(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】二次電池、電子機器及び電動工具
(51)【国際特許分類】
H01M 50/533 20210101AFI20240528BHJP
H01M 50/545 20210101ALI20240528BHJP
H01M 50/56 20210101ALI20240528BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240528BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240528BHJP
【FI】
H01M50/533
H01M50/545
H01M50/56
H01M10/04 W
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2022578300
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001903
(87)【国際公開番号】W WO2022163482
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2021012618
(32)【優先日】2021-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雅
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-219720(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072511(WO,A1)
【文献】特開2007-335156(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50
H01M 10/04
H01M 10/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層された電極巻回体と、正極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
前記正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と、正極活物質非被覆部とを有し、
前記負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質層が被覆された負極活物質被覆部と、少なくとも前記負極箔の長手方向に延在する負極活物質非被覆部と、を有し、
前記電極巻回体は、前記負極活物質非被覆部が、前記巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面を有し、
前記平坦面と前記電池缶の底部とが接合されており、
前記負極箔の厚みをt(mm)、前記中心軸から最も離れた接合箇所における前記負極活物質非被覆部の重なり枚数をm枚、前記電池缶の底部の厚みをT(mm)とし、Z=t×m/Tとしたとき、
0.05≦Z≦0.5を満足する
二次電池。
【請求項2】
m≧2を満足する
請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記電極巻回体の少なくとも負極側の端面に形成された溝を有する
請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記負極は、更に、長手方向の巻回開始側及び巻回終止側のそれぞれの端部に、負極活物質非被覆部を有する
請求項1から3までの何れかに記載の二次電池。
【請求項5】
請求項1から4までの何れかに記載の二次電池を有する電子機器。
【請求項6】
請求項1から4までの何れかに記載の二次電池を有する電動工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池、電子機器及び電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、電動工具や自動車といった高出力を要する用途に向けても開発されるようになってきている。高出力を行う一つの方法としては、電池から比較的大電流を流すハイレート放電が挙げられる。ハイレート放電では、大電流を流すことから、電池の内部抵抗を低くすることが望まれる。例えば、下記の特許文献1には、負極板の露出部を電池缶の缶底に直接接合した円筒形電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、負極板の露出部にレーザー光を照射して電池缶の缶底に溶接する方法が記載されている。しかし、溶接不良が発生する虞があり、低抵抗な電池を実現する技術としては不十分であった。
【0005】
従って、本発明は、リチウムイオン電池等の電池の内部抵抗をより低くした二次電池、及び、当該二次電池を有する電子機器及び電動工具を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
セパレータを介して帯状の正極と帯状の負極とが積層された構造を有する電極巻回体と、正極集電板とが、電池缶に収容された二次電池であって、
正極は、帯状の正極箔上に、正極活物質層が被覆された正極活物質被覆部と、正極活物質非被覆部とを有し、
負極は、帯状の負極箔上に、負極活物質層が被覆された負極活物質被覆部と、少なくとも負極箔の長手方向に延在する負極活物質非被覆部と、を有し、
電極巻回体は、負極活物質非被覆部が、巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面を有し、
平坦面と電池缶の底部とが接合されており、
負極箔の厚みをt(mm)、中心軸から最も離れた接合箇所における負極活物質非被覆部の重なり枚数をm枚、電池缶の底部の厚みをT(mm)とし、Z=t×m/Tとしたとき、
0.05≦Z≦0.5を満足する
二次電池である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の少なくとも実施形態によれば、二次電池の内部抵抗を小さくすることができる。なお、本明細書で例示された効果により本発明の内容が限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係るリチウムイオン電池の断面図である。
【
図4】
図4は、巻回前の正極、負極、及び、セパレータを示す図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る正極集電板の平面図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係るリチウムイオン電池の負極側の部分拡大断面図である。
【
図7】
図7は、溶接した箇所の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、溶接した箇所の他の例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、溶接した箇所の他の例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、実施例及び比較例におけるパラメータを説明するための図である。
【
図12】
図12は、本発明の応用例としての電池パックの説明に使用する接続図である。
【
図13】
図13は、本発明の応用例としての電動工具の説明に使用する接続図である。
【
図14】
図14は、本発明の応用例としての無人飛行機の説明に使用する接続図である。
【
図15】
図15は、本発明の応用例としての電動車両の説明に使用する接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
<一実施形態>
<変形例>
<応用例>
以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。なお、説明の理解を容易とするために、各図における一部の構成を拡大したり、若しくは縮小したり、一部の図示を簡略化する場合もある。
【0010】
<一実施形態>
[リチウムイオン電池の全体構成例]
本発明の一実施形態では、二次電池として、円筒形状のリチウムイオン電池を例にして説明する。
図1から
図7を参照しつつ、本実施形態に係るリチウムイオン電池(リチウムイオン電池1)の全体構成に関して説明する。
図1は、リチウムイオン電池1の概略断面図である。リチウムイオン電池1は、例えば、
図1に示すように、電池缶11の内部に電極巻回体20が収納されている円筒型のリチウムイオン電池1である。
【0011】
リチウムイオン電池1は、概略的には円筒状の電池缶11を有し、電池缶11の内部に、絶縁板12と、電極巻回体20とを備えている。なお、リチウムイオン電池1は、電池缶11の内部に、例えば、熱感抵抗(PTC)素子及び補強部材などのうちのいずれか1種類又は2種類以上をさらに備えていてもよい。
【0012】
(電池缶)
電池缶11は、主に、電極巻回体20を収納する部材である。電池缶11は、底部11Aを有しており、更に、底部11Aの外部側の面として外面11Bを有している。電池缶11は、例えば、一端面が開放されると共に他端面が閉塞された円筒状の容器である。即ち、電池缶11は、開放された一端面(開放端面11N)を有している。この電池缶11は、例えば、鉄、アルミニウム及びそれらの合金などの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。電池缶11の表面に、例えば、ニッケルなどの金属材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上が鍍金されていてもよい。
【0013】
(絶縁板)
絶縁板12は、電極巻回体20の巻回軸(電極巻回体20の端面の略中心を通り
図1のZ軸と平行な方向)に対して略垂直な面を有する円板状の板である。
【0014】
(かしめ構造)
電池缶11の開放端面11Nには、電池蓋14及び安全弁機構30がガスケット15を介してかしめられており、かしめ構造11R(クリンプ構造)が形成されている。これにより、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11は密閉されている。電池蓋14がリチウムイオン電池1の正極の出力端子であり、電池缶11の底部11Aがリチウムイオン電池1の負極の出力端子である。電池蓋14を含む部分をリチウムイオン電池1の正極側と称する。電池缶11の底部11Aを含む部分をリチウムイオン電池1の負極側と称する。
【0015】
(電池蓋)
電池蓋14は、主に、電池缶11の内部に電極巻回体20などが収納された状態において、その電池缶11の開放端面11Nを閉塞する部材である。この電池蓋14は、例えば、電池缶11の形成材料と同様の材料を含んでいる。電池蓋14のうちの中央領域は、例えば、+Z方向に突出している。これにより、電池蓋14のうちの中央領域以外の領域(周辺領域)は、例えば、安全弁機構30に接触している。
【0016】
(ガスケット)
ガスケット15は、主に、電池缶11(折り曲げ部11P)と電池蓋14との間に介在することにより、その折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を封止する部材である。ガスケット15の表面に、例えば、アスファルトなどが塗布されていてもよい。
【0017】
ガスケット15は、例えば、絶縁性材料のうちのいずれか1種類又は2種類以上を含んでいる。絶縁性材料の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリプロピレン(PP)などの高分子材料を用いることができる。中でも、絶縁性材料としては、ポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。電池缶11と電池蓋14とを互いに電気的に分離しながら、折り曲げ部11Pと電池蓋14との間の隙間を十分に封止することができるからである。
【0018】
(安全弁機構)
安全弁機構30は、主に、電池缶11の内部の圧力(内圧)が上昇した際に、必要に応じて電池缶11の密閉状態を解除することにより、その内圧を開放する。電池缶11の内圧が上昇する原因は、例えば、充放電時において電解液の分解反応に起因して発生するガスなどである。
【0019】
(電極巻回体)
円筒形状のリチウムイオン電池1では、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を挟んで積層され、且つ、渦巻き状に巻回されて電解液に含浸された状態で、電池缶11に収まっている。正極21は正極箔21Aの片面又は両面に正極活物質層21Bを形成したものであり、正極箔21Aの材料は例えば、アルミニウムやアルミニウム合金でできた金属箔である。負極22は負極箔22Aの片面又は両面に負極活物質層22Bを形成したものであり、負極箔22Aの材料は例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅や銅合金でできた金属箔である。セパレータ23は多孔質で絶縁性のあるフィルムであり、正極21と負極22とを電気的に絶縁しながら、イオンや電解液等の物質の移動を可能にしている。
【0020】
図2Aは巻回前の正極21を正面から視た図であり、
図2Bは
図2Aの正極21を側面から視た図である。正極21は、正極箔21Aの一方の主面及び他方の主面に正極活物質層21Bで被覆した部分(ドットを付した部分)を有するとともに、正極活物質層21Bで被覆していない部分である正極活物質非被覆部21Cを有する。なお、以下の説明において、正極活物質層21Bで被覆した部分を正極活物質被覆部21Bと適宜、称する。また、正極箔21Aの一方の主面に、正極活物質被覆部21Bが設けられる構成でもよい。
【0021】
図3Aは巻回前の負極22を正面から視た図であり、
図3Bは
図3Aの負極22を側面から視た図である。負極22は、負極箔22Aの一方の主面及び他方の主面に負極活物質層22Bで被覆した部分(ドットを付した部分)を有するとともに、負極活物質層22Bで被覆していない部分である負極活物質非被覆部22Cを有する。なお、以下の説明において、負極活物質層22Bで被覆した部分を負極活物質被覆部22Bと適宜、称する。また、負極箔22Aの一方の主面に、負極活物質被覆部22Bが設けられる構成でもよい。
【0022】
図3Aに示すように、負極活物質非被覆部22Cは、例えば、負極22の長手方向(
図3におけるX軸方向)に延在している第1の負極活物質非被覆部221Aと、負極22の巻回開始側において負極22の短手方向(
図3におけるY軸方向。幅方向とも適宜、称する)に延在している第2の負極活物質非被覆部221Bと、負極22の巻回終止側において負極22の短手方向(
図3におけるY軸方向)に延在している第3の負極活物質非被覆部221Cとを有している。なお、
図3Aにおいて、第1の負極活物質非被覆部221Aと第2の負極活物質非被覆部221Bとの境界、及び、第1の負極活物質非被覆部221Aと第3の負極活物質非被覆部221Cとの境界のそれぞれには点線を付している。
【0023】
本実施形態に係る円筒形状のリチウムイオン電池1では、電極巻回体20は正極活物質非被覆部21Cと第1の負極活物質非被覆部221Aとが互いに逆方向を向くようにしてセパレータ23を介して重ねられて巻回されている。略円筒形状を有する電極巻回体20の一方の端面に正極活物質非被覆21Cが露出して、他方の端面に第1の負極活物質非被覆部221Aが露出している。端面に正極活物質非被覆21Cが露出している部分を電極巻回体20の正極側と称する。端面に第1の負極活物質非被覆部221Aが露出している部分を電極巻回体20の負極側と称する。
【0024】
電極巻回体20の中心には貫通孔26が設けられている。具体的には、貫通孔26は、正極21、負極22及びセパレータ23が積層した積層物の略中心にできる孔部である。貫通孔26はリチウムイオン電池1の組み立て工程で、棒状の溶接器具(以下、溶接棒と適宜、称する)等を挿入する孔として使用される。
【0025】
電極巻回体20の詳細について説明する。
図4に正極21、負極22とセパレータ23を積層した巻回前の構造の一例を示す。正極21は、正極活物質被覆部21B(
図4においてドットが疎に付された部分)と正極活物質非被覆部21Cとの境界を被覆する絶縁層101(
図4における灰色の領域部分)とを更に有している。絶縁層101の幅方向の長さは、例えば、3mm程度である。セパレータ23を介して負極活物質被覆部22Bに対向する正極活物質非被覆部21Cの全ての領域が絶縁層101で覆われている。絶縁層101は、負極活物質被覆部22Bと正極活物質非被覆部21Cとの間に異物が侵入したときのリチウムイオン電池1の内部短絡を確実に防ぐ効果がある。また、絶縁層101は、リチウムイオン電池1に衝撃が加わったときに衝撃を吸収し、正極活物質非被覆部21Cの折れ曲がりや、負極22との短絡を確実に防ぐ効果がある。
【0026】
ここで、
図4に示すように、正極活物質非被覆部21Cの幅方向の長さをD5とし、第1の負極活物質非被覆部221Aの幅方向の長さをD6とする。一実施形態ではD5>D6であることが好ましく、例えばD5=7(mm)、D6=4(mm)である。正極活物質非被覆部21Cがセパレータ23の幅方向の一端から突出した部分の長さをD7とし、絶縁層22E及び第1の負極活物質非被覆部221Aがセパレータ23の幅方向の他端から突出した部分の長さをD8とした場合に、一実施形態ではD7>D8であることが好ましく、例えば、D7=4.5(mm)、D8=3(mm)である。
【0027】
正極箔21Aと正極活物質非被覆部21Cとは例えばアルミニウムなどからなり、負極箔22Aと負極活物質非被覆部22Cとは例えば銅などからなる。このように、一般的に正極活物質非被覆部21Cの方が負極活物質非被覆部22Cよりも柔らかい(ヤング率が低い)。このため、一実施形態では、D5>D6且つD7>D8であることがより好ましく、この場合、両極側から同時に同じ圧力で正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部22C(本例では、第1の負極活物質非被覆部221A)とが折り曲げられるとき、折り曲げられた部分のセパレータ23の先端から測った高さは正極21と負極22とで同じくらいになることがある。このとき、正極活物質非被覆部21Cが折り曲げられて適度に重なり合うので、リチウムイオン電池1の作製工程(詳細は後述)において、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24とのレーザー溶接による接合を容易に行うことができる。また、第1の負極活物質非被覆部221Aが折り曲げられて適度に重なり合うので、リチウムイオン電池1の作製工程において、第1の負極活物質非被覆部221Aの電池缶11の底部11Aとのレーザー溶接による接合を容易に行うことができる。
【0028】
(集電板)
通常のリチウムイオン電池では例えば、正極と負極との一か所ずつに電流取出し用のリードが溶接されているが、これでは電池の内部抵抗が大きく、放電時にリチウムイオン電池が発熱し高温になるため、ハイレート放電には適さない。そこで、本実施形態のリチウムイオン電池1では、電極巻回体20の一方の端面である端面41に正極集電板24を配置する。そして、正極集電板24と端面41に存在する正極活物質非被覆部21Cとを多点で溶接することで、リチウムイオン電池1の内部抵抗を低く抑え、ハイレート放電を可能としている。
【0029】
図5は、本実施形態に係る正極集電板24を示す図である。正極集電板24は電池缶11に収容される(
図1参照)。正極集電板24の材料は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金の単体若しくは複合材でできた金属板である。
図5に示すように、正極集電板24の形状は平坦な扇形をした扇状部31に、矩形の帯状部32が付いた形状になっている。扇状部31の中央付近に孔35があいていて、孔35の位置は貫通孔26に対応する位置である。
【0030】
図5のドットで示す部分は帯状部32に絶縁テープが貼付されているか絶縁材料が塗布された絶縁部32Aであり、図面のドット部より下側の部分は外部端子を兼ねた封口板への接続部32Bである。なお、貫通孔26に金属製のセンターピン(図示せず)を備えていない電池構造の場合には帯状部32が負極電位の部位と接触する可能性が低いため、絶縁部32Aが無くても良い。その場合には、正極21と負極22との幅を絶縁部32Aの厚さに相当する分だけ大きくして充放電容量を大きくすることができる。
【0031】
正極集電板24の扇状部31は扇形の形状をしているため、端面41の一部を覆うようになっている。全部を覆わないことにより、リチウムイオン電池1を組み立てる際に電極巻回体20へ電解液を円滑に浸透させることができ、且つ、リチウムイオン電池1が異常な高温状態や過充電状態になったときに発生したガスをリチウムイオン電池1外へ放出しやすくすることができる。
【0032】
(正極)
正極活物質層21Bは、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である正極材料(正極活物質)を少なくとも含み、さらに、正極結着剤及び正極導電剤などを含んでいてもよい。正極材料は、リチウム含有複合酸化物又はリチウム含有リン酸化合物が好ましい。リチウム含有複合酸化物は、例えば、層状岩塩型又はスピネル型の結晶構造を有している。リチウム含有リン酸化合物は、例えば、オリビン型の結晶構造を有している。
【0033】
正極結着剤は、合成ゴム又は高分子化合物を含んでいる。合成ゴムは、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴム及びエチレンプロピレンジエンなどである。高分子化合物は、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)及びポリイミドなどである。
【0034】
正極導電剤は、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック又はケッチェンブラックなどの炭素材料である。ただし、正極導電剤は、金属材料及び導電性高分子でもよい。
【0035】
(負極)
負極22を構成する負極箔22Aの表面は、負極活物質層22Bとの密着性向上のために粗面化されていることが好ましい。負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵及び放出することが可能である負極材料(負極活物質)を少なくとも含み、さらに、負極結着剤及び負極導電剤などを含んでいてもよい。
【0036】
負極材料は、例えば、炭素材料を含む。炭素材料は、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素、黒鉛、低結晶性炭素、又は非晶質炭素である。炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状又は鱗片状を有している。
【0037】
また、負極材料は、例えば金属系材料を含む。金属系材料の例としては、Li(リチウム)、Si(ケイ素)、Sn(スズ)、Al(アルミニウム)、Zr(亜鉛)、Ti(チタン)が挙げられる。金属系元素は、他の元素と化合物、混合物又は合金を形成しており、その例としては、酸化ケイ素(SiOx(0<x≦2))、炭化ケイ素(SiC)又は炭素とケイ素の合金、チタン酸リチウム(LTO)が挙げられる。
【0038】
(セパレータ)
セパレータ23は、樹脂を含む多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜の積層膜でもよい。樹脂は、ポリプロピレン及びポリエチレンなどである。セパレータ23は、多孔質膜を基材層として、その片面又は両面に樹脂層を含んでいてもよい。正極21及び負極22のそれぞれに対するセパレータ23の密着性が向上するため、電極巻回体20の歪みが抑制されるからである。
【0039】
樹脂層は、PVdFなどの樹脂を含んでいる。この樹脂層を形成する場合には、有機溶剤に樹脂が溶解された溶液を基材層に塗布したのち、その基材層を乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させたのち、その基材層を乾燥させてもよい。樹脂層は、無機粒子又は有機粒子を含んでいることが、耐熱性、電池の安全性向上の観点で好ましい。無機粒子の種類は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ベーマイト、タルク、シリカ、雲母などである。また、樹脂層に代えて、スパッタ法、ALD(原子層堆積)法などで形成された、無機粒子を主成分とする表面層を用いてもよい。
【0040】
(電解液)
電解液は、溶媒及び電解質塩を含み、必要に応じてさらに添加剤などを含んでいてもよい。溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒、又は水である。非水溶媒を含む電解液を非水電解液という。非水溶媒は、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステル又はニトリル(モノニトリル)などである。
【0041】
電解質塩の代表例はリチウム塩であるが、リチウム塩以外の塩を含んでいてもよい。リチウム塩は、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3SO3)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2SF6)などである。これらの塩を混合して用いることもでき、中でも、LiPF6、LiBF4を混合して用いることが、電池特性向上の観点で好ましい。電解質塩の含有量は特に限定されないが、溶媒に対して0.3mol/kgから3mol/kgであることが好ましい。
【0042】
(第1の負極活物質非被覆部の溶接箇所について)
ここで、
図6及び
図7を参照しつつ、第1の負極活物質非被覆部221Aが溶接される箇所について説明する。
図6は、本実施形態に係るリチウムイオン電池1の部分拡大断面図(
図1の右下付近を拡大した断面図)である。
図7は、リチウムイオン電池1の底部11Aを+Z方向に視た図である。
【0043】
図6に示すように、電極巻回体20は、第1の負極活物質非被覆部221Aが、巻回された構造の中心軸に向かって曲折し、重なり合うことによって形成された平坦面72を有する。平坦面72は、第1の負極活物質非被覆部221Aが少なくとも2層以上積層されて形成された面である。
【0044】
電池缶11の外面11Bにレーザー光LAを照射することにより溶接部81が形成される。溶接部81によって、平坦面72が電池缶11の底部11Aに接合されている。
【0045】
レーザー溶接は、例えば、レーザー光の出力を一定に保持しながら、照射位置を変化させる連続照射によって行われる。例えば、
図7に示すように、底部11Aの中心付近から外側方向に向かってレーザー光を連続照射することで溶接部81が形成される。本実施形態では、放射状に8個の溶接部81が形成されているが、溶接部81の個数は適宜、変更可能である。また、
図8に示すように、一定の領域(黒色を付した扇形状の領域)を溶接することで溶接部81が形成されてもよいし、
図9に示すように、レーザー光を間欠的に照射することで溶接部81が形成されてもよい。
【0046】
なお、本明細書における「平坦面」とは、完全に平坦な面のみならず、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24、及び、第1の負極活物質非被覆部221Aと電池缶11の底部11Aとが接合可能な程度において、多少の凹凸や表面粗さを有する表面も含む意味である。
【0047】
[リチウムイオン電池の作製方法]
次に、
図10Aから
図10Fを参照して、一実施形態に係るリチウムイオン電池1の作製方法について説明する。まず、正極活物質を、帯状の正極箔21Aの表面に塗着させ、これを正極活物質被覆部21Bとし、負極活物質を、帯状の負極箔22Aの表面に塗着させ、これを負極活物質被覆部22Bとした。このとき、正極箔21Aの幅方向の一端側に正極活物質が塗着されていない正極活物質非被覆部21Cを設け、負極箔22Aに、負極活物質が塗着されていない負極活物質非被覆部22C(第1の負極活物質非被覆部221A、第2の負極活物質非被覆部221B及び第3の負極活物質非被覆部221C)を設けた。次に、正極21と負極22とに対して乾燥等の工程を行った。そして、正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部22Cとが逆方向となるようにセパレータ23を介して重ね、中心軸に貫通孔26ができるように渦巻き状に巻回して、
図10Aのような電極巻回体20を作製した。
【0048】
次に、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)等の端を端面41(正極側の端面)及び端面42(負極側の端面)に対して垂直に押し付けることで、
図10Bに示すように、端面41の一部と端面42の一部とに溝43を作製した。この方法により、貫通孔26から放射状に延びる溝43を作製した。溝43は、例えば、端面41,42のそれぞれの外縁部27,28から貫通孔26まで延在している。例えば、端面42には、
図7に示すように、放射状に8個の溝43が略等間隔に形成されている。なお、溝43の数や配置は適宜、変更可能である。
【0049】
そして、
図10Cのように、両極側から同時に同じ圧力を端面41,42に対して略垂直方向に加え、正極活物質非被覆部21C及び負極活物質非被覆部22C(本例では、第1の負極活物質非被覆部221A)を巻回構造の中心軸に向かって折り曲げ、端面41,42が平坦面となるように形成した。このとき、端面41にある正極活物質非被覆部21C及び端面42にある第1の負極活物質非被覆部221Aのそれぞれが、中心軸に向かって曲折し重なり合うように、平板の板面などで荷重を加えた。その後、端面41に正極集電板24の扇状部31をレーザー溶接し、接合した。
【0050】
続いて、
図10Dに示すように、正極集電板24の帯状部32を折り曲げ、正極集電板24に絶縁板12を貼り付け、
図10Eに示される電池缶11内に上記のように組立てを行った電極巻回体20を挿入した。そして、電池缶11の底部11Aの外面11Bにレーザー光を照射することによって、平坦面72を底部11Aに接合した。電解液を電池缶11内に注入した後、
図10Fに示すように、ガスケット15及び電池蓋14にて封止を行った。以上のようにして、リチウムイオン電池1を作製した。
【0051】
なお、絶縁板12は、絶縁テープであってもよい。また、接合方法は、レーザー溶接以外の他の方法であってもよい。また、溝43は、正極活物質非被覆部21Cを曲折した後も平坦面内に残っており、溝43の無い部分が、正極集電板24と接合されるが、溝43が正極集電板24の一部と接合されていてもよい。
【0052】
[本実施形態により得られる効果]
本実施形態では、第1の負極活物質非被覆部221Aを電池缶11の底部11Aに直接接合することによって、より低抵抗となるリチウムイオン電池1を実現することができる。また、第1の負極活物質非被覆部221Aを中心軸に向かって折り曲げることによって、複数の第1の負極活物質非被覆部221Aが層状に重なった平坦面72を形成することができる。このため、底部11Aの外面11Bにレーザー光を照射した場合に、照射箇所の厚みを確保することができるので、レーザーが底部11Aを貫通して電極巻回体20にダメージを与えてしまったり、底部11Aに貫通孔ができてしまい、ここから電解液が漏液してしまうことを防止することができる。
【0053】
更に、本実施形態では、電極巻回体20の端面41,42のそれぞれの一部に溝43が形成されている。溝43によって第1の負極活物質非被覆部221Aが規則正しく折り曲がることから、第1の負極活物質非被覆部221Aの重なり枚数が2枚以上重なった平坦面72を形成することができる。
【0054】
本実施形態では、電極巻回体20は、正極活物質非被覆部21Cと負極活物質非被覆部22Cとが逆方向を向くように重ねて巻回してあるので、端面41には、正極活物質非被覆部21Cが集まり、電極巻回体20の端面42には、負極活物質非被覆部22Cが集まる。係る正極活物質非被覆部21C及び第1の負極活物質非被覆部221Aが曲折されて、端面41,42が平坦面となっている。曲折する方向は端面41,42のそれぞれの外縁部27,28から中心軸に向かう方向であり、巻回された状態で隣接する周の活物質非被覆部同士が重なって曲折している。端面41が平坦面となることで、正極活物質非被覆部21Cと正極集電板24との接触を良好にすることができ、且つ、第1の負極活物質非被覆部221Aと電池缶11の底部11Aとの接触を良好にすることができる。また、端面41,42が平坦面となっていることで、リチウムイオン電池1の低抵抗化を実現することができる。
【0055】
また、正極活物質非被覆部21C及び第1の負極活物質非被覆部221Aを曲折することで、一見、端面41,42を平坦面にすることが可能に思われるが、曲折する前に何らの加工もないと、曲折するときに端面41,42にシワやボイド(空隙、空間)が発生して、端面41,42が平坦面とならない虞がある。ここで、「シワ」や「ボイド」とは曲折した正極活物質非被覆部21Cや第1の負極活物質非被覆部221Aに偏りが生じ、端面41,42が平坦面とはならない部分を意味する。本実施形態では、端面41及び端面42側のそれぞれに貫通孔26から放射方向に予め溝43が形成されるようにしている。溝43が形成されていることで、このシワやボイドの発生を抑制することができ、端面41,42をより平坦とすることができる。なお、第1の負極活物質非被覆部221Aのみを曲折してもよいが、好ましくは、正極活物質非被覆部21C及び第1の負極活物質非被覆部221Aの両方が曲折される。
【0056】
リチウムイオン電池1の作製時において、薄い平板(例えば厚さ0.5mm)などの端を端面41,42に対して垂直に押し付ける際に(
図10Bに示す工程を行う際に)、電極巻回体20の巻回開始側(電極巻回体20の最内周にある正極又は負極の長手方向の端側)において、負極活物質被覆部22Bから負極活物質が剥離することがある。この剥離は端面42に対して押し付ける際に発生するストレスが原因と考えられる。剥離した負極活物質が電極巻回体20内部に侵入し、これにより内部ショートが発生する虞がある。本実施形態では、第2の負極活物質非被覆部221B及び第3の負極活物質非被覆部221Cを設けているので負極活物質の剥離を防ぐことができ、内部ショートの発生を防止できる。係る効果は、第2の負極活物質非被覆部221B及び第3の負極活物質非被覆部221Cの一方のみを設ける構成によっても得られるが、両方設けることがより好ましい。
【0057】
電極巻回体20の巻回終止側において、負極22は、正極活物質被覆部21Bに対向しない側の主面で、負極活物質非被覆部22Cの領域を有することができる。正極活物質被覆部21Bに対向しない主面に負極活物質被覆部22Bを有したとしても、それは充放電への寄与が低いと考えられるからである。負極活物質非被覆部22Cの領域は、電極巻回体20の3/4周以上5/4周以下であることが好ましい。このとき、充放電への寄与が低い負極活物質被覆部22Bを設けていないため、同じ電極巻回体20の容積に対して、初期容量を高くすることができる。
【実施例】
【0058】
以下、上記のようにして作製したリチウムイオン電池1を用い、内部抵抗の違いを比較した実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
以下の全ての実施例及び比較例において、電池サイズを21700(直径21mm、高さ70mm)とし、正極活物質被覆部21Bの幅方向の長さを59(mm)とし、負極活物質被覆部22Bの幅方向の長さを62(mm)とし、セパレータ23の幅方向の長さを64(mm)とした。セパレータ23を正極活物質被覆部21Bと負極活物質被覆部22Bとの全範囲を覆うように重ね、正極活物質被覆部21Bの先端からセパレータ23の先端まで距離を1.0(mm)とし、負極活物質被覆部22Bの先端からセパレータ23の先端までの距離を2.5(mm)とした。溝43の数を8とし、略等角間隔となるように配置した。巻回構造における隣接する正極活物質非被覆部21C同士の間隔(又は、隣接する負極活物質非被覆部22C同士の間隔)を約0.2mmとなるようにした。
【0059】
図11は、第1の負極活物質非被覆部221Aと電池缶11の底部11Aとの溶接部81付近の断面を示している。中心軸付近から電極巻回体20の側面から距離aの地点まで所定の出力でレーザー光LAを照射することで溶接を行った。第1の負極活物質非被覆部221Aの重なり枚数mは、
図11の距離aの地点の直下における第1の負極活物質非被覆部221Aが溶接されている枚数である。距離aの地点とは、レーザー光LAで形成された軌跡のうち、中心軸から最も遠い地点である。例えば、リチウムイオン電池1を中心軸に平行な面で切断し、溶接部81付近をマイクロスコープ等で観察(断面観察)することで重なり枚数を確認することができる。
【0060】
[実施例1から3]
実施例1から3では、
図11のように、中心軸から最も離れた接合箇所における負極箔22A、即ち、負極箔22Aの一枚当たりの厚みを(例えば平均厚み)t(mm)とし、第1の負極活物質非被覆部221Aの重なり枚数をmとした。また、電池缶11の底部11Aの厚みをT(mm)とした。電池缶11の底部11Aの厚みは、電池缶11の母材の厚みということもできる。また、Z=t×m/T(電池缶11の底部11Aの厚みに対する、距離aまでの地点における重なった第1の負極活物質非被覆部221Aの厚みの割合)としたとき、実施例1から3では、0.05≦Z≦0.5となるようにした。
【0061】
[比較例1から3]
t、m、T、及び、Zについては実施例と同様に定義した。比較例1ではZ<0.05(具体的には0.040)とし、比較例2ではZ>0.5(具体的には0.540)とし、比較例3ではm=1とした。実施例及び比較例とも、t、m、T、及び、Zの具体的な数値は表1に記載した。
【0062】
[評価]
上述したリチウムイオン電池1に対して評価を行った。1つの実施例又は比較例について試験電池数を30本とし、レーザー溶接後に目視で観察して穴あきやスパッタなどの溶接不良が見つかった本数を溶接不良発生の数とした。完成した全ての電池の内部抵抗(直流抵抗)を計測し、算出した平均値が11.0(mΩ)以下をOKと判定し、それ以外をNGと判定した。直流抵抗は、放電電流を5秒間で0(A)から100(A)まで上昇させたときの電圧の傾きを算出することで得られる。以下に、その結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
実施例1から3では、電池の内部抵抗は11.0(mΩ)以下となり、溶接不良が発生しなかったのに対し、比較例1から3では、セル抵抗が11.0(mΩ)より大きく、溶接不良が発生した。具体的には、比較例1ではZが下限値より小さいため底部11Aが貫通しこれに起因して溶接不良が発生した。比較例2では底部11Aの厚みに対して負極箔の重なり枚数が小さすぎこれに起因して溶接不良が発生した。また、比較例3では、重なり枚数が1枚であるため、レーザー光LAの熱で底部11Aに穴があき、これに起因して溶接不良が発生した。表1から、実施例1から3のように、0.05≦Z≦0.5のとき、リチウムイオン電池1の内部抵抗の低抵抗化を実現できた。
【0065】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明の内容は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0066】
本発明は、正極活物質非被覆部21Cが折り曲げられていないタブレス構造の電池にも適用可能である。また、第2の負極活物質非被覆部221B及び第3の負極活物質非被覆部221Cが設けられる構成が好ましいが、これらが無いリチウムイオン電池に対しても本発明を適用することができる。
実施例及び比較例では、溝43の数を8としていたが、これ以外の数であってもよい。また、電池サイズを21700(直径21mm,高さ70mm)としていたが、18650(直径18mm,高さ65mm)やこれら以外のサイズであってもよい。
扇状部31の形状は、扇形の形状以外の形状であってもよい。
【0067】
本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明は、リチウムイオン電池以外の他の電池や、円筒形状以外の電池(例えば、ラミネート型電池、角型電池、コイン型電池、ボタン型電池)に適用することも可能である。この場合において、「電極巻回体の端面」の形状は、円筒形状のみならず、楕円形状や扁平形状なども採り得る。
【0068】
<応用例>
(電池パックの例)
図12は、本発明の一実施形態に係る電池(以下、二次電池と適宜称する)を電池パック300に適用した場合の回路構成例を示すブロック図である。電池パック300は、組電池301、外装、充電制御スイッチ302aと放電制御スイッチ303aとを備えるスイッチ部304、電流検出抵抗307、温度検出素子308、及び、制御部310を備えている。
【0069】
また、電池パック300は、正極端子321及び負極端子322を備え、充電時には正極端子321及び負極端子322がそれぞれ充電器の正極端子、負極端子に接続され、充電が行われる。また、電子機器使用時には、正極端子321及び負極端子322がそれぞれ電子機器の正極端子、負極端子に接続され、放電が行われる。
【0070】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列及び/又は並列に接続してなる。この二次電池301aとしては本発明の二次電池を適用できる。なお、
図12では、6つの二次電池301aが、2並列3直列(2P3S)に接続された場合が例として示されているが、その他、u並列v直列(u,vは整数)のように、どのような接続方法でもよい。
【0071】
スイッチ部304は、充電制御スイッチ302a及びダイオード302b、ならびに放電制御スイッチ303a及びダイオード303bを備え、制御部310によって制御される。ダイオード302bは、正極端子321から組電池301の方向に流れる充電電流に対して逆方向で、負極端子322から組電池301の方向に流れる放電電流に対して順方向の極性を有する。ダイオード303bは、充電電流に対して順方向で、放電電流に対して逆方向の極性を有する。なお、本例では+側にスイッチ部304を設けているが、-側に設けても良い。
【0072】
充電制御スイッチ302aは、電池電圧が過充電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に充電電流が流れないように充放電制御部によって制御される。充電制御スイッチ302aのOFF後は、ダイオード302bを介することによって放電のみが可能となる。また、充電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる充電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0073】
放電制御スイッチ303aは、電池電圧が過放電検出電圧となった場合にOFFされて、組電池301の電流経路に放電電流が流れないように制御部310によって制御される。放電制御スイッチ303aのOFF後は、ダイオード303bを介することによって充電のみが可能となる。また、放電時に大電流が流れた場合にOFFされて、組電池301の電流経路に流れる放電電流を遮断するように、制御部310によって制御される。
【0074】
温度検出素子308は例えばサーミスタであり、組電池301の近傍に設けられ、組電池301の温度を測定して測定温度を制御部310に供給する。電圧検出部311は、組電池301及びそれを構成する各二次電池301aの電圧を測定し、この測定電圧をA/D変換して、制御部310に供給する。電流測定部313は、電流検出抵抗307を用いて電流を測定し、この測定電流を制御部310に供給する。
【0075】
スイッチ制御部314は、電圧検出部311及び電流測定部313から入力された電圧及び電流を基に、スイッチ部304の充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aを制御する。スイッチ制御部314は、二次電池301aのいずれかの電圧が過充電検出電圧若しくは過放電検出電圧以下になったとき、また、大電流が急激に流れたときに、スイッチ部304に制御信号を送ることにより、過充電及び過放電、過電流充放電を防止する。
【0076】
ここで、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、過充電検出電圧が例えば4.20V±0.05Vと定められ、過放電検出電圧が例えば2.4V±0.1Vと定められる。
【0077】
充放電スイッチは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチを使用できる。この場合MOSFETの寄生ダイオードがダイオード302b及び303bとして機能する。充放電スイッチとして、Pチャンネル型FETを使用した場合は、スイッチ制御部314は、充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aのそれぞれのゲートに対して、制御信号DO及びCOをそれぞれ供給する。充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aはPチャンネル型である場合、ソース電位より所定値以上低いゲート電位によってONする。すなわち、通常の充電及び放電動作では、制御信号CO及びDOをローレベルとし、充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aをON状態とする。
【0078】
そして、例えば過充電若しくは過放電の際には、制御信号CO及びDOをハイレベルとし、充電制御スイッチ302a及び放電制御スイッチ303aをOFF状態とする。
【0079】
メモリ317は、RAMやROMからなり例えば不揮発性メモリであるEPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)などからなる。メモリ317では、制御部310で演算された数値や、製造工程の段階で測定された各二次電池301aの初期状態における電池の内部抵抗値などが予め記憶され、また適宜、書き換えも可能である。また、二次電池301aの満充電容量を記憶させておくことで、制御部310とともに例えば残容量を算出することができる。
【0080】
温度検出部318では、温度検出素子308を用いて温度を測定し、異常発熱時に充放電制御を行ったり、残容量の算出における補正を行ったりする。
【0081】
(電子機器等の例)
上述した本発明の二次電池は、例えば電子機器や電動車両、電動式航空機、蓄電装置などの機器に搭載又は電力を供給するために使用することができる。
【0082】
電子機器として、例えばノート型パソコン、スマートフォン、タブレット端末、PDA(携帯情報端末)、携帯電話、ウェアラブル端末、コードレスフォン子機、ビデオムービー、デジタルスチルカメラ、電子書籍、電子辞書、音楽プレイヤー、ラジオ、ヘッドホン、ゲーム機、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機などが挙げられる。
【0083】
また、電動車両としては鉄道車両、ゴルフカート、電動カート、電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などが挙げられ、これらの駆動用電源又は補助用電源として用いられる。蓄電装置としては、住宅をはじめとする建築物用又は発電設備用の電力貯蔵用電源などが挙げられる。
【0084】
(電動工具の一例)
図13を参照して、本発明が適用可能な電動工具例えば電動ドライバの一例について概略的に説明する。電動ドライバ431は、本体内にDCモータ等のモータ433が収納されている。モータ433の回転がシャフト434に伝達され、シャフト434によって被対象物にねじが打ち込まれる。電動ドライバ431には、ユーザが操作するトリガースイッチ432が設けられている。
【0085】
電動ドライバ431の把手の下部筐体内に、電池パック430及びモータ制御部435が収納されている。電池パック430として本発明の二次電池を使用することができる。モータ制御部435は、モータ433を制御する。モータ433以外の電動ドライバ431の各部が、モータ制御部435によって制御されてもよい。図示しないが電池パック430と電動ドライバ431はそれぞれに設けられた係合部材によって係合されている。電池パック430及びモータ制御部435のそれぞれにマイクロコンピュータが備えられている。電池パック430からモータ制御部435に対して電池電源が供給されると共に、両者のマイクロコンピュータ間で電池パック430の情報が通信される。
【0086】
電池パック430は、例えば、電動ドライバ431に対して着脱自在とされる。電池パック430は、電動ドライバ431に内蔵されていてもよい。電池パック430は、充電時には充電装置に装着される。なお、電池パック430が電動ドライバ431に装着されているときに、電池パック430の一部が電動ドライバ431の外部に露出し、露出部分をユーザが視認できるようにしてもよい。例えば、電池パック430の露出部分にLEDが設けられ、LEDの発光及び消灯をユーザが確認できるようにしてもよい。
【0087】
モータ制御部435は、例えば、モータ433の回転/停止、並びに回転方向を制御する。さらに、過放電時に負荷への電源供給を遮断する。トリガースイッチ432は、例えば、モータ433とモータ制御部435の間に挿入され、ユーザがトリガースイッチ432を押し込むと、モータ433に電源が供給され、モータ433が回転する。ユーザがトリガースイッチ432を戻すと、モータ433の回転が停止する。
【0088】
(無人航空機)
本発明の二次電池を電動式航空機用の電源に適用した例について、
図14を参照して説明する。本発明の二次電池は、無人航空機(所謂ドローン)の電源に対して適用できる。
図14は、無人航空機の平面図である。中心部としての円筒状又は角筒状の胴体部と、胴体部の上部に固定された支持軸442a~442fとから機体が構成される。一例として、胴体部が6角筒状とされ、胴体部の中心から6本の支持軸442a~442fが等角間隔で放射状に延びるようになされている。胴体部及び支持軸442a~442fは、軽量で強度の高い材料から構成されている。
【0089】
支持軸442a~442fの先端部には、回転翼の駆動源としてのモータ443a~443fがそれぞれ取り付けられている。モータ443a~443fの回転軸に回転翼444a~444fが取り付けられている。各モータを制御するためのモータ制御回路を含む回路ユニット445は支持軸442a~442fが交わる中心部(胴体部の上部)に取り付けられている。
【0090】
さらに、胴体部の下側の位置に動力源としてのバッテリ部(不図示)が配置されている。バッテリ部は、180度の対向間隔を有するモータ及び回転翼の対に対して電力を供給するように3個の電池パックを有している。各電池パックは、例えばリチウムイオン二次電池と充放電を制御するバッテリ制御回路とを有する。電池パックとして本発明の二次電池を使用することができる。モータ443a及び回転翼444aと、モータ443d及び回転翼444dとが対を構成する。同様に、(モータ443b,回転翼444b)と(モータ443e,回転翼444e)とが対を構成し、(モータ443c,回転翼444c)と(モータ443f,回転翼444f)とが対を構成する。これらの対と電池パックとが等しい数とされている。
【0091】
(車両用蓄電システム)
本発明を電動車両用の蓄電システムに適用した例について、
図15を参照して説明する。
図15に、本発明が適用されるシリーズハイブリッドシステムを採用するハイブリッド車両の構成の一例を概略的に示す。シリーズハイブリッドシステムはエンジンで動かす発電機で発電された電力、あるいはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、電力駆動力変換装置で走行する車である。
【0092】
このハイブリッド車両600には、エンジン601、発電機602、電力駆動力変換装置603、駆動輪604a、駆動輪604b、車輪605a、車輪605b、バッテリ608、車両制御装置609、各種センサ610、充電口611が搭載されている。バッテリ608に対して、上述した本発明の二次電池を適用できる。
【0093】
ハイブリッド車両600は、電力駆動力変換装置603を動力源として走行する。電力駆動力変換装置603の一例は、モータである。バッテリ608の電力によって電力駆動力変換装置603が作動し、この電力駆動力変換装置603の回転力が駆動輪604a、604bに伝達される。なお、必要な個所に直流-交流(DC-AC)あるいは逆変換(AC-DC変換)を用いることによって、電力駆動力変換装置603としては交流モータでも直流モータでも適用可能である。各種センサ610は、車両制御装置609を介してエンジン回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御したりする。各種センサ610には、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどが含まれる。
【0094】
エンジン601の回転力は発電機602に伝えられ、その回転力によって発電機602により生成された電力をバッテリ608に蓄積することが可能である。
【0095】
図示しない制動機構によりハイブリッド車両600が減速すると、その減速時の抵抗力が電力駆動力変換装置603に回転力として加わり、この回転力によって電力駆動力変換装置603により生成された回生電力がバッテリ608に蓄積される。
【0096】
バッテリ608は、ハイブリッド車両600の外部の電源に接続されることで、その外部電源から充電口611を入力口として電力供給を受け、受けた電力を蓄積することも可能である。
【0097】
図示しないが、二次電池に関する情報に基づいて車両制御に関する情報処理を行なう情報処理装置を備えていても良い。このような情報処理装置としては、例えば、電池の残量に関する情報に基づき、電池残量表示を行う情報処理装置などがある。
【0098】
なお、以上は、エンジンで動かす発電機で発電された電力、或いはそれをバッテリに一旦貯めておいた電力を用いて、モータで走行するシリーズハイブリッド車を例として説明した。しかしながら、エンジンとモータの出力がいずれも駆動源とし、エンジンのみで走行、モータのみで走行、エンジンとモータ走行という3つの方式を適宜切り替えて使用するパラレルハイブリッド車に対しても本発明は有効に適用可能である。さらに、エンジンを用いず駆動モータのみによる駆動で走行する所謂、電動車両に対しても本発明は有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1・・・リチウムイオン電池、11・・・電池缶、11A・・・電池缶の底部、12・・・絶縁板、21・・・正極、21A・・・正極箔、21B・・・正極活物質層、21C・・・正極活物質非被覆部、22・・・負極、22A・・・負極箔、22B・・・負極活物質層、22C・・・負極活物質非被覆部、23・・・セパレータ、24・・・正極集電板、26・・・貫通孔、41、42・・・端面、43・・・溝、72・・・平坦面、221A・・・第1の負極活物質非被覆部、221B・・・第2の負極活物質非被覆部、221C・・・第3の負極活物質非被覆部