0018】
本発明の一側面では、
前記制御ユニット(10)は、
正の値を有する前記車高変化量(Δh)が所定の許可閾値(hth)以上である場合、前記アダプティブクルーズ制御を実行しない、
ように構成されている。
【0019】
この構成によれば、許可閾値を適切に設定することにより、先行車両との車間距離が、車両の乗員が違和感を覚える程度に長くなったり、或いは、他車両が車両と先行車両との間に進入する(割り込む)程度に長くなったりする可能性を低減することができる。
【0020】
本発明の一側面では、
前記制御ユニット(10)は、
前記車高変化量(Δh)がゼロ以下の場合の前記停止時目標車間距離(dtgts)を、前記車高が前記通常高さ(hn)のときの前記停止時目標車間距離に維持する、
ように構成されている。
【0021】
車高が通常高さより低くなって周囲センサの検出範囲が下方に移動する場合、先行車両(低床車両を含む)の後端部が当該検出範囲から外れてしまう可能性は極めて低い。このため、上記構成によれば、先行車両との車間距離を適切に維持することができる。
【0022】
本発明による車両には、本発明装置が搭載されている。
【0023】
本発明による運転支援方法は、
車両(V)の前方に存在する他車両と、前記車両の前方に延在する区画線と、を検出し、前記検出された他車両及び区画線に関する情報を周囲情報として取得することと、
前記周囲情報に基づいて先行車両(Vp)の有無を判定し、前記先行車両が存在すると判定された場合、前記先行車両との車間距離(d)が、前記車両の速度増加に伴い大きくなる所定の目標車間距離(dtgt)に一致するように加速制御及び減速制御を実行し、前記先行車両が存在しないと判定された場合、前記車両の速度(v)が所定の目標車速に一致するように加速制御及び減速制御を実行するアダプティブクルーズ制御(ACC)を実行することと、
車高調整により前記車両の車高が通常高さ(hn)より高くなっている場合において前記アダプティブクルーズ制御が開始されるとき又は前記アダプティブクルーズ制御が実行中であるときは、前記車両が停止するときの前記目標車間距離である停止時目標車間距離(dtgts)を、前記車高が前記通常高さである場合と比較して長くすることと、
を含む。
【0024】
この運転支援方法によれば、車高が通常高さより高くされた場合であってもACCを適切に実行することができる。
【0025】
本発明による運転支援プログラムは、
車両(V)の前方に存在する他車両と、前記車両の前方に延在する区画線と、を検出し、前記検出された他車両及び区画線に関する情報を周囲情報として取得する処理と、
前記周囲情報に基づいて先行車両(Vp)の有無を判定し、前記先行車両が存在すると判定された場合、前記先行車両との車間距離(d)が、前記車両の速度増加に伴い大きくなる所定の目標車間距離(dtgt)に一致するように加速制御及び減速制御を実行し、前記先行車両が存在しないと判定された場合、前記車両の速度(v)が所定の目標車速に一致するように加速制御及び減速制御を実行するアダプティブクルーズ制御(ACC)を実行する処理と、
車高調整により前記車両の車高が通常高さ(hn)より高くなっている場合において前記アダプティブクルーズ制御が開始されるとき又は前記アダプティブクルーズ制御が実行中であるときは、前記車両が停止するときの前記目標車間距離である停止時目標車間距離(dtgts)を、前記車高が前記通常高さである場合と比較して長くする処理と、
をコンピュータに実行させる。
【0026】
この運転支援プログラムをコンピュータに実行させることにより、車高が通常高さより高くされた場合であってもACCを適切に実行することができる。
【0027】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1実施形態に係る運転支援装置(第1実施装置)の概略構成図である。
図2】周囲センサの取付位置並びに検出範囲を示す図である。
図3】車高が通常高さより高くされたときの周囲センサの検出範囲を示す図である。
図4】車高変化量と停止時目標車間距離との関係を規定したグラフである。
図5】車高変化量に応じて停止時目標車間距離が長くされた場合においてACCの実行中に先行車両の停止に伴い自車両が停止したときの両者の位置関係及び周囲センサの検出範囲を示す図である。
図6】車速と目標車間距離との関係を規定したグラフである。
図7】第1実施装置の運転支援ECUのCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
図8】CPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態に係る運転支援装置(第2実施装置)の概略構成図である。
図10】第2実施装置の運転支援ECUのCPUが実行するルーチンを示すフローチャートである。
図11】車高調整されていない場合においてACCにより自車両が先行車両に追従走行しているときの両者の位置関係及び周囲センサの検出範囲を示す図である。
図12図11の例において先行車両の停止に伴い自車両が停止したときの両者の位置関係及び周囲センサの検出範囲を示す図である。
図13】車高調整により車高が高くされている場合においてACCにより自車両が先行車両に追従走行しているときの両者の位置関係及び周囲センサの検出範囲を比較例として示す図である。
図14図13の例において先行車両の停止に伴い自車両が減速する過程で先行車両の後端部が周囲センサの検出範囲から外れた状態を示す図である。
図15図14の例においてACCによる加速制御が行われて自車両が先行車両に追突した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
(構成)
以下、本発明の第1実施形態に係る運転支援装置(以下、「第1実施装置」とも称する。)について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、第1実施装置は、運転支援ECU10、及び、これに接続された周囲センサ11、車速センサ12、ACCスイッチ13、駆動装置20、及び、制動装置30を備える。運転支援ECU10は、マイクロコンピュータを主要部として備える。ECUは、Electronic Control Unitの略である。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及びインターフェース(I/F)等を含み、CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。以下では、第1実施装置が搭載された車両を「自車両」と称する。
【0030】
運転支援ECU10は、上記センサ及びスイッチ11乃至13が出力又は発生する信号を所定の時間が経過する毎に取得し、取得した信号に基づいて駆動装置20及び制動装置30を制御してACCを実行するように構成されている。以下では、運転支援ECU10を、単に「ECU10」とも称する。
【0031】
周囲センサ11は、カメラセンサ11a及びレーダセンサ11bを備える。
図2に示すように、カメラセンサ11aは、自車両Vのルームミラー(インナーミラー/リアビューミラー)の裏面に設置されている。カメラセンサ11aは、自車両Vの前方(詳細には、前方から斜め前方にかけて)の風景、より詳細には、カメラセンサ11aの位置から前方に離間するにつれて略円錐形状に拡がる範囲Ra内の風景を撮像する。カメラセンサ11aは、撮像された画像データに基づいて、自車両Vの前方に存在する立体物(例えば、他車両)を認識(検出)し、自車両Vと立体物との相対関係を演算する。ここで、「自車両Vと立体物との相対関係」は、自車両Vから立体物までの距離、自車両Vに対する立体物の方位及び相対速度等を含む。範囲Raは、カメラセンサ11aにより立体物が検出される範囲であるので、以下では、範囲Raを「カメラ検出範囲Ra」とも称する。
【0032】
加えて、カメラセンサ11aは、上記画像データに基づいて、自車両Vの前方に延在する区画線を認識(検出)する。区画線は、車両の通行を方向毎に区分するために道路に標示された線である。カメラセンサは、認識した区画線に基づいて車線の形状を演算する。なお、車線は、車道に延在する隣接する2つの区画線の間の領域として規定される。カメラセンサは、少なくとも自車線(自車両Vが現在走行している車線)を構成する区画線を認識可能となっている。
【0033】
レーダセンサ11bは、自車両Vのフロントバンパーの左右の角部に設置されている。レーダセンサ11bは、ミリ波帯の電波を、自車両Vの前方から側方にかけて、より詳細には、レーダセンサ11bの位置から前方に離間するにつれて略円錐形状に拡がる範囲Rbに照射する。レーダセンサ11bは、立体物(例えば、他車両)が存在する場合、その立体物からの反射波を受信する。レーダセンサ11bは、電波の照射タイミングと受信タイミングと等に基づいて、自車両Vの周囲に存在する立体物を認識(検出)し、自車両Vと立体物との相対関係を演算する。範囲Rbは、レーダセンサ11bにより立体物が検出される範囲であるので、以下では、範囲Rbを「レーダ検出範囲Rb」とも称する。
【0034】
周囲センサ11は、「カメラ検出範囲Ra及びレーダ検出範囲Rbの少なくとも一方において検出された立体物に関する情報」と、「カメラ検出範囲Raにおいて検出された区画線に関する情報」と、を周囲情報として取得し、取得した周囲情報をECU10に出力する。上記の説明から明らかなように、周囲センサ11が立体物を検出可能な範囲は、カメラ検出範囲Raとレーダ検出範囲Rbとにより画定される範囲である。このため、以下では、このようにして画定される範囲を「検出範囲R」と総称する場合がある。
【0035】
図1に戻って説明を続ける。車速センサ12は、自車両の速度(車速)vに応じた信号を発生する。ECU10は、車速センサ12が発生した信号を取得し、当該信号に基づいて車速を演算する。
【0036】
ACCスイッチ13は、運転席の近傍に設けられ、自車両の運転者により操作され得る。ACCスイッチ13がオンされると、ACC要求信号がECU10に送信される。ECU10は、ACC要求信号を受信するとACCを開始する。本実施形態では、先行車両が存在する場合、ECU10は、目標車間距離dtgtを車速v(厳密には、現時点の車速v)で除算した値が一定となるように目標車間距離dtgtを設定するように構成されている(別言すれば、目標車間距離dtgtは、車速vの増加に伴い線形増加するように構成されている。)。加えて、自車両が先行車両から所定の距離をおいて停止するように構成されている。以下では、説明の便宜上、目標車間距離dtgtを車速vで除算した値を「車間時間T」と規定する。また、車速v=0[km/h]のときの目標車間距離dtgtを、特に「停止時目標車間距離dtgts」と称する。この構成によれば、目標車間距離dtgtは車速vの一次関数として規定でき、その傾きは車間時間Tであり、その切片は停止時目標車間距離dtgtsである。
【0037】
駆動装置20は、自車両を走行させるための駆動力をその駆動輪に付与するための装置である。ECU10は、駆動装置20の作動を制御することにより、駆動輪に付与される駆動力を制御する加速制御を実行する。
【0038】
制動装置30は、自車両を制動するための制動力をその車輪に付与するための装置である。ECU10は、制動装置30の作動を制御することにより、車輪に付与される制動力を制御する減速制御を実行する。
【0039】
自車両は、車高を調整するためのサスペンションを用いて車体を上昇又は下降させることにより車高を調整することが可能である。本実施形態では、車高調整は、周知の車高調整式サスペンションを用いて工場又は正規ディーラーにて行われる。図3は、車高調整により自車両Vの車高を通常高さhnからΔhだけ高くした状態を示す。Δhは、車高調整により車高が通常高さhnから変更されたときの車高の変化量であるため、以下では、Δhを「車高変化量Δh」と称する。本明細書では、車高が通常高さhnより高くされたとき(図3参照)の車高変化量Δhを正の値と規定し、車高が通常高さhnより低くされたときの車高変化量Δhを負の値と規定する。
【0040】
工場又は正規ディーラーでは、ECU10に車高変化量Δhを含むコマンドを送信可能な設備が整えられている。このため、車高調整が完了すると、作業者は、車高変化量Δhを含むコマンドをECU10に送信する(図1参照)。これにより、ECU10のROMには、正確な車高変化量Δhの値が書き込まれる。
【0041】
(作動の詳細)
次に、ECU10の作動の詳細について説明するが、その前に、車高を高くすることがACCに及ぼす弊害について先に説明する。図3に示すように、自車両Vの車高を高くするとカメラセンサ11a及びレーダセンサ11bの取付高さが高くなり、カメラ検出範囲Ra及びレーダ検出範囲Rbがそれぞれ上方に移動する(実線参照)。検出範囲Rが上方に移動すると、車高調整前には検出できていた先行車両の後端部が検出範囲に含まれなくなり、周囲センサ11が先行車両との車間距離を正確に演算できなくなる事態が発生する場合がある。この場合、ECU10は、ACCを適切に実行できない可能性がある。
【0042】
図11乃至図15を参照して具体的に説明する。図11乃至図15は、何れも、自車両VがACCにより走行又は停止している様子を示す。先行車両Vpは低床車両である。この例では、停止時目標車間距離dtgtsは4[m]に設定されており、車間時間Tは1.8[s]に設定されている。図11及び図12に示す自車両Vは車高調整されておらず、通常高さhnの車高で走行している。一方、図13乃至図15に示す自車両Vは、車高調整により通常高さhnより車高変化量Δh(=15[cm])だけ高い車高で走行している。
【0043】
まず、図11及び図12を参照して、車高調整されていない場合について説明する。図11では、先行車両Vpは車速vp=50[km/h]で定速走行している。この場合、ECU10は、目標車間距離dtgtを29[m]に設定するとともに車速vが50[km/h]となるように加速制御及び減速制御を実行する。このように、目標車間距離dtgtが比較的に長い場合、先行車両Vpが低床車両であったとしても、その後端部rは周囲センサ11の検出範囲Rに含まれる。このため、周囲センサ11は後端部rを適切に検出でき、結果として、先行車両Vpとの車間距離dを適切に演算できる。従って、図11の例では、自車両Vは車間距離d=29[m]を維持しながら車速v=50[km/h]で走行しており、車間時間Tは1.8[s]に維持されている。なお、図11の検出範囲Rは、周囲センサ11の理論上の検出範囲を示している。このため、検出範囲Rのうち路面よりも下方の部分は実際の検出範囲には含まれない。これは、図12乃至図15についても同様である。
【0044】
先行車両Vpが途中で減速を開始すると、ECU10は、車間時間Tを1.8[s]に維持すべく、自車両Vを減速させるとともに目標車間距離dtgtを減少させる。そして、図12に示すように先行車両Vpが停止すると、ECU10は、車間距離dが4[m](停止時目標車間距離dtgts)となるように自車両Vを停止させる。自車両Vは車高調整されていないため、減速を開始してから停止する過程において先行車両Vpの後端部rが検出範囲Rから外れることはなく、周囲センサ11は先行車両Vpとの車間距離dを適切に演算できる。従って、図12の例では、自車両Vは先行車両Vp(の後端部r)から車間距離d=4[m]だけ手前の位置で適切に停止する。
【0045】
次に、図13乃至図15を参照して、車高調整により車高が高くされている(自車両Vが高車高状態である)場合について説明する。図13では、先行車両Vpは車速vp=50[km/h]で定速走行している。この場合、ECU10は、図11と同様に、目標車間距離dtgtを29[m]に設定するとともに車速vが50[km/h]となるように加速制御及び減速制御を実行する。このように、目標車間距離dtgtが比較的に長い場合、先行車両Vpが低床車両であり且つ自車両Vが高車高状態であったとしても、その後端部rは周囲センサ11の検出範囲Rに含まれる。このため、周囲センサ11は先行車両Vpとの車間距離dを適切に演算できる。従って、図13の例では、自車両Vは車間距離d=29[m]を維持しながら車速v=50[km/h]で走行しており、車間時間Tは1.8[s]に維持されている。
【0046】
図14に示すように、先行車両Vpが途中で減速を開始して停止すると、ECU10は、車間時間Tを1.8[s]に維持すべく、自車両Vを減速させるとともに目標車間距離dtgtを減少させる。これにより、車速vが減少していくとともに車間距離dが短くなっていく(先行車両Vpに接近していく)。ここで、高車高状態においては検出範囲Rが上方に移動するため、先行車両Vpが低床車両の場合、車間距離dが短くなっていく過程において先行車両Vpの後端部rが検出範囲Rから外れてしまう(車間距離dを適切に演算できなくなる。)。この場合、周囲センサ11は、当該時点にて新たな後端部を探索する。図14の例では、車間距離dが7[m]にまで短くなった時点で後端部rが検出範囲Rから外れるため、周囲センサ11は、当該時点にて端面rw(先行車両Vpのうち後端部rより前方に位置している端面)を新たな後端部として検出する(以下、「後端部rw」と称する。)。ECU10は、後端部rwから停止時目標車間距離dtgts(=4[m])だけ手前の位置Pで自車両Vを停止させるべく、当該時点にてACCによる加速制御を開始する。すると、図15に示すように、加速制御の実行中に(図15の例では、車速v=10[km/h]にまで加速された時点において)自車両Vが先行車両Vpの後端部rに追突してしまう。
【0047】
このように、車高調整されていない場合は、先行車両Vpが低床車両であっても自車両Vが減速する過程において先行車両Vpの後端部rが検出範囲Rから外れることがないため、ACCを適切に実行することができる。これに対し、自車両Vが高車高状態にある場合は、先行車両Vpが低床車両であると、自車両Vが減速する過程において周囲センサ11が後端部rを検出できなくなってしまい、先行車両Vpの別の部分(典型的には、先行車両Vpのうち後端部rより前方に位置している部分)を新たな後端部rwとして検出する(即ち、車間距離dを適切に演算できなくなる)可能性が高くなる。その結果、ACCによる加速制御が実行され、先行車両Vpの後端部rに追突したり(図15参照)、過度に接近したりして、ACCを適切に実行できない可能性がある。
【0048】
そこで、ECU10は、車高変化量Δhに応じて停止時目標車間距離dtgtsを変更するように構成されている。図4は、車高変化量Δh[cm]と停止時目標車間距離dtgts[m]との関係を規定したグラフであり、ECU10のROMに格納されている。図4に示すように、停止時目標車間距離dtgtsは、車高変化量ΔhがΔh≦0の場合はdnに設定(維持)され、0<Δh<hthの場合はΔhが増加するにつれて(即ち、車高が高くなるにつれて)線形増加する。即ち、0<Δh<hthの場合はdtgts=dn+CΔh(C:正の定数)が成立している。なお、0<Δh<hthの範囲においては、定数Cは、自車両Vが一般的なサイズの低床車両である先行車両Vp(の後端部r)から車間距離d=dtgts(厳密には、Δhに対応したdtgts)だけ手前の位置で停止した場合に、当該後端部rが周囲センサ11の検出範囲Rに含まれるように実験又はシミュレーションにより予め決定され得る。
【0049】
図5は、自車両VがACCにより低床車両である先行車両Vpに追従走行している途中で先行車両Vpが減速して停止した様子を示す。自車両Vの車高は、Δh=15[cm]だけ高くなっている。この場合、停止時目標車間距離dtgtsは10[m]に設定される(図4参照)。このように、停止時目標車間距離dtgtsが従来の4[m](図14及び図15参照)から10[m]へと長くされることにより、先行車両Vpが低床車両であっても、自車両Vが減速を開始してから停止する過程において後端部rが検出範囲Rから外れることがなくなる。その結果、周囲センサ11は車間距離dを適切に演算でき、自車両Vは先行車両Vp(の後端部r)から車間距離d=10[m]だけ手前の位置で適切に停止する。即ち、ACCを適切に実行することができる。
【0050】
図4のグラフによれば、hth≦Δhの場合は停止時目標車間距離dtgtsが規定されていない。即ち、ECU10は、hth≦Δhの場合においてはACCを実行しないように構成されている。以下では、hthを「許可閾値hth」とも称する。許可閾値hthに対応する停止時目標車間距離dtgtsであるdthは、自車両Vが先行車両Vpから車間距離d=dthだけ手前の位置で停止しても乗員が違和感を覚え難い値、及び/又は、他車両が自車両Vと先行車両Vpとの間に進入し難い(割り込み難い)値となるように実験又はシミュレーションにより予め決定され得る。hthは、このようにして決定されたdth及び定数Cから一義的に決定され得る。
【0051】
なお、Δh≦0の場合は停止時目標車間距離dtgtsはdnに維持される。これは、車高が通常高さhnより低くなって検出範囲Rが下方に移動する場合、先行車両Vpが低床車両であってもその後端部rが検出範囲Rから外れてしまう事態は発生しないので、停止時目標車間距離dtgtsを変更する必要がないからである。
【0052】
ECU10は、ACC要求信号を受信すると、ROMに格納されている車高変化量Δhを読み出し、図4のグラフを参照して当該Δhに対応する値を停止時目標車間距離dtgtsとして設定する。ここで、ECU10は、停止時目標車間距離dtgtsの値に関わらず車間時間Tを一定に保つように構成されている。図6は、車速v[km/h]と目標車間距離dtgt[m]との関係を規定したグラフである。車速v=0のときの目標車間距離dtgtが停止時目標車間距離dtgtsに相当する。直線40及び41は、それぞれ、車高変化量Δh≦0及びΔh=15のときの車速vと目標車間距離dtgtとの関係を表している。図6のグラフによれば、直線40及び41の傾きは互いに等しい。これは、車高変化量Δh≦0及びΔh=15のときの車間時間T(直線40及び41の傾き)が互いに等しいことを意味する(本実施形態では、車間時間T=1.8[s]である。)。この構成によれば、停止時目標車間距離dtgtsが長くされることにより、任意の車速vにおける目標車間距離dtgtも同じ距離だけ長くされる。なお、図6のグラフでは、車高変化量Δh≦0及びΔh=15のときの車速vと目標車間距離dtgtとの関係(即ち、車間時間Tが一定という関係)を例示しているが、同様の関係が0<Δh<hthの範囲内において成立する。
【0053】
(具体的作動)
続いて、ECU10の作動の詳細について説明する。ECU10のCPUは、イグニッションスイッチがオン位置にある期間中、所定時間が経過する毎に図7及び図8にフローチャートにより示したルーチンを並行して繰り返し実行するように構成されている。
【0054】
所定のタイミングになると、CPUは、図7のステップ700から処理を開始してステップ710に進み、ACCを実行中であるか否かを判定する。ACCを実行していない場合(ステップ710:No)、CPUは、ステップ720に進み、ACCスイッチ13からACC要求信号を受信したか否かを判定する。ACC要求信号を受信していない場合(ステップ720:No)、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、ACC要求信号を受信した場合(ステップ720:Yes)、CPUは、ステップ730に進む。
【0055】
ステップ730では、CPUは、ECU10のROMから車高変化量Δhを読み出し、Δh≦0が成立しているか否かを判定する。Δh≦0が成立している場合(ステップ730:Yes)、CPUは、ステップ740に進んで停止時目標車間距離dtgtsにdnを設定する(図4参照)。一方、Δh≦0が不成立の場合(ステップ730:No)、CPUは、ステップ760に進んで0<Δh<hthが成立しているか否かを判定する。0<Δh<hthが不成立(即ち、hth≦Δhが成立)の場合(ステップ760:No)、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。即ち、ACCは実行されない(図4参照)。
【0056】
これに対し、0<Δh<hthが成立している場合(ステップ760:Yes)、CPUは、ステップ770に進んで停止時目標車間距離dtgtsにdn+CΔhを設定する(図4参照)。ステップ740又はステップ770の処理を終了すると、CPUは、ステップ750に進んでACCを開始する。その後、CPUは、ステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0057】
他方、ACCを実行している場合(ステップ710:Yes)、CPUは、ステップ720乃至ステップ750の処理は行わずにステップ795に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0058】
これと並行して、所定のタイミングになると、CPUは、図8のステップ800から処理を開始してステップ810に進み、ACCを実行中であるか否かを判定する。ACCを実行していない場合(ステップ810:No)、CPUは、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0059】
一方、ACCを実行している場合(ステップ810:Yes)、CPUは、ステップ820に進んでACC終了操作が行われたか否かを判定する。ACC終了操作は、ACCを終了させるために運転者により実行される操作であり、アクセルオーバライド及びブレーキ操作を含む。なお、アクセルオーバライドとは、運転者によるアクセルペダル操作に基づく要求加速度がACCによる加速度を上回ることを意味する。ACC終了操作が行われていない場合(ステップ820:No)、CPUは、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0060】
これに対し、ACC終了操作が行われた場合(ステップ820:Yes)、CPUは、ステップ830に進んでACCを終了する。その後、CPUは、ステップ895に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0061】
以上説明したように、第1実施装置によれば、車高調整により車高が通常高さhnより高くなっている場合、停止時目標車間距離dtgtsが、車高が通常高さhnである場合と比較して長くされる。この構成によれば、車高が通常高さhnより高くなることにより周囲センサ11の検出範囲Rが上方に移動しても、先行車両Vpの停止に伴い自車両Vが減速して停止する過程において先行車両Vpの後端部rが検出範囲Rから外れ難くなる。このため、先行車両Vpとの車間距離dを適切に演算でき、結果として、車高が通常高さhnより高くされた場合であってもACCを適切に実行することができる。
【0062】
特に、第1実施装置では、車高変化量Δhが0<Δhである場合、車高変化量Δhと停止時目標車間距離dtgtsの増加量とが比例関係に維持される。先行車両Vpの後端部rが周囲センサ11の検出範囲Rから外れる時点における先行車両Vpとの車間距離dは、車高変化量Δhが大きくなるにつれて線形増加する。このため、この構成によれば、停止時目標車間距離dtgtsが過度に短くなったり長くなったりすることを抑制でき、車高変化量Δhに応じた適切な値に設定することができる。
【0063】
(第2実施形態)
次いで、本発明の第2実施形態に係る運転支援装置(以下、「第2実施装置」とも称する。)について図面を参照しながら説明する。第2実施形態は、車高調整に用いられるサスペンションがエアサスペンションである点で第1実施形態と相違している。以下では、第2実施装置が第1実施装置と相違している点について主に説明する。また、第1実施装置と同一の構成及び処理についてはそれぞれ同一の符号及びステップ番号を用いるものとする。
【0064】
図9に示すように、第2実施装置は、運転支援ECU110、及び、これに接続された周囲センサ11、車速センサ12、ACCスイッチ13、エアサスペンションスイッチ114、駆動装置20、及び、制動装置30を備える。
【0065】
エアサスペンションスイッチ114は、運転席の近傍に設けられ、運転者により操作され得る。エアサスペンションスイッチ114は図示しない上昇スイッチと下降スイッチとを含む。上昇スイッチ又は下降スイッチが押下されると、押下回数を含む押下信号がECU110に送信される。ECU110は、押下信号を受信すると、図示しないエアばね(車体と車軸との間に介装される部材)に圧縮エアを供給したり、エアばねから圧縮エアを排出したりすることにより、押下回数に応じた車高調整を行う。この車高調整は、イグニッションスイッチがオン位置にある期間中はいつでも実行可能である。ECU110は、車高調整が完了すると、車高変化量Δhの値をROMに格納する。
【0066】
(具体的作動)
ECU110のCPUは、イグニッションスイッチがオン位置にある期間中、所定時間が経過する毎に図10及び図8にフローチャートにより示したルーチンを並行して繰り返し実行するように構成されている。以下では、図10のルーチンについて、図7と相違している処理のみを説明する。
【0067】
所定のタイミングになると、CPUは、図10のステップ1000から処理を開始してステップ710に進む。ステップ710にてACCが実行されていると判定した場合(ステップ710:Yes)、CPUは、ステップ1010に進んで現時点において車高調整が行われたか否かを判定する。車高調整が行われていない場合(ステップ1010:No)、CPUは、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。一方、車高調整が行われた場合(ステップ1010:Yes)、CPUは、ステップ730乃至ステップ770の処理を実行し(より詳細には、CPUは、ステップ750にてACCを実行し)、その後、ステップ1095に進んで本ルーチンを一旦終了する。
【0068】
第2実施装置によっても、第1実施装置と同様の作用効果を奏することができる。なお、第2実施装置においては、運転中においても車高調整が可能である。このため、停止中においては、車高調整により車高が高くなり停止時目標車間距離dtgtsが長くなっても、自車両Vを後退させないことが望ましい。
【0069】
以上、本実施形態に係る運転支援装置、車両、運転支援方法、及び、運転支援プログラムについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
10:運転支援ECU、11:周囲センサ、11a:カメラセンサ、11b:レーダセンサ、12:車速センサ、13:ACCスイッチ、20:駆動装置、30:制動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15