(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】車両用空調ダクト周辺構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20240528BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240528BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240528BHJP
【FI】
B60K11/06
B60H1/00 102T
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2023011524
(22)【出願日】2023-01-30
(62)【分割の表示】P 2018210370の分割
【原出願日】2018-11-08
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】星野 真一
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-329542(JP,A)
【文献】特開2004-149033(JP,A)
【文献】実開昭55-028501(JP,U)
【文献】実開昭51-036850(JP,U)
【文献】特開2006-141153(JP,A)
【文献】特開昭57-182507(JP,A)
【文献】特開2001-088543(JP,A)
【文献】特開2014-024382(JP,A)
【文献】特開2001-097246(JP,A)
【文献】特開2004-237871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60H 1/00
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両床面を形成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの上に配置されるバッテリユニットと、
前記バッテリユニットと前記フロアパネルとの間に通される空調ダクトと、
前記バッテリユニットの車両後方に位置し、車幅方向に延びて前記フロアパネルの上に配置されるクロスメンバと、
前記フロアパネルおよび前記クロスメンバを上から覆うカーペットと、を備える車両用空調ダクト周辺構造において、
前記空調ダクトは、前記バッテリユニットの後端まで到達して前記クロスメンバに向かって延びる部位を有し、
前記部位は、前記クロスメンバとともに前記カーペットを挟み該部位の後端に前記クロスメンバの上面よりも高い位置で車室内に空調風を吹き出す吹出口を有することを特徴とする車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項2】
前記部位は、前記バッテリユニットの下から上方に傾斜する傾斜部を有することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項3】
前記カーペットは、前記部位と前記クロスメンバとで挟まれる箇所が張った状態で設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項4】
当該車両用空調ダクト周辺構造はさらに、前記カーペットの下に位置し前記フロアパネルに設置され前記空調ダクトを下方から支持するダクト支持部を備え、
前記部位は、前記ダクト支持部によって前記フロアパネルに固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項5】
車両床面を形成するフロアパネルと、
前記フロアパネルの上に配置されるバッテリユニットと、
前記バッテリユニットと前記フロアパネルとの間に通される空調ダクトと、
前記バッテリユニットの車両後方に位置し、車幅方向に延びて前記フロアパネルの上に配置されるクロスメンバと、
前記フロアパネルおよび前記クロスメンバを上から覆うカーペットと、を備える車両用空調ダクト周辺構造において、
前記空調ダクトは、前記バッテリユニットの下から前記クロスメンバまで上方に傾斜しながら延び該クロスメンバとともに前記カーペットを挟む傾斜部を備えることを特徴とする車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項6】
当該車両用空調ダクト周辺構造はさらに、少なくとも前記バッテリユニットの後端を覆う縦壁部を有するカバーを備え、
前記カバーは、前記縦壁部から前記クロスメンバに向かって張り出す張出部を有し、
前記張出部は、前記クロスメンバとともに前記カーペットを挟んでいることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項7】
当該車両用空調ダクト周辺構造はさらに、少なくとも前記バッテリユニットの後端を覆う縦壁部を有するカバーを備え、
前記縦壁部は、車両前方に突出した爪部を有し、
前記爪部に前記バッテリユニットの後端が当接していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項8】
前記空調ダクトの吹出口は、側面視において前記クロスメンバに近付くほど下方に傾斜する輪郭を有し、
前記カバーの張出部は、前記吹出口に対面していて該吹出口からの空調風を通す排出口を有し、
前記排出口は、前記吹出口の傾斜する輪郭に対応して傾斜していることを特徴とする請求項6または7に記載の車両用空調ダクト周辺構造。
【請求項9】
当該車両用空調ダクト周辺構造はさらに、前記カーペットの下に位置し前記フロアパネルに設置され前記空調ダクトを下方から支持するダクト支持部を備え、
前記傾斜部は、前記ダクト支持部に重なって固定される固定部を有することを特徴とする
請求項5に記載の車両用空調ダクト周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調ダクト周辺構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、例えば、空調ユニット(HVAC)から吹き出される空調風を車室内へ送る空調ダクトを備えている。空調ダクトによる空調風は、車室内の、特に後席まで送ることが要請されている。車両はまた、車両床面を形成するフロアパネルの上に搭載されたバッテリユニットを備えている。バッテリユニットは、さらなる車両の電動化に伴って容量が大きくなり、大型化する傾向にある。
【0003】
上記のように大型化したバッテリユニットを搭載する車両では、例えば特許文献1に記載のように、バッテリユニットと干渉しないよう、バッテリユニットの下側に空調用のダクトの吹出口を配置している。そして特許文献1に記載の空調ダクトの吹出口をバッテリユニットの車両後方まで延長すれば、空調風を車両後席へ送ることも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし車両によっては、バッテリユニットの車両後方にクロスメンバが配置されている場合がある。このクロスメンバは、車幅方向に延びていてフロアパネルの上面に接合されている。
【0006】
このようなクロスメンバを有する車両では、容量が大きく大型化したバッテリユニットとクロスメンバとの間隔が小さい。このため、空調ダクトの吹出口をバッテリユニットの車両後方まで延長しても、吹出口からの空調風は、クロスメンバに遮られ、十分な空調性能が得られない。
【0007】
一方、フロアパネルおよびクロスメンバは、カーペットにより上から覆われている。またカーペットは、バッテリユニットの下側に配置された空調ダクトのさらに下に位置している。このため、バッテリユニットからクロスメンバにかけてカーペットは浮き上がるように敷設される。すると吹出口からの空調風は、カーペットによっても遮られ、空調性能がさらに悪化するという問題も生じる。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、空調ダクトの吹出口からの空調風がクロスメンバおよびカーペットに遮られることを防止し、空調性能の悪化を防止できる車両用空調ダクト周辺構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる車両用空調ダクト周辺構造の代表的な構成は、車両床面を形成するフロアパネルと、フロアパネルの上に配置されるバッテリユニットと、バッテリユニットとフロアパネルとの間に通される空調ダクトとを備える車両用空調ダクト周辺構造において、車両用空調ダクト周辺構造はさらに、バッテリユニットの車両後方に位置し車幅方向に延びフロアパネルの上面に接合されるクロスメンバと、フロアパネルおよびクロスメンバを上から覆うカーペットとを備え、空調ダクトは、バッテリユニットの下からクロスメンバまで上方に傾斜しながら延びクロスメンバとともにカーペットを挟む傾斜部と、傾斜部の後端に形成されクロスメンバの上面よりも高い位置で車室内に空調風を吹き出す吹出口とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空調ダクトの吹出口からの空調風がクロスメンバおよびカーペットに遮られることを防止し、空調性能の悪化を防止できる車両用空調ダクト周辺構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係る車両用空調ダクト周辺構造を概略的に示す図である。(a)は、車両用空調ダクト周辺構造の上面図である。(b)は、(a)のカバーの上面図である。
【
図2】
図1の車両用空調ダクト周辺構造の一部を拡大して示す図である。
【
図3】
図2の車両用空調ダクト周辺構造のC矢視図である。
【
図4】
図1の車両用空調ダクト周辺構造のA-A断面図である。
【
図5】
図4の車両用空調ダクト周辺構造の一部を詳細に示す図である。
【
図6】
図1の車両用空調ダクト周辺構造のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調ダクト周辺構造の代表的な構成は、車両床面を形成するフロアパネルと、フロアパネルの上に配置されるバッテリユニットと、バッテリユニットとフロアパネルとの間に通される空調ダクトとを備える車両用空調ダクト周辺構造において、車両用空調ダクト周辺構造はさらに、バッテリユニットの車両後方に位置し車幅方向に延びフロアパネルの上面に接合されるクロスメンバと、フロアパネルおよびクロスメンバを上から覆うカーペットとを備え、空調ダクトは、バッテリユニットの下からクロスメンバまで上方に傾斜しながら延びクロスメンバとともにカーペットを挟む傾斜部と、傾斜部の後端に形成されクロスメンバの上面よりも高い位置で車室内に空調風を吹き出す吹出口とを有することを特徴とする。
【0013】
上記構成では、空調ダクトの傾斜部は、バッテリユニットの下からクロスメンバまで上方に傾斜しながら延び、さらに吹出口がクロスメンバの上面よりも高い位置にある。このため、吹出口からの空調風は、クロスメンバに遮られることなく、車室内に確実に拡散される。また傾斜部は、フロアパネルおよびクロスメンバを上から覆うカーペットをクロスメンバとともに挟むため、カーペットの浮きを抑えることができる。したがって上記構成によれば、吹出口からの空調風は、クロスメンバだけでなくカーペットにも遮られることがなく、空調性能の悪化を防止できる。
【0014】
上記の車両用空調ダクト周辺構造はさらに、少なくともバッテリユニットの後端および傾斜部の吹出口を覆うカバーを備え、カバーは、バッテリユニットの後端を覆っている縦壁部と、縦壁部の下端からクロスメンバに向かって張り出し吹出口を覆っている張出部とを有し、張出部は、クロスメンバとともにカーペットを挟んでいるとよい。
【0015】
このように、バッテリユニットの後端および傾斜部の吹出口をカバーで覆うことで、バッテリユニットの後端および傾斜部の吹出口を保護し、さらにこれらに乗員が触れることを防止することで乗員も保護できる。また、カバーは、縦壁部の下端からクロスメンバに向かって張出部が張り出しているため、バッテリユニットの後端とクロスメンバとの間の隙間に物が落ちて入り込むことを防止できる。さらに、張出部がクロスメンバとともにカーペットを抑えるため、空調ダクトの傾斜部だけでなくカバーによっても、カーペットの浮きを防止できる。
【0016】
上記の空調ダクトの吹出口は、側面視においてクロスメンバに近付くほど下方に傾斜する輪郭を有し、カバーの張出部は、吹出口に対面していて吹出口からの空調風を通す排出口を有し、排出口は、吹出口の傾斜する輪郭に対応して傾斜しているとよい。
【0017】
このように、カバーの張出部に形成された排出口は、空調ダクトの吹出口に対面しさらに吹出口の傾斜する輪郭に対応して傾斜している。このため、カバーの排出口によって、空調風を効率よく車室内に拡散させることができ、空調性能を維持できる。
【0018】
上記の排出口は矩形状を有し、その対角線の長さが所定の物品の幅よりも小さいとよい。このように、カバーの張出部に形成された矩形状の排出口は、その対角線の長さを所定の物品の幅(例えば、硬貨の直径)よりも小さく設定している。したがって、張出部の排出口が空調ダクトの吹出口に対面していても、物品は、排出口を通過できないため、吹出口内に落下することがない。
【0019】
上記の車両用空調ダクト周辺構造はさらに、カーペットの下に位置しフロアパネルに設置され空調ダクトを下方から支持するブラケットを備え、空調ダクトは、傾斜部から車幅方向に延びブラケットに重なってブラケットに固定される固定部を有するとよい。
【0020】
このように、空調ダクトは、固定部を介してブラケットに固定されているため、取付位置が安定する。したがって、空調ダクトでは、傾斜部とクロスメンバとでカーペットを確実に挟むことができるため、カーペットの浮きを確実に防止できる。
【実施例】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施例に係る車両用空調ダクト周辺構造100を概略的に示す図である。
図1(a)は、車両用空調ダクト周辺構造100の上面図である。
図1(b)は、
図1(a)のカバー102の上面図である。なお以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0023】
車両用空調ダクト周辺構造100は、
図1(a)に示す車両床面を形成するフロアパネル104を備える。フロアパネル104は、車幅方向中央で上方に凸となるトンネル部106を含んで構成されている。なおフロアパネル104は、例えばトンネル部106の左右を別々のパネルで形成してもよい。またフロアパネル104の左右の側端には、サイドシル108、110が配置されている。
【0024】
車両左側のサイドシル108とトンネル部106との間、さらには車両右側のサイドシル110とトンネル部106との間には、フロアアッパクロスメンバ112、114が配置されている。フロアアッパクロスメンバ112、114は、車幅方向に延びていて、フロアパネル104の上面に接合される。
【0025】
また車両用空調ダクト周辺構造100は、不図示の空調ユニットから吹き出される空調風を送る前側ダクト116を備える。前側ダクト116は、トンネル部106の側縁に沿って車両後方に延び、さらにフロアアッパクロスメンバ112を通って、
図1(a)に示すようにカバー102まで到達している。
【0026】
カバー102の車両後方には、フロアアッパクロスメンバ(以下、クロスメンバ118)が配置されている。クロスメンバ118は、サイドシル108とトンネル部106の間で車幅方向に延び、フロアパネル104の上面に接合されている。また、クロスメンバ118とサイドシル108の上面には、これらを跨ぐようにシートブラケット119が配置されている。なおサイドシル110とトンネル部106の間には、車幅方向に延びるフロアアッパクロスメンバ120がフロアパネル104の上面に接合されている。
【0027】
カバー102は、樹脂製であって、
図1(b)に示すように、例えば直方体の本体部122と、本体部122の車両後方側の縦壁部124と、張出部126とを有する。張出部126は、縦壁部124の下端128からクロスメンバ118(
図1(a)参照)に向かって張り出している。また張出部126には、車幅方向に並んだ複数の排出口130が形成されている。
【0028】
図2は、
図1の車両用空調ダクト周辺構造100の一部を拡大して示す図である。なお図中では、
図1のカバー102を省略している。
図3は、
図2の車両用空調ダクト周辺構造100のC矢視図である。
【0029】
車両用空調ダクト周辺構造100はさらに、後側ダクト(以下、空調ダクト132)と、ブラケット134と、リチウム電池パック(以下、バッテリユニット136)とを備える。空調ダクト132は、フロアアッパクロスメンバ112に形成された貫通孔138(
図3参照)を通された前側ダクト116に連結されている。なお
図3では、
図2に示す前側ダクト116、シートブラケット119およびバッテリユニット136を省略している。
【0030】
ブラケット134は、
図3に示すようにフロアパネル104に設置され、例えばバッテリ支持部140a、140b、140c、140dと、ダクト支持部142とを有する。バッテリ支持部140a、140b、140c、140dは、バッテリユニット136を下方から支持し、不図示のクリップなどによりバッテリユニット136を固定する。ダクト支持部142は、空調ダクト132に形成された固定部144に重ねられ、空調ダクト132を下方から支持し、クリップ146により空調ダクト132を固定する。
【0031】
空調ダクト132は、
図3に示すように車両後方に向かって延び、さらに途中で2つに分岐している。空調ダクト132は、
図2に示すバッテリユニット136の下側を通って、バッテリユニット136の後端148まで到達し、さらにクロスメンバ118に向かって延びている。
【0032】
そして空調ダクト132のうち、バッテリユニット136の後端148からクロスメンバ118まで延びる部位は、バッテリユニット136の下からクロスメンバ118まで上方に傾斜した傾斜部150、152を形成している(
図5参照)。また
図3に示すように傾斜部150、152の後端には、車室内(ここでは後席)に空調風を吹き出す吹出口154、156が形成されている。さらに傾斜部150から車幅方向左側に張り出した部位が固定部144となっている。このため、空調ダクト132は、固定部144を介してブラケット134に固定されることで取付位置が安定する。
【0033】
カバー102は、
図1(a)に示すように、バッテリユニット136に加え、空調ダクト132の傾斜部150、152の吹出口154、156(
図2参照)も覆っている。具体的には
図4に示すように、カバー102は、バッテリユニット136の後端148を縦壁部124で覆い、吹出口154、156を張出部126で覆っている。
【0034】
図4は、
図1の車両用空調ダクト周辺構造100のA-A断面図である。
図4は、
図3と同じ方向から見た状態で、
図1のA-A線すなわち
図3の空調ダクト132の固定部144を通る線で車両用空調ダクト周辺構造100を切断した様子を示している。
【0035】
張出部126の排出口130は、
図4に示すように吹出口154、156に対面していて、吹出口154、156からの空調風を通すことができる。また排出口130は、矩形状を有し、鎖線で示す対角線158の長さを所定の物品の幅(例えば、硬貨の直径)よりも小さく設定している。このため、張出部126の排出口130が空調ダクト132の吹出口154、156に対面していても、硬貨などの物品は、排出口130を通過できず、吹出口154、156内に落下することがない。
【0036】
図5は、
図4の車両用空調ダクト周辺構造100の一部を詳細に示す図である。
図5は、
図4とは異なる方向から見た状態で、車両用空調ダクト周辺構造100のうち空調ダクト132の傾斜部150、152の周囲を示している。
【0037】
吹出口154は、
図5に示すように側面視において、クロスメンバ118に近付くほど下方に傾斜する輪郭160を有する。なお吹出口156の輪郭も同様の形状となっている。さらに、排出口130は、吹出口154、156に対面するだけでなく、吹出口154、156の傾斜する輪郭160に対応している。したがって、カバー102の排出口130は、空調風を効率よく車室内に拡散させて、空調性能を維持できる。
【0038】
ここで車両用空調ダクト周辺構造100は、カーペット162をさらに備える。なおカーペット162は、
図1、
図2および
図3では図示を省略している。カーペット162は、
図4および
図5に示すように空調ダクト132とブラケット134との間に配置され、フロアパネル104およびクロスメンバ118を上から覆っている。ただし、カーペット162は、ブラケット134の一部、例えばバッテリ支持部140a、140b、140c、140dおよびダクト支持部142では切り欠かれて設置されている。
【0039】
空調ダクト132の傾斜部150、152は、
図5に示すようにクロスメンバ118とともにカーペット162を挟んでいる。またカバー102の張出部126は、その先端164でクロスメンバ118とともにカーペット162を挟んでいる。このため、カーペット162は、空調ダクト132の傾斜部150、152だけでなく、カバー102の張出部126によっても抑えられ、浮き上がることがない。
【0040】
また空調ダクト132は、固定部144を介してブラケット134に固定されて取付位置が安定しているため、傾斜部150、152とクロスメンバ118とでカーペット162を確実に挟んで、カーペット162の浮きを確実に防止できる。このため、吹出口154、156からの空調風は、カーペット162に遮られることがない。
【0041】
さらに、傾斜部150、152の吹出口154、156は、クロスメンバ118の上面よりも高い位置に設定されている。このため、吹出口154、156からの空調風は、クロスメンバ118にも遮られることがない。
【0042】
したがって車両用空調ダクト周辺構造100では、吹出口154、156からの空調風がクロスメンバ118およびカーペット162に遮られることがなく、車室内に確実に拡散されるため、空調性能の悪化を防止できる。
【0043】
またカバー102は、少なくともバッテリユニット136の後端148および傾斜部150、152の吹出口154、156を覆っている。このため、車両用空調ダクト周辺構造100では、バッテリユニット136の後端148および傾斜部150、152の吹出口154、156を保護し、さらにこれらに乗員が触れることを防止することで乗員も保護できる。
【0044】
またカバー102は、縦壁部124の下端128からクロスメンバ118に向かって張出部126が張り出している。このため、車両用空調ダクト周辺構造100では、バッテリユニット136の後端148とクロスメンバ118との間の隙間に物が落ちて入り込むことを防止できる。
【0045】
図6は、
図1の車両用空調ダクト周辺構造100のB-B断面図である。カバー102は、
図6に示すように、縦壁部124の下端128付近から車両前側に突出した爪部166を有する。この爪部166は、バッテリユニット136の後端148に形成された切欠部168に引っ掛かることで、カバー102をバッテリユニット136に確実に取付けることができる。
【0046】
さらに車両用空調ダクト周辺構造100では、カーペット162の浮きを防止できるため、バッテリユニット136の後端148とクロスメンバ118との間で、カーペット162を弛ませることなく、ある程度張った状態で設置できる(
図4および
図5参照)。その結果、フロアパネル104およびクロスメンバ118を覆うために必要とされるカーペット162の長さを短くでき、コストや重量を低減することもできる。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、車両用空調ダクト周辺構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100…車両用空調ダクト周辺構造、102…カバー、104…フロアパネル、106…トンネル部、108、110…サイドシル、112、114、120…フロアアッパクロスメンバ、116…前側ダクト、118…クロスメンバ、119…シートブラケット、122…本体部、124…縦壁部、126…張出部、128…縦壁部の下端、130…排出口、132…空調ダクト、134…ブラケット、136…バッテリユニット、138…貫通孔、140a、140b、140c、140d…バッテリ支持部、142…ダクト支持部、144…固定部、146…クリップ、148…バッテリユニットの後端、150、152…傾斜部、154、156…吹出口、158…排出口の対角線、160…吹出口の輪郭、162…カーペット、164…張出部の先端、166…爪部、168…切欠部