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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ボトル缶およびボトル容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240528BHJP
   B65D 1/16 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B65D1/02 212
B65D1/16 111
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021563756
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036327
(87)【国際公開番号】W WO2021117317
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2019222939
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 健
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 章太
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514756(JP,A)
【文献】特開2016-196332(JP,A)
【文献】特開2019-137450(JP,A)
【文献】特開2018-127229(JP,A)
【文献】特開2017-109760(JP,A)
【文献】特開2018-193137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02-1/46
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に口部を有する有底筒状のボトル缶であって、
前記口部は、スクリューキャップが螺着されるねじ部と、ねじ部の下方に前記スクリューキャップの裾部が係止される環状の係止部と、前記係止部の下方に連接して垂直に伸びる垂直部とを有し、
前記ボトル缶の口部の口径をA(mm)、前記ボトル缶を形成するための原板の板厚をB(mm)、前記係止部の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)をC(mm)としたときに、下記式(1)を満たし、
前記口部の上端の開口縁には、径方向外側から下方へ向けて折り返されたカール部が形成され、前記口部の口径Aは、前記カール部の最大外径であり、
前記口部の口径Aが33.0~34.0mmであり、
前記ボトル缶を形成するための原板の板厚Bが0.300~0.315mmであることを特徴とするボトル缶。
式(1):A×B×C>12.7
【請求項2】
前記係止部の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)Cが1.30mm以上であることを特徴とする請求項1に記載のボトル缶。
【請求項3】
前記係止部の最大外径と前記垂直部の外径とが略同等であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボトル缶。
【請求項4】
上部に口部を有する有底筒状のボトル缶と、当該ボトル缶の口部に装着されるスクリューキャップとを有するボトル容器であって、
前記ボトル缶が、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のボトル缶であり、
前記スクリューキャップが、天板部とその外周縁から垂下した周壁部とを有する有頂筒状のキャップ本体の周壁部に前記ボトル缶のねじ部の雄ねじ形状に螺合可能な雌ねじ部が形成され、前記雌ねじ部の下方に前記ボトル缶の前記係止部に係止される裾部を有することを特徴とするボトル容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口部において、ねじ部の下方にスクリューキャップの裾部が係止される係止部を有するボトル缶およびボトル容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲料用容器として用いられている金属製のボトル缶は、缶胴および缶底を有し、缶胴の開口部に缶胴よりも小径の口部を有し、口部にはねじ部が成形されており、この口部に再栓可能なスクリューキャップが装着されたボトル容器として普及している。一般的に、このようなボトル缶は、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール等の金属材料からなる原板を円形状に打ち抜き、それを絞り加工して有底円筒状のカップ成形体を得、更にそれを絞り・しごき加工(DI成形)して有底円筒状の缶体を得た後、ネッキング工程においてテーパー状に縮径した肩部および円筒状の口部を形成し、その後に、ねじ加工などを含む口部の成形を行うことにより、製造される。
【0003】
このようなボトル缶の口部には、図1に示されるように、雄ねじ形状を有するねじ部110が形成され、ねじ部110の下方には、径方向外方に膨出するスカート部130を有する係止部120が缶軸周りの全周にわたって環状に形成されている。係止部120は、ブリッジ付きスクリューキャップ(以下、単に「キャップ」という。)150の裾部153がロールオン成形される部分であり、膨出形状のスカート部130の下方に径方向内方に縮径するビード部140を有して径方向内方に屈曲されるキャップ150の裾部153を係止することができる形状とされている。
このようなボトル缶100においては、その内部に飲料等の内容物が充填された後、キャッピング工程において口部101にキャップ150が捲き締められる。具体的には、口部101に有頂筒状のキャップ150を被せ、このキャップ150に下方に向かう荷重をかけてボトル缶100内を密封状態とし、この密封状態を維持しながらキャップ150の周壁部152の上部に対して、ねじ部110に対応する高さ位置にスレッドローラーを径方向内方に押し当てながら缶軸回りの周方向に転動させることにより、キャップ150の周壁部152にねじ部110の雄ねじ形状に適合する雌ねじ形状を成形し、また、キャップ150の周壁部152の下端に対して、スカート部130とビード部140とに対向する高さ位置にスカートローラーにより径方向内方に荷重を付与しながら缶軸回りの全周に転動させてキャップ150の裾部153をロールオン成形し、これにより、キャップ150の裾部153がスカート部130およびビード部140に密着して係止される(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-276990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このようなボトル缶について、ボトル缶の製造時や輸送時のCO2 の排出量を削減する環境負荷を低減させる目的や、金属材料の使用量の削減によってコストダウンを図る目的などから、軽量化を図ることが進められている。
しかしながら、ボトル缶の軽量化を実現するにはボトル缶を形成するための原板の薄肉化を図ることになるが、軽量化(薄肉化)に伴ってボトル缶の強度低下が懸念される。具体的には、キャップ150の裾部153を係止部120の外形に沿ってロールオン成形する際に2つのスカートローラーが互いに対向してそれぞれ径方向内方に向かう荷重をかけるので、ボトル缶の口部の強度が低いと、口部101が平面視で真円から楕円に変形する度合いがより大きくなるおそれがある。口部101に変形が大きく生じると、キャップ150の裾部153が口部101の変形に伴って径方向内方に過剰に変形することからブリッジ切れが生じて消費者による開栓有無判断が正確に行うことができなくなったり、シールポイントが形成され難くキャップの保持力が不足し、十分に密封することができずに漏洩が生じてしまうなどの問題が生じるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、その目的は、ボトル缶を形成するための原板の薄肉化を図った場合であっても、キャッピング工程における口部の変形を抑止することができてブリッジ切れや充填した内容物の漏洩などのキャッピング不良の発生を防止することができるボトル缶およびボトル容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のボトル缶は、上部に口部を有する有底筒状のボトル缶であって、
前記口部は、スクリューキャップが螺着されるねじ部と、ねじ部の下方に前記スクリューキャップの裾部が係止される環状の係止部と、前記係止部の下方に連接して垂直に伸びる垂直部とを有し、
前記ボトル缶の口部の口径をA(mm)、前記ボトル缶を形成するための原板の板厚をB(mm)、前記係止部の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)をC(mm)としたときに、下記式(1)を満たし、
前記口部の上端の開口縁には、径方向外側から下方へ向けて折り返されたカール部が形成され、前記口部の口径Aは、前記カール部の最大外径であり、
前記口部の口径Aが33.0~34.0mmであり、
前記ボトル缶を形成するための原板の板厚Bが0.300~0.315mmであることを特徴とする。
式(1):A×B×C>12.7
【0008】
本発明のボトル容器は、上部に口部を有する有底筒状のボトル缶と、当該ボトル缶の口部に装着されるスクリューキャップとを有するボトル容器であって、
前記ボトル缶が上記のボトル缶であり、
前記スクリューキャップが、天板部とその外周縁から垂下した周壁部とを有する有頂筒状のキャップ本体の周壁部に前記ボトル缶のねじ部の雄ねじ形状に螺合可能な雌ねじ部が形成され、前記雌ねじ部の下方に前記ボトル缶の前記スカート部に係止される裾部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のボトル缶およびボトル容器によれば、ボトル缶の口部の口径をA(mm)、ボトル缶を形成するための原板の板厚をB(mm)、キャップの裾部が係止される環状の係止部の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)をC(mm)としたときに、式(1):A×B×C>12.7を満たすことから、キャッピング工程においてキャップの裾部を係止部に捲き締めて係止することができる形状に成形する際に、キャップの周壁部の下端に径方向内方に向かう荷重がかけられたときに係止部の径方向内方に凸形状を有するビード部にキャップの周壁部の下端を介して荷重がかかることが抑制されるので、ボトル缶を形成するための原板の薄肉化を図った場合であっても、キャッピング工程における口部の変形を抑止することができて十分なキャップの保持力が得られ、ブリッジ切れや充填した内容物の漏洩などのキャッピング不良の発生を防止することができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の発明によれば、係止部の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)Cが1.30mm以上であることにより、キャッピング工程においてキャップの周壁部の下端を介してボトル缶の口部に荷重がかかることを確実に抑制することができるので、より一層確実にキャッピング工程における口部の変形を抑止することができる。
本発明の請求項3に記載の発明によれば、キャッピング工程において係止部に内方に向かう荷重がかけられたときに係止部を構成する斜面に楕円変形が生じることを抑制することができるので、十分なキャップの保持力が得られ充填した内容物の漏洩などのキャッピング不良の発生をより一層確実に防止することができる。
本発明の請求項4に記載の発明によれば、ボトル缶の口部の口径Aが33.0~34.0mmであっても、キャッピング工程においてキャップの周壁部の下端を介してボトル缶の口部に荷重がかかることを確実に抑制することができるので、確実にキャッピング工程における口部の変形を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るボトル缶を、キャップを装着した状態で示す一部断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るボトル缶の係止部の一部を示す端面図である。
図3】本発明の実施例および比較例に係るボトル缶のたわみ量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るボトル容器は、図1に示すように、内部に飲料等の内容物が充填され、上部に口部101を有する有底筒状のボトル缶100と、このボトル缶100の口部101に装着されてボトル缶100を密封するスクリューキャップ150とを有する。
【0013】
本発明の一実施形態に係るボトル缶100は、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール等の金属材料からなるものである。
ボトル缶100は、缶胴(図示せず)および缶底(図示せず)を有し、缶胴は、缶底と連続する円柱状の胴部(図示せず)と、この胴部から上方に向かうに従って径方向内方に縮径するテーパー状の肩部102(図2参照)と、この肩部102の上方に垂立する垂直部144を介して立設され缶胴よりも小径の口部101とを有している。
【0014】
口部101には、キャップ150が螺合可能な複数の断面略円弧状の湾曲部を組み合わせた雄ねじ形状を有するねじ部110が形成されており、ねじ部110の下方には、キャップ150の裾部153がロールオン成形により係止される係止部120が缶軸周りの全周にわたって環状に形成されている。
係止部120は、図2に示されるように、ねじ部110の下方に隣接した位置に形成されたスカート部130と、スカート部130の下方に連続した位置に形成されたビード部140とを有する。
スカート部130は、径方向外方(図2において左方)に缶軸周りの全周にわたって膨出して形成された環状の凸部であり、スカート部130の外径は、例えばねじ部110の外径よりも大きい。
ビード部140は、径方向内方(図2において右方)に縮径する、缶軸周りの全周にわたってスカート部130とは反対向きに縮径して形成された環状の凹部である。
また、口部101の上端の開口縁には、径方向外側から下方へ向けて折り返されたカール部103が、缶軸周りの全周にわたって環状に形成されている。
【0015】
スカート部130は、缶軸に沿った縦断面において、下方へ向かうに従って径方向外方に向かう上斜面131と、上斜面131から連続する略上下方向に延びる壁面132と、壁面132から連続する下方に向かうに従って径方向内方に向かう下斜面133とを有し、各辺(各面)が滑らかな弧状に連続された断面形状のものであり、上斜面131はねじ部110の下端に連続している。また、下斜面133は断面が略直線状とされている。
ビード部140は、缶軸に沿った縦断面において、スカート部130の下斜面133と連続し、下方へ向かうに従って径方向内方に向かう断面略直線状の上斜面141と、上斜面141から連続する略上下方向に延びる壁面142と、壁面142から連続する下方に向かうに従って径方向外方に向かう下斜面143とを有し、各辺(各面)が滑らかな弧状に連続された断面形状のものである。ビード部140の下斜面143の下方には垂直に伸びる垂直部144が連接されており、これにより、係止部120と肩部102とが垂直部144を介して連接されている。
本実施形態においては、ビード部140の上斜面141がスカート部130の下斜面133の延長線上に一致するように形成されており、このスカート部130の下斜面133およびビード部140の上斜面141に対してキャップ150の裾部153がロールオン成形されて裾部153が径方向内方に屈曲されることにより、キャップ150が係止される。
【0016】
本実施形態においては、ボトル缶100の口部101の口径をA(mm)、ボトル缶100を形成するための原板の板厚をB(mm)、係止部120の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)をC(mm)としたときに、下記式(1)を満たす。
式(1):A×B×C>12.7
ボトル缶100の口部101の口径とは、カール部103の最大外径をいう。
係止部120の最大外径とは、スカート部130の最大外径すなわち最大の膨出径をいい、本実施形態においては壁面132の最大の外径をいう。
係止部120の最小外径とは、ビード部140の最小外径をいい、本実施形態においては壁面142の最小の外径をいう。
【0017】
ビードデプス(図2においてdで示す。)は、例えば1.30mm以上であり、好ましくは1.30mm以上1.70mm以下、より好ましくは1.40mm以上1.60mm以下、特に好ましくは1.45mmとされる。
ビードデプスが1.30mm以上であることにより、キャッピング工程においてキャップ150の周壁部の下端を介してボトル缶100の口部101に荷重がかかることを確実に抑制することができる。ビードデプスが過小である場合には、ロールオン成形時にキャップ150の裾部153を介して口部101に荷重がかかり、口部101の変形を招来するおそれがある。一方、ビードデプスが過大である場合には、成形が過酷となりビード部140などに割れ等の成形不良を生じるおそれがある。
スカート部130の最大外径は、例えば37.80mmとされる。
ビード部140の最小外径は、例えば34.90とされる。
また、ビード部140の缶軸に沿った高さは例えば4.42mmとされる。
【0018】
ボトル缶100の口部101の口径は、例えば33.45mmとされ、33.0~34.0mm程度とすることができる。
ボトル缶100を形成するための原板の板厚は、例えば容量が300mLである場合には0.300~0.350mm、容量が400mLである場合には0.300~0.350mmとすることができる。
また、本実施形態において、スカート部130の下斜面133およびビード部140の上斜面141の傾斜角度θは、缶軸に対して例えば48.7°とされる。
【0019】
また、係止部120の最大外径すなわちスカート部130の最大外径と、垂直部144の外径(最大外径)とは、略同等とすることができる。
スカート部130の最大外径と垂直部144の外径とが略同等の大きさであることにより、キャッピング工程において係止部120に缶軸に沿って下方に向かう荷重および径方向内方に向かう荷重がかけられたときに、ビード部140を構成する上斜面141、壁面142および下斜面143に楕円変形が生じることを抑制することができるので、十分なキャップの保持力が得られる。これは、ビード部140の上斜面141(スカート部130の下斜面133)および下斜面143のバランスが保たれて径方向内方に向かう荷重がかけられたときにも径方向内方に屈曲しにくくなると共に上下方向の変形も抑制され、軸荷重強度が向上するためと推測される。
【0020】
キャップ150は、天板部151とその外周縁から垂下した周壁部152を有する有頂筒状の金属製キャップ本体の周壁部152にボトル缶100のねじ部110の雄ねじ形状に螺合する雌ねじ部が形成され、雌ねじ部の下方にボトル缶100の係止部120に係止される裾部153が形成されている。キャップ150内部の天板部151の裏面には、ボトル缶100の開口端面を密閉するための軟質樹脂等からなるシール用部材154が挟み込まれている。
【0021】
ボトル缶100は、アルミニウム、アルミニウム合金、スチール等の金属材料からなる原板を円形状に打ち抜き、それを絞り加工して有底円筒状のカップ成形体を得、更にそれを絞り・しごき加工(DI成形)して有底円筒状の缶体を得た後、ネッキング工程においてテーパー状に縮径した肩部および円筒状の口部を形成し、その後に、ねじ加工などを含む口部の成形を行うことにより、繋ぎ目のない一体物として製造される。
ボトル容器は、ボトル缶100内部に飲料等の内容物が充填され、キャッピング装置によって口部101には有頂筒状のキャップ150が嵌着されることにより、製造される。
ボトル缶100にキャップ150を装着するキャッピング工程においては、口部101の開口端面にシール用部材154が当接するようにキャップ150を被せ、このキャップ150に下方に向かう荷重をかけてボトル缶100内を密封状態とし、この密封状態を維持しながらキャップ150の周壁部152の上部に対して、ねじ部110に対応する高さ位置にスレッドローラーを径方向内方に押し当てながら缶軸回りの周方向に転動させることにより、キャップ150の周壁にねじ部110の雄ねじ形状に適合する雌ねじ形状を成形しながら螺合状態を形成し、また、キャップ150の周壁の下端に対して、スカート部130とビード部140との境目に対向する高さ位置にスカートローラーにより径方向内方に荷重を付与しながら缶軸回りの全周に転動させてキャップ150の裾部153をロールオン成形して、キャップ150の裾部153がスカート部130およびビード部140に密着して係止させる。
【0022】
以上のようなボトル缶100およびボトル容器によれば、ボトル缶100の口部101の口径A(mm)、ボトル缶を形成するための原板の板厚B(mm)、裾部153が係止される環状の係止部120の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)C(mm)が式(1):A×B×C>12.7を満たすことから、キャッピング工程においてキャップ150の裾部153を係止部120に捲き締めて係止することができる形状に成形する際に、キャップ150の周壁部152の下端に径方向内方に向かう荷重がかけられたときに係止部120の径方向内方に凸形状を有するビード部140にキャップ150の周壁部152の下端を介して荷重がかかることが抑制されるので、ボトル缶100を形成するための原板の薄肉化を図った場合であっても、キャッピング工程における口部101の変形を抑止することができて十分なキャップ150の保持力が得られ、ブリッジ切れや充填した内容物の漏洩などのキャッピング不良の発生を防止することができる。
【0023】
以上、本発明の実施形態に係るボトル缶およびボトル容器について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることができる。
例えば、スカート部130およびビード部140の具体的な形状は、キャップ150の裾部153をロールオン成形されて係止部120に係止させることができる形状であれば、各面が平面状でなく弧状湾曲状であってもよい。
また例えば、ボトル缶は缶胴と缶底とが別体として形成されたものであってもよい。
【実施例
【0024】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
以下の仕様で、図1および図2に示すボトル缶〔1〕を10缶作製した。
・容量:300mL
・原板の材質:アルミニウム合金
・原板の板厚:0.315mm
・口部の口径:33.45mm
・係止部の最大外径(スカート部の最大外径):37.80mm
・係止部の最小外径(ビード部の最小外径):34.90mm
・係止部の最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス):1.45mm
・スカート部の下斜面の角度:48.7°
A×B×C=15.3(>12.7)であり、得られた10缶のボトル缶について、係止部を左右から約111Nの荷重で横圧縮し、平面視における初期のビード部の最小外径と横圧縮後のビード部の最小外径との差(以下「たわみ量」とする)を測定した結果、平均値は2.28mmであった。結果を図3に示す。なお、たわみ量は、2.65mm以下であればキャッピング不良の発生が抑制されて実用に耐えると考えられる。
【0025】
〔実施例2〕
実施例1において、係止部の最小外径を変化させて最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)を1.30mmとしたこと以外は同様にして、ボトル缶〔2〕を10缶作製した。
A×B×C=13.7(>12.7)であり、得られた10缶のボトル缶のたわみ量を実施例1と同様にして測定したころ、平均値は2.55mmであった。結果を図3に示す。
【0026】
〔実施例3〕
実施例1において、係止部の最小外径を変化させて最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)を1.50mmとしたこと以外は同様にして、ボトル缶〔3〕を10缶作製した。
A×B×C=15.8(>12.7)であり、得られた10缶のボトル缶のたわみ量を実施例1と同様にして測定したころ、平均値は2.28mmであった。結果を図3に示す。
【0027】
〔実施例4〕
実施例1において、係止部の最小外径を変化させて最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)を1.80mmとしたこと以外は同様にして、ボトル缶〔4〕を10缶作製した。
A×B×C=19.0(>12.7)であり、得られた10缶のボトル缶のたわみ量を実施例1と同様にして測定したころ、平均値は1.75mmであった。結果を図3に示す。
【0028】
〔比較例1〕
実施例1において、係止部の最小外径を変化させて最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)を1.20mmとしたこと以外は同様にして、ボトル缶〔5〕を10缶作製した。
A×B×C=12.6(<12.7)であり、得られた10缶のボトル缶のたわみ量を実施例1と同様にして測定したころ、平均値は3.18mmであった。結果を図3に示す。
【0029】
〔参考例1〕
実施例1において、用いる原板を板厚0.345mmのものとし、係止部の最小外径を変化させて最大外径と最小外径との半径差(ビードデプス)を1.20mmとしたこと以外は同様にして、ボトル缶〔6〕を10缶作製した。
A×B×C=13.8(>12.7)であり、得られた10缶のボトル缶のたわみ量を実施例1と同様にして測定したころ、平均値は2.30mmであった。結果を図3に示す。
【0030】
図3から明らかなように、本発明のボトル缶〔1〕~〔4〕によれば、いずれもたわみ量がキャッピング不良の発生が懸念される2.65mmよりも小さく、軽量化を図ることが可能でありながら、参考例1に係るボトル缶〔5〕のような板厚の大きい原板を使用したボトル缶と同程度の強度(耐たわみ強度)が得られることが確認された。
一方、比較例1に係るボトル缶〔6〕においては、たわみ量が3.18mmと大きく、十分な強度(耐たわみ強度)が得られないことが確認された。
【符号の説明】
【0031】
100 ボトル缶
101 口部
102 肩部
103 カール部
110 ねじ部
120 係止部
130 スカート部
131 上斜面
132 壁面
133 下斜面
140 ビード部
141 上斜面
142 壁面
143 下斜面
144 垂直部
150 キャップ
151 天板部
152 周壁部
153 裾部
154 シール用部材

図1
図2
図3