(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 43/16 20200101AFI20240528BHJP
B62J 43/23 20200101ALI20240528BHJP
B62J 25/04 20200101ALI20240528BHJP
【FI】
B62J43/16
B62J43/23
B62J25/04
(21)【出願番号】P 2023139282
(22)【出願日】2023-08-29
【審査請求日】2023-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】津島 寿夫
(72)【発明者】
【氏名】山村 理
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆世
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103879485(CN,A)
【文献】中国実用新案第213566289(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第103935438(CN,A)
【文献】中国実用新案第209225286(CN,U)
【文献】中国実用新案第206914535(CN,U)
【文献】欧州特許出願公開第2423087(EP,A1)
【文献】国際公開第2019/194048(WO,A1)
【文献】中国実用新案第201761592(CN,U)
【文献】Coco Hong,“EEC big wheel citycoco electric scooter with seat removable battery”,YouTube[online][video],2018年05月31日,[令和5年11月1日検索],インターネット<URL: https://www.youtube.com/watch?v=ZnEkbMGMPRU>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 25/04,43/00, 9/00,11/00,
B62K 19/00,
B62M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、
運転者の脚部が載置される低床のフロアボードと、
前記フロアボードの後部を上方から覆うシートと、
前記バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダと、
前記バッテリホルダを下側から支持するバッテリブラケットと、を備え、
前記シートと前記フロアボードの間のスペースが外部に露出し、
前記スペースに前記バッテリホルダが設置され、前記フロアボードの上方に前記バッテリホルダが位置付けられ
、
前記フロアボードの後部は反り上がっており、前記フロアボードの後部に切欠きが形成されており、前記切欠きを通じて前記フロアボード上に突き出た前記バッテリブラケットに前記バッテリホルダが支持され、
前記フロアボードの後部上面よりも前記バッテリが高くなるように、前記バッテリホルダに前記バッテリが保持されていることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
前記バッテリの上端部が下端部よりも前方になるように
前記バッテリが前傾していることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項3】
前記フロアボードの後方から立ち上がるサイドフレームを備え、
前記サイドフレームが前記バッテリよりも後方に位置することを特徴とする
請求項1に記載の鞍乗型車両。
【請求項4】
前記バッテリの上端部が下端部よりも前方になるように前記バッテリが前記サイドフレームに沿って前傾していることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両。
【請求項5】
前記バッテリホルダの全体が前記フロアボードの後端よりも前側で、前記フロアボードの車幅方向両端よりも内側に位置していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項6】
車体を車幅方向一方側に傾けた状態で自立させるサイドスタンドを備え、
前記バッテリホルダに対して前記サイドスタンド側から前記バッテリが着脱可能であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鞍乗型車両。
【請求項7】
バッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、
運転者の脚部が載置される低床のフロアボードと、
前記フロアボードの後部を上方から覆うシートと、
前記バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダと、を備え、
前記シートと前記フロアボードの間のスペースが外部に露出し、
前記スペースに前記バッテリホルダが設置され、前記フロアボードの上方に前記バッテリホルダが位置付けられ、
前記バッテリホルダの全体が前記フロアボードの後端よりも前側で、前記フロアボードの車幅方向両端よりも内側に位置し、前記バッテリの側方周辺の前記フロアボードが踏面として利用可能であることを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力によって走行する電動式の鞍乗型車両が開発されている。この種の鞍乗型車両として、低床のフロアボードの下方にバッテリが設置されたスクータタイプの車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の鞍乗型車両では、フロアボードの下方を一対のロアフレームが通り、一対のロアフレームの後端からシートに向けて一対のサイドフレームが後向きに立ち上がっている。シート下方の一対のサイドフレームの間には収容ボックスが設置されており、フロアボード下方の一対のロアフレームの間にはバッテリが設置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の鞍乗型車両では、フロアボードの下方に容易にバッテリを着脱することができない。シート下方の収容ボックスにバッテリを収容することも考えられるが、収容スペースを有効活用できなくなると共にバッテリの着脱性も悪い。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、バッテリの着脱性を向上すると共にシート下方のスペースを十分に確保することができる鞍乗型車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の鞍乗型車両は、バッテリの電力によって走行可能な鞍乗型車両であって、運転者の脚部が載置される低床のフロアボードと、前記フロアボードの後部を上方から覆うシートと、前記バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダと、前記バッテリホルダを下側から支持するバッテリブラケットと、を備え、前記シートと前記フロアボードの間のスペースが外部に露出し、前記スペースに前記バッテリホルダが設置され、前記フロアボードの上方に前記バッテリホルダが位置付けられ、前記フロアボードの後部は反り上がっており、前記フロアボードの後部に切欠きが形成されており、前記切欠きを通じて前記フロアボード上に突き出た前記バッテリブラケットに前記バッテリホルダが支持され、前記フロアボードの後部上面よりも前記バッテリが高くなるように、前記バッテリホルダに前記バッテリが保持されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の鞍乗型車両によれば、フロアボード上でバッテリホルダが外部に露出しているため、シートを開閉することなく、バッテリホルダに対して容易にバッテリを着脱することができる。また、シート下方の収容ボックスにバッテリが収容されることがなく、収容ボックスを有効活用することができる。シート下方にもフロアボードが位置しているため、バッテリの周辺もフロアボードの踏面として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】
図2の鞍乗型車両をA-A線に沿って切断した断面図である。
【
図5】
図4の車体後部をB-B線に沿って切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の鞍乗型車両は、バッテリホルダに着脱可能に保持されたバッテリの電力によって走行する。鞍乗型車両の低床のフロアボードには運転者の脚部が載置され、フロアボードの後部はシートによって上方から覆われている。フロアボードとシートの間のスペースが外部に露出しており、このスペースにはバッテリホルダが設置され、バッテリホルダがフロアボードの上方に位置付けられている。フロアボード上でバッテリホルダが外部に露出しているため、シートを開閉することなく、バッテリホルダに対して容易にバッテリを着脱することができる。また、シート下方の収容ボックスにバッテリが収容されることがなく、収容ボックスを有効活用することができる。シート下方にもフロアボードが位置しているため、バッテリの周辺もフロアボードの踏面として利用することができる。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例の鞍乗型車両について説明する。
図1は本実施例の鞍乗型車両の左側面図である。
図2は本実施例の鞍乗型車両の右側面図である。なお、以下の図では、鞍乗型車両から車体カバーを取り外した状態を示している。また、以下の図では、矢印Frは車両前方、矢印Reは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、鞍乗型車両1の車体フレーム10にはシート41前方に低床のフロアボード45が設置されている。車体フレーム10の前端部にはヘッドパイプ11が設けられており、ヘッドパイプ11から後斜め下方にフロントフレーム12が延びている。フロントフレーム12の下部には左右一対のロアフレーム13が接続され、一対のロアフレーム13がフロアボード45の下側を後方に延びている。一対のロアフレーム13の後部からシート41に向かって一対のサイドフレーム14が立ち上がり、一対のサイドフレーム14の上部が後方に屈曲してシートフレーム15が形成されている。
【0012】
ヘッドパイプ11にはステアリングシャフト(不図示)を介してフロントフォーク31が操舵可能に支持されている。ステアリングシャフトの上部にはハンドル32が設けられており、フロントフォーク31の下部には前輪33が回転可能に支持されている。一対のサイドフレーム14から後方にU字状の一対のリアフレーム16が延びており、一対のリアフレーム16の後端の一対のリアブラケット18には後輪34が回転可能に支持されている。また、リアブラケット18及びリアフレーム16の上部にはリアフェンダ35が取り付けられ、リアフェンダ35によって後輪34が上方から覆われている。
【0013】
一対のシートフレーム15上にはシート41が支持されており、シートフレーム15の下方には収容ボックス29が設置されている。収容ボックス29は一対のサイドフレーム14の内側に位置しており、収容ボックス29の上部の出し入れ口がシート41によって上方から覆われている。一対のロアフレーム13上にはフロアボード45が設置されており、フロアボード45上の踏面にはシート41に座った運転者の脚部が載置される。フロアボード45の後部上面にはバッテリホルダ50を介してバッテリ53が設置されており、フロアボード45の後部下側にはモータ60が設置されている。
【0014】
モータ60の出力軸にはドライブスプロケット36が設けられ、後輪34の車軸にはドリブンスプロケット37が設けられている。モータ60のドライブスプロケット36と後輪34のドリブンスプロケット37がチェーン38を介して連結されている。バッテリ53からモータ60に電力が供給されて、モータ60によってドライブスプロケット36、チェーン38、ドリブンスプロケット37を介して後輪34が駆動されている。左側のロアフレーム13にはサイドスタンド39が設けられており、サイドスタンド39を立てることによって車体が左側(車幅方向一方側)に傾けられた状態で自立される。
【0015】
電動式の鞍乗型車両1では、バッテリレイアウトによってはシート41下方の収容スペースが狭まると共にバッテリ53の着脱性が悪化する。例えば、シート下方にバッテリが設置されると、シート下方の収容スペースを十分に確保できない。また、フロアボード下方にバッテリが設置することも考えられるが、フロアボード下方に対してバッテリが着脱し難い。そこで、本実施例の鞍乗型車両1では、シート41とフロアボード45の間の外部スペースを利用して、外部スペースにバッテリホルダ50を設置して、フロアボード45の上方にバッテリホルダ50を位置付けている。
【0016】
以下、
図3及び
図4を参照して、鞍乗型車両の後部構造について説明する。
図3は本実施例の車体後部の右側面図である。
図4は
図2の鞍乗型車両をA-A線に沿って切断した断面図である。
【0017】
図3に示すように、一対のシートフレーム15上にはシート41が支持されており、収容ボックス29の前面よりもシート41が前方に突き出している。側面視にて収容ボックス29の前面は一対のサイドフレーム14と平行に形成され、一対のサイドフレーム14を覆うボディカバー26の内側に収容ボックス29が設置されている。ボディカバー26の内側では一対のサイドフレーム14の下部を連ねるフレームブリッジ21に収容ボックス29の下部が支持され、一対のシートフレーム15の後側を連ねるフレームブリッジ22に収容ボックス29の上部が支持されている。
【0018】
フロアボード45の後方からシート41に向けて一対のサイドフレーム14は立ち上がり、一対のサイドフレーム14よりも前方にシート41が突き出している。シート41の前半部はフロアボード45に対向しており、シート41の前半部によってフロアボード45の後部が上方から覆われている。一対のサイドフレーム14及び収容ボックス29がボディカバー26の内側に位置し、ボディカバー26の外側はフロアボード45とシート41に上下から挟まれた外部スペースになっている。フロアボード45とシート41の間の外部スペースが後方を除いて周囲に開放されている。
【0019】
フロアボード45とシート41の間の外部スペースにはバッテリホルダ50が設置され、バッテリホルダ50にはバッテリ53が着脱可能に保持されている。側面視にてサイドフレーム14にバッテリ53が重ならないように、バッテリ53よりも後方に一対のサイドフレーム14が位置付けられている。ボディカバー26からバッテリ53が外部に露出されることで、バッテリ53の着脱性が向上されている。また、バッテリ53によって収容ボックス29の収容スペースが狭められることがない。
【0020】
バッテリホルダ50がシート41前端とサイドフレーム14の間に位置している。バッテリホルダ50にバッテリ53が保持されると、バッテリ53もシート41前端よりも後方に位置付けられる。このように、運転者の脚部よりも後方のスペースを利用してバッテリ53が設置される。運転者が脚部を真下に下ろした状態では、バッテリ53が運転者の脚部に干渉することがなく、シート41前方のフロアボード45には脚部を載せるのに十分な踏面が確保される。また、バッテリホルダ50は車幅方向の中央に設置されており、バッテリ53の側方を運転者の脚部の踏面として利用することもできる。
【0021】
バッテリ53はサイドフレーム14に沿うようにバッテリホルダ50に保持されており、バッテリ53の後面の傾きがサイドフレーム14の傾きと略平行になっている。また、バッテリ53の上端部が下端部よりも前方になるように前傾している。バッテリ53がサイドフレーム14に近づけられると共に、バッテリ53の下端部が後方に位置付けられることでフロアボード45の踏面が広く確保されている。バッテリ53の真下にモータ60が設置されており、側面視にてバッテリ53とモータ60が上下に並べられることで、バッテリ53とモータ60がコンパクトに設置されている。
【0022】
フロアボード45が一対のロアフレーム13に下側から支持され、ロアフレーム13の下方にモータ60が位置付けられている。また、ロアフレーム13とサイドフレーム14の境界付近にリアフレーム16の基端部17が位置しており、このリアフレーム16の基端部17よりもモータ60が下方に位置付けられている。重量物であるモータ60が低位置にあるため、車体の重心が下がって走行安定性が向上する。さらに、停車状態でモータ60の駆動軸中心O1が後輪34の回転軸中心O2よりも下方に位置しているため、より車体の重心が下がって走行安定性が向上している。
【0023】
図4に示すように、フロアボード45の上方にはバッテリホルダ50が設置されている。バッテリホルダ50は上方及び左側方を開放した凹状に形成されており、バッテリホルダ50に対して左側からバッテリ53が着脱可能になっている。バッテリホルダ50の前後壁には一対のガイド穴(不図示)が形成され、バッテリ53の下部にはガイド穴に嵌る一対のガイド軸(不図示)が形成されている。また、バッテリホルダ50の底面からホルダ端子(不図示)が突き出しており、バッテリ53の底面の挿込口内にバッテリ端子(不図示)が設けられている。
【0024】
この場合、バッテリホルダ50に対してサイドスタンド39側からバッテリ53が着脱可能になっている。車体左側にはサイドスタンド39が設けられており、鞍乗型車両1の停車時には車体が左側に傾けて自立される。バッテリホルダ50が左側に傾けられているため、バッテリホルダ50に対して左側からスムーズにバッテリ53が着脱される。バッテリホルダ50が左側に傾いている分だけ、バッテリ53の着脱時の起こし量や倒し量が抑えられている。また、重量物であるバッテリ53の自重を利用して、バッテリホルダ50からバッテリ53が取り外し易くなっている。
【0025】
バッテリ53の右側にはロック機構56が設けられている。ロック機構56は一対のサイドフレーム14を繋ぐ横断プレート25に取り付けられている。ロック機構56にはロック片(不図示)が設けられており、バッテリ53にはロック穴(不図示)が設けられている。ロック機構56の前面にはキーシリンダ58が設けられており、メカニカルキーによってキーシリンダ58が回転されることで、ロック片がロック穴に嵌ってバッテリ53が着脱不能にロックされる。ロック機構56はサイドスタンド39側とは逆側に設けられているため、ロック機構56がバッテリ53の着脱作業を阻害することがない。
【0026】
図5及び
図6を参照して、バッテリレイアウトについて説明する。
図5は
図4の車体後部をB-B線に沿って切断した断面図である。
図6は本実施例の車体後部の上面図である。
【0027】
図5に示すように、車体フレーム10にモータブラケット63が取り付けられており、モータブラケット63上にバッテリブラケット71が取り付けられている。モータブラケット63によってモータ60が上側から支持されており、バッテリブラケット71によってバッテリホルダ50を介してバッテリ53が下側から支持されている。モータブラケット63のベースプレート64は上面部と両側面部を有するように形成され、ベースプレート64の両側面部が車幅方向に向けられた状態で、一対のロアフレーム13の内側にベースプレート64が位置付けられている。
【0028】
ベースプレート64の前側が一対のロアフレーム13にネジ止めされ、ベースプレート64の後側が一対のリアフレーム16にネジ止めされている。ベースプレート64の下面前側には前方支持プレート67が接合されており、ベースプレート64の下面中央には後方支持プレート68が接合されている。前方支持プレート67にはモータ60の上部前側の前方取付部61がネジ止めされ、後方支持プレート68にはモータ60の上部中央の後方取付部62がネジ止めされている。このようにして、モータブラケット63を介してモータ60が車体フレーム10に取り付けられている。
【0029】
バッテリブラケット71は、ロアプレート72とアッパプレート73を支柱部材74で接合して形成されている。バッテリブラケット71のロアプレート72は、モータブラケット63のベースプレート64の上面部にネジ止めされている。バッテリブラケット71のロアプレート72の上面後側から支柱部材74が立ち上がっている。フロアボード45の後側には切欠き46が形成されており、切欠き46を通じて支柱部材74がフロアボード45よりも上方に突き出している。支柱部材74の上端にはアッパプレート73が支持されており、アッパプレート73がフロアボード45上に位置付けられている。
【0030】
バッテリブラケット71のアッパプレート73は車幅方向に長く形成されている。アッパプレート73の上面にはバッテリホルダ50がネジ止めされている。このように、切欠き46を通じてフロアボード45上に突き出たバッテリブラケット71にバッテリホルダ50が支持されている。フロアボード45の上方にバッテリホルダ50が位置しているため、フロアボード45の後部形状に依らずにバッテリホルダ50を設置することができる。また、フロアボード45の上方でバッテリ53が露出していても、フロアボード45によって下方からの水跳ねや飛び石等からバッテリ53が保護される。
【0031】
フロアボード45の後部は反り上がっているが、フロアボード45の後部上面よりもバッテリ53が高くなるように、バッテリホルダ50にバッテリ53が保持されている。フロアボード45の上方でバッテリブラケット71のアッパプレート73が前傾しており、アッパプレート73上のバッテリホルダ50が傾けられて、バッテリホルダ50に保持されたバッテリ53とフロアボード45の干渉が抑えられている。フロアボード45の反り上がった後部側にバッテリ53が設置されて、バッテリ53の前方にフロアボード45の踏面が広く確保される。
【0032】
図6に示すように、フロアボード45の前部がV字状に切り欠かれており、フロアボード45の後部が矩形状に切り欠かれている(後部の切欠きは不図示)。フロアボード45の後端47はシート41の前後方向の略中心に位置しており、フロアボード45の車幅方向両端48、49はシート41よりも車幅方向外側に位置している。バッテリホルダ50の全体が、フロアボード45の後端47よりも前側で、フロアボード45の車幅方向両端48、49よりも内側に位置している。これにより、フロアボード45によって下方からの水跳ねや飛び石等からバッテリ53が全体的に保護される。
【0033】
以上、本実施例の鞍乗型車両1によれば、フロアボード45上でバッテリホルダ50が外部に露出しているため、シート41を開閉することなく、バッテリホルダ50に対して容易にバッテリ53を着脱することができる。また、シート41下方の収容ボックス29にバッテリ53が収容されることがなく、収容ボックス29を有効活用することができる。シート41下方にもフロアボード45が位置しているため、バッテリ53の周辺もフロアボード45の踏面として利用することができる。
【0034】
なお、本実施例においては、バッテリが左側から着脱されたが、バッテリホルダに対するバッテリの着脱方向は特に限定されない。例えば、バッテリホルダに対してバッテリが前側や右側から着脱されてもよい。
【0035】
また、本実施例においては、バッテリホルダにバッテリが傾けられた状態で保持されているが、バッテリの保持姿勢は特に限定されない。例えば、バッテリホルダにバッテリが直立姿勢で保持されていてもよい。
【0036】
また、本実施例においては、鞍乗型車両に単一のバッテリが設置されたが、鞍乗型車両には少なくとも1つのバッテリが設置されていればよい。例えば、鞍乗型車両にメインバッテリ及びサブバッテリが横並びに設置されていてもよい。この場合、フロアボードの上方にメインバッテリを着脱可能に保持するメインホルダと、サブバッテリを着脱可能に保持するサブホルダが設置される。
【0037】
また、本実施例においては、バッテリホルダがフロアボードから上方に突き出たバッテリブラケットに支持されているが、バッテリブラケット以外の突出部にバッテリホルダが支持されてもよい。例えば、フロアボードの一部が上方に突き出して、フロアボードの突出部分にバッテリホルダが支持されてもよい。
【0038】
また、本実施例のバッテリのレイアウトは上記の鞍乗型車両には限定されず、他の鞍乗型車両に採用されてもよい。なお、鞍乗型車両とは、運転者がシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、運転者がシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0039】
以上の通り、第1態様は、バッテリ(53)の電力によって走行可能な鞍乗型車両(1)であって、運転者の脚部が載置される低床のフロアボード(45)と、フロアボードの後部を上方から覆うシート(41)と、バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダ(50)と、を備え、シートとフロアボードの間のスペースが外部に露出し、スペースにバッテリホルダが設置され、フロアボードの上方にバッテリホルダが位置付けられる。この構成によれば、フロアボード上でバッテリホルダが外部に露出しているため、シートを開閉することなく、バッテリホルダに対して容易にバッテリを着脱することができる。また、シート下方の収容ボックスにバッテリが収容されることがなく、収容ボックスを有効活用することができる。シート下方にもフロアボードが位置しているため、バッテリの周辺もフロアボードの踏面として利用することができる。
【0040】
第2態様は、第1態様において、バッテリの上端部が下端部よりも前方になるように前傾している。この構成によれば、バッテリの下端部を後方に位置付けることでフロアボードの踏面を広く確保することができる。
【0041】
第3態様は、第1態様又は第2態様において、フロアボードの後方から立ち上がるサイドフレーム(14)を備え、サイドフレームがバッテリよりも後方に位置する。この構成によれば、側面視にてサイドフレームにバッテリが重ならない。バッテリを外部に露出させ易くなってバッテリの着脱性が向上される。
【0042】
第4態様は、第3態様において、バッテリがサイドフレームに沿って前傾している。この構成によれば、バッテリがサイドフレームに近づけられ、フロアボードの踏面を広く確保することができる。
【0043】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか1態様において、バッテリホルダの全体がフロアボードの後端(47)よりも前側で、フロアボードの車幅方向両端(48、49)よりも内側に位置している。この構成によれば、フロアボードによって下方からの水跳ねや飛び石等からバッテリが全体的に保護される。
【0044】
第6態様は、第1態様から第5態様のいずれか1態様において、フロアボードの後部は反り上がっており、フロアボードの後部上面よりもバッテリが高くなるように、バッテリホルダにバッテリが保持されている。この構成によれば、フロアボードの後部が反り上がっていても、フロアボードにバッテリが干渉することがない。フロアボードの反り上がった後部側にバッテリが設置されてフロアボードの踏面を広く確保することができる。
【0045】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0046】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0047】
1 :鞍乗型車両
14 :サイドフレーム
41 :シート
45 :フロアボード
47 :フロアボードの後端
48、49 :車幅方向両端
50 :バッテリホルダ
53 :バッテリ
【要約】
【課題】バッテリの着脱性を向上すると共にシート下方のスペースを十分に確保する。
【解決手段】鞍乗型車両(1)は、バッテリ(53)の電力によって走行している。鞍乗型車両には、運転者の脚部が載置される低床のフロアボード(45)と、フロアボードの後部を上方から覆うシート(41)と、バッテリを着脱可能に保持するバッテリホルダ(50)と、が設けられている。シートとフロアボードの間のスペースが外部に露出し、スペースにバッテリホルダが設置され、フロアボードの上方にバッテリホルダが位置付けられる。
【選択図】
図4