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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】液晶表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
G02F1/1337 505
G02F1/1337 525
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021518320
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2020015240
(87)【国際公開番号】W WO2020226008
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019088635
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】宮地 弘一
(72)【発明者】
【氏名】黒田 美彦
(72)【発明者】
【氏名】大野 龍蔵
(72)【発明者】
【氏名】川又 俊友
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/039358(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/217300(WO,A1)
【文献】特開2012-173601(JP,A)
【文献】特開2009-229894(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0297707(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、
前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、
前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、
を備え、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、
前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、
前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、
前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、
前記第1~第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、
前記光配向膜は、光配向性基を側鎖に有する重合体を用いて形成されており、
前記重合体が側鎖に有する光配向性基の含有量が1.1mmol/g未満である、液晶表示装置。
【請求項2】
前記重合体は、マレイミド化合物に由来する構造単位を有する重合体である、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、
前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、
前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、
を備え、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、
前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、
前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、
前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、
前記第1~第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は、マレイミド化合物に由来する構造単位を有する重合体を用いて形成されている、液晶表示装置。
【請求項4】
前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち一方は分割露光された光配向膜であり、他方は分割露光されていない、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜組成が互いに異なる、請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜厚が互いに異なる、請求項4又は5に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記第1配向膜及び前記第2配向膜は、光配向膜であり、
前記第1~第4配向領域のうち、一部の配向領域は、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角が90度未満であって、かつ前記第2配向膜により規定されるプレチルト角が実質的に90度であり、残りの配向領域は、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角が実質的に90度であって、かつ前記第2配向膜により規定されるプレチルト角が90度未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、
前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、
前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、
を備え、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜は、光配向膜であり、
前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、
前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、
前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、
前記第1~第4配向領域のうち、一部の配向領域は、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角が90度未満であって、かつ前記第2配向膜により規定されるプレチルト角が実質的に90度であり、残りの配向領域は、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角が実質的に90度であって、かつ前記第2配向膜により規定されるプレチルト角が90度未満である、液晶表示装置。
【請求項9】
複数の画素を有する液晶表示装置であって、
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、
前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、
前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、
を備え、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、
前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、
前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、
前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、
前記第1~第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち一方は分割露光された光配向膜であり、他方は分割露光されておらず、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜は、下記の条件(a)を満たす、液晶表示装置。
(a)前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜組成が互いに異なる
【請求項10】
記第1基板及び前記第2基板のうち一方は、前記画素の各辺に対し斜め方向に延びるスリットが複数形成された画素電極を有し、
前記画素電極の電極幅をL、前記画素電極のスリット幅をS、前記液晶層の厚さをdとしたとき、L<1.1d、かつS<dである、請求項1~9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
L<d、かつ(d/2)<S<dである、請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
複数の画素を有する液晶表示装置の製造方法であって、
前記液晶表示装置は、
第1基板と、
前記第1基板に対向する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、
前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、
前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、
を備え、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜を、重合体組成物を基板上に塗布して加熱することにより形成し、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方を光配向膜とし、
前記複数の画素における各画素を、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有するように形成し、かつ、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域を前記画素の長手方向に並べて配置し、
前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差を90度の整数倍に略等しくし、
前記複数の画素を、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されるようにし、
前記第1~第4の配向領域のそれぞれにおいて、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方を90度未満とし、他方を実質的に90度とし、
前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成する際の加熱温度、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成する際の加熱時間、並びに前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜組成のうち少なくともいずれかを、前記第1配向膜と前記第2配向膜とで互いに異ならせる、液晶表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年5月8日に出願された日本特許出願番号2019-88635号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ、特に大型テレビ向けの液晶表示パネルは、視野角、透過率、応答時間等が重要な性能指標である。これらの性能指標の値を良好にするための液晶表示モードとして、4D-RTN(4Domain-Reverse Twisted Nematic)モードや、PSA(Polymer Sustained Alignment)モード、IPS(In Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード等の各種モードが開発されている(例えば、特許文献1参照)。現在では、これらの液晶表示モード技術を使った大型テレビが量産されている。
【0004】
近年、これまでのハイビジョン(画素数1920×1080)から、より高精細の4K(画素数3840×2160)や8K(画素数7680×4320)が実現されつつある。しかしながら、4Kや8Kの液晶表示パネルでは、配線数やスイッチング素子の増加等に起因してパネル透過率が低下する傾向にある。パネル透過率が低下すると、バックライトの光利用効率が低下するため、消費電力の増大に繋がる。
【0005】
こうした不都合を解消するべく、特許文献2には、光配向膜を用いた4D-RTNの透過率改善を目的として、4D-ECBモード(4Domain-Electrically Controlled Birefringence)を活用した技術が開示されている。特許文献2に記載の液晶表示装置では、一つの画素内に、液晶分子の傾斜方位が互いに異なる4つの配向領域を画素の長手方向に沿って配置し、液晶表示パネルを平面視したときに、これら4つの配向領域のそれぞれにおいて、液晶分子のねじれ角が実質的に0度になるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5184618号公報
【文献】国際公開第2017/057210号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の液晶表示装置では、1画素内の4分割配向を実現するために、TFT基板及び対向基板(CF基板)のそれぞれに4回ずつ、合計8回の分割配向露光を実施する必要がある。このため、4D-RTNモードの液晶表示装置と比べて、生産におけるスループットが低下する。
【0008】
また、引用文献2に記載の液晶表示装置では、TFT基板側の画素内における分割配向露光の境界線と、対向基板側の画素内における分割配向露光の境界線とを一致させ、これにより4つの配向領域を形成する必要がある。しかしながら、位置合わせの精度や基板の熱膨張による歪み等に起因して、互いの境界線を一致させることは容易ではない。両基板を貼り合わせる際に位置ずれが生じた場合、表示不良を招くことが懸念される。
【0009】
本開示は上記課題に鑑みなされたものであり、配向露光の回数が少なく生産におけるスループットが良好であり、かつ表示品位に優れた液晶表示装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討し、光配向による液晶セル作製において、一方の基板側のプレチルト角を90度未満とし、他方の基板側のプレチルト角を実質的に90度とすることにより露光回数を少なくすることを試みた。しかしながら、光配向処理により一方の基板側のプレチルト角を90度未満とし、他方の基板側のプレチルト角を実質的に90度とした液晶セルでは残留直流電界が生じやすく、不純物イオンの偏在によるフリッカーを引き起こし、表示品位が低下することが分かった。そこで本発明者らは更に検討を重ね、一方の基板側のプレチルト角を90度未満とし、他方の基板側のプレチルト角を実質的に90度とする液晶セルにおいて、配向膜に対する露光態様の相違に起因する配向膜の電気物性の非対称性を軽減することに着目し、上記課題を解決するに至った。具体的には、本開示は以下の手段を採用した。
【0011】
[1] 複数の画素を有する液晶表示装置であって、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備え、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、前記第1~第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、前記光配向膜は、光配向性基を側鎖に有する重合体を用いて形成されており、前記重合体が側鎖に有する光配向性基の含有量が1.1mmol/g未満である、液晶表示装置。
【0012】
[2] 複数の画素を有する液晶表示装置であって、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備え、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、前記第1~第4の配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は、マレイミド化合物に由来する構造単位を有する重合体を用いて形成されている、液晶表示装置。
【0013】
[3] 複数の画素を有する液晶表示装置であって、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備え、前記第1配向膜及び前記第2配向膜は、光配向膜であり、前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、前記第1~第4の配向領域のうち、一部の配向領域は、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角が90度未満であって、かつ前記第2配向膜により規定されるプレチルト角が実質的に90度であり、残りの配向領域は、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角が実質的に90度であって、かつ前記第2配向膜により規定されるプレチルト角が90度未満である、液晶表示装置。
【0014】
[4] 複数の画素を有する液晶表示装置であって、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備え、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、前記第1~第4の配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち一方は配向分割されており、他方は配向分割されておらず、前記第1配向膜及び前記第2配向膜は、下記の条件(a)及び(b)のうち少なくとも一方を満たす、液晶表示装置。
(a)前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜組成が互いに異なる。
(b)前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜厚が互いに異なる。
【0015】
[5] 複数の画素を有する液晶表示装置であって、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備え、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、前記第1~第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、前記第1基板及び前記第2基板のうち一方は、前記画素の各辺に対し斜め方向に延びるスリットが複数形成された画素電極を有し、前記画素電極の電極幅をL、前記画素電極のスリット幅をS、前記液晶層の厚さをdとしたとき、L<1.1d、かつS<dである、液晶表示装置。
【0016】
[6] 複数の画素を有する液晶表示装置であって、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備え、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方は光配向膜であり、前記複数の画素における各画素は、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有し、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域が前記画素の長手方向に並べて配置されており、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっており、前記複数の画素は、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されており、前記第1~第4配向領域の各配向領域において、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度であり、前記液晶層は、カイラル剤を含有する、液晶表示装置。
【0017】
[7] 複数の画素を有する液晶表示装置の製造方法であって、前記液晶表示装置は、第1基板と、前記第1基板に対向する第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に設けられ、液晶分子を含有する液晶層と、前記第1基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第1配向膜と、前記第2基板に形成され、前記液晶分子を配向させる第2配向膜と、を備え、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を、重合体組成物を基板上に塗布して加熱することにより形成し、前記第1配向膜及び前記第2配向膜のうち少なくとも一方を光配向膜とし、前記複数の画素における各画素を、前記液晶分子の配向方位が互いに異なる領域として第1配向領域と第2配向領域と第3配向領域と第4配向領域とを有するように形成し、かつ、前記第1配向領域、前記第2配向領域、前記第3配向領域及び前記第4配向領域を前記画素の長手方向に並べて配置し、前記第1配向領域の前記配向方位、前記第2配向領域の前記配向方位、前記第3配向領域の前記配向方位、及び前記第4配向領域の前記配向方位のうち、任意の2つの配向方位の差を90度の整数倍に略等しくし、前記複数の画素を、前記画素の短手方向において隣接する前記配向領域の互いの前記配向方位が同一となるように、前記画素の短手方向に並べて配置されるようにし、前記第1~第4の配向領域のそれぞれにおいて、前記第1配向膜により規定されるプレチルト角及び前記第2配向膜により規定されるプレチルト角のうち、一方を90度未満とし、他方を実質的に90度とし、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成する際の加熱温度、前記第1配向膜及び前記第2配向膜を形成する際の加熱時間、前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜組成、並びに前記第1配向膜及び前記第2配向膜の膜厚のうち少なくともいずれかを、前記第1配向膜と前記第2配向膜とで互いに異ならせる、液晶表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、配向露光の回数が少なく生産におけるスループットが良好であり、かつフリッカーの発生が少なく表示品位に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、液晶表示装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図3図3は、第1実施形態の一配向領域における液晶分子のプレチルト角を示す模式図である。
図4図4は、第1実施形態の配向処理を説明する図である。(a)は第1基板を示し、(b)は第2基板を示す。
図5図5は、第6実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図6図6は、第6実施形態の配向処理を説明する図である。(a)は第1基板を示し、(b)は第2基板を示す。
図7図7は、第6実施形態の一配向領域における液晶分子のプレチルト角を示す模式図である。
図8図8は、他の実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図9図9は、他の実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図10図10は、他の実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図11図11は、他の実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図12図12は、他の実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図13図13は、他の実施形態の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
図14図14は、スリット電極の一例を示す図である。
図15図15は、比較例1の1画素における配向パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0021】
本明細書において、「画素」とは、表示において各色の濃淡(階調)を表現する最小単位であり、例えばカラーフィルタ方式の表示装置では、R,G及びB等のそれぞれの階調を表現する単位に相当する。したがって、「画素」と表現した場合、R画素、G画素及びB画素を組み合わせたカラー表示画素(絵素)ではなく、R画素、G画素及びB画素のそれぞれを指す。つまり、カラー液晶表示装置の場合、1つの画素は、カラーフィルタのいずれかの色に対応している。「プレチルト角」とは、電圧オフの状態において、配向膜表面と配向膜近傍の液晶分子の長軸方向とがなす角度である。
【0022】
図1に示すように、液晶表示装置10は、第1基板11及び第2基板12からなる一対の基板と、第1基板11と第2基板12との間に配置された液晶層13と、を備えている。液晶表示装置10は、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)型の液晶表示装置である。なお、他の駆動方式(例えば、パッシブマトリックス方式、プラズマアドレス方式等)に本開示を適用することもできる。
【0023】
第1基板11は、ガラスや樹脂等からなる透明基板14の液晶層13側の表面上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電体からなる画素電極15、スイッチング素子としてのTFT、走査線や信号線等の各種配線が配置されたTFT基板である。第2基板12は、ガラスや樹脂等からなる透明基板16の液晶層13側の表面上に、ブラックマトリクス17、カラーフィルタ18、透明導電体からなる対向電極19(共通電極ともいう。)が設けられたCF基板である。
【0024】
一対の基板11,12には、液晶分子を膜表面に対して所定方位に配向させる液晶配向膜が形成されている。液晶配向膜は垂直配向膜である。液晶表示装置10は、液晶配向膜として、第1基板11の電極配置面上に形成された第1配向膜22と、第2基板12の電極配置面上に形成された第2配向膜23とを有している。
【0025】
第1基板11及び第2基板12は、第1基板11の電極配置面と、第2基板12の電極配置面とが対向するように、スペーサ24を介して所定の間隙(セルギャップ)を設けて配置されている。なお、図1には、スペーサ24として柱状スペーサを示したが、ビーズスペーサ等の他のスペーサであってもよい。対向配置された一対の基板11,12は、その周縁部において、シール材25を介して貼り合わされている。第1基板11、第2基板12及びシール材25によって囲まれた空間には液晶組成物が充填されている。これにより、第1基板11と第2基板12との間に液晶層13が形成されている。液晶層13には、負の誘電率異方性を有する液晶が充填されている。
【0026】
第1基板11及び第2基板12のそれぞれの外側には偏光板(図示略)が配置されている。第1基板11の外縁部には端子領域が設けられている。この端子領域に、液晶を駆動するためのドライバIC等が接続されることによって液晶表示装置10が駆動される。
【0027】
第1配向膜22及び第2配向膜23のうち少なくとも一方は光配向膜であり、本実施形態では、少なくとも第1配向膜22が光配向膜である。なお、本明細書において、「光配向膜」とは、光配向性基を有する重合体を用いて形成された塗膜に対して偏光又は無偏光の光照射を行うことにより形成された液晶配向膜をいう。「光配向性基」とは、光照射による光異性化反応、光二量化反応、光分解反応又は光転位反応等によって膜に異方性を付与する官能基である。
【0028】
第1配向膜22は、光配向処理により、液晶分子の配向方位が領域ごとに異なるように分割露光されている。第1配向膜22は、光配向性基を有する重合体を用いて形成された塗膜に対し、フォトマスク(例えば偏光子)を用いて、偏光放射線を複数回斜め照射することにより形成されている。一方、第2配向膜23は分割露光されていない。本実施形態では、第1配向膜22と同じ重合体組成物を用いて形成された塗膜を、光を照射せずそのまま用いている。これにより、第1配向膜22により規定されるプレチルト角と、第2配向膜23により規定されるプレチルト角とを異ならせている。具体的には、第1配向膜22により規定されるプレチルト角を90度未満とし、第2配向膜23により規定されるプレチルト角を実質的に90度としている。
【0029】
なお、第2配向膜23に対して光照射しない構成に代えて、第2配向膜23の面全体に対し、フォトマスクを用いずに基板法線方向から無偏光露光を行ってもよい。この場合、第2基板12に対する露光は、平行光であっても拡散光であってもよい。
【0030】
液晶表示装置10は、複数の画素30を有し、それら複数の画素30が液晶表示装置10の表示領域にマトリクス状に配列されている。各画素30は、各々の画素領域が配向分割されており、液晶分子の配向方位が互いに異なる複数の領域を有している。これにより、液晶表示装置10の視野角特性を補償している。図2に、画素30の配向パターンの一例を示す。なお、図2(a)において、円錐体は液晶分子35を表し、円錐体の頂点側が第1基板11側、円錐体の底面側が第2基板12側を表す。図2(a)は、液晶表示装置10を第2基板12側から見た図である。
【0031】
一例としては、図2(a)に示すように、各画素30には、液晶分子35の配向方位が互いに異なる4つの配向領域が形成されている。これら4つの配向領域(第1ドメイン31、第2ドメイン32、第3ドメイン33、及び第4ドメイン34)は、1画素内において画素30の長手方向(図2のY方向)に並べて配置されている。第1~第4ドメイン31~34における液晶分子35の配向方位は、任意の2つの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっている。なお、本明細書において、「液晶分子の配向方位」は、特に言及しない場合、液晶表示装置10に電圧を印加したときの液晶層13の層面内及び厚み方向における中央付近の液晶分子の配向方位を意味する。
【0032】
具体的には、画素30の短手方向Xを0度としたとき、液晶分子35の配向方位は、第1ドメイン31では実質的に45度、第2ドメイン32では実質的に135度、第3ドメイン33では実質的に225度、第4ドメイン34では実質的に315度となっている。これら4つのドメイン31~34は、図2(a)に示すように、1画素内において、第4ドメイン34、第2ドメイン32、第3ドメイン33、第1ドメイン31の順に画素30の長手方向に沿って配置されている。各画素30の光透過領域(以下、「画素領域」ともいう。)を画素30の長手方向において2つに分割する位置には信号線36が配置されている。信号線36により分割された画素領域の一方を形成する2つのドメイン(第4ドメイン34と第2ドメイン32)、及び他方を形成する2つのドメイン(第3ドメイン33と第1ドメイン31)は、各ドメインにおける液晶分子35の配向方位が互いに180度異なっている(図2(a)参照)。
【0033】
なお、本明細書において「実質的に45度」、「実質的に135度」、「実質的に225度」、「実質的に315度」とはそれぞれ、45度±0.5度、135度±0.5度、225度±0.5度、315度±0.5度の範囲をいう。各角度は、好ましくはβ度±0.2度であり、より好ましくはβ度±0.1度(ただし、βは45、135、225又は315である。)である。
【0034】
図2(b)及び図2(c)は、1つの画素30の各基板における配向膜表面の液晶分子の長軸方向を電圧オフ状態において基板に投影した方位(チルト方位)を模式的に示した図である。図2中、(b)は第1基板11を示し、(c)は第2基板12を示す。図2中の矢印37はチルト方位を示している。液晶表示装置10においては、第1配向膜22及び第2配向膜23のうち第1配向膜22に対しては、液晶分子35の配向方位に対応する方向に偏光放射線を照射することにより、各ドメイン31~34に所望のプレチルト角特性を付与する。これにより、液晶表示装置10における液晶分子35の配向方位を図2(a)に示す方位としている。一方、第2配向膜23に対しては偏光紫外線を照射しない。こうした露光処理により、第1~第4ドメイン31~34のそれぞれの配向領域39では、図3に示すように、第1配向膜22により規定されるプレチルト角θ1を90度未満とし、第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2を実質的に90度としている。
【0035】
プレチルト角θ1は、第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2よりも小さければよいが、液晶分子35の応答遅れを抑制する観点から、好ましくは89.0度以下であり、より好ましくは88.5度以下であり、さらに好ましくは88.0度以下である。また、液晶表示装置10のコントラストの低下を抑制する観点から、プレチルト角θ1は、好ましくは81.0度以上であり、より好ましくは83.0度以上であり、さらに好ましくは84.0度以上である。なお、本明細書において「実質的に90度」とは、90度±0.5度の範囲をいう。プレチルト角θは、好ましくは90度±0.2度であり、より好ましくは90度±0.1度である。
【0036】
図2(b)に示すように、第1基板11側のチルト方位は、第1~第4ドメイン31~34のそれぞれで互いに異なっており、任意の2つのドメインでのチルト方位の差が90度の整数倍に略等しくなっている。具体的には、各ドメインでのチルト方位は、画素30の短手方向Xを0度とした場合に、第1ドメイン31では実質的に45度、第2ドメイン32では実質的に135度、第3ドメイン33では実質的に225度、第4ドメイン34では実質的に315度である。
【0037】
(液晶配向剤)
次に、第1配向膜22及び第2配向膜23を形成するための重合体組成物(以下、「液晶配向剤」ともいう。)について説明する。本実施形態において、第1配向膜22及び第2配向膜23は、重合体成分としてマレイミド化合物に由来する構造単位を有する重合体(以下、「マレイミド系重合体」ともいう。)を含有する液晶配向剤を用いて形成されている。マレイミド系重合体を含有する液晶配向剤を用いることにより、液晶表示装置10においてフリッカーの発生を抑制することができる点で好適である。
【0038】
マレイミド系重合体は、マレイミド化合物をモノマーの少なくとも一部に用いることによって得ることができる。当該マレイミド化合物としては、マレイミドが有する窒素原子に結合する水素原子を取り除いた基(下記式(C-1)で表される基)を有する化合物、及びマレイミドの開環体に由来する構造(下記式(C-2)で表される基)を有する化合物が挙げられる。
【化1】
(式(C-1)及び式(C-2)中、「*」は結合手であることを示す。)
【0039】
第1配向膜22及び第2配向膜23を形成する際に用いるマレイミド系重合体としては、フリッカー発生の抑制効果を十分に得ることができる点で、マレイミド化合物に由来する構造単位と、スチレン化合物に由来する構造単位とを有する重合体(以下、「スチレン-マレイミド系重合体」ともいう。)を用いることが好ましい。スチレン-マレイミド系重合体において、マレイミド化合物に由来する構造単位の含有割合は、スチレン-マレイミド系重合体の全構造単位に対し、2モル%以上であることが好ましく、2~85モル%であることがより好ましく、2~80モル%であることがさらに好ましい。また、スチレン化合物に由来する構造単位の含有割合は、スチレン-マレイミド系重合体の全構造単位に対して、2モル%以上であることが好ましく、2~80モル%であることがより好ましく、5~70モル%であることがさらに好ましい。
【0040】
なお、スチレン-マレイミド系重合体は、スチレン化合物に由来する構造単位及びマレイミド化合物に由来する構造単位のみを有していてもよいが、スチレン化合物及びマレイミド化合物以外のモノマー(例えば、(メタ)アクリル系化合物、共役ジエン系化合物等)に由来する構造単位をさらに有していてもよい。その場合、スチレン化合物及びマレイミド化合物以外のモノマーに由来する構造単位の含有割合は、スチレン-マレイミド系重合体の全構造単位に対して、5モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましい。
【0041】
光配向膜を形成する場合、マレイミド系重合体としては、光配向性基を有するマレイミド系重合体を好ましく用いることができる。光配向性基の具体例としては、アゾベンゼン又はその誘導体を基本骨格として含むアゾベンゼン含有基、桂皮酸又はその誘導体(桂皮酸構造)を基本骨格として含む桂皮酸構造含有基、カルコン又はその誘導体を基本骨格として含むカルコン含有基、ベンゾフェノン又はその誘導体を基本骨格として含むベンゾフェノン含有基、フェニルベンゾエート又はその誘導体を基本骨格として含むフェニルベンゾエート含有基、クマリン又はその誘導体を基本骨格として含むクマリン含有基等が挙げられる。これらのうち、光反応性が高い点で、光配向性基として桂皮酸構造を有するマレイミド系重合体を好ましく用いることができる。
【0042】
マレイミド系重合体は、例えばモノマーを重合開始剤の存在下で重合することにより得ることができる。使用する重合開始剤は、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物とすることが好ましい。重合開始剤の使用割合は、反応に使用する全モノマー100質量部に対して、0.01~30質量部とすることが好ましい。上記重合反応は、好ましくは有機溶媒中で行われる。反応に使用する有機溶媒としては、アルコール、エーテル、ケトン、アミド、エステル、炭化水素化合物等が挙げられる。反応温度は30℃~120℃とすることが好ましく、反応時間は1~36時間とすることが好ましい。有機溶媒の使用量(a)は、反応に使用するモノマーの合計量(b)が、反応溶液の全体量(a+b)に対して、0.1~60質量%になるような量にすることが好ましい。
【0043】
なお、光配向性基を有するマレイミド系重合体を得る場合、光配向性基を有するモノマー(例えば、光配向性基含有のマレイミド化合物)を用いて重合を行ってもよいし、あるいは、反応性基(例えばエポキシ基)を有するマレイミド系重合体を得た後、得られた重合体と、光配向性基を有する反応性化合物(例えばカルボン酸)とを反応させることにより、光配向性基を側鎖に有するマレイミド系重合体を合成してもよい。反応性基を有するマレイミド系重合体と反応性化合物との反応は、公知の方法に従って行うことができる。光配向性基を有するマレイミド化合物の具体例を以下に示す(化合物(B-1)~(B-8))。ただし、光配向性基を有するマレイミド系重合体を得る際に使用するモノマーについては、以下の化合物に限定されるものではない。
【化2】
【化3】
【0044】
光配向性基を有するマレイミド系重合体が側鎖に有する光配向性基の含有量(以下、「感光性側鎖含有量」ともいう。)は、液晶表示装置におけるフリッカーの発生の抑制及びDCズレの抑制の改善効果をより高くできる点で、1.1mmol/g未満であることが好ましい。光配向性基を有するマレイミド系重合体の感光性側鎖含有量は、1.0mmol/g以下であることがより好ましく、0.95mmol/g以下であることが更に好ましい。また、光配向性基を有するマレイミド系重合体の感光性側鎖含有量は、光照射により塗膜に対し所望のプレチルト角特性を付与する観点から、0.1mmol/g以上であることが好ましく、0.2mmol/g以上であることがより好ましい。
【0045】
マレイミド系重合体につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~300,000であり、より好ましくは2,000~100,000である。Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは7以下であり、より好ましくは5以下である。なお、液晶配向剤の調製に際し、マレイミド系重合体としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0046】
第1配向膜22及び第2配向膜23の形成に用いる液晶配向剤は、上記の如きマレイミド系重合体を含有するが、必要に応じて、以下に示すその他の成分を含有してもよい。
【0047】
液晶配向剤は、電気特性の改善やコスト低減等を目的として、マレイミド系重合体と共に、マレイミド系重合体とは異なる重合体(以下、「その他の重合体」という。)を含有していることが好ましい。その他の重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。その他の重合体は、電気特性の改善や液晶との親和性、機械的強度、マレイミド系重合体との親和性の観点から、中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。その他の重合体の配合割合は、液晶配向剤の調製に使用する重合体の全量に対して、80質量%以下とすることが好ましく、10~70質量%とすることがより好ましい。その他の重合体としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
その他の成分としては、上記のほか、例えば分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等)、官能性シラン化合物、多官能(メタ)アクリレート、酸化防止剤、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、充填剤、分散剤、光増感剤等が挙げられる。その他の成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲で、各化合物に応じて適宜選択することができる。
【0049】
液晶配向剤は、重合体成分及び必要に応じて任意に配合されるその他の成分が、好ましくは有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。使用する有機溶媒としては、液晶配向剤の調製に使用されている公知の化合物の1種又は2種以上を用いることができる。液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、塗布性を良好にするとともに液晶配向膜の膜厚を適度にする観点から、好ましくは1~10質量%の範囲である。
【0050】
なお、マレイミド系重合体を用いて第1配向膜22及び第2配向膜23を形成する構成に代えて、第1配向膜22及び第2配向膜23のうち一方を、マレイミド系重合体を用いて形成し、他方を、マレイミド系重合体とは異なる重合体を用いて形成してもよい。マレイミド系重合体とは異なる重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
【0051】
(液晶表示装置の製造方法)
次に、液晶表示装置10の製造方法について説明する。液晶表示装置10は、以下の工程1~3を含む方法によって製造することができる。
【0052】
<工程1:塗膜の形成>
まず、第1基板11及び第2基板12を準備する。続いて、第1基板11及び第2基板12の各電極配置面上に液晶配向剤を塗布し、基板上に塗膜を形成する。基板への液晶配向剤の塗布は、好ましくはオフセット印刷法、フレキソ印刷法、スピンコート法、ロールコーター法又はインクジェット印刷法により行う。
【0053】
液晶配向剤を塗布した後、塗布した液晶配向剤の液垂れ防止などの目的で、好ましくは予備加熱(プレベーク)が実施される。プレベーク温度は、好ましくは30~200℃であり、プレベーク時間は、好ましくは0.25~10分である。その後、溶剤を完全に除去すること等を目的として焼成(ポストベーク)が実施される。焼成温度(ポストベーク温度)は、好ましくは80~300℃であり、ポストベーク時間は、好ましくは5~200分である。形成される液晶配向膜の膜厚は、好ましくは0.001~1μmである。
【0054】
<工程2:配向処理>
続いて、液晶配向膜に所望のプレチルト角特性を付与するために、工程1により形成した塗膜(液晶配向膜)の少なくとも一方に対して光配向処理を行う。ここでは、第1基板11上に形成した塗膜に対し、フォトマスクを用いて、基板面に対し斜め方向から偏光放射線(直線偏光)を照射する(図4(a)参照)。これにより、第1基板11近傍の液晶分子35に予めプレチルト角を付与する。一方、第2基板12上に形成した塗膜に対しては、配向処理のための直線偏光を照射しない(図4(b)参照)。塗膜に照射する放射線としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができる。好ましくは、200~400nmの波長の光を含む紫外線である。
【0055】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。放射線の照射量は、好ましくは400~50,000J/mであり、より好ましくは1,000~20,000J/mである。光照射後において、基板表面を例えば水、有機溶媒(例えばメタノール、イソプロピルアルコール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル等)又はこれらの混合物を用いて洗浄する処理や、基板を加熱する処理を行ってもよい。
【0056】
図4を用いて、第1基板11上に形成した液晶配向膜(第1配向膜22)に施す光配向処理について説明する。なお、図4中、一点鎖線は1画素を示し、矢印41は塗膜上での偏光放射線の露光方位を示している。二点鎖線は第4ドメイン34に対応する領域を示している。第1配向膜22に対する光配向処理は、塗膜上での露光方位が互いに異なる複数の走査工程により行われる。これら複数の走査工程により、配向方位が互いに異なる複数の(具体的には4つの)ドメインが1画素内に形成される。
【0057】
走査工程は、通常、光源に対して第1基板11を移動させながら、又は第1基板11に対して光源を移動させながら、液晶配向膜に放射線を照射するスキャン露光により行われる。複数の走査工程の一例を図4に基づいて説明すると、まず、各画素の第4ドメイン34に対応する領域44に対して1回目の露光を行う。一例としては、光源(図示略)に対する第1基板11の相対的な移動方向Pと光照射方向とを反平行とし、基板上での露光方位41が移動方向P(すなわち画素30の短手方向X)に対して-45度(=315度)となるように、基板面に放射線を照射する。このとき、第1~第3ドメイン31~33については遮光部材により遮光する。
【0058】
続いて、第1ドメイン31に対応する領域に対して2回目の露光を行う。2回目の露光は、基板面での露光方位41が第4ドメイン34と異なる以外は1回目の露光と同じ操作を行う。すなわち、移動方向Pと光照射方向とを反平行とし、基板上での露光方位41が移動方向Pに対して+45度となるように基板面に放射線を照射する。このとき、第2~第4ドメイン32~34については、遮光部材により遮光する。同様に、第2ドメイン32及び第3ドメイン33に対しても、それぞれ3回目の露光、4回目の露光を行い、基板上での露光方位41が画素30の短手方向Xを基準としてそれぞれ+135度、-135度(=225度)となるように基板面に放射線照射する。
【0059】
上記走査工程では、一方の基板に対し、一画素内に形成される配向領域の数に対応する回数(本実施形態では合計4回)のスキャン露光を行えばよい。また、他方の基板に対してはスキャン露光を行わずに済む。したがって、液晶表示装置10の製造に際し配向処理回数を少なくすることができる。こうした配向処理により、マトリクス状に配置された複数の画素30は、画素30の短手方向Xにおいて隣接する配向領域で、液晶分子の配向方位が同一の方向となる(図4参照)。すなわち、液晶表示装置10において、複数の画素30は、画素30の短手方向Xにみて、第1~第4ドメイン31~34のそれぞれが移動方向Pに沿って一列に並ぶように配置されている。なお、第1~第4ドメイン31~34に対してスキャン露光を行う順序は上記に限定されない。また、複数回のスキャン露光の際には、偏光軸を調整することによって露光方位37を調整してもよいし、基板の向きを変えることにより露光方位41を調整してもよい。
【0060】
<工程3:液晶セルの構築>
続いて、液晶配向膜が形成された2枚の基板(第1基板11及び第2基板12)を用い、対向配置した2枚の基板間に液晶を配置することにより液晶セルを製造する。液晶セルを製造するには、例えば、液晶配向膜が対向するように間隙を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール材により貼り合わせ、基板表面及びシール材により囲まれたセルギャップ内に液晶を注入充填し注入孔を封止する方法、ODF方式による方法等が挙げられる。なお、液晶表示装置10がPSAモードである場合には、液晶セルの構築後に、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する処理を行う。
【0061】
続いて、必要に応じて液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせる。こうして液晶表示装置10が得られる。偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と称される偏光フィルムを酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板が挙げられる。本実施形態では、第1基板11側の偏光板及び第2基板12側の偏光板が、互いの透過軸が直交するように配置されている。第1基板11側の偏光板の透過軸は表示面の水平方向(画素の短手方向)に延び、第2基板12側の偏光板の透過軸は表示面の上下方向(画素の長手方向)に延びている。
【0062】
液晶表示装置10は、種々の用途に有効に適用することができる。液晶表示装置10は、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置として用いることができる。
【0063】
以上詳述した本実施形態によれば、1画素内に、液晶分子の配向方位が互いに異なる複数の配向領域(第1~第4ドメイン31~34)が形成され、それら複数のドメインが画素の長手方向に並べて配置された液晶表示装置10を得ることができる。この液晶表示装置10は、第1~第4ドメイン31~34のうち任意の2つのドメインにおける液晶分子35の配向方位の差が90度の整数倍に略等しく、かつ、画素の短手方向において隣接する配向領域の液晶分子35の配向方位が同一となるように、複数の画素が画素の短手方向に並べて配置されている。また、第1~第4ドメイン31~34の各配向領域において、第1配向膜22により規定されるプレチルト角及び第2配向膜23により規定されるプレチルト角のうち、一方が90度未満であり、他方が実質的に90度である。こうした液晶表示装置10によれば、第1配向膜22と第2配向膜23との両方に対して分割露光する場合に比べて、配向処理するための露光回数を低減することができる。よって、生産におけるスループットを向上させることができる。
【0064】
また、液晶分子35の配向方位が互いに異なる4つの配向領域が画素の長手方向に並べて配置されている構成において、両基板のそれぞれの液晶配向膜に対し光配向処理を行うものとすると、位置合わせの精度や基板の熱膨張による歪み等に起因して、互いの分割配向露光の境界線を一致させることが困難になることが懸念される。また、両基板を貼り合わせる際に位置ずれが生じた場合、表示不良を招くことが懸念される。この点、本実施形態の液晶表示装置10によれば、一対の基板を貼り合わせる際に基板の位置ずれが生じた場合にも、ずれに起因する表示不良の発生を抑制することができる。
【0065】
その一方で、液晶表示装置10においては、液晶配向膜に対し、直線偏光による光照射が一方の基板側のみに行われていることにより、配向膜表面の光反応が一方にのみ生じ、化学的表面状態が異なっていることが考えられる。また、プレチルト角が第1配向膜22と第2配向膜23とで同じでなく、液晶セルに電圧を印加したときの液晶の配向変形が、基板法線方向にみて完全な点対称ではない。そのため、液晶表示装置10では、フレクソエレクトリック効果による分極を発生すると考えられる。これら2つの要因から、仮に液晶セルに対称な交流矩形電圧を印加しても直流成分が重畳してしまい、フリッカーを生じる原因となることが考えられる。この点、マレイミド系重合体を含有する液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成していることにより、液晶表示装置10でのフリッカーの発生を抑制することができ、表示品位が良好な液晶表示装置10を得ることができる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について第1実施形態との相違点を中心に説明する。本実施形態では、液晶配向膜を形成する際の加熱温度を、分割露光されない液晶配向膜と分割露光される液晶配向膜とで異なる温度としている。
【0067】
具体的には、上記工程1において第1配向膜22の形成時と第2配向膜23の形成時とにおけるポストベーク温度の差を、10℃以上とすることが好ましく、15℃以上とすることがより好ましく、20℃以上とすることがさらに好ましい。また、ポストベーク温度の差については、70℃以下とすることが好ましく、65℃以下とすることがより好ましく、55℃以下とすることがさらに好ましい。このとき、分割露光が施されない液晶配向膜と分割露光が施される液晶配向膜のうちいずれの加熱温度をより高温としてもよい。
【0068】
分割露光されない液晶配向膜及び分割露光される液晶配向膜のうちいずれの加熱温度をより高温とするかについては、配向膜材料に応じて選定することが好ましい。具体的には、分割露光により液晶配向膜の比抵抗が低下する場合には、分割露光されない液晶配向膜の加熱温度をより低温にすることが好ましい。一方、分割露光により液晶配向膜の比抵抗が上昇する場合には、分割露光されない液晶配向膜の加熱温度をより高温にすることが好ましい。これにより、電気物性の非対称性を軽減できると考えられ、フリッカー発生の抑制効果をより高くできる点で好ましい。
【0069】
なお、分割露光により液晶配向膜の比抵抗が低下するのは、露光により配向膜内の分子の再配列が生じることで芳香環-芳香環距離が縮まること等により、ホッピング伝導などの電子伝導の経路が形成されることに由来するものと推察される。分割露光により液晶配向膜の比抵抗が上昇するのは、配向膜内の分子の再配列により、主鎖や側鎖のパッキングが進み、イオン伝導の経路が阻害されることに由来するものと推察される。
【0070】
ここで、液晶配向膜によって規定されるプレチルト角を第1配向膜22と第2配向膜23とで非対称とした場合、プレチルト角の非対称に起因して、液晶セルに残留直流電界が生じる場合がある。こうした残留直流電界は、フリッカーや焼き付きを引き起こすおそれがある。これに対し、本実施形態によれば、膜形成時のポストベーク温度を第1配向膜22と第2配向膜23とで異なる温度とすることにより、液晶セルに残留直流電界が生じることを抑制でき、フリッカーや焼き付きの発生を抑制することができる。そのメカニズムとしては、ポストベーク温度を異ならせることにより配向膜内の熱化学反応の度合いを互いに異ならせることができ、これにより第1配向膜22と第2配向膜23との電気的物性を互いに異ならせたことに起因するものと推察される。
【0071】
本実施形態において、第1配向膜22及び第2配向膜23は、架橋性基を有する重合体を用いて形成されていることが好ましい。この場合、膜形成時のポストベーク温度を第1配向膜22と第2配向膜23とで異なる温度とすることによるフリッカー抑制効果をより高くでき好適である。架橋性基としては、光又は熱によって同一又は異なる分子間に共有結合を形成可能な基であることが好ましく、例えば(メタ)アクリル酸又はその誘導体を基本骨格とする(メタ)アクリル含有基、ビニル基を有する基(アルケニル基、スチリル基など)、エチニル基、エポキシ基(オキシラニル基、オキセタニル基)等が挙げられ、エポキシ基が特に好ましい。
【0072】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について第1実施形態及び第2実施形態との相違点を中心に説明する。第3実施形態では、液晶配向膜を形成する際の加熱時間を、分割露光されない液晶配向膜と分割露光される液晶配向膜とで異なる時間とする。
【0073】
具体的には、上記工程1において、第1配向膜22の形成時と第2配向膜23の形成時とにおけるポストベーク時間の差を、5分以上とすることが好ましく、10分以上とすることがより好ましく、15分以上とすることがさらに好ましい。また、ポストベーク時間の差については、60分以下とすることが好ましく、55分以下とすることがより好ましく、50分以下とすることがさらに好ましい。このとき、分割配向する液晶配向膜及び分割配向しない液晶配向膜のうちいずれの加熱時間をより短時間としてもよい。
【0074】
分割露光されない液晶配向膜及び分割露光される液晶配向膜のうちいずれの加熱時間をより長くするかは、配向膜材料に応じて選定することが好ましい。具体的には、分割露光により液晶配向膜の比抵抗が低下する場合には、分割露光されない液晶配向膜の加熱時間をより短くすることが好ましい。一方、分割露光により液晶配向膜の比抵抗が上昇する場合には、分割露光されない液晶配向膜の加熱時間をより長くすることが好ましい。これにより、電気物性の非対称性を軽減できると考えられ、フリッカー発生の抑制効果をより高くできる点で好ましい。
【0075】
こうした第3実施形態によれば、液晶配向膜形成時のポストベーク時間を第1配向膜22と第2配向膜23とで異なる時間とすることにより、液晶配向膜によって規定されるプレチルト角を第1配向膜22側と第2配向膜23側とで非対称とした場合にも、液晶セルに残留直流電界が生じることを抑制でき、フリッカーや焼き付きの発生を抑制することができる。
【0076】
液晶配向膜を形成する際に、分割露光されない液晶配向膜と分割露光される液晶配向膜との加熱時間を異ならせる場合、第1配向膜22及び第2配向膜23は、架橋性基を有する重合体を用いて形成されていることが好ましい。この場合、膜形成時のポストベーク時間を第1配向膜22と第2配向膜23とで異なる時間とすることによるフリッカー抑制効果をより高くでき好適である。架橋性基の説明は、上記第2実施形態の説明が適用される。
【0077】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について第1~第3実施形態との相違点を中心に説明する。第4実施形態では、液晶配向膜の膜厚を、分割露光されない液晶配向膜と分割露光される液晶配向膜とで異なる厚さとする。
【0078】
具体的には、上記工程1において、分割露光されない液晶配向膜の膜厚をD1、分割露光される液晶配向膜の膜厚をD2としたとき、D1/D2を0.2~2.5となる比率とすることが好ましく、0.3~2.0となる比率とすることがより好ましい。
【0079】
分割露光されない液晶配向膜及び分割露光される液晶配向膜のうちいずれの膜厚をより厚くするかは、配向膜材料に応じて選定することが好ましい。具体的には、分割露光により液晶配向膜の比抵抗が低下する場合には、分割露光されない液晶配向膜の膜厚をより薄くすることが好ましい。一方、分割露光により液晶配向膜の比抵抗が上昇する場合には、分割露光されない液晶配向膜の膜厚をより厚くすることが好ましい。これにより、電気物性の非対称性を軽減できると考えられ、フリッカー発生の抑制効果をより高くできる点で好ましい。
【0080】
こうした第4実施形態によれば、第1配向膜22と第2配向膜23との膜厚を異ならせることにより、液晶配向膜によって規定されるプレチルト角を第1配向膜22側と第2配向膜23側とで非対称とした場合において、液晶セルに残留直流電界が生じることを抑制でき、フリッカーや焼き付きの発生を抑制することができる。
【0081】
なお、第1配向膜22及び第2配向膜23の膜厚を異ならせるとともに、液晶配向膜を形成する際の加熱温度及び加熱時間のうち少なくとも一方を、分割露光されない液晶配向膜と分割露光される液晶配向膜とで異ならせてもよい。この場合のポストベーク温度及びポストベーク時間の説明については上記説明が適用される。
【0082】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について第1~第4実施形態との相違点を中心に説明する。第5実施形態では、液晶配向膜の膜組成を、分割露光が施されない液晶配向膜と分割露光が施される液晶配向膜とで異なる組成とすることにより、液晶表示装置でのフリッカーの発生を抑制する。
【0083】
具体的には、分割露光される側の液晶配向膜(図1では第1配向膜22)が、分割露光することによって配向膜の比抵抗が低下する膜組成の場合には、分割露光されない配向膜(図1では第2配向膜23)を形成するために用いる液晶配向剤を、低抵抗系の配向膜を形成可能な膜組成とする。こうした膜組成の好ましい例としては、下記(1A)~(1C)が挙げられる。
(1A)重合体成分として、ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルよりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有させる。
(1B)両者の液晶配向剤の重合体成分を同じとする場合に、架橋剤の配合割合を他方の液晶配向剤よりも少なくする。
(1C)マレイミド系重合体とポリアミック酸とのブレンド系の液晶配向剤において、ポリアミック酸の含有割合を多くする。
【0084】
一方、分割露光される側の液晶配向膜が、分割露光することによって配向膜の比抵抗が上昇する膜組成の場合には、分割露光されない配向膜を形成するために用いる液晶配向剤を、高抵抗系の配向膜を形成可能な膜組成とする。こうした膜組成の好ましい例としては、下記(2A)~(2C)が挙げられる。
(2A)重合体成分として、ポリイミド、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン及び(メタ)アクリル系重合体よりなる群から選択される少なくとも一種の重合体を含有させる。
(2B)両者の液晶配向剤の重合体成分を同じとする場合に、架橋剤の配合割合を他方の液晶配向剤よりも多くする。
(2C)マレイミド系重合体とポリアミック酸とのブレンド系の液晶配向剤において、ポリアミック酸の含有割合を少なくする。
【0085】
本実施形態によれば、露光が施された第1配向膜22と、露光が施されていない第2配向膜23とを異種配向膜とすることにより、両者の電気的物性を近付けることができる。これにより、液晶配向膜によって規定されるプレチルト角を第1配向膜22と第2配向膜23とで異ならせた場合にも、液晶セルを基板法線方向にみたときの電気的対称を保持することができ、ひいてはフリッカーの発生を抑制することができる。
【0086】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について第1~第5実施形態との相違点を中心に説明する。上記第1実施形態では、第1配向膜22及び第2配向膜23のうち一方を分割露光された液晶配向膜とし、他方を分割露光されていない液晶配向膜とした。これに対し、第6実施形態では、第1配向膜22及び第2配向膜23の両方が分割露光されている点で第1実施形態と相違する。
【0087】
図5及び図6を用いて、本実施形態において第1基板11及び第2基板12上にそれぞれ形成された塗膜に対して行う光配向処理について説明する。
【0088】
液晶表示装置10の各画素30は、図5(a)に示すように、液晶分子35の配向方位が互いに異なる複数の配向領域が光配向処理により形成されている。なお、図5(a)中、円錐体は液晶分子35を表し、円錐体の頂点側が第1基板11側、円錐体の底面側が第2基板12側を表す。図5(a)は、液晶表示装置10を第2基板12側から見た図である。
【0089】
各画素30には4つの配向領域が形成されており、それぞれの配向領域が、第1ドメイン31、第2ドメイン32、第3ドメイン33、第4ドメイン34となっている(図5(a)参照)。これら第1~第4ドメイン31~34は、1画素内において、画素30の長手方向(図5のY方向)に並べて配置されている。第1~第4ドメイン31~34において、液晶分子35の配向方位は、画素30の短手方向(図5のX方向)を0度としたとき、第1~第4ドメイン31~34のうち任意の2つのドメインの配向方位の差が90度の整数倍に略等しくなっている。
【0090】
液晶表示装置10における液晶分子35の配向方位は、第1ドメイン31では実質的に45度、第2ドメイン32では実質的に135度、第3ドメイン33では実質的に225度、第4ドメイン34では実質的に315度である。各ドメイン31~34は、図5(a)に示すように、1つの画素内において、第4ドメイン34、第2ドメイン32、第3ドメイン33、第1ドメイン31の順に画素30の長手方向に並べて配置されている。信号線36で分割される2つの領域のうち、一方の領域に属するドメイン(第4ドメイン34及び第2ドメイン32)と、他方の領域に属するドメイン(第3ドメイン33及び第1ドメイン31)では、液晶分子35の配向方位が互いに180度異なっている。
【0091】
図5(b)及び図5(c)は、1つの画素30の各基板におけるチルト方位を模式的に示した図である。図5中、(b)は第1基板11を表し、(c)は第2基板12を表す。図中の矢印37はチルト方位を示している。図6中の矢印41は、基板上の露光方位を示している。
【0092】
各画素30の光透過領域(画素領域)は、信号線36により分割される2つの領域の一方については、第1配向膜22に配向露光が行われており、他方については、第2配向膜23に配向露光が行われている。本実施形態では、第1配向膜22の配向処理では、図6(a)に示すように、第1~第4ドメイン31~34のうち、第4ドメイン34及び第2ドメイン32に属する第1配向膜22に対し、液晶分子35の配向方位に対応する方向に偏光放射線を照射する。ここでは、隣接する2つのドメイン(第4ドメイン34及び第2ドメイン32)の互いの露光方位が反平行となるように露光する。第3ドメイン33及び第1ドメイン31に属する第1配向膜22に対しては放射線を照射しない。
【0093】
第2配向膜23の配向処理では、図6(b)に示すように、第1~第4ドメイン31~34のうち、第3ドメイン33及び第1ドメイン31に属する第2配向膜23に対して、液晶分子35の配向方位に対応する方向に偏光放射線を照射する。ここでは、隣接する2つのドメイン(第3ドメイン33及び第1ドメイン31)の互いの露光方位が反平行となるように露光する。第4ドメイン34及び第2ドメイン32に属する第2配向膜23に対しては放射線を照射しない。
【0094】
液晶配向膜に対する光照射の際には、第1~第4ドメイン31~34のそれぞれにおける露光方位を異ならせている。こうした配向処理により、一画素内の複数のドメインのうちの一部(本実施形態では、第4ドメイン34及び第2ドメイン32)では、図7(a)に示すように、第1配向膜22により規定されるプレチルト角θ1が90度未満であって、かつ第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2が実質的に90度となっている。残りのドメイン(本実施形態では、第3ドメイン33及び第1ドメイン31)では、図7(b)に示すように、第1配向膜22により規定されるプレチルト角θ1が実質的に90度であって、かつ第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2が90度未満となっている。
【0095】
配向露光された液晶配向膜によって規定されるプレチルト角は、配向露光されていない液晶配向膜によって規定されるプレチルト角よりも小さければよい。液晶分子35の応答遅れを抑制する観点から、好ましくは89.0度以下であり、より好ましくは88.5度以下であり、さらに好ましくは88.0度以下である。また、液晶表示装置10のコントラストの低下を抑制する観点から、配向露光された液晶配向膜によって規定されるプレチルト角は、好ましくは81.0度以上であり、より好ましくは83.0度以上であり、さらに好ましくは84.0度以上である。
【0096】
第1基板11及び第2基板12に対する光配向処理は、塗膜上での露光方位が互いに異なる複数の走査工程により行われる。走査工程の一例としては、まず、第1配向膜22のうち、各画素の第4ドメイン34に対応する領域44に対して1回目の露光を行う。ここでは、光源(図示略)に対する第1基板11の相対的な移動方向Pと、光照射方向とを反平行とし、基板面での露光方位41が移動方向Pに対して-45度(=315度)となるように、基板面に放射線を照射する。このとき、第1~第3ドメイン31~33については、遮光部材により遮光する。
【0097】
続いて、第1配向膜22のうち、第2ドメイン32に対応する領域に対して2回目の露光を行う。2回目の露光は、基板面での露光方位41が異なる以外は1回目の露光と同じ操作を行う。すなわち、移動方向Pと光照射方向とを反平行とし、基板面での露光方位41が移動方向Pに対して+135度となるように、基板面に放射線を照射する。このとき、第1,第3,第4ドメイン31,33,34については遮光部材により遮光する。第1配向膜22のうち第1ドメイン31及び第3ドメイン33に属する領域に対しては露光を行わない。
【0098】
続いて、第2配向膜23に対して3回目の露光を行う。ここでは、第2配向膜23のうち、第3ドメイン33に対応する領域45に対して3回目の露光を行う。3回目の露光は、基板面での露光方位41が異なる以外は1回目の露光と同じ操作を行う。具体的には、移動方向Pと光照射方向とを反平行とし、基板面での露光方位41が移動方向Pに対して+45度となるように、基板面に放射線を照射する。このとき、他のドメインについては遮光部材により遮光する。同様に、第1ドメイン31に対して4回目の露光を行い、基板面での露光方位41が-135(=225度)度となるように、基板面に放射線を照射する。第2配向膜23のうち第4ドメイン34及び第2ドメイン32に属する領域に対しは露光を行わない。
【0099】
この液晶表示モードでは、一対の基板に対し、一画素内に形成される配向領域の数に対応する回数(本実施形態では合計4回)のスキャン露光を行えばよい。したがって、露光回数をできるだけ少なくしながら、第1基板11と第2基板12とでプレチルト角が互いに異なる液晶表示装置10を得ることができる。こうした配向処理により、液晶表示装置10において複数の画素30は、画素30の短手方向Xにみて、第1~第4ドメイン31~34のそれぞれが移動方向Pに沿って一列に並ぶように配置される。なお、第1~第4ドメイン31~34に対してスキャン露光を行う順序は上記に限定されない。
【0100】
本実施形態の液晶表示装置10によれば、液晶配向膜の配向処理のための露光回数を低減することができ、生産におけるスループットを向上させることができる。また、1画素内の配向分割の境界部が1箇所のみであるため、基板を貼り合わせる際に基板の位置ずれ(例えば、3μm程度のずれ)が生じた場合にも、その位置ずれに起因する表示不良の発生を抑制することができる。
【0101】
また、液晶表示装置10では、1画素内の4つの配向領域のうち、2つの配向領域については第1配向膜22に配向露光が施されており、残りの2つの配向領域については第2配向膜23に配向露光が施されている。すなわち、各画素30は、1画素内の非対称性の向きが互いに逆方向になる領域を有している。この場合、第1基板11側を露光した配向領域と、第2基板12側を露光した配向領域とでは互いに逆相の波形でフリッカーを発生することとなり、その結果、露光回数の低減を図りながら、表示品位を良化することができる。また、画素30の画素領域において図10~13のように両基板で配向を規定することにより、液晶応答時の残像や、パネルへの外部応力によって生じる配向乱れを軽減することができる。
【0102】
上記第6実施形態において、第1配向膜22及び第2配向膜23を形成するために用いる液晶配向剤の組成は特に限定されない。したがって、マレイミド系重合体を用いて第1配向膜22及び第2配向膜23を形成する構成に代えて、マレイミド系重合体とは異なる重合体を用いて第1配向膜22及び第2配向膜23を形成してもよい。当該重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
【0103】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。本実施形態では、光配向性基を側鎖に有する重合体(以下、「感光性重合体」ともいう。)を用いて光配向膜を形成するとともに、当該感光性重合体が側鎖に有する光配向性基の含有量(感光性側鎖含有量)を1.1mmol/g未満とすることにより、フリッカーの発生の抑制とDCズレの抑制とを図っている。なお、液晶表示装置の構成については、上記実施形態の説明が適用される。
【0104】
感光性重合体の主鎖は、液晶との親和性や機械的強度等の観点から、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、マレイミド系重合体、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン及び(メタ)アクリル系重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。これらのうち、フリッカー発生の抑制及びDCズレの抑制の改善効果が高い点で、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル及びマレイミド系重合体よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。感光性重合体が有する光配向性基の具体例については、上記の説明が適用される。
【0105】
感光性重合体の感光性側鎖含有量は、液晶表示装置におけるフリッカーの発生の抑制及びDCズレの抑制の改善効果をより高くする観点から、1.0mmol/g以下であることが好ましく、0.95mmol/g以下であることがより好ましい。また、感光性重合体の感光性側鎖含有量は、光照射により塗膜に対し所望のプレチルト角特性を付与する観点から、0.1mmol/g以上であることが好ましく、0.2mmol/g以上であることがより好ましい。
【0106】
なお、液晶配向剤は、重合体成分として感光性重合体のみを含んでいてもよいし、感光性重合体とは異なる重合体(すなわち、光配向性基を側鎖に有しない重合体)を感光性重合体と共に含有していてもよい。感光性重合体とは異なる重合体としては、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、マレイミド系重合体、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン及び(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。これらのうち、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル及びポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。液晶配向剤における感光性重合体の含有割合は、重合体成分の全量に対して、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。感光性重合体としては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0107】
ここで、DCズレは、光配向処理された基板と対向基板との電位差により発生し、DCズレにより表示面にフリッカーが発生する。片基板への光配向処理による電位差の発生には複合的な要因が考えられるが、1つの要因として、感光性側鎖含有量に比例して、光配向処理による配向膜表面近傍の物性が変化し、DCズレに影響を及ぼしていることが考えられる。こうした点に着目し、感光性重合体の感光性側鎖含有量を上記範囲とすることにより、生産におけるスループットを向上させながらDCズレを抑制することができる。
【0108】
(他の実施形態)
本開示は上記実施形態に限定されず、例えば以下のように実施されてもよい。
【0109】
上記第2~第4実施形態において、マレイミド系重合体を用いて第1配向膜22及び第2配向膜23を形成する代わりに、マレイミド系重合体とは異なる重合体を用いて第1配向膜22及び第2配向膜23を形成してもよい。当該重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、(メタ)アクリル系重合体等が挙げられる。
【0110】
上記第1~第5実施形態の各実施形態では、配向膜に対する露光態様の相違に起因する配向膜の電気物性の非対称性を軽減するための手段として、(1)マレイミド系重合体を用いて液晶配向膜を形成する、(2)液晶配向膜を形成する際の加熱温度を第1配向膜22と第2配向膜23とで互いに異ならせる、(3)液晶配向膜を形成する際の加熱時間を第1配向膜22と第2配向膜23とで互いに異ならせる、(4)液晶配向膜の膜厚を第1配向膜22と第2配向膜23とで互いに異ならせる、(5)液晶配向膜の膜組成を第1配向膜22と第2配向膜23とで互いに異ならせる、のいずれかを用いたが、これら(1)~(5)の少なくとも2つ以上を組み合わせてもよい。例えば、液晶配向膜を形成する際の加熱温度を、分割露光されない液晶配向膜と分割露光される液晶配向膜とで異なる温度とするとともに、液晶配向膜を形成する際の加熱時間を、分割露光されない液晶配向膜と分割露光される液晶配向膜とで異なる時間としてもよい。あるいは、液晶配向膜の膜組成及び膜厚の両方を、第1配向膜22と第2配向膜23とで異ならせる構成としてもよい。
【0111】
・上記第1~第5実施形態において、液晶分子35の配向方位は図2に示す態様に限定されない。液晶分子35の配向方位を、例えば図8及び図9に示す態様としてもよい。なお、図8及び図9中、(a)は1画素内での液晶分子35の配向方位を示し、(b)はTFT基板側のチルト方位を示し、(c)はCF基板側のチルト方位を示す。符号37は、電圧オフ時におけるチルト方位を表す。
【0112】
図8に示す例では、画素30には、画素30の長手方向に沿って順に、第4ドメイン34、第1ドメイン31、第3ドメイン33、第2ドメイン32が形成されている。この図8の例では、信号線36により分割される2つの領域のうち、一方の領域を形成する2つのドメイン(第4ドメイン34と第1ドメイン31)と、他方の領域を形成する2つのドメイン(第3ドメイン33と第2ドメイン32)とではそれぞれ、液晶分子35の配向方位が互いに90度異なっている。このため、動画応答の場合に、配向方位の境界部における液晶配向方位の変形が小さく、液晶分子35の配向遅延が軽減され、動画表示性能を良化できる点で好適である。
【0113】
図9に示す例では、画素30の長手方向に沿って順に、第4ドメイン34、第1ドメイン31、第2ドメイン32、第3ドメイン33が形成されている。この図9の例では、隣接する2つのドメインにおける液晶分子35の配向方位がいずれも90度異なっている。このため、動画応答の場合に、液晶分子35の配向遅延をより軽減することができる。
【0114】
・上記第6実施形態において、液晶分子35の配向方位は図5に示す態様に限定されない。液晶分子35の配向方位を、例えば図10図13に示す態様としてもよい。なお、図10図13中の(a)、(b)及び(c)については図8、9と同じである。
【0115】
図10に示す例では、画素30の長手方向に沿って順に、第4ドメイン34、第1ドメイン31、第3ドメイン33、第2ドメイン32が形成されている。この図10の例でも図8と同様に、動画応答の場合に液晶分子35の配向遅延を軽減する効果が高く好適である。図11に示す例では、図9の例と同様に、隣接する2つのドメインにおける液晶分子35の配向方位がいずれも90度異なっていることにより、動画応答の場合に液晶分子35の配向遅延をより軽減することができる。また、図10~13の例では、TFT基板及びCF基板のそれぞれにおいて、2回の露光の際の露光方位の違いが90度であるため、露光を行う際に基板を反転させる必要がなく、生産におけるスループットの向上に寄与する。特に図13に示す例では、4つのドメインが、TFT基板側の画素領域に、チルト配向、90度配向、チルト配向、90度配向の順に並べられており、CF基板側の画素領域に、90度配向、チルト配向、90度配向、チルト配向の順に並べられている。このため、第1基板11及び第2基板12の両方において、全ドメインを規定する境界が存在しており、液晶応答時の残像や、パネルへの外部応力によって生じる配向乱れを一層軽減することができる。
【0116】
・上記第1~第5実施形態では、第1配向膜22により規定されるプレチルト角θ1を90度未満とし、第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2を実質的に90度としたが、第2配向膜23により規定されるプレチルト角θ2を90度未満とし、第1配向膜22により規定されるプレチルト角θ1を実質的に90度としてもよい。
【0117】
・上記第1~第7実施形態では、画素電極15として、開口部(スリット)が形成されていないベタ電極を用いる構成について説明したが、スリットが形成された電極を用いてもよい。スリットの形状は特に限定されず、例えば図14に示すように、画素領域の面全体に、画素30の各辺に対し斜め方向に延びるスリット38が形成されていてもよいし、あるいは、画素領域の一部(例えば、隣接する2つのドメインの境界部や、各ドメインにおいて画素30の短手方向Xにおける一方の外縁部分)にのみスリットが形成されていてもよい。画素電極15をスリット電極とする場合、スリット38の長手方向と、スリット38が位置する配向領域における液晶分子35の配向方位をTFT基板に射影した方向とが略平行となるようにすることが好ましい。液晶配向膜に対する光配向処理を第1配向膜22及び第2配向膜23のうち一方のみに行う構成においては、スリット38で発生する斜め電界によって液晶配向の安定化を図ることができる。スリット電極における電極部の長さ(すなわち電極幅)及び開口部の長さは、それぞれ液晶セル厚と同程度とすることが好ましい。具体的には、電極部の長さ及び開口部の長さ(すなわち、スリット幅)を、2~4μmとすることが好ましい。また更に、液晶表示装置の光の透過率を高くする観点から、液晶層の厚さ(セルギャップ、d)に対し、電極幅(L)をL<1.1d、かつスリット幅(S)をS<dとすることが好ましく、L<d、かつS<dとすることがより好ましく、L<d、かつ(d/2)<S<dとすることが更に好ましい。
【0118】
ここで、セルギャップ(d)の変更に伴い、液晶表示装置の透過率の観点から好ましいスリット電極の電極幅(L)、スリット幅(S)が変化する要因としては、スリット構造により電極間で発生する斜め電界が液晶の駆動に影響を及ぼすことが挙げられる。この点に着目し、スリット電極の電極幅L、スリット幅S、及びセルギャップdを、上記関係を満たすように設定することにより、スリット電極を有する液晶表示装置において好適な斜め電界を得ることができ、透過率特性に優れた液晶表示装置を得ることができる。
【0119】
・光配向法による配向分割により製造される液晶表示装置において、一方の基板側のプレチルト角を90度未満とし、他方の基板側のプレチルト角を実質的に90度とする構成とし、液晶層の厚さ(d)に対し、電極幅(L)をL<1.1d、かつスリット幅(S)をS<dとすることにより、透過率の高い液晶表示装置を得ることができる。
【0120】
・上記第1~第7実施形態において、液晶層13にカイラル剤を含有させてもよい。負の誘電率異方性を有する液晶にカイラル剤を添加して液晶層13を形成することにより、画素領域における暗線の発生を抑制でき、透過率特性が改善された液晶表示装置を得ることができる。カイラル剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。使用するカイラル剤としては、例えばS-811、R-811、CB-15(以上、メルク社製)等が挙げられる。カイラル剤の添加量は、負の誘電率異方性を有する液晶の全量に対し、例えば0.1~10質量%である。液晶層13にカイラル剤が含有されることにより、液晶層13中の液晶分子は、電圧が印加された状態において第1基板11と第2基板12との間で捻じれ配向する。このとき、液晶分子の捻じれ方向が複数の液晶ドメイン間で同じ方向になるように、各液晶ドメインの露光方位が設定されている。液晶層13に電圧が印加された状態での液晶分子の捻じれ角は、60~120度の範囲に設定されていることが好ましい。
【実施例
【0121】
以下、実施例に基づき実施形態を説明するが、以下の実施例によって本開示が限定的に解釈されるものではない。
【0122】
以下の例において、重合体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、重合体溶液の溶液粘度及びエポキシ当量、並びにポリイミドのイミド化率は以下の方法により測定した。以下の実施例で用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。
【0123】
[重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn]
重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、以下の条件におけるGPCにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー(株)製、TSKgelGRCXLII
溶剤:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:68kgf/cm
[重合体溶液の溶液粘度]
重合体溶液の溶液粘度(mPa・s)は、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
[イミド化率]
ポリイミドを含有する溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で十分に減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、テトラメチルシランを基準物質として室温でH-NMRを測定した。得られたH-NMRスペクトルから、下記数式(EX-1)を用いてイミド化率を求めた。
イミド化率(%)=(1-A/A×α)×100 …(EX-1)
(数式(EX-1)中、Aは化学シフト10ppm付近に現れるNH基のプロトン由来のピーク面積であり、Aはその他のプロトン由来のピーク面積であり、αは重合体の前駆体(ポリアミック酸)におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。)
[エポキシ当量]
エポキシ当量は、JIS C 2105に記載の塩酸-メチルエチルケトン法により測定した。
【0124】
・重合体の合成
[合成例1]
窒素下、100mL二口フラスコに、下記(MI-1)で表される化合物5.00g(8.6mmol)、4-ビニル安息香酸0.64g(4.3mmol)、4-(2,5-ジオキソ-3-ピロリン-1-イル)安息香酸2.82g(13.0mmol)、及び4-(グリシジルオキシメチル)スチレン3.29g(17.2mmol)、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.31g(1.3mmol)、連鎖移動剤として2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン0.52g(2.2mmol)、並びに溶媒としてテトラヒドロフラン25mlを加え、70℃で5時間重合した。n-ヘキサンに再沈殿した後、沈殿物を濾過し、室温で8時間真空乾燥することにより、スチレン-マレイミド系重合体(これを「重合体(PM-1)」とする。)を得た。GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは30000、分子量分布Mw/Mnは2であった。重合体(PM-1)の感光性側鎖量は0.73mmol/gである。
【化4】
【0125】
[合成例2]
1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物13.8g(70.0mmol)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル16.3g(76.9mmol)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)170gに溶解し、25℃で3時間反応を行うことにより、ポリアミック酸を10質量%含有する溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈殿させた。得られた沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥させることにより、ポリアミック酸(これを「重合体(PAA-1)」とする。)を得た。
【0126】
[合成例3]
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物21.81g(0.0973モル)、5ξ-コレスタン-3-イル 2,4-ジアミノフェニルエーテル19.29g(0.0390モル)、3,5-ジアミノ安息香酸8.90g(0.0585モル)をN-メチル-2-ピロリドン200gに溶解し、60℃で5時間反応させた。この重合溶液の粘度を測定したところ、1450mPa・sであった。次いで、この溶液にN-メチル-2-ピロリドン250gを加えてしばらく攪拌した後、ピリジン11.55g及び無水酢酸14.90gを添加し、110℃で4時間脱水閉環させた。その後、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、イミド化率69%のポリイミド(これを「重合体(PI-1)」とする。)を37.5g得た。
【0127】
[合成例4]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS-1)を粘調な透明液体として得
た。得られたポリオルガノシロキサン(EPS-1)の重量平均分子量Mwは2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。
次いで、300mLの三口フラスコに、ポリオルガノシロキサン(EPS-1)30.1g、メチルイソブチルケトン140g、下記式(A-1)で表される桂皮酸誘導体(A-1)31.9g(ポリオルガノシロキサン(EPS-1)が有するケイ素原子に対して50モル%に相当する。)、ステアリン酸4.60g(ポリオルガノシロキサン(EPS-1)が有するケイ素原子に対して10モル%に相当する。)、3,5-ジニトロ安息香酸0.0686g(ポリオルガノシロキサン(EPS-1)が有するケイ素原子に対して0.2モル%に相当する。)及びテトラブチルアンモニウムブロミド3.00gを仕込み、80℃で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得た。得られた溶液を5回水洗した後、溶媒を留去することにより、感放射線性ポリオルガノシロキサンとして、重量平均分子量(Mw)が12,600(Mw/Mn=1.42)の重合体(S-1)の白色粉末55.6gを得た。重合体(S-1)の感光性側鎖量は1.24mmol/gである。
【化5】
【0128】
[合成例5]
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物18.75g(0.0836モル)、ジアミン化合物としてp-フェニレンジアミン7.359g(0.0681モル)、及び上記式(p3)で表される3,5-ジアミノ安息香酸=5ξ-コレスタン-3-イル 8.895g(0.0170モル)をN-メチル-2-ピロリドン140gに溶解し、60℃で5時間反応させた。この重合溶液の粘度を測定したところ、2000mPa・sであった。次いで、この溶液にN-メチル-2-ピロリドン325gを加えてしばらく攪拌した後、ピリジン6.61g及び無水酢酸8.54gを添加し、110℃で4時間脱水閉環させた。その後、反応溶液を大過剰のメチルアルコール中に注いで反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、イミド化率51%のポリイミド(これを「重合体(PI-2)」とする。)を26.6g得た。
【0129】
[合成例6]
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物27.07g(0.121モル)、6-{[((2E)-3-{4-[(4-(3,3,3-トリフルオロプロポキシ)ベンゾイル)オキシ]フェニル}プロパ-2-エノイル)オキシ]}ヘキシル-3,5-ジアミノベンゾエート66.79g(0.109モル)、5ξ-コレスタン-3-イル 2,4-ジアミノフェニルエーテル2.99g(0.00604モル)、及び3,5-ジアミノ安息香酸=5ξ-コレスタン-3-イル 3.16g(0.00604モル)をN-メチル-2-ピロリドン185.7gに溶解し、60℃で24時間反応させた。この重合溶液の粘度を測定したところ、2100mPa・sであった。次いで、反応混合物を大過剰のメタノール中に注ぎ、反応生成物を沈澱させた。沈殿物をメタノールで洗浄し、減圧下40℃で15時間乾燥することにより、ポリアミック酸(これを「重合体(PAA-2)」とする。)を68g得た。重合体(PM-1)の感光性側鎖量は1.12mmol/gである。
【0130】
[合成例7]
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物4.21g(0.0188モル)、下記式(DA-1)で表される化合物9.23g(0.0158モル)、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル1.56g(0.0030モル)をN-メチル-2-ピロリドン135gに溶解し、60℃で6時間反応させた。この重合溶液の粘度を測定したところ、19mPa・sであった。ポリアミック酸(これを「重合体(PAA-3)」とする。)を10質量%含有する溶液150gを得た。重合体(PAA-3)の感光性側鎖量は1.05mmol/gである。
【化6】
【0131】
[合成例8]
2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物4.27g(0.0190モル)、上記式(DA-1)で表される化合物7.43g(0.0127モル)、3,5-ジアミノ安息香酸コレスタニル3.30g(0.0063モル)をN-メチル-2-ピロリドン135gに溶解し、60℃で6時間反応させた。この重合溶液の粘度を測定したところ、21mPa・sであった。ポリアミック酸(これを「重合体(PAA-4)」とする。)を10質量%含有する溶液150gを得た。重合体(PAA-4)の感光性側鎖量は0.85mmol/gである。
【0132】
[実施例1]
1.液晶配向剤の調製
重合体(PM-1)10質量部、及び重合体(PAA-1)100質量部に、溶剤としてNMP及びブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP/BC=50/50(質量比)、固形分濃度が4.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AL-1)を調製した。
【0133】
2.液晶表示装置の製造
図1に対応する液晶表示装置10を製造した。まず、TFT基板及びCF基板を準備した。TFT基板の画素電極及びCF基板の対向電極としては、スリットが形成されていないベタ電極を用いた。TFT基板及びCF基板の各電極配置面に液晶配向剤(AL-1)をスピンキャスト法により塗布した。これを80℃で1分間プレベークを行った後、230℃で40分間ポストベークを行い、最終的な膜厚が120nmになるようにした。続いて、TFT基板に形成した塗膜(液晶配向膜)に対し、スキャン露光を行った。スキャン露光は、図4に従い、液晶分子の配向方位が互いに異なる4つのドメインが1画素内に形成されるように、313nmの直線偏光を20mJ/cmの強度により合計4回行った。一方、液晶配向剤(AL-1)を用いてCF基板上に形成した液晶配向膜に対しては露光を行わなかった。
【0134】
続いて、TFT基板の液晶配向膜の形成面に、負の誘電異率方性を有するネマチック液晶を滴下し、CF基板の外縁部に、シール材として熱硬化性エポキシ樹脂を配置した。その後、TFT基板、CF基板の配向膜面が互いに内側になるようにして貼り合わせた。続いて、130℃で1時間加熱してエポキシ樹脂を硬化させ、液晶セルを得た。得られた液晶セルのプレチルト角は、TFT基板側が88.0度、CF基板側が90.0度であった。なお、プレチルト角は、シンテック社製のOPTI-Proを使用して測定した値である(以下同じ)。
【0135】
3.フリッカー発生の評価
上記2.で製造した液晶セルを用いて、フリッカー(ちらつき)の発生度合いを評価した。評価は、周波数60Hz、印加電圧3Vの矩形波電界を25℃において液晶セルに印加した際のちらつきを目視により観察することにより行った。その結果、実施例1の液晶表示装置ではフリッカーが視認されず、表示特性が良好であった。
【0136】
4.DCズレの評価
上記2.で作製した液晶セルに、周波数60Hz、印加電圧10Vの矩形波電界を25℃で72時間印加した。その後、周波数60Hz、印加電圧3Vの矩形波電圧で駆動した状態でDC電圧を印加し、フリッカーが確認できなくなるDC電圧をセル内のDCズレとして評価した。DCズレが400mV未満であった場合を「良好」、DCズレが400mV以上500mV未満であった場合を「可」、DCズレが500mV以上であった場合を「不良」と判断した。その結果、この実施例は、DCズレが小さく、「良好」の評価であった。
【0137】
なお、実施例1において画素電極としてスリット有りの電極(スリット電極)を用いた場合にも、実施例1と同様の効果が確認された。スリット電極としては、隣り合うスリット間の電極幅(L)、スリット幅(S)、セルギャップ(d)が、L=3.0μm、S=3.0μm、d=3.2μmであるものを用いた。
【0138】
[比較例1]
CF基板に形成した液晶配向膜に対して、図15に示す配向処理をスキャン露光により実施した点以外は、実施例1と同様にして液晶配向剤(AL-1)を用いて液晶配向膜をTFT基板及びCF基板上に形成し、図1に示す液晶表示装置を製造した。図15中、(a)は電圧印加時における各配向領域での液晶分子の配向方位を表し、(b)はTFT基板を配向膜側からみたときの露光方位を表し、(c)はCF基板を配向膜形成面とは反対側(すなわちCF基板の裏面側)からみたときの露光方位を表す。この比較例1では、TFT基板に対して4回のスキャン露光、CF基板に対して4回のスキャン露光の合計8回のスキャン露光を行った。また、得られた液晶セルを用いて、実施例1と同様にフリッカーの発生及びDCズレについて評価を行った。
【0139】
この比較例1では、液晶表示装置を得るためのスキャン露光を合計8回行う必要があり、実施例1に比べて、生産におけるスループットが劣る。また、一対の基板を貼り合わせる際に位置ずれ(例えば3μm程度)が生じた場合、比較例1では、配向分割の境界部で発生する配向不良により表示不良が生じる。これに対し、実施例1では、基板を貼り合わせる際に基板間で位置ずれが生じた場合にも、その位置ずれに起因する表示不良を抑制することができる。さらに、比較例1の液晶表示装置は、実施例1に比べてフリッカーが発生しやすく、表示品位が劣っていた。また、DCズレは「不良」の評価であった。
【0140】
[比較例2]
特開2011-158835号公報の段落0080の記載(実施例1)に従い、重合体成分としてポリアミック酸(光配向性基を側鎖に有するポリアミック酸(PA-1)、光配向性基を側鎖に有しないポリアミック酸(OPA-2))を用いて液晶配向剤を調製した。このポリアミック酸系の液晶配向剤を用いた以外は上記実施例1と同様にして液晶セルを製造するとともに、得られた液晶セルを用いてフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。その結果、この比較例2の液晶表示装置ではフリッカーが明確に確認された。また、DCズレは「不良」の評価であった。比較例2で用いたポリアミック酸(PA-1)の感光性側鎖量は1.18mmol/gである。
【0141】
[比較例3]
液晶配向膜(第1配向膜及び第2配向膜)を形成する液晶配向剤の組成を変更した点以外は実施例1と同様にして液晶セルを製造した。また、得られた液晶セルを用いてフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。比較例3では、液晶配向剤として(AL-1)に代えて、以下に示す(AF-1)を使用した。
・液晶配向剤(AF-1)の調製
重合体(PAA-1)30質量部、重合体(PI-1)70質量部に対し、重合体(S-1)10質量部、NMP及びブチルセロソルブ(BC)を、溶媒組成がNMP:BC=45:55(質量比)となるように加え、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AF-1)を調製した。
実施例1の液晶表示装置ではフリッカーが視認されなかったのに対し、比較例3の液晶表示装置ではフリッカーが明確に確認され、表示品位が劣っていた。また、DCズレは「不良」の評価であった。
【0142】
[実施例2]
TFT基板側の液晶配向膜を、液晶配向剤(AF-1)を用いて、ポストベーク温度230℃、ポストベーク時間40分の条件により膜厚120nmとなるように作製し、CF基板側の液晶配向膜を、以下に示す液晶配向剤(AF-2)を用いて、ポストベーク温度200℃、ポストベーク時間40分の条件により膜厚120nmとなるように作製した点以外は実施例1と同様にして液晶セルを製造した。また、得られた液晶セルを用いて、実施例1と同様にフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。
・液晶配向剤(AF-2)の調製
重合体(PI-2)に対し、NMP及びブチルセロソルブ(BC)を、溶媒組成がNMP:BC=45:55(質量比)となるように加え、固形分濃度が3.5質量%の溶液とした。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過することにより液晶配向剤(AF-2)を調製した。
比較例2の液晶表示装置ではフリッカーが視認されたのに対し、実施例2の液晶表示装置ではフリッカーがほぼ視認されないレベルになり、表示品位を良化させることができた。DCズレの評価については「可」であった。また、実施例2において画素電極としてスリット有りの電極を用いた場合にも、実施例2と同様の効果が確認された。
【0143】
[実施例3]
TFT基板側の液晶配向膜を、液晶配向剤(AF-1)を用いて、ポストベーク温度230℃、ポストベーク時間40分の条件により膜厚120nmとなるように作製し、CF基板側の液晶配向膜を、液晶配向剤(AF-1)を用いて、ポストベーク温度200℃、ポストベーク時間40分の条件により膜厚120nmとなるように作製した点以外は実施例1と同様にして液晶セルを製造した。また、得られた液晶セルを用いて、実施例1と同様にしてフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。その結果、実施例3の液晶表示装置ではフリッカーがほぼ視認されないレベルになり、表示品位を良化させることができた。また、DCズレの評価については「可」であった。
【0144】
なお、実施例3において画素電極としてスリット有りの電極を用いた場合にも、実施例3と同様の効果が確認された。
【0145】
[実施例4]
TFT基板側の液晶配向膜を、液晶配向剤(AF-1)を用いて、ポストベーク温度230℃、ポストベーク時間40分の条件により膜厚120nmとなるように作製し、CF基板側の液晶配向膜を、液晶配向剤(AF-1)を用いて、ポストベーク温度230℃、ポストベーク時間20分の条件により膜厚120nmとなるように作製した点以外は実施例1と同様にして液晶セルを製造した。また、得られた液晶セルを用いて、実施例1と同様にしてフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。その結果、実施例4の液晶表示装置ではフリッカーがほぼ視認されないレベルになり、表示品位を良化させることができた。また、DCズレの評価については「可」であった。
【0146】
なお、実施例4において画素電極としてスリット有りの電極を用いた場合にも、実施例4と同様の効果が確認された。
【0147】
[実施例5]
TFT基板側の液晶配向膜を、液晶配向剤(AF-1)を用いて、ポストベーク温度230℃、ポストベーク時間40分の条件により膜厚120nmとなるように作製し、CF基板側の液晶配向膜を、液晶配向剤(AF-1)を用いて、ポストベーク温度230℃、ポストベーク時間40分の条件により膜厚80nmとなるように作製した点以外は実施例1と同様にして液晶セルを製造した。また、得られた液晶セルを用いて、実施例1と同様にしてフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。その結果、実施例5の液晶表示装置ではフリッカーがほぼ視認されないレベルになり、表示品位を良化させることができた。DCズレの評価は「可」であった。
【0148】
なお、実施例5において画素電極としてスリット有りの電極を用いた場合にも、実施例5と同様の効果が確認された。
【0149】
[実施例6]
TFT基板及びCF基板の液晶配向膜の作製を、液晶配向剤(AL-1)に代えて液晶配向剤(AF-1)を用いて行った点、並びに、TFT基板及びCF基板のそれぞれに形成した塗膜に対し、図6に示す露光方位のスキャン露光をそれぞれ2回ずつ行った点以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、上記第6実施形態に対応する液晶セルを製造した。
【0150】
実施例6では、液晶表示装置を得るためのスキャン露光の回数が合計4回で済む。このため、比較例1に比べて、生産におけるスループットが良化する。また、比較例1では1画素内の配向分割の境界部が3箇所であるのに対し、実施例6では1箇所であるため、基板を貼り合わせる際に基板の位置ずれ(例えば3μm程度)が生じた場合にも、その位置ずれに起因する表示不良を抑制することができる。また、補助容量線を画素中央に配置することにより、その1箇所の境界部を配線で隠すことができ、表示不良を更に抑制することができる。また、実施例6の液晶表示装置では、視認されるちらつきを大幅に抑制することができ、表示品位が良化した。これは、TFT基板側のプレチルト角が90度未満である2組のドメインと、CF基板側のプレチルト角が90度未満である2組のドメインとが互いに逆相の波形でフリッカーを発生するためと推測される。DCズレの評価については「可」であった。
【0151】
第1配向膜及び第2配向膜を液晶配向剤(AL-1)により作製した以外は実施例6と同様の操作及び評価を行ったところ、実施例6と同様の効果を確認できた。
さらに、液晶配向剤をポリアミック酸系の重合体組成物(液晶配向剤(AF-2)において重合体(PI-2)に代えて重合体(PAA-2)を含有する組成物)を用いて第1配向膜及び第2配向膜を作製し、実施例6と同様の操作及び評価を行ったところ、実施例6と同様の効果を確認できた。
【0152】
<感光性側鎖含有量の評価>
[実施例7]
1.液晶配向剤の調製
重合体として、上記合成例7で得たポリアミック酸(PAA-3)を含有する溶液、及び合成例2で得たポリアミック酸(PAA-1)を含有する溶液を、ポリアミック酸(PAA-3):ポリアミック酸(PAA-1)=20:80(質量比)になるように混合した。これに、γ-ブチロラクトン(BL)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:NMP:DEDG=30:20:50(質量比)、固形分濃度が3質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(AL-2)を調製した。
【0153】
2.液晶表示装置の製造及び評価
液晶配向剤(AL-2)を用いた以外は上記実施例1と同様にして液晶セルを製造するとともに、得られた液晶セルを用いてフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。その結果、実施例7の液晶表示装置ではフリッカーがほぼ視認されないレベルになり、表示品位を良化させることができた。また、DCズレは「良好」の評価であった。
【0154】
[実施例8]
1.液晶配向剤の調製
重合体として、上記合成例8で得たポリアミック酸(PAA-4)を含有する溶液、及び合成例2で得たポリアミック酸(PAA-1)を含有する溶液を、ポリアミック酸(PAA-4):ポリアミック酸(PAA-1)=20:80(質量比)になるように混合し、これにγ-ブチロラクトン(BL)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)及びジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)を加えて十分に撹拌し、溶媒組成がBL:NMP:DEDG=30:20:50(質量比)、固形分濃度が3質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いて濾過することにより、液晶配向剤(AL-3)を調製した。
【0155】
2.液晶表示装置の製造及び評価
液晶配向剤(AL-3)を用いた以外は上記実施例1と同様にして液晶セルを製造するとともに、得られた液晶セルを用いてフリッカーの発生度合い及びDCズレを評価した。その結果、実施例8の液晶表示装置ではフリッカーが視認されず、表示品位を良化させることができた。また、DCズレは「良好」の評価であった。
【0156】
感光性側鎖含有量が1.05mmol/gのポリアミック酸を用いた実施例7、及び感光性側鎖含有量が0.85mmol/gのポリアミック酸を用いた実施例8では、フリッカーの発生が抑制され、DCズレも少なかった。これに対し、重合に使用したモノマーの種類は重合体(PAA-3)及び重合体(PAA-4)と同じであるが、感光性側鎖含有量が1.18mmol/gと多いポリアミック酸(PA-1)を用いた比較例2では、フリッカーが明確に確認された。また、DCズレの評価も「不良」であった。
【0157】
<透過率の評価>
[実施例1、8、9及び比較例4~9]
上記実施例1の液晶表示装置において、画素電極をスリット電極とし、画素電極の電極幅(L)、スリット幅(S)及びセルギャップ(d)の各条件を下記表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を製造し、透過率に及ぼす影響を調べた。透過率については、LinkGlobal21社製のExpert LCDを用いてシミュレーションにより算出した。計算条件としては、液晶物性:Δε=3、Ne=1.6、No=1.5、セルギャップ:3.2μm又は2.9μm、プレチルト角:計測値(TFT基板側:88.0度、CF基板側:90.0度)を適用し、印加電圧6Vの結果から透過率特性を評価した。このとき、透過率が0.275未満の場合に透過率特性「△」、0.275以上0.280未満の場合に「○」、0.280以上の場合に「◎」と評価した。透過率の評価結果を下記表1に示す。
【0158】
【表1】
【0159】
表1に示すように、Lがdより小さく、かつSがdより小さい実施例1、9、10では、比較例4~9よりも透過率が高く、良好な透過率特性を示した。
【0160】
<カイラル剤添加の評価>
[実施例11]
1.液晶表示装置の製造
上記実施例1の液晶表示装置において、画素電極をスリット電極とし、画素電極の電極幅(L)を3.5μm、スリット幅(S)を2.5μm、セルギャップ(d)を3.2μmとした点、及び負の誘電異率方性を有するネマチック液晶にカイラル剤(製品名「S-811」、メルク社製)を添加したこと以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を製造した。このとき、カイラルピッチが12.8μmとなるようにカイラル剤の添加量を調整した。
2.透過率特性の評価
LinkGlobal21社製のExpert LCDを用いて、上記1.で製造した液晶表示装置の透過率をシミュレーションにより算出した。計算条件として、液晶物性:Δε=3、Δn=0.178、セルギャップ:3.2μm、プレチルト角:88.0°を適用し、印加電圧6Vの結果から透過率特性を評価した。透過率0.275未満の場合に透過率特性「△」、0.275以上0.280未満の場合に「○」、0.280以上の場合に「◎」と評価した。その結果を下記表2に示した。
【0161】
[比較例10]
上記実施例11の液晶表示装置において、負の誘電異率方性を有するネマチック液晶にカイラル剤を添加しなかったこと以外は実施例11と同様にして液晶表示装置を製造した。また、製造した液晶表示装置の透過率をシミュレーションにより算出した。計算条件として、液晶物性:Δε=3、Δn=0.100、セルギャップ:3.2μm、プレチルト角:88.0°を適用し、印加電圧6Vの結果から透過率特性を評価した。その結果を下記表2に示した。
【0162】
[実施例12]
上記実施例1の液晶表示装置(画素電極:ベタ電極)において、負の誘電異率方性を有するネマチック液晶にカイラル剤(製品名「S-811」、メルク社製)を添加したこと以外は実施例1と同様にして液晶表示装置を製造した。このとき、カイラルピッチが12.8μmとなるようにカイラル剤の添加量を調整した。また、製造した液晶表示装置の透過率をシミュレーションにより算出した。計算条件として、液晶物性:Δε=3、Δn=0.147、セルギャップ:3.2μm、プレチルト角:88.0°を適用し、印加電圧6Vの結果から透過率特性を評価した。その結果を下記表2に示した。
【0163】
[比較例11]
上記実施例12の液晶表示装置において、負の誘電異率方性を有するネマチック液晶にカイラル剤を添加しなかったこと以外は実施例12と同様にして液晶表示装置を製造した。また、製造した液晶表示装置の透過率をシミュレーションにより算出した。計算条件として、液晶物性:Δε=3、Δn=0.100、セルギャップ:3.2μm、プレチルト角:88.0°を適用し、印加電圧6Vの結果から透過率特性を評価した。その結果を下記表2に示した。
【0164】
【表2】
【0165】
表2に示すように、負の誘電率異方性を有する液晶にカイラル剤を添加した実施例11、12では、カイラル剤を添加しなかった比較例10、11に比べて、高い透過率を示した。これらの結果から、負の誘電率異方性を有する液晶にカイラル剤を添加することにより、透過率特性を優れたものとすることができることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0166】
10…液晶表示装置、11…第1基板、12…第2基板、13…液晶層、15…画素電極、19…対向電極、22…第1配向膜、23…第2配向膜、30…画素。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15