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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】全固体電池および全固体電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20240528BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20240528BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240528BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240528BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240528BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/44 P
H01M4/13
H01M4/134
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022047821
(22)【出願日】2022-03-24
(65)【公開番号】P2023141482
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】李 西濛
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153582(JP,A)
【文献】特開2020-184407(JP,A)
【文献】特開2019-145299(JP,A)
【文献】特開2010-182448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587;10/36-10/39
H01M4/00-4/62
H01M10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも負極集電体を有する負極と、正極と、前記負極および前記正極の間に配置された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、
前記負極集電体および前記固体電解質層の間に、Mgを含有する保護層が配置され、
前記保護層は、前記Mgを含有するMg含有粒子と、固体電解質とを含む合材層を備え、
前記保護層において、前記固体電解質層側の第1表面から、前記負極集電体側の第2表面に向けて、Mg濃度が段階的または連続的に高くなる、全固体電池。
【請求項2】
前記保護層が、前記合材層より前記負極集電体側の位置に、前記Mgを含有し、かつ、固体電解質を含有しないMg層を備える、請求項1に記載の全固体電池。
【請求項3】
前記Mg層が、前記Mgを含有する金属薄膜である、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項4】
前記金属薄膜の厚さが、1nm以上、5000nm以下である、請求項3に記載の全固体電池。
【請求項5】
前記Mg層が、前記Mgを含有するMg含有粒子を含む層である、請求項2に記載の全固体電池。
【請求項6】
前記保護層が、複数の前記合材層を備える、請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の全固体電池。
【請求項7】
前記負極が、前記負極集電体および前記固体電解質層の間に、析出Liを含有する負極活物質層を有する、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の全固体電池。
【請求項8】
前記負極が、前記負極集電体および前記固体電解質層の間に、析出Liを含有する負極活物質層を有さない、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の全固体電池。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかの請求項に記載の全固体電池と、
前記全固体電池の充放電を制御する制御装置と、
を備える全固体電池システムであって、
前記制御装置は、前記全固体電池を0.5C以上のレートで充電または放電するように制御する、全固体電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全固体電池および全固体電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
全固体電池は、正極および負極の間に固体電解質層を有する電池であり、可燃性の有機溶媒を含む電解液を有する液系電池に比べて、安全装置の簡素化が図りやすいという利点を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した全固体電池が、負極集電体上に形成された金属Mg層を有することが開示されている。また、特許文献2には、全固体電池が、負極層と、固体電解質層との間に、Li-M-Oで表される複合金属酸化物を含む保護層を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-184513号公報
【文献】特開2020-184407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
全固体電池の性能向上の観点から、短絡(例えば、性能低下を引き起こす微短絡)の発生を抑制することが求められる。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、短絡の発生を抑制した全固体電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示においては、少なくとも負極集電体を有する負極と、正極と、上記負極および上記正極の間に配置された固体電解質層と、を有する全固体電池であって、上記負極集電体および上記固体電解質層の間に、Mgを含有する保護層が配置され、上記保護層は、上記Mgを含有するMg含有粒子と、固体電解質とを含む合材層を備え、上記保護層において、上記固体電解質層側の第1表面から、上記負極集電体側の第2表面に向けて、Mg濃度が段階的または連続的に高くなる、全固体電池を提供する。
【0007】
本開示によれば、負極集電体と固体電解質層との間に、Mg含有粒子および固体電解質を含有する合材層を備えた保護層が配置され、さらに、保護層の第1表面から保護層の第2表面に向けて、Mg濃度が段階的または連続的に高くなることから、短絡の発生を抑制した全固体電池となる。
【0008】
上記開示においては、上記保護層が、上記合材層より上記負極集電体側の位置に、Mgを含有し、かつ、固体電解質を含有しないMg層を備えていてもよい。
【0009】
上記開示においては、上記Mg層が、Mgを含有する金属薄膜であってもよい。
【0010】
上記開示においては、上記金属薄膜の厚さが、1nm以上、5000nm以下であってもよい。
【0011】
上記開示においては、上記Mg層が、Mgを含有するMg含有粒子を含む層であってもよい。
【0012】
上記開示においては、上記保護層が、複数の前記合材層を備えていてもよい。
【0013】
上記開示においては、上記負極が、上記負極集電体および上記固体電解質層の間に、析出Liを含有する負極活物質層を有してもよい。
【0014】
上記開示においては、上記負極が、上記負極集電体および上記固体電解質層の間に、析出Liを含有する負極活物質層を有さなくてもよい。
【0015】
また、本開示においては、上述した全固体電池と、上記全固体電池の充放電を制御する制御装置と、を備える全固体電池システムであって、上記制御装置は、上記全固体電池を0.5C以上のレートで充電または放電するように制御する、全固体電池システムを提供する。
【0016】
本開示によれば、上述した全固体電池を、比較的高いレートで充電または放電した場合であっても、短絡の発生を抑制した全固体電池システムとなる。
【発明の効果】
【0017】
本開示においては、短絡の発生を抑制した全固体電池を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。
図2】本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。
図3】本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。
図4】本開示における保護層を例示する概略断面図である。
図5】本開示における保護層を例示する概略断面図である。
図6】本開示における全固体電池システムを例示する模式図である。
図7】実施例および比較例で作製した全固体電池の一部を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示における全固体電池および全固体電池システムについて、詳細に説明する。
【0020】
図1は、本開示における全固体電池を例示する概略断面図である。図1に示す全固体電池10は、負極集電体2を有する負極ANと、正極活物質層3および正極集電体4を有する正極CAと、負極ANおよび正極CAの間に配置された固体電解質層5と、を有する。さらに、図1においては、負極集電体2および固体電解質層5の間に、Mgを含有する保護層6が配置されている。保護層6は、Mgを含有するMg含有粒子と、固体電解質とを含む合材層6aを備える。なお、図1に示すように、保護層6は、負極ANの構成要素として捉えることもできる。
【0021】
保護層6において、固体電解質層5側の第1表面s1から、負極集電体2側の第2表面s2に向けて、Mg濃度が段階的または連続的に高くなる。また、図2(a)に示すように、保護層6は、合材層6aに加えて、合材層6aより負極集電体2側の位置に、Mgを含有し、かつ、固体電解質を含有しないMg層6bを備えてもよい。また、図2(b)に示すように、保護層6は、複数の合材層6aを備えてもよい。
【0022】
例えば、図2(a)に示す全固体電池を充電すると、負極集電体2および固体電解質層5の間に、析出Liを含有する負極活物質層が生成する。具体的には、図3に示すように、負極集電体2および固体電解質層5の間に、析出Liを含有する負極活物質層1が生成する。このように、本開示における全固体電池は、金属リチウムの析出-溶解反応を利用した電池であってもよい。図3においては、合材層6aおよび固体電解質層5の間に、負極活物質層1が生成しているが、充電条件および充電状態によっては、合材層6aおよびMg層6bの間に負極活物質層1が生成する場合、Mg層6bおよび負極集電体2の間に負極活物質層1が生成する場合も想定される。また、合材層6aまたはMg層6bが内部に空隙を有する場合、その空隙にLiが析出する場合も想定される。また、保護層6に含まれるMgは、Liと合金化していることが想定される。
【0023】
本開示によれば、負極集電体と固体電解質層との間に、Mg含有粒子および固体電解質を含有する合材層を備えた保護層が配置され、さらに、保護層の第1表面から保護層の第2表面に向けて、Mg濃度が段階的または連続的に高いことから、短絡の発生を抑制した全固体電池となる。
【0024】
引用文献1のように、負極の反応として金属リチウムの析出-溶解反応を利用した全固体電池において、負極集電体上に金属Mg層を設ける技術が知られている。金属Mg層を設けると、全固体電池の充放電効率を向上させることができる。一方、電流負荷が高い場合、金属リチウムの不均一な析出・溶解が発生する恐れがあり、その結果、短絡が発生する恐れがある。また、Liが不均一に析出した場合、析出Li層(負極活物質層)の剥がれが生じる恐れがある。その結果、全固体電池の電池抵抗が増加する恐れがあり、容量維持率が低下する恐れがある。
【0025】
これに対して、本開示においては、保護層が、Mg含有粒子と、固体電解質とを含む合材層を備えるため、短絡の発生を抑制した全固体電池となる。これは、固体電解質層に含まれる固体電解質と、合材層に含まれる固体電解質とが接触することにより、電力集中が抑制されることで、局所的なLiの析出が抑制され、短絡の発生が抑制されるためと考えられる。また、析出したLiは、Mg含有粒子と合金化し、そのLiが合金中で拡散すると考えられる。これにより、析出Li層と、合材層とがアンカー効果により密着され、析出Li層の剥がれが抑制されると考えられる。さらに、析出Li層の剥がれが抑制されることにより、放電時に析出Li層の再溶解が生じやすくなり、電池抵抗の増加を抑制できる。このように、保護層が、Mg含有粒子と、固体電解質とを含む合材層を備えるため、固体電解質層の負極層側界面におけるLiの入出力特性が向上し、短絡の発生を抑制した全固体電池となる。さらに、保護層の第1表面から保護層の第2表面に向けて、Mg濃度が段階的または連続的に高いことから、例えば、比較的高いレートで充電または放電した場合であっても、短絡の発生を抑制できる。
【0026】
1.保護層
本開示における保護層は、負極集電体および固体電解質層の間に配置され、Mgを含有する層である。また、保護層の固体電解質層側の表面を第1表面とし、保護層の負極集電体側の表面を第2表面とする。例えば、図1に示す保護層6は、固体電解質層5側に第1表面s1を有し、負極集電体2側に第2表面s2を有する。
【0027】
保護層6において、第1表面s1から第2表面s2に向けて、Mg濃度が段階的または連続的に高くなる。図2(a)に示す保護層6は、固体電解質層5側から順に、合材層6aおよびMg層6bを備える。この場合、Mg層6bにおけるMg濃度が、通常、合材層6aにおけるMg濃度より高い。すなわち、保護層6の第1表面s1から保護層6の第2表面s2に向けて、Mg濃度が段階的に高くなっている。Mg濃度は、各層におけるMgの原子組成比率(atm%)として求めることができる。本開示においては、合材層6aの内部のMg濃度が、第1表面から第2表面に向かう方向において、連続的に高くなっていてもよい。同様に、Mg層6bの内部のMg濃度が、第1表面から第2表面に向かう方向において、連続的に高くなっていてもよい。
【0028】
また、保護層は、複数の合材層を備えていてもよい。複数の合材層は、連続的に配置されていることが好ましい。例えば、図4(a)に示す保護層6は、固体電解質層5側から順に、合材層6axおよび合材層6ayを備える。この場合、合材層6ayにおけるMg濃度が、通常、合材層6axにおけるMg濃度より高い。Mg濃度は、例えば、合材層に含まれるMg含有粒子の重量割合により調整できる。そのため、第1表面から第2表面に向かう方向において、各合材層におけるMg含有粒子の重量割合が、段階的に高くなっていてもよい。また、図4(b)に示す保護層6は、固体電解質層5側から順に、合材層6ax、合材層6azおよび合材層6ayを備える。この場合、合材層6ayにおけるMg濃度が、通常、合材層6azにおけるMg濃度より高く、合材層6azにおけるMg濃度が、合材層6axにおけるMg濃度より高い。
【0029】
また、隣り合う一対の層において、第1表面側に位置する層におけるMg濃度をCとし、第2表面側に位置する層におけるMg濃度をCとする。Cは、通常、Cより大きい。Cに対するCの割合(C/C)は、例えば1.2以上であり、2.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。隣り合う一対の層の具体例としては、合材層およびMg層の組み合わせ、2つの合材層の組み合わせ、2つのMg層の組み合わせが挙げられる。
【0030】
また、図5に示すように、保護層6において、第1表面s1を含む領域を第1領域Rとし、第2表面s2を含む領域を第2領域Rとする。第1領域Rは、保護層6の厚さをTとした場合に、第1表面s1から、厚さ方向に沿って、0.5Tまでに存在する、保護層6の領域である。一方、第2領域Rは、保護層6の厚さをTとした場合に、第2表面s2から、厚さ方向に沿って、0.5Tまでに存在、保護層6の領域である。このように、具体的な層構成を限定せずに、第1領域Rおよび第2領域Rを定義する。また、第1領域RにおけるMg濃度をCとし、第2領域RにおけるMg濃度をCとする。
【0031】
は、通常、Cより大きい。Cに対するCの割合(C/C)は、例えば1.2以上であり、2.0以上であってもよく、5.0以上であってもよい。また、Cは、例えば50atm%以上であり、70atm%以上であってもよく、90atm%以上であってよい。一方、Cは、通常、0atm%より大きい。
【0032】
(1)合材層
合材層は、Mgを含有するMg含有粒子と、固体電解質とを含む。合材層において、Mg含有粒子および固体電解質は混合されている。
【0033】
(i)Mg含有粒子
Mg含有粒子は、Mgを含有する。Mg含有粒子は、Mg単体の粒子(Mg粒子)であってもよく、MgおよびMg以外の元素を含有する粒子であってもよい。Mg以外の元素としては、例えば、Li、および、Li以外の金属(半金属を含む)が挙げられる。また、Mg以外の元素の他の例としては、例えば、O等の非金属が挙げられる。
【0034】
Mg含有粒子上では金属Liの核が安定して形成されやすいため、Mg含有粒子を用いると、より安定したLiの析出が可能となる。また、Mgは、Liと単一相を形成できる組成域が広いため、より効率的なLiの溶解・析出が可能となる。
【0035】
Mg含有粒子は、Mgと、Mg以外の金属と、を含有する合金粒子(Mg合金粒子)であってもよい。Mg合金粒子は、Mgを主成分として含有する合金であることが好ましい。Mg合金粒子におけるMg以外の金属Mとしては、例えば、Li、Au、AlおよびNiを挙げることができる。Mg合金粒子は、1種の金属Mを含有していてもよく、2種以上の金属Mを含有していてもよい。また、Mg含有粒子は、Liを含有していてもよく、含有していなくてもよい。前者の場合、合金粒子は、LiおよびMgのβ単相の合金を含んでいてもよい。
【0036】
Mg含有粒子は、Mgと、Oと、を含有する酸化物粒子(Mg酸化物粒子)であってもよい。Mg酸化物粒子としては、例えば、Mg単体の酸化物、Mg-M´-O(M´は、Li、Au、AlおよびNiのうち少なくとも一つ)で表される複合金属酸化物が挙げられる。Mg酸化物粒子は、M´としては少なくともLiを含有することが好ましい。M´はLi以外の金属を含有していてもよく、含有していなくてもよい。前者の場合、M´はLi以外の金属の1種であってもよく、2種以上であってもよい。一方、Mg含有粒子は、Oを含有していなくてもよい。
【0037】
Mg含有粒子は、一次粒子であってもよく、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。また、Mg含有粒子の平均粒径(D50)は小さいことが好ましい。平均粒径が小さいと、合材層においてMg含有粒子の分散性が向上し、Liとの反応点が増え、短絡の抑制により効果的だからである。Mg含有粒子の平均粒径(D50)は、例えば500nm以上であり、800nm以上であってもよい。一方、Mg含有粒子の平均粒径(D50)は、例えば20μm以下であり、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。なお、平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布計により算出された値、またはSEM等の電子顕微鏡を用いた画像解析に基づいて測定された値を用いることができる。
【0038】
また、Mg含有粒子の平均粒径(D50)は、後述する固体電解質の平均粒径(D50)と同じであってもよく、大きくてもよく、小さくてもよい。ここで、Mg含有粒子の平均粒径をXとし、固体電解質の平均粒径をYとした場合、Mg含有粒子の平均粒径(D50)と、固体電解質の平均粒径(D50)とが同じであるとは、両者の差(X-Yの絶対値)が、5μm以下であることをいう。Mg含有粒子の平均粒径(D50)が、固体電解質の平均粒径(D50)より大きいとは、X-Yが5μmより大きいことをいう。この場合、X/Yは、例えば1.2以上であり、2以上であってもよく、5以上であってもよい。一方、X/Yは、例えば100以下であり、50以下であってもよい。Mg含有粒子の平均粒径(D50)が、固体電解質の平均粒径(D50)より小さいとは、Y-Xが5μmより大きいことをいう。この場合、Y/Xは、例えば1.2以上であり、2以上であってもよく、5以上であってもよい。一方、Y/Xは、例えば100以下であり、50以下であってもよい。
【0039】
合材層におけるMg含有粒子の割合は、例えば10重量%以上であり、30重量%以上であってもよい。一方、Mg含有粒子の上記割合は、例えば90重量%以下であり、70重量%以下であってもよい。
【0040】
(ii)固体電解質
合材層は、固体電解質を含有する。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質および錯体水素化物等の無機固体電解質が挙げられる。これらの中でも、特に硫化物固体電解質が好ましい。硫化物固体電解質は、通常、アニオン元素の主成分として、硫黄(S)を含有する。硫化物固体電解質は、通常、アニオン元素の主成分として、硫黄(S)を含有する。酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、ハロゲン化物固体電解質は、通常、アニオン元素の主成分として、それぞれ、酸素(О)、窒素(N)、ハロゲン(X)を含有する。
【0041】
硫化物固体電解質は、例えば、Li元素、X元素(Xは、P、As、Sb、Si、Ge、Sn、B、Al、Ga、Inの少なくとも一種である)、および、S元素を含有することが好ましい。また、硫化物固体電解質は、O元素およびハロゲン元素の少なくとも一方をさらに含有していてもよい。なお、硫化物固体電解質は、S元素をアニオン元素の主成分として含有することが好ましい。
【0042】
硫化物固体電解質としては、例えば、LiS-P、LiS-P-LiI、LiS-P-GeS、LiS-P-LiO、LiS-P-LiO-LiI、LiS-P-LiI-LiBr、LiS-SiS、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiBr、LiS-SiS-LiCl、LiS-SiS-B-LiI、LiS-SiS-P-LiI、LiS-B、LiS-P-ZSn(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、LiS-GeS、LiS-SiS-LiPO、LiS-SiS-LiMO(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)が挙げられる。
【0043】
固体電解質は、ガラス状であってもよく、結晶相を有していてもよい。固体電解質の形状は、通常、粒子状である。固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば0.01μm以上である。一方、固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば10μm以下であり、5μm以下であってもよい。固体電解質の25℃におけるイオン伝導度は、例えば1×10-4S/cm以上であり、1×10-3S/cm以上であってもよい。
【0044】
合材層における固体電解質の割合は、例えば10重量%以上であり、30重量%以上であってもよい。一方、合材層における固体電解質の割合は、例えば90重量%以下であり、70重量%以下であってもよい。また、合材層において、Mg含有粒子および固体電解質の合計に対する、Mg含有粒子の割合は、例えば10重量%以上であり、30重量%以上であってもよい。一方、Mg含有粒子の割合は、例えば90重量%以下であり、70重量%以下であってもよい。
【0045】
(iii)合材層
合材層は、必要に応じてバインダーを含有していてもよい。合材層自体に割れが生じることを抑制することができる。バインダーとしては、例えば、フッ素系バインダー、ゴム系バインダーが挙げられる。フッ素系バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。また、ゴム系バインダーとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)、アクリレートブタジエンゴム(ABR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)が挙げられる。合材層の厚さは、例えば、0.1μm以上、1000μm以下である。
【0046】
本開示における保護層は、合材層を1層のみ備えていてもよく、2層以上備えていてもよい。また、合材層の形成方法としては、例えば、Mg含有粒子および固体電解質を少なくとも含有するスラリーを、基板上に塗工する方法が挙げられる。
【0047】
(2)Mg層
本開示における保護層は、合材層より負極集電体側の位置に、Mgを含有し、かつ、固体電解質を含有しないMg層を備えていてもよい。負極集電体および合材層の間にMg層が配置されることにより、Liの拡散をより促進できる。また、合材層に含まれる固体電解質が負極集電体と直接接触しないため、Liの析出起点をMg上のみとすることができる。これにより、Liをより均一に析出させることができる。
【0048】
Mg層は、その全ての構成元素において、Mgの割合が最も多い層である。Mg層におけるMgの割合は、例えば50atm%以上であり、70atm%以上であってもよく、90atm%以上であってもよく、100atm%であってもよい。Mg層としては、例えば、Mgを含有する金属薄膜(例えば蒸着膜)、Mg含有粒子を含む層が挙げられる。Mgを含有する金属薄膜は、Mgを主成分とすることが好ましい。また、Mg含有粒子については、上述した通りである。Mg層は、Mg含有粒子のみを含有する層であってもよい。
【0049】
Mg層の厚さは、例えば、10nm以上、10μm以下である。中でも、Mg層が、Mgを含有する金属薄膜である場合、その厚さは、5000nm以下であることが好ましく、3000nm以下であってもよく、1000nm以下であってもよく、700nm以下であってもよい。一方、Mg層の厚さは、50nm以上であってもよく、100nm以上であってもよい。
【0050】
本開示における保護層は、Mg層を1層のみ備えていてもよく、2層以上備えていてもよい。一方、本開示における保護層は、Mg層を備えていなくてもよい。Mg層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法等のPVD法、または、電解めっき法、無電解めっき法等のめっき法により、負極集電体上に成膜する方法;Mg含有粒子をプレスする方法が挙げられる。
【0051】
また、図2(a)に示すように、Mg層6bおよび合材層6aは、直接接触していてもよい。同様に、合材層6aおよび固体電解質層5は、直接接触していてもよい。同様に、Mg層6bおよび負極集電体2は、直接接触していてもよい。また、図1および図2(b)に示すように、合材層6aおよび負極集電体2は、直接接触していてもよい。
【0052】
2.負極
本開示における負極は、少なくとも負極集電体を有する。図2(a)に示すように、負極ANは、負極集電体2および固体電解質層5の間に、析出Liを含有する負極活物質層を有しなくてもよい。また、図3に示すように、負極ANは、負極集電体2および固体電解質層5の間に、析出Liを含有する負極活物質層1を有してもよい。
【0053】
負極が負極活物質層を有する場合、負極活物質層は、負極活物質として、Li単体およびLi合金のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。なお、本開示において、Li単体およびLi合金をLi系活物質と総称する場合がある。負極活物質層がLi系活物質を含有する場合、保護層におけるMg含有粒子は、Liを含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0054】
例えば、負極活物質としてLi箔またはLi合金箔を用い、Mg含有粒子としてMg粒子を用いて製造した全固体電池では、初回放電時に、Mg粒子はLiと合金化すると推測される。一方、負極活物質層を設けず、Mg含有粒子としてMg粒子を用い、Liを含有する正極活物質を用いて製造した全固体電池では、初回充電時に、Mg粒子はLiと合金化すると推測される。
【0055】
負極活物質層は、Li系活物質として、Li単体およびLi合金の一方のみを含有していてもよく、Li単体およびLi合金の両方を含有していてもよい。
【0056】
Li合金はLi元素を主成分として含有する合金が好ましい。Li合金としては、例えば、Li-Au、Li-Mg、Li-Sn、Li-Al、Li-B、Li-C、Li-Ca、Li-Ga、Li-Ge、Li-As、Li-Se、Li-Ru、Li-Rh、Li-Pd、Li-Ag、Li-Cd、Li-In、Li-Sb、Li-Ir、Li-Pt、Li-Hg、Li-Pb、Li-Bi、Li-Zn、Li-Tl、Li-TeおよびLi-Atが挙げられる。Li合金は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0057】
Li系活物質の形状としては、例えば、箔状、粒子状が挙げられる。また、Li系活物質は、析出した金属リチウムであってもよい。
【0058】
負極活物質層の厚さは特に限定されないが、例えば1nm以上、1000μm以下であり、1nm以上、500μm以下であってもよい。
【0059】
負極集電体の材料としては、例えば、SUS、Cu、Ni、In、AlおよびCが挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状が挙げられる。また、負極集電体の表面は、粗化処理されていてもよく、粗化処理されていなくてもよい。負極集電体の表面が平滑な場合、濡れ性の観点から好ましい。また、負極集電体の表面が粗な場合、負極集電体との接触面積が増える観点から好ましい。接触面積が増えると、界面接合がより強固となり、部材の剥がれをより抑制することができる。負極集電体の表面粗さ(Ra)は、例えば0.1μm以上であり、0.3μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよい。一方、負極集電体の表面粗さ(Ra)は、例えば5μm以下であり、3μm以上であってもよい。表面粗さ(Ra)は、JIS B0601に準拠した方法で求めることができる。
【0060】
4.正極
本開示における正極は、正極活物質層および正極集電体を有することが好ましい。本開示における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層である。また、正極活物質層は、必要に応じて、固体電解質、導電材およびバインダーのうち少なくとも一つを含有していてもよい。
【0061】
正極活物質は、負極活物質よりも高い反応電位を有する活物質であれば、特に限定されず、全固体電池に使用可能な正極活物質を用いることができる。正極活物質は、リチウム元素を含んでいてもよく、リチウム元素を含んでいなくてもよい。
【0062】
リチウム元素を含む正極活物質の一例としては、リチウム酸化物が挙げられる。リチウム酸化物としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiTi12、LiMn、LiMn1.5Al0.5、LiMn1.5Mg0.5、LiMn1.5Co0.5、LiMn1.5Fe0.5およびLiMn1.5Zn0.5等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO、LiNiPO、LiCoPO等のオリビン型活物質が挙げられる。また、リチウム元素を含む正極活物質の他の例としては、LiCoN、LiSiO、LiSiO、硫化リチウム(LiS)、多硫化リチウム(Li、2≦x≦8)が挙げられる。
【0063】
一方、リチウム元素を含まない正極活物質としては、例えば、V、MoO等の遷移金属酸化物;S、TiS等のS系活物質;Si、SiO等のSi系活物質;MgSn、MgGe、MgSb、CuSb等のリチウム貯蔵性金属間化合物が挙げられる。
【0064】
また、正極活物質の表面には、イオン伝導性酸化物を含有するコート層が形成されていてもよい。コート層により、正極活物質と固体電解質との反応を抑制することができる。イオン伝導性酸化物としては、例えば、LiNbO、LiTi12、LiPOが挙げられる。
【0065】
正極活物質層における正極活物質の割合は、例えば20重量%以上であり、30重量%以上であってもよく、40重量%以上であってもよい。一方、正極活物質層における正極活物質の割合は、例えば80重量%以下であり、70重量%以下であってもよく、60重量%以下であってもよい。
【0066】
導電材としては、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料の具体例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、VGCF、グラファイトが挙げられる。固体電解質およびバインダーについては、「1.保護層」に記載した内容と同様である。また、正極活物質層の厚さは、例えば0.1μm以上、1000μm以下である。
【0067】
正極集電体は、例えば、正極活物質層を基準にして、固体電解質層とは反対側に配置される。正極集電体の材料としては、例えば、Al、Ni、およびCが挙げられる。正極集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状が挙げられる。
【0068】
5.固体電解質層
本開示における固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有する層である。また、固体電解質層は、必要に応じてバインダーを含有していてもよい。固体電解質およびバインダーについては、「1.保護層」に記載した内容と同様である。
【0069】
固体電解質層に含まれる固体電解質と、合材層に含まれる固体電解質とは、同種の固体電解質であることが好ましい。固体電解質層および合材層の密着性が向上するからである。具体的に、固体電解質層に含まれる固体電解質が硫化物固体電解質である場合、合材層に含まれる固体電解質も硫化物固体電解質であることが好ましい。硫化物固体電解質の代わりに、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質等の他の無機固体電解質を用いた場合も同様である。また、固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。
【0070】
6.全固体電池
本開示における全固体電池は、正極、固体電解質層および負極に対して、厚さ方向に沿って拘束圧を付与する拘束治具をさらに有していてもよい。拘束治具としては、公知の治具を用いることができる。拘束圧は、例えば0.1MPa以上であり、1MPa以上であってもよい。一方、拘束圧は、例えば50MPa以下であり、20MPa以下であってもよく、15MPa以下であってもよく、10MPa以下であってもよい。
【0071】
本開示における全固体電池の種類は、特に限定されないが、典型的にはリチウムイオン二次電池である。本開示における全固体電池は、単電池であってもよく、積層電池であってもよい。積層電池は、モノポーラ型積層電池(並列接続型の積層電池)であってもよく、バイポーラ型積層電池(直列接続型の積層電池)であってもよい。電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、角型が挙げられる。
【0072】
本開示における全固体電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。また、本開示における全固体電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【0073】
B.全固体電池システム
図6は、本開示における全固体電池システムを例示する模式図である。図6に示す全固体電池システム100は、全固体電池10と、全固体電池10の充放電を制御する制御装置20と、を有する。また、全固体電池システム100は、全固体電池10の状態を監視する監視装置30を有し、制御装置20は、監視装置30から全固体電池10の状態に関する情報を取得する。全固体電池システム100は、全固体電池10として、上述した全固体電池を有し、制御装置20は、全固体電池10を比較的高いレートで充電または放電するように制御する。
【0074】
本開示によれば、上述した全固体電池を、比較的高いレートで充電または放電した場合であっても、短絡の発生を抑制できる。
【0075】
1.全固体電池
本開示における全固体電池については、上記「A.全固体電池」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
2.制御装置
本開示における制御装置は、全固体電池を0.5C以上のレートで充電または放電するように制御する。制御装置は、全固体電池を1.0C以上のレートで充電または放電するように制御してもよい。また、制御装置は、全固体電池を、例えば3.0Cを超えないように、充電または放電するように制御してもよい。
【0077】
3.全固体電池システム
本開示における全固体電池システムは、全固体電池の状態を監視する監視装置を有していてもよい。監視装置としては、例えば電流センサ、電圧センサおよび温度センサが挙げられる。
【0078】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例
【0079】
[実施例1]
(合材層の作製)
バインダー溶液(スチレンブタジエン溶液)と、溶媒(メシチレンおよびジブチルエーテル)とを、PP(ポリプロピレン)製容器に投入し、振とう機で3分間混合させた。その後、Mg粒子(平均粒径D50=800nm)と、固体電解質粒子(硫化物固体電解質、10LiI-15LiBr-75LiPS、平均粒径D50=800nm)とを、Mg粒子:固体電解質粒子=50:50の重量比となるよう秤量し、PP製容器に投入した。振とう機で3分間処理し、超音波分散装置で30秒間処理し、これを2回繰り返し、スラリーを作製した。続けて、塗工ギャップが25μmのアプリケータを用いて、基板(Al箔)上にスラリーを塗工して自然乾燥させた。表面が乾燥したことを目視で確認し、その後、100℃のホットプレート上で30分間乾燥させた。これにより、基板上に合材層が形成された転写部材を作製した。
【0080】
(Mg層の作製)
蒸着法により、負極集電体(SUS箔)上に、Mg層(蒸着膜、厚さ700nm)を形成した。これにより、Mg層を有する負極集電体を得た。
【0081】
(正極合材の作製)
正極活物質(LiNi1/3Co1/3Mn1/3)と、硫化物固体電解質(10LiI-15LiBr-75LiPS、平均粒径D50=0.5μm)と、導電材(気相成長炭素繊維、VGCF)とを、それぞれ800mg、127mg、12mg秤量した。これらを、脱水ヘプタン中で超音波ホモジナイザーを用いて分散させた。得られた分散液を、100℃で1時間乾燥することで、正極合材を得た。
【0082】
(全固体電池の作製)
圧粉方式プレスセル(φ11.28mm)の全固体電池を作製した。具体的には、シリンダに、硫化物固体電解質(10LiI-15LiBr-75LiPS、平均粒径D50=0.5μm)を101.7mg入れ、1tonのプレス圧で1分間プレスし、固体電解質層を得た。次に、固体電解質層の一方の表面上に、正極合材を31.3mg添加し、6tonのプレス圧で1分間プレスし、正極活物質層を得た。次に、固体電解質層の他方の表面上に、固体電解質層および合材層が接触するように転写部材を積層し、これを1tonでプレスし、その後、Al箔を剥がした。露出した合材層と、Mg層とが接触するように、Mg層を有する負極集電体(SUS箔)を配置し、1tonのプレス圧で1分間プレスして、電極体を得た。この電極体を、ボルト3本を用いて、0.2N・mのトルクで拘束した。これにより、全固体電池を得た。得られた全固体電池は、図7(a)に示すように、固体電解質層(SE)および負極集電体(SUS)の間に、合材層(Mg/SE)およびMg層(蒸着膜)が配置されていた。
【0083】
[比較例1]
合材層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして全固体電池を得た。得られた全固体電池は、図7(b)に示すように、固体電解質層(SE)および負極集電体(SUS)の間に、Mg層(蒸着膜)が配置されていた。
【0084】
[比較例2]
Mg層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして全固体電池を得た。得られた全固体電池は、図7(c)に示すように、固体電解質層(SE)および負極集電体(SUS)の間に、合材層(Mg/SE)が配置されていた。
【0085】
[評価]
(充放電評価)
実施例1および比較例1、2で得られた全固体電池を、60℃の恒温槽で3時間静置した。その後、0.1Cで3サイクル充放電した。次に、0.5Cで3サイクル充放電した。次に、1Cで3サイクル充放電した。0.1Cにおける1サイクル目の放電容量を100%とした場合の、各レートそれぞれの平均容量(容量維持率)を算出した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、実施例1は、比較例1、2よりも容量維持率が高く、短絡の発生が抑制されていることが示唆された。また、実施例1では、0.5Cおよび1.0Cにおいても、容量維持率を高く維持することができた。
【符号の説明】
【0088】
1…負極活物質層
2…負極集電体
3…正極活物質層
4…正極集電体
5…固体電解質層
6…保護層
6a…合材層
6b…Mg層
10…全固体電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7