(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B27C 5/10 20060101AFI20240528BHJP
B25F 5/02 20060101ALI20240528BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
B27C5/10
B25F5/02
B25F5/00 A
(21)【出願番号】P 2022559089
(86)(22)【出願日】2021-10-22
(86)【国際出願番号】 JP2021039075
(87)【国際公開番号】W WO2022091966
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020182567
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 健
(72)【発明者】
【氏名】長田 淑晃
(72)【発明者】
【氏名】小泉 綾香
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/123002(WO,A1)
【文献】特開2018-079632(JP,A)
【文献】特開2012-196865(JP,A)
【文献】特開2004-338192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0147286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27C 5/10
B25F 5/00 - 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータによって回転し、先端工具が取り付け可能な出力軸と、
前記モータを収容する収容部を有するインナケースと、前記収容部の外側に位置するアウタケースと、を含んで構成されたハウジングと、
前記アウタケースの側面に形成された取付面に着脱可能であって、加工材に当接可能な当接面を有するベースと、
を備え、
前記インナケースは、前記アウタケースの内部に前記モータの軸方向の一方側に向かって挿入され、
前記モータの軸方向で、前記インナケース
の一方側端部に固定部が設けられており、前記固定部に取り付けられる固定部材によって前記インナケースに前記アウタケースが固定され、前記モータの軸方向から見たときに、前記固定部が、前記モータの径方向で前記取付面よりも内側に配置されている作業機。
【請求項2】
モータと、
前記モータによって回転し、軸方向に延びて先端工具が取り付け可能な出力軸と、
前記モータを収容する収容部を有するインナケースと、前記収容部の外側に位置するアウタケースと、を含んで構成されたハウジングと、
前記アウタケースの側面に形成された取付面に着脱可能であって、加工材に当接可能な当接面を有するベースと、
を備え、
前記インナケースは、前記アウタケースの内部に前記軸方向の一方側に向かって挿入され、前記収容部の前記一方側には、前記アウタケースに対する
前記インナケースの前記軸方向の他方側に向かう移動
及び前記軸方向を中心とする一方及び他方への回転を規制する固定部材が設けられると共に、
前記ベースは、前記固定部材によって前記インナケースに固定された状態の前記アウタケースに対して着脱可能に構成され、
前記収容部の他方側には張出部が接続されており、
前記張出部が、前記モータの軸方向から見て、前記取付面よりも張出されている作業機。
【請求項3】
前記モータの軸方向で、前記収容部の他方側には張出部が接続されており、前記張出部が、前記モータの軸方向から見て、前記取付面の径方向外側に張出されている請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記インナケースは、前記収容部の前記一方側において前記固定部材が取り付けられる固定部を有し、
モータの軸方向から見たとき、前記固定部が、前記取付面よりも前記モータの径方向で内側に配置されている請求項2に記載の作業機。
【請求項5】
前記収容部は筒状である内筒部であり、
前記アウタケースは分割不能な単一部品であって筒状を成
している請求項3又は請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記張出部には、前記モータを制御するコントローラが収容されており、前記コントローラが、前記アウタケースの軸方向から見て、前記アウタケースの外周面の径方向外側に張り出されている請求項2~請求項5の何れか1項に記載の作業機。
【請求項7】
前記張出部には、前記モータに電力を供給する電池が装着される電池着脱部が設けられ、前記電池着脱部は、前記軸方向から見て、前記取付面よりも外側に張り出されている請求項3~請求項5の何れか1項に記載の作業機。
【請求項8】
前記
インナケースの内部には、前記出力軸を支持する軸受が設けられ、前記インナケースには、前記軸受を保持する軸受保持部が設けられており、
前記固定部が、前記軸受保持部に形成されている請求項
1又は請求項4に記載の作業機。
【請求項9】
前記内筒部は、小径部と、前記小径部よりも径寸法の大きい大径部と、を含んで構成され、
前記大径部の外周面が前記アウタケースに当接している請求項5に記載の作業機。
【請求項10】
前記大径部が、前記小径部に対して前記モータの軸方向両側にそれぞれ設けられている請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記インナケースの内部には、前記モータの駆動により回転するファンが設けられており、
前記ファンによって生成される空気流が、前記小径部と前記アウタケースとの間を流れる請求項9に記載の作業機。
【請求項12】
前記大径部には、連通部が形成されており、前記連通部が、前記インナケースの内部と、前記小径部と前記アウタケースとの間の空間と、を連通している請求項10に記載の作業機。
【請求項13】
前記アウタケースの前記軸方向の他端部には、前記軸方向の他方側へ開放された凹部が形成されており、
前記インナケースには、前記モータのオンオフ操作を行う操作部が設けられ、前記操作部が、前記凹部内に配置されている請求項5に記載の作業機。
【請求項14】
前記内筒部には、前記径方向の外側へ突出した突起部が形成されており、前記アウタケースには、前記突起部と嵌合され且つ前記インナケースに対する前記アウタケースの回転を制限する溝部が形成されている請求項13に記載の作業機。
【請求項15】
前記操作部は、前記内筒部の径方向内側へ押圧操作可能に構成されると共に、操作されることで前記内筒部の内部に設けられたスイッチを押圧する請求項13又は請求項14に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の電動トリマ(作業機)では、モータケース(ハウジング)に、ベースの筒部が外挿されている。また、ベースの筒部には、スリットが形成されており、シャフトが、ベースの周方向両端部のフランジに架け渡されている。また、シャフトには、レバーが連結されており、レバーが操作されることで、ベースの筒部がモータケースを締め付けるように変形して、筒部がモータケースに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記電動トリマでは、上述のように、ベースの筒部がモータケースを締め付けるように変形して、筒部がモータケースに固定されるため、筒部のモータケースへの締付力によってモータケースが変形または破損する可能性があり、これによって例えばベースの固定力が低下して作業性が悪化する虞がある。また、上記電動トリマでは、ベースの筒部に設けられたレバーが1箇所であるため、レバーからベースの筒部に作用する力が、筒部の1箇所部位に集中する傾向になる。これによって、例えばベースが樹脂製の場合には、ベースの筒部における当該部位が大きく撓んで変形してしまい、作業性が悪化する可能性がある。また、レバーを操作して、ベースの筒部におけるモータケースへの締付力を解除すると、筒部のモータケースに対する固定力が直ちになくなり、ベースがモータケースに対して落下するという問題がある。これにより、作業者はベースを支えながらレバーの解除操作を行う必要があり、作業性の低下を招いていた。このため、上記電動トリマでは、ベースに対する好適な固定構造を実現する作業性を向上させるという点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、ベースに対する好適な固定構造作業性の向上を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、モータと、前記モータによって回転し、先端工具が取り付け可能な出力軸と、前記モータを収容する収容部を有するインナケースと、前記収容部の外側に位置するアウタケースと、を含んで構成されたハウジングと、前記アウタケースの側面に形成された取付面に着脱可能であって、加工材に当接可能な当接面を有するベースと、を備え、前記インナケースは、前記アウタケースの内部に前記モータの軸方向の一方側に向かって挿入され、前記モータの軸方向で、前記インナケースの一方側端部に固定部が設けられており、前記固定部に取り付けられる固定部材によって前記インナケースに前記アウタケースが固定され、前記モータの軸方向から見たときに、前記固定部が、前記モータの径方向で前記取付面よりも内側に配置されている作業機である。
【0007】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、モータと、前記モータによって回転し、軸方向に延びて先端工具が取り付け可能な出力軸と、前記モータを収容する収容部を有するインナケースと、前記収容部の外側に位置するアウタケースと、を含んで構成されたハウジングと、前記アウタケースの側面に形成された取付面に着脱可能であって、加工材に当接可能な当接面を有するベースと、を備え、前記インナケースは、前記アウタケースの内部に前記軸方向の一方側に向かって挿入され、前記収容部の前記一方側には、前記アウタケースに対する前記インナケースの前記軸方向の他方側に向かう移動及び前記軸方向を中心とする一方及び他方への回転を規制する固定部材が設けられると共に、前記ベースは、前記固定部材によって前記インナケースに固定された状態の前記アウタケースに対して着脱可能に構成され、前記収容部の他方側には張出部が接続されており、前記張出部が、前記モータの軸方向から見て、前記取付面よりも張出されている作業機である。
【0008】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記モータの軸方向で、前記収容部の他方側には張出部が接続されており、前記張出部が、前記モータの軸方向から見て、前記取付面の径方向外側に張出されている作業機である。
【0009】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記インナケースは、前記収容部の前記一方側において前記固定部材が取り付けられる固定部を有し、モータの軸方向から見たとき、前記固定部が、前記取付面よりも前記モータの径方向で内側に配置されている作業機である。
【0010】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記収容部は筒状である内筒部であり、前記アウタケースは分割不能な単一部品であって筒状を成し、前記アウタケースの内部に前記インナケースが挿入されており、前記モータの軸方向で、前記インナケースの一方側端部に前記固定部が設けられている作業機である。
【0011】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記張出部には、前記モータを制御するコントローラが収容されており、前記コントローラが、前記アウタケースの軸方向から見て、前記アウタケースの外周面の径方向外側に張り出されている作業機である。
【0012】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記張出部には、前記モータに電力を供給する電池が装着される電池着脱部が設けられ、前記電池着脱部は、前記軸方向から見て、前記取付面よりも外側に張り出されている作業機である。
【0013】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記インナケースの内部には、前記出力軸を支持する軸受が設けられ、前記インナケースには、前記軸受を保持する軸受保持部が設けられており、前記固定部が、前記軸受保持部に形成されている作業機である。
【0014】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記内筒部は、小径部と、前記小径部よりも径寸法の大きい大径部と、を含んで構成され、前記大径部の外周面が前記アウタケースに当接している作業機である。
【0015】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記大径部が、前記小径部に対して前記モータの軸方向両側にそれぞれ設けられている作業機である。
【0016】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記インナケースの内部には、前記モータの駆動により回転するファンが設けられており、前記ファンによって生成される空気流が、前記小径部と前記アウタケースとの間を流れる作業機である。
【0017】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記大径部には、連通部が形成されており、前記連通部が、前記インナケースの内部と、前記小径部と前記アウタケースとの間の空間と、を連通している作業機である。
【0018】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記アウタケースの前記軸方向の他端部には、前記軸方向の他方側へ開放された凹部が形成されており、前記インナケースには、前記モータのオンオフ操作を行う操作部が設けられ、前記操作部が、前記凹部内に配置されている作業機である。
【0019】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記内筒部には、前記径方向の外側へ突出した突起部が形成されており、前記アウタケースには、前記突起部と嵌合され且つ前記インナケースに対する前記アウタケースの回転を制限する溝部が形成されている作業機である。
【0020】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記操作部は、前記内筒部の径方向内側へ押圧操作可能に構成されると共に、操作されることで前記内筒部の内部に設けられたスイッチを押圧する作業機である。
【0021】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、筒部を有するハウジングと、前記ハウジングに収容された原動機と、前記原動機によって回転して先端工具が取付可能な出力軸と、前記筒部に外挿された筒状の外挿部を有するベースと、前記外挿部に設けられ、操作されることで前記外挿部を前記筒部に固定させる固定力を付与する複数の固定力付与部を有する固定機構と、を備え、複数の前記固定力付与部が、前記外挿部の軸方向に離間して配置されている作業機である。
【0022】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、筒部を有するハウジングと、前記ハウジングに収容された原動機と、前記原動機によって回転して先端工具が取付可能な出力軸と、前記筒部に外挿された筒状の外挿部を有するベースと、前記外挿部から径方向外方に突出するクランプ部に取り付けられ、操作されることで前記外挿部を前記筒部に固定させる固定力を付与する固定力付与部を有する固定機構と、を備え、前記固定力付与部は、前記クランプ部の上部及び下部に設けられた剛性部材を介して前記外挿部に固定力を発生させる作業機である。
【0023】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、筒部を有するハウジングと、前記ハウジングに収容されるモータと、前記モータによって回転して先端工具が取付可能な出力軸と、前記筒部に外挿され、加工材に当接可能な当接面を有するベースと、前記ベースに設けられ、操作されることで前記ベースを前記ハウジングに固定する固定状態又は前記ベースの前記ハウジングに対する固定状態を解除する解除状態に切替える固定機構と、前記ベースに設けられ、前記固定機構の解除状態において前記ベースを前記ハウジングに仮固定状態に保持する保持機構と、を備えた作業機である。
【0024】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記保持機構は、前記筒部と前記ベースとの間に生じる摩擦力によって前記ベースを仮固定状態に保持する作業機である。
【0025】
本発明の1又はそれ以上の実施形態は、前記ベースは、前記筒部に外挿され、一部が径方向外側へ開放された筒状に形成された外挿部と、前記外挿部の周方向一端部を構成する第1クランプ部と、前記外挿部の周方向他端部を構成する第2クランプ部と、を含んで構成され、前記固定機構は、前記第1クランプ部と前記第2クランプ部とを連結し、前記解除状態から前記固定状態に切替るときに前記第1クランプ部及び前記第2クランプ部を互いに接近させて前記外挿部を前記筒部に締付ける作業機である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の1又はそれ以上の実施形態によれば、作業性の向上した作業機を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施の形態に係る電動トリマを示す第1方向一方側から見た側面図である。
【
図2】
図1に示される電動トリマを第2方向一方側から見た側面図である。
【
図3】
図2に示される電動トリマを第1方向一方側から見た側断面図(
図2の3-3線断面図)である。
【
図4】
図1に示される電動トリマを第2方向一方側から見た側断面図(
図1の4-4線断面図)である。
【
図5】
図2に示される電動トリマのトリマ本体を、アウタケースをインナケースから取外した状態で示す下側から見た分解斜視図である。
【
図6】
図5に示されるトリマ本体の下側から見た下面図である。
【
図7】(A)は、
図5に示されるインナケースの第2方向一方側から見た側面図であり、(B)は、(A)のインナケースの下側から見た下面図である。
【
図8】
図1に示される固定機構の第2方向一方側から見た断面図(
図1の8-8線断面図)である。
【
図9】
図1に示される固定機構の上側から見た断面図(
図1の9-9線断面図)である。
【
図10】
図8に示される固定機構の固定ワッシャ及びクランプレバーを固定軸から取外した状態を示す分解斜視図である。
【
図11】
図1に示される保持機構の上側から見た断面図(
図1の
10-
10線断面図)である。
【
図12】
図10に示される保持機構によってベースがハウジングに仮保持された状態を説明するための
図9に対応する断面図である。
【
図13】本実施の形態に係る電動トリマにおけるコントローラの電気的構成を説明するための機能ブロック図である。
【
図14】本実施の形態に係る電動トリマの動作を説明するためのフローチャートである。
【
図16】
図2に示される固定機構の変形例1を示す第2方向一方側から見た側面図である。
【
図17】
図2に示される固定機構の変形例2を示す第2方向一方側から見た側面図である。
【
図18】
図17に示される固定機構の変形例2の第2方向一方側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を用いて、本実施形態に係る作業機としての電動トリマ10について説明する。
図1~
図4に示されるように、電動トリマ10は、全体として略円柱状に形成されている。そして、以下の説明では、電動トリマ10の軸方向一方側(
図1~
図4の矢印A方向側)を電動トリマ10の下側とし、電動トリマ10の軸方向他方側(
図1~
図4の矢印B方向側)を電動トリマ10の上側としている。また、上側から見た平面視で、上下方向に対して直交する方向を第1方向(
図2及び
図4の矢印C及び矢印Dを参照)とし、第1方向に対して直交する方向を第2方向(
図1及び
図3の矢印E及び矢印Fを参照)としている。
【0029】
電動トリマ10は、電動トリマ10の下側に配置された加工材に切削加工を施す工具として構成されている。電動トリマ10は、トリマ本体20と、ベース60と、電池としてのバッテリー58と、固定機構70と、保持機構80と、位置変更機構としての昇降機構90と、コントローラ100と、を含んで構成されている。以下、電動トリマ10の各構成について説明する。
【0030】
(トリマ本体20について)
図1~
図6に示されるように、トリマ本体20は、ハウジング22と、原動機としてのモータ34と、操作部としてのトリガ42と、速度設定ダイヤル46と、状態切替部としてのロックボタン50と、を含んで構成されている。
【0031】
<ハウジング22について> ハウジング22は、トリマ本体20の外郭を構成している。ハウジング22は、2重構造を成している。具体的には、ハウジング22は、ハウジング22の内周側部分を構成するインナケース24と、ハウジング22の外周側部分を構成するアウタケース30と、を含んで構成されている。
【0032】
図3~
図7に示されるように、インナケース24は、樹脂製とされている。インナケース24は、下側へ開放された略有底円筒状に形成されている。具体的には、インナケース24は、インナケース24の上端部を構成する張出部としてのアッパケース部28と、アッパケース部28から下側へ延出された円筒状の内筒部26と、を含んで構成されている。アッパケース部28は、下側から見て略矩形状に形成されると共に、内筒部26よりも第1方向一方側(
図4及び
図7(A)の矢印C方向側)へ張り出されている。
【0033】
また、インナケース24は、第2方向に2分割されている。詳しくは、インナケース24は、インナケース24の第2方向一方側(
図5~
図7の矢印E方向側)部分を構成する第1インナケース24Aと、インナケース24の第2方向他方側(
図5~
図7の矢印F方向側)部分を構成する第2インナケース24Bと、を含んで構成されている。そして、第1インナケース24Aの開口部と第2インナケース24Bの開口部とが突き合わされた状態で、両者が締結固定されている。
【0034】
内筒部26は、内筒部26の上端部及び下端部を構成する一対の大径部26Aと、内筒部26の上下方向中間部を構成する小径部26Bと、を含んで構成されており、小径部26Bの直径が大径部26Aの直径よりも小さく設定されている。上側の大径部26Aの上端部には、径方向外側へ一段上がった内筒拡径部26Cが形成されている。内筒拡径部26Cには、第1方向一方側及び他方側の部分において、下側へ突出された一対の拡径突出部26Dが形成されている。これにより、内筒拡径部26Cの下端部が、内筒部26の径方向外側から見て、凹凸状に形成されている。
【0035】
第1方向一方側の拡径突出部26Dには、後述するトリガ42を取付けるためのトリガ取付部26Eが形成されており、トリガ取付部26Eは、拡径突出部26Dに対して第1方向一方側へ突出している。また、第1方向他方側の拡径突出部26Dには、後述するロックボタン50を取付けるためのボタン取付部26Fが形成されており、ボタン取付部26Fは、拡径突出部26Dに対して径方向内側へ一段下がっている。
【0036】
上側の大径部26Aには、第2方向一方側および他方側の部分において、連通部として上側連通孔26G(
図3及び
図7(A)参照)が貫通形成されている。具体的には、上側連通孔26Gは、一対の拡径突出部26Dの間に配置されている。上側連通孔26Gは、内筒部26の径方向外側から見て、矩形状に形成されており、上側連通孔26Gの開口部が下側へ開放されている。また、下側の大径部26Aと小径部26Bとの境界部分には、第2方向一方側および他方側の部分において、3箇所の下側連通孔26H(
図3、
図5,及び
図7(A)参照)がそれぞれ貫通形成されている。すなわち、内筒部26には、6箇所の下側連通孔26Hが形成されている。下側連通孔26Hは、内筒部26の周方向に延在された長孔状に形成されており、内筒部26の周方向に並んで配置されている。下側連通孔26Hは本発明における連通部である
。
【0037】
一対の大径部26Aの外周部には、複数(本実施の形態では、4箇所)の当接部26J(
図5及び
図7参照)がそれぞれ形成されている。すなわち、本実施の形態では、8箇所の当接部26Jが内筒部26に形成されている。当接部26Jは、内筒部26の径方向外側から見て、上下方向を長手方向とする略矩形状に形成されると共に、大径部26Aに対して径方向外側へ若干突出している。また、当接部26Jは、内筒部26の周方向に等間隔に配置されている。小径部26Bの上端部には、第2方向一方側の上側連通孔26Gの開口部において、径方向外側へ突出した突起部26K(
図3及び
図7参照)が形成されている。
【0038】
内筒部26の下端部には、後述する第2軸受36Lを保持するための軸受保持部26Lが形成されており、軸受保持部26Lは、上下方向を板厚方向とする略円環板状に形成されて、内筒部26の下端部から径方向内側へ延出している。軸受保持部26Lには、第2方向一方側及び他方側の部分において、複数(本実施の形態では、5箇所)の内側排気口26Mがそれぞれ形成されている。具体的には、3箇所の内側排気口26Mが軸受保持部26Lの第2方向一方側部分に形成されており、2箇所の内側排気口26Mが軸受保持部26Lの第2方向他方側部分に形成されている。内側排気口26Mは、内筒部26の周方向に延在された長孔状に形成されると共に、内筒部26の周方向に並んで配置されている。また、軸受保持部26Lには、後述するアウタケース30を固定するための複数(本実施の形態では、4箇所)の固定ボス26Nが形成されている。固定ボス26Nは、上下方向を軸方向とする円筒状に形成されると共に、内筒部26の周方向に等間隔に且つ内側排気口26Mの間に配置されている。これにより、後述するアウタケース30を固定するための固定ボス26Nが、内筒部26の外周面に対して径方向内側に配置されている。固定ボス26Nは本発明における固定部である。
【0039】
アッパケース部28には、後述するバッテリー58を取付けるための電池着脱部としてのバッテリー取付部28Aが形成されており、バッテリー取付部28Aは、上側及び第1方向他方側へ開放された凹状に形成されている。また、アッパケース部28には、コネクタ32(
図3及び
図4参照)が設けられており、コネクタ32が、バッテリー取付部28A内において露出されている。
【0040】
アッパケース部28の第2方向両側の側壁には、下端側の部分において、吸気口28B(
図2及び
図3参照)が貫通形成されており、吸気口28Bは、第1方向を長手方向とする長孔状に形成されている。すなわち、吸気口28Bは、インナケース24の上側連通孔26Gの上側に配置されている。
【0041】
図1~
図6に示されるように、アウタケース30は、金属製であり、分解不可能な単一部材で構成されている。アウタケース30は、上下方向を軸方向とする上側へ開放された略有底円筒状に形成されている。具体的には、アウタケース30は、円筒状の外筒部30Aと、アウタケース30の下端部を構成するケース底部30Bと、を含んで構成されている。外筒部30Aは、インナケース24の内筒部26に外挿されており、内筒部26及び外筒部30Aによって、ハウジング22の筒部22Aを構成している。ここでの外挿とは、対象の外周部分を内側に挿入する様子を表しており、外筒部30Aの内部に内筒部26を挿入させている状態を表している。
【0042】
ケース底部30Bの中央部には、挿通部30Cが貫通形成されている。また、ケース底部30Bには、インナケース24の内側排気口26Mに対応する位置において、5箇所の外側排気口30Dが貫通形成されており、外側排気口30Dは、内側排気口26Mに対応して、外筒部30Aの周方向を長手方向とする長孔状に形成されている。これにより、インナケース24の内部と外部とが、内側排気口26M及び外側排気口30Dによって連通されている。さらに、ケース底部30Bには、インナケース24の固定ボス26Nに対応する位置において、4箇所の固定孔30E(
図5参照)が貫通形成されている。そして、固定ボルトBL(広義には、固定部材として把握される要素である)が、固定孔30E内に下側から挿入され、固定ボス26Nに螺合されることで、アウタケース30がインナケース24に固定されている。
【0043】
アウタケース30の上端部には、インナケース24の拡径突出部26Dに対応する位置において、一対の凹部としてのケース抉り部30Fが形成されており、ケース抉り部30Fは、上側へ開放された凹状に形成されると共に、アウタケース30の径方向外側から見て、台形状に形成されている。アウタケース30のインナケース24への固定状態では、アウタケース30の上端部が、インナケース24の内筒拡径部26Cの下側に配置されて、外筒部30Aが、インナケース24における内筒部26の内筒拡径部26Cを除く部分を径方向外側から覆っている。すなわち、アウタケース30の上端部によって、上側連通孔26Gが視認不能に覆われている。
【0044】
アウタケース30のインナケース24への固定状態では、外筒部30Aの内周面がインナケース24の当接部26Jに当接している。これにより、筒部22Aには、小径部26Bとアウタケース30との間において、間隙22B(
図3及び
図4参照)が形成されている。間隙22Bは、筒部22Aの周方向全周に亘って形成されており、間隙22Bの上端部が、上側連通孔26Gによってインナケース24の内部と連通しており、間隙22Bの下端部が、下側連通孔26Hによってインナケース24の内部と連通している。また、外筒部30Aの外周面が、インナケース24の内筒拡径部26Cの外周面と面一となるように、外筒部30Aの直径が設定されている。
【0045】
外筒部30Aの上端部における内周面には、インナケース24の突起部26Kに対応する位置において、溝部としての係合溝30G(
図3参照)が形成されており、係合溝30Gは、上下方向に延在されると共に、上側へ開放されている。そして、アウタケース30のインナケース24への外挿時には、突起部26Kが係合溝30G内に挿入されて、突起部26Kと係合溝30Gとがインナケース24の周方向に係合する構成になっている。
【0046】
図2、
図3、及び
図5に示されるように、外筒部30Aの外周部には、後述する昇降機構90を構成する一対のラックとしての第1ラック92及び第2ラック94が形成されている。第1ラック92は、外筒部30Aの第2方向一方側部分に形成され、第2ラック94は、外筒部30Aの第2方向他方側部分に形成されており、第1ラック92及び第2ラック94は、上下方向に延在されている。つまり、第1ラック92及び第2ラック94が、外筒部30Aの周方向において、180度離間して配置されている。
【0047】
第1ラック92は、複数のラック溝92Aを有しており、ラック溝92Aは、外筒部30Aの周方向に延在され且つ外筒部30Aの径方向外側へ開放されている。また、複数のラック溝92Aが上下方向において等間隔に並んで配置されている。そして、上下に隣り合うラック溝92Aの間の部分が、ラック歯92Bとして構成されている。これにより、第1ラック92では、複数のラック歯92Bが、上下方向に等間隔に並んで配置されている。
【0048】
第2ラック94は、第1ラック92と同様に構成されている。すなわち、第2ラック94は、上下方向に並ぶ複数のラック溝94Aを有している。また、第2ラック94において、上下に隣り合うラック溝94Aの間の部分が、ラック歯94Bとして構成されており、複数のラック歯94Bが、上下方向に等間隔に並んで配置されている。
【0049】
<モータ34について>
図3及び
図4に示されるように、モータ34は、ブラシレスモータとして構成されている。モータ34は、インナケース24の内筒部26内において内筒部26と同軸上で且つ吸気口28B及び上側連通孔26Gの下側に配置されて、内筒部26に固定されている。モータ34の出力軸34Aの上端部は、内筒部26に設けられた第1軸受36Uによって回転可能に支持されている。一方、出力軸34Aの下端側の部分が、軸受としての第2軸受36Lによって回転可能に支持されており、第2軸受36Lは、内筒部26の軸受保持部26Lに保持されている。また、出力軸34Aの下端部(先端部)は、ハウジング22の下端部よりも下側へ突出しており、出力軸34Aの下端部には、
コレットチャック38が設けられている。そして、
コレットチャック38によって先端工具Tが出力軸34Aの下端部に着脱可能に固定されている。さらに、モータ34は、後述する制御部101に電気的に接続されており、制御部101によってモータ34が駆動する構成になっている。これにより、出力軸34Aと共に回転する先端工具Tによって加工材に切削加工を施すようになっている。
コレットチャック38は本発明の工具保持部に相当する。
【0050】
モータ34の出力軸34Aには、第2軸受36Lの上側において、ファン40が一体回転可能に設けられている。ファン40は、所謂軸流ファンとして構成されており、インナケース24内において下側へ向かう空気流を生成するように構成されている。これにより、冷却風ARが、吸気口28Bからインナケース24内に流入されると共に、インナケース24の内側排気口26M及びアウタケース30の外側排気口30Dからハウジング22の外部へ排出される構成になっている。
【0051】
<トリガ42について>
図4に示されるように、トリガ42は、モータ34を駆動又は停止させるための操作部として構成されている。トリガ42は、インナケース24のトリガ取付部26Eに取付けられて、第1方向一方側へ操作可能に露出されている。また、トリガ42の上端部が、第2方向を軸方向としてインナケース24に回転可能に支持されている。これにより、トリガ42が、初期位置(
図4において実線にて示される位置)と、第2方向一方側から見て初期位置から反時計回りに回転した操作位置(
図4において2点鎖線にて示される位置)と、の間を回転操作可能に構成されている。なお、トリガ42は、図示しない付勢バネによって初期位置側へ付勢されており、トリガ42の非操作状態では、トリガ42が初期位置に保持されている。
【0052】
トリガ42の第1方向他方側には、スイッチとしてのマイクロスイッチ44が設けられており、マイクロスイッチ44は、後述する制御部101に電気的に接続されている。そして、トリガ42が初期位置から操作位置へ操作されることで、トリガ42の下端部がマイクロスイッチ44を押圧して、マイクロスイッチ44が制御部101へ検出信号を出力する構成になっている。
【0053】
<速度設定ダイヤル46について> 速度設定ダイヤル46は、モータ34の回転速度を変更するためのダイヤルとして構成されている。速度設定ダイヤル46は、上下方向を板厚方向とする略円板状に形成されると共に、インナケース24のアッパケース部28の第1方向他方側部内において、上下方向を軸方向としてインナケース24に回転可能に支持されている。また、速度設定ダイヤル46は、アッパケース部28から第1方向他方側へ操作可能に露出されている。
【0054】
速度設定ダイヤル46の上側には、速度設定ダイヤル46の回転位置を検出するためのエンコーダ48が設けられており、エンコーダ48は、制御部101に電気的に接続されている。そして、速度設定ダイヤル46が回転することで、速度設定ダイヤル46の回転位置に応じた検出信号がエンコーダ48から制御部101へ出力される構成になっている。
【0055】
<ロックボタン50について> ロックボタン50は、インナケース24のボタン取付部26Fに設けられると共に、ボタン取付部26Fから第1方向他方側へ露出されている。ロックボタン50は、第1方向他方側から見て、略矩形状に形成されると共に、弾性を有する部材によって構成されている。ロックボタン50の第1方向一方側には、ボタン基板52が隣接して設けられており、ボタン基板52には、タクトスイッチ54が実装されている。タクトスイッチ54は、後述する制御部101に電気的に接続されている。そして、ロックボタン50が押圧されることで、タクトスイッチ54が制御部101に検出信号を出力する構成になっている。また、詳細については後述するが、ロックボタン50は、バッテリー58のハウジング22のコネクタ32への接続時における、モータ34に対する駆動を禁止又は許可するボタンとして構成されている。また、ロックボタン50は、モータ34の駆動中において、モータ34の駆動を継続又は停止させるボタンとしても構成されている。
【0056】
(ベース60について)
図1~
図4に示されるように、ベース60は、金属製であり、上側へ開放された略有底筒状に形成されている。具体的には、ベース60は、外挿部としてのベース筒部62と、ベース60の下端部を構成するプレート部64と、を含んで構成されている。
【0057】
ベース筒部62は、上下方向を軸方向とする略円筒状に形成されると共に、ベース筒部62の周方向の一部が開放されている。すなわち、ベース筒部62には、上下方向に延在されたスリット62Aが形成されており、スリット62Aが上下方向及びベース筒部62の径方向に貫通している。このスリット62Aの幅寸法は、第1ラック92及び第2ラック94の幅寸法よりも大きく設定されている。そして、ベース筒部62(ベース60)が、ハウジング22の筒部22Aに下側から外挿されて、後述する固定機構70によって筒部22Aに固定されている。具体的には、ベース60のハウジング22への固定状態では、ベース筒部62の径方向外側から見て、第1ラック92又は第2ラック94がスリット62Aの内部に配置されている。そして、ハウジング22の筒部22A及びベース筒部62が、作業者によって把持される把持部として構成されている。
【0058】
ベース筒部62の下端部には、第2方向一方側の部分において、開口部62Bが形成されており、開口部62Bは、第2方向一方側から見て、下側へ開放された凹状に形成されている。そして、スリット62Aの下端部が開口部62Bに連通されている。これにより、ベース60をハウジング22に連結した状態では、出力軸34Aに固定された先端工具Tを開口部62Bから視認できる構成になっている。
【0059】
ベース筒部62の周方向一方側端部には、第1クランプ部(第1チャック部)62Cが設けられおり、ベース筒部62の周方向他方側端部には、第2クランプ部62Dが設けられている。第1クランプ部62C及び第2クランプ部(第2チャック部)62Dは、上下方向を長手方向とする略長尺ブロック状に形成されて、第2方向一方側へ突出しながら下方向に延在している。第1クランプ部(第1チャック部)62C及び第2クランプ部(第2チャック部)62Dは、本発明におけるクランプ部またはチャック部に相当する。クランプ部(チャック部)はベース筒部62から径方向外方に突出して軸方向に延在するベース60の一部分である。
【0060】
プレート部64は、上下方向を板厚方向とした略矩形板状に形成されて、ベース筒部62の下端部に接続されている。プレート部64の略中央部には、出力軸34A及び先端工具Tを挿通させるためのベース挿通部64A(
図3及び
図4参照)が貫通形成されている。そして、プレート部64の下面が、加工材への加工時に加工材に当接する当接面として構成されている。
【0061】
プレート部64の下側には、ベベルベース66が設けられており、ベベルベース66は、上下方向を板厚方向とした略矩形板状に形成されている。そして、ベベルベース66が、プレート部64に、ネジ等の固定部材によって固定されている。ベベルベース66には、プレート部64と同様に、
先端工具Tを挿通させるためのベベル挿通部66A(
図3及び
図4参照)が貫通形成されている。
【0062】
(バッテリー58について)
図1及び
図2に示されるように、バッテリー58は、略直方体に形成されている。そして、バッテリー58が、ハウジング22のバッテリー取付部28Aに、第1方向他方側から装着されている。バッテリー58は、図示しないコネクタを有しており、バッテリー58のバッテリー取付部28Aへの装着状態では、当該コネクタがコネクタ32に接続されて、バッテリー58から制御部101に電力が供給される構成になっている。また、バッテリー58は、一対のロック部材58Aを有しており、ロック部材58Aは、バッテリー58の第2方向一方側及び他方側の側部に設けられている。そして、バッテリー58のバッテリー取付部28Aへの装着状態では、ロック部材58Aがハウジング22のアッパケース部28に係合して、バッテリー58の第1方向他方側への移動が制限されている。
【0063】
(固定機構70について)
図1~
図3、及び
図8~
図10に示されるように、固定機構70は、ベース60に設けられて、操作されることで、ベース60をハウジング22に固定する固定状態又はベース60のハウジング22に対する固定を解除する解除状態に切替える機構として構成されている。固定機構70は、上下一対の固定軸71と、クランプレバー75と、を含んで構成されている。固定軸71は、第1方向を軸方向とする略円柱状に形成されて、ベース60の第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dの上端部及び下端部に、第1方向に相対移動可能に架け渡されている。固定軸71の一端部は、第1クランプ部62Cから第1方向一方側へ突出しており、固定軸71の一端部には、雄ねじが形成されている。そして、固定ナット72が、固定軸71の一端部に螺合されて、第1クランプ部62Cの第1方向一方側に配置されている。なお、固定軸71の一端部には、第1固定ワッシャ73(係合ワッシャ73)が装着されており、第1固定ワッシャ73は、固定ナット72と第1クランプ部62Cとの間に配置されている。これにより、固定軸71の一端部と第1クランプ部62Cとが係合して、固定軸71の軸方向他方側への移動が制限されている。
【0064】
固定軸71の他端部は、第2クランプ部62Dから第1方向他方側へ突出している。固定軸71の他端部には、連結溝71A(
図8参照)が形成されており、連結溝71Aは、第1方向他方側へ開放されると共に、第2方向に貫通している。また、連結溝71Aの底部が、第2クランプ部62Dの内部に配置されるように、連結溝71Aの溝深さが設定されている。
【0065】
固定軸71の他端部には、固定力付与部としての第2固定ワッシャ74(固定ワッシャ74)がそれぞれ装着されており、第2固定ワッシャ74は、第2クランプ部62Dの第1方向他方側に隣接して配置されている。すなわち、一対の第2固定ワッシャ74が、上下方向に離間して配置されると共に、第2クランプ部62Dの長手方向両端部の第1方向他方側に隣接して配置されている。第2固定ワッシャ74は、第2方向に延在された当接部としてのワッシャ当接部74A(
図10参照)と、円環状に形成され且つワッシャ当接部74Aの両端部が接続された押圧部としてのワッシャ押圧部74B(
図10参照)と、を含んで構成されている。そして、ワッシャ当接部74Aが、連結溝71Aの内部に配置されると共に、ワッシャ押圧部74Bが、固定軸71の他端部に外挿されている。第1固定ワッシャ73(係合ワッシャ73)と第2固定ワッシャ74は、本発明の剛性部材に相当する。
【0066】
クランプレバー75は、第2方向から見て、第2方向を板厚方向とし且つ第1方向他方側へ開放された略Y字形板状に形成されて、第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dの第2方向一方側に配置されている。また、クランプレバー75は、上側から見て第1方向他方側へ向かうに従い第2方向他方側へ傾斜すると共に、略円弧状に湾曲している(
図9参照)。クランプレバー75の上端部及び下端部には、第2方向他方側へ屈曲された屈曲部75Aが形成されている。屈曲部75Aの第1方向他方側への端部には、第2方向他方側へ突出したカム部75B(
図9参照)が形成されている。カム部75Bは、固定軸71の連結溝71A内に挿入されており、固定軸71に設けられ且つ上下方向を軸方向とする固定ピン76に回転可能に支持されている。
【0067】
これにより、クランプレバー75が、固定位置(
図9に示される位置)と、固定軸71から回転方向一方側(
図9の矢印G方向側)へ回転した解除位置(
図12に示される位置)と、の間を回転操作可能に構成されている。カム部75Bの外周部は、カム面75Cとして構成されており、カム面75Cは、上側から見て、固定ピン76を中心する略円弧状に形成されている。より詳しくは、カム面75Cの固定ピン76からの半径が、クランプレバー75の回転方向一方側へ向かうに従い大きくなるようになっている。
【0068】
そして、クランプレバー75の固定位置では、カム面75Cが、第2固定ワッシャ74のワッシャ当接部74Aに当接すると共に、ワッシャ当接部74Aを第1方向一方側へ押圧する構成になっている。一方、クランプレバー75の解除位置では、カム面75Cがワッシャ当接部74Aの第1方向他方側に離間して配置されて、カム面75Cのワッシャ当接部74Aに対する押圧が解除される構成になっている。これにより、クランプレバー75が解除位置から固定位置へ回転操作されることで、カム部75Bの第2固定ワッシャ74を介した第2クランプ部62Dへの押圧力によって、第2クランプ部62Dが第1クランプ部62C側へ変位するように、ベース筒部62が変形する構成になっている。その結果、クランプレバー75の固定位置では、ベース筒部62がハウジング22の筒部22Aを締付けるクランプ力が発生して、当該クランプ力によって、ベース60がハウジング22(外筒部30A)に固定され(以下、この状態を固定状態という)、クランプレバー75の解除位置では、ベース筒部62のクランプ力が解除されて、ベース60のハウジング22への固定状態が解除されるようになっている(以下、この状態を解除状態という)。これにより、固定機構70を解除状態にすることで、上下方向におけるハウジング22に対するベース60の位置を可変できる構成になっている。外筒部30Aにおいてクランプ力を受ける部分がベース60を取り付け可能な領域であり、ベース60の取付面として機能する。
【0069】
また、クランプレバー75の先端部(第一方向一方側端部)において、レバーキャップ77が設けられており、クランプレバー75の先端部がレバーキャップ77に被覆されている。そして、クランプレバー75の先端部は、クランプレバー75のレバー操作部として構成されており、作業者がレバーキャップ77を把持して、クランプレバー75を回転操作するようになっている。
【0070】
(保持機構80について) 保持機構80は、固定機構70の解除状態において、ベース60をハウジング22に仮固定状態に保持する機構として構成されている。ここで、本実施の形態における仮固定状態とは、ベース60が自重でハウジング22の筒部22Aに対して落下せず、且つ後述する昇降機構90の手動操作時において、ベース60が筒部22Aに対して上下方向に相対移動できるように、ベース60が筒部22Aに保持されている状態をいう。
図1、
図2、及び
図11に示されるように、保持機構80は、連結軸81と、付勢部材としての保持バネ85と、を含んで構成されている。
【0071】
連結軸81は、第1方向を軸方向とする略段付きシャフト状に形成されている。具体的には、連結軸81の一端部には、径方向外側へ一段上がったストッパ部81Aと、ストッパ部81Aよりも径方向外側へ一段上がった操作ノブ81Bと、が形成されており、操作ノブ81Bがストッパ部81Aに対して第1方向一方側に配置されている。そして、操作ノブ81B及びストッパ部81Aが、ベース60の第1クランプ部62Cから第1方向一方側へ突出した状態で、連結軸81が、第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dの上下方向中間部に、第1方向に相対移動可能に且つ自身の軸回りに回転可能に架け渡されている。連結軸81には、第1保持ワッシャ82が他端側から挿入されており、第1保持ワッシャ82は、ストッパ部81Aと第1クランプ部62Cとの間に配置されている。そして、ストッパ部81Aが第1保持ワッシャ82を介して第1クランプ部62Cと係合して、連結軸81の軸方向他方側への移動が制限されている。
【0072】
連結軸81の他端部は、第2クランプ部62Dから第1方向他方側へ突出しており、連結軸81の他端部の外周部には、雄ねじが形成されている。連結軸81の他端部には、係止部としての調整ナット83が螺合されている。また、連結軸81の他端部には、第2保持ワッシャ84が装着されており、第2保持ワッシャ84は、調整ナット83の第1方向一方側に隣接配置されている。
【0073】
保持バネ85は、圧縮コイルスプリングとして構成されて、連結軸81の他端側部分に装着されている。具体的には、保持バネ85の一端部は、第2クランプ部62Dに係止され、保持バネ85の他端部は、第2保持ワッシャ84を介して調整ナット83に係止されており、保持バネ85が、第2クランプ部62Dを第1方向一方側へ付勢すると共に、連結軸81の他端部を第1方向他方側へ付勢している。
【0074】
ここで、上述のように、連結軸81の一端部が第1クランプ部62Cに係止されて、連結軸81の他端側への移動が制限されている。このため、固定機構70の解除状態では、保持バネ85の付勢力によって第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dが互いに接近する方向に変位して、ベース筒部62においてハウジング22の筒部22Aを締付けるクランプ力が発生するようになっている。そして、当該クランプ力によって、ベース60とハウジング22との間に摩擦力が発生し、当該摩擦力によって、ベース60が自重落下しないように、保持バネ85の付勢力が設定されている。また、後述する昇降機構90の作動時には、ベース60のベース筒部62の内周面が、アウタケース30における外筒部30Aの外周面上を摺動して、ベース60がハウジング22に対して上下方向に相対移動する構成になっている。なお、第2クランプ部62Dには、第1方向他方側に開放された凹状のバネ収容部62E(
図11参照)が形成されており、保持バネ85の一部がバネ収容部62E内に収容されている。また、前述した調整ナット83を回転させることで、調整ナット83が連結軸81の軸方向に相対移動するため、調整ナット83によって保持バネ85の付勢力を調整可能に構成されている。
【0075】
(昇降機構90について)
図3及び
図10等に示されるように、昇降機構90は、前述したハウジング22に形成された第1ラック92及び第2ラック94と、前述した保持機構80の連結軸81と、ピニオン96と、を含んで構成されている。すなわち、連結軸81が、保持機構80及び昇降機構90の両方の構成部品として構成されている。
【0076】
ピニオン96は、第1方向を軸方向とする略円筒状に形成されて、連結軸81の軸方向中間部に一体回転可能に固定されると共に、連結軸81と同軸上に配置されている。なお、連結軸81とピニオン96とを一体に形成して、一部材として構成してもよい。また、ハウジング22の筒部22Aの周方向に沿った第1ラック92及び第2ラック94のそれぞれの幅長さが、ピニオン96の幅長さ(軸方向の長さ)よりも若干大きく設定されている。
【0077】
ピニオン96の外周部には、複数のピニオン歯96Aが形成されており、複数のピニオン歯96Aは、ピニオン96の周方向全周に亘って形成されている。そして、ピニオン96が、ベース60の第1クランプ部62Cと第2クランプ部62Dとの間に配置されると共に、ピニオン歯96Aが、ハウジング22の第1ラック92のラック溝92A内又は第2ラック94のラック溝94A内に配置されて、ラック歯92B又はラック歯94Bに噛合される構成になっている(
図3に示される例では、ピニオン歯96Aがラック歯92Bに噛合されている)。
【0078】
これにより、固定機構70の解除状態において、連結軸81を自身の軸回りに回転させることで、ピニオン96が第1ラック92(第2ラック94)に対して相対回転して、ベース60がハウジング22に対して上下方向に昇降する構成になっている。また、ピニオン歯96Aは、ラック溝92A(ラック溝94A)内に配置されている。このため、ベース60がハウジング22に対して昇降するときには、ピニオン歯96Aがラック溝92A(ラック溝94A)の長手方向両端部に係合することで、ベース60のハウジング22に対する相対回転が規制される構成になっている。そして、ベース60の昇降位置を調整した後に、固定機構70を解除状態から固定状態にすることで、ベース60が調整した位置に固定される構成になっている。
【0079】
(コントローラ100について) コントローラ100は、ハウジング22のアッパケース部28の内部に収容されて、アッパケース部28に固定されている。コントローラ100は、制御部101及びインバータ部110を有する。コントローラ100には、前述したコネクタ32、モータ34、マイクロスイッチ44、エンコーダ48、タクトスイッチ54が電気的に接続されている。そして、トリガ42及びロックボタン50の操作に応じて、制御部101が、モータ34に対する作動を制御する構成になっている。また、速度設定ダイヤル46の回転位置に応じて、制御部101が、モータ34の回転速度を制御する構成になっている。
【0080】
<電気的構成>
図13の機能(回路)ブロック図を用いて、電動トリマ10の電気的構成について説明する。コントローラ100は、図示しない制御回路基板を有し、当該制御回路基板には、制御部101とインバータ部110とが搭載される。制御部101は、演算部102を有し、演算部102は、インバータ部110の駆動制御等の各種制御を行う。演算部102はマイコンである。インバータ部110は、スイッチング素子110a(本実施形態では、6個)をブリッジ接続した回路である。検出抵抗120は、モータ34としてのブラシレスモータの駆動電流の経路に設けられている。制御回路電圧供給回路130は、バッテリー58の電圧を制御部101の動作に適した電圧に変換して制御部101に供給する。磁気センサ107は、例えばホール素子であり、モータ34としてのブラシレスモータの回転位置に応じた信号を出力する。
【0081】
制御部101において、モータ電流検出回路103は、検出抵抗120の端子電圧によりモータ34としてのブラシレスモータの駆動電流を検出する。スイッチ操作検出回路104は、作業者による操作部としてのトリガ42の操作を検出する。回転子位置検出回路105は、磁気センサ107からの信号に基づいて、モータ34としてのブラシレスモータの回転位置を検出する。モータ回転数検出回路106は、回転子位置検出回路105からの信号に基づいて、モータ34としてのブラシレスモータの回転数を検出する。演算部102は、回転子位置検出回路105の検出結果に基づいてモータ34としてのブラシレスモータの回転数を演算し、制御信号出力回路108に出力する。
【0082】
制御部101は、モータ34としてのブラシレスモータが非駆動状態であるときに状態切替部としてのタクトスイッチ54(ロックボタン50)が操作された場合と、モータ34としてのブラシレスモータが駆動状態であるときに状態切替部としてのタクトスイッチ54(ロックボタン50)が操作された場合とで、変更する制御状態を異ならせる。例えば、制御部101は、モータ34としてのブラシレスモータが駆動状態であるときにおいて、操作部としてのトリガ42に対する操作が解除されてもモータ34としてのブラシレスモータの駆動を維持するオンロック状態、及び操作部としてのトリガ42に対する操作解除によって、モータ34としてのブラシレスモータの駆動を停止するオンロック解除状態を制御状態として有しており、状態切替部としてのタクトスイッチ54(ロックボタン50)への操作に基づいて、オンロック状態とオンロック解除状態とが切り替えられるよう制御することを例示することができる。また、例えば、制御部101は、オンロック状態時に、操作部としてのトリガ42への操作に基づいて、オンロック状態を解除するよう制御することを例示することができる。
【0083】
(電動トリマ10の動作について) 次に、
図14に示されるフローチャートを用いて、電動トリマ10の動作について説明する。
【0084】
電動トリマ10の動作では、ステップ1(S1)において、ハウジング22のバッテリー取付部28Aにバッテリー58を装着し、バッテリー58をコネクタ32に接続する。バッテリー58のコネクタ32への接続後には、ステップ2(S2)に移行する。
【0085】
ステップ2では、制御部101においてモータ34の駆動を禁止した状態(オフロック状態)にする。ステップ2の処理後、ステップ3(S3)に移行する。
【0086】
ステップ3では、制御部101が、タクトスイッチ54の出力信号に基づいて、ロックボタン50が押圧操作されたか否かを判別する。ステップ3において、ロックボタン50が押圧操作されていない場合(ステップ3のNoの場合)には、ステップ2に戻る。すなわち、モータ34のオフロック状態が維持される。一方、ステップ3において、ロックボタン50が押圧操作された場合(ステップ3のYesの場合)には、ステップ4(S4)に移行する。
【0087】
ステップ4では、制御部101においてモータ34の駆動を許可した状態(オフロック解除状態であり、モータ34の駆動待機状態ともいう)にする。そして、ステップ4の処理後、ステップ5(S5)に移行する。
【0088】
ステップ5では、制御部101が、マイクロスイッチ44の出力信号に基づいて、トリガ42が操作位置へ操作されたか否かを判定する。ステップ5において、トリガ42が操作位置へ操作された場合(ステップ5のYesの場合)には、ステップ6(S6)に移行する。
【0089】
ステップ6では、制御部101によってモータ34が駆動する。これにより、モータ34の出力軸34Aが自身の軸回りに回転して、作業者が、先端工具Tによって加工材に対して切削加工を施す。なお、このときには、制御部101が、速度設定ダイヤル46の回転位置に応じた回転速度で、出力軸34Aを回転させる。ステップ6の処理後、ステップ7(S7)に移行する。
【0090】
ステップ7では、制御部101が、マイクロスイッチ44の出力信号に基づいて、トリガ42の操作位置への操作が継続されているか否かを判定する。ステップ7において、トリガ42の操作位置への操作が継続されていない場合、すなわち、トリガ42が初期位置へ復帰した場合(ステップ7のNoの場合)には、ステップ8(S8)に移行する。
【0091】
ステップ8では、制御部101がモータ34の駆動を停止させる。すなわち、作業者がトリガ42の操作を解除した場合には、モータ34の駆動を停止させる。そして、ステップ8の処理後、ステップ5に戻る。
【0092】
一方、ステップ7において、トリガ42の操作位置への操作が継続されている場合(ステップ7のYesの場合)には、ステップ9(S9)に移行する。
【0093】
ステップ9では、制御部101が、タクトスイッチ54からの出力信号に基づいて、ロックボタン50が押圧操作されたか否かを判別する。ステップ9において、ロックボタン50が押圧操作されていない場合(ステップ9のNoの場合)には、ステップ7に戻る。一方、ステップ9において、ロックボタン50が押圧操作された場合(ステップ9のYesの場合)には、ステップ10(S10)に移行する。
【0094】
ステップ10では、制御部101が、モータ34の駆動を維持する状態(オンロック状態)にする。すなわち、トリガ42が操作位置に操作された状態で、ロックボタン50が押圧操作されると、モータ34の駆動が維持されたオンロック状態に遷移する。ステップ10の処理後、ステップ11(S11)に移行する。
【0095】
ステップ11では、制御部101が、マイクロスイッチ44の出力信号に基づいて、トリガ42が初期位置へ復帰されたか否かを判別する。ステップ11においてトリガ42が初期位置へ復帰されていない場合(ステップ11のNoの場合)には、ステップ10に戻る。すなわち、作業者によるトリガ42の操作位置への操作が継続されている場合には、ステップ10に戻り、オンロック状態が維持される。
【0096】
一方、ステップ11においてトリガ42が初期位置へ復帰された場合(ステップ11のYesの場合)には、ステップ12(S12)に移行する。すなわち、作業者によるトリガ42に対する操作が解除されても、モータ34のオンロック状態が維持されて、ステップ12に移行する。
【0097】
ステップ12では、制御部101が、タクトスイッチ54の出力信号に基づいて、ロックボタン50が押圧操作されたか否かを判別する。ステップ12においてロックボタン50が押圧操作された場合(ステップ12のYesの場合)には、ステップ13(S13)に移行する。
【0098】
ステップ13では、制御部101によってモータ34の駆動を停止する。すなわち、モータ34のオンロック状態において、ロックボタン50が押圧操作されると、モータ34のオンロック状態が解除されて、モータ34が停止する。そして、ステップ13の処理後、ステップ5に戻る。
【0099】
一方、ステップ12においてロックボタン50が押圧操作されていない場合(ステップ12のNoの場合)には、ステップ14(S14)に移行する。
【0100】
ステップ14では、制御部101が、マイクロスイッチ44の出力信号に基づいて、トリガ42が操作位置へ操作されたか否かを判別する。ステップ14においてトリガ42が操作位置へ操作されていない場合(ステップ14のNoの場合)には、ステップ12へ戻る。すなわち、モータ34のオンロック状態が維持される。一方、ステップ14においてトリガ42が操作位置へ操作された場合(ステップ14のYesの場合)には、ステップ15(S15)に移行する。
【0101】
ステップ15では、制御部101によってモータ34の駆動を停止する。すなわち、モータ34のオンロック状態において、ロックボタン50が押圧操作されず、トリガ42が再び操作位置へ操作されると、モータ34のオンロック状態が解除されて、モータ34が停止する。そして、ステップ15の処理後、ステップ16(S16)へ移行する。
【0102】
ステップ16では、制御部101が、マイクロスイッチ44の出力信号に基づいて、トリガ42が初期位置へ復帰したか否かを判別する。ステップ16においてトリガ42が初期位置へ復帰していない場合(ステップ16のNoの場合)には、ステップ15に戻る。すなわち、モータ34の停止状態が維持される。一方、ステップ16においてトリガ42が初期位置へ復帰した場合(ステップ16のYesの場合)には、ステップ5に戻る。すなわち、作業者のトリガ42に対する操作が解除された場合には、モータ34が停止した状態で、ステップ5に戻る。これにより、トリガ42が再び操作位置へ操作されることで、制御部101によってモータ34が再び駆動する。
【0103】
一方、ステップ5において、トリガ42が操作位置へ操作されていない場合(ステップ5のNoの場合)には、ステップ17(S17)に移行する。
【0104】
ステップ17では、制御部101が、タクトスイッチ54からの出力信号に基づいて、ロックボタン50が押圧操作されたか否かを判別する。ステップ17においてロックボタン50が押圧操作された場合(ステップ17のYesの場合)には、ステップ2に戻る。すなわち、制御部101においてモータ34を駆動待機状態からオフロック状態へ遷移させる。一方、ステップ17においてロックボタン50が押圧操作されていない場合(ステップ17のNoの場合)には、ステップ18(S18)へ移行する。
【0105】
ステップ18では、制御部101が、タクトスイッチ54からの出力信号に基づいて、ロックボタン50が所定時間(本実施の形態では、10秒間)以内に押圧操作されたか否かを判別する。また、ステップ18では、制御部101が、マイクロスイッチ44からの出力信号に基づいて、トリガ42が所定時間以内に操作位置へ操作されたか否かを判別する。すなわち、ステップ18では、ロックボタン50又はトリガ42に対する操作が所定時間以内に操作されたか否かを、制御部101が判別する。
【0106】
ステップ18において、ロックボタン50又はトリガ42に対する操作が、所定時間以内に操作された場合(ステップ18のYesの場合)には、ステップ5に戻る。すなわち、モータ34の駆動待機状態に戻る。一方、ステップ18において、ロックボタン50又はトリガ42に対する操作が、所定時間以内に操作されていない場合(ステップ18のNoの場合)には、ステップ2に戻る。すなわち、モータ34の駆動待機状態において、ロックボタン50又はトリガ42に対する操作が行われない場合には、制御部101においてモータ34を駆動待機状態からオフロック状態へ遷移させる。
【0107】
(作用効果) 次に、本実施の形態の電動トリマ10の作用効果について説明する。
【0108】
上記のように構成された電動トリマ10では、トリマ本体20の外郭を構成するハウジング22が、筒状の内筒部26を有するインナケース24と、インナケース24に外挿されたアウタケース30と、を含んで構成されており、アウタケース30がインナケース24に固定されている。すなわち、ハウジング22が、インナケース24とアウタケース30との2重構造を成している。このため、ハウジング22の剛性を高くすることができる。しかも、アウタケース30が分解不能な単一部材で構成されており、ベース60のベース筒部62が、アウタケース30に着脱可能に外挿されている。すなわち、ハウジング22において、ベース筒部62を直接支持する部分が、分解不能な単一部材で構成されている。したがって、ベース筒部62に対するハウジング22の支持剛性を高くすることができる。以上により、ベース60に対する好適な固定構造を実現することができる。
【0109】
特に、インナケース24は、樹脂製とされており、アウタケース30は、金属製とされている。このため、ハウジング22の筒部22Aにおいて、ベース60を直接支持する部分の強度を高くしつつ、筒部22Aの軽量化を図ることができる。
【0110】
また、アウタケース30は、上側へ開放された略有底円筒状に形成されており、固定ボルトBLによって、アウタケース30のケース底部30Bがインナケース24の固定ボス26Nに締結固定されている。さらに、アウタケース30をインナケース24に固定するための固定ボルトBL及び固定ボス26Nが外筒部30Aの外周面よりも径方向内側に配置されている。これにより、例えば、アウタケース30の上端部を、インナケース24のアッパケース部28と同様に、外筒部30Aの径方向外側へ張り出して、当該張り出した部分を、インナケース24のアッパケース部28に締結固定する構成(以下、この構成を比較例の電動トリマという)と比べて、アウタケース30の体格を小型化することができる。これにより、アウタケース30の軽量化を図ることができると共に、ひいては電動トリマ10全体の軽量化を図ることができる。また、比較例の電動トリマと比べて、インナケース24のアッパケース部28にアウタケース30を固定するための固定部を設ける必要がなくなる。これにより、アッパケース部28を小型化することができると共に、ひいては電動トリマ10全体の体格を小型化することができる。
【0111】
また、インナケース24の上端部には、アッパケース部28が設けられており、アッパケース部28が上下方向から見て、アウタケース30(外筒部30A)の外周面から張り出されている。これにより、内筒部26と比べて断面積の比較的大きいアッパケース部28において、モータ34を駆動制御するコントローラ100を配置することができる。また、アッパケース部28にバッテリー取付部28Aを設けて、バッテリー58をインナケース24に装着することができる。
【0112】
また、出力軸34Aの下端側部分が、第2軸受36Lに支持されており、第2軸受36Lがインナケース24の軸受保持部26Lに保持されている。そして、アウタケース30を締結固定するための固定ボス26Nが、軸受保持部26Lに形成されている。これにより、第2軸受36Lを保持する軸受保持部26Lを活用して、アウタケース30をインナケース24に締結固定することができる。換言すると、インナケース24における第2軸受36Lの径方向外側領域を活用して、アウタケース30をインナケース24に締結固定することができる。
【0113】
また、インナケース24の内筒部26は、小径部26Bと、小径部26Bよりも径寸法の大きい大径部26Aと、を含んで構成されている。そして、内筒部26に外挿されるアウタケース30の内周面が、大径部26Aに当接している。これにより、内筒部26内で作動するモータ34の熱がアウタケース30に伝達することを、アウタケース30と小径部26Bとの間の間隙22Bによって抑制できる。また、アウタケース30の内周面が、大径部26Aに当接することで、アウタケース30のインナケース24への外挿状態におけるアウタケース30のガタツキを抑制することができる。したがって、作業者が把持する把持部として機能するアウタケース30の温度上昇を抑制しつつ、アウタケース30のインナケース24への外挿状態を良好に維持することができる。
【0114】
また、インナケース24の内筒部26では、大径部26Aが内筒部26の上端部及び下端部を構成し、小径部26Bが内筒部26の上下方向中間部を構成している。すなわち、大径部26Aが小径部26Bに対して内筒部26の軸方向両側に配置されている。これにより、アウタケース30を内筒部26の軸方向端部で支持することができる。したがって、アウタケース30のインナケース24への外挿状態を一層良好に維持することができる。
【0115】
また、インナケース24の内部には、モータ34の駆動によって回転するファン40が設けられている。さらに、大径部26Aには、上側連通孔26G及び下側連通孔26Hが形成されており、上側連通孔26G及び下側連通孔26Hによって、間隙22Bとインナケース24の内部とが連通している。これにより、
図3に示されるように、電動トリマ10の作動時には、ファン40によって生成される空気流によって、インナケース24の吸気口28Bからインナケース24内に冷却風ARが流入される。インナケース24内に流入された冷却風ARは、内筒部26の上端部において、上側連通孔26G内に流入される冷却風AR1と、内筒部26内を下側へ流れる冷却風AR2と、に分流される。冷却風AR1は、インナケース24の小径部26Bとアウタケース30との間の間隙22Bを下側へ流れて、下側連通孔26Hから内筒部26の下端部内に流入される。そして、冷却風AR1と冷却風AR2とが、内筒部26の下端部において合流して、内側排気口26M及び外側排気口30Dからハウジング22の外部に排出される。以上により、冷却風AR1によってアウタケース30を冷却しつつ、冷却風AR2によってモータ34を冷却することができる。したがって、アウタケース30及びモータ34を効果的に冷却することができる。
【0116】
また、アウタケース30の上端部には、上側へ開放された一対のケース抉り部30Fが形成されている。そして、インナケース24に設けられたトリガ42が、一方のケース抉り部30F内に配置されており、インナケース24に設けられたロックボタン50が、他方のケース抉り部30F内に配置されている。これにより、ケース抉り部30Fとトリガ42及びロックボタン50との位置を合わせて、アウタケース30をインナケース24に外挿することができる。換言すると、アウタケース30のインナケース24への外挿時において、ケース抉り部30Fとトリガ42及びロックボタン50とを目印として、周方向におけるアウタケース30のインナケース24に対する向きを合わせることができる。したがって、アウタケース30をインナケース24に外挿するときの作業性を向上することができる。
【0117】
また、インナケース24の内筒部26には、径方向外側へ突出した突起部26Kが形成されており、アウタケース30の内周面には、上下方向に延在され且つ上側へ開放された係合溝30Gが形成されている。そして、アウタケース30のインナケース24への外挿時には、突起部26Kが係合溝30G内に挿入され、突起部26Kと係合溝30Gとがアウタケース30の周方向に係合する。これにより、アウタケース30のインナケース24に対する相対回転を制限することができる。よって、固定ボルトBLを固定ボス26Nに螺合させるときに、固定孔30Eと固定ボス26Nとの間の位置ずれを抑制することができる。したがって、アウタケース30をインナケース24に締結固定するときの作業性を向上できる。
【0118】
また、電動トリマ10のベース60には、ベース60をハウジング22に固定する固定状態又は固定状態を解除する解除状態に切替える固定機構70が設けられている。さらに、ベース60には、保持機構80が設けられており、保持機構80は、固定機構70の解除状態において、ベース60をハウジング22に仮固定状態に保持する。具体的には、固定機構70の解除状態においてベース60が自重で落下しないように、保持機構80によってベース60が保持される。すなわち、保持機構80が、固定機構70の解除状態において固定機構70を補助する機構として機能して、ベース60のハウジング22に対する固定力が直ちにゼロになることを保持機構80によって抑制する。その結果、固定機構70の解除状態において、作業者がベース60を支える必要がなくなる。したがって、ベース60に対する好適な固定構造を実現することができる。
【0119】
また、保持機構80は、ベース60の第1クランプ部62Cと第2クランプ部62Dとを連結する連結軸81と、保持バネ85と、を含んで構成されている。具体的には、連結軸81が、第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dに軸方向に相対移動可能に架け渡されており、連結軸81の一端部が、第1クランプ部62Cと係合して連結軸81の軸方向他方側への移動が制限されている、また、保持バネ85が、連結軸81の他端側部分に装着されると共に、第2クランプ部62Dを連結軸81の軸方向一方側に付勢し、且つ連結軸81の他端部を軸方向他方側へ付勢している。これにより、連結軸81及び保持バネ85によって、第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dを連結軸81の軸方向内側へ押圧して、第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dが互いに接近する方向にベース筒部62が変形する。
【0120】
より詳しくは、仮に、電動トリマ10において保持機構80を省略した場合には、保持バネ85の第2クランプ部62Dへの押圧力がなくなるため、解除状態のベース60の第2クランプ部62D(図12の1点差線にて示される第2クランプ部62Dを参照)が、固定状態のベース60の第2クランプ部62D(図12の2点差線にて示される第2クランプ部62Dを参照)に対して第1方向他方側に大きく変位する。これに対して、保持機構80をベース60に設けることで、保持バネ85の押圧力が第2クランプ部62Dに作用するため、解除状態のベース60の第2クランプ部62D(図12の実線にて示される第2クランプ部62Dを参照)が、保持機構80を省略した場合と比べて第1方向一方側に位置する。このため、ベース筒部62が、ハウジング22の筒部22Aを締め付けて、筒部22Aをクランプするクランプ力がベース60に発生する。その結果、ベース筒部62と筒部22Aとの間に摩擦力が発生して、当該摩擦力によって、ベース60を仮保持状態に保持することができる。ここでの仮保持状態は、自重での移動を抑制しながら手で動かせる程度に固定されている状態を表す。
【0121】
また、保持機構80では、連結軸81の他端部に調整ナット83が螺合されている。そして、保持バネ85が、第2クランプ部62Dと調整ナット83との間に配置されている。これにより、調整ナット83を連結軸81に対して相対回転させることで、第2クランプ部62D及び連結軸81に対する保持バネ85の付勢力を容易に調整することができる。
【0122】
また、連結軸81には、昇降機構90のピニオン96が一体回転可能に設けられており、ピニオン96が、アウタケース30の第1ラック92又は第2ラック94に噛合されている。これにより、固定機構70の解除状態において、連結軸81の操作ノブ81Bを回転させることで、ベース60をハウジング22に対して昇降させることができる。すなわち、連結軸81を保持機構80及び昇降機構90の共通部品として構成することができる。したがって、連結軸81を保持機構80及び昇降機構90の共通部品として構成しない場合と比べて、保持機構80及び昇降機構90の省スペース化を図ることができると共に、トリマ10の小型化を図ることができる。
【0123】
また、上述のように、連結軸81の一端部(ストッパ部81A)が第1保持ワッシャ82を介して第1クランプ部62Cに係合して連結軸81の軸方向他方側への移動が制限されている。さらに、保持バネ85が連結軸81の軸方向他端部を軸方向他方側へ付勢している。これにより、保持バネ85の付勢力によって連結軸81の回転を制限するための軸保持力が連結軸81に発生する。そして、上述のように、ピニオン96が、連結軸81に一体回転可能に設けられると共に、アウタケース30の第1ラック92又は第2ラック94に噛合されている。このため、連結軸81に発生する軸保持力を、ピニオン96と第1ラック92又は第2ラック94との噛合部分に作用させることができる。すなわち、昇降機構90もベース60をハウジング22に仮固定状態に保持する機構として機能させることができる。したがって、保持バネ85の付勢力を有効に活用して、ベース60を仮固定状態に保持することができる。
【0124】
また、昇降機構90の第1ラック92及び第2ラック94が、外筒部30Aの周方向に離間して配置されている。このため、筒部22Aの周方向における、ピニオン96を第1ラック92に噛合させたときのベース60の位置(以下、この位置を第1位置という)と、ピニオン96を第2ラック94に噛合させたときのベース60の位置(以下、この位置を第2位置という)と、を異なる位置に設定することができる。このため、作業者の作業形態に応じて、ベース60を第1位置又は第2位置に配置させた状態で昇降機構90を機能させることができる。したがって、作業者に対する作業性を向上することができる。
【0125】
また、上述のように、ハウジング22の筒部22Aの周方向において、複数のラック(第1ラック92及び第2ラック94)が外筒部30Aに形成されている。さらに、筒部22Aの周方向に沿った第1ラック92及び第2ラック94のそれぞれの幅長さが、ピニオン96の幅長さよりも大きく設定されている。このため、筒部22Aの周方向に沿ったラックの全長(第1ラック92及び第2ラック94の幅長さの合計)が、ピニオン96の幅長さの2倍以上に設定されている。すなわち、本発明における「筒部の周方向に沿ったラックの全長」とは、本実施の形態のように、複数のラック(第1ラック92及び第2ラック94)が外筒部30Aに形成されている場合には、複数のラック(第1ラック92及び第2ラック94)の幅長さの合計のことをいう。これにより、上述したように、外筒部30Aの周方向におけるベース60の位置を変更して昇降機構90を利用することができる。
【0126】
また、本実施の形態では、トリガ42を外筒部30A(把持部)に設けたので、片手での作業時にモータ34を迅速にオンオフさせることができる。また、トリガ42の操作中に把持状態が解除されたとしてもモータ34が停止するので、加工材を傷つけることを抑制できる。さらに、ロックボタン50への操作によって、モータ34のオン状態を維持可能に構成されているので、トリガ42への操作力を解除しても作業を継続でき、作業時の疲労を軽減することができる。また、ロックボタン50への操作が行われない限りトリガ42の操作が行われてもモータ34が駆動しないよう、オフロック制御を実行可能としたので、非作業時に異物がトリガ42に接触したとしてもモータ34が駆動せず、無駄なエネルギー消費などの悪影響を抑制できる。さらに、オンロック状態への遷移も同様にオフロック状態の解除を行うロックボタン50によって行えるように構成することで、制御スイッチの部品点数を抑えることができるとともに、オフロック解除状態からオンロック状態への遷移を、同じ把持状態で行うことが可能である。特に本実施の形態では、把持状態で2本の指による操作でオフロック解除状態からオンロック状態への遷移を行うことができるので、作業性を大きく向上させることができる。
【0127】
なお、本実施の形態では、固定ボルトBLを、アウタケース30の固定孔30E内に下側から挿入させ、インナケース24の固定ボス26Nに螺合させることで、アウタケース30がインナケース24に締結固定されている。すなわち、固定ボルトBLが上下方向に延在されている。これに代えて、例えば、固定ボルトBLを第1方向又は第2方向に延在させるように筒部22Aの下端部に配置して、インナケース24とアウタケース30とを締結固定させてもよい。
【0128】
また、本実施の形態の保持機構80では、ハウジング22の筒部22Aをクランプするクランプ力をベース60に発生させて、ベース60をハウジング22に仮固定状態に保持しているが、ベース60を仮固定状態に保持する機構は、これに限らない。例えば、図示は省略するが、アウタケース30の外筒部30Aの外周面及びベース60のベース筒部62の内周面の少なくとも一方に、摩擦係数の比較的高い高摩擦部材を設けて、ベース筒部62と外筒部30Aとの間で発生する摩擦力によって、ベース60を仮固定状態に保持してもよい。また、保持バネ85は連結軸81の外周に位置させて第1クランプ部62Cと第2クランプ部62Dとを近接させるように構成したが、固定軸71に設けてもよく、例えば固定ピン76を軸方向に大型化させつつ、固定ピン76と第2固定ワッシャ74との間に保持バネ85を介在させ、固定ピン76と第2固定ワッシャ74に付勢力を働かせるように構成してもよい。
【0129】
また、例えば、
図15に示されるように、外筒部30A及びベース筒部62の一方に、付勢部材としての保持バネ140及び押圧部材142を設けて、外筒部30Aとベース筒部62との間に摩擦力を発生させて、当該摩擦力によってベース60を仮固定状態に保持させてもよい(
図15に示される例では、保持バネ140及び押圧部材142がベース筒部62に設けられている)。具体的には、ベース筒部62に、外筒部30A側へ開放された凹部が形成されており、当該凹部内に、保持バネ140及び押圧部材142が配置されている。保持バネ140は、圧縮コイルスプリングとして構成され、押圧部材142を外筒部30A側へ押圧している。これにより、押圧部材142と外筒部30Aとの間に摩擦力が発生して、ベース60を仮固定状態に保持することができる。なお、押圧部材142の材料は特に規定していないが、例えば、ゴム等の弾性部材を使用することで、ベース60に対する保持力を一層高くすることができる。
【0130】
また、本実施の形態では、ハウジング22の外筒部30Aに2箇所のラック(第1ラック92及び第2ラック94)が形成されているが、3箇所以上のラックを外筒部30Aに形成してもよいし、1箇所のラックを外筒部30Aに形成してもよい。また、1箇所のラックを外筒部30Aに形成する場合には、筒部22Aの周方向に沿ったラックの幅長さを、ピニオン96の幅長さの2倍以上に設定する。例えば、ラックの幅長さを、外筒部30Aの全周の1/2に設定する。これにより、この場合においても、筒部22Aの周方向に沿ったラックの全長が、ピニオン96の幅長さの2倍以上に設定される。このため、外筒部30Aに1箇所のラックを形成した場合でも、昇降機構90によって、外筒部30Aの周方向におけるベース60の位置を変更することができる。
【0131】
また、本実施の形態では、ハウジング22に第1ラック92及び第2ラック94が形成されており、ベース60にピニオン96が設けられているが、ハウジング22にピニオン96を設け、ベース60に第1ラック92及び第2ラック94を形成する構成にしてもよい。
【0132】
上記のように構成された電動トリマ10では、ベース60をハウジング22に固定する固定状態又は固定状態を解除する解除状態に切替える固定機構70が設けられている。固定機構70は、ベース60の第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dに架け渡された上下一対の固定軸71と、固定軸71の他端部に連結された一対のカム部75Bと、固定軸71の他端部に設けられた一対の固定ワッシャ(第2固定ワッシャ)74と、を含んで構成されている。
【0133】
そして、固定機構70のクランプレバー75を解除位置から固定位置側へ回転させると、カム部75Bのカム面75Cが、第2固定ワッシャ74のワッシャ当接部74Aに当接すると共に、ワッシャ当接部74Aを第1方向一方側へ押圧する。これにより、第2固定ワッシャ74のワッシャ押圧部74Bが、第2クランプ部62Dを第1方向一方側へ押圧する。また、クランプレバー75の固定位置側への回転では、クランプレバー75が回動されるに従い、カム部75Bの第2固定ワッシャ74への押圧量が増加する。一方、固定軸71の一端部は、固定ナット72及び第1固定ワッシャ73(係合ワッシャ73)を介して第1クランプ部62Cと係合して、固定軸71の軸方向他方側への移動が制限されている。このため、クランプレバー75の固定位置では、押圧力(本発明の固定力に対応する)が第2固定ワッシャ74から第2クランプ部62Dに付与される。これにより、第2クランプ部62Dが第1クランプ部62C側へ変位して、ベース筒部62が変形する。その結果、ベース筒部62においてハウジング22の筒部22Aを締付けるクランプ力が発生して、当該クランプ力によって、ベース60がハウジング22に固定される。
【0134】
ここで、固定機構70では、固定軸71がベース60の第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dの上端部及び下端部にそれぞれ架け渡されており、カム部75B及び第2固定ワッシャ74が一対の固定軸71の各々に設けられている。これにより、第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dの長手方向両端部を、固定機構70によって挟み込むことができる。換言すると、固定機構70の固定状態では、ベース筒部62を変形させるための第2固定ワッシャ74から第2クランプ部62Dに入力される押圧力が、第2クランプ部62Dの上部(上端部)及び下部(下端部)にそれぞれ作用する。このため、例えば、第2固定ワッシャ74から第2クランプ部62Dに付与される押圧力が、第2クランプ部62Dの長手方向中間部の1箇所に付与する構成(以下、この構成の電動トリマを比較例の電動トリマという)と比べて、ベース筒部62を軸方向全体に亘って良好に変形させることができる。これにより、比較例の電動トリマと比べて、ベース筒部62の筒部22Aをクランプするクランプ力をベース筒部62の軸方向において均一に作用させることができる。したがって、ベース60をハウジング22に安定して固定することができる。特に本実施の形態では、第2クランプ部62Dの上部及び下部に作用する押圧力は、第2クランプ部62Dの延在範囲における上部30%及び下部30%の範囲で作用するため、第2クランプ部62Dの上下端部の固定力が不足するという恐れを低減させることができる。さらに、第2クランプ部62Dの下部が内筒部26の下端よりも下方に位置させた場合、第2クランプ部62Dの下部に対する固定力が不足する恐れがあるが、第2クランプ部62Dの上部に作用する押圧力で固定力の減衰をカバーすることができる。なお、本実施の形態では、一対の固定軸71で第2クランプ部62Dの上部(上端部)及び下部(下端部)に押圧力を発生させたが、固定軸は1つとしながらも、第2クランプ部62Dの上部と下部に押圧力を発生させる手段を設けてもよい。
【0135】
また、固定機構70は、クランプレバー75を有しており、クランプレバー75は、上下一対のカム部75Bを有している。換言すると、固定軸71に連結された一対のカム部75Bが、クランプレバー75によって連結されている。これにより、クランプレバー75を回転操作することで、一対のカム部75Bを同時に作動させることができる。したがって、固定機構70が、一対の固定軸71、一対の第2固定ワッシャ74、及び一対のカム部75Bを含む構成にしても、固定機構70を操作するときの作業者の煩雑さを低減することができる。
【0136】
また、固定軸71の他端部には、軸方向他方側へ開放された連結溝71Aが形成されており、カム部75Bが、連結溝71A内に配置されて、固定軸71と回転可能に連結されている。これにより、例えば、固定軸71において連結溝71Aを省略し、1本の固定軸71に対して一対のカム部75Bを固定軸71の上下方向両側に配置して、カム部75Bと固定軸71とを連結する構成と比べて、固定機構70における上下方向の体格の大型化を抑制することができる。
【0137】
また、第2固定ワッシャ74は、第2方向に延在されたワッシャ当接部74Aと、円環状に形成され且つワッシャ当接部74Aの長手方向両端部が接続されたワッシャ押圧部74Bと、を含んで構成されている。そして、ワッシャ当接部74Aが固定軸71の連結溝71A内に挿入されて、カム部75Bと当接可能に構成されている。また、ワッシャ押圧部74Bが固定軸71に外挿されて、第2クランプ部62Dを押圧可能に構成されている。これにより、カム部75Bの第2固定ワッシャ74への押圧力が第2固定ワッシャ74の中央部に入力され、入力された押圧力をワッシャ押圧部74Bの周方向に均一に伝達して、ワッシャ押圧部74Bによって第2クランプ部62Dを押圧することができる。
【0138】
また、ベース筒部62には、上下一対の固定軸71の間において、連結軸81が設けられており、連結軸81には、昇降機構90を構成するピニオン96が一体回転可能に設けられている、そして、ピニオン96が、アウタケース30に形成された第1ラック92又は第2ラック94に噛合している。これにより、上下一対の固定軸71の間の領域を有効に活用して、ベース60のハウジング22に対する位置を変更するための昇降機構90を設けることができる。
【0139】
(固定機構70の変形例1について)以下、
図16を用いて、固定機構70の変形例1について説明する。固定機構70の変形例1では、以下に示す点を除いて、本実施の形態の固定機構70と同様に構成されている。すなわち、固定機構70の変形例1では、一対のクランプレバー75が、一対の固定軸71(
図16では、不図示)に対応して設けられている。クランプレバー75は、第2方向一方側から見て、第1方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。また、図示は省略するが、固定軸71において連結溝71Aが省略されており、クランプレバー75のカム部75Bが、固定軸71の他端部の上側及び下側にそれぞれ配置されて、固定ピン76によって上下方向を軸方向として固定軸71に回転可能に連結されている。また、固定ワッシャ74において、ワッシャ当接部74Aが省略されている。
【0140】
そして、上側及び下側のクランプレバー75を、解除位置から固定位置へ回転させることで、本実施の形態と同様に、ベース筒部62の第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dの長手方向両端部を、固定機構70によって挟み込むことができる。これにより、ベース筒部62の筒部22Aをクランプするクランプ力をベース筒部62の軸方向において均一に作用させることができる。したがって、固定機構70の変形例1においても、ベース60をハウジング22に安定して固定することができる。
【0141】
また、固定機構70の変形例1では、一対の固定軸71に対応して、クランプレバー75がそれぞれ設けられている。このため、上側の固定ワッシャ74から第2クランプ部62Dへ付与する押圧力と、下側の固定ワッシャ74から第2クランプ部62Dへ付与する押圧力とを、微調整することができる。
【0142】
なお、変形例1では、固定機構70が、固定軸71、カム部75B、固定ワッシャ74、及びクランプレバー75を、それぞれ2個ずつ有しているが、固定機構70が、これら構成部品を3個以上有する構成にしてもよい。
【0143】
(固定機構70の変形例2について)以下、
図17及び
図18を用いて、固定機構70の変形例2について説明する。固定機構70の変形例2では、以下に示す点を除いて、本実施の形態の固定機構70と同様に構成されている。すなわち、固定機構70の変形例2では、一対の固定軸71の代わりに、保持機構80の連結軸81が固定機構70の固定軸として構成されている。固定機構70の変形例2では、クランプレバー75が、第2方向一方側から見て、第1方向を長手方向とする略矩形状に形成されている。そして、クランプレバー75のカム部75Bが、固定軸
81の他端部の上側及び下側にそれぞれ配置されて、固定ピン76によって上下方向を軸方向として固定軸
81に回転可能に連結されている。
【0144】
変形例2では、第1固定ワッシャ73(係合ワッシャ73)の代わりに、係合ワッシャ173が連結軸81の一端部に設けられている。係合ワッシャ173は、第1方向を板厚方向とし且つ上下方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。そして、連結軸81の一端側部分が、係合ワッシャ173の長手方向中間部に挿通されて、連結軸81のストッパ部81Aと係合ワッシャ173とが係合している。また、係合ワッシャ173の長手方向両端部には、規制部173Aが形成されており、規制部173Aは、第1方向他方側へ突出して第1クランプ部62Cの上端部及び下端部に当接している。これにより、連結軸81の第2方向他方側への移動が制限されている。
【0145】
変形例2では、固定ワッシャ74の代わりに、押圧部材としての固定ワッシャ174が連結軸81の他端部に設けられている。固定ワッシャ174は、第1方向を板厚方向とし且つ上下方向を長手方向とする略矩形板状に形成されている。そして、連結軸81の他端側部分が、固定ワッシャ174の長手方向中間部に挿通されて、固定ワッシャ174が第2クランプ部62Dとクランプレバー75のカム部75Bとの間に配置されている。そして、固定機構70の固定状態では、カム部75Bが固定ワッシャ174を第1方向一方側へ押圧するようになっている。
【0146】
また、固定ワッシャ174の長手方向両端部には、固定力付与部としての押部174Aが形成されており、押部174Aは、第1方向一方側へ突出して第2クランプ部62Dの上端部及び下端部の第1方向他方側に隣接して配置されている。
【0147】
そして、固定機構70のクランプレバー75を解除位置から固定位置側へ回転させると、カム部75Bが、固定ワッシャ174を第1方向一方側へ押圧する。これにより、固定ワッシャ174の一対の押部174Aが、第2クランプ部62Dの上端部及び下端部を第1方向一方側へ押圧する。このため、固定機構70の変形例2においても、ベース筒部62の第1クランプ部62C及び第2クランプ部62Dの長手方向両端部を、固定機構70によって挟み込むことができる。これにより、ベース筒部62の筒部22Aをクランプするクランプ力をベース筒部62の軸方向において均一に作用させることができる。したがって、固定機構70の変形例2においても、ベース60をハウジング22に安定して固定することができる。
【0148】
また、固定機構70の変形例2では、保持機構80の連結軸81が、固定機構70の固定軸として構成されている。このため、部品点数を削減することができると共に、電動トリマ10のコストダウンに寄与することができる。
【0149】
なお、本実施の形態では、固定機構70が第2クランプ部62Dに押圧力を付与して、ハウジング22の筒部22Aを締め付けるクランプ力をベース筒部62に作用させる構成であるが、固定機構70の構成はこれに限らない。例えば、図示は省略するが、固定機構70をトグル機構として構成して、筒部22Aを固定する固定力を付与する固定力付与部を、上下方向に離間して配置するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0150】
10…電動トリマ(作業機)、24…インナケース、26…内筒部、26A…大径部、26B…小径部、26G…上側連通孔(連通部)、26H…下側連通孔(連通部)、26K…突起部、26L…軸受保持部、26N…固定ボス(固定部)、28…アッパケース部(張出部)、28A…バッテリー取付部(電池着脱部)、30…アウタケース、30F…ケース抉り部(凹部)、30G…係合溝(溝部)、34…モータ、34A…出力軸、36L…第2軸受(軸受)、40…ファン、42…トリガ(操作部)、44…マイクロスイッチ(スイッチ)、58…バッテリー(電池)、60…ベース、100…コントローラ、T…先端工具