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  • 特許-リチウムイオン二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20240528BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240528BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240528BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/613
H01M10/6567
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021199816
(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公開番号】P2023085660
(43)【公開日】2023-06-21
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 勇司
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175800(JP,A)
【文献】特開2018-006223(JP,A)
【文献】特開2009-295289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04 - 10/0587
H01M 10/42 - 10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極層、セパレータおよび負極層を含む電極体を作製すること、
前記電極体および電解液を外装体に封入し、電池セルを組み立てること、
袋状部材と、前記電池セルとを、交互に積層し、前記電池セルの積層方向に沿って前記電池セルを定圧拘束しながら、初期充電電圧に到達するまで初期充電を行うこと、を含み、
前記袋状部材は、内部に流体が封入されており、
前記電池セルの温度を調節する温度調節機構をさらに備える、リチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記袋状部材の圧力を制御する圧力制御機構をさらに備える、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記電池セルの温度が閾値温度を超えた場合に、前記袋状部材の内部の流体を放出する流体放出機構をさらに備える、請求項1または請求項2に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、パソコンや携帯端末等のポータブル電源、電気自動車やハイブリッド自動車等の車両用電源として広く用いられている。特に、車両用電源としてさらなる高容量化が求められている。
【0003】
ところで、リチウムイオン二次電池では、初期充電の際に電極表面において、電解液および添加剤の成分の一部や電池部材に含まれる水分が分解することによってガスが発生する。当該ガスの発生により、電池特性の不具合の要因となる。そこで、当該ガスの除去方法として、例えば、特許文献1(特開2013-125650号公報)には、初期充電時にリチウムイオン二次電池に対して拘束圧を付与することでガス抜きを行い、初期充電終了後に放置することでさらにガス抜きを行う方法が開示されている。
【0004】
また、初期充電時に電池に対して拘束圧を付与すると、電極中の活物質層等が破損するおそれがある。そこで、このような破損を抑制するために、特許文献2(特開2020-107389号公報)には、初期充電時に電池をバネ式の拘束機構で定圧拘束し、初期充電終了後に電池を拘束治具で定寸拘束する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-125650号公報
【文献】特開2020-107389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、リチウムイオン二次電池に対して均一に拘束圧を付与することに改善の余地があった。特に、高容量かつ電極面積の大きいリチウムイオン二次電池を製造するにあたっては、初期充電時のガス発生量が多大となるため、リチウムイオン二次電池に対して均一に拘束圧を付与することが困難になる。
【0007】
また、特許文献2の方法においても、同様に改善の余地があった。特に、電極面積が大きい電池の場合、電極の中央部および電極の端部において付与する拘束圧にばらつきが発生するため、電極層または固体電解質層が割れ、リチウムイオン伝導パスまたは電子伝導パスの途切れが発生し、電池特性に影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
したがって、本開示の目的は、電極に対して均一に拘束圧を付与することができるリチウムイオン二次電池の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
〔1〕本開示のリチウムイオン二次電池の製造方法は、
正極層、セパレータおよび負極層を含む電極体を作製すること、
前記電極体および電解液を外装体に封入し、電池セルを組み立てること、
袋状部材と、前記電池セルとを、交互に積層し、前記電池セルの積層方向に沿って前記電池セルを定圧拘束しながら、初期充電電圧に到達するまで初期充電を行うこと、を含み、
前記袋状部材は、内部に流体が封入されている。
【0010】
上記〔1〕の製造方法によれば、電極に対して均一に拘束圧を付与することができる。
すなわち、袋状部材と電池セルとを交互に積層する。袋状部材の内部には、流体が封入されている。流体は、等方的な圧力を発生させることができる。したがって、袋状部材により電池セルを挟み込むことで、電池セルの電極に対して均一に拘束圧を付与することができる。
【0011】
〔2〕上記〔1〕に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記袋状部材の圧力を制御する圧力制御機構をさらに備えていてもよい。
【0012】
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電池セルの温度を調節する温度調節機構をさらに備えていてもよい。
【0013】
〔4〕上記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池の製造方法において、前記電池セルの温度が閾値温度を超えた場合に、前記袋状部材の内部の流体を放出する流体放出機構をさらに備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態のリチウムイオン二次電池の電極体の一例を示す概略図である。
図2図2は、実施形態において電池セルを拘束する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態について説明する。ただし、本開示はこれらに限定されるものではない。本開示において、リチウムイオン二次電池は、液系電池であってもよいし、全固体電池であってもよい。なお、リチウムイオン二次電池を単に「電池」と称することがある。
【0016】
〔実施形態1〕
<リチウムイオン二次電池の製造方法>
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の製造方法は、「(A)電極体の作製」、「(B)電池セルの組立」、「(C)電池セルの拘束および初期充電」を含む。
【0017】
《(A)電極体の作製》
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の製造方法は、正極層10、セパレータ30および負極層20を含む電極体40を形成することを含む。
【0018】
図1は、本実施形態のリチウムイオン二次電池の構成要素の一例を示す概略図である。電極体40は、正極層10、セパレータ30および負極層20を含む。セパレータ30は、正極層10と負極層20とを分離している。正極層10は、正極端子(不図示)に接続される。負極層20は、負極端子(不図示)に接続される。
【0019】
電極体40は、積層型である。電極体40は、巻回型であってもよい。電極体40は、正極層10、セパレータ30および負極層20が積層されることにより形成される。電極体40は、正極層10、セパレータ30および負極層20をそれぞれ1層以上含む限り、任意の積層構造を有し得る。例えば、正極層10、セパレータ30、負極層20、セパレータ30および正極層10がこの順で積層されることにより、電極体40が形成されていてもよい。
【0020】
正極層10は、セパレータ30に密着している。正極層10は、正極集電箔11および正極合材層12を含む。正極集電箔11は、例えば、アルミニウム(Al)箔等であってもよい。
【0021】
正極合材層12は、少なくとも正極活物質を含む。正極合材層12は、例えば、実質的に正極活物質からなっていてもよい。正極合材層12は、正極活物質に加えて、例えば、導電材、およびバインダ等を含んでいてもよい。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム等(例えばLi1.15Ni1/3Co1/3Mn1/32等)、ニッケルコバルトアルミン酸リチウム、およびリン酸鉄リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。正極活物質に表面処理が施されていてもよい。表面処理により、正極活物質の表面に緩衝層が形成されてもよい。緩衝層は、例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等を含んでいてもよい。導電材は、例えば、導電性炭素材料等〔例えば気相成長炭素繊維(VGCF)等〕を含んでいてもよい。バインダは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。
【0022】
セパレータ30は、正極層10と負極層20との間に介在している。セパレータ30は、正極層10と負極層20とを空間的に分離している。セパレータ30は、正極層10と負極層20との間の電子伝導を遮断している。本実施形態における電池が液系電池の場合、セパレータ30は、多孔質であり、多孔質部分にリチウムイオン伝導性を有する電解液が含侵する。本実施形態における電池が全固体電池の場合、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質層がセパレーター30の役割を果たす。セパレータ30は、例えば、ポリオレフィン製であってもよい。セパレータ30は、例えば、単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、ポリエチレン(PE)層からなっていてもよい。セパレータ30は、例えば、多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、三層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、ポリプロピレン(PP)層、PE層およびPP層を含んでいてもよい。PP層、PE層およびPP層は、この順に積層されていてもよい。
【0023】
負極層20は、セパレータ30に密着している。負極層20は、負極集電箔21および負極合材層22を含む。負極集電箔21は、例えば、銅(Cu)箔、ニッケル(Ni)箔等であってもよい。
【0024】
負極合材層22は、少なくとも負極活物質を含む。負極合材層22は、例えば、実質的に負極活物質からなっていてもよい。負極合材層22は、負極活物質に加えて、例えば、導電材、およびバインダ等を含んでいてもよい。負極活物質は、例えば、黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、珪素、酸化珪素、珪素基合金、錫、酸化錫、錫基合金、およびチタン酸リチウム(Li4Ti512)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0025】
《(B)電池セルの組立》
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の製造方法は、電極体および電解液を外装体に封入し、電池セルを組み立てることを含む。
【0026】
外装体は、任意の形態を有し得る。外装体は、例えば金属製の容器等であってもよい。外装体は、例えばアルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。外装体は、例えば、角形であってもよいし、円筒形であってもよい。外装体は、例えば、電解液を注入するための注入口を有していてもよい。
【0027】
電解液は、支持電解質と有機溶媒とを含む。外装体に電解液が注入される。電解液が電極体に含浸される。電解液の注入後、外装体が密閉される。以上より、電池セルが組み立てられる。
【0028】
《(C)電池セルの拘束および初期充電》
本実施形態におけるリチウムイオン二次電池の製造方法は、袋状部材と電池セルとを交互に積層し、電池セルの積層方向に沿って電池セルを定圧拘束しながら、初期充電電圧に到達するまで初期充電を行うことを含む。袋状部材は、内部に流体が封入されている。
【0029】
図2は、本実施形態において電池セルを定圧拘束する方法を示す模式図である。以下、当該方法により電池セル100を定圧拘束する方法を示すが、例示に過ぎない。
【0030】
図2に示すように、この方法では、複数の電池セル100と、複数の袋状部材51とを、交互に積層し、電池セル100の積層方向に挟んで対向している一対のエンドプレート50aおよび50bの間に配置する。すなわち、各電池セル100は、一対のエンドプレート50aおよび50bの間に挟まれて、袋状部材51を介して隣接するように配置する。各電池セル100は、正極層10、セパレータ30および負極層20の積層方向に拘束圧がかかるように配置する。なお、エンドプレート50および電池セル100の間に、袋状部材51を配置することが好ましい。エンドプレート50と電池セル100とが直接接すると、外装体が破損したり傷がつくおそれがあるためである。
【0031】
上記のように配置した後に、袋状部材51の内部に封入した流体の圧力により電池セル100に拘束圧をかけることで、電池セル100を拘束する。
【0032】
電池セルに加える圧力は、特に制限はないが、加える圧力が小さい場合、電池セル100に対して均一に拘束圧をかけることができないおそれがある。また、加える圧力が大きい場合、電池セルが変形したり、袋状部材が破損するおそれがある。このため、加える圧力としては、例えば、10kPa以上50kPa以下の範囲で適宜調整すればよい。
【0033】
ここで、本実施形態における定圧拘束と、従来の定圧拘束との差異を説明する。特許文献2にも開示されているように、従来はバネ式の拘束機構を用いて定圧拘束することが一般的であった。しかし、バネ式の拘束機構では、初期充電時に電池セルが膨張および収縮する際に少なからずバネが変位する。すなわち、電池セル自身の膨張および収縮によりバネが伸縮するため、ある圧力範囲では定圧拘束を実現することができるが、必ずしも一定の圧力ではなかった。また、電池セルの膨張および収縮に伴い、充放電を行う端子が拘束軸方向に移動することは避けられず、端子の移動に追随する機構を充放電設備に設置することを要した。
【0034】
一方、本実施形態における定圧拘束では、内部に流体を封入した袋状部材を用いて定圧拘束する。流体は、等方的な圧力を発生させることができるため、電池セルに対して均一に圧力をかけることができる。また、袋状部材では、初期充電時に電池セルが膨張および収縮しても、電池セルの厚みの変化分を袋状部材が吸収するため、定圧拘束を実現することができる。さらに、上記のような充放電時の端子の移動もないため、端子の移動に追随する機構を充放電設備に設置することも要しない。
【0035】
(袋状部材)
袋状部材は、電池セルを拘束しても破損せずに、電池セルに対して一定の圧力を印加できる材料からなる。袋状部材の具体的な材料は、適宜選択すればよい。拘束圧が低い場合、材料としては、例えばポリプロピレン等のプラスチップシートを紙類で複合化し袋状に成形したもの等が挙げられる。拘束圧が中程度の場合、材料としては、例えば自動車のエアバックに代表されるナイロン織物またはポリエステル織物にシリコーン樹脂をコーティングしたもの等が挙げられる。拘束圧が高い場合、材料としては、例えばアラミド等の高強度繊維で補強されたネオプレンゴム等が挙げられる。
【0036】
流体は、気体でも液体でもよい。気体としては、例えば、空気等が挙げられ、液体としては、例えば、水等が挙げられる。
【0037】
(エンドプレート)
一対のエンドプレートは、袋状部材および電池セルを、電池セルの積層方向に挟んで対向している。エンドプレートの形状は、任意の形状であってよい。
【0038】
エンドプレートの材料は、定圧拘束した際に破損しない程度の強度を有する任意の材料を用いることができる。例えば、鉄、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金等の金属、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の繊維強化プラスチック等を挙げることができる。
【0039】
(初期充電)
初期充電は、常温(25℃±5℃程度)で行えばよい。初期充電電圧は、例えば、使用する電解液等によっても異なるが、例えば、1V以上5V以下、1.5V以上4.5V以下、2V以上4V以下であってもよい。
【0040】
また、初期充電電圧の調整は、定電量充電(CC充電)により行ってもよく、例えば、0.1C以上10C以下程度、0.1C以上5C以下程度、0.1C以上2C以下程度であってもよい。または、充電開始から所定の電圧に到達するまえ定電流で充電し、さらに定電圧で所定時間充電する定電流-定電圧充電(CC-CV充電)により行ってもよい。
【0041】
(圧力制御機構)
本実施形態においては、袋状部材の圧力を制御する圧力制御機構を備えていてもよい。圧力制御機構としては、例えば、図2に示すように、圧力制御バルブ52等が挙げられる。各袋状部材の圧力は、各袋状部材に接続した圧力制御バルブ52により個別で制御されてもよく、1つの圧力制御バルブ52により一括で制御されてもよい。
【0042】
(実験1)
実験1において、実施形態1の効果を説明する。
【0043】
ラミネートフィルム製の外装体に、正極、セパレータおよび負極が積層された電極体を収容した。電解液を注入後、外装体を封止してリチウムイオン二次電池の電池セルを組み立てた。また、圧縮空気が封入された袋状部材を準備した。
【0044】
図2を参照して、一対のエンドプレート50aおよび50bの間に積層電極体の積層方向に拘束圧がかかるように電池セル100を5個、袋状部材51を6個、それぞれ交互に積層した。各袋状部材51には、圧力制御バルブ52を接続し、一定の圧力となるように制御した。
【0045】
袋状部材51内の圧縮空気の圧力により電池セル100に拘束圧をかけ、電池セル100を定圧拘束しながら、初期充電電圧に到達するまで初期充電を行った。
【0046】
上述の構成とすることで、電池セル100の電極に対して均一に拘束圧を付与することができた。また、初期充電に伴う電池セル100の膨張および収縮に対しても、電池セルの厚みの変化分を袋状部材が吸収することができた。
【0047】
〔実施形態2〕
実施形態2では、電池セルの温度を調節する温度調節機構をさらに備える点で、実施形態1と異なる。
【0048】
例えば、電池セルの温度を可能な限り均一にして、温度要因を排除した電池特性を得る場合には、袋状部材に封入した流体により電池セルを冷却することで、充放電による電池セルの発熱の影響を排除することができる。
【0049】
温度調節機構としては、例えば、チラー(冷却水循環装置)等が挙げられる。
また、袋状部材に封入した流体の温度をモニターし、流体の温度が閾値温度を超えた場合に、充放電を停止する充放電停止機構を備えていてもよい。
【0050】
例えば、初期充電時に電池セルが異物等により短絡する可能性があり、短絡により電池セルが発熱すると、流体の温度が上昇する。したがって、流体の温度をモニターすることで、電池セルの短絡を予見することができる。また、流体の温度が閾値温度を超えた場合に、充放電を停止する充放電停止機構を備えることで、電池セルの発熱を防止することができる。
【0051】
(実験2)
実験2において、実施形態2の効果を説明する。
【0052】
圧縮空気の代わりに冷却水を袋状部材に封入したこと、温度調節機構としてチラーを袋状部材に接続した点を除いては、実験1と同様の構成とした。
【0053】
上述の構成とすることで、実験1と同様の効果を得られることに加えて、電池セルを冷却水で冷却することによる電池セル間の温度のばらつきを低減し、安定した初期充電を実施することができた。
【0054】
〔実施形態3〕
実施形態3では、電池セルの温度が閾値温度を超えた場合に、袋状部材の内部の流体を放出する流体放出機構をさらに備える点で、実施形態1および2と異なる。
【0055】
例えば、初期充電時に電池セルが異物等により短絡する可能性があり、特に高容量の電池セルを初期充電する際に、電池セルの発熱量が大きくなるおそれがある。したがって、電池セルの温度が閾値温度を超えた場合に、袋状部材の内部の流体を放出する流体放出機構を備えることで、電池セルの発熱を防止することができる。
【0056】
流体放出機構としては、例えば、袋状部材にバルブを設置すること等が挙げられる。
(実験3)
実験3において、実施形態3の効果を説明する。
【0057】
流体放出機構として袋状部材にバルブを設置した点を除いては、実験2と同様の構成とした。
【0058】
上述の構成とすることで、実験1および2と同様の効果を得られることに加えて、電池セルの温度異常発生時に、袋状部材のバルブを開き、該電池セルを冷却水で冷却することにより、電池セルの発熱を防止し、初期充電を効率的に実施することができた。
【0059】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
10 正極層、11 正極集電箔、12 正極合材層、20 負極層、21 負極集電箔、22 負極合材層、 30 セパレータ、40 電極体、50,50a,50b エンドプレート、51 袋状部材、52 圧力制御バルブ、100 電池セル。
図1
図2