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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】分光測定器
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/02 20060101AFI20240528BHJP
   G01J 3/18 20060101ALI20240528BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01J3/02 C
G01J3/18
G01J1/02 K
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021529994
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025177
(87)【国際公開番号】W WO2021002286
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019125273
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】▲鶴▼谷 克敏
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-206967(JP,A)
【文献】特開昭62-050641(JP,A)
【文献】特開2016-114544(JP,A)
【文献】特開昭63-117234(JP,A)
【文献】特開2013-168512(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109187369(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00-3/52
G01J 1/02
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射部から入射した被測定光を回折させる回折手段と、
前記回折手段で回折された被測定光を受光する主センサと、
前記入射部から入射した光束のうち、前記主センサに到達しない光束の光路に配置されて該光束を受光する1個又は複数個の補助センサと、
前記補助センサの出力値に基づいて前記主センサの出力値を補正する補正手段と、
を備え
前記補正手段は、前記主センサの出力値から演算した受光強度値が、前記補助センサの出力値から演算した受光強度値と同じになるように、前記主センサの出力値を補正することを特徴とする分光測定器。
【請求項2】
入射部から入射した被測定光を回折させる回折手段と、
前記回折手段で回折された被測定光を受光する主センサと、
前記入射部から入射した光束のうち、前記主センサに到達しない光束の光路に配置されて該光束を受光する1個又は複数個の補助センサと、
前記補助センサの出力値に基づいて前記主センサの出力値を補正する補正手段と、
前記主センサの受光光量を調整するための受光光量調整部材と、
を備え、
前記受光光量調整部材の前方に前記補助センサが配置され、前記補正手段は、前記主センサと前記補助センサの出力値を同時に取得して、前記主センサの出力値を補正することを特徴とする分光測定器。
【請求項3】
前記補正手段は、前記主センサの出力値から演算した受光強度値が、前記補助センサの出力値から演算した受光強度値と同じになるように、前記主センサの出力値を補正する請求項に記載の分光測定器。
【請求項4】
前記主センサの受光光量を調整するための受光光量調整部材を備えている請求項1に記載の分光測定器。
【請求項5】
前記受光光量調整部材は、前記被測定光の光路に対して挿入退避可能に配置される減光部材である請求項2~4のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項6】
前記受光光量調整部材の前方に前記補助センサが配置され、前記補正手段は、前記主センサと前記補助センサの出力値を同時に取得して、前記主センサの出力値を補正する請求項4または5に記載の分光測定器。
【請求項7】
前記減光部材の後方に第1の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記減光部材の光路への挿入状態で前記主センサの出力値を取得し、光路からの退避状態で前記第1の補助センサの出力値を取得して、前記主センサの出力値を補正する請求項に記載の分光測定器。
【請求項8】
前記減光部材の前方に第2の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記主センサの出力値の取得時と前記第1の補助センサの出力値の取得時のそれぞれのタイミングで前記第2の補助センサの出力値を取得し、取得した前記第2の補助センサの出力値の比から時間的な光量変化率を算出し、算出された前記光量変化率に基づいて時間的な光量変化を補正する請求項に記載の分光測定器。
【請求項9】
前記受光光量調整部材の前方に第1の補助センサが、後方に第2の補助センサがそれぞれ配置され、
前記補正手段は、前記主センサ、第1の補助センサ及び第2の補助センサの出力値を同時に取得し、取得された前記第1の補助センサ及び第2の補助センサの出力値比の基準値からの変化率に基づいて、前記主センサの出力値を補正する請求項2~5のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項10】
前記減光部材の後方に第1の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記減光部材の光路への挿入状態で前記主センサの出力値と前記第1の補助センサの出力値を同時に取得し、前記減光部材の光路からの退避状態で前記第1の補助センサの出力値を取得し、取得された前記第1の補助センサのそれぞれの出力値の比に基づいて、前記主センサの出力値を補正する請求項に記載の分光測定器。
【請求項11】
前記減光部材の前方に第2の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記第1の補助センサの出力値の取得タイミングと同じタイミングで前記第2の補助センサの出力値を2回取得し、取得された前記第2の補助センサの2回の出力値の比から時間的な光量変化率を算出し、算出された前記光量変化率に基づいて時間的な光量変化を補正する請求項10に記載の分光測定器。
【請求項12】
前記補助センサは、前記入射部から入射した光束のうち、前記回折手段へ照射されない光束を受光する請求項1~11のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項13】
前記補助センサは回折0次光を受光する請求項1~11のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項14】
前記補助センサは、それぞれ受光可能な光量範囲が異なっている複数個の補助センサである請求項1~13のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項15】
前記補助センサの受光光量を制御する開口絞りを備えている請求項1~14のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項16】
前記補助センサの受光光量を制御する光学フィルターを備えている請求項1~14のいずれかに記載の分光測定器。
【請求項17】
前記補助センサは、受光感度が標準視感度となる光学フィルターを備えている請求項1~16のいずれかに記載の分光測定器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光源の輝度や色度、物体の分光反射率や色彩値等の測定に用いられる分光測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような分光測定器として、光源等の測定エリアからの被測定光を対物レンズ、開口絞り、集光リレーレンズ等の光学系を介して入射部としての入射スリットへと導き、入射スリットから入射した被測定光を回折格子等の回折手段で回折分光させ、回折された光を受光センサで受光して測定値を得る構成の装置が、従来から知られている。また、入射スリットに代え或いは入射スリットと共に、集光リレーレンズで集光された被測定光を入射位置まで導くバンドルファイバーを備えた構成の装置も知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
このような分光測定器では、測定環境の変化や経時劣化によって受光センサ自体の精度が変化することがある。また、入射スリットやバンドルファイバー等の入射部から入射された被測定光が受光センサで受光されるまでの経路に、光学系部品が配置される場合があるが、環境条件や経時劣化等によって光学系部品の透過率に変化が発生した場合も、精度の高い測定を行うことができない。光学系部品について説明すると、次の通りである。
【0004】
光学系部品としては、NDフィルター、液晶シャッター、拡散板等の減光部材や、測定波長範囲(例えば380~780nm)以外の波長帯をカットする赤外光カットフィルターや紫外光カットフィルター等の光学フィルターを挙げることができる。なお、NDフィルターには、ガラス基板に金属膜(例えばクロム)を蒸着したNDフィルターや、干渉膜のNDフィルター、色吸収フィルター等がある。
【0005】
上述した減光部材は、ダイナミックレンジの広い測定を可能にするために使用される。即ち、分光測定器が輝度計であり、輝度計の測定輝度範囲よりも受光センサのダイナミックレンジが狭い場合、被測定物の輝度に応じ、減光部材を自動又は手動で光路に挿入し或いは光路から退避させることにより受光強度を制御し、これによりダイナミックレンジの広い測定が可能となる。
【0006】
具体的には、輝度範囲が0.0005~100000cd/mの測定を行う場合、受光センサが一般的なシリコンセンサであれば、ダイナミックレンジは500万倍程度であるため、減光部材なしで0.0005~250cd/mの輝度範囲の測定を行い、減光部材して例えば透過率5%のNDフィルターを光路に1枚配置し~5000cd/mの測定を行い、透過率5%のNDフィルターを光路に2枚配置し(5%×5%=0.25%の透過率となる)、~100000cd/mの測定を行うことができる。
【0007】
しかしながら、減光部材は、使用環境温度による透過率の変化や、高温・高湿環境下の保管や光暴露等による経年劣化が生じて、精度の高い測定を行うことができなくなる場合がある。例えば、透過率5%の減光部材が、透過率の絶対値で0.1%変化しただけで、受光データは相対値で2%の誤差が生じることになる。
【0008】
また、金属蒸着膜のNDフィルターは膜の酸化により経年的に透過率が高くなる特徴がある。干渉膜のNDフィルターは、光路に対して傾きによる透過率依存があり、光路への進退駆動の再現性や測定器の姿勢方向によってフィルター傾斜が変化し、このため透過率変動が大きい。吸収型の色フィルター、液晶シャッター、拡散板等は、環境温度による透過率の変化が大きく、さらには波長毎に透過率変化が違うので、色度値にも影響する。
【0009】
減光部材だけでなく、光学フィルターも環境温度による透過率の変化が発生しやすく、やはり精度の高い測定を行うことができなくなる場合がある。
【0010】
このように、測定環境の変化や経時劣化によって受光センサ自体の精度が変化した場合、精度の高い測定を行うことができないという課題がある。あるいはまた、入射スリットやバンドルファイバー等の入射部から入射された被測定光が受光センサで受光されるまでの経路に、光学系部品が介在する場合、環境条件や経時劣化等によって光学系部品の透過率に変化が発生すると、精度の高い測定を行うことができないという課題もある。
【0011】
なお、特許文献2には、0次回折光を有効活用する分光測定器として、被測定光を分光する回折手段と、回折手段からの0次回折光を受光する第一光電変換素子と、回折手段からの高次回折光を受光する第二光電変換素子と、第一光電変換素子で光電変換された0次回折光の受光出力に基づいて、第二光電変換素子での積分時間を制御する分光測定器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2001-264166号公報
【文献】特開2004-37282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載の分光測定器は、0次回折光の受光出力に基づいて、受光センサでの積分時間を制御するものであって、受光センサの出力値を補正するものではない。このため、受光センサ自体の精度が変化した場合や、入射スリットやバンドルファイバー等の入射部から入射された被測定光が受光センサで受光されるまでの経路に介在される光学系部品の透過率が、環境条件や経時劣化等によって変化した場合に、精度の高い測定を行うことができないという課題に対して、解決策を提供しうるものではなかった。
【0014】
この発明はこのような技術的背景に鑑みてなされたものであって、受光センサ自体の精度が変化した場合や、入射スリットやバンドルファイバー等の入射部から入射された被測定光が受光センサで受光されるまでの経路に介在される光学系部品の透過率が、環境条件や経時劣化等によって変化した場合においても、精度の高い測定を行うことができる分光測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は以下の手段によって達成される。
(1)入射部から入射した被測定光を回折させる回折手段と、
前記回折手段で回折された被測定光を受光する主センサと、
前記入射部から入射した光束のうち、前記主センサに到達しない光束の光路に配置されて該光束を受光する1個又は複数個の補助センサと、
前記補助センサの出力値に基づいて前記主センサの出力値を補正する補正手段と、
を備え
前記補正手段は、前記主センサの出力値から演算した受光強度値が、前記補助センサの出力値から演算した受光強度値と同じになるように、前記主センサの出力値を補正することを特徴とする分光測定器。
(2)入射部から入射した被測定光を回折させる回折手段と、
前記回折手段で回折された被測定光を受光する主センサと、
前記入射部から入射した光束のうち、前記主センサに到達しない光束の光路に配置されて該光束を受光する1個又は複数個の補助センサと、
前記補助センサの出力値に基づいて前記主センサの出力値を補正する補正手段と、
前記主センサの受光光量を調整するための受光光量調整部材と、
を備え、
前記受光光量調整部材の前方に前記補助センサが配置され、前記補正手段は、前記主センサと前記補助センサの出力値を同時に取得して、前記主センサの出力値を補正することを特徴とする分光測定器。
)前記補正手段は、前記主センサの出力値から演算した受光強度値が、前記補助センサの出力値から演算した受光強度値と同じになるように、前記主センサの出力値を補正する前項に記載の分光測定器。
)前記主センサの受光光量を調整するための受光光量調整部材を備えている前項1に記載の分光測定器。
)前記受光光量調整部材は、前記被測定光の光路に対して挿入退避可能に配置される減光部材である前項2~4のいずれかに記載の分光測定器。
)前記受光光量調整部材の前方に前記補助センサが配置され、前記補正手段は、前記主センサと前記補助センサの出力値を同時に取得して、前記主センサの出力値を補正する前項4または5に記載の分光測定器。
)前記減光部材の後方に第1の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記減光部材の光路への挿入状態で前記主センサの出力値を取得し、光路からの退避状態で前記第1の補助センサの出力値を取得して、前記主センサの出力値を補正する前項に記載の分光測定器。
)前記減光部材の前方に第2の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記主センサの出力値の取得時と前記第1の補助センサの出力値の取得時のそれぞれのタイミングで前記第2の補助センサの出力値を取得し、取得した前記第2の補助センサの出力値の比から時間的な光量変化率を算出し、算出された前記光量変化率に基づいて時間的な光量変化を補正する前項に記載の分光測定器。
)前記受光光量調整部材の前方に第1の補助センサが、後方に第2の補助センサがそれぞれ配置され、
前記補正手段は、前記主センサ、第1の補助センサ及び第2の補助センサの出力値を同時に取得し、取得された前記第1の補助センサ及び第2の補助センサの出力値比の基準値からの変化率に基づいて、前記主センサの出力値を補正する前項2~5のいずれかに記載の分光測定器。
10)前記減光部材の後方に第1の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記減光部材の光路への挿入状態で前記主センサの出力値と前記第1の補助センサの出力値を同時に取得し、前記減光部材の光路からの退避状態で前記第1の補助センサの出力値を取得し、取得された前記第1の補助センサのそれぞれの出力値の比に基づいて、前記主センサの出力値を補正する前項に記載の分光測定器。
11)前記減光部材の前方に第2の補助センサが配置され、
前記補正手段は、前記第1の補助センサの出力値の取得タイミングと同じタイミングで前記第2の補助センサの出力値を2回取得し、取得された前記第2の補助センサの2回の出力値の比から時間的な光量変化率を算出し、算出された前記光量変化率に基づいて時間的な光量変化を補正する前項10に記載の分光測定器。
12)前記補助センサは、前記入射部から入射した光束のうち、前記回折手段へ照射されない光束を受光する前項1~11のいずれかに記載の分光測定器。
13)前記補助センサは回折0次光を受光する前項1~11のいずれかに記載の分光測定器。
14)前記補助センサは、それぞれ受光可能な光量範囲が異なっている複数個の補助センサである前項1~13のいずれかに記載の分光測定器。
15)前記補助センサの受光光量を制御する開口絞りを備えている前項1~14のいずれかに記載の分光測定器。
16)前記補助センサの受光光量を制御する光学フィルターを備えている前項1~14のいずれかに記載の分光測定器。
17)前記補助センサは、受光感度が標準視感度となる光学フィルターを備えている前項1~16のいずれかに記載の分光測定器。
【発明の効果】
【0016】
前項(1)に記載の発明によれば、主センサは、入射部から入射し回折手段で回折された被測定光を受光する。入射部から入射した光束のうち、前記主センサに到達しない光束の光路に配置されて該光を受光する1個又は複数個の補助センサが備えられ、補助センサの出力値に基づいて主センサの出力値が補正される。従って、受光センサである主センサ自体の精度が変化した場合や、入射スリットやバンドルファイバー等の入射部から入射され受光センサで受光されるまでの被測定光の経路に介在される光学系部品の透過率が、環境条件や経時劣化等によって変化した場合であっても、主センサの精度変化や、光学系部品の透過率の変化を補償することができ、精度の高い測定を行うことができる。しかも、補助センサは、主センサに到達しない光束の光路に配置されているから、主センサによる測定に影響を及ぼすことなく、主センサの出力値を補正することができる。
【0017】
前項()に記載の発明によれば、主センサの出力値から演算した受光強度値が、補助センサの出力値から演算した受光強度値と同じになるように、主センサの出力値が補正されるから、主センサの精度変化や、光学系部品の透過率の変化を確実に補償することができる。
【0018】
前項()に記載の発明によれば、主センサの受光光量を調整するための受光光量調整部材の透過率等が変化した場合であっても、補助センサの出力値に基づいて主センサの出力値が補正されるから、精度の高い測定を行うことができる。
【0019】
前項()に記載の発明によれば、被測定光の光路に対して挿入退避可能に配置される減光部材の透過率等が変化した場合であっても、補助センサの出力値に基づいて主センサの出力値が補正されるから、精度の高い測定を行うことができる。
【0020】
前項()に記載の発明によれば、受光光量調整部材の透過率変化や主センサの精度変化を一括して補正することができる。
【0021】
前項()に記載の発明によれば、減光部材の透過率変化や主センサの精度変化を一括して補正することができる。特に、減光部材の前方に補助センサの配置スペースを確保できない場合に有効である。
【0022】
前項()に記載の発明によれば、前項()の効果に加えて、主センサの出力値の取得時と第1の補助センサの出力値の取得時のタイミングが異なることに起因する時間的な光量変化を補正して、より精度の高い測定を行うことができる。
【0023】
前項()に記載の発明によれば、受光光量調整部材の環境条件や経時劣化等による透過率変化を補償でき、精度の高い測定が可能となる。
【0024】
前項(10)に記載の発明によれば、受光光量調整部材の環境条件や経時劣化等による透過率変化を補償でき、精度の高い測定が可能となる。特に、減光部材の前方に補助センサの配置スペースを確保できない場合に有効である。
【0025】
前項(11)に記載の発明によれば、前項(10)の効果に加えて、主センサの出力値の取得時と第1の補助センサの出力値の取得時のタイミングが異なることに起因する時間的な光量変化を補正して、より精度の高い測定を行うことができる。
【0026】
前項(12)に記載の発明によれば、入射スリットの通過光束のうち、回折格子へ照射されない光束を受光する位置の補助センサによって、主センサの出力値を補正することができる。
【0027】
前項(13)に記載の発明によれば、回折0次光を受光した補助センサの出力に基づいて、主センサの出力値を補正することができる。
【0028】
前項(14)に記載の発明によれば、補助センサは、それぞれ受光可能な光量範囲が異なっている複数個の補助センサであるから、測定器度範囲に対してダイナミックレンジを確保することができる。
【0029】
前項(15)に記載の発明によれば、開口絞りにより補助センサの受光光量を制御することができる。
【0030】
前項(16)に記載の発明によれば、光学フィルターにより補助センサの受光光量を制御することができる。
【0031】
前項(17)に記載の発明によれば、補助センサの出力値による被測定物の輝度の算出のための計算が簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施形態に係る分光測定器の基本構成の一例を示す図である。
図2図1の分光測定器における分光部の詳細な構成を示す図である。
図3図2の分光部において、回折格子を絞りの前方側から見たときの模式図である。
図4図2の分光部の平面図である。
図5】第1実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図6】第1実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
図7】第2実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
図9】第3実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図10】第3実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
図11】第4実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図12】第4実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
図13】第5実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図14】第5実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
図15】第6実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図16】第6実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
図17】第7実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図18】第7実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
図19】第8実施形態に係る補正処理時の補助センサの配置例を示す図である。
図20】第8実施形態に係る補正処理のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態に係る分光測定器である分光輝度計の基本構成を示す図である。図1に示すように、分光測定器1は、受光光学系100と、観察光学系200と、測定光学系300と、処理回路600と、補正部700を備えており、測定光学系300はさらに導光部400と分光部500を備えている。
【0035】
受光光学系100は、光源からなる被測定物2からの光束3を受光して、測定光学系300の導光部400及び観察光学系200へと導くものであり、被測定物2からの光束3を集光する対物レンズ101と、対物レンズ101の後方(光束3の進行方向の前方)に配置された測定光量規制用の開口絞り102と、さらに開口絞り102の後方に配置されたアパーチャーミラー103を備えている。
アパーチャーミラー103は、光束3の導光部400への入射光路中に配置され、対物レンズ101で集光された光束3を通過させる開口を備えるミラーである。対物レンズ101からの光束のうち、被測定物2の測光エリアからの光束はアパーチャーミラー103の前記開口を通過して後段の導光部400へ直進されるが、測光エリア外の光束についてはアパーチャーミラー103によって反射され、観察光学系200内の反射ミラー201及び観察リレーレンズ202を含むレンズ群を経て、使用者の瞳へ導かれる。使用者は、観察光学系200から、被測定物2と指標円(アパーチャーミラーで反射されない領域であり、使用者は黒色と見える)を視認し、測定位置合わせとピント合わせを行う。ピント合わせは対物レンズ101の全群または一部のレンズ群を移動させることで、アパーチャーミラー位置に焦点を合わせる。開口絞り102はピント合わせを行っても測定光の開口角(Fナンバー)は変化しない。なお、アパーチャーミラー103の穴サイズは手動又は自動で変更可能に構成されても良い。穴サイズを変更することで測定角(測定サイズ)の変更ができる。
【0036】
測定光学系300における導光部400は、アパーチャーミラー103の開口部を通過した光束を集光する集光レンズ401と、集光レンズ401を通過した光束を分光部500の入射スリット501へと導光するバンドルファイバー402を備えており、この実施形態ではバンドルファイバー402の出口と入射スリット501が入射部として共用されている。なお、バンドルファイバー402と入射スリット501は少なくとも一方のみであっても良い。
【0037】
測定光学系300における分光部500は、入射スリット501から入射された光束を概ね平行光にするコリメータレンズ502と、コリメータレンズ502からの平行光の後方に配置された、矩形の開口部503aを有する絞り(図2図4に示す)503と、絞り503の開口部503aを通過した平行光を回折させる回折格子504と、結像レンズ505と、受光センサである主センサ506と、主センサ506の一部前方に配置された2次光カットフィルター507等を備えている。
絞り503は、コリメータレンズ502からの平行光の光量を回折格子504の大きさに合わせて規制するものであり、結像レンズ505は回折格子504で波長分散された光線を主センサ506に結像させるものである。絞り503は、環境変化や経時変化に強いため信頼性が高く、光の波長依存、傾き(光線入射角度)依存等も受けない。
主センサ506は、限定はされないがラインセンサからなり、例えば380~780nmの波長範囲での受光が可能である。
【0038】
この実施形態では、コリメータレンズ502と絞り503の間の光路上に、他の光学系部品が介在配置されている。この実施形態では、光学系部品として受光光量調整部材の一つである光学フィルター、例えば赤外光をカットするための赤外光カットフィルター510と、赤外光カットフィルター510の後方に、同じく受光光量調整部材の一つである減光部材520が配置されている。なお、赤外光カットフィルター510と減光部材520はいずれか一方のみが配置されても良いし、両方共になくてもよい。また、減光部材520は1個であっても良いし複数個が同時に光路に配置されても良い。
【0039】
減光部材520は、背景技術で説明したのと同様に、ダイナミックレンジの広い測定を可能にするために使用されるものであり、NDフィルター、液晶シャッター、拡散板等から構成される。減光部材520は駆動部521により光路に対して挿入可能でかつ退避可能に駆動されるようになっており、必要時のみに光路に挿入させてコリメータレンズ502からの被測定光を通過させるようになっている。
【0040】
一方、赤外光カットフィルター510が用いられる場合は、定位置に固定され減光部材520のように挿入退避駆動されない。このため、減光部材520で生じることがある傾き再現性についての問題は生じない。なお、固定式の減光部材520を用いても良い。
さらにこの実施形態では、図2に示すように、分光部500には、受光センサからなる1個又は複数個の補助センサA、B、Cが設けられている。なお、以下の説明では、補助センサの配置位置に応じて、1個又は複数個のセンサをまとめて補助センサA、補助センサB、補助センサCと記す。また、複数の補助センサについて言及が必要なときは、補助センサA1~An、補助センサB1~Bn、補助センサC1~Cnと記す。
これらの補助センサA、B、Cには、シリコンフォトダイオード(SPD)等の環境温度や経時変化に強い信頼性の高いセンサが使用されている。この補助センサA、B、Cは、補助センサの出力値に基づいて主センサ506の出力値を補正するためのものであり、導光部400から分光部500に入射し主センサ506が受光する被測定光と同じ条件の光であるが、主センサ506に到達しない光束の光路に配置されている。
【0041】
例えば、図2に示す例では、コリメータレンズ502と赤外光カットフィルター510の間に1個又は複数個の補助センサAが配置され、減光部材520と絞り503の間に1個又は複数個の補助センサBが配置されている。分光部500へ入射された光束はコリメータレンズ502により平行とされ、回折格子504に照射されるが、コリメータレンズ502の光軸に対し回折格子504が傾斜しているため、コリメータレンズ502の通過光810のうち、絞り503の開口部503aを通過した一部の光束だけが被測定光820として絞り回折格子504に照射され、回折格子面を外れる光束は、図3及び図4に示すように絞り503で遮光され、主センサ506に到達しない。補助センサA、Bは、絞り503で遮光される光束、つまり主センサ506による測定に使用されておらず無駄となっている光束を受光可能な位置に配置される。
また、図2及び図4に示すように、回折格子504による回折0次光840を受光可能な位置に、1個又は複数個の補助センサCが配置されても良い。主センサ506による受光データ(回折-1次光830)と回折0次光840は、回折格子504で次数分割されたもので、同じ条件(被測定物2に依存する特徴が同じ)の光束である。回折-1次光830は分光データとして取得されるが、他の次数は測定に利用されない。換言すれば、遮光されており無駄となっている光束を補助センサCで受光する。回折0次光840は測定波長範囲380~780nmの全波長の情報を有し、光強度も強い。
【0042】
なお、補助センサA、B、Cの配置位置を図2及び図4のように3箇所例示したが、全ての位置に配置される必要はなく、後述する実施形態のように、補正処理に応じて必要な位置に配置すれば良い。
【0043】
補助センサA、B、Cが1つでは、主センサ506による測定輝度範囲に対してダイナミックレンジが不足している場合等には、複数の補助センサA1~An、B1~Bn、C1~Cnを用いて、各補助センサでレンジ範囲を分担しても良い。図2に示す例では、コリメータレンズ502と赤外光カットフィルター510の間と、減光部材520と絞り503の間の各位置において、被測定光820の光路の周囲に、それぞれ複数個ずつの補助センサA1~An、B1~Bnがそれぞれ配置されている。また、これらの補助センサA1~An、B1~Bnのうちの少なくとも1個と、回折0次光840を受光可能な位置の補助センサC1~Cnの組み合わせであっても良い。
また、各補助センサA、B、Cによる受光量を制御するため、図2に示したように、補助センサA、B、Cの前段にメカ絞り部材530や光学フィルター(図示せず)を配置しても良い。
【0044】
図1に示す処理回路600は、主センサ506による受光データや、補助センサA、B、Cによる受光データをAD変換等する回路であり、補正部700は、補助センサA、B、Cの出力値に基づいて、主センサ506の出力値を補正するものである。補正は、主センサ506の出力値から演算した受光強度値が、補助センサA、B、Cの出力値から演算した受光強度値と同じになるように行われる。
【0045】
次に、補正部700において実行される、補助センサA、B、Cの出力値に基づく主センサ506の出力値の具体的な補正処理について説明する。
【0046】
[実施形態1]
この実施形態では、図5に示すように、赤外光カットフィルター510の前方、換言すればコリメータレンズ502と赤外光カットフィルター510の間に補助センサAを配置する。減光部材520の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。補助センサAは1個でも良いし、この実施形態のようにダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサA1~Anを使用しても良い。補助センサA1~Anには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサAの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。
【0047】
この実施形態では、補助センサA1~Anのいずれかである補助センサAxで輝度の絶対値を取得し、主センサ506の出力値のレベルを補正する。補助センサAxと主センサ506により光束を同時に受光して測定する。
【0048】
図6に測定手順のフローチャートを示す。
【0049】
測定が開始されると、事前測定として、ステップS101で、複数の補助センサA1~Anの受光データを処理回路600でAD変換して測定データ(受光データ)を取得する。次にステップS102で、複数の補助センサA1~Anの中から感度の最適な補助センサAxを選択し、補助センサAxの出力値から、被測定物2の輝度概算値(Lv0)を算出する。輝度概算値(Lv0)の算出は補助センサAxの出力値と輝度値(Lv)のテーブルから、補助センサAxの出力値に対応する輝度値を求めることにより行われる。さらに、算出された輝度概算値(Lv0)の値から、補助センサA1~Anの中から本測定で使用する補助センサAxを決定する。通常は、選択された補助センサAxが本測定でも使用される。さらに、本測定での主センサ506及び補助センサAxの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0050】
次に、ステップS103で本測定を行う。具体的には、主センサ506の出力値と補助センサAxの出力値を同時に取得する。
【0051】
次いで、以下の補正演算処理を行う。先ずステップS104で、補助センサAxの出力値から、被測定物の輝度(Lv1)を算出する。算出は、補助センサAxの、出力値と輝度値のテーブルを基に行う。
【0052】
次にステップS105で、主センサ506の出力値から分光放射輝度データを算出する。分光放射輝度データの横軸は画素と波長のテーブルから、縦軸は出力値と分光放射輝度のテーブルから算出する。そして、算出した分光放射輝度データから、輝度(Lv2)を算出する。
【0053】
ステップS106では、ステップS104で算出した輝度(Lv1)とステップS105で算出した輝度(Lv2)から、補正係数=Lv1÷Lv2を算出したのち、ステップS107で、分光放射輝度データを全波長に亘って補正係数で補正(補正係数を乗算)する。そして、ステップS108で、補正後の分光放射輝度データを表示装置等に出力する。
【0054】
このように、この実施形態では、赤外光カットフィルター510の前方に配置された補助センサAxの出力値に基づいて、主センサ506の出力値が補正されるから、補助センサ506の後方に存在する赤外光カットフィルター510の透過率が環境条件や経時劣化等によって変化していた場合や、或いは主センサ506の精度が変化していた場合であっても、適正に補正されて精度の高い測定を行うことができる。しかも、補助センサAは、主センサ506に到達しない光束の光路に配置されているから、主センサ506による測定に影響を及ぼすことなく、主センサ506の出力値を補正することができる。
【0055】
なお、赤外光カットフィルター510が存在せず、固定の減光部材520が備えられている場合や、赤外光カットフィルター510の後方に固定の減光部材520が配置されている場合に、実施形態1を適用しても良い。減光部材520が存在している場合は、減光部材520の透過率も合わせて補償される。
【0056】
[実施形態2]
この実施形態では、図7に示すように、被測定光820の光路に対して挿入退避可能に駆動される減光部材520の前方に補助センサAを配置する。補助センサAは1個でも良いし、この実施形態のように、ダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサA1~Anを使用しても良い。赤外光カットフィルター510の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。補助センサAには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサAの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。
【0057】
この実施形態では、実施形態1と同様に、補助センサAで輝度の絶対値を取得し、主センサの出力値のレベルを補正する。補助センサAと主センサ506により光束を同時に受光して測定する。
【0058】
図8に測定手順のフローチャートを示す。
【0059】
測定が開始されると、減光部材520を被測定光820の光路から退避させた状態で、事前測定を行う。即ち、ステップS201で、複数の補助センサA1~Anの受光データを処理回路600でAD変換して測定データを取得する。次にステップS202で、複数の補助センサA1~Anの中から感度の最適な補助センサAxを選択し、補助センサAxの出力値から、被測定物2の輝度概算値(Lv0)を算出する。輝度概算値(Lv0)の算出は補助センサAxの出力値と輝度値(Lv)のテーブルから、補助センサAxの出力値に対応する輝度値を求めることにより行われる。さらに、算出された輝度概算値(Lv0)の値から、本測定での減光部材520の使用の有無、使用する場合の個数を決定するとともに、補助センサA1~Anの中から本測定で使用する補助センサAxを決定する。通常は、選択された補助センサAxが本測定でも使用される。さらに、本測定での主センサ506及び補助センサAxの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0060】
次に、本測定を行う。減光部材520を使用しないことが決定された場合、減光部材520を光路から退避させたまま、ステップS204に進む。減光部材520を使用することが決定された場合、ステップS203で、決定された個数の減光部材520を光路に挿入したのち、ステップS204に進む。
ステップS204では、主センサ506の出力値と補助センサAxの出力値を同時に取得する。
【0061】
次いで、ステップS205~S208の補正演算処理、ステップS209の結果出力処理を行うが、これらの処理は、実施形態1で説明した図6のステップS104~S107の補正演算処理、ステップS108の結果出力処理と同じであるので、説明は省略する。
【0062】
このように、この実施形態では、減光部材520が被測定光820の光路に挿入されていない場合は、主センサ506の精度変化等を補償でき、減光部材520が光路に挿入されている場合は、主センサ506の精度変化に加えて減光部材520の透過率変化等を補償でき、精度の高い測定を行うことができる。なお、補助センサAxの後方に赤外カットフィルター510が存在している場合は、赤外カットフィルター510の透過率変化等と減光部材520の透過率変化等を合わせて補償できる。
【0063】
[実施形態3]
この実施形態では、図9に示すように、被測定光820の光路に対して挿入退避可能に駆動される減光部材520の後方、換言すれば減光部材520と絞り503の間に補助センサBを配置するか、回折0次光840を受光する補助センサCを配置するが、この例では補助センサBを使用する。補助センサBは1個でも良いし、この実施形態のように、ダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサB1~Bnを使用しても良い。赤外光カットフィルター510の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。補助センサBには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサBの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。
【0064】
この実施形態では、実施形態1と同様に、補助センサBで輝度の絶対値を取得し、主センサ506の出力値のレベルを補正する。減光部材520が使用される場合、減光部材520を被測定光820の光路に挿入した状態で主センサ506の出力値を取得し、光路から退避させた状態で補助センサBの出力値を取得する。
【0065】
図10に測定手順のフローチャートを示す。
【0066】
測定が開始されると、減光部材520を被測定光820の光路から退避させた状態で事前測定を行う。即ち、ステップS301で、複数の補助センサB1~Bnの受光データを処理回路600でAD変換して測定データを取得する。次にステップS302で、複数の補助センサB1~Bnの中から感度の最適な補助センサBxを選択し、補助センサBxの出力値から、被測定物2の輝度概算値(Lv0)を算出する。輝度概算値(Lv0)の算出は補助センサBxの出力値と輝度値(Lv)のテーブルから、補助センサBxの出力値に対応する輝度値を求めることにより行われる。さらに、算出された輝度概算値(Lv0)の値から、本測定での減光部材520の使用の有無、使用する場合の個数を決定するとともに、補助センサB1~Bnの中から本測定で使用する補助センサBxを決定する。通常は、選択された補助センサBxが本測定でも使用される。さらに、本測定での主センサ506及び補助センサBxの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0067】
次に、本測定を行う。減光部材520を使用しないことが決定された場合、減光部材520を光路から退避させたまま、ステップS303で、主センサ506の出力値と補助センサBxの出力値を同時に取得した後、ステップS308に進む。減光部材520を使用することが決定された場合、ステップS304で、決定された個数の減光部材520を被測定光820の光路に挿入したのち、ステップS305で、主センサ506の出力値を取得する。次にステップS306で減光部材520を光路から退避させた後、ステップS307で補助センサBxの出力値を取得し、ステップS308に進む。
【0068】
次いで、ステップS308~S311の補正演算処理、ステップS312の結果出力処理を行うが、これらの処理は、ステップS308での被測定物2の輝度(Lv1)の算出を補助センサBxの出力値を用いて行う点を除いて、実施形態1で説明した図7のステップS104~S107の補正演算処理、ステップS108の結果出力処理と同じであるので、説明は省略する。
【0069】
このように、この実施形態では、補助センサBを減光部材520の後方に配置し、減光部材520が被測定光820の光路から退避した状態で取得された補助センサBの出力値により、減光部材520が光路に挿入されている状態で取得された主センサ506の出力値を補正するから、減光部材520の透過率変化や主センサ506の精度変化等を補償でき、精度の高い測定を行うことができる。なお、赤外光カットフィルター510が存在している場合は、赤外光カットフィルター510の透過率変化等を含めて補償することができる。
【0070】
[実施形態4]
この実施形態では、図11に示すように、被測定光820の光路に対して進退可能に駆動される減光部材520の後方、換言すれば減光部材520と絞り503の間に補助センサBを配置するか、回折0次光840を受光する補助センサCを配置するが、この例では回折0次光を受光する補助センサCを使用するものとする。補助センサCは1個でも良いし、この実施形態のように、ダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサC1~Cnを使用しても良い。また、減光部材520の前方に配置された1個または複数個の補助センサAも使用する。赤外光カットフィルター510の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。各補助センサC1~Cn、Aには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサCの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。
【0071】
この実施形態では、実施形態1と同様に、補助センサCで輝度の絶対値を取得し、主センサ506の出力値のレベルを補正する。また、補助センサAにより時間変化を補正する。
【0072】
図12に測定手順のフローチャートを示す。
【0073】
測定が開始されると、減光部材520を被測定光820の光路から退避させた状態で、事前測定を行う。即ち、ステップS401で、複数の補助センサC1~Cnの受光データを処理回路600でAD変換して測定データを取得する。次にステップS402で、複数の補助センサC1~Cnの中から感度の最適な補助センサCxを選択し、補助センサCxの出力値から、被測定物2の輝度概算値(Lv0)を算出する。輝度概算値(Lv0)の算出は補助センサCxの出力値と輝度値(Lv)のテーブルから、補助センサCxの出力値に対応する輝度値を求めることにより行われる。さらに、算出された輝度概算値(Lv0)の値から、本測定での減光部材520の使用の有無、使用する場合の個数を決定するとともに、補助センサA1~Anの中から本測定で使用する補助センサAxを決定し、補助センサC1~Cnの中から補助センサCxを決定する。通常は、選択された補助センサCxが本測定でも使用される。さらに、本測定での主センサ506、補助センサAx及び補助センサCxの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0074】
次に、本測定を行う。減光部材520を使用しないことが決定された場合、減光部材520を被測定光820の光路から退避させたまま、ステップS403で、主センサ506の出力値と補助センサCxの出力値を同時に取得した後、ステップS408に進む。減光部材520を使用することが決定された場合、ステップS404で、決定された個数の減光部材520を光路に挿入したのち、ステップS405で、主センサ506の出力値と補助センサAxの出力値a1を同時に取得する。次にステップS406で減光部材520を光路から退避させた後、ステップS407で、補助センサAxの出力値a2と補助センサCxの出力値bを同時に取得し、ステップS408に進む。
【0075】
次いで、以下の補正演算処理を行う。先ずステップS408で、補助センサCxの出力値から、被測定物の輝度(Lv1)を算出する。算出は、補助センサCxの、出力値と輝度値のテーブルを基に行う。
【0076】
次に、減光部材520を使用しない場合はステップS411に進む。一方、減光部材520を使用する場合は、ステップS409で、補助センサAxの出力値a1およびa2から、出力値a1とa2の比である時間差計数を算出し、ステップS410で、Lv1’=Lv1×時間差計数、を演算した後、ステップS411に進む。
【0077】
ステップS411では、主センサ506の出力値から分光放射輝度データを算出するとともに、算出した分光放射輝度データから輝度(Lv2)を算出する。
【0078】
次に、減光部材520を使用しない場合は、ステップS412で、補正係数=Lv1÷Lv2を算出したのち、ステップS414に進む。一方、減光部材520を使用する場合は、ステップS413で、補正係数=Lv1’÷Lv2を算出したのち、ステップS414に進む。
【0079】
ステップS414では、分光放射輝度データを全波長に亘って、各補正係数で補正する。そして、ステップS415で、補正後の分光放射輝度データを出力する。
【0080】
このように、この実施形態では、減光部材520が被測定光820の光路から退避した状態で取得された補助センサCxの出力値により、減光部材520が光路に挿入されている状態で取得された主センサ506の出力値を補正するとともに、補助センサCxの取得タイミングと主センサ506の出力値の取得タイミングの相違による時間的な光量変化を、それぞれのタイミングで測定した補助センサAxの出力値a1とびa2の比である時間差計数(時間的な光量変化率)により補正するから、より精度の高い測定を行うことができる。なお、補助センサAxの後方に赤外カットフィルター510が存在している場合は、赤外カットフィルター510の透過率変化等と減光部材520の透過率変化等を合わせて補償できる。
【0081】
[実施形態5]
この実施形態では、図13に示すように、コリメータレンズ502と赤外光カットフィルター510の間に補助センサAを配置し、赤外光カットフィルター510の後方に1個の補助センサBを配置する。減光部材520の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。補助センサAは1個でも良いし、この実施形態のように、ダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサA1~Anを使用しても良い。後方の補助センサBは、減光部材520の通過後なので、適正光量に設定されたものを使用する。なお、補助センサBの代わりに、回折0次光を受光する1個の補助センサCを使用しても良い。
補助センサA1~Anには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサAの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。さらに、工場出荷時に、補助センサAと補助センサB(補助センサCを用いる場合は補助センサC)の出力値比の基準値(基準の補助センサ比という)が記憶されている。
【0082】
この実施形態では、赤外光カットフィルター510の前方の補助センサA1~Anと後方の補助センサBの基準の補助センサ比に基づいて、赤外光カットフィルター510の透過率の工場出荷時からの変化を補償するものである。
【0083】
図14に測定手順のフローチャートを示す。
【0084】
測定が開始されると、事前測定として、ステップS501で、複数の補助センサA1~Anの受光データを処理回路600でAD変換して測定データを取得する。次にステップS502で、複数の補助センサA1~Anの中から感度の最適な補助センサAxを選択し、補助センサAxの出力値から、被測定物2の輝度概算値(Lv0)を算出する。輝度概算値(Lv0)の算出は補助センサAxの出力値と輝度値(Lv)のテーブルから、補助センサAxの出力値に対応する輝度値を求めることにより行われる。さらに、算出された輝度概算値(Lv0)の値から、補助センサA1~Anの中から本測定で使用する補助センサAxを決定する。通常は、選択された補助センサAxが本測定でも使用される。さらに、本測定での主センサ506、補助センサAx及び補助センサBの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0085】
次に、ステップS503で本測定を行う。具体的には、主センサ506、補助センサAx及び補助センサBの各出力値を同時に取得する。
【0086】
次いで、以下の補正演算処理を行う。先ずステップS504で、補助センサ比=補助センサBの出力値÷補助センサAxの出力値、を算出したのち、ステップS505で、変化率=演算した補助センサ比÷工場出荷時の基準の補助センサ比、を算出する。
【0087】
次いで、ステップS506で、主センサ506の出力値から分光放射輝度データを算出する。分光放射輝度データの横軸は画素と波長のテーブルから、他と軸は出力値と分光放射輝度のテーブルから算出する。そして、算出した分光放射輝度データから、輝度(Lv2)を算出する。
【0088】
ステップS507では、分光放射輝度データを全波長に亘って、ステップS505で算出した変化率で補正する。そして、ステップS108で、補正後の分光放射輝度データを出力する。
【0089】
このように、この実施形態では、赤外光カットフィルター510の前方の補助センサAxと後方の補助センサBの出力値に基づいて、赤外光カットフィルター510の透過率等の工場出荷時からの変化が変化率によって是正され、この変化率で主センサ506の出力値が補正されるから、赤外光カットフィルター510の透過率等が環境条件や経時劣化等によって変化していた場合であっても、精度の高い測定を行うことができる。なお、赤外光カットフィルター510が存在せず、固定の減光部材520が備えられている場合は、減光部材520の透過率の変化を補償することができる。また、補助センサA1~Anと補助センサBの間に、赤外光カットフィルター510と減光部材520の両方が存在する場合は、赤外光カットフィルター510と減光部材520を合わせた全体の透過率等の変化を補償することができる。
【0090】
[実施形態6]
この実施形態では、図15に示すように、被測定光820の被測定光820の光路に対して進退可能に駆動される減光部材520の前方に補助センサAを配置し、さらに回折0次光840を受光する1個の補助センサCを配置する。補助センサAは1個でも良いし、この実施形態のように、ダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサA1~Anを使用しても良い。補助センサCは、減光部材520の通過後なので、適正光量に設定されたものを使用する。なお、補助センサCの代わりに、減光部材520と絞り503の間に配置された補助センサBを使用しても良い。なお、赤外光カットフィルター510の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。
補助センサAには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサAの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。さらに、工場出荷時に、補助センサA及びCの出力値比の基準値(基準の補助センサ比)が記憶されている。
【0091】
この実施形態では、減光部材520の前方の補助センサA1~Anと後方の補助センサCの基準の補助センサ比に基づいて、減光部材520の透過率の工場出荷時からの変化を補償するものである。
【0092】
図16に測定手順のフローチャートを示す。
【0093】
測定が開始されると、事前測定として、ステップS601で、複数の補助センサA1~Anの受光データを処理回路600でAD変換して測定データを取得する。次にステップS602で、複数の補助センサA1~Anの中から感度の最適な補助センサAxを選択し、補助センサAxの出力値から、被測定物2の輝度概算値(Lv0)を算出する。輝度概算値(Lv0)の算出は補助センサAxの出力値と輝度値(Lv)のテーブルから、補助センサAxの出力値に対応する輝度値を求めることにより行われる。さらに、算出された輝度概算値(Lv0)の値から、本測定での減光部材520の使用の有無、使用する場合の個数を決定するとともに、補助センサA1~Anの中から本測定で使用する補助センサAxを決定する。通常は、選択された補助センサAxが本測定でも使用される。さらに、本測定での主センサ506、補助センサAx及び補助センサCの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0094】
次に、本測定を行う。減光部材520を使用しないことが決定された場合、減光部材520を被測定光820の光路から退避させたまま、図6のステップS103~S108の処理を行う。減光部材520を使用することが決定された場合、ステップS603で、決定された個数の減光部材520を光路に挿入したのち、ステップS604に進む。
【0095】
ステップS604では、主センサ506、補助センサAx及び補助センサCの各出力値を同時に取得する。
【0096】
次いで、ステップS605~S608の補正演算処理、ステップS609の結果出力処理を行うが、これらの処理は、ステップS605での補助センサ比の算出を補助センサBに代えて補助センサCの出力値を用いて行う点を除いて、実施形態5で説明した図11のステップS504~S507の補正演算処理、ステップS508の結果出力処理と同じであるので、説明は省略する。
【0097】
このように、この実施形態では、減光部材520の前方に配置された補助センサAxと後方の補助センサCの出力値に基づいて、減光部材520の透過率等の工場出荷時からの変化が変化率によって是正され、この変化率で主センサ506の出力値が補正されるから、減光部材520の透過率等が環境条件や経時劣化等によって変化していた場合であっても、精度の高い測定を行うことができる。なお、補助センサAxと減光部材520の間に赤外光カットフィルター510が存在している場合は、赤外光カットフィルター510と減光部材520を合わせた透過率等の変化を補償することができる。
【0098】
[実施形態7]
この実施形態では、図17に示すように、被測定光820の光路に対して進退可能に駆動される減光部材520の後方に補助センサBを配置する。補助センサBは1個でも良いし、この実施形態のように、ダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサB1~Bnを使用しても良い。なお、補助センサBの代わりに、回折0次光840を受光する補助センサCを使用しても良い。なお、赤外光カットフィルター510の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。
補助センサBには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサBの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。
【0099】
この実施形態では、減光部材520の光路への挿入時と退避時の補助センサBの出力値比から、減光部材520の減光率を求めて補正を行うものである。
【0100】
図18に測定手順のフローチャートを示す。
【0101】
測定が開始されると、減光部材520を被測定光820の光路から退避させた状態で、事前測定を行う。即ち、ステップS701で、複数の補助センサB1~Bnの受光データを処理回路600でAD変換して測定データを取得する。次にステップS702で、複数の補助センサB1~Bnの中から感度の最適な補助センサBxを選択する。さらに、補助センサBxの出力値から、本測定での減光部材520の使用の有無、使用する場合の個数を決定するとともに、補助センサB1~Bnの中から本測定で使用する、減光部材ありの時の補助センサBxと、減光部材なしの時の補助センサByとを決定する。補助センサBxと補助センサByは同じであっても良い。さらに、本測定での主センサ506、補助センサBx及び補助センサByの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0102】
次に、本測定を行う。減光部材520を使用しないことが決定された場合、減光部材520を被測定光820の光路から退避させたまま、図6のステップS103~S108の処理を行う。ただし、ステップS103及びS104の「補助センサAx」は「補助センサBx」と置き換える。
【0103】
減光部材520を使用することが決定された場合、ステップS704で、決定された個数の減光部材520を光路に挿入したのち、ステップS705で、主センサ506の出力値と補助センサBxの出力値αを同時に取得する。次にステップS706で減光部材520を光路から退避させた後、ステップS707で、補助センサByの出力値βを取得する。
次いで、以下の補正演算処理を行う。まずステップS708で、減光率=出力値α÷βを算出した後、ステップS709に進む。ステップS709では、主センサ506の出力値から分光放射輝度データを算出する。そして、算出した分光放射輝度データから、輝度(Lv2)を算出する。
【0104】
ステップS710では、分光放射輝度データを全波長に亘って、ステップS708で算出した減光率で補正する。そして、ステップS711で、補正後の分光放射輝度データを出力する。
【0105】
このように、この実施形態では、減光部材520の後方に配置された補助センサBx、Byの出力値に基づいて、減光部材520の減光率が求められ、透過率等の変化が減光率によって是正され、この減光率で主センサの出力値が補正されるから、減光部材520の透過率等が環境条件や経時劣化等によって変化していた場合であっても、精度の高い測定を行うことができる。
【0106】
[実施形態8]
この実施形態では、図19に示すように、被測定光820の光路に対して進退可能に駆動される減光部材520と絞り503の間に補助センサBを配置するか、回折0次光840を受光する補助センサCを配置するが、この例では回折0次光840を受光する補助センサCを使用するものとする。補助センサCは1個でも良いし、この実施形態のように、ダイナミックレンジに対応する複数個の補助センサC1~Cnを使用しても良い。また、減光部材520の前方に配置された1個または複数個の補助センサA1~Anも使用する。赤外光カットフィルター510の有無は問わないが、この実施形態ではないものとする。
補助センサCには光学フィルターを装備し、計算を容易にするため、受光感度を標準視感度(Vλ)とする。なお、標準視感度(Vλ)以外の感度であっても良いし、光学フィルターが装備されていなくても良い。また、補助センサCの受光値と輝度値(Lv)のテーブルを有している。
【0107】
この実施形態では、減光部材520の被測定光820の光路への挿入時と退避時の補助センサCの出力値比から、減光部材520の減光率を求めて補正を行うものである。また、補助センサAにより時間変化を補正する。
【0108】
図20に測定手順のフローチャートを示す。
【0109】
測定が開始されると、減光部材520を被測定光820の光路から退避させた状態で、事前測定を行う。即ち、ステップS801で、複数の補助センサC1~Cnの受光データを処理回路600でAD変換して測定データを取得する。次にステップS802で、複数の補助センサC1~Cnの中から感度の最適な補助センサCxを選択する。さらに、補助センサCxの出力値から、本測定での減光部材520の使用の有無、使用する場合の個数を決定するとともに、補助センサA1~Anの中から本測定で使用する補助センサAxを決定し、補助センサC1~Cnの中から本測定で使用する、減光部材ありの時の補助センサCxと、減光部材なしの時の補助センサCyとを決定する。補助センサCxと補助センサCyは同じであっても良い。さらに、本測定での主センサ506、補助センサAx、補助センサCx及び補助センサCyの測定時間(蓄積時間)を決定する。
【0110】
次に、本測定を行う。減光部材520を使用しないことが決定された場合、減光部材520を被測定光820の光路から退避させたまま、図6のステップS103~S108の処理を行う。ただし、ステップS103及びS104の「補助センサAx」は「補助センサCx」と置き換える。
減光部材520を使用することが決定された場合、ステップS804で、決定された個数の減光部材520を光路に挿入したのち、ステップS805で、主センサ506の出力値と、補助センサAxの出力値aと、補助センサCxの出力値αを同時に取得する。次にステップS806で減光部材520を光路から退避させた後、ステップS807で、補助センサAxの出力値bと、補助センサCyの出力値βを同時に取得する。
【0111】
次いで、以下の補正演算処理を行う。まずステップS808で、補助センサAxの出力値aとbから、これらの比である時間差計数を算出し、ステップS809で、減光率=出力値α÷β×時間差係数、を算出した後、ステップS810に進む。
ステップS810では、主センサ506の出力値から分光放射輝度データを算出する。そして、算出した分光放射輝度データから、輝度(Lv2)を算出する。
【0112】
ステップS811では、分光放射輝度データを全波長に亘って、ステップS809で算出した減光率で補正する。そして、ステップS812で、補正後の分光放射輝度データを出力する。
【0113】
このように、この実施形態では、減光部材520の後方に配置された補助センサCx、Cyの出力値に基づいて、減光部材520の減光率が求められ、透過率等の変化が減光率によって是正され、この減光率で主センサ506の出力値が補正されるから、減光部材520の透過率等が環境条件や経時劣化等によって変化していた場合であっても、精度の高い測定を行うことができる。しかも、減光率は、異なるタイミングで測定した補助センサAxの出力値aとbの比である時間差係数により時間的な光量変化が補正されるから、より精度の高い測定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、光源の輝度や色度、物体の分光反射率や色彩値等を測定する際に利用可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 分光測定器
2 測定対象物
3 被測定光
100 受光光学系
200 観察光学系
300 測定光学系
400 導光部
402 バンドルファイバー
500 分光部
501 入射スリット
502 コリメータレンズ
503 絞り
503a開口部
504 回折格子
506 主センサ
510 赤外光カットフィルター
520 減光部材
600 処理回路
700 補正部
810 コリメータレンズの通過光
820 被測定光
840 回折0次光
A~C、A1~An、B1~Bn、C1~Cn 補助センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20