(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】全固体電池モジュールおよび電子機器
(51)【国際特許分類】
H01M 10/42 20060101AFI20240528BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240528BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240528BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/0562
H01M10/058
H01M50/204 301
(21)【出願番号】P 2022507190
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021009061
(87)【国際公開番号】W WO2021182415
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2020043166
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】片山 幹
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/047255(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092370(WO,A1)
【文献】特開平09-050826(JP,A)
【文献】特開2013-212043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/05-10/0587
H01M10/36-10/48
H01M50/20-50/298
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0Vを超える電圧を有する全固体電池と、
前記全固体電池と直列に接続されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオン/オフを制御する制御部と、
前記制御部に接続されるトリガー入力経路と、
を備え、
前記トリガー入力経路を介して、前記スイッチング素子をオン状態に遷移させるトリガーが入力され
、
前記制御部は、前記スイッチング素子がオン状態に遷移された後に入力されるトリガーの入力を無視する
全固体電池モジュール。
【請求項2】
前記全固体電池は、回路基板の表面に実装される表面実装型の電池である
請求項1に記載の全固体電池モジュール。
【請求項3】
前記トリガーは、ハイレベルの信号またはローレベルの信号である
請求項1または2に記載の全固体電池モジュール。
【請求項4】
全固体電池モジュールが回路基板に実装された電子機器において、
前記全固体電池モジュールは、
0Vを超える電圧を有する全固体電池と、
前記全固体電池と直列に接続されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子のオン/オフを制御する第1の制御部と、
前記第1の制御部に接続されるトリガー入力経路と、
を備え、
前記トリガー入力経路を介して、前記スイッチング素子をオン状態に遷移させるトリガーが入力され、
前記第1の制御部は、前記スイッチング素子がオン状態に遷移された後に入力されるトリガーの入力を無視し、
前記電子機器は、
前記回路基板上にさらに第2の制御部と、
前記全固体電池の入出力ラインと
を備える
電子機器。
【請求項5】
前記トリガーが、前記全固体電池モジュールの外部から与えられる
請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記トリガー入力経路が前記第2の制御部と電気的に接続されており、前記第2の制御部から前記トリガーが出力される
請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項7】
電子機器側制御部から出力されたトリガーが前記トリガー入力経路を介して前記第1の制御部に入力される
請求項4から6までの何れかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記トリガー入力経路と前記入出力ラインとの間に、所定の空間をあけて電気的に切断可能な切断部が設けられている
請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項9】
複数の前記全固体電池モジュールと、
前記複数の全固体電池モジュールのそれぞれの前記トリガー入力経路と、前記入出力ラインを接続する接続部と
を備え、
前記接続部に、所定の空間をあけて電気的に切断可能な切断部が設けられている
請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項10】
前記切断部に導電部材が配置されることにより、前記トリガー入力経路と前記入出力ラインとの間が電気的に接続される
請求項8または9に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全固体電池モジュールおよび電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、全固体電池に関する研究、開発が盛んに行われている。全固体電池は、リフロー等により直接、実装できるという点でパック化がし易く、また、本体への組み込み時に必要なスペースが従来のリチウムイオン電池に比べて小さいという利点がある。しかしながら、全固体電池が電圧を有する状態で他の部品と共にリフローにより実装される場合、はんだペーストが溶けるタイミングをコントロールすることが難しく、部品間の接続順序をコントロールすることが困難である。このため、リフローによる接続態様によっては、全固体電池の電力がIC(Integrated Circuit)等の回路部品に不必要に供給され、これにより回路部品の破壊や誤動作、ショート等が発生し得る。かかる問題を回避するために、下記特許文献1に記載されている、電池を0Vの放電状態にした上で基板に実装する技術を適用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を適用する場合には、全固体電池を深放電させる必要があるため全固体電池を劣化させる虞がある。また、基板実装後に、全固体電池を充電する必要があるため、製造工程の増加や製造工程の制約を招来する。このため、上述した問題を生じさせることなく、電圧を有する状態で全固体電池を基板に実装できることが望まれる。
【0005】
したがって、本発明は、電圧を有する全固体電池を基板に実装することができる全固体電池モジュールおよび電子機器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
0Vを超える電圧を有する全固体電池と、
全固体電池と直列に接続されるスイッチング素子と、
スイッチング素子のオン/オフを制御する制御部と、
制御部に接続されるトリガー入力経路と、
を備え、
トリガー入力経路を介して、スイッチング素子をオン状態に遷移させるトリガーが入力され、
制御部は、スイッチング素子がオン状態に遷移された後に入力されるトリガーの入力を無視する
全固体電池モジュールである。
【0007】
また、本発明は、
全固体電池モジュールが回路基板に実装された電子機器において、
全固体電池モジュールは、
0Vを超える電圧を有する全固体電池と、
全固体電池と直列に接続されるスイッチング素子と、
スイッチング素子のオン/オフを制御する第1の制御部と、
第1の制御部に接続されるトリガー入力経路と、
を備え、
トリガー入力経路を介して、スイッチング素子をオン状態に遷移させるトリガーが入力され、
第1の制御部は、スイッチング素子がオン状態に遷移された後に入力されるトリガーの入力を無視し、
電子機器は、
回路基板上にさらに第2の制御部と、
全固体電池の入出力ラインと
を備える
電子機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも実施形態によれば、電圧を有する全固体電池を、共に実装される他の電子部品に悪影響を与えることなく基板に実装することができる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは第1の実施形態にかかる全固体電池モジュールを説明するための図であり、
図1Bは第1の実施形態にかかる全固体電池モジュールが回路基板に実装された状態を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる全固体電池モジュールが有する正極端子等を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる全固体電池モジュールの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかる全固体電池モジュールが適用される電子機器の構成例を示す図である
【
図5】
図5は、トリガーの供給元の他の例に関する説明がなされる際に参照される図である。
【
図6】
図6は、トリガーの供給元の他の例に関する説明がなされる際に参照される図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態にかかる全固体電池モジュールの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態にかかる全固体電池モジュールの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行われる。
<第1の実施形態>
<第2の実施形態>
<変形例>
<応用例>
以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
【0011】
<第1の実施形態>
[全固体電池モジュール]
図1Aは、本実施形態にかかる全固体電池モジュール(全固体電池モジュール1)の一例を示し、
図1Bは、全固体電池モジュール1が回路基板(回路基板2)に実装された状態を示す図である。
図1Aに示すように、全固体電池モジュール1は、全固体電池11および全固体電池11が実装される回路基板11Aを有している。
【0012】
全固体電池モジュール1は、
図2に示すように、正極端子TA、負極端子TBおよびイネーブルピンEPを有している。正極端子TA、負極端子TBおよびイネーブルピンEPは、全固体電池モジュール1の適宜な箇所から導出されている。
【0013】
図3を参照しつつ、全固体電池モジュール1の構成例に関して詳細に説明する。全固体電池モジュール1は、全固体電池11および全固体電池11が実装される回路基板11Aを有している。回路基板11Aには
図3に示す構成が所定の接続パターンにより実装されている。全固体電池11の正極には、パワーラインPLAが接続されており、当該パワーラインPLAを介して正極端子TAが導出されている。また、全固体電池11の負極には、パワーラインPLBが接続されており、当該パワーラインPLBを介して負極端子TBが導出されている。
【0014】
また、全固体電池モジュール1は、制御部または第1の制御部の一例である制御IC12と、FET(Field Effect Transistor)13と、電流検出抵抗14と、抵抗15とを有している。制御IC12の所定のポートにはトリガー入力経路TLが接続されており、トリガー入力経路TLを介してイネーブルピンEPが導出されている。
【0015】
全固体電池11としては、例えば、リチウムイオン全固体電池、ナトリウムイオン全固体電池、カルシウムイオン全固体電池等の金属イオン全固体電池が挙げられる。本実施形態では、全固体電池11として、公知の構造や公知の材料を有する全固定電池を適用することができる。
図1Aに示したように、本実施形態にかかる全固体電池11は、回路基板11Aに実装される表面実装型の電池である。なお、本明細書において全固体電池とは、少なくとも固体電解質層を有する二次電池をいい、その全ての構成が固体である必要は無い。
【0016】
制御IC12は、全固体電池モジュール1の制御を行う。制御IC12は、例えば、FET13のオン/オフを制御する。また、制御IC12は、電流検出抵抗14を介して検出される電流値等の測定結果を上位の保護IC等に送信する。なお、制御IC12は、全固体電池11の電力を適宜、変換した電力を電源として動作する。
【0017】
FET13は、制御IC12によってオン/オフが制御されるスイッチング素子である。なお、詳細は後述するが、FET13は、全固体電池モジュール1の実装時には、全固体電池11の出力を制限するようにオフ状態に設定されている。
【0018】
電流検出抵抗14は、全固体電池モジュール1の電流経路に流れる電流値を検出するための抵抗である。例えば、制御IC12は、電流検出抵抗14の両端に発生する電圧値に基づいて電流値を検出する。検出された電流値は、上位のIC(例えば、後述する保護IC)に送信される。なお、本実施形態では、電流検出抵抗14がパワーラインPLB上に接続されているが、パワーラインPLA上に接続されていてもよい。
【0019】
抵抗15は、パワーラインPLAと制御IC12の所定のポートとの間に接続されている。抵抗15によって、制御IC12に入力される電流が制限される。
【0020】
[電子機器の構成例]
図4は、上述した全固体電池モジュール1が回路基板2に実装された構成を有する電子機器(電子機器100)の構成例を示す図である。なお、
図4では、全固体電池モジュール1の構成に関する図示が一部簡略化されている。
【0021】
全固体電池モジュール1の正極側からは、パワーラインPLaが導出されている。パワーラインPLaは、正極端子TAを介してパワーラインPLAに接続されている。また、全固体電池モジュール1の負極側からは、パワーラインPLbが導出されている。パワーラインPLbは、負極端子TBを介してパワーラインPLBに接続されている。本実施形態では、パワーラインPLaおよびパワーラインPLbが、全固体電池11の入出力ラインに対応している。
【0022】
また、電子機器100は、第2の制御部の一例である保護IC21と、ヒューズ22と、FET23と、充放電制御スイッチ24とを有している。
【0023】
保護IC21は、電子機器100における保護動作を行う。保護動作の具体例については後述する。また、保護IC21は、全固体電池モジュール1の制御IC12と所定の通信ライン(不図示)を介して接続されており、当該通信ラインを介して全固体電池モジュール1で測定されたデータ(例えば、電流値)や、各種のコマンドのやり取りが可能とされている。また、保護IC21は、イネーブルピンEPを介してトリガー入力経路TLに接続されている。かかる構成によって、保護IC21は、トリガー入力経路TLを介して、論理的な意味でのハイレベル(Hi)またはローレベル(Lo)の信号を制御IC12に供給可能とされている。
【0024】
ヒューズ22は、例えば、パワーラインPLa上に接続されている。ヒューズ22としては、例えば、SCP(Self Control Protector)を適用することができる。SCPは、ヒーター付ヒューズであり、電池(本例では、全固体電池11)の電力によりヒーターを加熱することでヒューズを切断するデバイスである。ヒーターに電力を供給するタイミングを変化させることにより、任意のタイミングでヒューズを切断することができる。
【0025】
FET23は、ヒューズ22と保護IC21との間に接続されるスイッチング素子である。FET23は、保護IC21によってオン/オフが制御される。FET23がオンされることによりヒューズ22のヒーターが過熱され、ヒューズ22が溶断される。
【0026】
充放電制御スイッチ24は、保護IC21によってオン/オフが制御されるスイッチである。充放電制御スイッチ24は、不図示の充電制御スイッチおよび放電制御スイッチを含む。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチが適宜、オン/オフされることにより、充電および放電のそれぞれが許可または禁止される。充放電制御スイッチ24としては、例えば、FETを使用することができる。なお、本実施形態では、充放電制御スイッチ24は、パワーラインPLa上に接続されているが、パワーラインPLb上に接続されていてもよい。
【0027】
[電子機器の動作]
(保護動作の一例)
次に、電子機器100の主な動作の一例について説明する。始めに、電子機器100で行われる保護動作について説明する。保護IC21は、充放電制御スイッチ24を適宜、オン/オフすることにより、充放電を制御する充放電制御部として機能する。例えば、保護IC21が全固体電池11に異常等なく問題なく充放電できると判断した場合には充電制御スイッチと放電スイッチとをオンにする。また、保護IC21は、全固体電池11の電圧が過充電禁止電圧に達した場合等の充電を禁止する必要がある場合には、少なくとも充電制御スイッチをオフする。また、保護IC21は、全固体電池11の電圧が過放電禁止電圧に達した場合等の放電を禁止する必要がある場合には、少なくとも放電制御スイッチをオフする。また、保護IC21は、全固体電池11が深放電して再充電禁止領域に達した場合には、充電制御スイッチおよび放電制御スイッチをオフして充放電を停止する。
なお、保護IC21が、過電流検出等の他の公知の保護動作を行うようにしてもよい。
【0028】
(出力制御にかかる動作)
次に、本実施形態にかかる出力制御にかかる動作について説明する。本実施形態では、全固体電池モジュール1を回路基板2にリフロー等により実装する前に、全固体電池11を電池として使用できる状態とする処理、すなわち、全固体電池11を活性化させる処理として、電圧を有しない全固体電池11を充電する処理(以下、初期充電と適宜、称する)が行われる。初期充電は、例えば製造装置等を用いてFET13をオンにした後、正極端子TAおよび負極端子TBに対して充電装置を接続して行われる。充電がなされていることから、制御IC12は、動作可能な状態(アクティブな状態)である。
【0029】
しかしながら、全固体電池11が0Vを超える電圧に充電された状態で全固体電池モジュール1が回路基板2に実装されると、どの箇所がはんだによって先に接続されるのかがわからないため、リフロー時にショートやIC等の電子部品の誤動作を招く虞がある。そこで、リフロー時には、FET13がオフ状態とされることにより、全固体電池11の電力が出力されないようにされる。これにより、ショートの発生等が防止される。
【0030】
一方、リフロー後の適宜なタイミング(例えば、基板検査のタイミング)に、全固体電池モジュール1の使用が可能となるように、FET13をオフ状態からオン状態にする処理が行われる。制御IC12は、FET13をオン状態に遷移させるトリガーが自身に入力されたことに応じて、FET13をオフ状態からオン状態に遷移させる。
【0031】
トリガーは、例えば、ハイレベルまたはローレベルの信号であり、全固体電池モジュール1の外部から当該全固体電池モジュール1に対して与えられる。トリガーは、例えば、保護IC21から出力され、トリガー入力経路TLを介して制御IC12に入力される。
制御IC12は、例えば、トリガー入力経路TLが接続される自身のポートへの入力の論理的なレベルの変化を検出することにより、トリガーの入力を認識する。より具体的には、例えば、リフロー等によって
図4に示す構成の全固体電池モジュール1が回路基板2に実装された後、基板検査等のタイミングで保護IC21に所定の電圧を1回、入力する(ワンショット)ことにより、保護IC21を起動させる。起動した保護IC21は、予め記憶されたプログラムに基づいて、制御IC12に対してトリガーとしてのハイレベルまたはローレベルの信号を与える。かかる信号の入力を検出した制御IC12は、オフ状態に設定されているFET13をオン状態に遷移させる。以降は、全固体電池モジュール1の出力が制限されずに適宜な負荷に供給可能になる。
【0032】
なお、電子機器100の構成によっては、保護IC21が本体側における上位のホスト機器(以下、本体側システムと適宜、称する)に接続される場合がある。この場合に、例えば、
図5に示すように、本体側システム31(電子機器側制御部の一例)から保護IC21に対してトリガーを出力させるための制御信号が送信される。かかる制御信号を受信した保護IC21は、制御IC12に対してハイレベルまたはローレベルの信号を、トリガー入力経路TLを介して送信する。そして、制御IC12は、FET13をオンする。
【0033】
また、
図6に示すように、本体側システム31に対して制御IC12のイネーブルピンEPが保護IC21を介さずに接続されていてもよい。そして、本体側システム31から制御IC12に対して、直接、ハイレベルまたはローレベルの信号がトリガー入力経路TLを介して送信されるようにしてもよい。本例によれば、何らかの原因により保護IC21がトリガーを制御IC12に出力できない場合に、本体側システム31から制御IC12に対してトリガーを出力することができるので、確実にFET13をオンすることができる。
【0034】
[効果]
以上、説明した本実施形態によれば、例えば、以下の効果を得ることができる。
全固体電池モジュールを、全固体電池が0Vを超える電圧を有する状態で実装できるので、リフロー等の前に全固体電池を深放電させる必要がなく、全固体電池を劣化させてしまうことを防止することができる。また、リフロー後に全固体電池を初期充電する必要がなくなる。
リフロー等による実装時には、全固体電池の出力が制限されているので、他の電子部品に対して、全固体電池の電力に起因した悪影響を与えてしまうことを防止することができる。
また、従来は、0Vを超える電圧を有する全固体電池を含む全固体電池モジュールを回路基板に最後に実装するという工程上の制約が生じるが、本発明ではこれらの工程上の制約が生じることがなくなる。
全固体電池モジュールの実装後は、外部に全固体電池の電力を確実に供給することができる。
【0035】
[第1の実施形態の変形例]
なお、上述した説明では、電子機器100が有する全固体電池モジュール1が1個である例が説明されたが、電子機器100が複数個の全固体電池モジュール1を有していてもよい。複数の全固体電池モジュール1が、例えば直列接続される。複数の全固体電池モジュール1のそれぞれの制御IC12と保護IC21とが接続され、上述した実施形態と同様に、保護IC21からそれぞれの制御IC12に対してトリガーが与えられる。各制御IC12は、対応するFET13をオンする。なお、本体側システム31から各制御IC12に対してトリガーが与えられても良い。
【0036】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態の説明において、上述した説明における同一または同質の構成については同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜、省略する。また、特に断らない限り、第1の実施形態で説明した事項は第2の実施形態に対して適用することができる。
【0037】
概略的には、第2の実施形態は、トリガーの供給元がIC等でない点が第1の実施形態と異なる点である。より詳しくは、第2の実施形態は、所定の切断部がはんだ等によって物理的に接続されることで、制御IC12にトリガーが与えられる実施形態である。
【0038】
図7は、第2の実施形態にかかる電子機器(電子機器100A)の構成例を示す図である。電子機器100Aが、
図4に示した電子機器100と異なる点は、トリガー入力経路TLが保護IC21と接続されていない点、トリガー入力経路TLがイネーブルピンEPおよびラインLAを介して、入出力ライン(本例では、パワーラインPLb)に接続されている点、および、所定の空間をあけて電気的に切断可能な切断部41AがラインLA上に、形成されている点である。切断部41Aは、全固体電池モジュール1の外部に形成されており、具体例としては、はんだ付けによって物理的に接続可能な2個のランド(割りランド等も称される)である。
【0039】
第1の実施形態と同様に、FET13がオフ状態であり、且つ、0Vを超える電圧を有する全固体電池11を含む全固体電池モジュール1がリフロー等により回路基板2に実装される。この状態では、未だ切断部41Aが電気的に接続されておらず、トリガー入力経路TLが接続される制御IC12のポートの状態は、論理的なレベルとしては「不定」である。そして、リフロー後に、切断部41Aにはんだ等の金属で構成された導電部材が配置されることによってトリガー入力経路TLとパワーラインPLbとが電気的に接続されショートされる。これにより、トリガー入力経路TLが接続される制御IC12のポートの論理的なレベル(電圧)が「不定」から「ローレベル(またはハイレベル)」に変化する。制御IC12は、かかる論理的なレベルの変化を検出することにより、自身に外部からトリガーが与えられたことを認識する。そして、トリガーが与えられたことから、制御IC12は、FET13をオンする。このように、ハイレベルまたはローレベルの信号以外のトリガーが使用されてもよい。
【0040】
本実施形態においても、複数の全固体電池モジュール1が使用されてもよい。
図8は、本実施形態の変形例にかかる電子機器(電子機器100B)の構成例を示す図である。
図8に示すように、電子機器100Bは、例えば、直列に接続された3個の全固体電池モジュール1を有している。各全固体電池モジュール1のトリガー入力経路TLおよびイネーブルピンEPが、接続部の一例であるラインLBを介して、3個の全固体電池モジュール1の入出力ライン(本例では、パワーラインPLb)に接続されている。本変形例では、ラインLB上に切断部41Bが形成されている。ラインLBは、各全固体電池モジュール1のトリガー入力経路TLおよびイネーブルピンEPに対して共通のラインである。
【0041】
リフロー後に、切断部41Bにはんだ等の金属を含む導電部材が配置されることによってトリガー入力経路TLとパワーラインPLbとが電気的に接続されショートされる。これにより、トリガー入力経路TLが接続される各制御IC12のポートの論理的なレベル(電圧)が「不定」から「ローレベル(またはハイレベル)」に変化する。各制御IC12は、かかる論理的なレベルの変化を検出することにより、自身に外部からトリガーが与えられたことを認識する。そして、トリガーが与えられたことから、各制御IC12は、同じ全固体電池モジュール1内のFET13をオンする。これにより、電子機器100Bからは、3個の全固体電池モジュール1の電力が供給可能となる。
【0042】
リフロー後に、各全固体電池モジュール1の全固体電池11の出力制限を解除するためには、従来は、各全固体電池モジュール1の出力経路に切断部を設け、各切断部を電気的に接続する必要があった。すなわち、各全固体電池モジュール1の数だけ切断部を設ける必要があった。しかしながら本変形例によれば、切断部を1箇所だけ設ければよいので、切断部を電気的に接続する工程を簡素化できると共に、切断部を設けるための回路基板上の面積を削減することができる。
【0043】
<変形例>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0044】
上述した実施形態において、制御IC12は、一度、FET13をオンした場合には、その後にトリガー入力経路TLを介してトリガーが入力されても当該トリガーを無視して受け付けないようにしてもよい。これにより、ノイズ等に起因したイネーブルピンEPへの入力によってFET13が再度、オフ状態にされてしまうことを防止することができる。
【0045】
スイッチング素子として、FETではなくトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が使用されてもよい。また、切断部は、はんだ付けではなくジャンパー線によって電気的に接続されてもよい。ラインLA、LBは、パワーラインPLaに接続されてもよい。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、全固体電池モジュールや電子機器に他の構成が追加されたり、所定の構成が削除されてもよい。また、全固体電池モジュールや電子機器は、その用途等に応じて全固体電池パック等の名称で称される場合もあるが、かかる名称の違いによって本発明の範囲が限定されて解釈されてはならない。
【0046】
上述した実施形態、変形例で説明した事項は、適宜組み合わせることが可能である。また、実施形態で説明された材料、工程等はあくまで一例であり、例示された材料等に本発明の内容が限定されるものではない。
【0047】
<応用例>
本発明にかかる全固体電池モジュールは、各種の電子機器、電動工具、電動車両等に搭載又は電力を供給するために使用することができる。
【0048】
具体的な応用例について説明する。例えば、上述した全固体電池モジュールは、携帯情報端末の機能を有するウェアラブル機器、いわゆるウェアラブル端末の電源として、使用することができる。ウェアラブル端末としては、例えば腕時計型端末、メガネ型端末などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0049】
図9は、全固体電池モジュールを内蔵したウェアラブル端末の一例を示す。
図9に示すように、応用例にかかるウェアラブル端末630は、腕時計型端末であり、その内部に電池パック632を有している。電池パック632として本発明にかかる全固体電池モジュールを適用することができる。ウェアラブル端末630は、ユーザーに装着されて使用できるものである。ウェアラブル端末630は、変形が可能なフレキシブルなものであってもよい。
【0050】
図10に示すように、応用例にかかるウェアラブル端末630は、電子機器本体の電子回路631と、電池パック632とを備える。電池パック632は、電子回路631に対して電気的に接続されている。ウェアラブル端末630は、例えば、ユーザーにより電池パック632を着脱自在な構成を有している。なお、ウェアラブル端末630の構成はこれに限定されるものではなく、ユーザーにより電池パック632をウェアラブル端末630から取り外しできないように、電池パック632がウェアラブル端末630内に内蔵されている構成を有していてもよい。
【0051】
電池パック632の充電時には、電池パック632の正極端子634A、負極端子634Bがそれぞれ、充電器(図示せず)の正極端子、負極端子に接続される。一方、電池パック632の放電時(ウェアラブル端末630の使用時)には、電池パック632の正極端子634A、負極端子634Bがそれぞれ、電子回路631の正極端子、負極端子に接続される。
【0052】
(電子回路)
電子回路631は、例えば、CPU、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部等を備え、ウェアラブル端末630の全体を制御する。
【0053】
(電池パック)
電池パック632は、全固体電池セル610(実施形態における全固体電池11)と、充放電回路633とを備える。
【0054】
本応用例では、電池パック632として本発明にかかる全固体電池モジュールを適用した例を示したが、電子機器本体の電子回路631に本案かかる全固体電池モジュールが搭載されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1・・・全固体電池モジュール
11・・・全固体電池
12・・・制御IC
13・・・FET
21・・・保護IC
31・・・本体側システム
41A、41B・・・切断部
100、100A、100B・・・電子機器
PLA、PLa、PLB、PLb・・・パワーライン
EP・・・イネーブルピン
TL・・・トリガー入力経路
LA、LB・・・ライン