(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】物品搬送設備
(51)【国際特許分類】
G05D 1/646 20240101AFI20240528BHJP
G05D 1/244 20240101ALI20240528BHJP
G05D 1/245 20240101ALI20240528BHJP
G05D 1/43 20240101ALI20240528BHJP
【FI】
G05D1/646
G05D1/244
G05D1/245
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2021206439
(22)【出願日】2021-12-20
【審査請求日】2023-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】大塚 洋
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-276823(JP,A)
【文献】特開2021-160458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G05D 1/646
G05D 1/244
G05D 1/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線区間と曲線区間とが設けられた走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
一対の前記走行レールのうち、前記幅方向第1側に配置された前記走行レールが第1走行レールであり、前記幅方向第2側に配置された前記走行レールが第2走行レールであり、
前記搬送車は、一対の前記走行レールの上面を転動する走行輪と、前記走行経路の複数箇所に設けられた被検出部を検出する検出部と、を備え、
前記走行輪は、前記幅方向に並ぶ第1前輪及び第2前輪と、前記第1前輪及び前記第2前輪よりも前記走行方向の後側において前記幅方向に並ぶ第1後輪及び第2後輪と、を含み、
前記第1前輪と前記第1後輪とは、前記第1走行レールの上面を転動するように構成され、
前記第2前輪と前記第2後輪とは、前記第2走行レールの上面を転動するように構成され、
前記制御システムは、判定部と、測定部と、記憶処理部と、記憶部と、走行制御部と、を備え、
前記判定部は、前記第1後輪及び前記第2後輪の回転速度と、前記第1前輪及び前記第2前輪の少なくとも一方の回転速度との差である前後輪回転速度差に基づいて、前記搬送車が前記直線区間から前記曲線区間に進入したことを判定するように構成され、
前記測定部は、前記検出部により前記被検出部が検出されてから、前記搬送車が前記直線区間から前記曲線区間に進入したことが前記判定部により判定されるまでの前記搬送車の走行距離である曲線前距離を測定するように構成され、
前記記憶処理部は、前記曲線前距離と、前記曲線前距離の測定に用いられた前記被検出部である曲線前被検出部に設定された固有の識別情報と、を関連付けて、前記曲線前距離と前記識別情報とを曲線前情報として前記記憶部に記憶させ、
前記走行制御部は、前記曲線前情報が前記記憶部に記憶されている状態で前記検出部が前記曲線前被検出部を検出した場合に、前記記憶部に記憶された前記曲線前情報に含まれる前記曲線前距離と、前記曲線前被検出部が検出されてからの実際の前記搬送車の走行距離と、に基づいて、前記搬送車が前記曲線区間に進入する以前に、前記第1前輪、前記第2前輪、前記第1後輪、及び前記第2後輪の少なくとも1つの回転速度を変化させる速度変化制御を実行する、物品搬送設備。
【請求項2】
前記検出部は、前記曲線前被検出部を検出する際に、前記曲線前被検出部に設定された前記識別情報を読み取るように構成され、
前記記憶処理部は、当該読み取られた識別情報を前記曲線前情報として前記記憶部に記憶させ、
前記測定部は、前記走行経路に設けられた複数の前記曲線区間のそれぞれについて、前記曲線前距離を測定し、
前記記憶処理部は、複数の前記曲線区間のそれぞれについて、前記曲線前被検出部に設定された前記識別情報と前記曲線前距離とを含む前記曲線前情報を前記記憶部に記憶させ、
前記走行制御部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記曲線前情報を参照して、前記検出部が前記曲線前被検出部を検出した際に読み取った前記識別情報と同じ前記識別情報を含む前記曲線前情報を前記記憶部から取得し、当該取得した前記曲線前情報に含まれている前記曲線前距離を用いて前記速度変化制御を実行する、請求項1に記載の物品搬送設備。
【請求項3】
前記走行制御部は、前記速度変化制御として、前記第1前輪及び前記第2前輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1前輪及び前記第2前輪の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させ、その後、前記第1後輪及び前記第2後輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1後輪及び前記第2後輪の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させる制御を実行する、請求項1又は2に記載の物品搬送設備。
【請求項4】
前記搬送車の進路を案内する案内レールが、一対の前記走行レールに対して上下方向の異なる位置において、前記曲線区間の延在方向に沿って配置され、
前記搬送車は、前記案内レールにおける前記幅方向第1側を向く第1側面又は前記幅方向第2側を向く第2側面を転動する案内輪を備え、
前記搬送車は、前記直線区間を走行する場合に、前記第1前輪及び前記第1後輪が前記第1走行レールの上面を転動すると共に前記第2前輪及び前記第2後輪が前記第2走行レールの上面を転動する両輪走行状態となり、
前記搬送車は、前記曲線区間を走行する場合に、前記案内輪が前記案内レールにおける前記第1側面又は前記第2側面を転動すると共に、前記第1前輪及び前記第1後輪の組と前記第2前輪及び前記第2後輪の組との何れか一方の組が対応する前記走行レールの上面を転動し、他方の組が対応する前記走行レールから離間した片輪走行状態となり、
前記走行制御部は、前記速度変化制御として、前記第1前輪及び前記第2前輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1前輪及び前記第2前輪のうち対応する前記走行レールの上面を転動している方の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させ、その後、前記第1後輪及び前記第2後輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1後輪及び前記第2後輪のうち対応する前記走行レールの上面を転動している方の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させる制御を実行する、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品搬送設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線区間と曲線区間とが設けられた走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備に関する。
【背景技術】
【0002】
このような物品搬送設備においては、直線区間と曲線区間とで、搬送車の走行速度を異ならせることが多い。例えば、直線区間用の走行速度と曲線区間用の走行速度とが設定されており、搬送車の走行速度は、直線区間では直線区間用の走行速度を目標として制御され、曲線区間では曲線区間用の走行速度を目標として制御される。このような速度制御を行うためには、走行経路において直線区間が設けられている位置および曲線区間が設けられている位置が、正確に把握されていることが望ましい。
【0003】
例えば、特開昭63-118811号公報(特許文献1)には、走行経路が分岐又は合流する交差点(K)の手前に設けられたマーク(m)を検出することにより、交差点(K)の手前に搬送車が位置していることを把握する技術が開示されている。また、特許文献1には、走行車輪(6)の回転数を検出するロータリエンコーダ(18)の検出結果に基づいて、搬送車の走行距離を検出する技術が開示されている。これらの技術を利用し、曲線区間の手前に被検出部(マーク)を設け、当該被検出部からの搬送車の走行距離を検出することにより、被検出部から規定距離離れた曲線区間に搬送車が進入するタイミングを把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被検出部から曲線区間までの距離は、通常、設計上定められるものである。しかしながら、例えば、被検出部の実際の配置が設計上の位置に対してずれている可能性もあり、そのような場合には、被検出部から曲線区間までの設計上の距離と実際の距離とにずれが生じ得る。当該ずれが生じている場合には、搬送車側で把握されている曲線区間の位置に基づいて行われる速度制御も、実際の曲線区間の位置に対してずれた位置で行われることになる。
【0006】
上記実状に鑑みて、曲線区間の正確な位置に基づいた精度の高い走行制御を行うことが可能な技術の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
直線区間と曲線区間とが設けられた走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
一対の前記走行レールのうち、前記幅方向第1側に配置された前記走行レールが第1走行レールであり、前記幅方向第2側に配置された前記走行レールが第2走行レールであり、
前記搬送車は、一対の前記走行レールの上面を転動する走行輪と、前記走行経路の複数箇所に設けられた被検出部を検出する検出部と、を備え、
前記走行輪は、前記幅方向に並ぶ第1前輪及び第2前輪と、前記第1前輪及び前記第2前輪よりも前記走行方向の後側において前記幅方向に並ぶ第1後輪及び第2後輪と、を含み、
前記第1前輪と前記第1後輪とは、前記第1走行レールの上面を転動するように構成され、
前記第2前輪と前記第2後輪とは、前記第2走行レールの上面を転動するように構成され、
前記制御システムは、判定部と、測定部と、記憶処理部と、記憶部と、走行制御部と、を備え、
前記判定部は、前記第1後輪及び前記第2後輪の回転速度と、前記第1前輪及び前記第2前輪の少なくとも一方の回転速度との差である前後輪回転速度差に基づいて、前記搬送車が前記直線区間から前記曲線区間に進入したことを判定するように構成され、
前記測定部は、前記検出部により前記被検出部が検出されてから、前記搬送車が前記直線区間から前記曲線区間に進入したことが前記判定部により判定されるまでの前記搬送車の走行距離である曲線前距離を測定するように構成され、
前記記憶処理部は、前記曲線前距離と、前記曲線前距離の測定に用いられた前記被検出部である曲線前被検出部に設定された固有の識別情報と、を関連付けて、前記曲線前距離と前記識別情報とを曲線前情報として前記記憶部に記憶させ、
前記走行制御部は、前記曲線前情報が前記記憶部に記憶されている状態で前記検出部が前記曲線前被検出部を検出した場合に、前記記憶部に記憶された前記曲線前情報に含まれる前記曲線前距離と、前記曲線前被検出部が検出されてからの実際の前記搬送車の走行距離と、に基づいて、前記搬送車が前記曲線区間に進入する以前に、前記第1前輪、前記第2前輪、前記第1後輪、及び前記第2後輪の少なくとも1つの回転速度を変化させる速度変化制御を実行する。
【0008】
第1前輪及び第2前輪が曲線区間に進入し、それよりも後側に配置された第1後輪及び第2後輪がまだ曲線区間に進入しておらず直線区間にある場合には、第1後輪及び第2後輪の回転速度と、第1前輪及び第2前輪の少なくとも一方の回転速度とに、回転速度差(前後輪回転速度差)が生じる。すなわち、第1後輪及び第2後輪が直線区間を転動する距離に対して、第1前輪及び第2前輪のうち、曲線区間の内側に配置された走行輪の転動距離は短くなり、曲線区間の外側に配置された走行輪の転動距離は長くなる。本構成によれば、この現象を利用して、搬送車が曲線区間に進入したこと、すなわち曲線区間の開始地点を、判定部によって正確に判定することができる。そして、測定部は、判定部による判定結果に基づいて曲線前距離を測定する。曲線前距離は、被検出部が検出されてから曲線区間の開始地点まで搬送車が走行する距離に相当に相当する。このように測定された曲線前距離は、曲線前被検出部の識別情報と共に、曲線前情報として記憶部に記憶される。そして、搬送車が次に同じ曲線区間を走行する場合には、走行制御部は、記憶された曲線前情報に基づいて、搬送車が曲線区間に進入する以前に、走行輪の回転速度を変化させる速度変化制御を実行する。このように、本構成によれば、前後輪回転速度差が生じる現象を利用して判定された曲線区間の位置に基づいて曲線前情報を生成すると共に、当該曲線前情報に基づいて、曲線区間の正確な位置に基づいた精度の高い速度変化制御を実行することができる。またこの際、記憶された曲線前情報を用いるため、判定部による曲線区間への進入の判定を行うことができない曲線区間に進入する以前の段階であっても、精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【0009】
本開示に係る技術のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図6】搬送車が直線区間から曲線区間を通過する場面を時系列的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
物品搬送設備の実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1~
図3に示すように、物品搬送設備100は、直線区間Rsと曲線区間Rcとが設けられた走行経路Rに沿って配置された一対の走行レール90と、走行経路Rに沿って走行して物品Wを搬送する搬送車Vと、搬送車Vを制御する制御システムH(
図5参照)と、を備えている。
【0013】
以下の説明では、走行経路Rに沿う方向を「走行方向X」とし、上下方向視で走行方向Xに直交する方向を「幅方向Y」とする。また、幅方向Yの一方側を「幅方向第1側Y1」とし、幅方向Yの他方側を「幅方向第2側Y2」とする。例えば、幅方向第1側Y1は、搬送車Vの進行方向を基準として左側を指し、幅方向第2側Y2は、その反対の右側を指す。但し、幅方向第1側Y1及び幅方向第2側Y2は、左右の何れかの側を特定するものではない。幅方向第1側Y1が右側を指し、幅方向第2側Y2が左側を指すものであっても良い。
【0014】
図1及び
図2に示すように、直線区間Rsは、上下方向視で直線状に形成された区間である。曲線区間Rcは、上下方向視で曲線状に形成された区間である。詳細な図示は省略するが、走行経路Rには、複数の直線区間Rsと複数の曲線区間Rcとが設けられている。複数の直線区間Rsには、長さや延在方向の異なる複数種類の直線区間Rsが含まれる。複数の曲線区間Rcには、長さや曲率の異なる複数種類の曲線区間Rcが含まれる。
【0015】
一対の走行レール90は、互いに幅方向Yに離間した位置において、走行経路Rに沿って配置されている。一対の走行レール90のうち、幅方向第1側Y1に配置された走行レール90が第1走行レール91であり、幅方向第2側Y2に配置された走行レール90が第2走行レール92である。なお、以下では、第1走行レール91と第2走行レール92とを、単に走行レール90と総称する場合がある。
【0016】
走行経路Rの複数箇所には、被検出部70が設けられている。具体的には、走行経路Rにおける走行方向Xに離間した複数箇所に、被検出部70が設けられている。被検出部70は、搬送車Vの検出部3(後述)による検出対象とされている。なお、
図1及び
図2は、走行経路Rの一部を示すものであり、図中には、1つの被検出部70のみが示されている。
【0017】
被検出部70には、固有の識別情報70i(
図5参照)が設定されている。本例では、識別情報70iには、被検出部70が設けられた位置を示すアドレス情報が含まれている。本実施形態では、搬送車Vは、検出部3によって被検出部70を検出することにより、当該被検出部70が設けられた位置、すなわち、検出時における自車の現在位置を把握可能となっている。例えば、被検出部70として、識別情報70iを保有した1次元コード又は2次元コードを用いることができる。或いは、被検出部70として、識別情報70iを保有したRFIDタグ(Radio Frequency Identification Tag)を用いることができる。
【0018】
以下では、複数の被検出部70のうち、曲線区間Rcよりも走行方向Xの手前側に設けられた被検出部70を曲線前被検出部70pと称する。図示の例では、曲線区間Rcよりも走行方向Xの手前側であって当該曲線区間Rcの直近に設けられた被検出部70が、曲線前被検出部70pとされている。
【0019】
本実施形態では、搬送車Vの進路を案内する案内レール80が、一対の走行レール90に対して上下方向の異なる位置において、曲線区間Rcの延在方向に沿って配置されている。なお、案内レール80の一部は、曲線区間Rcからはみ出して直線区間Rsまで延在していても良い。
【0020】
図3に示すように、本実施形態では、案内レール80は、一対の走行レール90よりも上方に配置されている。また、案内レール80は、幅方向Yにおける一対の走行レール90の間に配置されている。案内レール80には、幅方向第1側Y1を向く第1側面81と、幅方向第2側Y2を向く第2側面82と、が形成されている。本例では、第1側面81及び第2側面82の双方は、上下方向及び走行方向Xに沿って形成されている。第1側面81及び第2側面82は、搬送車Vの案内輪13(後述)が転動するための転動面である。
【0021】
本実施形態では、搬送車Vは、天井付近に設定された走行経路Rに沿って物品Wを搬送する天井搬送車として構成されている。物品Wは、搬送車Vによる搬送対象物とされ、例えば、半導体ウェハを収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)や、レチクルを収容するレチクルポッド等とされる。
【0022】
搬送車Vは、一対の走行レール90の上面を転動する走行輪10と、走行輪10を駆動する走行輪駆動部10Mと、を備えている。搬送車Vは、走行輪10が走行レール90の上面を転動することによって、走行経路Rに沿って走行するように構成されている。走行輪駆動部10Mは、例えば、サーボモータ等の電動モータを用いて構成されている。
【0023】
走行輪10は、幅方向Yに並ぶ第1前輪11f及び第2前輪12fと、第1前輪11f及び第2前輪12fよりも走行方向Xの後側において幅方向Yに並ぶ第1後輪11r及び第2後輪12rと、を含む。
【0024】
第1前輪11fと第1後輪11rとは、第1走行レール91の上面を転動するように構成されている。第2前輪12fと第2後輪12rとは、第2走行レール92の上面を転動するように構成されている。
【0025】
本実施形態では、幅方向Yに並ぶ第1前輪11fと第2前輪12fとは、同一の軸(不図示)に連結されており、同速で回転駆動されるように構成されている。幅方向Yに並ぶ第1後輪11rと第2後輪12rとは、同一の軸(不図示)に連結されており、同速で回転駆動されるように構成されている。なお、以下では、第1前輪11f、第2前輪12f、第1後輪11r、及び第2後輪12rを、走行輪10と総称する場合がある。
【0026】
本実施形態では、搬送車Vは、案内レール80における幅方向第1側Y1を向く第1側面81又は幅方向第2側Y2を向く第2側面82を転動する案内輪13と、案内輪13を駆動する案内輪駆動部13Mと、備えている。搬送車Vは、案内輪13が案内レール80の第1側面81又は第2側面82を転動することによって、走行経路Rに沿って案内されるように構成されている。案内輪駆動部13Mは、案内輪13を幅方向Yに付勢して幅方向Yに沿って移動させるように構成されている。これにより、案内輪駆動部13Mは、案内輪13の幅方向Yの位置を、走行部1の幅方向Yの中心よりも幅方向第1側Y1に設定された第1位置と、走行部1の幅方向Yの中心よりも幅方向第2側Y2に設定された第2位置と、に変更するように構成されている。案内輪駆動部13Mは、例えば、ロータリソレノイドを用いて構成され、通電状態に応じて、案内輪13の幅方向Yの位置を変化させる。
【0027】
本実施形態では、案内輪13は、前側案内輪13fと、前側案内輪13fよりも走行方向Xの後側に配置された後側案内輪13rと、を含む。図示の例では、2つの前側案内輪13fが走行方向Xに隣接するように並んで配置されている。また、2つの後側案内輪13rが走行方向Xに隣接するように並んで配置されている。
【0028】
本実施形態では、搬送車Vは、走行レール90における幅方向Yの内側に形成された案内面を転動する複数の補助輪14を備えている。本実施形態では、複数の補助輪14のうち一部は、第1走行レール91の案内面(本例では幅方向第2側Y2を向く鉛直面)を転動するように構成されている。複数の補助輪14のうち他の一部は、第2走行レール92の案内面(本例では幅方向第1側Y1を向く鉛直面)を転動するように構成されている。複数の補助輪14が走行レール90の案内面を転動しながら、搬送車Vは走行経路Rに沿って走行する。これにより、搬送車Vが、走行経路Rに沿って適切に案内されると共に、搬送車Vの姿勢が水平姿勢に維持され易くなっている。
【0029】
本実施形態では、搬送車Vは、走行部1と本体部2とを備えている。走行部1は、搬送車Vが走行するための部分であり、走行レール90に対して上方に配置されている。本体部2は、走行部1に連結されており、走行レール90に対して下方に配置されている。本例では、本体部2は、物品Wを支持するように構成されている。物品Wは、本体部2に支持された状態で搬送車Vにより搬送される。
【0030】
本実施形態では、走行部1は、前側走行部1Fと、前側走行部1Fに対して走行方向Xの後側に配置された後側走行部1Rと、を備えている。本例では、前側走行部1Fには、第1前輪11fと第2前輪12fとが支持されている。また、前側走行部1Fには、前側案内輪13fと補助輪14とが支持されている。後側走行部1Rには、第1後輪11rと第2後輪12rとが支持されている。また、後側走行部1Rには、後側案内輪13rと補助輪14とが支持されている。
【0031】
搬送車Vは、走行経路Rの複数箇所に設けられた被検出部70を検出する検出部3を備えている。本例では、搬送車Vは、上述のように、検出部3が被検出部70を検出することによって、当該被検出部70のアドレス情報(識別情報70i)を取得して、検出時における自車の現在位置を把握するように構成されている。被検出部70として、1次元コード又は2次元コードが用いられる場合には、検出部3として、1次元コードリーダ又は2次元コードリーダを用いることができる。また、被検出部70として、RFIDタグが用いられる場合には、検出部3として、RFIDリーダを用いることができる。
【0032】
本実施形態では、搬送車Vの走行速度は、直線区間Rsにおいて、直線区間用の走行速度Vsを目標として制御される(
図1参照)。また、搬送車Vの走行速度は、曲線区間Rcにおいて、曲線区間用の走行速度Vcを目標として制御される(
図2参照)。例えば、曲線区間用の走行速度Vcは、直線区間用の走行速度Vsよりも低い速度とされる。搬送車Vの走行速度は、走行輪10の回転速度が制御されることにより制御される。
【0033】
搬送車Vは、直線区間Rsを走行する場合に、第1前輪11f及び第1後輪11rが第1走行レール91の上面を転動すると共に第2前輪12f及び第2後輪12rが第2走行レール92の上面を転動する両輪走行状態となる。
【0034】
そして、
図4に示すように、搬送車Vは、曲線区間Rcを走行する場合に、案内輪13が案内レール80における第1側面81又は第2側面82を転動すると共に、第1前輪11f及び第1後輪11rの組と第2前輪12f及び第2後輪12rの組との何れか一方の組が対応する走行レール90の上面を転動し、他方の組が対応する走行レール90から離間した片輪走行状態となる。
図4では、前側案内輪13fが案内レール80の第1側面81を転動すると共に、第1前輪11fが第1走行レール91の上面を転動し、第2前輪12fが第2走行レール92から離間した片輪走行状態を例示している。
【0035】
図4に示すように、曲線区間Rcでは、一対の走行レール90のうち一方の走行レール90の上面(図示の例では第2走行レール92の上面)に、走行方向Xに沿って延在する凹部93が形成されている。これにより、当該凹部93が形成された走行レール90側に配置された走行輪10が当該走行レール90から離間して、搬送車Vが片輪走行状態となる。
【0036】
曲線区間Rcでは、幅方向Yの内側に配置された走行レール90の走行方向Xの長さと、幅方向Yの外側に配置された走行レール90の長さとは、互いに異なる。そして、上述のように、本例では、幅方向Yに並ぶ一対の走行輪10(例えば第1前輪11f及び第2前輪12f)は、同速で回転駆動されるように構成されている。同速で回転駆動される一対の走行輪10が、異なる距離を転動することはできないため、搬送車Vは、曲線区間Rcにおいて片輪走行状態となるように構成されている。これにより、搬送車Vは、幅方向Yに並ぶ一対の走行輪10が同速で回転駆動される構成でありながらも、曲線区間Rcを適切に走行可能となっている。
【0037】
物品搬送設備100は、
図5に示すように、搬送車Vを制御する制御システムHを備えている。詳細な図示は省略するが、制御システムHは、搬送車Vに搭載された制御装置と、搬送車Vとは別に設けられると共に設備の全体又は一部を管理する上位コントローラと、を含んで構成されている。但し、搬送車Vに搭載された制御装置のみが、制御システムHを構成していても良い。制御システムHは、例えば、マイクロコンピュータ等のプロセッサ、メモリ等の周辺回路等を備えている。そして、これらのハードウェアとコンピュータ等のプロセッサ上で実行されるプログラムとの協働により、各機能が実現される。
【0038】
制御システムHは、検出部3によって検出された検出結果を取得するように構成されている。本例では、検出部3は、曲線前被検出部70pを検出する際に、曲線前被検出部70pに設定された識別情報70iを読み取るように構成されている。そのため本例では、制御システムHは、検出部3が読み取った曲線前被検出部70pの識別情報70iを取得するように構成されている。上述のように識別情報70iには、曲線前被検出部70pが設けられた位置のアドレス情報が含まれている。制御システムHは、識別情報70iを取得することで、当該識別情報70iを保有している曲線前被検出部70pが、複数の曲線区間Rcのうち何れの曲線区間Rcに属しているかを把握すると共に、搬送車Vの現在位置を把握するように構成されている。
【0039】
本実施形態では、
図6及び
図7に示す時刻T1において、検出部3が曲線前被検出部70pを検出している。すなわち、時刻T1は、検出部3によって曲線前被検出部70pが検出される検出時刻Tdである。
【0040】
制御システムHは、判定部Haと、測定部Hbと、記憶処理部Hcと、記憶部Hdと、走行制御部Hmと、を備えている。
【0041】
判定部Haは、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nr(
図7参照)と、第1前輪11f及び第2前輪12fの少なくとも一方の回転速度Nf(
図7参照)との差である前後輪回転速度差に基づいて、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入したことを判定するように構成されている。回転速度Nf及び回転速度Nrは、単位時間当たりの回転数により表され、例えば、[rpm]がその単位とされる。
【0042】
第1前輪11f及び第2前輪12fが曲線区間Rcに進入し、それよりも後側に配置された第1後輪11r及び第2後輪12rがまだ曲線区間Rcに進入しておらず直線区間Rsにある場合には、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrと、第1前輪11f及び第2前輪12fの少なくとも一方の回転速度Nfとに、回転速度差(前後輪回転速度差)が生じる。すなわち、第1後輪11r及び第2後輪12rが直線区間Rsを転動する距離に対して、第1前輪11f及び第2前輪12fのうち、曲線区間Rcの内側に配置された走行輪10の転動距離は短くなり、曲線区間Rcの外側に配置された走行輪10の転動距離は長くなる。判定部Haは、この現象を利用して、搬送車Vが曲線区間Rcに進入したこと、すなわち曲線区間Rcの開始地点を、正確に判定することができる。
【0043】
上述のように、本実施形態では、搬送車Vは、曲線区間Rcにおいて片輪走行状態となる。そのため、判定部Haは、走行レール90を転動している第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrと、第1前輪11f及び第2前輪12fのうち走行レール90を転動している方の回転速度Nfと、の前後輪回転速度差に基づいて、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入したことを判定する。本例では、判定部Haは、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrと、第1走行レール91を転動している第1前輪11fの回転速度Nfと、の前後輪回転速度差に基づいて、上記判定を行う。
【0044】
本実施形態では、
図6及び
図7に示す時刻T2において、前後輪回転速度差が生じ始め、搬送車Vが曲線区間Rcに進入したことを判定部Haが判定している。すなわち、時刻T2は、搬送車Vが曲線区間Rcへの進入を開始した進入開始時刻Tcである。
【0045】
本実施形態では、測定部Hbは、第1前輪11f(及び第2前輪12f)の回転速度Nfと、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrと、のそれぞれを測定するように構成されている。測定部Hbは、例えば、ロータリエンコーダを用いて構成されている。本例では、測定部Hbは、走行輪10の回転速度と、搬送車Vの走行距離と、を測定するように構成されている。
【0046】
測定部Hbは、検出部3により曲線前被検出部70p(被検出部70)が検出されてから、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入したことが判定部Haにより判定されるまでの搬送車Vの走行距離である曲線前距離Lp(
図6参照)を測定するように構成されている。本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、検出部3により曲線前被検出部70pが検出された時刻T1を検出時刻Tdとし、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入したことが判定部Haにより判定された時刻T2を進入開始時刻Tcとして、測定部Hbは、検出時刻Tdから進入開始時刻Tcまでの経過時間Tpにおける走行輪10の回転数(回転量)に基づいて、曲線前距離Lpを測定する。
【0047】
記憶処理部Hcは、曲線前距離Lpと、曲線前距離Lpの測定に用いられた曲線前被検出部70pに設定された固有の識別情報70iと、を関連付けて、曲線前距離Lpと識別情報70iとを曲線前情報Iとして記憶部Hdに記憶させる。本実施形態では、記憶処理部Hcは、検出部3によって読み取られた識別情報70iを曲線前情報Iとして記憶部Hdに記憶させる。また、記憶処理部Hcは、測定部Hbによって測定された曲線前距離Lpを曲線前情報Iとして記憶部Hdに記憶させる。
【0048】
本実施形態では、測定部Hbは、走行経路Rに設けられた複数の曲線区間Rcのそれぞれについて、曲線前距離Lpを測定する。そして、記憶処理部Hcは、複数の曲線区間Rcのそれぞれについて、曲線前被検出部70pに設定された識別情報70iと曲線前距離Lpとを含む曲線前情報Iを記憶部Hdに記憶させる。
【0049】
走行制御部Hmは、搬送車Vの走行を制御するように構成されている。本実施形態では、走行制御部Hmは、走行輪駆動部10Mと案内輪駆動部13Mとを制御する。
【0050】
走行制御部Hmは、走行輪駆動部10Mを制御することで、走行輪10の回転速度、ひいては搬送車Vの走行速度を制御するように構成されている。本例では、走行制御部Hmは、直線区間Rsでは、搬送車Vの走行速度が直線区間用の走行速度Vs(
図1参照)となるように、走行輪駆動部10Mを制御する。また、走行制御部Hmは、曲線区間Rcでは、搬送車Vの走行速度が曲線区間用の走行速度Vc(
図2参照)となるように、走行輪駆動部10Mを制御する。厳密には、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する前に、搬送車Vの走行速度が曲線区間用の走行速度Vcとなっていることが好ましい。そのため、走行制御部Hmは、曲線区間Rcの手前では、搬送車Vの走行速度が曲線区間用の走行速度Vcとなるように、走行輪駆動部10Mを制御する。
【0051】
走行制御部Hmは、案内輪駆動部13Mを制御することで、搬送車Vの進行方向を制御するように構成されている。案内輪13が、第1側面81を転動するか第2側面82を転動するかによって、搬送車Vの進行方向が異なる。本例では、走行制御部Hmは、案内輪駆動部13Mを制御することで、案内輪13の幅方向Yの位置を変更または維持し、案内輪13を案内レール80の第1側面81又は第2側面82に転動させるように構成されている。本実施形態では、走行制御部Hmは、物品Wを搬送するために指定された搬送経路と、被検出部70が検出された際の搬送車Vの現在位置と、に基づいて、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に、案内輪13の幅方向Yの位置を搬送車Vの進行方向に応じた位置に配置するように案内輪駆動部13Mを制御する。本実施形態では、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に、当該曲線区間Rcが右カーブ区間である場合には、第2側面82を転動する位置に案内輪13が配置され、当該曲線区間Rcが左カーブ区間である場合には、第1側面81を転動する位置に案内輪13が配置されるように、案内輪駆動部13Mが制御される。なお、上述の「搬送経路」は、記憶部Hdに予め記憶されていても良いし、上位コントローラ(不図示)からの搬送指令に含まれていても良い。このように、本実施形態では、走行制御部Hmは、走行輪駆動部10Mの制御と案内輪駆動部13Mの制御とを独立して行うが、両制御は、同じタイミングで行われても良いし、異なるタイミングで行われても良い。
【0052】
ここで、
図6は、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcを通過する場面を時系列的に示しており、具体的には、時刻T1、時刻T2、時刻T3における搬送車Vの位置を示している。
図7は、走行輪10の回転速度の時間変化を示しており、具体的には、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrと、一対の走行レール90のうち曲線区間Rcにおいて幅方向Yの内側に配置された第1走行レール91の上面を転動する第1前輪11fの回転速度Nfと、の時間変化を示している。
【0053】
時刻T1では、検出部3によって曲線前被検出部70pが検出される。すなわち、時刻T1は、検出部3によって曲線前被検出部70pが検出される検出時刻Tdである。
【0054】
時刻T2では、第1前輪11f及び第2前輪12fが曲線区間Rcに進入を開始する。すなわち、時刻T2は、第1前輪11f及び第2前輪12fが曲線区間Rcへの進入を開始する進入開始時刻Tcである。進入開始時刻Tcでは、第1後輪11r及び第2後輪12rは、まだ曲線区間Rcには進入しておらず直線区間Rsにある。そのため、
図7に示すように、進入開始時刻Tcでは、第1前輪11fの回転速度Nfが、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrに比べて低くなり始め、両者の間に回転速度差(前後輪回転速度差)が生じ始める。上述のように、測定部Hbは、第1前輪11f(及び第2前輪12f)の回転速度Nfと、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrと、のそれぞれを測定するように構成されている。そのため、判定部Haは、測定部Hbの測定結果に基づいて、前後輪回転速度差が生じていることを認知し、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入したことを判定する。
【0055】
そして、測定部Hbは、検出時刻Td(T1)から進入開始時刻Tc(T2)までの経過時間Tpにおける走行輪10の回転数(回転量)に基づいて、曲線前距離Lpを測定する。この曲線前距離Lpは、曲線前被検出部70pの識別情報70iと共に、曲線前情報Iとして記憶部Hdに記憶される。
【0056】
時刻T3では、第1前輪11f、第2前輪12f、第1後輪11r、及び第2後輪12rが、曲線区間Rcにおいて一対の走行レール90の上面を転動している。時刻T3では、第1前輪11fの回転速度Nfと、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrとが、同速或いは略同速となり、理想的には、両者の間に回転速度差(前後輪回転速度差)は生じない。
【0057】
このように、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcを通過する場合に、制御システムHは、当該曲線区間Rcに関する曲線前情報Iを取得して記憶部Hdに記憶しておく。すなわち、制御システムHは、検出部3により曲線前被検出部70pが検出されてから、搬送車Vが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入したことが判定部Haにより判定されるまでの搬送車Vの走行距離である曲線前距離Lpを取得してこれを記憶部Hdに記憶しておく。
【0058】
走行制御部Hmは、次に搬送車Vが曲線区間Rcを通過しようとする場合に、走行輪10の回転速度を変化させる速度変化制御を、事前に記憶部Hdに記憶していた曲線前情報Iに基づいて搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に実行する。これにより、曲線区間Rcの正確な位置に基づいた精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【0059】
走行制御部Hmは、曲線前情報Iが記憶部Hdに記憶されている状態で検出部3が曲線前被検出部70pを検出した場合に、記憶部Hdに記憶された曲線前情報Iに含まれる曲線前距離Lpと、曲線前被検出部70pが検出されてからの実際の搬送車Vの走行距離と、に基づいて、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に、第1前輪11f、第2前輪12f、第1後輪11r、及び第2後輪12rの少なくとも1つの回転速度を変化させる速度変化制御を実行する。ここで、「曲線区間Rcに進入する以前に」とは、「曲線区間Rcに進入する前に」又は「曲線区間Rcへの進入と同時に」を意味する。このように、本構成によれば、前後輪回転速度差が生じる現象を利用して判定された曲線区間Rcの位置に基づいて曲線前情報Iを生成すると共に、当該曲線前情報Iに基づいて、曲線区間Rcの正確な位置に基づいた精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【0060】
本実施形態では、走行制御部Hmは、記憶部Hdに記憶されている複数の曲線前情報Iを参照して、検出部3が曲線前被検出部70pを検出した際に読み取った識別情報70iと同じ識別情報70iを含む曲線前情報Iを記憶部Hdから取得し、当該取得した曲線前情報Iに含まれている曲線前距離Lpを用いて速度変化制御を実行する。これにより、複数の曲線区間Rcのそれぞれに適した精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【0061】
本実施形態では、走行制御部Hmは、速度変化制御として、第1前輪11f及び第2前輪12fが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入するのと同時に、第1前輪11f及び第2前輪12fの回転速度Nfを、直線区間用の回転速度から曲線区間用の回転速度に変化させ、その後、第1後輪11r及び第2後輪12rが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入するのと同時に、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度Nrを、直線区間用の回転速度から曲線区間用の回転速度に変化させる制御を実行する。
【0062】
上述のように、本実施形態では、搬送車Vは、曲線区間Rcを走行する場合に片輪走行状態となる。本例では、走行制御部Hmは、速度変化制御として、第1前輪11f及び第2前輪12fが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入するのと同時に、第1前輪11f及び第2前輪12fのうち対応する走行レール90の上面を転動している方の回転速度Nf(ここでは第1前輪11fの回転速度Nf)を、直線区間用の回転速度から曲線区間用の回転速度に変化させ、その後、第1後輪11r及び第2後輪12rが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入するのと同時に、第1後輪11r及び第2後輪12rのうち対応する走行レール90の上面を転動している方の回転速度Nr(ここでは第1後輪11rの回転速度Nr)を、直線区間用の回転速度から曲線区間用の回転速度に変化させる制御を実行する。これにより、搬送車Vが、曲線区間Rcにおいて、複数の走行輪10の一部が走行レール90から離間する片輪走行状態となる場合であっても、記憶部Hdに記憶された曲線前情報Iに基づいて、複数の走行輪10のうち走行レール90を転動している走行輪10の回転速度を適切に制御することにより、曲線区間Rcの正確な位置に基づいた精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【0063】
本実施形態では、走行制御部Hmは、搬送車Vが曲線区間Rcを走行する場合の速度変化制御として、走行経路Rの幅方向Yの中央部における曲線区間Rcの走行経路Rに沿う長さ(以下「第1長さ」と称する。)に対する、走行レール90(走行輪10が転動している走行レール90)の走行経路Rに沿う長さ(以下「第2長さ」と称する。)の比に応じて、曲線区間Rcにおける走行輪10の回転速度を、直線区間Rsにおける走行輪10の回転速度に対して変化させる制御を実行する。
【0064】
ここで、第1長さに対する第2長さの比は、搬送車Vの中央部(幅方向Yの中央部、以下同様)の移動速度に対する走行輪10の移動速度の比と同一或いは同程度となる。そのため、上記のように曲線区間Rcにおける走行輪10の回転速度を設定することで、曲線区間Rcにおける搬送車Vの中央部の移動速度を、直線区間Rsにおける搬送車Vの中央部の移動速度に近づけることができる。この結果、直線区間Rsと曲線区間Rcとの境界を通過する際の搬送車Vの中央部の速度変化を小さく抑えて、搬送車Vや搬送車Vにより搬送される物品Wに発生し得る振動を小さく抑えることができる。
【0065】
走行制御部Hmが行う速度変化制御としては、様々な制御方法が考えられる。また、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に、速度変化制御に加えて速度変化制御に関連する他の制御(例えば、移動平均制御)を実行することも考えられる。移動平均制御では、走行制御部Hmは、搬送車Vの現在位置よりも走行経路Rの下流側の目標位置で搬送車Vの走行速度が目標速度となるように、走行加速度がステップ状に変化するような走行速度の時間変化パターンに従って基準速度指令を生成すると共に、設定期間における基準速度指令の移動平均により得られる移動平均指令を生成し、当該移動平均指令に基づいて、走行輪10の回転速度を制御する。このような移動平均制御は、記憶部Hdに記憶された曲線前情報Iに含まれる曲線前距離Lpに基づいて行われる。移動平均制御を実行することにより、曲線区間Rcの手前において搬送車Vの走行速度を直線区間用の走行速度Vsから曲線区間用の走行速度Vcに変化させる場合に、搬送車Vの走行速度を緩やかに変化させることができ、搬送車Vの振動を小さく抑えることができる。このように移動平均制御を実行する場合に、走行制御部Hmは、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に移動平均制御を終了する構成とすると好適である。この場合、走行制御部Hmは、移動平均制御の終了後であって搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に、第1前輪11f、第2前輪12f、第1後輪11r、及び第2後輪12rの少なくとも1つの回転速度を変化させる上記の速度変化制御を実行する。
【0066】
以上説明した物品搬送設備100によれば、曲線区間の正確な位置に基づいた精度の高い走行制御を行うことが可能となる。
【0067】
〔その他の実施形態〕
次に、物品搬送設備のその他の実施形態について説明する。
【0068】
(1)上記の実施形態では、走行制御部Hmは、速度変化制御として、第1前輪11f及び第2前輪12fが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入するのと同時に、第1前輪11f及び第2前輪12fのうち対応する走行レール90の上面を転動している方の回転速度Nfを、直線区間用の回転速度から曲線区間用の回転速度に変化させ、その後、第1後輪11r及び第2後輪12rが直線区間Rsから曲線区間Rcに進入するのと同時に、第1後輪11r及び第2後輪12rのうち対応する走行レール90の上面を転動している方の回転速度Nrを、直線区間用の回転速度から曲線区間用の回転速度に変化させる制御を実行する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、走行制御部Hmは、速度変化制御として、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に、全ての走行輪10の回転速度を同時期に変化させる制御を実行するようにしても良い。また、他の例として、走行制御部Hmは、速度変化制御として、第1前輪11f、第2前輪12f、第1後輪11r、及び第2後輪12rの少なくとも1つの回転速度を変化させるために、後側走行部1Rの走行に従動するように前側走行部1Fを走行させる制御を実行するように構成されていても良い。すなわち、走行制御部Hmは、第1後輪11r及び第2後輪12rの駆動状態に応じて従動的に、第1前輪11f及び第2前輪12fの駆動状態を制御することで、後側走行部1Rの走行に従動するように前側走行部1Fを走行させる。例えば、走行制御部Hmは、後側走行部1Rの走行に従動して前側走行部1Fが走行するように、走行輪駆動部10Mによる第1前輪11f及び第2前輪12fの駆動トルクを制御する。走行制御部Hmが、第1前輪11f及び第2前輪12fの駆動トルクがゼロとなるように制御(トルクフリー制御)することで、後側走行部1Rの走行に従動するように前側走行部1Fを走行させても良い。すなわち、走行制御部Hmは、搬送車Vが曲線区間Rcに進入する以前に、速度変化制御として、第1後輪11r及び第2後輪12rの回転速度を一定に制御すると共に、第1前輪11f及び第2前輪12fの駆動トルクが後側走行部1Rの走行に従動して前側走行部1Fが走行する程度(例えば、ゼロ)となるように制御することで、第1前輪11f及び第2前輪12fの回転速度を従動的に変化させる制御を実行するようにしても良い。このように、速度変化制御における第1前輪11f、第2前輪12f、第1後輪11r、及び第2後輪12rの少なくとも1つの回転速度の変化は、当該少なくとも1つの走行輪10とは別の走行輪10の回転速度を制御することによる、従動的な変化(受動的な変化)であっても良い。
【0069】
(2)上記の実施形態では、曲線区間Rcよりも走行方向Xの手前側であって当該曲線区間Rcの直近に設けられた被検出部70が、曲線前被検出部70pとされ、当該曲線前被検出部70pが検出された時点を基準として曲線前距離Lpを測定する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、曲線区間Rcの直近に設けられた被検出部70でなくても、曲線区間Rcよりも走行方向Xの手前側に設けられた被検出部70であれば、当該被検出部70が曲線前被検出部70pとされても良い。そして、この曲線前被検出部70pが検出された時点を基準として、曲線前距離Lpが測定されても良い。
【0070】
(3)上記の実施形態では、記憶処理部Hcが、複数の曲線区間Rcのそれぞれについて、曲線前被検出部70pに設定された識別情報70iと曲線前距離Lpとを含む曲線前情報Iを記憶部Hdに記憶させる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、記憶処理部Hcは、複数の曲線区間Rcのうち特定の曲線区間Rcのみについて、識別情報70iと曲線前距離Lpとを含む曲線前情報Iを記憶部Hdに記憶させるようにしても良い。
【0071】
(4)上記の実施形態では、搬送車Vは、曲線区間Rcを走行する場合に、第1前輪11f及び第1後輪11rの組と第2前輪12f及び第2後輪12rの組との何れか一方の組が対応する走行レール90の上面を転動し、他方の組が対応する走行レール90から離間した片輪走行状態となる例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、搬送車Vは、曲線区間Rcを走行する場合においても、第1前輪11f及び第1後輪11rの組と第2前輪12f及び第2後輪12rの組との双方の組が対応する走行レール90の上面を転動する両輪走行状態となっても良い。この場合、幅方向Yに並ぶ第1前輪11fと第2前輪12fとは、独立して回転駆動されるように構成されていると良い。また、幅方向Yに並ぶ第1後輪11rと第2後輪12rとについても、独立して回転駆動されるように構成されていると良い。
【0072】
(5)上記の実施形態では、曲線区間Rcが、上下方向視で曲線状に形成された区間である点について説明した。曲線区間Rcでは、一対の走行レール90は、上下方向視で一定の曲率で湾曲していても良いし、部分的に異なる曲率で湾曲していても良い。部分的に異なる曲率で湾曲している例として、曲線区間Rcにおける一対の走行レール90は、一定割合で曲率が変化するクロソイド曲線に沿って延在していても良い。
【0073】
(6)上記の実施形態では、搬送車Vが、案内レール80における幅方向第1側Y1を向く第1側面81又は幅方向第2側Y2を向く第2側面82を転動する案内輪13を備えている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、搬送車Vは、上記のような案内輪13を備えていなくても良い。またこの場合、物品搬送設備100は、案内レール80を備えていなくても良い。
【0074】
(7)なお、上述した実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0075】
〔上記実施形態の概要〕
以下、上記において説明した物品搬送設備について説明する。
【0076】
直線区間と曲線区間とが設けられた走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備であって、
前記走行経路に沿う方向を走行方向とし、上下方向視で前記走行方向に直交する方向を幅方向とし、前記幅方向の一方側を幅方向第1側とし、前記幅方向の他方側を幅方向第2側として、
一対の前記走行レールのうち、前記幅方向第1側に配置された前記走行レールが第1走行レールであり、前記幅方向第2側に配置された前記走行レールが第2走行レールであり、
前記搬送車は、一対の前記走行レールの上面を転動する走行輪と、前記走行経路の複数箇所に設けられた被検出部を検出する検出部と、を備え、
前記走行輪は、前記幅方向に並ぶ第1前輪及び第2前輪と、前記第1前輪及び前記第2前輪よりも前記走行方向の後側において前記幅方向に並ぶ第1後輪及び第2後輪と、を含み、
前記第1前輪と前記第1後輪とは、前記第1走行レールの上面を転動するように構成され、
前記第2前輪と前記第2後輪とは、前記第2走行レールの上面を転動するように構成され、
前記制御システムは、判定部と、測定部と、記憶処理部と、記憶部と、走行制御部と、を備え、
前記判定部は、前記第1後輪及び前記第2後輪の回転速度と、前記第1前輪及び前記第2前輪の少なくとも一方の回転速度との差である前後輪回転速度差に基づいて、前記搬送車が前記直線区間から前記曲線区間に進入したことを判定するように構成され、
前記測定部は、前記検出部により前記被検出部が検出されてから、前記搬送車が前記直線区間から前記曲線区間に進入したことが前記判定部により判定されるまでの前記搬送車の走行距離である曲線前距離を測定するように構成され、
前記記憶処理部は、前記曲線前距離と、前記曲線前距離の測定に用いられた前記被検出部である曲線前被検出部に設定された固有の識別情報と、を関連付けて、前記曲線前距離と前記識別情報とを曲線前情報として前記記憶部に記憶させ、
前記走行制御部は、前記曲線前情報が前記記憶部に記憶されている状態で前記検出部が前記曲線前被検出部を検出した場合に、前記記憶部に記憶された前記曲線前情報に含まれる前記曲線前距離と、前記曲線前被検出部が検出されてからの実際の前記搬送車の走行距離と、に基づいて、前記搬送車が前記曲線区間に進入する以前に、前記第1前輪、前記第2前輪、前記第1後輪、及び前記第2後輪の少なくとも1つの回転速度を変化させる速度変化制御を実行する。
【0077】
第1前輪及び第2前輪が曲線区間に進入し、それよりも後側に配置された第1後輪及び第2後輪がまだ曲線区間に進入しておらず直線区間にある場合には、第1後輪及び第2後輪の回転速度と、第1前輪及び第2前輪の少なくとも一方の回転速度とに、回転速度差(前後輪回転速度差)が生じる。すなわち、第1後輪及び第2後輪が直線区間を転動する距離に対して、第1前輪及び第2前輪のうち、曲線区間の内側に配置された走行輪の転動距離は短くなり、曲線区間の外側に配置された走行輪の転動距離は長くなる。本構成によれば、この現象を利用して、搬送車が曲線区間に進入したこと、すなわち曲線区間の開始地点を、判定部によって正確に判定することができる。そして、測定部は、判定部による判定結果に基づいて曲線前距離を測定する。曲線前距離は、被検出部が検出されてから曲線区間の開始地点まで搬送車が走行する距離に相当に相当する。このように測定された曲線前距離は、曲線前被検出部の識別情報と共に、曲線前情報として記憶部に記憶される。そして、搬送車が次に同じ曲線区間を走行する場合には、走行制御部は、記憶された曲線前情報に基づいて、搬送車が曲線区間に進入する以前に、走行輪の回転速度を変化させる速度変化制御を実行する。このように、本構成によれば、前後輪回転速度差が生じる現象を利用して判定された曲線区間の位置に基づいて曲線前情報を生成すると共に、当該曲線前情報に基づいて、曲線区間の正確な位置に基づいた精度の高い速度変化制御を実行することができる。またこの際、記憶された曲線前情報を用いるため、判定部による曲線区間への進入の判定を行うことができない曲線区間に進入する以前の段階であっても、精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【0078】
前記検出部は、前記曲線前被検出部を検出する際に、前記曲線前被検出部に設定された前記識別情報を読み取るように構成され、
前記記憶処理部は、当該読み取られた識別情報を前記曲線前情報として前記記憶部に記憶させ、
前記測定部は、前記走行経路に設けられた複数の前記曲線区間のそれぞれについて、前記曲線前距離を測定し、
前記記憶処理部は、複数の前記曲線区間のそれぞれについて、前記曲線前被検出部に設定された前記識別情報と前記曲線前距離とを含む前記曲線前情報を前記記憶部に記憶させ、
前記走行制御部は、前記記憶部に記憶されている複数の前記曲線前情報を参照して、前記検出部が前記曲線前被検出部を検出した際に読み取った前記識別情報と同じ前記識別情報を含む前記曲線前情報を前記記憶部から取得し、当該取得した前記曲線前情報に含まれている前記曲線前距離を用いて前記速度変化制御を実行する、と好適である。
【0079】
本構成によれば、複数の曲線区間のそれぞれについて、曲線前情報を生成してこれを記憶しておき、走行制御部は、複数の曲線区間それぞれについて固有の曲線前情報を用いて速度変化制御を実行する。従って、本構成によれば、複数の曲線区間それぞれに適した精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【0080】
前記走行制御部は、前記速度変化制御として、前記第1前輪及び前記第2前輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1前輪及び前記第2前輪の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させ、その後、前記第1後輪及び前記第2後輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1後輪及び前記第2後輪の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させる制御を実行する、と好適である。
【0081】
本構成によれば、搬送車が直線区間から曲線区間に進入する際に、搬送車全体としての走行速度を安定させることができ、搬送車の挙動を円滑化することができる。
【0082】
前記搬送車の進路を案内する案内レールが、一対の前記走行レールに対して上下方向の異なる位置において、前記曲線区間の延在方向に沿って配置され、
前記搬送車は、前記案内レールにおける前記幅方向第1側を向く第1側面又は前記幅方向第2側を向く第2側面を転動する案内輪を備え、
前記搬送車は、前記直線区間を走行する場合に、前記第1前輪及び前記第1後輪が前記第1走行レールの上面を転動すると共に前記第2前輪及び前記第2後輪が前記第2走行レールの上面を転動する両輪走行状態となり、
前記搬送車は、前記曲線区間を走行する場合に、前記案内輪が前記案内レールにおける前記第1側面又は前記第2側面を転動すると共に、前記第1前輪及び前記第1後輪の組と前記第2前輪及び前記第2後輪の組との何れか一方の組が対応する前記走行レールの上面を転動し、他方の組が対応する前記走行レールから離間した片輪走行状態となり、
前記走行制御部は、前記速度変化制御として、前記第1前輪及び前記第2前輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1前輪及び前記第2前輪のうち対応する前記走行レールの上面を転動している方の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させ、その後、前記第1後輪及び前記第2後輪が前記直線区間から前記曲線区間に進入するのと同時に、前記第1後輪及び前記第2後輪のうち対応する前記走行レールの上面を転動している方の回転速度を、前記直線区間用の回転速度から前記曲線区間用の回転速度に変化させる制御を実行する、と好適である。
【0083】
本構成によれば、搬送車が、曲線区間において、複数の走行輪の一部が走行レールから離間する片輪走行状態となる場合であっても、記憶部に記憶された曲線前情報に基づいて、複数の走行輪のうち走行レールを転動している走行輪の回転速度を適切に制御することにより、曲線区間の正確な位置に基づいた精度の高い速度変化制御を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示に係る技術は、直線区間と曲線区間とが設けられた走行経路に沿って配置された一対の走行レールと、前記走行経路に沿って走行して物品を搬送する搬送車と、前記搬送車を制御する制御システムと、を備えた物品搬送設備に利用することができる。
【符号の説明】
【0085】
100 :物品搬送設備
R :走行経路
Rc :曲線区間
Rs :直線区間
70 :被検出部
70i :識別情報
70p :曲線前被検出部
80 :案内レール
81 :第1側面
82 :第2側面
90 :走行レール
91 :第1走行レール
92 :第2走行レール
V :搬送車
3 :検出部
10 :走行輪
11f :第1前輪
11r :第1後輪
12f :第2前輪
12r :第2後輪
13 :案内輪
H :制御システム
Ha :判定部
Hb :測定部
Hd :記憶処理部
He :記憶部
Hm :走行制御部
I :曲線前情報
Lp :曲線前距離
Nf :第1前輪及び第2前輪の少なくとも一方の回転速度
Nr :第1後輪及び第2後輪の回転速度
W :物品
X :走行方向
Y :幅方向
Y1 :幅方向第1側
Y2 :幅方向第2側