(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】有機溶剤回収システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/44 20060101AFI20240528BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20240528BHJP
B01D 5/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B01D53/44 110
B01D53/04 230
B01D5/00 E
(21)【出願番号】P 2021512005
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014037
(87)【国際公開番号】W WO2020203780
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019067528
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡田 武将
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-000381(JP,A)
【文献】特開平11-009952(JP,A)
【文献】特開2016-195969(JP,A)
【文献】実開平02-129240(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/44
B01D 53/02 - 53/12
B01D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を分離して回収する有機溶剤回収システムであって、
キャリアガスを循環通流させる循環経路と、
吸脱着素子を有し、前記被処理ガスの導入による前記有機溶剤の吸着と、前記キャリアガスの導入による前記有機溶剤の脱着とを交互に行う吸脱着処理装置と、
前記循環経路上で前記吸脱着処理装置の下流側に設けられ、当該吸脱着処理装置から排出された前記キャリアガスを冷却して当該キャリアガスに含有される有機溶剤を凝縮して回収する凝縮回収装置と、
前記循環経路上で前記吸脱着処理装置の上流側に設けられ、前記凝縮回収装置から排出された低温状態の前記キャリアガスを加熱する加熱部と、を備え、
前記凝縮回収装置は、当該凝縮回収装置から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が
11.4mmHg以下となるように、当該凝縮回収装置から排出されるキャリアガスの温度を調節する、ことを特徴とする有機溶剤回収システム。
【請求項2】
前記凝縮回収装置から排出されるキャリアガスの温度を測定する温度測定手段を備え、
前記凝縮回収装置は、前記温度測定手段の測定値を基に、
前記蒸気圧が
11.4mmHg以下になるように、排出されるキャリアガスの温度を調節する請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項3】
前記凝縮回収装置から排出されるキャリアガスの蒸気圧を測定する蒸気圧測定手段を備え、
前記凝縮回収装置は、前記蒸気圧測定手段の測定値を基に、前記蒸気圧が
11.4mmHg以下になるように、排出されるキャリアガスの温度を調節する請求項1に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項4】
前記凝縮回収装置は、冷媒を用いた間接冷却によって前記キャリアガスを冷却する、請求項1から3のいずれか1項に記載の有機溶剤回収システム。
【請求項5】
前記冷媒は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エタノールのいずれかまたはその混合物である、請求項4に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を分離して被処理ガスを清浄化して排出すると共に、分離した有機溶剤をキャリアガスを用いて回収する有機溶剤回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機溶剤を含有する被処理ガスに吸着材を用いて有機溶剤の吸着処理および脱着処理を行なって、有機溶剤を被処理ガスからキャリアガスに移動させることにより、被処理ガスの清浄化と有機溶剤の回収とを可能にした有機溶剤含有ガス処理システムが知られている。
【0003】
この種の有機溶剤回収システムは、一般に有機溶剤を含有する被処理ガスおよび高温の状態にあるキャリアガスを時間的に交互に吸着材に接触させる吸脱着処理装置と、当該吸脱着処理装置から排出されるキャリアガスを冷却することによって有機溶剤を凝縮させて回収する凝縮回収装置とを備えている。
【0004】
このような有機溶剤回収システムの一つとして、特許文献1には、キャリアガスとして水蒸気を使用した有機溶剤含有ガス処理システムが開示されている。
【0005】
また、最近では回収した有機溶剤の高品質化や排水処理工程の簡略化を目的とした低排水量の有機溶剤回収システムが望まれており、特許文献2には、高温に間接加熱された吸着材にキャリアガスを供給する有機溶剤回収システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国実用新案出願公報「実全平3-32924」
【文献】日本国公開特許公報「特開平7-68127」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような有機溶剤回収システムにおいて、被処理ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率を向上させるためには、脱着処理における有機溶剤の脱着、すなわち吸着材の再生が、十分に行なわれることが必要になる。
【0008】
また、有機溶剤回収システムのランニングコストを抑制するためには、使用したキャリアガスを有機溶剤回収システム内で循環させて再利用するように構成することが好ましい。
【0009】
しかしながら、凝縮回収装置において有機溶剤をキャリアガスから完全に分離させることは困難である、そのため、凝縮回収装置から排出されるキャリアガスには、未凝縮の有機溶剤が含まれることになる。よって、キャリアガスを循環させて吸脱着処理装置に戻す構成の場合は吸着材の再生が不十分となる場合があり、被処理ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率に自ずと限界が生じるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされ、ランニングコストが抑制できるとともに、被処理ガスの浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上がなされた有機溶剤回収システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.有機溶剤を含有する被処理ガスから有機溶剤を分離して回収する有機溶剤回収システムであって、キャリアガスを循環通流させる循環経路と、吸脱着素子を有し、前記被処理ガスの導入による前記有機溶剤の吸着と、前記キャリアガスの導入による前記有機溶剤の脱着とを交互に行う吸脱着処理装置と、前記循環経路上で前記吸脱着処理装置の下流側に設けられ、当該吸脱着処理装置から排出された前記キャリアガスを冷却して当該キャリアガスに含有される有機溶剤を凝縮して回収する凝縮回収装置と、前記循環経路上で前記吸脱着処理装置の上流側に設けられ、前記凝縮回収装置から排出された低温状態の前記キャリアガスを加熱する加熱部と、を備え、前記凝縮回収装置は、当該凝縮回収装置から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下となるように、当該凝縮回収装置から排出されるキャリアガスの温度を調節する、ことを特徴とする有機溶剤回収システム。
上記構成によると、凝縮回収装置から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下となるように温度調整することで、排出されるキャアリアガス中の有機溶剤の濃度を一定以下にすることができ、凝縮回収装置と吸脱着処理装置との間にキャリアガス中の有機溶剤を吸着除去するための別の吸着装置を設置する必要等がなくなる。よって、システムを簡素な構成にでき小型化できる。
2.前記凝縮回収装置から排出されるキャリアガスの温度を測定する温度測定手段を備え、前記凝縮回収装置は、前記温度測定手段の測定値を基に、前記水蒸気圧が所定値以下になるように、排出されるキャリアガスの温度を調節する上記1に記載の有機溶剤回収システム。
3.前記凝縮回収装置から排出されるキャリアガスの蒸気圧を測定する蒸気圧測定手段を備え、前記凝縮回収装置は、前記蒸気圧測定手段の測定値を基に、前記蒸気圧が所定値以下になるように、排出されるキャリアガスの温度を調節する上記1に記載の有機溶剤回収システム。
4.前記凝縮回収装置は、冷媒を用いた間接冷却によって前記キャリアガスを冷却する、上記1から3のいずれか1つに記載の有機溶剤回収システム。
5.前記冷媒は、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エタノールのいずれかまたはその混合物である、上記4に記載の有機溶剤回収システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、凝縮回収装置から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下となるように温度調整することで、排出されるキャアリアガス中の有機溶剤の濃度を一定以下にすることができ、凝縮回収装置と吸脱着処理装置との間にキャリアガス中の有機溶剤を吸着除去するための別の吸着装置を設置する必要等がなく、浄化能力が保つことができる。よって、システムを簡素な構成にでき小型化できる。このように、本発明によれば、ランニングコストが抑制できるとともに、被処理ガスの浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上が図られた有機溶剤回収システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態における有機溶剤回収システムの構造を示す図である。
【
図2】実施の形態における有機溶剤回収システムにおいて、一対の吸脱着素子を用いた吸着処理および脱着処理の時間的な切り替えの様子を示すタイムチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態における有機溶剤回収システム100Aは、キャリアガスが循環するように通流される循環経路L1と、循環経路L1上に設けられた吸脱着処理装置10、凝縮回収装置20、循環送風機40と、被処理ガス送風機50とを備えている。キャリアガスとしては、水蒸気、加熱空気、高温に加熱した不活性ガス等、様々な種類のガスを使用することが可能である。特に水分を含まないガスである不活性ガスを使用すれば、有機溶剤回収システム100Aをより簡素に構成することができる。
【0016】
循環経路L1は、図中に示す配管ラインL4~L7を備えている。循環送風機40は、循環経路L1にキャリアガスを通流させるための送風手段であり、被処理ガス送風機50は、配管ラインL2から吸脱着処置装置10に被処理ガスを供給するための送風手段である。
【0017】
吸脱着処理装置10は、吸脱着槽A11および吸脱着槽B12と、温度調節手段であるヒーター30とを備えている。吸脱着槽A11には有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子A13が充填されており、吸脱着槽B12には有機溶剤を吸着および脱着する吸脱着素子B14が充填されている。本実施の形態では2つの吸脱着槽を備えているが、1であっても、3以上であってもよい。
【0018】
ヒーター30は、吸脱着槽A11または吸脱着槽B12に供給されるキャリアガスを高
温の状態に温度調節する。より具体的には、ヒーター30は、凝縮回収装置20から排出されて循環送風機40を経由したキャリアガスを高温の状態に温度調節して吸脱着槽A11または吸脱着槽B12に供給する。ここで、ヒーター30は、吸脱着素子A13および吸脱着素子B14が所定の脱着温度に維持されるように、吸脱着槽A11および吸脱着槽B12に導入されるキャリアガスを温度調節する。
【0019】
吸脱着素子A13および吸脱着素子B14は、被処理ガスを接触させることで被処理ガスに含有される有機溶剤を吸着する。したがって、脱着処理装置10においては、吸脱着槽A11または吸脱着槽B12に被処理ガスを供給すると、有機溶剤が吸脱着素子A13または吸脱着素子B14に吸着されて被処理ガスから有機溶剤が除去されて被処理ガスが清浄化され、清浄ガスとして吸脱着槽A11または吸脱着槽B12から排出される。
【0020】
また、吸脱着素子A13および吸脱着素子B14は、高温の状態にあるキャリアガスを接触させることで吸着した有機溶剤を脱着する。したがって、吸脱着処理装置10においては、吸脱着槽A11または吸脱着槽B12に高温の状態にあるキャリアガスを供給すると、有機溶剤が吸脱着素子A13または吸脱着素子B14から脱着され、有機溶剤を含有するキャリアガスが吸脱着槽A11または吸脱着槽B12から排出される。
【0021】
吸脱着素子A13および吸脱着素子B14は、粒状活性炭、活性炭素繊維、ゼオライト、シリカゲル、多孔質性高分子および金属有機構造体のいずれかを含む吸着材にて構成される。好適には、粒状、粉体状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用されるが、より好適には、活性炭素繊維が利用される。活性炭素繊維は、表面にミクロ孔を有する繊維状構造を有しているため、ガスとの接触効率が高く、他の吸着材に比べて高い吸着効率および脱着効率を実現する。
【0022】
吸脱着処理装置10には、配管ラインL2,L3がそれぞれ接続されている。配管ラインL2は、被処理ガス送風機40を経由して有機溶剤を含有する被処理ガスを吸脱着槽A11または吸脱着槽B12に供給するための配管ラインである。配管ラインL2は、バルブV1によって吸脱着槽A11に対する接続/非接続状態が切り替えられ、バルブV3によって吸脱着槽B12に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL3は、清浄ガスを吸脱着槽A11または吸脱着槽B12から排出するための配管ラインである。配管ラインL3は、バルブV2によって吸脱着槽A11に対する接続/非接続状態が切り替えられ、バルブV4によって吸脱着槽B12に対する接続/非接続状態が切り替えられる。
【0023】
さらに、吸脱着処理装置10には、配管ラインL5,L6がそれぞれ接続されている。
配管ラインL5は、キャリアガスをヒーター30を介して吸脱着槽A11または吸脱着槽B12に供給するための配管ラインである。配管ラインL5は、バルブV5によって吸脱着槽A11に対する接続/非接続状態が切り替えられ、バルブV7によって吸脱着槽B12に対する接続/非接続状態が切り替えられる。配管ラインL6は、キャリアガスを吸脱着槽A11または吸脱着槽B12から排出するための配管ラインである。配管ラインL6は、バルブV6よって吸着槽A11に対する接続/非接続状態が切り替えられ、V8によって吸脱着槽B12に対する接続/非接続状態が切り替えられる。
【0024】
吸脱着槽A11および吸脱着槽B12のそれぞれには、上述したバルブV1~V8の開閉を操作することにより、被処理ガスと高温の状態にあるキャリアガスとが、時間的に交互に供給される。これにより、吸脱着槽A11および吸脱着槽B12は、時間的に交互に吸着槽および脱着槽として機能することになり、これに伴って有機溶剤が被処理ガスから高温の状態にあるキャリアガスに移動する。なお、具体的には、吸脱着槽A11が吸着槽として機能している間には、吸脱着槽B12が脱着槽として機能し、吸脱着槽A11が脱着槽として機能している間には、吸脱着槽B12が吸着槽として機能する。
【0025】
凝縮回収装置20は、コンデンサ(凝縮器)21と、回収タンク22とを備えている。コンデンサ21は、吸脱着槽A11または吸脱着槽B12から排出された高温の状態にあるキャリアガスを低温の状態に温度調節することによって、キャリアガスに含有される有機溶剤を凝縮させるものである。コンデンサ21は、具体的には、冷媒を用いてキャリアガスを間接冷却することで有機溶剤を液化させる。回収タンク22は、コンデンサ21にて液化された有機溶剤を凝縮液として貯留するものである。
【0026】
冷媒は、水、一級アルコール、二級アルコール、三級アルコール、ハイドロクロロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロカーボン類、アンモニアのいずれかまたはそれらの混合物を用いることができるが、特に水、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エタノールのいずれかまたはその混合物を用いれば、有機溶剤回収システム100Aをより簡素に構成することができる。
【0027】
凝縮回収装置20には、配管ラインL6,L7がそれぞれ接続されている。配管ラインL6は、吸脱着処理装置10から排出されたキャリアガスをコンデンサ21に供給すための配管ラインである。配管ラインL7は、キャリアガスをコンデンサ21から排出するための配管ラインである。
【0028】
また、コンデンサ21には、配管ラインL9が接続されている。配管ラインL9は、コンデンサ21で凝縮させた有機溶剤を回収タンク22に導入するための配管ラインである。
【0029】
図2は、
図1に示す有機溶剤回収システム100Aにおいて、吸脱着素子A13と吸着素子B14とを用いた吸着処理および脱着処理の時間的な切り替えの様子を示すタイムチャートである。次に、この
図2を参照して、本実施の形態における有機溶剤回収システム100Aを用いた被処理ガスの処理の詳細について、キャリアガスに不活性ガスを用いた場合を例にして説明する。
【0030】
有機溶剤回収システム100Aは、
図2に示す1サイクルを単位期間として当該サイクルが繰り返し実施さることにより、被処理ガスの処理が連続して行なわれるものである。
【0031】
上記1サイクルの前半(
図2中に示す時刻t0~t2の間)においては、吸脱着素子A13が充填された吸脱着処理装置10の吸脱着槽A11において吸着処理が実施される。これと並行して、吸脱着素子B14が充填された吸脱着処理装置10の吸脱着槽B12において吸脱着槽B12内を不活性ガスで置換するパージ処理(
図2中に示す時刻t0~t1の間)が実施された後、脱着処理(
図2中に示す時刻t1~t2の間)が実施される。
【0032】
また、上記1サイクルの後半(
図2中に示す時刻t2~t4の間)においては、吸脱着素子B14が充填された吸脱着処理装置10の吸脱着槽B12において吸着処理が実施され、これと並行して、吸脱着素子A13が充填された吸脱着処理装置10の吸脱着槽A11において吸脱着槽A11内を不活性ガスで置換するパージ処理(
図2中に示す時刻t2~t3の間)が実施された後、脱着処理(
図2中に示す時刻t3~t4の間)が実施される。
【0033】
凝縮回収装置20において、吸脱着処理装置10から排出された有機溶剤を含むキャリアガスをコンデンサ21で間接冷却し、低温の状態に温度調節して有機溶剤を凝縮させ、有機溶剤が回収される。
【0034】
凝縮回収装置20は、コンデンサ21から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下となるよう温度調整する。例えば、コンデンサ21の温度を調節する温度調節部(図示しない)を有していてもよい。コンデンサ21の温度を調節することで、排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下になり、よって、排出されるキャアリアガス中の有機溶剤の濃度を一定以下にすることができる。そのため、吸脱着素子に吸着した有機溶剤を効率よく脱着させることができる。
例えば、後述の実施例のように、有機溶剤がp-キシレンである場合、凝縮処理において、コンデンサ21から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が、11.4mmHg以下となるようにキャリアガスを温度調節することが好ましく、さらに6.1mmHg以下となるようにキャリアガスを温度調整することがより好ましい。コンデンサ21から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が11.4mmHg以下の場合、循環して吸脱着素子A13および吸脱着素子B14に接触させられるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧もまた十分に低下するため、吸脱着素子A13および吸脱着素子B14の再生が効果的に促進される。一方、コンデンサ21から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が11.4mmHgを超える場合、循環して吸脱着素子A13および吸脱着素子B14に接触させられるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧もまた高値のため、吸脱着素子A13および吸脱着素子B14の再生が十分に行われ難く、システムとして性能低下が生じる。この11.4mmHg、6.1mmHgという値は、後述の実施例における実験結果から導き出した値である。
【0035】
凝縮回収装置20は、コンデンサ21から排出されるキャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下となるように温度調節することで、排出されるキャアリアガス中の有機溶剤の濃度を一定以下にすることができ、コンデンサ21と吸脱着処理装置10との間にキャリアガス中の有機溶剤を吸着除去するための別の吸着装置を設置する必要等がなくなり、有機溶剤回収システム100Aを簡素な構成にでき小型化できる。
【0036】
また、凝縮回収装置20は、コンデンサ21から排出されるキャリアガスの温度を測定する温度測定器(図示無)を備えていてもよい。凝縮回収装置20は、温度測定器の測定値を基に、キャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下となるように、コンデンサ21から排出されるキャリアガスの温度を調節すれば、有機溶剤回収システム100Aをより簡素に構成することができる。
【0037】
また、凝縮回収装置20は、コンデンサ21から排出されるキャリアガスの蒸気圧を測定する水蒸気圧測定器(図示無)を備えていてもよい。凝縮回収装置20は、水蒸気圧測定器の測定値を基に、キャリアガスに含有される有機溶剤の蒸気圧が所定値以下となるようにコンデンサ21から排出されるキャリアガスの温度を調節すれば、有機溶剤回収システム100Aをより簡素に構成することができる。キャリアガスの蒸気圧を測定する方法は水素炎イオン化検出法、触媒酸化―非分散赤外線吸収法、光イオン化検出法、半導体センサを用いた検出法、干渉増幅反射法、検知管を用いた検出法、などがあげられるが、特に限定されるものではない。
【0038】
以上において説明した本実施の形態の有機溶剤回収システム100Aを用いることにより、脱着処理において吸脱着素子A13および吸脱着素子B14の再生が促進される結果となり、その後に実施される吸着処理の際により効率的に被処理ガスから有機溶剤を吸着除去できるようになる。従って、有機溶剤回収システム100Aを用いることで、被処理ガスに対する浄化能力および有機溶剤の回収効率の向上が図られ、従来に比して高性能かつ簡素な構成のシステムとすることができる。
【0039】
また、本実施の形態の有機溶剤回収システム100Aは、循環経路を構築することでキャリアガスを繰り返し使用できるため、経済性にも優れる。従って、窒素ガス等に代表される不活性ガスをキャリアガスとして使用した場合に、特にランニングコストを抑制できる効果が得られる。
【0040】
(実施例)
以下の実施例では、上述した本発明の実施の形態における有機溶剤回収システム100Aを用いて被処理ガスの処理を行なった。
【0041】
実施例においては、有機溶剤としてp-キシレンを1500ppmの濃度で含有する40℃、相対湿度50%RHのガスを被処理ガスとして使用した。キャリアガスとして120℃の窒素ガスを使用した。また、吸脱着素子A12,吸脱着素子B14として、BET比表面積が1500mg/m2の活性炭素繊維を使用し、冷媒として5℃の水を使用した。
【0042】
まず、被処理ガス送風機50を用いて吸脱着処理装置10の吸脱着槽A12および吸脱着槽B13のうち一方の吸脱着槽に風量10Nm3/minで10分間送風することで上記一方の吸脱着槽を吸着槽として機能させ、吸着処理を実施した。
【0043】
上記吸着処理の終了後に、バルブを切り替え操作し、上記一方の吸脱着槽を脱着槽に切り替えると共に、他方の吸脱着槽を吸着槽とした。脱着槽においては脱着槽内を窒素ガスで置換するパージ処理を行った後、ヒーター30で120℃に加熱した窒素ガスを風量1.5Nm3/minで導入することで吸脱着素子の脱着処理を行った。吸着槽においては、上述した条件と同様の吸着処理を行った。凝縮回収装置20では、コンデンサ21に供給する冷媒量を調節し、脱着槽から排出されるp-キシレンを含有する窒素ガスの温度を10℃に保った状態でp-キシレンを凝縮させ、回収タンク22から回収した。
【0044】
以上において説明した1サイクルを連続的に繰り返し実施したところ、吸脱着処理装置10から排出される清浄ガスに含有されるp-キシレンの濃度が、約10ppmにまで低減されていることが確認された。すなわち、実施例においては、約99%の高い除去率でキシレンを除去できることが確認された。
【0045】
また、上述した脱着処理において、凝縮回収装置20に導入される部分の配管ラインL6を流通する窒素ガス中に含まれるp-キシレンの蒸気圧が平均13.0mmHgに上昇していることが確認され、凝縮回収装置20から排出される部分の配管ラインL7を流通する窒素ガス中に含まれるp-キシレンの蒸気圧が常時3.6mmHgにまで低下していることが確認された。本実施例は、冷媒の温度を変更して、配管ラインL7を流通する窒素ガス中に含まれるp-キシレンの蒸気圧が常時3.6mmHg以下となるよう、窒素ガスの温度を調整した。
【0046】
以上に開示した実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば工場やビルから排出される有機溶剤を含有する被処理ガスを処理するシステム等に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 吸脱着処理装置
11 吸脱着槽A
12 吸脱着槽B
13 吸脱着素子A
14 吸脱着素子B
20 凝縮回収装置
21 コンデンサ
22 回収タンク
30 ヒーター
40 循環送風機
50 被処理ガス送風機
100A 有機溶剤回収システム
L1 循環経路
L2~L11 配管ライン
V1~V8 バルブ