(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】物量予測システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/04 20230101AFI20240528BHJP
G06Q 10/083 20240101ALI20240528BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q10/083
(21)【出願番号】P 2022561268
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023518
(87)【国際公開番号】W WO2022102160
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2020188542
(32)【優先日】2020-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂井 孝光
(72)【発明者】
【氏名】石塚 雄大
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利男
(72)【発明者】
【氏名】山村 洋市
(72)【発明者】
【氏名】栗脇 悠一
【審査官】久宗 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-152205(JP,A)
【文献】特開2003-256019(JP,A)
【文献】特開2002-297958(JP,A)
【文献】特開2002-024350(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0171428(US,A1)
【文献】株式会社NTTデータ技術開発本部ビジネスインテリジェンス推進センタ,BI革命,初版,日本,NTT出版株式会社,2009年11月19日,p.87-96,ISBN 978-4-7571-2246-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
店舗の営業時間の変更を取得する営業時間取得部と、
変更前の営業時間での物量実績に基づいて、変更後の営業時間に対応する物量を予測する物量予測部と、
を備え
、
前記物量予測部においては、店舗毎に時間帯毎の商品の過去の売れた量が取得され、変更後に非営業時間となる時間帯において変更前に売れた商品の量を減算して変更後の営業時間に対応する物量が予測される、
物量予測システム。
【請求項2】
前記物量予測部においては、変更前の営業時間と変更後の営業時間の変化量に基づいて、変更後の営業時間に対応する物量が予測される、
請求項1に記載の物量予測システム。
【請求項3】
変更前の営業時間の長さを分母とし変更後の営業時間の長さを分子とする時間比を、変更前の営業時間における物量に乗じた値に基づいて、営業時間変更後の物量が予測される、
請求項1または請求項2に記載の物量予測システム。
【請求項4】
前記物量予測部においては、営業時間が変更される店舗を含む複数の店舗毎の物量が予測され、
予測された物量に基づいて複数の店舗に商品を配送するための配送計画を取得する配送計画取得部を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の物量予測システム。
【請求項5】
過去に営業時間が変更された他の店舗における物量の変化に基づいて、新たに営業時間が変更される店舗の物量が予測される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の物量予測システム。
【請求項6】
営業時間が変更される店舗に商品の配送が1日当たりN回(Nは1以上)行われる場合に、N回の配送のうちの営業時間の変更に物量が影響を受けることが推定される配送について、物量が予測される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の物量予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物量予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過去の販売実績に基づいて商品の販売量を予測することが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術では、1日当たりの営業時間が過去の販売実績における営業時間と異なっている場合に、適切に販売量を予測できない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、営業時間が変更される場合に、変更後の物量を予測する技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、物量予測システムは、店舗の営業時間の変更を取得する営業時間取得部と、変更前の営業時間での物量実績に基づいて、変更後の営業時間に対応する物量を予測する物量予測部と、を備える。
【0006】
すなわち、物量予測システムでは、変更前の営業時間での物量実績に基づいて、変更後の営業時間での物量を予測する。そのため、営業時間が変更される場合に、変更後の物量を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】物量予測システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3Aは物量実績の例を示す図であり、
図3Bは機械学習の入出力例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)物量予測システムの構成:
(2)物量予測処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)物量予測システムの構成:
図1は、本発明にかかる物量予測システムの構成を示すブロック図である。本実施形態において物量予測システム10は、管理者端末100から操作されるサーバによって実現される。管理者端末100は、例えば、汎用コンピュータや携帯端末等で実現可能であり、図示しないディスプレイや操作入力部等を備えている。管理者は、複数の店舗に対する商品の配送計画を作成するため、管理者端末100の操作入力部を操作することにより、物量予測システム10に物量を予測させる。
【0010】
本実施形態においては、例えばコンビニエンスストアの各店舗に配送する商品の物量を予測することを想定している。昨今、コンビニエンスストア各社では、24時間営業から営業時間を短縮することが議論されている。営業時間を短縮する店舗が現れた場合の物量の変化を予測して変化後の物量での配送計画を予め作成し、作成した配送計画によって営業時間の変更に即応した無駄の少ない配送を実現できることが望ましい。
【0011】
本実施形態において、配送計画は、1台以上の配送車両が複数の店舗を決められた順序で訪問し、各店舗に商品を届ける荷役を行うための計画である。本実施形態において配送計画は、複数の店舗に到着する順序および各店舗で荷役を行う期間が定義されることによって作成される。
【0012】
図2Aは、配送計画の一例を示す図である。
図2Aにおいて、配送先である店舗は、S
A~S
F等の識別情報で表記されている。また、
図2Aにおいては、24時間分の配送計画が一部省略して表記されている。配送計画では、荷役作業を開始する時刻が少なくとも定義される。
図2Aに示す例において、同一の店舗で荷役作業を行う期間が30分以内であることが想定されている。むろん、当該期間は、店舗と駐車場との距離や荷物の量等に応じて変化しても良い。
【0013】
本実施形態において、商品は、チルド、米飯、常温、フローズンに分類されており、当該分類に対応する各物流拠点から配送車両が商品を各店舗に配送する。
図2Aにおいて、C,R,D,Fは、それぞれ、チルド、米飯、常温、フローズンの商品を各店舗に配送する時間帯を示している。各拠点から出発する配送車両の数は任意であり、複数台である場合には各配送車両で複数の店舗のいずれかを分担して配送を行う計画になる。
図2Aにおいては、簡単のため、各拠点から1台の配送車両が出発する状態が想定されている。
【0014】
例えば、
図2Aにおいて、チルド(C)の商品を配送する配送車両は、チルド商品の拠点を出発後、店舗S
B,S
C,S
D,S
E,S
F,S
Aの順に配送を行う。また、チルド商品の拠点を出発した配送車両が店舗S
Bで荷役を開始する時刻は5:00であり、店舗S
Bでの荷役を終了して次の配送先である店舗S
Cに移動を完了する時刻は5:30である。また、店舗S
Cにて荷役を開始する時刻は5:30であり、次の配送先である店舗SDに移動を完了する時刻は6:00である。このように、各拠点から出発する配送車両が各配送先の店舗で荷役作業を行う期間が特定されることで、配送計画が定義される。
【0015】
本実施形態においては、同一の分類に属する商品を同日にN回(Nは1以上)配送する計画が作成され得る。例えば、
図2Aに示す例であれば、同日にチルドの商品が配送先の各店舗に3回配送される。店舗S
Aであれば、7:00からと、10:30からと、16:30からの3回チルドの商品が配送される。これらを区別するため、本明細書では、同一の分類の商品の異なる時間帯における配送を「便」と呼ぶ。例えば、
図2Aに示す例において、チルド(C)の商品の配送と、米飯(R)の商品の配送は1日に3便ずつ存在し、常温(D)の商品の配送と、フローズン(F)の商品の配送は1日に1便ずつ存在する。
【0016】
なお、本実施形態において配送先は店舗であり、荷物は各店舗で販売される商品である。ピークタイムPは、配送先である店舗が混雑する時間帯であり、本実施形態においては、当該ピークタイムPにおいて荷役が発生しないように配送計画が作成される。なお、配送計画の態様は、本例の態様に限定されず、種々の態様で定義されて良い。
【0017】
物量予測システム10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30、通信部40を備えている。通信部40は、管理者端末100と情報の授受を行う回路を備えている。制御部20は、通信部40を介して管理者端末100と通信を行うことができる。
【0018】
また、記録媒体30には、店舗情報30aと物量実績30bとカレンダー情報30cと学習済モデル30dが記録されている。店舗情報30aは、商品の配送先である店舗毎に定義され、店舗ID、店舗名、店舗の位置情報、ピークタイム、営業時間等の情報を含んでいる。営業時間には、例えば、24時間営業や、24時間営業でない場合には営業開始時刻と営業終了時刻を示す情報が含まれる。また、今後24時間営業から非24時間営業に変更される予定の店舗については、変更日も含まれる。店舗情報30aは、例えば、管理者端末100を操作する管理者によって入力や変更が行われる。
【0019】
物量実績30bは、過去の一定期間の各日の店舗毎および便毎の物量の実績が含まれる。具体的には例えば、
図3Aに示すように、日付、曜日、平日/休日区分、天候、気温、便、店舗に対応付けて物量が含まれる。曜日や平日/休日区分は、カレンダー情報30cから該当日の日付と対応する曜日や平日/休日区分を取得することにより記録される。物量予測システム10は、通信部40を介して各地域の将来の天候や気温等を含む天候情報を提供する天候情報サーバ200と通信可能である。天候や気温は、天候情報サーバ200から該当日の天候や気温を取得することにより記録される。
【0020】
図3AにおいてC1、C2、C3は、それぞれチルドの第1便、第2便、第3便を示しており、R1,R2,R3は、米飯の第1便、第2便、第3便を示している。本実施形態において物量は、例えば番重などの商品運搬用の容器の個数で表されることを想定している。該当日の該当便において、各店舗から発注された商品を配送するために実際に用いられた容器の個数が記録される。
【0021】
カレンダー情報30cは、日付と曜日や平日/祝日の区分とを対応付けた情報である。制御部20は、カレンダー情報30cを参照することにより、指定した日付の曜日や、平日/祝日の区分を取得することができる。学習済モデル30dは、後述する物量予測部21bの機能により、制御部20によって生成される機械学習モデルである。詳細は後述する。
【0022】
制御部20は、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムとして物量予測プログラム21を実行可能である。物量予測プログラム21が実行されると、制御部20は、営業時間取得部21a、物量予測部21b、配送計画取得部21cとして機能する。
【0023】
営業時間取得部21aの機能により、制御部20は、店舗の営業時間の変更を取得する。すなわち、制御部20は、店舗情報30aを参照し、配送先の店舗の営業時間を取得する。制御部20は、物量を予測したい日として管理者が指定した日付(以降、予測対象日という)における店舗の営業時間と、予測対象日より前の店舗の営業時間(後述する機械学習の教師データの採用期間における店舗の営業時間)とを店舗毎に比較し、営業時間が変更になっている店舗が存在する場合、営業時間が変更される店舗を特定する。
【0024】
本実施形態では、配送先の複数の24時間営業の店舗のうちの一部が非24時間営業に変更になる例を想定している。具体的には例えば、
図2Bは、店舗S
Aの営業時間が6:00から23:00までに短縮され(23:00から翌日6:00までが非営業時間となる)、店舗S
Dの営業時間が6:00から翌日0:00までに短縮される(0:00から6:00まで非営業時間となる)となる例を示している。
【0025】
物量予測部21bの機能により、制御部20は、変更前の営業時間での物量実績に基づいて、変更後の営業時間に対応する物量を予測する。本実施形態において、制御部20は、過去の一定期間における物量実績に基づいて機械学習したモデルを予め生成し、記録媒体30に保存している(学習済モデル30d)。本実施形態における機械学習モデルは、例えば
図3Bに示すように、曜日、平日/休日区分、天候、最高気温、最低気温、便、店舗の組み合わせを入力とし、当該組み合わせに対応する実際の物量を出力する教師データを用いて機械学習したモデルである。
【0026】
制御部20は、まず、予測対象日(営業時間変更後の日付)における店舗および便毎に、営業時間変更を考慮しない物量を、学習済モデル30dを用いて取得する。そのために、制御部20は、予測対象日の曜日や平日/休日区分を、カレンダー情報30cを参照して取得する。また、制御部20は、予測対象日の天候および気温を、天候情報サーバ200から取得する。そして、制御部20は、取得した各情報と便および店舗を学習済モデル30dに入力し、予測対象日における便および店舗毎の物量を取得する。
【0027】
なお学習済モデル30dは、毎日の物量実績に基づく教師データにより一定期間毎に追加学習され更新されうるが、本実施形態において学習済モデル30dは、営業時間の変更を考慮しない場合の物量を予測するために用いることを想定しているため、店舗SAやSDの営業時間の変更前(すなわち24時間営業の期間)における物量実績によって学習されたモデルである。
【0028】
続いて、制御部20は、営業時間が変更される店舗におけるN回の便のうち、営業時間の変更に物量が影響を受けることが推定される便を抽出する。営業時間が変更されることにより商品が売れる機会(時間)が増減し、その結果、店舗からの商品の発注量が増減するため物量が増減する。そのため、営業時間の変更に物量が影響を受けうる。1日に1便のみで配送される常温(D)やフローズン(F)については、当該1便が、物量が影響を受ける便として抽出される。1日に複数便で配送されるチルド(C)や米飯(R)については、本実施形態では次のように影響を受ける便が抽出される。
【0029】
店舗SAに注目すると、例えばチルドは、1日当たり3便、配送の機会がある。本実施形態においては、例えば、7:00のC1便には、朝のピークタイムを含む午前中に売れることが期待される商品が含まれ、10:30のC2便には、正午のピークタイムを含む夕方頃までに売れることが期待される商品が含まれ、16:30のC3便には夜のピークタイムを含み翌日の朝のC1便頃の約14時間の間に売れることが期待される商品が含まれる。
【0030】
本実施形態において、制御部20は、これまで営業時間であった23:00から6:00までの7時間が非営業時間となることによって、C3便で店舗SAに配送される商品の販売の機会が14時間から7時間(=14-7)に減少すると見積もる。すなわち本実施形態において、制御部20は、営業終了時刻の直近の便を、営業時間の変更に物量が影響を受ける便として抽出する。
【0031】
さらに、制御部20は、変更前の営業時間の長さT1を分母とし変更後の営業時間の長さT2を分子とする時間比(T2/T1)を、変更前の営業時間における物量Qに乗じた値に基づいて、営業時間変更後の物量を予測する。店舗SAのC3便の場合、変更前の物量をQCとすると、制御部20は、QC×7/14=QC/2を営業時間変更後のC3便の物量と予測する。本実施形態において制御部20は、1日当たり3便存在する米飯Rについても同様に、営業終了時刻の直近の便であるR3を、営業時間の変更に物量が影響を受ける便と見なす。そして、制御部20は、営業時間変更後の店舗SAのR3便の物量を、QR/2と予測する(QRは、変更前の店舗SAのR3便の物量)。
【0032】
本実施形態において、1日1便の常温DおよびフローズンFについては、制御部20は、これら1便がそれぞれ営業時間変更の影響を受けると見なす。店舗SAの場合、営業時間が24時間から17時間(=24-7)に減少するため、変更前の物量QDに17/24を乗じた値を、変更後の常温Dの便の予測物量とする。フローズンFについても同様に、制御部20は、変更前の物量QFに17/24を乗じた値を変更後のフローズンFの予測物量とする。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、変更前の営業時間での物量実績に基づいて機械学習したモデルを用いて、まず営業時間変更を考慮しない場合の予測対象日の物量を予測し、予測物量に営業時間変更に伴う時間比を乗じて営業時間変更後の物量の予測値とする。従って本実施形態によれば、営業時間が変更される場合に、変更後の物量を予測することができる。
【0034】
物量予測部21bの機能により、制御部20は、営業時間が変更される店舗を含む複数の店舗毎の物量を予測する。すなわち、制御部20は、営業時間が変更される店舗の、営業時間の変更に影響されると推定される便については、学習済モデル30dを用いた取得した予測物量に時間比を乗じた値を予測値とする。制御部20は、営業時間が変更される店舗の、営業時間の変更に影響されると推定される便以外の便については、学習済モデル30dの出力結果を予測物量とする。また、制御部20は、営業時間が変更されない店舗の各便について、学習済モデル30dの出力結果を予測物量とする。
【0035】
以上のようにして、予測対象日における全ての店舗の全ての便の物量の予測値を取得した後、制御部20は、配送計画取得部21cの機能により、予測された物量に基づいて複数の店舗に商品を配送するための配送計画を取得する。本実施形態において、制御部20は、便毎の配送計画を取得する。すなわち、制御部20は、便毎に、各店舗の予測物量と、各店舗の位置と、対象の便の配送拠点(出荷地点)の位置等を、VRP(Vehicle Routing Problem)サーバ300に出力し、VRPサーバ300に配送計画を作成させ、作成された配送計画を取得する。VRPサーバ300は、配送拠点を出発した車両が各店舗に商品を配送する配送計画を公知のアルゴリズムによって作成するサーバである。
【0036】
本実施形態において、例えばC3便、R3便、D便、F便(
図2Bを参照)は、営業時間の変更に伴って物量が変化することが予測される便である。制御部20は、これらの便について変化後の物量に基づく配送計画を取得することができる。営業時間が短縮する店舗が出現し物量が減少することにより、例えば荷役時間が短縮できるため、配送計画の所要時間が短縮できることを示す配送計画が取得されうる。また、
図2Aおよび
図2Bの例では配送車両が1台であることを示しているが、複数の配送車両で配送を行っていても良い。その場合例えば、全ての店舗で24時間営業を行っていた期間のC3便はV台の車両で分担して配送する配送計画が採用されていたが、一部の店舗で非24時間営業を開始する場合にはV台よりも少ない配送車両でC3便の配送を実施する配送計画が取得されうる。
【0037】
(2)物量予測処理:
次に、制御部20が実行する物量予測処理を説明する。
図4は、制御部20が実行する物量予測処理を示すフローチャートである。本実施形態において、当該物量予測処理は、管理者が管理者端末100を操作して店舗の営業時間の変更を入力し、管理者端末100から物量予測処理の開始指示が行われたことを、制御部20が通信部40を介して取得した場合に開始される。
【0038】
物量予測処理が開始されると、制御部20は、物量予測部21bの機能により、過去の物量実績30bを用いて機械学習されたモデルを取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、記録媒体30に記録されている学習済モデル30dを取得する。続いて、制御部20は、物量予測部21bの機能により、天候情報を取得する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、天候情報サーバ200から予測対象日の天候、気温等を含む天候情報を取得する。
【0039】
続いて、制御部20は、物量予測部21bの機能により、カレンダー情報30cを取得する(ステップS110)。すなわち制御部20は、カレンダー情報30cを参照し、予測対象日の曜日や平日/休日区分を取得する。続いて、制御部20は、物量予測部21bの機能により、機械学習モデルを用いて予測対象日の便毎および店舗毎の物量を予測する(ステップS115)。すなわち制御部20は、学習済モデル30dに、予測対象日の曜日、予測対象日の平日/休日区分、予測対象日の天候および気温、便、店舗を入力し、予測対象日における当該便および店舗の物量の予測値を取得する。
【0040】
続いて、制御部20は、営業時間取得部21aの機能により、配送先の店舗の営業時間を取得する(ステップS120)。すなわち制御部20は、店舗情報30aを参照し、予測対象日における配送先の各店舗の営業時間を取得する。続いて、制御部20は、営業時間取得部21aの機能により、配送先の店舗に営業時間が変更される店舗が有るか否かを判定する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、予測対象日における店舗の営業時間と、予測対象日より前の店舗の営業時間(機械学習の教師データの採用期間における店舗の営業時間)とを店舗毎に比較し、営業時間が変更になっている店舗が存在するか否かを判定する。
【0041】
ステップS125において、営業時間が変更される店舗が有ると判定された場合、制御部20は、物量予測部21bの機能により、配送先の店舗の営業時間の変更に伴う物量変化を物量予測に反映させる(ステップS130)。すなわち、本実施形態において、制御部20は、営業時間の変更に物量が影響されることが推定される店舗および便を特定し、当該店舗および便の物量予測値に時間比を乗じることによって、営業時間変更後の当該店舗および便の物量予測値を取得する。
【0042】
ステップS130を終了後、または、ステップS125で営業時間が変更される店舗が有ると判定されなかった場合、制御部20は、物量予測処理を終了する。その後、制御部20は、便毎および店舗毎に予測された物量に基づいて、VRPサーバ300に配送計画を作成させ、作成された配送計画を取得する。
【0043】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、物量予測システム10とVRPサーバ300は同じ装置で構成されてもよい。また、物量予測システム10が、複数のシステムで構成されてもよい。例えば、物量予測システム10の一部の機能が管理者端末100で実現されても良いし、クラウドサーバで実現されても良い。
【0044】
さらに、管理者端末100の利用者は、物流拠点に存在しても良いし、発注元に存在しても良い。さらに、管理者端末100は、車両に備えられていても良いし、可搬型の端末等であっても良い。また、物量予測システム10を構成する各部(営業時間取得部21a、物量予測部21b、配送計画取得部21c)の少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していても良い。また、上述の実施形態の一部の構成が省略される構成や、処理が変動または省略される構成も想定し得る。
【0045】
営業時間取得部は、店舗の営業時間の変更を取得することができればよい。営業時間の変更は、営業開始時刻および営業終了時刻の少なくともいずれか一方が変化することによる営業時間の「短縮」や「延長」、営業時間の長さは変化しないが営業開始時刻および営業終了時刻が「シフト」することのいずれであってもよい。営業時間の変更は、管理者が入力する構成であってもよいし、例えば店舗の営業時間を管理するサーバから定期的に自動的に取得する構成であってもよい。また、営業時間が変更される店舗を検出した場合に、物量予測処理が自動的に実行されてもよい。
【0046】
物量予測部は、変更前の営業時間での物量実績に基づいて、変更後の営業時間に対応する物量を予測することができればよく、上記実施形態の他にも様々な構成を採用してよい。例えば、複数の店舗にそれぞれ量が異なりうる商品を配送するための配送計画を取得する配送計画取得部を備える場合、便毎および店舗毎の物量を予測する構成を採用するが、配送計画取得部を備えない場合は、必ずしも店舗毎や便毎に物量を予測しなくてもよい。例えばチルド商品の拠点の1日の出荷物量を予測する場合、天候や曜日などの条件が類似する過去の物量実績から、予測対象日の物量を予測し、営業時間変更前の複数店舗の営業時間の和を分母とし営業時間変更後の複数店舗の営業時間の和を分子とする時間比を乗じることで、営業時間が変更される場合の予測対象日1日のチルド商品の出荷量を予測する構成であってもよい。
【0047】
また、営業時間変更前の物量の予測には、機械学習モデルを用いられてもよいし、多変量解析等の手法が用いられても良い。基本の物量に、曜日、平日/休日の区分、天候、気温、店舗規模、店舗立地条件、等に応じた係数を乗じて補正することで、予測対象日の物量を予測してもよい。
【0048】
物量の予測に機械学習モデルが用いられる場合も、機械学習モデルの入力と出力の構成は上記実施形態の他にも種々の構成を採用可能である。店舗毎および便毎に物量を予測する場合、例えば、店舗毎や、店舗および便毎に機械学習モデルが生成されてもよい。機械学習モデルの入力や出力も、上記実施形態の例に限定されない。また、商品の配送に用いられる番重等の運搬用容器として、大きさ等が異なる複数種類の容器が用いられる場合、機械学習モデルの出力としての物量は、種類毎の容器の個数であってもよい。
【0049】
物量予測部は、過去に営業時間が変更された他の店舗における物量の変化に基づいて、新たに営業時間が変更される店舗の物量を予測する構成であってもよい。具体的に例えば、過去に営業時間をX時間からY時間に変更した場合の物量が平均してQXからQYに変化したことが過去の物量実績から取得できた場合に、時間の変化比と物量の変化比の関係を用いて、新たに営業時間がX時間からZ時間に変更になる場合に物量がqXからどのように変化するかを予測する構成を採用してもよい。より具体的には、Y/X:QY/QX=Z/X:qZ/qXの関係式からqZを算出してもよい。
【0050】
また上記では、まず営業時間変更を考慮しない物量の予測を行い、その予測物量を、営業時間の変更に応じて補正するという2段階の処理を行う構成であるが、その構成に限定されない。例えば、機械学習モデルを用いて過去に営業時間が変更された他の店舗の物量変化に基づく予測を行っても良い。その場合、機械学習モデルの入力として、曜日、平日/休日、天候、最高気温、最低気温、便、店舗規模、店舗の立地環境(オフィス街、住宅街、幹線道路沿い、駅前、等)、店舗周辺人口、営業開始時刻、営業終了時刻を採用し、機械学習モデルの出力として物量を採用してもよい。
【0051】
物量予測部は、1日当たりN回の配送(便)のうちの営業時間の変更に物量が影響を受けることが推定される配送(便)について、物量を予測することができる構成であってもよい。営業時間が変更されてこれまで営業時間であった一部の時間帯が非営業時間となる場合、当該時間帯で売れていた商品が売れなくなると推定できる。そのため当該時間帯で売れていた商品の発注量が減少することが推定でき、その結果、配送する便の物量が減少すると推定できる。なお商品が配送された便や売れた時間帯は、配送実績やPOSデータ等から特定可能である。上記実施形態においては、営業時間が短縮される場合に、営業終了時刻の直近の便が、営業時間の変更に物量が影響を受けると推定する構成であったがこれに限定されない。営業時間が短縮されることにより、営業終了時刻の直近の便以外にも、影響を及ぼしうる。
【0052】
例えば、店舗SAにC2便で配送される商品のM1%は店舗SAにおいてこれまで深夜の時間帯(非営業時間に変更になる時間帯)に売れていた場合に、営業時間変更後は、C2便のM1%は売れないと推定できる。そのため、店舗SAのC2便が、営業時間減少の影響を受けると推定することができる。この場合に、物量予測部は、C2便で店舗SAに配送される商品がM1%減少することによる物量(例えば運搬用容器の個数)の減少数を特定し、営業時間変更前の物量から減少数を減算して営業時間変更後の物量を算出することができる。
【0053】
また、店舗SAにおいて変更後の営業終了時刻の直近のC3便で配送される商品のM2%はこれまで深夜の時間帯(非営業時間に変更になる時間帯)に売れていなかった(別の時間帯に売れる)場合、店舗SAへのC3便の商品のM2%は営業時間変更に影響を受けないと推定できる。従って店舗SAへのC3便の商品のM2%は減少せず、(100-M2)%は時間比で減少すると見なし、営業時間変更後の物量を予測してもよい。
【0054】
また例えば、営業時間が変更されてこれまで非営業時間であった一部の時間帯が営業時間となる場合、当該時間帯で売れることが予測される商品を配送する便の物量が増えると推定できる。そのため、店舗規模や立地条件が類似の他店舗のPOSデータを参照し、当該時間帯に売れる商品を配送する便を決定し(他の便の物量や商品の賞味期限等を考慮して決定されてよい)、当該便の物量が増加すると予測してもよい。
【0055】
なお、これまで営業時間であった時間帯であり便が割り当てられていた時間帯が、非営業時間に変更になることもあり得る。その場合、当該便で配送されるはずだった商品が配送されないこととなるので、当該便の前後の便において物量が増加することもあり得る。具体的には例えば
図2Aの例にさらに、これまで深夜2:00にチルドの第4便(C4便)が存在していたとする。しかし、店舗S
Aにおいて23:00から6:00までの時間帯が非営業時間に変更になるためこのC4便でのチルドの商品を店舗S
Aは受け取れないこととなる。営業時間変更前の16:30のC3便の物量をQ
c3、営業時間変更前の2:00のC4便の物量をQ
c4、営業時間変更後の16:30のC3便の物量をxとすると、式(1)の関係にあると見なすことができる。
(Q
c3+Q
c4):14時間(17時から7時)
=x:7時間(17時から23時までの6時間+6時から7時までの1時間) …(1)
式(1)より、x=(Q
c3+Q
c4)/2となり、Q
c3およびQ
c4の値によっては営業時間変更前の16:30のC3便の物量Q
c3よりも変更後の16:30のC3便の物量xの方が増加しうる(例えば2≦Q
c3<Q
c4の場合、x>Q
c3となる)。
【0056】
さらに、本発明は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムで実現される方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0057】
10…物量予測システム、20…制御部、21…物量予測プログラム、21a…営業時間取得部、21b…物量予測部、21c…配送計画取得部、30…記録媒体、30a…店舗情報、30b…物量実績、30c…カレンダー情報、30d…学習済モデル、40…通信部、100…管理者端末、200…天候情報サーバ、300…VRPサーバ