(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】設備診断システム、設備診断方法、及び、設備診断プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 3/38 20060101AFI20240528BHJP
G01M 3/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
G01M3/38 L
G01M3/02 M
(21)【出願番号】P 2022553237
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036754
(87)【国際公開番号】W WO2022070227
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】櫟原 英士
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一郎
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-128916(JP,A)
【文献】特開平11-110560(JP,A)
【文献】特開2013-101028(JP,A)
【文献】特開昭62-088932(JP,A)
【文献】国際公開第2018/170438(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00-3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御する制御手段と、
前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する判定手段と、
を備え
、
前記第1の液体は油であり、前記第2の液体は水であり、
前記複数の波長は、
前記撮像手段が人工光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1400ナノメートルの近傍を含み、
前記撮像手段が地表における太陽光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1600ナノメートルの近傍を含む、
設備診断システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記撮像画像に含まれる画素に関して、前記複数の波長の間における輝度の違いを表す指標の値を算出し、算出した前記指標の値と判定基準とに基づいて、前記第1の液体あるいは前記第2の液体が前記設備に付着しているか否かを判定する、
請求項1に記載の設備診断システム。
【請求項3】
前記判定手段は、前記複数の波長に含まれる第1及び第2の波長における前記画素の輝度の差を前記画素の輝度の和で除算した前記指標の値を算出する、
請求項2に記載の設備診断システム。
【請求項4】
前記判定手段は、前記指標の値と前記第1の液体あるいは前記第2の液体が前記設備に付着していることとの関係を表す学習済みモデルを生成し、前記学習済みモデルを用いて、前記第1の液体あるいは前記第2の液体が前記設備に付着しているか否かを判定する、
請求項2または請求項3に記載の設備診断システム。
【請求項5】
前記複数の波長は、
前記撮像手段が人工光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1400ナノメートルの近傍を除く波長の帯域をさらに含み、
前記撮像手段が地表における太陽光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1600ナノメートルの近傍を除く波長の帯域をさらに含む、
請求項
1乃至請求項4のいずれか一項に記載の設備診断システム。
【請求項6】
前記撮像手段は、近赤外線カメラと、前記複数の波長の個々を中心波長とする複数の干渉フィルタとを備え、
前記制御手段は、前記干渉フィルタを切り替えながら、同等のタイミングで、前記複数の波長の個々において、前記設備を撮像するように前記撮像手段を制御する、
請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載の設備診断システム。
【請求項7】
情報処理装置によって、
近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御し、
前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する、
方法であって、
前記第1の液体は油であり、前記第2の液体は水であり、
前記複数の波長は、
前記撮像手段が人工光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1400ナノメートルの近傍を含み、
前記撮像手段が地表における太陽光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1600ナノメートルの近傍を含む、
設備診断方法。
【請求項8】
近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御する制御処理と、
前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する判定処理と、
をコンピュータに実行させるための
プログラムであって
前記第1の液体は油であり、前記第2の液体は水であり、
前記複数の波長は、
前記撮像手段が人工光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1400ナノメートルの近傍を含み、
前記撮像手段が地表における太陽光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1600ナノメートルの近傍を含む、
設備診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備診断システム、設備診断方法、及び、設備診断プログラムが格納された記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
電力設備等の社会インフラにおいて、例えば油漏れなどの障害が発生した場合、人々の生活に多大な影響を及ぼすおそれがある。したがって、このような障害が発生しないように、社会インフラの点検及び診断を着実に行うことが重要である。しかしながら、点検の対象となる膨大な数の設備の点検は、通常、人が巡回することによって行われていることから、このような設備の点検及び診断を、高い精度でかつ効率的に行うことを実現する技術に対する期待が高まってきている。
【0003】
このような技術に関連する技術として、特許文献1には、漏れ検出の対象となる箇所を、漏れ検出の対象となる液体の吸光スペクトルを含む帯域の発光成分をもつ赤外光で照明して撮影した漏れのない状態(正常時)の画像と実際の画像とを比較して漏れを検出する漏れ検出方法が開示されている。この方法では、照明を消して撮影した漏れのない状態(正常時)の画像と実際の画像とを比較して漏れを検出し、両方の検出結果から漏れの判定を行う。
【0004】
また、特許文献2には、水に対する減衰が油に対する減衰よりも大きな波長を有する光を油漏れの検出対象領域へ投光する光源を備える油漏れ検出装置が開示されている。この装置は、当該光源から投光され検出対象領域で反射された反射光に基づき、油漏れの有無を判定する。
【0005】
また、特許文献3には、特定の物体による所定の吸収率を持つ第1波長の光と、当該特定の物体による吸収率が 当該第1波長よりも小さい第2波長の光とを、ターゲットに照射する分光装置が開示されている。この装置は、第1波長の光がターゲットを透過又は反射した第1の散乱光、及び第2波長の光がターゲットを透過又は反射した第2の散乱光を、それぞれ受光する。そしてこの装置は、受光した第1の散乱光と第2の散乱光との差異に基づいて、 ターゲットにおける特定の物体の検出に利用される情報を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-239202号公報
【文献】特開2013-101028号公報
【文献】国際公開第2015/008435号
【非特許文献】
【0007】
【文献】"世界初、可視光を利用して水を分解する酸硫化物光触媒を開発
図3太陽光の波長とスペクトル強度 (国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 人工光合成化学プロセス技術研究組合 2019年7月3日)"、[Online]、[2020年9月23日検索]、インターネット<URL: https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101149.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば上述した特許文献1乃至3が示す技術等を用いることによって、例えば油漏れの発生の有無の確認のために、人が各設備を巡回して点検することをしなくとも、設備を撮像した画像から、設備に付着した液体の種別をある程度は判定することは可能であると考えられる。しかしながら、特許文献1では、蛍光した光を見る必要があり、日中では見ることが難しく判定精度が高くない。特許文献2は、用いる波長が1つのみであり、閾値による判別方法であるが、輝度は膜厚により変化するので膜厚の影響で検知できない可能性があり、同様に判定精度が高くない。特許文献3では、油の判定には3.6μm(マイクロメートル)以上の中赤外線を利用しており、水の判定には、例えば1.45μmの波長を利用している。したがって、3.6μmの波長だけでは水と油を判定することが出来ないため判定精度が高くない。このように特許文献1乃至3における判定精度は、社会インフラを構成する設備の障害が人々の生活に与える影響の大きさをふまえて、十分に高いとは言えず、当該判定精度をさらに高めることが課題である。
【0009】
本発明の主たる目的は、設備に付着した液体の種別を判定する精度を向上させることができる設備診断システム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る設備診断システムは、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御する制御手段と、前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する判定手段と、を備える。
【0011】
上記目的を達成する他の見地において、本発明の一態様に係る設備診断方法は、情報処理装置によって、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御し、前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する。
【0012】
また、上記目的を達成する更なる見地において、本発明の一態様に係る設備診断プログラムは、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御する制御処理と、前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する判定処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0013】
更に、本発明は、係る設備診断プログラム(コンピュータプログラム)が格納された、コンピュータ読み取り可能な、不揮発性の記録媒体によっても実現可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、設備に付着した液体の種別を判定する精度を向上させることができる設備診断システム等が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る設備診断システム1の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る補正部14によるシェーディング補正を行う前後の近赤外線撮像画像161の態様を例示する図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る設定部12が設定するリファレンスエリア及び検知エリアを例示する図である。
【
図4】太陽光の波長とスペクトル強度との関係を表すグラフである。
【
図5】近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における油が付着した部分の輝度との関係と、人工光による撮像環境において、油または水の付着の判定に好適な近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の波長を示すグラフである。
【
図6】近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における水が付着した部分の輝度との関係と、人工光による撮像環境において、油または水の付着の判定に好適な近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の波長を示すグラフである。
【
図7】近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における油が付着した部分の輝度との関係と、地表における太陽光による撮像環境において、油または水の付着の判定に好適な近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の波長を示すグラフである。
【
図8】近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における水が付着した部分の輝度との関係と、地表における太陽光による撮像環境において、油または水の付着の判定に好適な近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の波長を示すグラフである。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る設備診断システム1が、シェーディング補正用画像164を生成する動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る設備診断システム1が、設備40に油または水が付着しているか否かを判定する動作を示すフローチャートである。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る設備診断システム1が、人工光による撮像環境において用いる、設備40に油または水が付着している場合と何も付着していない状態とにおけるNDOIの値の関係を示す図である。
【
図12】本発明の第1の実施形態に係る設備診断システム1が、地表における太陽光による撮像環境において、設備40に油または水が付着している場合と何も付着していない状態とにおけるNDOIの値の関係を示す図である。
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る設備診断システム50の構成を示すブロック図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る設備診断装置10あるいは第2の実施形態に係る設備診断システム50を実行可能な情報処理装置900の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る設備診断システム1の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る設備診断システム1は、設備40の状態を表す情報(撮像画像)を収集し、収集した撮像画像に基づいて、設備40に油または水が付着しているか否かを診断するシステムである。設備40は、例えば、社会インフラを構成する、例えば電力設備あるいは通信設備等である。尚、
図1には説明の便宜上1つの設備40を示しているが、設備診断システム1が診断の対象とする設備40の数は複数でもよい。
【0018】
設備診断システム1は、大別して、設備診断装置10、撮像装置20、及び、管理端末装置30を含んでいる。撮像装置20は撮像手段の一例である。
【0019】
撮像装置20は、設備診断装置10と、例えばインターネット等の通信ネットワークを介して通信可能に接続されている。撮像装置20は、近赤外線カメラ21、及び、n個(nは2以上の任意の整数)の干渉フィルタ22-1乃至22-nを備えている。但し、本実施形態では以降の説明において、干渉フィルタ22-1乃至22-nをまとめて、あるいは任意のいずれかを、干渉フィルタ22と称する場合がある。
【0020】
近赤外線カメラ21は、近赤外線により撮像するカメラである。近赤外線は、その波長が0.7-2.5μm(マイクロメートル)程度の電磁波であり、赤色の可視光線に近い波長を持つ。近赤外線は、後述する通り、油と水の個々に関して、特有の吸収特性及び反射特性を有する。
【0021】
干渉フィルタ22-1乃至22-nは、ある特定の波長(中心波長)の付近の波長の近赤外線を透過させるフィルタであり、その中心波長は互いに異なることとする。撮像装置20は、近赤外線カメラ21のレンズの前に設置する干渉フィルタ22を切り替えることによって、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備40を撮像することができる。
【0022】
設備診断装置10は、例えばサーバ等の情報処理装置であり、具体的には、後述する
図12に例示する情報処理装置900のような装置である。設備診断装置10は、制御部11、設定部12、生成部13、補正部14、判定部15、及び、記憶部16を備える。制御部11、設定部12、生成部13、補正部14、及び、判定部15は、順に、制御手段、設定手段、生成手段、補正手段、及び、判定手段の一例である。
【0023】
管理端末装置30は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、設備診断装置10と通信可能に接続されている。管理端末装置30は、例えば、作業員が設備診断装置10に対して情報を入力する場合、あるいは、作業員が設備診断装置10から出力された情報の内容を確認する場合に、ユーザインタフェースとして使用される装置である。
【0024】
記憶部16は、例えば、
図12に例示するRAM(Random Access Memory)903あるいはハードディスク904のような不揮発性の記憶デバイスである。記憶部16は、後述する近赤外線撮像画像161、黒レベル画像162、一様面撮像画像163、シェーディング補正用画像164、特性情報165、及び、判定用学習済モデル166を記憶している。
【0025】
制御部11は、近赤外線カメラ21のレンズの前に設置する干渉フィルタ22を切り替えながら設備40を撮像するように撮像装置20を制御する。したがって、設備診断装置10は、ほぼ同等のタイミングで近赤外線帯域における複数の波長の個々において設備40を撮像した近赤外線撮像画像161を、撮像装置20から取得することができる。
【0026】
本実施形態に係る設備診断装置10は、近赤外線撮像画像161を分析する精度を高めるために、近赤外線撮像画像161に対してシェーディング補正を行う。シェーディングとは、撮像画像において、ある部分(例えば中心部分)の画素から遠い画素ほど、その輝度が低く撮像される(即ち、例えば撮像画像の中心部分と比較して周辺部分が暗く撮像される)現象である。設備診断装置10は、近赤外線撮像画像161に対するシュエーディング補正を行うための前処理として、シェーディング補正用画像164を生成する。
【0027】
まず、設備診断装置10がシェーディング補正用画像164を生成する動作について説明する。
【0028】
制御部11は、近赤外線カメラ21のレンズの前に設置する干渉フィルタ22を切り替えながら、例えば作業員等によって準備された光の反射特性が一様な面を撮像するように、撮像装置20を制御する。光の反射特性が一様な面とは、例えば同じ色で一様に塗られた面であり、光の反射特性が一様な面を撮像することによって、シェーディングの特性をそのまま表す一様面撮像画像163が得られる。設備診断装置10は、一様面撮像画像163を記憶部16に格納する。
【0029】
設備診断装置10は、また、シェーディング補正用画像164を生成する際に、黒レベルをふまえて画像を補正する(以降、黒レベル補正と称する場合がある)処理を行う。黒レベルとは、遮光環境において撮像したときの、デジタルカメラの出力値の最低値のことである。
【0030】
遮光環境においてデジタルカメラによる撮像を行ったとしても、デジタルカメラの出力値の最低値が0にならない場合がある。これはデジタルカメラのセンサ出力の下限値と、デジタルカメラのAD(Analog Digital)コンバータの入力レンジの下限値とが一致しておらず、オフセットが行われていることに起因する。尚、近赤外線カメラ21の出力値に関して、上述した黒レベルに関する特性が無視できる(即ち、遮光環境における近赤外線カメラ21の出力値がほぼ0である)場合、設備診断装置10は、黒レベル補正を行わなくてもよい。
【0031】
制御部11は、黒レベルをふまえた画像の補正処理を行うために、近赤外線カメラ21のレンズの前に設置する干渉フィルタ22を切り替えながら、例えば作業員等によって準備された遮光環境における撮像を行うように、撮像装置20を制御する。設備診断装置10は、これにより得られた黒レベルを表す黒レベル画像162を記憶部16に格納する。
【0032】
補正部14は、各波長に関して、画素ごとに、一様面撮像画像163の輝度から黒レベル画像162の輝度を減算した(即ち、一様面撮像画像163を黒レベル補正した)シェーディング補正用画像164を生成する。設備診断装置10は、生成したシェーディング補正用画像164を記憶部16に格納する。
【0033】
尚、設備診断装置10は、上述したシェーディング補正用画像164を生成する動作を、各干渉フィルタ22に関して事前に1度行えばよい。即ち、設備診断装置10は、後述する近赤外線撮像画像161に対するシェーディング補正を行うたびに、シェーディング補正用画像164を生成しなくてもよい。
【0034】
次に、設備診断装置10が、生成したシェーディング補正用画像164を用いて、設備40を撮像した近赤外線撮像画像161をシェーディング補正する動作について説明する。
【0035】
図2は、本実施形態に係る補正部14によるシェーディング補正を行う前後の、近赤外線撮像画像161の態様を例示する図である。
図2に例示する近赤外線撮像画像161は、設備40が設置された地面の砂利が撮像された画像である。即ち、
図2に示す例では、設備診断装置10は、例えば設備40から油あるいは水が流れ落ちることによって、設備40が設置された地面の砂利に、油あるいは水が付着しているか否かを判定する。
【0036】
図2に示す例では、シェーディング補正前の近赤外線撮像画像161は、上述したシェーディングにより、画像の中心部分と比較して周辺部分が暗く撮像されている。また、シェーディング補正用画像164は、例えば、中心部分の画素の輝度が最も高く、中心部分の画素から遠い画素ほど、その輝度が低く撮像されている。
【0037】
補正部14は、近赤外線撮像画像161に対するシェーディング補正を行う前に、近赤外線撮像画像161に対して、上述した黒レベル補正を行う。即ち、補正部14は、画素ごとに、近赤外線撮像画像161の輝度から黒レベル画像162の輝度を減算する。
【0038】
補正部14は、黒レベル補正を行った近赤外線撮像画像161に対して、シェーディング補正用画像164を使用して、シェーディング補正を行う。補正部14は、より具体的には、シェーディング補正用画像164の各画素の輝度をシェーディング補正用画像164において輝度が最も高い画素(例えば中心部分の画素)の輝度で除算した、画素ごとのシェーディング補正の係数を算出する。即ち、シェーディング補正の係数は、シェーディング補正用画像164において輝度が最も高い画素に関しては1であり、輝度が低い画素ほどその値が小さくなる、0から1の間の値をとる係数である。
【0039】
補正部14は、近赤外線撮像画像161の各画素の輝度を、上述の通りに算出したシェーディング補正の係数により除算することによってシェーディング補正を行う。補正部14は、このシェーディング補正により、近赤外線撮像画像161において、輝度が低い画素ほど(例えば
図2の例では、中心部分の画素から遠い画素ほど)、その輝度を高める度合いを大きくする。設備診断装置10は、
図2に例示するシェーディング補正後の近赤外線撮像画像161を記憶部16に格納する。
【0040】
次に、設備診断装置10が、シェーディング補正後の近赤外線撮像画像161に基づいて、設備40に付着した液体の種別を判定する動作について説明する。尚、以降の説明における近赤外線撮像画像161は、シェーディング補正後の近赤外線撮像画像161を示すこととする。
【0041】
設定部12は、所定の基準に基づいて、検知エリア(第1の領域)とリファレンスエリア(第2の領域)とを設定する。但し検知エリアは、近赤外線撮像画像161において、油あるいは水が設備40に付着しているか否かを判定する際の判定対象となる領域である。リファレンスエリアは、近赤外線撮像画像161における検知エリアとは異なる領域である。
【0042】
図3は、本実施形態に係る設定部12が設定するリファレンスエリア及び検知エリアを例示する図である。
図3に例示する設定例1乃至設定例4において、設定部12は、近赤外線撮像画像161における楕円形の内部の領域を検知エリアとして設定し、矩形の内部の領域をリファレンスエリアとして設定する。尚、
図3に例示するリファレンスエリア及び検知エリアは一例であり、設定部12は、
図3とは異なるリファレンスエリア及び検知エリアを設定してもよい。
【0043】
設定部12は、例えば、管理端末装置30を介して作業員により入力された検知エリアを指定する情報に基づいて、検知エリアを設定してもよい。この際、例えば、作業員による管理端末装置30に対する入力操作によって、近赤外線カメラ21は、設備40をズームインあるいはズームアウトして撮像する、あるいは、設備40における撮像対象の場所を移動する。そして、作業員の目視確認に基づく当該入力操作によって、近赤外線カメラ21は、油あるいは水の付着が疑われる領域が画面上に表示された検知エリアの中に含まれ、かつ、油あるいは水の付着が疑われない領域が画面上に表示されたリファレンスエリアの中に含まれるように設備40を撮像するよう調整される。
【0044】
設定部12は、あるいは、近赤外線撮像画像161に対する簡易的な画像解析処理を行った結果、油あるいは水の付着が疑われる領域を検知エリアとして設定し、それ以外の領域をリファレンスエリアとして設定してもよい。
【0045】
生成部13は、干渉フィルタ22の近赤外線の透過特性、及び、近赤外線のスペクトル強度特性を表す特性情報165を生成する。
【0046】
ここで、生成部13が特性情報165を生成する背景について説明する。個々の干渉フィルタ22の近赤外線の透過特性は一律ではなく、例えば、近赤外線の透過率は、通常、個々の干渉フィルタ22の間で互いに異なる。また、撮像装置20が撮像する際に用いる近赤外線の強度は、近赤外線の波長ごとに異なる。
【0047】
図4は、太陽光の波長とスペクトル強度との関係を表すグラフである。
図4に示すグラフの出典を、非特許文献1に示す。
図4に示す通り、例えば、地表における太陽光のスペクトル強度は、波長ごとに大きく異なる。これは、太陽光が地表に到達するまでに大気によって吸収される波長の成分があるからである。また人工光の場合でも、光源の特性により、スペクトル強度は波長ごとに異なる。
【0048】
即ち、複数の干渉フィルタ22を切り替えながら撮像された、複数の波長に関する近赤外線撮像画像161は、波長ごとの強度が一様でない近赤外線により撮像された画像であると言える。設備診断装置10が、油あるいは水が設備40に付着しているか否かを判定する際に、このような複数の波長に関する近赤外線撮像画像161を用いることは、判定精度が低下する要因となる。従って、設備診断装置10は、生成部13によって生成された特性情報165に基づいて、複数の波長の間における近赤外線の強度の差分を解消するように、近赤外線撮像画像161を補正(正規化)する必要がある。
【0049】
尚、生成部13は、干渉フィルタ22の近赤外線の透過特性、及び、近赤外線のスペクトル強度特性のうちのいずれか一方を表す特性情報165を生成してもよい。
【0050】
生成部13は、複数の波長に関する近赤外線撮像画像161の全てに関して、リファレンスエリア内の画素の輝度の第1の平均値を算出する。生成部13は、また、複数の波長に関する近赤外線撮像画像161の個々に関して、リファレンスエリア内の画素の輝度の第2の平均値を算出する。そして生成部13は、複数の波長の個々に関して、第1の平均値と第2の平均値との比率を表す正規化係数を、特性情報165として生成する。生成部13は、より具体的には、当該第1の平均値を当該第2の平均値で除算した値を、当該正規化係数として算出する。
【0051】
例えば、撮像装置20が3つの干渉フィルタ22-1乃至22-3を備え、干渉フィルタ22-1乃至22-3を用いて撮像された3つの近赤外線撮像画像161におけるリファレンスエリア内の画素の輝度の平均値の比が、1対1.2対0.8であるとする。この場合、生成部13は、干渉フィルタ22-1乃至22-3を用いて撮像された3つの近赤外線撮像画像161に関する正規化係数を、順に、1、0.83、1.25と計算する。
【0052】
補正部14は、個々の近赤外線撮像画像161の画素の輝度に、個々の近赤外線撮像画像161に関して算出された正規化係数を乗算することによって、画素の輝度を補正(正規化)する。上述した3つの近赤外線撮像画像161に関する正規化係数が、順に、1、0.83、1.25である例の場合、補正部14は、干渉フィルタ22-1に関する近赤外線撮像画像161に対しては、画素の輝度を1倍にする(即ち補正しない)。そして補正部14は、干渉フィルタ22-2に関する近赤外線撮像画像161に対しては、画素の輝度を0.83倍に低くする補正を行い、干渉フィルタ22-3に関する近赤外線撮像画像161に対しては、画素の輝度を1.25倍に高くする補正を行う。
【0053】
補正部14は、上述の通りに画素の輝度を正規化した近赤外線撮像画像161を、記憶部16に格納する。設備診断装置10は、画素の輝度を正規化した近赤外線撮像画像161を用いて、後述する処理を行うことによって、設備40に油または水が付着しているか否かを判定する。
【0054】
次に
図5乃至
図8を参照して、本実施形態に係る設備診断装置10が、設備40に油または水が付着しているか否かを判定するのに好適な、近赤外線撮像画像161の撮像に用いる近赤外線の波長について説明する。
【0055】
図5は、近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における油が付着した部分の輝度との関係を示すグラフである。
図5に示される曲線の形は、油が有する近赤外線の吸収特性を表していると言える。
【0056】
図6は、近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における水が付着した部分の輝度との関係を示すグラフである。
図6に示される曲線の形は、水が有する近赤外線の吸収特性を表していると言える。
【0057】
近赤外線の吸収による輝度の低下率は、油あるいは水の膜厚に依存し、油あるいは水の膜厚が厚くなるほど、その輝度は低下する。
【0058】
図5及び
図6は、また、例えば設備40が屋内にあるような人工光による撮像環境において、設備40に油または水が付着しているか否かを判定するのに好適な、近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の波長を、円により示している。
【0059】
図5に例示する近赤外線の波長と輝度との関係を示す曲線において、波長が1200nm(ナノメートル)、及び、1400nmの付近で、輝度が最小(即ち、曲線における谷の部分)となっている。これは、波長が1200nm、及び、1400nmの付近の近赤外線の吸収率が最大となるという油の特性に起因する。即ち、1200nm、1400nmという波長は、油の近赤外線の吸収特性において、特徴的な波長であると言える。また、波長が1200nmと1400nm付近との間では、油の特性により、輝度を表す曲線は、山なりの曲線を描いている。
【0060】
図5及び
図6に示す、近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における油または水が付着した部分の輝度との関係を示す曲線を比較すると、波長が1200nmから1400nmまでの帯域において、その特徴は大きく異なっている。
【0061】
図5及び
図6によれば、設備診断システム1は、近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の波長として、上述した油の近赤外線の吸収特性において特徴的な波長である、1200nm、及び、1400nmを用いている。即ちこの場合、撮像装置20は、1200nm及び1400nmを中心波長とする2つの干渉フィルタ22-1及び22-2を備えている。
【0062】
本実施形態では、設備40に油または水が付着しているか否かを判定するのにあたり、NDOI(Normalized Difference Oil Index:正規化油指標)という指標を新たに定義する。
【0063】
NDOIは、近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の2つの波長の間における、近赤外線撮像画像161の画素の輝度の相関関係(輝度の違い)を表す、-1から1の間の値をとる指標である。即ち、近赤外線の2つの波長Xnm、Ynmに関するNDOI
x-yは、式1の通りに表される。
【0064】
但し、式1において、Ix、Iyは、近赤外線の波長がXnm、Ynmにおける近赤外線撮像画像161の画素の輝度を表す。また、式1において、「-」、「+」は、順に、減算、加算を表す演算子である。
【0065】
図5に示すグラフによれば、設備40に油が付着している場合、NDOI
1400-1200は、0付近の値となる。一方、
図6に示すグラフによれば、設備40に水が付着している場合、NDOI
1400-1200は、絶対値が大きな負の値となる。
【0066】
以上のことから、
図1に示す判定部15は、人工光により設備40を撮像する撮像環境において、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる個々の画素に関して、NDOI
1400-1200を、式1を用いて算出する。そして、判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1400-1200が0付近の値となる場合、設備40に油が付着していると判定する。そして判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1400-1200が絶対値が大きな負の値となる場合、設備40に水が付着していると判定する。
【0067】
上述した例の場合、設備診断システム1は、近赤外線の2つの波長を用いているが、設備診断システム1は、その判定精度をより高めるために、近赤外線の3番目の波長を用いてもよい。
図5及び
図6に示す例では、設備診断システム1は、この3番目の波長の一例として1300nmを使用する。尚、3番目の波長は、1300nmに限定されない。設備診断システム1は、1200nm、1400nm以外の、近赤外線帯域における任意の波長を3番目の波長として使用してもよい。設備診断システム1は、例えば、1200nmと3番目の波長に関するNDOI、及び、1400nmと3番目の波長に関するNDOIについて、油と水との間で明確に値が異なることを満たす任意の波長を、近赤外線の3番目の波長として用いればよい。尚、設備診断システム1が3番目の波長として1300nmを使用する場合、撮像装置20は、中心波長が1300nmである干渉フィルタ22-3を備えることとする。
【0068】
図5に示すグラフによれば、設備40に油が付着している場合、NDOI
1300-1200は、正の値となり、NDOI
1400-1300は、負の値となる。一方、
図6に示すグラフによれば、設備40に水が付着している場合、NDOI
1300-1200は、0付近の値となり、NDOI
1400-1300は、絶対値が大きな負の値となる。
【0069】
以上のことから、
図1に示す判定部15は、人工光により設備40を撮像する撮像環境において、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる個々の画素に関して、NDOI
1300-1200、及び、NDOI
1400-1300を、式1を用いて算出する。そして、判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1300-1200が正の値となり、NDOI
1400-1300が負の値となる場合、設備40に油が付着していると判定する。そして判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1300-1200が0付近の値となり、NDOI
1400-1300が絶対値が大きな負の値となる場合、設備40に水が付着していると判定する。
【0070】
判定部15は、例えば、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる画素のNDOIの平均値が、上述した内容を表す所定の判定基準を満たす場合に、設備40に油または水が付着していると判定してもよい。所定の判定基準は、例えば、NDOIの値の範囲などによって表される。判定部15は、あるいは例えば、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる画素のうち、NDOIが上述した内容を表す所定の判定基準を満たす画素が占める割合が所定の閾値以上である場合に、設備40に油または水が付着していると判定してもよい。
【0071】
判定部15は、上述した判定において、判定用学習済モデル166が示す基準を用いてもよい。判定用学習済モデル166は、NDOIと油または水が設備40に付着していることとの関係を表す、機械学習の結果として構築されるモデルである。判定部15は、撮像に関する環境が異なる様々な場所に設置された様々な設備40に関する、NDOIと油または水が設備40に付着していることとの関係を表す実績データを教師データとして、判定用学習済モデル166を生成あるいは更新する。
【0072】
図7は、
図5と同様に、近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における油が付着した部分の輝度との関係を示すグラフである。
図8は、
図6と同様に、近赤外線の波長と近赤外線撮像画像161における水あるいは氷が付着した部分の輝度との関係を示すグラフである。そして、
図7及び
図8は、例えば設備40が屋外にあるような地上における太陽光による撮像環境において、設備40に油または水が付着しているか否かを判定するのに好適な、近赤外線撮像画像161を撮像する近赤外線の波長を、円により示している。
【0073】
本実施形態に係る設備診断システム1では、
図5及び
図6を参照して上述した通り、人工光による撮像環境において、設備40に油または水が付着しているか否かを判定する場合に、波長が1200nm及び1400nmの近赤外線を使用する。しかしながら、
図4に示す通り、地上における太陽光には、その成分として、波長が1200nmの近赤外線は十分に含まれるものの、波長が1400nmの近赤外線はほとんど含まれていない。したがって、設備診断システム1は、地上における太陽光による撮像環境においては、波長が1400nmの近赤外線を使用することができない。
【0074】
したがって、本実施形態に係る設備診断システム1では、
図7及び
図8に示す通り、波長が1400nmの近赤外線の代わりに、波長が1600nmの近赤外線を使用する。
図4に示す通り、1600nmという波長は、地上における太陽光に含まれる近赤外線の強度が基準(例えば閾値以上であること)を満たす波長である。即ち、波長が1600nmの近赤外線は、地上における太陽光に、その成分として十分に含まれている。
【0075】
設備診断システム1が、波長が1200nm及び1600nmの近赤外線を使用する場合、撮像装置20は、1200nm及び1600nmを中心波長とする2つの干渉フィルタ22-1及び22-2を備えている。
【0076】
図7に示すグラフによれば、設備40に油が付着している場合、NDOI
1600-1200は、正の値となる。一方、
図8に示すグラフによれば、設備40に水が付着している場合、NDOI
1600-1200は、負の値となる。
【0077】
以上のことから、
図1に示す判定部15は、地上における太陽光により設備40を撮像する撮像環境において、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる個々の画素に関して、NDOI
1600-1200を、式1を用いて算出する。そして、判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1600-1200が正の値となる場合、設備40に油が付着していると判定する。そして判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1600-1200が負の値となる場合、設備40に水が付着していると判定する。
【0078】
上述した例の場合、設備診断システム1は、近赤外線の2つの波長を用いているが、設備診断システム1は、その判定精度をより高めるために、人工光により設備40を撮像する撮像環境の場合と同様に、近赤外線の3番目の波長を用いてもよい。
図7及び
図8に示すグラフによれば、設備診断システム1は。この3番目の波長の一例として、1050nmを用いる。
図4に示す通り、波長が1050nmの近赤外線は、地上における太陽光に、その成分として十分に含まれている。尚、3番目の波長は、1050nmに限定されない。設備診断システムは、1200nm、1600nm以外の、地上における太陽光にその成分として十分に含まれ、近赤外線帯域における1200nmよりも小さい任意の波長を3番目の波長として使用してもよい。設備診断システム1は、例えば、1200nmと3番目の波長に関するNDOIについて、油と水との間で明確に値が異なることを満たす任意の波長を、近赤外線の3番目の波長として用いればよい。尚、設備診断システム1が3番目の波長として1050nmを使用する場合、撮像装置20は、中心波長が1050nmである干渉フィルタ22-3を備えることとする。
【0079】
図7に示すグラフによれば、設備40に油が付着している場合、NDOI
1200-1050は、負の値となり、NDOI
1600-1200は、正の値となる。一方、
図8に示すグラフによれば、設備40に水が付着している場合、NDOI
1200-1050は、0付近の値となり、NDOI
1600-1200は、負の値となる。
【0080】
以上のことから、
図1に示す判定部15は、地上における太陽光により設備40を撮像する撮像環境において、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる個々の画素に関して、NDOI
1200-1050、及び、NDOI
1600-1200を、式1を用いて算出する。そして、判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1200-1050が負の値となり、NDOI
1600-1200が正の値となる場合、設備40に油が付着していると判定する。そして判定部15は、当該画素に関して、NDOI
1200-1050が0付近の値となり、NDOI
1600-1200が負の値となる場合、設備40に水が付着していると判定する。
【0081】
判定部15は、人工光により設備40を撮像する撮像環境のときと同様に、例えば、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる画素のNDOIの平均値が、所定の判定基準を満たす場合に、設備40に油または水が付着していると判定してもよい。判定部15は、あるいは例えば、近赤外線撮像画像161の検知エリアに含まれる画素のうち、NDOIが所定の判定基準を満たす画素が占める割合が所定の閾値以上である場合に、設備40に油または水が付着していると判定してもよい。判定部15は、また、上述した判定において、判定用学習済モデル166が示す基準を用いてもよい。
【0082】
判定部15は、設備40に油または水が付着していることに関する判定結果を、管理端末装置30の表示画面に表示する。
【0083】
次に
図9及び
図10のフローチャートを参照して、本実施形態に係る設備診断システム1の動作(処理)について詳細に説明する。
【0084】
図9は、本実施形態に係る設備診断システム1が、シェーディング補正用画像164を生成する動作を示すフローチャートである。
【0085】
制御部11は、干渉フィルタ22を切り替えながら、作業員等によって準備された光の反射特性が一様な面を撮像するように撮像装置20を制御する。制御部11は、撮像装置20によって撮像された一様面撮像画像163を取得し、取得した一様面撮像画像163を記憶部16に格納する(ステップS101)。
【0086】
制御部11は、干渉フィルタ22を切り替えながら、作業員等によって準備された遮光環境における撮像を行うように撮像装置20を制御する。制御部11は、撮像装置20によって撮像された黒レベル画像162を取得し、取得した黒レベル画像162を記憶部16に格納する(ステップS102)。
【0087】
補正部14は、各干渉フィルタ22に関して、画素ごとに、一様面撮像画像163の輝度から黒レベル画像162の輝度を減算したシェーディング補正用画像164を生成する。補正部14は、生成したシェーディング補正用画像164を記憶部16に格納し(ステップS103)、全体の処理は終了する。
【0088】
図10は、本実施形態に係る設備診断システム1が、設備40に油または水が付着しているか否かを判定する動作を示すフローチャートである。
【0089】
制御部11は、干渉フィルタ22を切り替えながら設備40を撮像するように撮像装置20を制御する。制御部11は、撮像装置20によって撮像された近赤外線撮像画像161を取得し、取得した近赤外線撮像画像161を記憶部16に格納する(ステップS201)。
【0090】
補正部14は、画素ごとに、近赤外線撮像画像161の輝度から黒レベル画像162の輝度を減算したのち、シェーディング補正用画像164を用いて、近赤外線撮像画像161をシェーディング補正する。補正部14は、シェーディング補正された近赤外線撮像画像161を、記憶部16に格納する(ステップS202)。
【0091】
設定部12は、所定の基準に基づいて、近赤外線撮像画像161における検知エリア及びリファレンスエリアを設定する(ステップS203)。補正部14は、近赤外線撮像画像161のリファレンスエリア内の画素の輝度の平均値を算出する(ステップS204)。
【0092】
補正部14は、各波長の近赤外線撮像画像161に関して、リファレンスエリア内の画素の輝度の平均値に基づいて、正規化係数を算出する(ステップS205)。補正部14は、算出した正規化係数を用いて、各波長の近赤外線撮像画像161の画素の輝度を正規化する(ステップS206)。
【0093】
判定部15は、各波長の近赤外線撮像画像161の検知エリア内の画素の輝度に基づいて、NDOIを算出する(ステップS207)。判定部15は、算出したNDOIと判定用学習済モデル166とに基づいて、設備40における油あるいは水の付着を判定し(ステップS208)、全体の処理は終了する。
【0094】
本実施形態に係る設備診断システム1は、設備に付着した液体の種別を判定する精度を向上させることができる。その理由は、設備診断システム1は、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備40を撮像し、複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが設備40に付着しているか否かを、撮像画像に基づいて判定するからである。
【0095】
以下に、本実施形態に係る設備診断システム1によって実現される効果について、詳細に説明する。
【0096】
例えば既存の技術等を用いることによって、油漏れの発生の有無の確認のために、人が各設備を巡回して点検することをしなくとも、設備を撮像した画像から、設備に付着した液体の種別をある程度は判定することは可能であると考えられる。しかしながらその判定精度は、社会インフラを構成する設備の障害が人々の生活に与える影響の大きさをふまえて、十分に高いとは言えず、当該判定精度をさらに高めることが課題である。
【0097】
このような課題に対して、本実施形態に係る設備診断システム1は、制御部11と判定部15とを備え、例えば、
図1乃至
図10を参照して上述した通り動作する。即ち、制御部11は、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備40を撮像するように撮像装置20を制御する。そして、判定部15は、当該複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが設備40に付着しているか否かを、撮像装置20によって得られた近赤外線撮像画像161に基づいて判定する。
【0098】
即ち、本実施形態に係る設備診断システム1は、油(第1の液体)及び水(第2の液体)の近赤外線の吸収特性が、近赤外線の複数の波長に関して互いに異なることを利用する。そして、設備診断システム1は、設備40を複数の波長の近赤外線で撮像した近赤外線撮像画像161において、当該吸収特性の違いが輝度の違いとして現れることに基づいて、油及び水のいずれかが設備40に付着しているか否かを判定する。これにより、本実施形態に係る設備診断システム1は、設備40に付着した液体の種別を近赤外線撮像画像161から判定する精度を向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態に係る設備診断システム1は、近赤外線撮像画像161に含まれる画素に関して、複数の波長の間における輝度の違いを表す、例えばNDOIのような指標の値を算出する。そして設備診断システム1は、算出した指標の値と判定基準とに基づいて、油あるいは水が設備40に付着しているか否かを判定する。このように、設備診断システム1は、NDOIのような、油と水との間における近赤外線の吸収特性の違いを明確に表す指標の値に基づいて判定するので、判定精度を向上させることができる。尚、設備診断システム1が用いる指標はNDOIに限定されず、設備診断システム1は、NDOIとは異なる指標を用いてもよい。
【0100】
また、本実施形態に係る設備診断システム1は、当該指標の値と油あるいは水が設備40に付着していることとの関係を表す判定用学習済モデル166を生成する。そして設備診断システム1は、判定用学習済モデル166を用いて、油あるいは水が設備40に付着しているか否かを判定する。即ち、設備診断システム1は、判定に関する機械学習を通して、判定精度を次第に向上させることができる。
【0101】
また、本実施形態に係る設備診断システム1は、設備40を撮像する近赤外線の波長として、油あるいは水の少なくともいずれかの近赤外線の吸収率が最も高くなる波長、あるいは地上における太陽光に含まれる近赤外線の強度が基準を満たす波長を使用する。このように設備診断システム1は、油あるいは水が設備40に付着しているか否かを判定するのに好適な波長の近赤外線を使用するので、確実に判定精度を向上させることができる。
【0102】
また、例えば、人工光による撮像環境において、設備40に油が付着している場合、NDOI1400-1200は0付近の値となる。そして、設備40に水も油も付着していない場合、液体による近赤外線の吸収が発生しないので、NDOI1400-1200は同様に0付近の値となる。即ち、NDOI1400-1200という1つのNODIを判定に用いた場合、設備40に油が付着していることと、設備40に油も水も付着していないこととの区別が困難になる。
【0103】
これに対して、本実施形態に係る設備診断システム1は、
図5、
図6、
図11に示す通り、3つの波長の近赤外線で設備40を撮像することにより、2つのNDOI(例えば、NDOI
1300-1200、NDOI
1400-1300)の値に基づいて判定する。設備40に油が付着している場合、NDOI
1300-1200は正の値、NDOI
1400-1300は負の値となる。一方、設備40に油も水も付着していない場合、NDOI
1300-1200、及び、NDOI
1400-1300とも、0付近の値となる。したがって、設備診断システム1は、設備40に油が付着していることと、設備40に油も水も付着していないこととを区別して判定できるので、判定精度をさらに向上させることができる。
【0104】
また、油あるいは水による近赤外線の吸収による輝度の低下率は、油あるいは水の膜厚により依存するので、例えば、油の膜厚が厚く水の膜厚が薄い場合などではNDOIの値が同等な値となり、
図11に示す通り判別が困難となる。これに対して、本実施形態に係る設備診断システム1は、
図5、
図6、
図11に示す通り2つのNDOIを組み合わせることによって、このような問題を回避し、判定精度をさらに向上させることができる。
【0105】
また、例えば、地表における太陽光による撮像環境において、設備40に油が付着している場合、NDOI1600-1200は正の値となるが、付着した油の厚さが薄い場合では絶対値0に近い値となる。そして、設備40に水も油も付着していない場合、液体による近赤外線の吸収が発生しないので、NDOI1600-1200は同様に0付近の値となる。即ち、NDOI1600-1200という1つのNODIを判定に用いた場合、設備40に厚さが薄い油が付着していることと、設備40に油も水も付着していないこととの区別が困難になる。
【0106】
これに対して、本実施形態に係る設備診断システム1は、
図7、
図8、
図12に示す通り、上述した通り3つの波長の近赤外線で設備40を撮像することにより、2つのNDOI(例えば、NDOI
1200-1050、NDOI
1600-1200)の値に基づいて判定する。設備40に油が付着している場合、NDOI
1200-1050は、NDOI
1600-1200よりも絶対値が大きい負の値となる。一方、設備40に油も水も付着していない場合、NDOI
1200-1050、及び、NDOI
1600-1200とも、0付近の値となる。したがって、設備診断システム1は、設備40に厚さが薄い油が付着していることと、設備40に油も水も付着していないこととを区別して判定できるので、判定精度をさらに向上させることができる。
【0107】
また、油あるいは水による近赤外線の吸収による輝度の低下率は、油あるいは水の膜厚により依存するので、例えば、油の膜厚が薄い場合などでは、設備40に何も付着していない場合との間において、NDOIの値が同等な値となり、
図12に示す通り判別が困難となる。これに対して、本実施形態に係る設備診断システム1は、
図7、
図8、
図12に示す通り2つのNDOIを組み合わせることによって、このような問題を回避し、判定精度をさらに向上させることができる。
【0108】
また、設備診断システム1は、判定精度をさらに向上させるために、4つ以上の波長の近赤外線で設備40を撮像することにより、3つ以上のNDOIの値に基づいて、油あるいは水が設備40に付着しているか否かを判定してもよい。
【0109】
また、本実施形態に係る設備診断システム1は、生成部13及び補正部14をさらに備える。生成部13は、複数の干渉フィルタ22の近赤外線の透過特性、及び、近赤外線のスペクトル強度特性の少なくともいずれかを表す特性情報165を生成する。補正部14は、近赤外線撮像画像161に対して、特性情報165に基づく正規化、シュエーディング補正、及び、黒レベル補正を行う。これにより、設備診断システム1は、判定精度をさらに向上させることができる。
【0110】
また、本実施形態に係る設備診断システム1は、設定部12をさらに備える。設定部12は、水あるいは油が付着していると推定される検知エリア(第1の領域)と、水あるいは油が付着していないと推定されるリファレンスエリア(第2の領域)とを、所定の基準に基づいて設定する。そして生成部13は、リファレンスエリアに含まれる画素の輝度に基づいて特性情報165を生成する。これにより、設備診断システム1は、判定精度をさらに向上させることができる。
また、本実施形態に係る設備診断システム1は、例えば上述した特許文献1乃至3が備える照明手段(光源)を必要としない。照明手段を備えた場合、装置が大型化するとともに、照明と撮像装置との間で同期をとる必要があることにより装置の機能が煩雑になるという問題がある。また、照明手段を備えた場合、照明が当たる場所でなければ使えないという問題もある。設備診断システム1は、照明手段を備えないことによって、上述した問題を回避することができる。
【0111】
なお、設備診断システム1が設備40に付着したことを判定する対象は、油及び水に限定されない。設備診断システムは、近赤外線の波長による近赤外線の吸収特性が互いに異なる、油及び水以外の液体の種別を判定してもよい。
【0112】
<第2の実施形態>
図13は、本発明の第2の実施形態に係る設備診断システム50の構成を示すブロック図である。設備診断システム50は、制御部51、及び、判定部52を備えている。但し、制御部51、及び、判定部52は、順に、制御手段、及び、判定手段の一例である。
【0113】
制御部51は、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備70を撮像するように撮像部60を制御する。但し、撮像部60は、撮像手段の一例であり、例えば、第1の実施形態に係る撮像装置20と同様に、近赤外線カメラ21及び干渉フィルタ22のような構成を備えてもよい。そして、制御部51は、例えば、第1の実施形態に係る制御部11と同様に、撮像部60を制御する。
【0114】
判定部52は、複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが設備70に付着しているか否かを、撮像部60によって得られた撮像画像600に基づいて判定する。第1及び第2の液体は、例えば、第1の実施形態と同様に、油及び水である。判定部52は、例えば、第1の実施形態に係る判定部15と同様に、NDOIのような指標を用いることによって、第1及び第2の液体のいずれかが設備70に付着しているか否かを、判定してもよい。
【0115】
本実施形態に係る設備診断システム50は、設備に付着した液体の種別を判定する精度を向上させることができる。その理由は、設備診断システム50は、近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備70を撮像し、複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが設備70に付着しているか否かを、撮像画像600に基づいて判定するからである。
【0116】
<ハードウェア構成例>
上述した各実施形態において、
図1に示した設備診断システム1、及び、
図13に示した設備診断システム50における各部は、専用のHW(HardWare)(電子回路)によって実現することができる。また、
図1及び
図13において、少なくとも、下記構成は、ソフトウェアプログラムの機能(処理)単位(ソフトウェアモジュール)と捉えることができる。
・制御部11及び51、
・設定部12、
・生成部13、
・補正部14、
・判定部15及び52、
・記憶部16における記憶制御機能。
【0117】
但し、これらの図面に示した各部の区分けは、説明の便宜上の構成であり、実装に際しては、様々な構成が想定され得る。この場合のハードウェア環境の一例を、
図14を参照して説明する。
【0118】
図14は、本発明の第1の実施形態に係る設備診断装置10あるいは第2の実施形態に係る設備診断システム50を実行可能な情報処理装置900(コンピュータ)の構成を例示的に説明する図である。即ち、
図14は、
図1に示した設備診断装置10及び
図13に示した設備診断システム50を実現可能なコンピュータ(情報処理装置)の構成であって、上述した実施形態における各機能を実現可能なハードウェア環境を表す。
【0119】
図14に示した情報処理装置900は、構成要素として下記を備えているが、下記のうちの一部の構成要素を備えない場合もある。
・CPU(Central_Processing_Unit)901、
・ROM(Read_Only_Memory)902、
・RAM(Random_Access_Memory)903、
・ハードディスク(記憶装置)904、
・外部装置との通信インタフェース905、
・バス906(通信線)、
・CD-ROM(Compact_Disc_Read_Only_Memory)等の記録媒体907に格納されたデータを読み書き可能なリーダライタ908、
・モニターやスピーカ、キーボード等の入出力インタフェース909。
【0120】
即ち、上記構成要素を備える情報処理装置900は、これらの構成がバス906を介して接続された一般的なコンピュータである。情報処理装置900は、CPU901を複数備える場合もあれば、マルチコアにより構成されたCPU901を備える場合もある。情報処理装置900は、CPU901に加えてGPU(Graphical_Processing_Unit)(不図示)を備えてもよい。
【0121】
そして、上述した実施形態を例に説明した本発明は、
図14に示した情報処理装置900に対して、次の機能を実現可能なコンピュータプログラムを供給する。その機能とは、その実施形態の説明において参照したブロック構成図(
図1及び
図13)における上述した構成、或いはフローチャート(
図9及び
図10)の機能である。本発明は、その後、そのコンピュータプログラムを、当該ハードウェアのCPU901に読み出して解釈し実行することによって達成される。また、当該装置内に供給されたコンピュータプログラムは、読み書き可能な揮発性のメモリ(RAM903)、または、ROM902やハードディスク904等の不揮発性の記憶デバイスに格納すれば良い。
【0122】
また、前記の場合において、当該ハードウェア内へのコンピュータプログラムの供給方法は、現在では一般的な手順を採用することができる。その手順としては、例えば、CD-ROM等の各種記録媒体907を介して当該装置内にインストールする方法や、インターネット等の通信回線を介して外部よりダウンロードする方法等がある。そして、このような場合において、本発明は、係るコンピュータプログラムを構成するコード或いは、そのコードが格納された記録媒体907によって構成されると捉えることができる。
【0123】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0124】
尚、上述した各実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。しかしながら、上述した各実施形態により例示的に説明した本発明は、以下には限られない。
【0125】
(付記1)
近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御する制御手段と、
前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する判定手段と、
を備える設備診断システム。
【0126】
(付記2)
前記判定手段は、前記撮像画像に含まれる画素に関して、前記複数の波長の間における輝度の違いを表す指標の値を算出し、算出した前記指標の値と判定基準とに基づいて、前記第1の液体あるいは前記第2の液体が前記設備に付着しているか否かを判定する、
付記1に記載の設備診断システム。
【0127】
(付記3)
前記判定手段は、前記複数の波長に含まれる第1及び第2の波長における前記画素の輝度の差を前記画素の輝度の和で除算した前記指標の値を算出する、
付記2に記載の設備診断システム。
【0128】
(付記4)
前記判定手段は、前記指標の値と前記第1の液体あるいは前記第2の液体が前記設備に付着していることとの関係を表す学習済みモデルを生成し、前記学習済みモデルを用いて、前記第1の液体あるいは前記第2の液体が前記設備に付着しているか否かを判定する、
付記2または付記3に記載の設備診断システム。
【0129】
(付記5)
前記複数の波長の少なくともいずれかは、前記第1及び第2の液体の少なくともいずれかの近赤外線の吸収率が最も高くなる波長、あるいは地上における太陽光に含まれる近赤外線の強度が基準を満たす波長である、
付記1乃至付記4のいずれか一項に記載の設備診断システム。
【0130】
(付記6)
前記第1の液体は油であり、前記第2の液体は水であり、
前記複数の波長は、
前記撮像手段が人工光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1400ナノメートルの近傍を含み、
前記撮像手段が地表における太陽光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1600ナノメートルの近傍を含む、
付記5に記載の設備診断システム。
【0131】
(付記7)
前記複数の波長は、
前記撮像手段が人工光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1400ナノメートルの近傍を除く波長の帯域をさらに含み、
前記撮像手段が地表における太陽光に含まれる近赤外線により撮像する場合、1200ナノメートルの近傍及び1600ナノメートルの近傍を除く波長の帯域をさらに含む、
付記6に記載の設備診断システム。
【0132】
(付記8)
前記撮像手段は、近赤外線カメラと、前記複数の波長の個々を中心波長とする複数の干渉フィルタとを備え、
前記制御手段は、前記干渉フィルタを切り替えながら、同等のタイミングで、前記複数の波長の個々において、前記設備を撮像するように前記撮像手段を制御する、
付記1乃至付記7のいずれか一項に記載の設備診断システム。
【0133】
(付記9)
前記複数の干渉フィルタの近赤外線の透過特性、及び、近赤外線のスペクトル強度特性の少なくともいずれかを表す特性情報を生成する生成手段と、
前記特性情報に基づいて、前記撮像画像を補正する補正手段と、
をさらに備える付記8に記載の設備診断システム。
【0134】
(付記10)
前記生成手段は、前記複数の干渉フィルタにより撮像された複数の前記撮像画像に関する輝度の平均値と、個々の前記撮像画像に関する輝度の平均値との比率を表す、個々の前記撮像画像に関する正規化係数を、前記特性情報として算出し、
前記補正手段は、個々の前記撮像画像の輝度を前記正規化係数によって重み付けすることによって、前記撮像画像を補正する、
付記9に記載の設備診断システム。
【0135】
(付記11)
前記補正手段は、前記撮像画像において輝度が一番高い画素を基準として、輝度が前記基準より低い画素ほど、輝度を高める度合いを大きくするシェーディング補正を行う、
付記9または付記10に記載の設備診断システム。
【0136】
(付記12)
前記補正手段は、光の反射特性が一様な面が撮像されたシェーディング補正用画像を用いて、シェーディング補正を行う、
付記11に記載の設備診断システム。
【0137】
(付記13)
前記補正手段は、遮光環境において撮像された画像の輝度を、前記撮像画像及び前記シェーディング補正用画像の輝度から減算する、
付記12に記載の設備診断システム。
【0138】
(付記14)
前記第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを判定する際の分析対象となる、前記撮像画像における前記第1及び第2の液体の付着の判定対象とする第1の領域と、前記撮像画像における前記第1の領域とは異なる第2の領域を、所定の基準に基づいて設定する設定手段をさらに備え、
前記生成手段は、前記第2の領域に含まれる画素の輝度に基づく前記特性情報を生成する、
付記9乃至付記13のいずれか一項に記載の設備診断システム。
【0139】
(付記15)
前記撮像手段をさらに備える、
付記1乃至付記14のいずれか一項に記載の設備診断システム。
【0140】
(付記16)
情報処理装置によって、
近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御し、
前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する、
設備診断方法。
【0141】
(付記17)
近赤外線帯域における複数の波長の個々において、設備を撮像するように撮像手段を制御する制御処理と、
前記複数の波長に関する近赤外線の吸収特性が互いに異なる第1及び第2の液体のいずれかが前記設備に付着しているか否かを、前記撮像手段によって得られた撮像画像に基づいて判定する判定処理と、
をコンピュータに実行させるための設備診断プログラムが格納された記録媒体。
【符号の説明】
【0142】
1 設備診断システム
10 設備診断装置
11 制御部
12 設定部
13 生成部
14 補正部
15 判定部
16 記憶部
161 近赤外線撮像画像
162 黒レベル画像
163 一様面撮像画像
164 シェーディング補正用画像
165 特性情報
166 判定用学習済モデル
20 撮像装置
21 近赤外線カメラ
22-1乃至22-n 干渉フィルタ
30 管理端末装置
40 設備
50 設備診断システム
51 制御部
52 判定部
60 撮像部
600 撮像画像
70 設備
900 情報処理装置
901 CPU
902 ROM
903 RAM
904 ハードディスク(記憶装置)
905 通信インタフェース
906 バス
907 記録媒体
908 リーダライタ
909 入出力インタフェース