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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】プロジェクター
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240528BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20240528BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240528BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20240528BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20240528BHJP
   H04N 5/74 20060101ALI20240528BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240528BHJP
【FI】
G03B21/14 A
G03B21/00 D
F21S2/00 340
F21S2/00 330
F21V9/32
F21V8/00 330
F21V8/00 340
F21V8/00 310
H04N5/74 Z
F21Y115:10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2022051312
(22)【出願日】2022-03-28
(65)【公開番号】P2023144375
(43)【公開日】2023-10-11
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】坂田 秀文
【審査官】西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0187482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0338667(US,A1)
【文献】特開2004-138669(JP,A)
【文献】特開2009-003171(JP,A)
【文献】特開2018-205764(JP,A)
【文献】特開2011-039395(JP,A)
【文献】特開2021-149021(JP,A)
【文献】特開2021-152632(JP,A)
【文献】特開2017-147420(JP,A)
【文献】国際公開第2013/114665(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/020014(WO,A1)
【文献】特開2008-176195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 8/00
F21V 9/32
F21Y 115/10
G02B 27/00-30/60
G03B 21/00-21/10
G03B 21/12-21/30
G03B 21/56-21/64
G03B 33/00-33/16
H01S 5/00-5/50
H04N 5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、
第1光源装置と、
前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、
を備え、
前記第1光源装置は、
第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、
蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる
第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2
光を射出する射出部と、
を備え、
前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1
端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前
記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有し、
前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有し、
前記波長変換部材は、前記波長変換部材の長手方向において互いに反対側に位置する第
1面および第2面と、前記第1面および前記第2面と交差する第3面と、を有し、
前記第2光は、前記第1面から前記射出部に向かって射出され、
前記発光素子から射出される前記第1光は、前記第3面に入射し、
前記長手方向に沿う前記射出部の長さをHとし、前記長手方向と交差する方向に沿う前
記射出部の長さをLとすると、HとLとの比H/Lは、1.3以上かつ3.0以下である

プロジェクター。
【請求項2】
フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、
第1光源装置と、
前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、
を備え、
前記第1光源装置は、
第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、
蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる
第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2
光を射出する射出部と、
を備え、
前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1
端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前
記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有し、
前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有し、
前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する第3光を射出する
第2光源装置と、
前記第1光源装置から射出される前記第2光と、前記第2光源装置から射出される前記
第3光と、を合成し、第1合成光を射出する光合成素子と、
をさらに備え、
前記光変調素子は、前記光合成素子から射出される前記第1合成光を変調する、
プロジェクター。
【請求項3】
前記第1波長帯、前記第2波長帯、および前記第3波長帯とは異なる第4波長帯を有す
る第4光を射出する第3光源装置をさらに備え、
前記光合成素子は、前記第1光源装置から射出される前記第2光と、前記第2光源装置
から射出される前記第3光と、前記第3光源装置から射出される前記第4光と、を合成し
、第2合成光を射出し、
前記光変調素子は、前記光合成素子から射出される前記第2合成光を変調する、
請求項2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記光変調素子は、カラーフィルターを備える、
請求項3に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記第1光源装置、前記第2光源装置、および前記第3光源装置のそれぞれは、時間順
次に点灯され、
前記光変調素子は、前記第1光源装置、前記第2光源装置、および前記第3光源装置の
それぞれの点灯タイミングに同期して駆動される、
請求項3に記載のプロジェクター。
【請求項6】
フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、
第1光源装置と、
前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、
を備え、
前記第1光源装置は、
第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、
蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる
第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、
前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2
光を射出する射出部と、
を備え、
前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1
端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前
記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有し、
前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有すし、
前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する第3光を射出する
第2光源装置と、
光合成素子と、をさらに備え、
前記光変調素子は、前記第1光源装置から射出される前記第2光を変調する第1光変調
素子と、前記第2光源装置から射出される前記第3光を変調する第2光変調素子と、を有
し、
前記光合成素子は、前記第1光変調素子から射出される第1変調光と、前記第2光変調
素子から射出される第2変調光と、を合成する、
プロジェクター。
【請求項7】
前記第1波長帯、前記第2波長帯、および前記第3波長帯とは異なる第4波長帯を有す
る第4光を射出する第3光源装置をさらに備え、
前記光変調素子は、前記第3光源装置から射出される前記第4光を変調する第3光変調
素子をさらに有し、
前記光合成素子は、前記第1変調光と、前記第2変調光と、前記第3光変調素子から射
出される第3変調光と、を合成する、
請求項6に記載のプロジェクター。
【請求項8】
前記波長変換部材は、前記波長変換部材の長手方向において互いに反対側に位置する第
1面および第2面と、前記第1面および前記第2面と交差する第3面と、を有し、
前記第2光は、前記第1面から前記射出部に向かって射出され、
前記発光素子から射出される前記第1光は、前記第3面に入射する、
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項9】
前記第1面の形状は矩形状であり、前記光変調素子の有効変調領域の形状は矩形状であ
る、
請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項10】
前記射出部の形状は、四角錐状である、
請求項9に記載のプロジェクター。
【請求項11】
前記長手方向に沿う前記射出部の長さをHとし、前記長手方向と交差する方向に沿う前
記射出部の長さをLとすると、HとLとの比H/Lは、1.3以上かつ3.0以下である

請求項8に記載のプロジェクター。
【請求項12】
前記波長変換部材と前記射出部とは、一体の部材で構成されている、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項13】
前記射出部は、前記波長変換部材とは別体の透光性部材で構成され、前記波長変換部材
に接合されている、
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項14】
前記射出部から射出される前記第2光を透過させる角度変換レンズをさらに備え、
前記角度変換レンズから射出される前記第2光の放射角度は、前記角度変換レンズに入
射する前記第2光の放射角度よりも小さい、
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項15】
前記角度変換レンズは、前記第1光源装置と前記光変調素子との間に設けられている、
請求項14に記載のプロジェクター。
【請求項16】
前記角度変換レンズは、非球面レンズで構成されている、
請求項14または請求項15に記載のプロジェクター。
【請求項17】
前記光変調素子は、透過型光変調素子で構成されている、
請求項1から請求項16までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項18】
前記光変調素子は、反射型光変調素子で構成されている、
請求項1から請求項16までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクターにおいては、例えばプロジェクターからスクリーンまでの距離を変える毎に、投写光学系の焦点距離を調整して画像のフォーカスを合わせる作業が必要であった。これに対して、画像のフォーカスを合わせる作業が不要なプロジェクターが提案されている。この種のプロジェクターの一例として、下記の特許文献1に、透過型の空間光変調器と、空間光変調器を照射するレーザー光を射出するレーザー光源と、を備えるプロジェクターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/145400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、このプロジェクターでは、空間光変調器の各画素から射出される光ビームがレーザー光から形成され、高い指向性を有するため、プロジェクターからスクリーンまでの距離が変化した場合でもデフォーカスによる画像のぼやけが生じることはない、と記載されている。ところが、特許文献1のプロジェクターにおいては、投写光のコヒーレンスが高いため、スクリーンで散乱した光が干渉してスペックルノイズが発生する。そのため、投写画像が局所的にぎらつき、表示品質が低下する、という問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様のプロジェクターは、フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、第1光源装置と、前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、を備える。前記第1光源装置は、第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2光を射出する射出部と、を備える。前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有する。前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有する。
また、本発明の一つの態様のプロジェクターは、フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、第1光源装置と、前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、を備え、前記第1光源装置は、第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2光を射出する射出部と、を備え、前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有し、前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有し、前記波長変換部材は、前記波長変換部材の長手方向において互いに反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面および前記第2面と交差する第3面と、を有し、前記第2光は、前記第1面から前記射出部に向かって射出され、前記発光素子から射出される前記第1光は、前記第3面に入射し、前記長手方向に沿う前記射出部の長さをHとし、前記長手方向と交差する方向に沿う前記射出部の長さをLとすると、HとLとの比H/Lは、1.3以上かつ3.0以下である。
また、本発明の一つの態様のプロジェクターは、フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、第1光源装置と、前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、を備え、前記第1光源装置は、第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2光を射出する射出部と、を備え、前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有し、前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有し、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する第3光を射出する第2光源装置と、前記第1光源装置から射出される前記第2光と、前記第2光源装置から射出される前記第3光と、を合成し、第1合成光を射出する光合成素子と、をさらに備え、前記光変調素子は、前記光合成素子から射出される前記第1合成光を変調する。
また、本発明の一つの態様のプロジェクターは、フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、第1光源装置と、前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、を備え、前記第1光源装置は、第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2光を射出する射出部と、を備え、前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有し、前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有すし、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する第3光を射出する第2光源装置と、光合成素子と、をさらに備え、前記光変調素子は、前記第1光源装置から射出される前記第2光を変調する第1光変調素子と、前記第2光源装置から射出される前記第3光を変調する第2光変調素子と、を有し、前記光合成素子は、前記第1光変調素子から射出される第1変調光と、前記第2光変調素子から射出される第2変調光と、を合成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図2】第1実施形態の第1光源装置の概略構成図である。
図3】第1光源装置の斜視図である。
図4A】H/L=1.2のときの蛍光の放射角度分布を示す図である。
図4B】H/L=1.2のときの蛍光の照度分布を示す図である。
図5A】H/L=1.3のときの蛍光の放射角度分布を示す図である。
図5B】H/L=1.3のときの蛍光の照度分布を示す図である。
図6A】H/L=1.4のときの蛍光の放射角度分布を示す図である。
図6B】H/L=1.4のときの蛍光の照度分布を示す図である。
図7A】H/L=1.5のときの蛍光の放射角度分布を示す図である。
図7B】H/L=1.5のときの蛍光の照度分布を示す図である。
図8A】H/L=1.6のときの蛍光の放射角度分布を示す図である。
図8B】H/L=1.6のときの蛍光の照度分布を示す図である。
図9A】H/L=1.7のときの蛍光の放射角度分布を示す図である。
図9B】H/L=1.7のときの蛍光の照度分布を示す図である。
図10A】H/L=1.8のときの蛍光の放射角度分布を示す図である。
図10B】H/L=1.8のときの蛍光の照度分布を示す図である。
図11】第2実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図12】第3実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図13】第4実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図14】第5実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図15】第6実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図16】第7実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を用いて説明する。
本実施形態のプロジェクターは、光変調素子として液晶パネルを用いたプロジェクターの一例である。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0008】
図1は、本実施形態のプロジェクター10の概略構成を示す図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター10は、第1光源装置20と、光変調素子30と、角度変換レンズ40と、を備える。プロジェクター10は、フォーカスフリーで被投写体に任意の画像を投写する。被投写体は、プロジェクター10が生成する画像が投写される媒体であって、例えばスクリーン、壁、ガラス、机、建築物、水滴または粉末粒子の集合体等を含む。また、画像は、例えば文字、絵、記号、模様、2次元バーコード等の符号化されたパターン等を含む。
【0009】
本明細書において、フォーカスフリーのプロジェクターとは、光変調素子の像を被投写体上に結像するための結像光学系を有していないプロジェクターであって、例えばプロジェクターからスクリーンまでの距離が変化した場合でも投写画像のフォーカス合わせ作業が不要なプロジェクターを意味する。本実施形態のプロジェクター10においては、後述するように、極めて小さい射出部54から蛍光Yを射出する第1光源装置20を備えているため、光変調素子30の複数の画素を通過した光が互いに混ざることがなく、結像光学系を用いずに被投写体上にフォーカスが合った画像を投写することができる。
【0010】
以下、図面においては、必要に応じてXYZ直交座標系を用いて説明する。X軸は、第1光源装置20の光軸AX1に平行な軸である。第1光源装置20の光軸AX1は、第1光源装置20から射出される蛍光Yの中心軸である。Y軸は、波長変換部材50と光源部51とが並ぶ方向に沿う軸である。Z軸は、X軸およびY軸に直交する軸である。
【0011】
図2は、第1実施形態の第1光源装置20の概略構成図である。図3は、第1光源装置20の斜視図である。
図2に示すように、第1光源装置20は、波長変換部材50と、光源部51と、反射部材53と、射出部54と、を備える。また、光源部51は、基板55と、発光素子56と、を備える。その他、第1光源装置20は、波長変換部材50を支持する支持部材等を備えていてもよい。
【0012】
波長変換部材50は、X軸方向に延びる四角柱状の形状を有し、6つの面を有する。波長変換部材50のX軸方向に延びる辺は、Y軸方向に延びる辺およびZ軸方向に延びる辺よりも長い。したがって、X軸方向は、波長変換部材50の長手方向に対応する。Y軸方向に延びる辺の長さとZ軸方向に延びる辺の長さとは等しい。換言すると、X軸方向に垂直な面(YZ平面)で切断した波長変換部材50の断面形状は、矩形状である。すなわち、X軸方向に垂直な面で切断した波長変換部材50の断面形状は、正方形であってもよいし、長方形であってもよい。
【0013】
波長変換部材50は、波長変換部材50の長手方向(X軸方向)に交差し、射出部54が設けられる第1面50aと、波長変換部材50の長手方向(X軸方向)に交差し、第1面50aとは反対側に位置する第2面50bと、第1面50aおよび第2面50bと交差し、互いに反対側に位置する第3面50cおよび第4面50dと、第3面50cおよび第4面50dと交差し、互いに反対側に位置する第5面および第6面(図示略)と、を有する。以下の説明で、第3面50c、第4面50d、第5面、および第6面の4つの面を合わせて、側面50gと称する。
【0014】
波長変換部材50の第1面50aの中心と第2面50bの中心とを通り、X軸に平行な軸を波長変換部材50の中心軸Jと定義する。波長変換部材50の中心軸Jは、第1光源装置20の光軸AX1に一致する。
【0015】
本実施形態においては、後述するように、波長変換部材50と射出部54とは一体の部材で構成されているため、上記の6つの面のうち、第1面50aは、実在する面ではなく、射出部54との境界を規定する仮想的な面と定義する。波長変換部材50は、四角柱状の形状であることが望ましいが、必ずしも四角柱状の形状を有していなくてもよく、例えば三角柱状、円柱状などの形状を有していてもよい。波長変換部材50の形状が三角柱状である場合、第1面および第2面に交差する3つの面を合わせて、側面50gと称する。波長変換部材50の形状が円柱状である場合、第1面および第2面に交差する連続した1つの曲面を、側面50gと称する。
【0016】
波長変換部材50は、蛍光体を少なくとも含み、第1波長帯を有する励起光(第1光)Eを、第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する蛍光Yに変換する。本実施形態では、後述する発光素子56から射出される励起光Eは、第3面50cに入射する。蛍光Yは、波長変換部材50の内部を導光した後、第1面50aから射出部54に向かって射出され、射出部54から外部に射出される。
【0017】
波長変換部材50は、励起光Eを蛍光Yに波長変換する多結晶蛍光体からなるセラミック蛍光体を含んでいる。蛍光Yが有する第2波長帯は、例えば490~750nmの黄色の波長帯である。すなわち、蛍光Yは、赤色光成分および緑色光成分を含む黄色の蛍光である。
【0018】
波長変換部材50は、多結晶蛍光体に代えて、単結晶蛍光体を含んでいてもよい。もしくは、波長変換部材50は、蛍光ガラスから構成されていてもよい。もしくは、波長変換部材50は、ガラスまたは樹脂からなるバインダー中に多数の蛍光体粒子が分散された材料から構成されていてもよい。この種の材料からなる波長変換部材50は、励起光Eを、第2波長帯を有する蛍光Yに変換する。
【0019】
具体的には、波長変換部材50の材料は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてのセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例に挙げると、波長変換部材50の材料として、Y、Al、CeO等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法、ゾルゲル法等の湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法、火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法により得られるYAG粒子等が用いられる。
【0020】
光源部51は、第1波長帯の励起光Eを射出する発光面56aを有する発光素子56を備える。光源部51は、波長変換部材50の第3面50cに対向して設けられている。発光素子56は、例えば発光ダイオード(LED)から構成されている。このように、光源部51は、波長変換部材50の長手方向に沿う側面50gの一部に対向して設けられている。なお、光源部51の個数および配置は、特に限定されない。発光素子56の発光面56aは、波長変換部材50の第3面50cに対向して配置され、第3面50cに向けて励起光Eを射出する。第1波長帯は、例えば400nm~480nmの紫色から青色にかけての波長帯であり、ピーク波長は例えば445nmである。
【0021】
基板55は、発光素子56を支持する。基板55の一面55aに、複数の発光素子56が設けられている。本実施形態の場合、光源部51は、発光素子56と基板55とから構成されているが、その他、導光板、拡散板、レンズなどの他の光学部材を備えていてもよい。また、基板55に設けられる発光素子56の個数は、特に限定されない。
【0022】
反射部材53は、波長変換部材50の第2面50bに対向して設けられている。反射部材53は、波長変換部材50の内部を導光し、第2面50bに到達した蛍光Yを反射させる。反射部材53は、波長変換部材50とは別個の部材であり、例えばアルミニウム等の金属材料からなる板状の部材で構成されている。反射部材53は、波長変換部材50の第2面50bに対向し、蛍光Yを反射させる反射面53rを有する。反射面53rは、金属材料自体の表面であってもよいし、金属材料の表面に形成された金属膜または誘電体多層膜から構成されていてもよい。
【0023】
第1光源装置20において、発光素子56から射出された励起光Eが波長変換部材50に入射すると、波長変換部材50の内部に含まれる蛍光体が励起され、任意の発光点から蛍光Yが発せられる。蛍光Yは任意の発光点から全ての方向に向かって進むが、側面50gに向かって進む蛍光Yは、側面50gの複数の個所で全反射を繰り返しつつ、第1面50aまたは第2面50bに向かって進む。第1面50aに向かって進む蛍光Yは、射出部54に入射する。一方、第2面50bに向かって進む蛍光Yは、反射部材53で反射された後、第1面50aに向かって進む。
【0024】
波長変換部材50に入射した励起光Eのうち、蛍光体の励起に使われなかった励起光Eの一部は、光源部51の発光素子56を含む波長変換部材50の周囲の部材、または第2面50bに設けられた反射部材53で反射される。そのため、励起光Eの一部は、波長変換部材50の内部に閉じ込められて再利用される。
【0025】
射出部54は、波長変換部材50の中心軸Jに沿って設けられている。射出部54は、波長変換部材50で生成される蛍光Yを射出する。本実施形態の場合、波長変換部材50と射出部54とは、一体の部材で構成されている。したがって、射出部54は、波長変換部材50と同様、YAG系蛍光体を含んでいる。
【0026】
射出部54は、第1端部54aと、第2端部54bと、漸減部54cと、を有する。第1端部54aは、波長変換部材50の第1面50aに対向する。第2端部54bは、中心軸Jに沿って第1端部54aとは反対側に位置する。漸減部54cは、中心軸Jに垂直な断面積が第1端部54aから第2端部54bに向かって漸次小さくなる部分である。漸減部54cは、中心軸Jに対して傾斜し、蛍光Yを射出する光射出面54dを有する。本実施形態においては、第1端部54aと第2端部54bとの間の全ての部分が漸減部54cとなっている。この構成が好ましいが、第1端部54aと第2端部54bとの間の少なくとも一部が漸減部54cとなっていればよい。
【0027】
図3に示すように、本実施形態において、射出部54の形状は、四角錐体状である。したがって、射出部54は、4つの光射出面54dを有する。光射出面54dは、一辺が波長変換部材50の各側面50gと接する三角形の形状を有する。第1端部54aは、中心軸Jに平行な方向から見て正方形の形状を有する。第2端部54bは、4つの光射出面54dの頂点が1点で接し、尖った形状を有する。射出部54は、例えば四角柱状の波長変換部材50の端部を研磨して、四角錐体状に加工することにより形成される。
【0028】
この種の射出部を備えていない光源装置の場合、波長変換部材の第1面が光射出面となり、蛍光は第1面から射出される。ところが、この構成では、第1面に到達する蛍光のうち、臨界角以上の入射角で第1面に入射する蛍光の割合が相対的に多く、このような蛍光は第1面で全反射し、外部に取り出されない。したがって、射出部を備えていない光源装置では、蛍光の取り出し効率を高めることは難しい。
【0029】
これに対して、本実施形態の場合、射出部54の光射出面54dが中心軸Jに対して傾斜しているため、射出部を備えていない場合と比べて、臨界角未満の入射角で光射出面54dに入射する蛍光Yの割合が多くなる。また、蛍光Yが射出部54に入射した後、最初に光射出面54dに入射した時点では臨界角以上の入射角であったとしても、光射出面54dで全反射した後、蛍光Yの進行方向が変化するため、次に光射出面54dに入射する時点では臨界角未満の入射角となる蛍光Yが一定の割合で発生する。すなわち、光射出面54dでの全反射を繰り返す毎に臨界角未満の入射角となる蛍光Yが多くなるため、本実施形態によれば、射出部を備えていない場合と比べて、蛍光Yの取り出し効率を高めることができる。
【0030】
図1に示すように、光変調素子30は、第1光源装置20から射出される蛍光Yを画像情報に基づいて変調する。本実施形態では、光変調素子30として、透過型の液晶パネルが用いられる。液晶パネルは、マトリクス状に配列された複数の画素を有し、画素毎に光透過率を調整できる構成になっている。液晶パネルの有効変調領域の形状は、矩形状である。有効変調領域は、液晶パネルのうち、表示に寄与しない額縁部分等を除く領域であって、複数の画素を有し、実質的に画像を形成する領域である。有効変調領域の形状は、正方形であってもよいし、縦横比が4:3、16:9等の長方形であってもよい。なお、透過型の液晶パネルは、一般的な構成を有し、公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0031】
液晶パネルの光入射側および光射出側には、所定の直線偏光を透過させる偏光板が設けられている。光変調素子30は、カラーフィルターを備えていてもよいし、カラーフィルターを備えていなくてもよい。光変調素子30がカラーフィルターを備えている場合、プロジェクター10は、マルチカラーの画像を投写することができる。光変調素子30がカラーフィルターを備えていない場合、プロジェクター10は、モノクロの画像を投写することができる。
【0032】
角度変換レンズ40は、第1光源装置20と光変調素子30との間に設けられ、射出部54から射出される蛍光Yを透過させる。角度変換レンズ40は、射出部54から大きな放射角度で射出される蛍光Yを放射角度が小さくなる側に屈折させる。すなわち、角度変換レンズ40から射出される蛍光Yの放射角度は、角度変換レンズ40に入射する蛍光Yの放射角度よりも小さい。角度変換レンズ40は、正のパワーを有する凸レンズから構成される。本実施形態の場合、角度変換レンズ40は、蛍光Yを平行化していないが、蛍光Yを平行化するコリメーターレンズであってもよい。また、角度変換レンズ40は、非球面レンズから構成されていてもよい。
【0033】
[射出部の形状と蛍光の照度分布との関係]
本発明者は、射出部54の外形である四角錐の形状を変化させた場合の蛍光Yの照度分布の変化を調べるため、以下に示すシミュレーションを行った。
【0034】
具体的には、本発明者は、図3に示すように、中心軸Jに沿う方向(X軸方向)の射出部54の長さ、すなわち、四角錐の高さをHとし、中心軸Jに垂直な方向(Y軸方向およびZ軸方向)の第1端部54aの長さ、すなわち、四角錐の底面をなす正方形の一辺の長さをLとしたとき、寸法比H/Lを変化させてシミュレーションを行った。寸法比H/Lを変化させると、中心軸Jに対する射出部54の光射出面54dの傾斜角度が変化するため、それに伴って蛍光Yの放射角度分布および照度分布が変化する。
【0035】
シミュレーション条件として、波長変換部材50と射出部54とが一体のYAG:Ceの蛍光体ロッドから形成され、波長変換部材50の第2面50bから射出部54の第2端部54bまでの長さが50mmのサンプルを用い、射出部54の寸法比H/Lを1.2,1.3,1.4,1.5,1.6,1.7,1.8の7種類に変化させた。評価項目として、射出部54から射出される蛍光Yの放射角度分布と、第2端部54bから50mm離れた位置に設定した仮想平面上での照度分布を評価した。
【0036】
図4Aおよび図4Bは、寸法比H/L=1.2の結果を示す。図5Aおよび図5Bは、寸法比H/L=1.3の結果を示す。図6Aおよび図6Bは、寸法比H/L=1.4の結果を示す。図7Aおよび図7Bは、寸法比H/L=1.5の結果を示す。図8Aおよび図8Bは、寸法比H/L=1.6の結果を示す。図9Aおよび図9Bは、寸法比H/L=1.7の結果を示す。図10Aおよび図10Bは、寸法比H/L=1.8の結果を示す。これらの図において、図番の末尾がAの図は放射角度分布を示し、図番の末尾がBの図は照度分布を示す。
【0037】
図4A図5A図6A図7A図8A図9A、および図10Aに示す実線は、図2の-X軸から+X軸方向に向かって見たとき(中心軸Jに沿う射出側に向かって見たとき)の+Z軸から-Z軸方向に見たときの蛍光Yの放射角度分布である。これらの図に示す極角における90°の方向は、波長変換部材50の中心軸Jに沿う方向に対応する。これらの図の横軸に示す数値の単位は放射強度(mW/sr)であり、放射源から所定の方向に単位時間あたりに放射される放射エネルギーを表す物理量である。なお、横軸の絶対値自体は、特に意味を持たない相対的な指標である。
【0038】
図4B図5B図6B図7B図8B図9B、および図10Bにおいては、図2の-X軸から+X軸方向に向かって見たとき(中心軸Jに沿う射出側に向かって見たとき)、射出部54の第2端部54bから50mm離れた位置でのYZ平面上の照度分布を示す。各図の左上に示す照度分布に対して、Y軸方向の照度分布をグラフ化した図を照度分布の右側に示し、Z軸方向の照度分布をグラフ化した図を照度分布の下側に示した。各グラフにおいて、横軸は各軸上の座標(Y座標、Z座標)を示し、縦軸は照度を示す。横軸および縦軸の値は、相対値である。
【0039】
図4Aおよび図4Bに示すように、寸法比H/L=1.2の場合、中心軸Jの近傍の領域での放射強度が中心軸Jから離れた領域での放射強度に比べて高いため、照度分布は、中心軸Jに近い領域で尖ったピークを有する。そのため、中心軸Jに近い領域の照度は高いが、中心軸Jから離れた位置では照度が急激に低下する傾向を示す。
【0040】
これに対して、図5Aおよび図5Bに示すように、寸法比H/L=1.3の場合、中心軸Jの近傍の領域での放射エネルギーが中心軸Jから離れた領域に分散されるため、中心軸Jに近い領域における照度分布は、寸法比H/L=1.2の場合に比べてフラットな形状を示す。そのため、中心軸Jに近い領域から略正方形の領域の周辺部にわたって所定値以上の照度が得られる。これにより、例えば矩形状の有効変調領域を有する光変調素子をこの光源装置で照明した場合、有効変調領域の四隅まで明るい画像を得ることができる。さらに、図6Aおよび図6B以降の図面に示すように、寸法比H/Lを1.4から1.8まで増加させた場合でも、寸法比H/L=1.3の場合と同様の効果が得られた。
【0041】
なお、シミュレーションでは示していないが、寸法比H/Lの上限は、3.0程度であることが望ましい。その理由は、寸法比H/Lが3.0を超えると、射出する面積が増加し、見かけ上の光源のサイズが大きくなることで、隣接する画素を通過した光線が混ざってしまい解像度が低下してしまう。また加工上、先端部分が細くなり欠けやすくなってしまうためである。
【0042】
[第1実施形態の効果]
本実施形態のプロジェクター10は、第1光源装置20と、第1光源装置20から射出される蛍光Yを変調する光変調素子30と、を備える。第1光源装置20は、励起光Eを射出する発光素子56と、蛍光体を含み、発光素子56から射出される励起光Eを蛍光Yに変換する波長変換部材50と、波長変換部材50の中心軸Jに沿って設けられ、波長変換部材50で生成される蛍光Yを射出する射出部54と、を備える。射出部54は、波長変換部材50に対向する第1端部54aと、中心軸Jに沿って第1端部54aとは反対側に位置する第2端部54bと、中心軸Jに垂直な断面積が第1端部54aから第2端部54bに向かって漸次小さくなる漸減部54cと、を有する。漸減部54cは、中心軸Jに対して傾斜し、蛍光Yを射出する光射出面54dを有する。
【0043】
本実施形態のプロジェクター10によれば、第1光源装置20において生成された蛍光Yが光変調素子30に照射されるため、光変調素子30から射出される蛍光Yは、レーザー光と比べて十分にコヒーレンスが低い光である。そのため、被投写体上で散乱した光の干渉がレーザー光の場合に比べて少なく、スペックルノイズが少ない画像を得ることができる。また、上記の構成を有する射出部54から蛍光Yが射出され、第1光源装置20の発光個所が点光源に近いため、光変調素子30の複数の画素を通過した光が互いに混ざることがなく、結像光学系が不要となる。これにより、被投写体上に鮮明な画像を投写できるフォーカスフリーのプロジェクター10を実現することができる。
【0044】
本実施形態のプロジェクター10において、波長変換部材50は、波長変換部材50の長手方向において互いに反対側に位置する第1面50aおよび第2面50bと、第1面50aおよび第2面50bと交差する第3面50cと、を有し、蛍光Yは、第1面50aから射出部54に向かって射出され、発光素子56から射出される励起光Eは、第3面50cに入射する。
【0045】
この構成によれば、波長変換部材50の長手方向の長さに対して十分に小さい射出部54から蛍光Yを射出させることができるとともに、励起光Eが入射する第3面50cを広く取れるため、効率が良く、コンパクトな構成で、点光源に近い第1光源装置を実現することができる。
【0046】
本実施形態のプロジェクター10において、波長変換部材50の第1面50aの形状は矩形状であり、光変調素子30の有効変調領域の形状は矩形状である。
【0047】
この構成によれば、第1光源装置20から射出される蛍光Yの照明領域が矩形となるため、光変調素子30の有効変調領域の四隅まで効率良く照明することができる。
【0048】
本実施形態のプロジェクター10において、射出部54の形状は、四角錐状である。
【0049】
この構成によれば、矩形状の照度分布を有する蛍光Yを得ることができる。また、四角柱状の波長変換部材50の端部に射出部54を容易に形成することができる。
【0050】
本実施形態のプロジェクター10において、射出部54の寸法比H/Lは、1.3以上である。
【0051】
この構成によれば、射出部54の寸法比H/Lが適切に設定されたことによって、上述したように、照度ムラが少なく、被投写面の四隅まで明るい投写画像を投写可能なプロジェクター10を実現することができる。
【0052】
本実施形態のプロジェクター10において、波長変換部材50と射出部54とは、一体の部材で構成されている。
【0053】
この構成によれば、第1光源装置20の製造プロセスにおいて、蛍光体の研磨加工等の手法を用いて射出部54を容易に形成することができる。また、射出部54の内部にも蛍光体が含まれ、射出部54に入射した励起光Eが蛍光Yに変換されるため、射出部の内部に蛍光体が含まれない場合に比べて、蛍光Yの光量を増やすことができる。また、波長変換部材50と射出部54との接合面が存在しないため、蛍光Yが接合面を透過する際の損失をなくすことができる。
【0054】
なお、射出部54から取り出す蛍光Yの量がそれ程多くなくてもよい場合、射出部54は、波長変換部材50とは別体の透光性部材で構成され、波長変換部材50に接合されていてもよい。この構成によれば、波長変換部材50とは別個に、金型を用いたプレス加工等の手法により射出部54を作製することができるため、蛍光体の研磨加工を省くことができる。
【0055】
本実施形態のプロジェクター10は、射出部54から射出される蛍光Yを透過させる角度変換レンズ40をさらに備える。角度変換レンズ40から射出される蛍光Yの放射角度は、角度変換レンズ40に入射する蛍光Yの放射角度よりも小さい。
【0056】
この構成によれば、第1光源装置20から射出される蛍光Yの広がりを抑制することができ、より遠くまで明るい画像を投写することができる。
【0057】
本実施形態のプロジェクター10において、角度変換レンズ40は、第1光源装置20と光変調素子30との間に設けられている。
【0058】
この構成によれば、光変調素子30に対して放射角度が小さい蛍光Yを入射させることができ、より鮮明な画像を得ることができる。
【0059】
本実施形態のプロジェクター10において、角度変換レンズ40は、非球面レンズで構成されていてもよい。
【0060】
この構成によれば、角度変換レンズ40が有する球面収差によって各画素から射出される光が混ざり合い、画像がぼやけることを抑えることができる。
【0061】
本実施形態のプロジェクター10において、光変調素子30は、透過型の液晶パネルで構成されている。
【0062】
この構成によれば、明るい投写画像を投写可能な液晶プロジェクターを実現することができる。
【0063】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、図11を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターが備える各光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため、光源装置の基本構成の説明は省略する。
図11は、第2実施形態のプロジェクター12の概略構成図である。
図11において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0064】
図11に示すように、本実施形態のプロジェクター12は、第1光源装置20と、第2光源装置22と、光合成素子60と、光変調素子30と、角度変換レンズ40と、を備える。
【0065】
第2光源装置22は、波長変換部材61と、光源部52と、反射部材53と、射出部62と、を備える。第2光源装置22の基本構成は、第1光源装置20と同様であるが、波長変換部材61に含まれる蛍光体の種類が第1光源装置20の波長変換部材50とは異なる。第2光源装置22は、励起光Eが有する第1波長帯および蛍光Yが有する第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する青色の蛍光B(第3光)を射出する。
【0066】
波長変換部材61は、例えば希土類イオンをガラスに分散させた蛍光ガラス、ガラスや樹脂等のバインダーに青色蛍光体を分散させた材料などから構成されている。具体的に、蛍光ガラスとして、ルミラス(商品名、住田光学ガラス社製)等が用いられる。青色蛍光体として、例えばBaMgAl1017:Eu(II)等が用いられる。波長変換部材61は、発光素子57から射出される励起光を、例えば450~495nmの青色波長帯の蛍光Bに変換する。第2光源装置22の発光素子57には、紫外波長域または紫色波長域の励起光を射出する発光素子が用いられる。
【0067】
光合成素子60は、第1光源装置20の光軸AX1と第2光源装置22の光軸AX2とが交差する位置に設けられている。光合成素子60は、青色波長帯の光を反射し、黄色波長帯の光を透過するダイクロイックミラーから構成されている。光合成素子60は、第1光源装置20から射出される黄色の蛍光Yと第2光源装置22から射出される青色の蛍光Bとを合成し、白色の合成光(第1合成光)Wを光軸AX1に沿う方向に射出する。
【0068】
光変調素子30は、光合成素子60の射出側に設けられている。光合成素子60と光変調素子30との間には、角度変換レンズ40が設けられている。光変調素子30は、第1実施形態と同様、透過型の液晶パネルから構成されている。光変調素子30は、光合成素子60から射出される白色の合成光Wを画像情報に基づいて変調する。光変調素子30は、カラーフィルターを備えていてもよいし、カラーフィルターを備えていなくてもよい。光変調素子30がカラーフィルターを備えている場合、プロジェクター12は、カラー画像を投写することができる。光変調素子30がカラーフィルターを備えていない場合、プロジェクター12は、モノクロ画像を投写することができる。
【0069】
[第2実施形態の効果]
本実施形態においても、スペックルノイズが少ない画像を投写可能なフォーカスフリーのプロジェクター12を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0070】
本実施形態のプロジェクター12は、第3波長帯を有する蛍光Bを射出する第2光源装置22と、第1光源装置20から射出される蛍光Yと、第2光源装置22から射出される蛍光Bと、を合成し、合成光Wを射出する光合成素子60と、をさらに備える。光変調素子30は、光合成素子60から射出される合成光Wを変調する。
【0071】
この構成によれば、第1光源装置20から射出される蛍光Yと、第2光源装置22から射出される蛍光Bと、が合成された白色の合成光Wを用いて画像を形成することができる。これにより、第1光源装置20から射出される蛍光Yのみを用いる第1実施形態のプロジェクター10と比べて、画像の色再現性を高めることができる。
【0072】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、図12を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターが備える各光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため、光源装置の基本構成の説明は省略する。
図12は、第3実施形態のプロジェクター13の概略構成図である。
図12において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
図12に示すように、本実施形態のプロジェクター13は、第1光源装置23と、第2光源装置22と、第3光源装置24と、光合成素子64と、光変調素子30と、角度変換レンズ40と、を備える。
【0074】
第1光源装置23、第2光源装置22、および第3光源装置24は、互いに同じ基本構成を有しているが、それぞれの波長変換部材に含まれる蛍光体の種類が第1光源装置とは異なる。第1光源装置23は、励起光が有する第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する赤色の蛍光Rを射出する。第2光源装置22は、励起光が有する第1波長帯および蛍光Rが有する第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する青色の蛍光Bを射出する。第3光源装置24は、励起光が有する第1波長帯、蛍光Rが有する第2波長帯、および蛍光Bが有する第3波長帯とは異なる第4波長帯を有する緑色の蛍光G(第4光)を射出する。
なお、本実施形態の第2光源装置22は、第2実施形態の第2光源装置22と同一であるため、説明を省略する。
【0075】
第1光源装置23において、波長変換部材66は、蛍光体として、例えば賦活剤としてPr、Eu、Crのいずれかが分散された(Y1-x,Gd(Al,Ga)12からなるYAG系蛍光体(Pr:YAG、Eu:YAG、Cr:YAGのいずれか)を含んでいる。なお、賦活剤は、Pr、Eu、Crから選ばれる一種が含まれていてもよいし、Pr、Eu、Crから選ばれる複数種が含まれた共賦活の賦活剤であってもよい。波長変換部材66は、発光素子56から射出される励起光を、例えば600~800nmの赤色波長帯の蛍光Rに変換する。第1光源装置23の発光素子56は、紫外波長域または紫色波長域または青色波長帯の励起光を射出する。
【0076】
第3光源装置24において、波長変換部材67は、蛍光体として、例えばLuAl12:Ce3+系蛍光体、Y:Eu2+系蛍光体、(Ba,Sr)SiO:Eu2+系蛍光体、BaSi12:Eu2+系蛍光体、(Si,Al)(O,N):Eu2+系蛍光体等の蛍光体材料を含んでいる。波長変換部材67は、発光素子56から射出される励起光を、例えば500~570nmの緑色波長帯の蛍光Gに変換する。第3光源装置24の発光素子56は、紫外波長域または紫色波長域または青色波長帯の励起光を射出する。
【0077】
光合成素子64は、第1光源装置23の光軸AX1、第2光源装置22の光軸AX2、および第3光源装置24の光軸AX3が交差する位置に設けられている。光合成素子64は、第1ダイクロイックミラー641と、第2ダイクロイックミラー642と、を備える。第1ダイクロイックミラー641は、青色波長帯の光を反射し、青色波長帯以外の波長帯の光を透過する。第2ダイクロイックミラー642は、赤色波長帯の光を反射し、赤色波長帯以外の波長帯の光を透過する。この構成により、光合成素子64は、第1光源装置23から射出される赤色の蛍光Rと、第2光源装置22から射出される青色の蛍光Bと、第3光源装置24から射出される緑色の蛍光Gと、を合成し、白色の合成光(第2合成光)Wを光軸AX3に沿う方向に射出する。
【0078】
光変調素子30は、光合成素子64の射出側に設けられている。光合成素子64と光変調素子30との間には、角度変換レンズ40が設けられている。光変調素子30は、第1実施形態と同様、透過型の液晶パネルから構成されている。光変調素子30は、光合成素子64から射出される白色の合成光Wを画像情報に基づいて変調する。
【0079】
光変調素子30は、カラーフィルターを備えていてもよいし、カラーフィルターを備えていなくてもよい。光変調素子30がカラーフィルターを備えている場合、プロジェクター13は、カラー画像を投写することができる。光変調素子30がカラーフィルターを備えていない場合、プロジェクター13は、モノクロ画像を投写することができる。また、光変調素子30がカラーフィルターを備えていない構成において、第1光源装置23、第2光源装置22、および第3光源装置24を時間順次に点灯させ、各光源装置の点灯タイミングに同期させて、光変調素子30が赤色光用画像、青色光用画像、緑色光用画像を時間順次に形成するように駆動する構成としてもよい。この構成によれば、プロジェクター13は、カラー画像を投写することができる。
【0080】
[第3実施形態の効果]
本実施形態においても、スペックルノイズが少ない画像を投写可能なフォーカスフリーのプロジェクター13を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
本実施形態のプロジェクター13は、赤色波長帯の蛍光Rを射出する第1光源装置23と、青色波長帯の蛍光Bを射出する第2光源装置22と、緑色波長帯の蛍光Gを射出する第3光源装置24と、を備える。光合成素子64は、第1光源装置23から射出される蛍光Rと、第2光源装置22から射出される蛍光Bと、第3光源装置24から射出される蛍光Gと、を合成し、白色の合成光Wを射出する。光変調素子30は、光合成素子64から射出される合成光Wを変調する。
【0082】
この構成によれば、第1光源装置23から射出される蛍光Rと、第2光源装置22から射出される蛍光Bと、第3光源装置24から射出される蛍光Gと、が合成された白色の合成光Wを用いて画像を形成することができる。これにより、第1光源装置から射出される蛍光Yのみを用いる第1実施形態のプロジェクターと比べて、画像の色再現性を高めることができる。また、光変調素子が1つで済むため、プロジェクター13の構成を簡略化することができる。
【0083】
本実施形態のプロジェクター13において、光変調素子30がカラーフィルターを備える構成であれば、カラー画像を投写することができる。この構成によれば、各光源装置と光変調素子とを時間順次駆動する方式と異なり、高速の応答速度を有する液晶パネルを必要としないため、光変調素子30の設計が容易になる。
【0084】
または、本実施形態のプロジェクター13において、第1光源装置23、第2光源装置22、および第3光源装置24のそれぞれが時間順次に点灯され、光変調素子30が各光源装置の点灯タイミングに同期して駆動される構成であれば、カラー画像を投写することができる。この構成によれば、光変調素子30がカラーフィルターを備える必要がなく、カラーフィルター方式に比べて画素数が増えるため、高解像度で明るい画像を得ることができる。
【0085】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、図13を用いて説明する。
第4実施形態のプロジェクターが備える各光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため、光源装置の基本構成の説明は省略する。
図13は、第4実施形態のプロジェクター14の概略構成図である。
図13において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図13に示すように、本実施形態のプロジェクター14は、第1光源装置23と、第2光源装置22と、第3光源装置24と、第1光変調素子30Rと、第2光変調素子30Bと、第3光変調素子30Gと、光合成素子64と、角度変換レンズ40と、を備える。第1光源装置23、第2光源装置22、および第3光源装置24のそれぞれは、第3実施形態の各光源装置と同様である。
【0087】
第1光変調素子30Rは、第1光源装置23の光射出側に設けられている。第1光変調素子30Rは、第1光源装置23から射出される赤色の蛍光Rを画像情報に基づいて変調し、第1変調光として赤色変調光R1を射出する。第2光変調素子30Bは、第2光源装置22の光射出側に設けられている。第2光変調素子30Bは、第2光源装置22から射出される青色の蛍光Bを画像情報に基づいて変調し、第2変調光として青色変調光B1を射出する。第3光変調素子30Gは、第3光源装置24の光射出側に設けられている。第3光変調素子30Gは、第3光源装置24から射出される緑色の蛍光Gを画像情報に基づいて変調し、第3変調光として緑色変調光G1を射出する。
【0088】
第1光変調素子30R、第2光変調素子30B、および第3光変調素子30Gのそれぞれは、透過型の液晶パネルから構成されている。液晶パネルは、カラーフィルターを備えていない。
【0089】
光合成素子64は、第3実施形態の光合成素子64と同様の構成を有しており、各光変調素子によって変調された後の変調光を合成する点が第3実施形態とは異なる。すなわち、光合成素子64は、第1光変調素子30Rから射出される赤色変調光R1と、第2光変調素子30Bから射出される青色変調光B1と、第3光変調素子30Gから射出される緑色変調光G1と、を合成する。
【0090】
第1光源装置23と第1光変調素子30Rとの間には、角度変換レンズ40が設けられている。第2光源装置22と第2光変調素子30Bとの間には、角度変換レンズ40が設けられている。第3光源装置24と第3光変調素子30Gとの間には、角度変換レンズ40が設けられている。
【0091】
[第4実施形態の効果]
本実施形態においても、スペックルノイズが少ない画像を投写可能なフォーカスフリーのプロジェクター14を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0092】
本実施形態のプロジェクター14は、赤色波長帯の蛍光Rを射出する第1光源装置23と、青色波長帯の蛍光Bを射出する第2光源装置22と、緑色波長帯の蛍光Gを射出する第3光源装置24と、第1光源装置23から射出される蛍光Rを変調する第1光変調素子30Rと、第2光源装置22から射出される蛍光Bを変調する第2光変調素子30Bと、第3光源装置24から射出される蛍光Gを変調する第3光変調素子30Gと、を備える。光合成素子64は、第1光変調素子30Rから射出される赤色変調光R1と、第2光変調素子30Bから射出される青色変調光B1と、第3光変調素子30Gから射出される緑色変調光G1と、を合成する。
【0093】
この構成によれば、第1光源装置から射出される蛍光Yのみを用いる第1実施形態のプロジェクターと比べて、画像の色再現性を高めることができる。また、第3実施形態と異なり、液晶パネルがカラーフィルターを備えることなく、かつ、光源装置と光変調素子とが時間順次駆動することなく、カラー画像を投写することができる。そのため、高速の応答速度を有する液晶パネルを必要とせず、光変調素子の設計が容易になることに加え、高解像度で明るい画像を得ることができる。
【0094】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、図14を用いて説明する。
第5実施形態のプロジェクターが備える各光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため、光源装置の基本構成の説明は省略する。
図14は、第5実施形態のプロジェクター15の概略構成図である。
図14において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0095】
図14に示すように、本実施形態のプロジェクター15は、第1光源装置20と、第2光源装置22と、第1光変調素子30Yと、第2光変調素子30Bと、光合成素子60と、角度変換レンズ40と、を備える。第1光源装置20および第2光源装置22のそれぞれは、第2実施形態の各光源装置と同様である。
【0096】
第1光変調素子30Yは、第1光源装置20から射出される黄色の蛍光Yを変調する。第2光変調素子30Bは、第2光源装置22から射出される青色の蛍光Bを変調する。第1光変調素子30Yおよび第2光変調素子30Bのそれぞれは、透過型の液晶パネルから構成されている。第1光変調素子30Yは、赤色と緑色の2色のカラーフィルターを備えていてもよいし、カラーフィルターを備えていなくてもよい。第2光変調素子30Bは、カラーフィルターを備えていない。
【0097】
光合成素子60は、第2実施形態の光合成素子60と同様の構成を有しており、各光変調素子によって変調された後の変調光を合成する点が第2実施形態とは異なる。すなわち、光合成素子60は、第1光変調素子30Yから射出される黄色変調光Y1と、第2光変調素子30Bから射出される青色変調光B1と、を合成する。なお、第1光変調素子30Yが2色のカラーフィルターを備える場合、上記の黄色変調光Y1は、赤色変調光と緑色変調光とを含む光である。
【0098】
第1光源装置20と第1光変調素子30Yとの間には、角度変換レンズ40が設けられている。第2光源装置22と第2光変調素子30Bとの間には、角度変換レンズ40が設けられている。
【0099】
[第5実施形態の効果]
本実施形態においても、スペックルノイズが少ない画像を投写可能なフォーカスフリーのプロジェクター15を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0100】
本実施形態のプロジェクター15は、黄色波長帯の蛍光Yを射出する第1光源装置20と、青色波長帯の蛍光Bを射出する第2光源装置22と、第1光源装置20から射出される蛍光Yを変調する第1光変調素子30Yと、第2光源装置22から射出される蛍光Bを変調する第2光変調素子30Bと、を備える。光合成素子60は、第1光変調素子30Yから射出される黄色変調光Y1と、第2光変調素子30Bから射出される青色変調光B1と、を合成する。
【0101】
この構成によれば、第1光源装置から射出される蛍光Yのみを用いる第1実施形態のプロジェクター10と比べて、画像の色再現性を高めることができる。また、光源装置の数が2組で済み、光変調素子の数が2組で済むため、第4実施形態のプロジェクター14と比べて簡易な構成を有するプロジェクター15を実現することができる。第1光変調素子30Yが赤色と緑色の2色のカラーフィルターを備える場合、赤、緑、青の3色の色光からなるカラー画像を得ることができる。第1光変調素子30Yがカラーフィルターを備えていない場合、黄、青の2色の色光からなるカラー画像を得ることができる。
【0102】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、図15を用いて説明する。
第6実施形態のプロジェクターが備える光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため、光源装置の基本構成の説明は省略する。
図15は、第6実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
図15において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0103】
図15に示すように、本実施形態のプロジェクター16は、第1光源装置20と、光変調素子32と、反射型偏光板69と、角度変換レンズ40と、を備える。第1光源装置20は、第1実施形態の光源装置20と同様である。
【0104】
第1~第5実施形態では、光変調素子として透過型の光変調素子が用いられたのに対し、本実施形態では、光変調素子として反射型の光変調素子が用いられている。本実施形態の光変調素子32は、例えばLCOSと呼ばれる反射型の液晶パネルから構成されている。反射型の液晶パネルは、一般的な構成を有しているため、説明を省略する。
【0105】
反射型偏光板69は、角度変換レンズ40と光変調素子32との間に設けられている。反射型偏光板69は、第1光源装置20の光軸AX1に対して例えば45°の角度をなすように配置されている。反射型偏光板69は、所定の偏光方向を有する第1直線偏光を透過し、第1直線偏光の偏光方向とは異なる偏光方向を有する第2直線偏光を反射する。この種の反射型偏光板69を角度変換レンズ40と光変調素子32との間に配置することによって、第1光源装置20から射出される蛍光Yの変調が可能となる。
【0106】
[第6実施形態の効果]
本実施形態においても、スペックルノイズが少ない画像を投写可能なフォーカスフリーのプロジェクター16を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0107】
本実施形態のプロジェクター16において、光変調素子32は、反射型光変調素子で構成されている。
【0108】
この構成によれば、光変調素子32の各画素の開口率を高められ、明るい画像を投写可能なプロジェクター16を実現することができる。
【0109】
[第7実施形態]
以下、本発明の第7実施形態について、図16を用いて説明する。
第7実施形態のプロジェクターが備える光源装置の基本構成は第1実施形態と同様であるため、光源装置の基本構成の説明は省略する。
図16は、第7実施形態のプロジェクター17の概略構成図である。
図16において、以前の実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0110】
図16に示すように、本実施形態のプロジェクター17は、第1光源装置20と、光変調素子34と、内部全反射プリズム(TIRプリズム)72と、角度変換レンズ40と、を備える。第1光源装置20は、第1実施形態の光源装置20と同様である。
【0111】
第1~第6実施形態では、光変調素子として液晶パネルが用いられたのに対し、本実施形態では、光変調素子としてマイクロミラー型光変調素子が用いられている。本実施形態の光変調素子34は、例えばデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)から構成されている。DMDは、複数のマイクロミラーがマトリクス状に配列された構成を有する。
【0112】
内部全反射プリズム72は、一定厚さの空気層を挟んで対向配置された2つのプリズムから構成され、反射面72rを有する。反射面72rは、第1光源装置20から射出される蛍光Yを光変調素子34に向けて全反射するように角度が設定されている。DMDは、複数のマイクロミラーのそれぞれの傾斜方向を切り換えることにより、蛍光Yの反射方向を、反射面72rを透過する方向と反射面72rで反射する方向との間で切り換える。
【0113】
角度変換レンズ40は、第1光源装置20と内部全反射プリズム72との間に設けられている。
【0114】
[第7実施形態の効果]
本実施形態においても、スペックルノイズが少ない画像を投写可能なフォーカスフリーのプロジェクター17を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0115】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、本発明の一つの態様は、上記の各実施形態の特徴部分を適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0116】
例えば上記実施形態において、青色の蛍光を射出する波長変換部材を備えた光源装置については、波長変換部材に代えて、蛍光体を含まず、入射した青色光を波長変換することなく導光させる導光部材を用いてもよい。具体的には、例えば四角柱の一端を四角錐状に研磨加工し、四角柱の他端に拡散層を形成した導光部材を用い、青色LEDから射出される青色光を、導光部材の他端から拡散層を介して入射させる構成としてもよい。この構成においても、スペックルノイズが少ない画像を投写可能なフォーカスフリーのプロジェクターを実現することができる。
【0117】
上記実施形態において、黄色の蛍光を射出する波長変換部材を備えた光源装置については、光源装置の後段にダイクロイックフィルターを配置して、黄色の蛍光から緑色光成分または赤色光成分のいずれか一方を取り出し、緑色または赤色の蛍光を射出する構成としてもよい。または、光源装置の後段にダイクロイックミラーを配置して、黄色の蛍光から緑色光成分と赤色光成分とを分離し、緑色光および赤色光のそれぞれを光変調素子に入射させる構成としてもよい。
【0118】
上記実施形態では、角度変換レンズは、光源装置と光変調素子との間に配置されているが、光変調素子の後段に配置されていてもよい。換言すると、光変調素子は、光源装置と角度変換レンズとの間に配置されていてもよい。この構成によれば、角度変換レンズが光源装置と光変調素子との間に配置された構成に比べて、光源装置と光変調素子との間の距離が短くなるため、光変調素子を小型化することができる。また、角度変換レンズは、1枚に限らず、複数枚用いてもよい。
【0119】
上記実施形態では、射出部の形状を四角錐状としたが、射出部の第2端部は、完全に尖っていなくてもよく、平面状になっていてもよいし、曲面状に丸まっていてもよい。これらの構成によれば、光源装置の製造プロセス等において、第2端部が破損するおそれを低減することができる。また、蛍光は、第2端部の先端にはほとんど到達しないため、第2端部の先端がわずかに平面状または曲面状であっても、蛍光の取り出し効率が低下するおそれはほとんどない。さらに、射出部の形状は、光変調素子の有効変調領域が四角形の場合には四角形であることが望ましいが、四角錐状の他、円錐状、多角錐状等であってもよい。この場合であっても、スペックルノイズの低減効果は得られる。
【0120】
上記実施形態では、画像情報に基づいて変調を行う光変調素子として、透過型液晶パネル、反射型液晶パネル、DMDなどの例を挙げたが、これらの光変調素子の他、投写画像が時間的に変化しないスライド(ポジ型フィルムまたはネガ型フィルム)、プレパラート上の試料、OHPシート、影絵用の切り絵などが用いられてもよい。この種の光変調素子を用いた場合、他のパターンを有する光変調素子と適宜交換することによって、投写画像を切り換えることができる。
【0121】
上記第1実施形態のプロジェクター10では、第1光源装置20として黄色の蛍光Yを射出する光源装置を適用する場合を例に挙げたが、本発明はこれに限られず、第1光源装置20を、第1光源装置23のような赤色の蛍光R、第2光源装置22のような青色の蛍光B、あるいは第3光源装置24のような緑色の蛍光Gを射出する光源装置のいずれかに置き換えてもよい。
【0122】
その他、光源装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。
【0123】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様のプロジェクターは、フォーカスフリーで被投射体に画像を投写するプロジェクターであって、第1光源装置と、前記第1光源装置から射出される光を変調する光変調素子と、を備え、前記第1光源装置は、第1波長帯を有する第1光を射出する発光素子と、蛍光体を含み、前記発光素子から射出される前記第1光を、前記第1波長帯とは異なる第2波長帯を有する第2光に変換する波長変換部材と、前記波長変換部材の中心軸に沿って設けられ、前記波長変換部材で生成される前記第2光を射出する射出部と、を備え、前記射出部は、前記波長変換部材に対向する第1端部と、前記中心軸に沿って前記第1端部とは反対側に位置する第2端部と、前記中心軸に垂直な断面積が前記第1端部から前記第2端部に向かって漸次小さくなる漸減部と、を有し、前記漸減部は、前記中心軸に対して傾斜し、前記第2光を射出する光射出面を有する。
【0124】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記波長変換部材は、前記波長変換部材の長手方向において互いに反対側に位置する第1面および第2面と、前記第1面および前記第2面と交差する第3面と、を有し、前記第2光は、前記第1面から前記射出部に向かって射出され、前記発光素子から射出される前記第1光は、前記第3面に入射してもよい。
【0125】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記第1面の形状は矩形状であり、前記光変調素子の有効変調領域の形状は矩形状であってもよい。
【0126】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記射出部の形状は、四角錐状であってもよい。
【0127】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記長手方向に沿う前記射出部の長さをHとし、前記長手方向と交差する方向に沿う前記射出部の長さをLとすると、HとLとの比H/Lは、1.3以上であってもよい。
【0128】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記波長変換部材と前記射出部とは、一体の部材で構成されていてもよい。
【0129】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記射出部は、前記波長変換部材とは別体の透光性部材で構成され、前記波長変換部材に接合されていてもよい。
【0130】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、前記射出部から射出される前記第2光を透過させる角度変換レンズをさらに備え、前記角度変換レンズから射出される前記第2光の放射角度は、前記角度変換レンズに入射する前記第2光の放射角度よりも小さくてもよい。
【0131】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記角度変換レンズは、前記第1光源装置と前記光変調素子との間に設けられていてもよい。
【0132】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記角度変換レンズは、非球面レンズで構成されていてもよい。
【0133】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する第3光を射出する第2光源装置と、前記第1光源装置から射出される前記第2光と、前記第2光源装置から射出される前記第3光と、を合成し、第1合成光を射出する光合成素子と、をさらに備え、前記光変調素子は、前記光合成素子から射出される前記第1合成光を変調してもよい。
【0134】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、前記第1波長帯、前記第2波長帯、および前記第3波長帯とは異なる第4波長帯を有する第4光を射出する第3光源装置をさらに備え、前記光合成素子は、前記第1光源装置から射出される前記第2光と、前記第2光源装置から射出される前記第3光と、前記第3光源装置から射出される前記第4光と、を合成し、第2合成光を射出し、前記光変調素子は、前記光合成素子から射出される前記第2合成光を変調してもよい。
【0135】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記光変調素子は、カラーフィルターを備えていてもよい。
【0136】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記第1光源装置、前記第2光源装置、および前記第3光源装置のそれぞれは、時間順次に点灯され、前記光変調素子は、前記第1光源装置、前記第2光源装置、および前記第3光源装置のそれぞれの点灯タイミングに同期して駆動されてもよい。
【0137】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、前記第1波長帯および前記第2波長帯とは異なる第3波長帯を有する第3光を射出する第2光源装置と、光合成素子と、をさらに備え、前記光変調素子は、前記第1光源装置から射出される前記第2光を変調する第1光変調素子と、前記第2光源装置から射出される前記第3光を変調する第2光変調素子と、を有し、前記光合成素子は、前記第1光変調素子から射出される第1変調光と、前記第2光変調素子から射出される第2変調光と、を合成してもよい。
【0138】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、前記第1波長帯、前記第2波長帯、および前記第3波長帯とは異なる第4波長帯を有する第4光を射出する第3光源装置をさらに備え、前記光変調素子は、前記第3光源装置から射出される前記第4光を変調する第3光変調素子をさらに有し、前記光合成素子は、前記第1変調光と、前記第2変調光と、前記第3光変調素子から射出される第3変調光と、を合成してもよい。
【0139】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記光変調素子は、透過型光変調素子で構成されていてもよい。
【0140】
本発明の一つの態様のプロジェクターにおいて、前記光変調素子は、反射型光変調素子で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0141】
10,12,13,14,15,16,17…プロジェクター、20,23…第1光源装置、22…第2光源装置、24…第3光源装置、30…光変調素子、30R,30Y…第1光変調素子、30B…第2光変調素子、30G…第3光変調素子、40…角度変換レンズ、50,61,66,67…波長変換部材、50a…第1面、50b…第2面、50c…第3面、54,62…射出部、54a…第1端部、54b…第2端部、54c…漸減部、54d…光射出面、56,57…発光素子、60,64…光合成素子、J…中心軸、E…励起光(第1光)、Y,R…蛍光(第2光)、B…蛍光(第3光)、G…蛍光(第4光)、R1…赤色変調光(第1変調光)、B1…青色変調光(第2変調光)、G1…緑色変調光(第3変調光)、Y1…黄色変調光(第1変調光)、W…合成光(第1合成光、第2合成光)。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16