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特許7495003封止シート及び、樹脂組成物層を有するディスプレイ
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  • 特許-封止シート及び、樹脂組成物層を有するディスプレイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】封止シート及び、樹脂組成物層を有するディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/56 20100101AFI20240528BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240528BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240528BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240528BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240528BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240528BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20240528BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240528BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20240528BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20240528BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240528BHJP
   F21Y 105/10 20160101ALN20240528BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240528BHJP
【FI】
H01L33/56
C09J133/00
C09J175/04
C09J201/00
C09J11/04
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V31/00 300
F21V3/00 510
F21V3/06
F21V3/10 310
C09J7/38
F21Y105:10
F21Y115:10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023173435
(22)【出願日】2023-10-05
【審査請求日】2023-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2023135317
(32)【優先日】2023-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白井 篤美
(72)【発明者】
【氏名】南方 克哉
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-229317(JP,A)
【文献】特開2013-076092(JP,A)
【文献】特開2017-220663(JP,A)
【文献】特開2015-122170(JP,A)
【文献】特開2023-012051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0227600(US,A1)
【文献】特開2013-105947(JP,A)
【文献】特開2016-113566(JP,A)
【文献】特開2010-144136(JP,A)
【文献】特許第7289008(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01L 23/28-23/31
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C09J 7/00-7/50
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
F21V 19/00-19/06
F21V 23/00-99/00
F21V 3/00
F21V 3/06
F21V 3/10
F21Y 105/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子を封止するための封止シートであって、
前記封止シートは、保護フィルムと、樹脂組成物層とがこの順に配置されており、
前記樹脂組成物層は、樹脂(A)とモノマーとオリゴマーとの合計100質量部に対し、金属酸化物粒子(B)を5.3~48.2質量部含有し、
前記金属酸化物粒子(B)の個数平均一次粒子径が5~50nmであって、
前記樹脂組成物層の屈折率が1.45~1.65である封止シート。
【請求項2】
前記金属酸化物粒子(B)を構成する金属が、Ti、Al及び、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の封止シート。
【請求項3】
前記樹脂(A)は、(メタ)アクリル樹脂(a)及びウレタン樹脂(b)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載の封止シート。
【請求項4】
前記樹脂組成物層は、ヘイズが12%以下であり、全光線透過率が80%以上であり、
前記樹脂組成物層のCIE L * a * b * 色空間より求められる彩度C * が0~10である請求項1に記載の封止シート。
【請求項5】
前記樹脂組成物層は厚さTaが1~100μmであり、
前記保護フィルムは厚さTbが10~188μmである請求項1に記載の封止シート。
【請求項6】
前記保護フィルムと前記樹脂組成物層とが直接積層されており、
前記保護フィルムの前記樹脂組成物層と接する面におけるISO 25178で規定された二乗平均平方根高さSqの、前記樹脂組成物層の厚さTaに対する割合が0.01~30%である請求項5に記載の封止シート。
【請求項7】
前記樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接の-50~80℃の範囲におけるピークトップ強度(tanδピーク強度)が0.6~2.2である請求項1~6いずれかに記載の封止シート。
【請求項8】
前記光半導体素子が、マイクロLEDである請求項7に記載の封止シート。
【請求項9】
樹脂(A)とモノマーとオリゴマーとの合計100質量部に対し、個数平均一次粒子径が5~50nmの金属酸化物粒子(B)を5.3~48.2質量部含有し、屈折率が1.45~1.65である封止層を有するディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、封止シートに関するものであり、詳しくは例えば電子機器やディスプレイをはじめとする様々な製品に使用される光半導体素子を封止するための樹脂組成物層を含む封止シート、並びに前記樹脂組成物層が搭載されたディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイはさらなる高性能化に向け、様々な発光素子を用いた開発が盛んに行われている。
具体的には、液晶や量子ドットなどを用いたバックライト式ディスプレイ、ミニ/マイクロLEDや有機ELなど自発光素子を用いたディスプレイ、プラズマディスプレイ、電気泳動ディスプレイなど、様々なディスプレイ仕様が研究されており、サイネージやテレビなどの大型ディスプレイ用途からタブレット、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、ウェアラブル機器等の小型サイズまで幅広く活用が検討されている。特に、LEDを用いたディスプレイ開発は、日増しに進められており、特許文献1にはLED素子を封止する熱硬化性樹脂組成物が記載されている。次世代ディスプレイ技術として最も注目されているのがマイクロLEDディスプレイである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2021/200035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、取り扱いが容易であり、簡易な工程且つ短時間で光半導体素子を封止することができる光半導体素子封止用シートが記載されている。しかし、近年小型化が進んでいる光半導体素子においては、光半導体素子同士の間隔がより狭くなり特許文献1に記載されるシート状の樹脂組成物ではマイクロサイズの光半導体素子に追従して空隙を埋めること(埋め込み性)が困難である。光半導体素子と封止用樹脂組成物との間に空隙がある場合、特にLEDディスプレイモジュールにおいて、空隙部の光の屈折によって輝度が低下してしまう。
また、マイクロLEDディスプレイは、9~10インチ程度の小型マイクロLEDディスプレイモジュールをタイル状に縦横に繋ぎ合わせることで大画面を構成する。この場合、近距離でディスプレイを観察した際、モジュールのつなぎ目が目立ってしまう(シームレス性)という問題が発生している。
高輝度に加えて、つなぎ目が目立たないディスプレイを作成するために埋め込み性とシームレス性に優れた封止シートが求められている。
【0005】
本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、光半導体素子の埋め込み性に優れる封止シートを提供することを課題とする。また、特にマイクロLED素子を光源とするディスプレイに適用した場合において、埋め込み性とシームレス性に加え視認性に優れる封止シート及び樹脂組成物層を有するディスプレイを提供することを課題とする。
また、更なる課題として、マイクロLEDディスプレイ製造工程の簡易化の観点から基板に対する密着性に優れる封止シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、以下に示す遮光シートにより上記課題を解決できることを見出し、下記[1]~[9]の本発明を完成するに至った。
【0007】
[1]:光半導体素子を封止するための封止シートであって、前記封止シートは、保護フィルムと、樹脂組成物層とがこの順に配置されており、前記樹脂組成物層は、樹脂(A)と、金属酸化物粒子(B)とを含有し、前記金属酸化物粒子(B)の個数平均一次粒子径が5~50nmであって、前記樹脂組成物層の屈折率が1.45~1.65である封止シート。
[2]:前記金属酸化物粒子(B)が、Ti、Al及び、Zrからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む[1]に記載の封止シート。
[3]:前記樹脂(A)は、(メタ)アクリル樹脂(a)及び、ウレタン樹脂(b)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む[1]に記載の封止シート。
[4]:前記樹脂組成物層は、ヘイズが12%以下であり、全光線透過率が80%以上であり、前記樹脂組成物層のCIE L色空間より求められる彩度C*が0~10である[1]に記載の封止シート。
[5]:前記樹脂組成物層は厚さTaが1~100μmであり、前記保護フィルムは厚さTbが10~188μmである[1]に記載の封止シート。
[6]:前記保護フィルムと前記樹脂組成物層とが直接積層されており、前記保護フィルムの前記樹脂組成物層と接する面におけるISO 25178で規定された二乗平均平方根高さSqの、前記樹脂組成物層の厚さTaに対する割合が0.01~30%である[5]に記載の封止シート。
[7]:前記樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接の-50~80℃の範囲におけるピークトップ強度(tanδピーク強度)が0.6~2.2である[1]~[6]いずれかに記載の封止シート。
[8]: 前記光半導体素子が、マイクロLEDである[7]に記載の封止シート。
[9]:樹脂(A)と、金属酸化物粒子(B)とを含有し、前記金属酸化物粒子(B)の個数平均一次粒子径が5~50nmであって、屈折率が1.45~1.65である封止層を有するディスプレイ。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、光半導体素子の埋め込み性に優れ、特にマイクロLED素子を光源とするディスプレイに適用した場合においても、埋め込み性とシームレス性、密着性と視認性に優れる封止シート及び樹脂組成物層を有するディスプレイを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】封止シートの積層構成例を示す模式的断面図。
図2】光半導体素子を有する基板上に封止層を形成する工程を示す模式的断面図。
図3】マイクロLEDの基板を模した試験基板の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本開示の一例を説明するものである。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において実施される変形例も含まれる。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値、および上限値の範囲として含むものとする。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸をいう。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0011】
[封止シートの形態]
本開示の封止シートは、図1(a)に示すように、樹脂組成物層2と保護フィルム3がこの順に配置されている。樹脂組成物層2は複数設けることができる。前記保護フィルムは、樹脂組成物層と直接積層されていることが好ましい。
【0012】
保護フィルムは、樹脂組成物層の支持体であって封止シートのハンドリング性を付与する。保護フィルムは、樹脂組成物層により光半導体素子周辺に封止層を形成後、剥がす使用形態が好ましい。
【0013】
前記使用形態の場合、保護フィルムは特に制限はされないが、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シクロオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。
前記プラスチックフィルムは剥離性を有していることが好ましく、前記プラスチックフィルムにシリコーン樹脂、アルキッド樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂などの剥離剤を塗布し剥離層を設けたものがより好ましい。
前記プラスチックフィルムは、剥離層の他に機能層を有していてもよい。機能層としては、具体的に帯電防止層/プラスチックフィルム基材/剥離層、プラスチックフィルム基材/帯電防止層/剥離層が例示できる。
【0014】
前記保護フィルムの厚さTb(剥離層を設けた場合は剥離層を含む厚さ)は特に制限されないが、10~188μmが好ましく、10~100μmがより好ましく、10~75μmがさらに好ましい。上記範囲とすることで、保護フィルムのうねりを樹脂組成物層に転写することを制御し、埋め込み性と密着性が良好となる。厚さTbは例えば後述する実施例記載の方法で測定することができる。
【0015】
前記保護フィルムが樹脂組成物層と直接積層されている場合、前記保護フィルムの樹脂組成物層と接する面において、ISO 25178に準じた面粗さの二乗平均平方根高さSqの、樹脂組成物層の厚さTaに対する割合が0.01~30%であることが好ましく、0.1~20%であることがより好ましく、0.15~12%であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、樹脂組成物層に転写される表面粗さを制御し、後述するプレス工程にて樹脂組成物層が十分に平滑化することで、シームレス性と密着性が良好となる。前記二乗平均平方根高さSqは、例えば後述する実施例記載の方法で測定することができる。
二乗平均平方根高さSq値は0.01~2μmが好ましく、0.04~1.5μmがより好ましく、0.1~1.5μmがさらに好ましい。
【0016】
また、前記二乗平均平方根高さSqは、保護フィルムの剥離層面の離型処理により調整することができる。例えば、剥離剤の種類、剥離剤の塗布量、剥離剤の塗布方法により調整することができる。二乗平均平方根高さSqの値を大きくしたい場合には、剥離剤の塗布量を減らす、剥離剤塗布後の乾燥を速める、剥離剤にフィラーを含有させる等の処理が有効であり、二乗平均平方根高さSqの値を小さくしたい場合には、その逆に調整すればよい。また、所定の二乗平均平方根高さSqを有するフィルムやキャリア材を用いて凹凸を転写する方法も適用することができる。
【0017】
本開示の封止シートは、図1(b)に示すように、保護フィルム3/樹脂組成物層2/剥離ライナー4の3層構造をとることがより好ましい。
剥離ライナーとは基材に剥離層が積層されたフィルムであり、保護フィルムで説明した基材及び剥離剤を使用できる。剥離ライナーと保護フィルムは同一のものを使用してよいが、剥離ライナー4の剥離力は、保護フィルムよりも剥離力が小さくなるように設計することがハンドリングの観点から好ましい。
保護フィルム3と剥離ライナー4の剥離力は、各剥離ライナーの樹脂組成物層との貼付面の離型処理により調整することができる。例えば、剥離剤の種類、剥離剤の塗布量、剥離層の表面粗さにより調整することができる。剥離力の値を小さくしたい場合には、剥離剤の塗布量を多くする等の処理が有効であり、剥離力の値を大きくしたい場合には、その逆に調整すればよい。
剥離ライナー4の厚さTcは10~150μmの範囲が好ましく、且つ、Tc<Tbの関係を満たすことが好ましい。
図1(b)に示す3層構造をとる場合、保護フィルム3に樹脂組成物層2を形成した後、剥離ライナー4を貼り合わせる製造方法が好ましい。
【0018】
封止シートを製造後、または封止シートを製造しながら、巻芯に封止シートをロール状に巻回することにより封止シートロールが得られる。巻き取りの長さは用途により設計し得る。生産性を高める観点からは50m以上であることが好ましく、100m以上であることがさらに好ましい。巻き取りの長さは、製造歩留まりの観点から10,000m以下とすることが好ましい。
封止シートをロール形態とする場合には、剥離ライナーを巻外側に設けることが好ましい。
【0019】
本開示の封止シートは、光半導体素子を封止するために用いる。
樹脂組成物層は、直接光半導体素子に密着させて封止することが好ましい。前記光半導体素子は、特に制限されないが、アクリル、ウレタン、ポリカーボネート、エポキシ、ポリイミド、ガラス、紙、布、アルミニウム、セラミックまたはポリエチレンテレフタレートなどの基板上に配置され、電極部位を有することが好ましい。前記光半導体素子は単独または複数配置される。複数の光半導体素子が配置されている場合、光半導体素子部位の間に遮光層を有していても良い。
【0020】
樹脂組成物層は、凹凸面に対する高い追従性を有しているため、光半導体素子に追従して光半導体素子の間を充填する使用方法が好適である。光半導体素子間に樹脂組成物層を充填することで、樹脂組成物層からなる封止層を形成する。封止層は隣接する光半導体素子を固定し、落脱や偏りが発生することを防ぐ機能を持つ。特に、本開示の封止シートの樹脂組成物層は、マイクロサイズの光半導体素子に追従することが可能であることから、光半導体素子としてはマイクロLEDがより好適であり、樹脂組成物層をマイクロLEDディスプレイパネルの封止層として使用することがさらに好ましい。
マイクロLEDとは、50μmもしくは100μm以下の微細なLED素子(チップ)である。このマイクロLED(チップ)を配線や回路を形成した基板に複数実装することで複数の光半導体素子を光源とするディスプレイが形成される。マイクロLEDは、GaAs、GaP、AlGaInP、InGaN等のLED素子、これを封止する封止樹脂、パッケージ基板、電極等から形成され、動作温度は25~60℃である。
以下、封止層を形成する工程の一例を、図2を用いて説明する。
【0021】
工程(a):封止シートの載置工程
図2(a)に示すように、光半導体素子を有する基板上に封止シートの樹脂組成物層を、光半導体素子を直接覆うように載置する。なお、封止シートが剥離ライナーを有する場合は、剥離ライナーを剥離し、樹脂組成物層を露出させてから、前述の様に載置する。保護フィルムは、載置後すぐに剥がしても良く、下記に示すプレス工程後に剥がしても良い。
本明細書において、光半導体素子の数は特に限定されない。ディスプレイ用途においては、ディスプレイサイズや画素数によって使用される光半導体素子の数が決定される。
また、光半導体素子の発光色は特に限定されず、発色は例えば、赤色、緑色、青色が挙げられる。
光半導体素子の大きさは、厚さが100μm以下、平面視の面積が40,000μm以下のものが好ましく、厚さが50μm以下、平面視の面積が10,000μm以下のものがより好ましく、厚さが20μm以下、平面視の面積が2,500μm以下のものがさらに好ましい。
基板上に載置する光半導体素子同士の間隔は、例えば、10~5,000μmである。赤色、緑色、青色の光半導体素子をセットで1画素として基板上に載置する場合、画素同士の間隔は例えば10~2,000μmであって、20~1,800μmが好ましく、500~1,500μmがより好ましい。1画素中における光半導体素子同士の間隔は、例えば、10~200μmであって、10~100μmが好ましく、20~60μmがより好ましい。
【0022】
工程(b):プレス工程
図2(b)に示すように、プレスによって樹脂組成物層を流動させ、光半導体素子の周囲や、光半導体素子間に充填する。光半導体素子の周囲や、光半導体素子間に充填した樹脂組成物層は封止層となる。プレス方法は特に限定されないが、熱プレス、真空プレスが好ましい。プレス時の温度は、樹脂組成物層の充填性の観点から、20~200℃が好ましく、30~150℃がより好ましく、40~130℃がさらに好ましく、60~110℃が最も好ましい。
光半導体素子や被着体との密着性を高めるために、プレス後、さらに加熱エージングしてもよい。加熱温度は40~250℃が好ましく、80~220℃がより好ましく、100~190℃がさらに好ましい。加熱時間は30~300分が好ましく、60~240分がより好ましく、90~180分がさらに好ましい。上記の加熱温度、加熱時間とすることで、樹脂組成物層の残留応力を取り除き、密着面を平滑化することができる。加熱エージングは後述する工程(c)の後に実施してもよい。
【0023】
工程(c):エッチング工程
工程(c)ではエッチングを行い、光半導体素子上の封止層を取り除く、または、薄膜化する。封止層を取り除くことによって、光半導体素子の輝度を向上し、発光時の視認性を確保する。エッチング後の封止層の厚さは、図2(c-1)に示すように光半導体素子の厚さと同程度か、図2(c-2)に示すように光半導体素子の厚さ以下が好ましい。なお、光半導体素子上から封止層を完全に除去せずとも、実質的に取り除けていればよく、多少の薄膜が残存した状態でもよい。尚、輝度が十分確保可能な場合は工程(c)を省いても良い。
エッチング方法は、特に限定されないが、薬剤を用いた化学的研摩などのウェットエッチング法や、研磨材を用いた物理的研摩、レーザエッチング、アルゴンプラズマや酸素プラズマを利用したプラズマエッチング、イオンビームエッチングなどのドライエッチング法が好ましい例として挙げられる。表面の凹凸を減少させる観点から、プラズマエッチングや、ウェットエッチング法とドライエッチング法を併用することが好ましい。
また、プラズマエッチングの条件としては、例えば、異方性プラズマ装置にて、CF/O/Nの混合ガスを用い、出力1500~3000W、180~600秒の条件でドライエッチングすればよい。この際、CFのガス供給量としては、例えば50~100sccmであり、Oのガス供給量としては、例えば500~1000sccm、Nのガス供給量としては、例えば50~100sccmとすればよい。
【0024】
上記の通り工程(a)~(c)を経て、樹脂組成物層から封止層を形成できる。
次に、本開示の封止シートの構成成分について、好ましい例を挙げながら詳細に説明する。
【0025】
[樹脂組成物層]
樹脂組成物層は、樹脂(A)と金属酸化物粒子(B)を含有し、さらに、架橋剤及び/又は重合開始剤を含有することが好ましく、その他成分を含有しても良い。本開示において、樹脂(A)とは、バインダーとして物と物を接着し、固定する機能を持った物質である。具体例として、光半導体素子を有する基板や光半導体素子に接着し、固定する機能が挙げられる。
【0026】
樹脂組成物層の屈折率は、1.45~1.65であって、1.47~1.60が好ましく、1.49~1.55がより好ましい。屈折率を上記範囲とすることで、シームレス性と視認性が向上する。屈折率は、樹脂(A)の種類や組成、金属酸化物粒子(B)の種類、分散状態や含有量によって調整することができる。樹脂(A)の芳香環構造の含有量を増やす、金属酸化物粒子(B)の含有量を増やすことで、屈折率を高くすることができ、低くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
【0027】
本開示の樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の-50~80℃の範囲におけるピークトップ強度(tanδピーク強度)とは、tanδ曲線が極大となるときの損失正接(tanδ)の値であり、ピークが2つ以上ある場合は最も低温側のピークのトップ強度のことを示す。tanδピーク強度は、0.6~2.2であることが好ましく、0.8~2.0であることがより好ましく、0.9~1.8であることがさらに好ましい。tanδピーク強度を上記範囲とすることで、プレス工程において樹脂組成物層にかかる圧力の吸収性が良好になり、均一な封止層を形成しながら光半導体素子に追従し、埋め込み性と密着性が向上する。
なお、本開示のtanδピーク強度は、樹脂(A)の種類や組成、金属酸化物粒子(B)の種類、分散状態や含有量、モノマー及び/又はオリゴマーの種類や含有量によって調整することができる。
樹脂(A)として(メタ)アクリル樹脂(a)を含有する場合、ウレタン樹脂(b)を含有する場合よりtanδピーク強度を高くすることができるが、樹脂組成によってはこの限りでない。樹脂(A)が(メタ)アクリル樹脂(a)を含有する場合、メタクリル酸メチルなどメタクリル酸アルキルエステルの含有量を増やすことで、tanδピーク強度を低くすることができ、tanδピーク強度を高くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
金属酸化物粒子(B)としてZrOを含有する場合、TiOを含有する場合よりtanδピーク強度を低くすることができるが、粒子の分散状態によってはこの限りでない。金属酸化物粒子(B)がZrOを含有する場合、ZrOの含有量を増やすことで、tanδピーク強度を低くすることができ、tanδピーク強度を高くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
樹脂組成物層がモノマー及び/又はオリゴマーを含有する場合、粘度の低いモノマー及び/又はオリゴマーの含有量を増やすことで、tanδピーク強度を低くすることができ、tanδピーク強度を高くしたい場合には、その逆に調整すればよい。粘度の低いモノマーの具体例としては1,6-ヘキサンジオールジアクリレートが挙げられ、粘度の低いオリゴマーの具体例としては重量平均分子量が1,300以下のオリゴマーが挙げられる。
【0028】
また、本開示の樹脂組成物層の動的粘弾性測定により得られる40℃の損失正接(tanδ40)が0.6~2.0であることが好ましく、0.8~1.9であることがより好ましく、1.0~1.8であることがさらに好ましい。tanδ40を上記範囲とすることで、プレス工程において樹脂組成物層にかかる圧力が適度に拡散し、埋め込み性と密着性が向上する。
プレス工程の好ましい温度帯である20~200℃の範囲における樹脂組成物層にかかる圧力の拡散性を制御するために、40℃の損失正接(tanδ40)を上記範囲に調節することで、20~40℃の損失正接と40~200℃の損失正接を偏りなくバランスをとることができる。
上述の損失正接(tanδ)は、周波数10Hz、-50~150℃における引張モードの動的粘弾性測定により得られる損失弾性率/貯蔵弾性率の比である。
tanδ40は、樹脂(A)の種類や組成、金属酸化物粒子(B)の種類や分散状態によって調整することができる。具体的にはtanδピーク強度と同様の調整方法が挙げられる。
【0029】
本開示における動的粘弾性と損失正接(tanδ)は、後述する実施例記載の方法にて測定した。なお、樹脂組成物層が光重合開始剤、架橋剤、重合開始剤のいずれかを含む場合、測定時の架橋/重合反応は未完了状態である。また、上記測定は、厚さ50μm以上のシートを測定することが好ましく、これに満たないシートを測定する場合は、剥離ライナーを有さない封止シート2組を用意し、樹脂組成物層同士をラミネーターで貼り合わせ、保護フィルム/樹脂組成物層/保護フィルムの積層体を作製し、さらに前述の積層体の一方面の保護フィルムを剥離して、封止シートの樹脂組成物層を繰り返し貼り合わせることで、50μm以上となるように積層した後に動的粘弾性を測定してもよい。
【0030】
樹脂組成物層の厚さTaは、埋め込み性と密着性の観点から、1~100μmが好ましく、5~50μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。樹脂組成物層の厚さTaを上記範囲とすることで、プレス工程において圧力を樹脂組成物層内で適度に拡散し十分に平滑化するため、埋め込み性と密着性が向上する。樹脂組成物層は単層でも、2層以上の積層のいずれの形態でもよい。本開示における厚さTaは、後述する実施例記載の方法にて測定した。
【0031】
樹脂組成物層のCIEL色空間における彩度Cが0~10であることが好ましく、0~5であることがより好ましく、0~3であることがさらに好ましい。
【0032】
彩度Cとは、色調の鮮やかさを示す指標のひとつであり、色度a及びbから以下の式1により求められる値である。
=(a*2+b*20.5 (式1)
【0033】
式1において、Cは彩度であり、a及びbは、それぞれ、色度a及びbであり、いずれもJIS Z 8781-4に準拠して測定した値である。
彩度Cを上記範囲とすることで、塗膜の色調が光半導体の色調に及ぼす影響を抑え、シームレス性と視認性が向上する。
本開示における彩度Cは、後述する実施例記載の方法にて測定した。
本開示における彩度Cは、樹脂(A)の種類や、金属酸化物粒子(B)の種類や含有量、モノマー及び/又はオリゴマーの種類や含有量により調整することができる。
樹脂(A)が(メタ)アクリル樹脂(a)を含有する場合、(メタ)アクリル樹脂(a)を構成する官能基含有モノマーの含有量を増やすことで彩度Cを高くすることができ、低くしたい場合はその逆に調整すればよい。
金属酸化物粒子(B)の含有量を増量すると、彩度Cを高くすることができ、彩度Cを低くしたい場合には、その逆に調整すればよい。
樹脂組成物層がモノマー及び/又はオリゴマーを含有する場合、モノマーの官能基数を増やすことや、オリゴマーを構成する官能基含有モノマーの含有量を増やすことで彩度Cを高くすることができ、低くしたい場合はその逆に調整すればよい。
【0034】
樹脂組成物層のヘイズは12%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。本開示におけるヘイズは、後述する実施例の方法にて測定した。
樹脂組成物層の全光線透過率は80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。樹脂組成物層の全光線透過率は、後述する実施例の方法にて測定した。
樹脂組成物層のヘイズと全光線透過率を上記範囲とすることで、封止層を透過する光の散乱が少なくなり、シームレス性と視認性が向上する。
本開示における樹脂組成物層のヘイズと全光線透過率は、樹脂(A)の種類や、金属酸化物粒子(B)の種類、分散状態や含有量、モノマー及び/又はオリゴマーの種類や含有量により調整することができる。
樹脂(A)として(メタ)アクリル樹脂(a)を含有する場合や、金属酸化物粒子(B)としてZrOを含有する場合、ヘイズと全光線透過率を低くすることができる。
【0035】
[樹脂組成物層の形成方法]
樹脂組成物層の形成方法は、特に限定されないが、好適な例として樹脂組成物層を構成する成分に任意の溶剤を添加した樹脂組成物を塗工して樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。溶剤の添加は塗工に適した粘度水準に調整することを目的とする。
塗工には、コンマコーター、ダイコーター、ロールコーター、リップコーター、リバースコーター、グラビアコーター、バーコーター、カーテンコーター、ディップコーティング、スピンコーティング、シルクスクリーン、キャスティングなどの公知の塗工機や手法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる溶剤は、塗工後、乾燥工程により除去することができる。
好ましい実施形態としては、樹脂組成物を保護フィルム、剥離ライナーなどの支持体に塗布した後、塗布膜を熱風オーブン、赤外線ヒーターなどを用いて加熱乾燥することで、支持体の一方の面上に樹脂組成物層を形成することができる。さらに、樹脂組成物層の架橋密度を上げるために、例えば特定の温度条件下にて静置するようなエージング処理や、UV等を照射することが好ましい。また、塗工後に保護フィルム、剥離ライナー、基材などの別の支持体にラミネーターを用いて転写しても良い。
【0036】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は溶剤と樹脂(A)と金属酸化物粒子(B)とを攪拌しながら混合して得ることができる。任意の溶剤は、樹脂(A)と金属酸化物粒子(B)とを混合する際に、粘度など加工適正を調整する目的で用いるため、エステル系、エーテルエステル系、エーテル系、アルコール系、芳香族系など樹脂(A)を相溶可能なものを適宜用いることができる。具体的には、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、N-メチル-2-ピロリドンなどが好適例として挙げられる。攪拌は、公知の攪拌装置を使用でき、ディスパー、ミキサー、シェイカー、ホモジナイザーなどが好ましい。
【0037】
樹脂組成物を得るために、第一に、樹脂(A)や任意の溶剤に金属酸化物粒子(B)を混合した混合物を作製し、第二に、樹脂(A)、架橋剤、重合開始剤、その他成分を必要に応じて添加する二段階以上の製造工程を取っても良い。
【0038】
[樹脂(A)]
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は1万~100万が好ましい。耐光性と密着性の観点から2万~30万がより好ましく、3万~15万がさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)上記範囲とすることで、加熱エージング工程における分子鎖の絡まりがほぐれやすくなり密着性が向上する。
また、樹脂(A)の分散度を示す数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、1~5が好ましく、2~4.5がより好ましく、2.5~4がさらに好ましい。Mw/Mnを上記範囲とすることで、樹脂を加熱した際の流速を樹脂内で均一化されるため、樹脂の流動性を制御しやすくなり、埋め込み性が向上する。また、被着体に濡れる速度も均一化されるため、密着性が向上する。
なお、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。本開示における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、後述する実施例記載の方法にて測定した。
【0039】
樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-30℃~60℃である。埋め込み性、密着性の観点から、-20℃~50℃がより好ましく、-15℃~40℃がさらに好ましく、-10℃~30℃がより一層好ましく、0℃~20℃が最も好ましい。ガラス転移温度(Tg)を-30℃以上とすることでプレス工程における樹脂(A)の流動性や濡れ性を好適なものにでき埋め込み性や密着性を向上できる。
ガラス転移温度(Tg)を60℃以下とすることで、プレス工程にて樹脂組成物層に圧力が加えられる際に、樹脂組成物層に含まれる樹脂(A)の分子運動が活発化し、分子鎖の絡まりがほぐれやすい状態となる。分子鎖の絡まりがほぐれると、基板や光半導体素子などの凹凸のある被着体に対して、追従するように変形することが可能となり、光半導体素子と樹脂組成物層の間の空隙を減少させることができ、埋め込み性向上に繋がる。
【0040】
本願における樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、樹脂(A)が熱や光による架橋反応が起こる場合、熱架橋前並びに光架橋前のガラス転移温度(Tg)を示す。本開示における樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例に記載の方法で測定したものである。
【0041】
樹脂(A)は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。樹脂(A)の含有率は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、10~98質量%であることが好ましく、40~95質量%であることがより好ましく60~90質量%であることがさらに好ましい。樹脂(A)を2種類以上含む場合は、いずれの樹脂(A)も含有率が5質量%以上であることが好ましく、合計の含有率が前述の範囲であることが好ましい。
樹脂(A)の含有率を上記範囲とすることで、金属酸化物粒子(B)との相溶性が良好となり、視認性が向上する。
【0042】
樹脂(A)の好適例は、(メタ)アクリル樹脂(a)、ポリウレタン樹脂やポリウレタンウレア樹脂などのウレタン樹脂(b)、マレイン酸樹脂、スチレンーマレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、縮合型ポリエステル樹脂、付加型ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、オキセタン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、オキサゾリン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ビニル系樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)等が挙げられる。埋め込み性の観点から、(メタ)アクリル樹脂(a)、ウレタン樹脂(b)のうちの少なくとも1つを含んでいることが好ましい。さらに、密着性の観点から、(メタ)アクリル樹脂(a)を含んでいることがより好ましい。
【0043】
樹脂(A)は、熱や光による架橋反応に利用できる官能基を複数有することが好ましい。官能基は、後述する架橋剤、熱重合開始剤、光重合開始剤との組み合わせにより適宜選択すれば良く、自己架橋可能な官能基であっても良い。
官能基は、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリン基、オキサジン基、アジリジン基、チオール基、イソシアネート基、ブロック化イソシアネート基、シラノール基、ビニル基、アクリロイル基等が挙げられる。
金属酸化物粒子(B)の分散性の観点から、カルボキシ基、水酸基、エポキシ基が好ましい。カルボキシ基を有する場合、樹脂(A)の酸価は1~45mgKOH/gが好ましく、3~30mgKOH/gがより好ましく、5~20mgKOH/gがさらに好ましい。
樹脂(A)の酸価を上記範囲とすることで、架橋剤との架橋密度を最適化し密着性が良化する。本開示における酸価は、後述する実施例記載の方法にて測定した。
【0044】
光により架橋反応を起こす場合、樹脂(A)は不飽和結合を1分子中に1つ以上有することが好ましい。また、光重合開始剤も含有することが好ましい。
光重合開始剤としては、トリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤、およびオキシムエステル系光重合開始剤は、加熱エージング工程時に黄変が少ないことから好ましい。
光重合開始剤の含有率は、黄変の観点から、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.5~10質量%含有することが好ましく、0.5~5質量%含有することがより好ましい。
【0045】
熱により架橋反応を起こす場合、好ましい形態として、架橋剤と組み合わせる第一実施形態と、熱重合開始剤と組み合わせる第二実施形態が挙げられる。
【0046】
[(メタ)アクリル樹脂(a)]
本開示において、(メタ)アクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを共重合して得られるアクリル共重合体(ポリマー)であり、25~20,000個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体であり、かつ、(メタ)アクリル樹脂(a)の重量平均分子量は、1万~100万である。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの好適例として(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーが例示できる。架橋構造を形成する場合には、官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合して得られる(メタ)アクリル共重合体が好ましい。
【0047】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーは、(メタ)アクリル酸をエステル化してアルキル基またはシクロアルキル基を導入した化合物であり、アルキル基またはシクロアルキル基は、直鎖、分岐鎖、または環状の飽和脂肪族炭化水素基のいずれであってもよい。飽和脂肪族炭化水素基は炭素数1~20の飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~12の飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、4-n-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸イソボルニル等が挙げられる。これらの中でも特に、金属酸化物粒子(B)の分散性の観点から(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルを用いることが特に好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルを用いることが最も好ましい。
【0048】
(メタ)アクリル樹脂(a)100質量%に対して、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーに由来する構造単位は、密着性の観点から1~100質量%であることが好ましく、20~99.9質量%であることがより好ましく、80~99.7%であることがさらに好ましい。
【0049】
(メタ)アクリル樹脂(a)は官能基含有モノマーに由来する構造単位、及び/又は不飽和結合を有することが好ましい。
官能基含有モノマーとしては、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマーが例示できる。官能基含有モノマーを含有することにより樹脂(A)の凝集力が向上し、強靱な樹脂組成物層が得られる。特に、カルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマーを含むことが好ましい。
【0050】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸β-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸p-カルボキシベンジル、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸およびイソクロトン酸が例示できる。これらの中でも、密着性の観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0051】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレートが例示できる。これらの中でも、密着性の観点から、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルがより好ましい。
【0052】
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルメチルが例示できる。これらの中でも、密着性の観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルを含むことが好ましい。
【0053】
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルが例示できる。
【0054】
(メタ)アクリル樹脂(a)100質量%に対し、官能基含有モノマー由来の構造単位の合計は、0.1~20質量%であることが好ましい。前記範囲とすることにより、架橋剤との反応で凝集力を調整することができる。
(メタ)アクリル樹脂(a)100質量%に対し、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位は0.1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで密着性を高めることができる。
(メタ)アクリル樹脂(a)100質量%に対し、水酸基含有モノマー由来の構成単位は0.1~10質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで密着性を高めることができる。
(メタ)アクリル樹脂(a)100質量%に対し、エポキシ基含有モノマー由来の構成単位は0.1~15質量%であることが好ましい。前記範囲にあることで密着性を高めることができる。
【0055】
(メタ)アクリル樹脂(a)を構成する官能基含有モノマーのさらに好ましい例として、カルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーを同時に含有しないことが挙げられる。カルボキシ基含有モノマーと水酸基含有モノマーを同時に含有しないことで、(メタ)アクリル樹脂(a)の凝集力を調整し、密着性を高めることができる。
【0056】
(メタ)アクリル樹脂(a)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、官能基含有モノマーと共重合可能なその他のモノマーに由来する構造単位が含まれていてもよい。例えば、アルキレンオキシ基を有するモノマー、その他ビニルモノマーが挙げられる。例えば、メトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、アクリルアミドが例示できる。前記その他のモノマーに由来する構造単位は、(メタ)アクリル共重合体100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましい。
【0057】
(メタ)アクリル樹脂(a)は、アクリルモノマー混合物を重合することにより得られる。重合時には、必要に応じて重合開始剤を用いることができる。重合開始剤の含有率は、モノマー混合物100質量%に対して例えば0.01~10質量%とする。重合方法は限定されない。例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合により重合することができ、重合制御の容易さから溶液重合が最も好ましい。溶液重合で用いる溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが例示できる。重合温度は例えば60~120℃、重合時間は2~12時間程度とすることができる。
【0058】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、過酸化物およびアゾ化合物が好適である。後述する熱ラジカル重合開始剤のいずれも用いることができ、具体的には、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)が好ましい。
【0059】
[ウレタン樹脂(b)]
本開示において、ウレタン樹脂(b)とは、1分子中にウレタン結合を2つ以上含む化合物の総称である。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、ポリオールとを反応させて得ることができる。
ポリイソシアネートは1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するものであればよく、金属酸化物粒子(B)の分散性の点から、ジイソシアネートまたはトリイソシアネートが好ましく、ジイソシアネートがより好ましい。ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートのような公知の脂肪族ジイソシアネートや、ベンゼン-1,3-ジイソシアネートなどの公知の芳香族ジイソシアネートの中から、適宜選択して用いることができる。また、ポリオールと過剰のポリイソシアネートを反応させて得られたイソシアネート基末端プレポリマーをウレタン樹脂の中間体として用いてもよい。
ポリオールは1分子中に2つ以上の水酸基を有するものであればよく、金属酸化物粒子(B)の分散性の点から、ジオールまたはトリオールが好ましく、ジオールがより好ましい。ジオールとしてはエチレングリコールなどの公知の脂肪族ジオールや、ベンゼンジオールなどの公知の芳香族ジオールの中から、適宜選択して用いることができる。また、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのプレポリマーを用いてもよい。
【0060】
ウレタン樹脂(b)は、更にウレア結合を有するポリウレタンウレア樹脂であってもよい。ポリウレタンウレア樹脂は、例えば、末端にイソシアネート基を有するウレタン樹脂に、ポリアミンを反応させることで合成できる。
ポリアミンは1分子中に2つ以上のアミノ基を有するものであればよく、金属酸化物粒子(B)の分散性の点から、ジアミンまたはトリアミンが好ましく、ジアミンがより好ましい。ジアミンとしてはエチレンジアミンなどの公知の脂肪族ジアミンや、フェニレンジアミンなどの公知の芳香族ジアミンの中から、適宜選択して用いることができる。
【0061】
[金属酸化物粒子(B)]
本実施の形態において、金属酸化物粒子(B)は、樹脂(A)の流動性を向上させ光半導体素子間への埋め込み性を向上させる機能を有する。加えて、屈折率を調整する機能を持つ。
金属酸化物粒子(B)を構成する金属としては、例えばTi、Al、Zr、In、Zn、Sn、La、Y、Ce、Mg、Hf、Ta、Ba、Ca、Si等が挙げられ、埋め込み性及びシームレス性を良化する観点からTi、Al、Zrが好ましく、Zrがより好ましい。金属酸化物粒子(B)は1種ずつ用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
【0062】
Tiを含む金属酸化物粒子(B)として、一酸化チタン(TiO)、二酸化チタン(TiO)、三酸化チタン(TiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、灰チタン石(CaTiO)が挙げられる。
Alを含む金属酸化物粒子(B)として、酸化アルミニウム(Al)、スピネル(MgAl)が挙げられる。
Zrを含む金属酸化物粒子(B)として、酸化ジルコニウム(ZrO)が挙げられる。
これらの中でも、埋め込み性の観点から酸化アルミニウム(Al)、二酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)が好ましく、酸化ジルコニウム(ZrO)が最も好ましい。
【0063】
上記以外の金属酸化物粒子(B)として酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、酸化ランタン(La)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ハフニウム(HfO)、五酸化タンタル(Ta)、五酸化ニオブ(Nb)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズアンチモン(ATO)等を含んでもよい。
【0064】
金属酸化物粒子(B)は、表面修飾剤により表面修飾された金属酸化物粒子であることが好ましい。表面修飾剤として有機酸、シランカップリング剤、界面活性剤、チタンカップリング剤及び金属不純物が挙げられ、有機酸を含むことが好ましい。
【0065】
金属酸化物粒子(B)は、分散性の観点から、BET法による比表面積が10~400m/gであることが好ましく、10~150m/gであることがより好ましく、20~84m/gであることがさらに好ましい。BET法による比表面積は、JIS Z 8830に準じて測定することができる。
【0066】
金属酸化物粒子(B)の個数平均一次粒子径は5~50nmであって、5~30nmが好ましく、7~25nmがより好ましく、10~20nmが最も好ましい。上記範囲とすることで、樹脂組成物層の流動性が良好となり、埋め込み性が向上する。また、樹脂組成物の粘度を塗工に適した水準に維持しやすい。さらに、樹脂への分散性が良好となり、屈折率調整機能を発現しやすくなる。
金属酸化物粒子(B)の個数平均一次粒子径は、金属酸化物粒子(B)を透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)等で5万~100万倍程度に拡大した画像から観察できる20個の粒子を無作為に選択して、粒子の長軸方向の長さを測定し、その算術平均を求めることで決定できる。
【0067】
金属酸化物粒子(B)の含有率は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、1~40質量%含有することが好ましく、3~35質量%含有することがより好ましく、5~30質量%含有することがさらに好ましい。上記範囲とすることで、樹脂組成物の流動が好適となり、埋め込み性とが優れた水準となるためである。また、樹脂への分散性が好適となり、視認性が向上する。
【0068】
金属酸化物粒子(B)は樹脂(A)に分散処理し、金属酸化物粒子分散体として使用することが樹脂組成物層の損失正接(tanδ)と埋め込み性を調整する観点から好ましい。分散処理として、機械的解砕に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミルおよびナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミルおよびコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
【0069】
本開示では、樹脂組成物層の保存安定性の観点から、金属酸化物粒子(B)の分散処理に分散剤を使用することが好ましい。本開示において、分散剤は、前述の分散処理を経て分割された粒子が再び凝集しないように粒子間に斥力を付与する機能を持っている。
分散剤としては、従来既知の化合物を使用することでき、例えば、カチオン性またはアニオン性またはノニオン系界面活性剤、カチオン性またはアニオン性またはノニオン系高分子系分散剤、顔料誘導体型分散剤が挙げられる。
【0070】
高分子系分散剤としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカルボン酸(塩)、スチレン系共重合体、ポリアルキレンオキサイド誘導体、リン酸エステル系樹脂などが挙げられる。
高分子系分散剤の酸価は、5~450mgKOH/gが好ましく、46~300mgKOH/gがより好ましく、50~200mgKOH/gがさらに好ましい。適度な酸価を有すると、優れた静電反発効果を得られ、保存安定性に優れた分散体が得られる。本開示における酸価は、後述の実施例に記載の方法で測定したものである。
高分子系分散剤の重量平均分子量(Mw)は、1,000~50,000が好ましく、3,000~30,000がより好ましい。適度な重量平均分子量(Mw)を有すると、着色剤への吸着率が向上し、安定性に優れた分散体が得られる。本開示における重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法で測定したものである。
【0071】
顔料誘導体型分散剤は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する化合物である。例えば、スルホ基、カルボキシル基、またはリン酸基などの酸性置換基を有する化合物、ならびにこれらのアミン塩、スルホンアミド基、アミド基、または末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、フェニル基やフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。有機色素は、例えばフタロシアニン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ顔料等が挙げられる。
これらの分散剤は、1種ずつ用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
これらの分散剤を使用することで、樹脂組成物層内に含まれる金属酸化物粒子(B)の経時凝集を防ぎ、封止シートのむらを防ぐことが可能となる。
【0072】
分散剤の含有率(2種以上を含む場合は合計の含有率)は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。分散剤を0.01質量%以上含有することで、樹脂組成物層の経時凝集性が良好になり、10質量%以下であることで金属酸化物粒子(B)分散体の粘度が好適な範囲となり、塗工適正が良好になる。
【0073】
[第一実施形態]
本開示に係る第一実施形態において、樹脂組成物層は樹脂(A)と架橋剤とを含む。第一実施形態は、樹脂組成物層を加熱することにより、樹脂(A)の官能基と架橋剤が反応することで架橋構造を形成することを特徴とする。塗膜強度の観点から、樹脂(A)は重量平均分子量(Mw)が1万以上の前記樹脂(A)を用いることが好ましく、前記(メタ)アクリル樹脂(a)であることがより好ましい。
【0074】
[架橋剤]
第一実施形態において、本開示の樹脂組成物層は、架橋構造の形成を促進するため架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤は、プレス工程における熱プレスや加熱エージング時に、樹脂(A)の反応性官能基と架橋反応することで樹脂組成物層の凝集力を高め、密着性を向上させる。
架橋剤は、樹脂(A)の官能基と反応可能な官能基を複数有している。架橋剤は、例えばシランカップリング剤、エポキシ系架橋剤、酸無水物基含有化合物、イミダゾール化合物、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、アミン化合物の公知の化合物が挙げられる。樹脂組成物層の損失正接(tanδ)を調整する観点から、シランカップリング剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン化合物、イミダゾール化合物、イソシアネート化合物が好ましく、密着性の観点からエポキシ系架橋剤がより好ましい。
【0075】
シランカップリング剤は、メトキシ基、エトキシ基などの加水分解性基と、エポキシ基等の官能基がアルキレン基を介して、Si原子に結合している化合物である。
シランカップリング剤は、例えば、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3-クロロプロピルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、n-デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5-トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
密着性の観点からアルコキシシラン化合物が好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0076】
上記エポキシ系架橋剤は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物であって、前述したエポキシ基含有モノマーを有する(メタ)アクリル樹脂(a)以外の化合物である。
エポキシ系架橋剤の性状としては、液状を用いることで樹脂組成物層のtanδピーク温度を低下させ、光半導体素子と樹脂組成物層をよく密着させることができる。一方、固形状を用いることで樹脂組成物層のtanδピーク温度を高め、樹脂組成物層のべたつきを制御してシームレス性を調整することができる。
エポキシ系架橋剤としては、例えば、グリジシルエーテル型エポキシ系架橋剤、グリジシルアミン型エポキシ系架橋剤、グリシジルエステル型エポキシ系架橋剤、環状脂肪族(脂環型)エポキシ系架橋剤、ビスフェノール型エポキシ架橋剤、水添ビスフェノール型エポキシ架橋剤等が挙げられ、密着性の観点からビスフェノール型エポキシ架橋剤、水添ビスフェノール型エポキシ架橋剤が好ましい。
【0077】
グリシジルエーテル型エポキシ系架橋剤としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ系架橋剤、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンが挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ系架橋剤としては、例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジルメタキシリレンジアミンが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ系架橋剤としては、例えば、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレート等が挙げられる。
環状脂肪族(脂環型)エポキシ系架橋剤としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
ビスフェノール型エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ架橋剤、ビスフェノールF型エポキシ架橋剤、ビスフェノールS型エポキシ架橋剤、ビスフェノールAD型エポキシ架橋剤等が挙げられる。特にビスフェノールA型エポキシ架橋剤が密着性の観点から好ましい。
水添ビスフェノール型エポキシ系架橋剤としては、例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ架橋剤、水添ビスフェノールF型エポキシ架橋剤等が挙げられる。特に水添ビスフェノールA型エポキシ架橋剤が密着性の観点から好ましい。
【0078】
アジリジン化合物としては、例えば、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1、3、5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0079】
イミダゾール化合物は、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられ、更にはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂を反応させて溶剤に不溶化したタイプ、またはイミダゾール化合物をマイクロカプセルに封入したタイプ等の保存安定性を改良した化合物が挙げられる。
【0080】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0081】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。2,4-トリレンジイソシアネートが密着性の観点から好ましい。
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0082】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6-ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物が挙げられる。
【0083】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、およびヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体がより好ましい。
【0084】
第一実施形態において、塗膜強度の観点から、2種類以上の架橋剤を含有することが好ましい。樹脂組成物層の損失正接(tanδ)を調整する観点から、具体的には、シランカップリング剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン化合物、イソシアネート化合物から選択した2種以上を含む好適例が挙げられる。
【0085】
架橋剤の含有率(2種以上を併用する場合は合計の含有率)は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~30質量%であることが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましく、0.1~10質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで、埋め込み性と密着性を好適に調整できる。
【0086】
[架橋調整成分]
第一実施形態の樹脂組成物層は、架橋速度や樹脂組成物層の物性等を調整するために、架橋促進剤や架橋遅延剤など架橋調整成分を含むことが好ましい。架橋促進剤は特に限定されず、適宜選択できる。架橋促進剤の具体例としては、例えば、リン系架橋促進剤、アミン系架橋促進剤、グアニジン系架橋促進剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
架橋促進剤の含有率は、塗工適正の観点から樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【0087】
[第二実施形態]
本開示に係る第二実施形態において、樹脂組成物層は樹脂(A)と熱重合開始剤とを含む。さらに、樹脂組成物層はモノマー及び/又はオリゴマーを含有することが好ましい。
第二実施形態は、樹脂組成物層を加熱することにより、熱重合開始剤からラジカルまたはイオン(カチオンやアニオン)が発生し、樹脂(A)、モノマー、オリゴマーのいずれかが有する不飽和結合部位にて重合反応が起こることで、樹脂組成物層が高分子量化することを特徴とする。樹脂組成物層がモノマーやオリゴマーを含有する場合は、樹脂(A)とモノマーとオリゴマーがお互いに結合する場合がある。
塗膜強度の観点から、樹脂(A)は重量平均分子量(Mw)が1万以上の前記樹脂(A)を用いることが好ましく、前記(メタ)アクリル樹脂(a)であることがより好ましい。
【0088】
[熱重合開始剤]
本実施の形態において、熱重合開始剤として熱カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。樹脂組成物層の保存安定性の観点から熱ラジカル重合開始剤が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
熱カチオン重合開始剤は、熱によりイオンを発生させる機能を有している。熱カチオン重合開始剤としては、カチオン成分としてスルホニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、ヨードニウムカチオンなどが挙げられる。アニオン成分としては6フッ化アンチモンアニオン、6フッ化リンアニオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラートアニオン、トリフルオロメタンスルフォン酸などが挙げられる。
熱ラジカル重合開始剤は、熱によりラジカルを発生させる機能を有している。熱ラジカル重合開始剤としては、アゾ熱重合開始剤や有機過酸化物重合開始剤が挙げられる。
【0089】
有機過酸化物重合開始剤としては、例えば、ジアセチルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ヘキサン、(2-エチルヘキサノイル)(t-ブチル) パーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;
ジプロピオニルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサネート、t-アミルパーオキシ3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、2,5-ジメチル-2,5-ジ-2-エチルヘキサノイルパーオキシヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネートなどのパーオキシエステル;
メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルベンゾエイト、ピバロイルt-ブチルパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ペンタン酸ブチルなどのパーオキシケタール;
t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ジベンゾイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジイソブチリルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノールパーオキサイド、m-トルイルベンゾイルパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシカーボネート、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボキシロキシ)ヘキサンなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられるが、これらに限定されない。
保存安定性の観点からジアルキルパーオキサイド類が好ましく、ジ-t-ブチルパーオキサイドがより好ましい。
【0090】
アゾ熱重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などの2,2’-アゾビスブチロニトリル;
2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)などの2,2’-アゾビスバレロニトリル;
1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)などの1,1’-アゾビス-1-アルカンニトリル
2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’-アゾビスプロピオニトリル;
2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)などの2,2’-アゾビスプロピオンアミド;
その他、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]フォルムアミドなどが挙げられる
また、カルボキシル基や水酸基を有するアゾ化合物は、例えば4,4’-アジビス(4-シアノペンタン酸)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-(カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン)テトラハイドレート等が挙げられるが、これらに限定されない。
保存安定性の観点から2,2’-アゾビスプロピオンアミド類が好ましく、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)がより好ましい。
【0091】
熱ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度は60~200℃が好ましく、80~180℃がより好ましく、100~150℃がさらに好ましく、105~130℃が最も好ましい。60℃以上にすることで、樹脂組成物層の保存安定性を向上することができ、200℃以下にすることで封止層の加熱エージング工程を短縮することができる。
【0092】
10時間半減期温度は、熱重合開始剤が熱分解によって10時間後に初期値の半分まで減少する温度である。具体的には、熱重合開始剤のラジカルに対して、不活性な溶媒を用いて熱重合開始剤溶液を調製し、窒素置換を行ったガラス管中に密閉する。これを所定温度にセットした恒温層に10時間浸し熱分解させて、残った熱重合開始剤の量を測定する。これらの一連の作業を何点かの温度で実施し、プロットして得られた直線から半減期を求めることができる。
【0093】
熱ラジカル重合開始剤の含有率(2種以上を併用する場合は合計の含有率)は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~20質量%を使用することが好ましく、0.05~10質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで、密着性を好適に調整できる。
【0094】
[モノマー]
本実施の形態において、モノマーとは、オリゴマーやポリマーを構成するための最小構成単位のラジカル重合性基を有する化合物を意味する。
ラジカル重合性基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等が挙げられる。また、モノマーは、単官能モノマーであっても、多官能モノマーであってもよい。なお、本明細書における「単官能」とは、1分子中に重合性基を1つのみ有する化合物を指し、「2官能」及び「3官能」は、それぞれ、1分子中に重合性基を2つ及び3つ有する化合物を指す。なお本明細書では、2官能以上を総称して「多官能」とも呼称する。
【0095】
モノマーとして具体的には、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート4-t-ブチルシクロヘキノール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ) アクリレート、トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、PO変性ノニルフェノールアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、アクリロイルモルフォリン、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-((メタ)アクリロイルオキシ)プロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマーや、
N-ビニルカルバゾール、1-ビニルイミダゾール、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルオキサゾリジノン、N-ビニルメチルオキサゾリジノンなどの分子内にN-ビニル基を1つ有する単官能ビニルモノマー、
1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロール酸EO変性ジアクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO・PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、
2-(アリルオキシメチル)メチルアクリレート、2-(アリルオキシメチル)エチルアクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基とアリル基とを1個ずつ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセリルトリ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマー、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等などの分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー、などが挙げられるが、これらに限定されない。
なお、上記「EO」は「エチレンオキサイド」を指し、「PO」は「プロピレンオキサイド」を指す。
モノマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0096】
中でも、(メタ)アクリレート化合物として、埋め込み性の観点から、2~6官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましく、2~3官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことがより好ましい。具体的には、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0097】
モノマーの含有率(2種以上を併用する場合は合計の含有率)は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~30質量%を使用することが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましく、0.1~15質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで、埋め込み性を好適に調整できる。
【0098】
[オリゴマー]
本実施の形態において、オリゴマーとは、ラジカル重合性基を含有する2~100個のモノマーに基づく構成単位を有する重合体であり、重量平均分子量は、400~9,999である。オリゴマーの重量平均分子量は、400~5,000がより好ましく、500~3,000がさらに好ましい。
オリゴマーが有する重合性基として、例えば、(メタ)アクリロイル基、N-ビニル基、ビニルエーテル基、アリル基、不飽和カルボン酸基等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。また、ラジカル重合性オリゴマーは単官能であっても、多官能であっても良い。重合性基の数は、1分子あたり1~6であることが好ましく、2~4であることがより好ましい。
【0099】
オリゴマーとして具体的に、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーなどのウレタンアクリレートオリゴマー、アクリルエステルオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。オリゴマーは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0100】
本発明の(メタ)アクリレート化合物は、分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物を含むことが埋め込み性の観点から好ましい。
【0101】
オリゴマーの含有率(2種以上を併用する場合は合計の含有率)は、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~30質量%を使用することが好ましく、0.05~20質量%であることがより好ましく、0.1~15質量%であることがさらに好ましい。上記含有率とすることで、埋め込み性を好適に調整できる。
【0102】
[その他成分]
本開示の樹脂組成物層には、本開示の目的を損なわない範囲で、その他成分を含有しても良い。例えば、着色剤、分散剤、表面調整添加剤、軟化剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、密着性改良剤などを添加することができる。
樹脂組成物層の粘弾性などの膜特性の制御の観点から、着色剤、表面調整添加剤、密着性改良剤を含むことが好ましい。
【0103】
着色剤としては、例えば、黒色顔料、黒色染料、ならびに赤色、緑色、青色、黄色、紫色、シアンおよびマゼンタ等の顔料が挙げられ、複数の着色剤を混合することで調色することもできる。黒色顔料は、膜特性の制御の観点から、カーボンブラックが好ましい。
着色剤が顔料の場合、個数平均一次粒子径が10~100nmであることが好ましい。上記範囲とすることで樹脂組成物の粘度を塗工に適した水準に維持しやすい。なお、顔料の個数平均一次粒子径は、金属酸化物粒子(B)と同様の方法にて求めることができる。
着色剤の含有率(2種以上を含む場合は合計の含有率)は、埋め込み性の観点から、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.1~30質量%であることが好ましく、0.5~25質量%であることがより好ましい。
【0104】
表面調整添加剤としては、シリコン系、シリコンアクリル系、フッ素系、アセチレングリコール系等の重量平均分子量(Mw)が1,000~9,999である界面活性剤のうちラジカル重合性基を含有しないのもが挙げられる。中でも密着性の観点から、シリコン系、シリコンアクリル系の界面活性剤を含有することが特に好ましい。
シリコン系の表面調整用添加剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサンのメチル基の一部に有機基を導入した変性ポリシロキサン化合物であることが好ましい。変性の例として、ポリエーテル変性、メチルスチレン変性、アルコール変性、アルキル変性、アラルキル変性、脂肪酸エステル変性、エポキシ変性、アミン変性、アミノ変性、メルカプト変性などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの変性の方法は組み合わせて用いることができる。中でもポリエーテル変性ポリシロキサン化合物、アラルキル変性ポリシロキサン化合物が相溶性などの点で好ましい。
表面調整添加剤の含有率は、塗工適正の観点から樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましい。
【0105】
密着性改良剤としては、ラジカル重合性基を含有しない重量平均分子量(Mw)が1,000~9,999であるオリゴマーが挙げられる。ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂環式系石油樹脂、および芳香族系石油樹脂等が例示できる。密着性改良剤の重量平均分子量(Mw)は2,000~8,000がより好ましく、3,000~5,000がさらに好ましい。
密着性改良剤の含有率は、密着性の観点から、樹脂組成物層の全量(100質量%)を基準として、0.1~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。
【実施例
【0106】
以下、実施例および比較例により本開示を具体的に説明するが、本開示は実施例に特に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」および「%」とあるものは特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を表す。
【0107】
本実施例で求めた数値は、以下の方法により得られた値である。
[樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)]
樹脂(A)の塗布液を、厚さ75μmの保護フィルム(三井化学東セロ社製、SP-PET-O3)の剥離層上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで3分間乾燥した後、樹脂(A)側に厚さ50μmの剥離ライナー(三井化学東セロ社製、SP-PET-O1)の剥離層側を貼り合わせた。次いで保護フィルム及び剥離ライナーを剥がし、得られた樹脂(A)のTgを示差走査熱量測定計(TAインスツルメント社製、「Discovery DSC 2500」)により測定した。約2mgの試料をアルミニウムパンに入れ、秤量して示差走査熱量測定計にセットし、試料を入れない同タイプのアルミニウムパンをリファレンスとして、100℃で5分間保持した後、液体窒素を用いて-50℃まで急冷した。その後、昇温速度5℃/分で昇温し、得られたDSCチャートから樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)を決定した。
【0108】
[重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)]
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の測定は、島津製作所社製GPC「LC-GPCシステム」を用い、分子量既知のポリスチレンを標準物質として換算することにより重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を求めた。
装置名:島津製作所社製、LC-GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
【0109】
[固形分]
精密天秤でアルミカップの質量(W0)を計量した。次いで、アルミカップに試料を1g程度入れ、精密天秤でアルミカップ入り試料質量(W1)を計量した。アルミカップ入り試料を150℃オーブンで120分加熱した後、オーブンから取出し常温に戻した。加熱後のアルミカップ入り試料について精密天秤にて残留質量(W2)を計量した。そして、(W2-W0)/(W1-W0)×100(%)の式にて固形分を算出した。
【0110】
[酸価]
ここで「酸価」とは、樹脂(A)固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070に準じ、電位差滴定法によって求めた。
【0111】
[樹脂(A)の製造例]
[(メタ)アクリル樹脂(a)(R-1)の製造例]
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、酢酸エチル80部、メタクリル酸メチル20部、メタクリル酸n-ブチル79部、メタクリル酸1部、開始剤として、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を65℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して、重量平均分子量(Mw):3.5万、分散度(Mw/Mn):2、ガラス転移温度(Tg):35℃、酸価:7mgKOH/g、固形分:25%のアクリル樹脂(R-1)の溶液を得た。
【0112】
[(メタ)アクリル樹脂(a)(R-2~R-4)の製造例]
表1に示した組成および配合量(質量部)に変更した以外は、(メタ)アクリル樹脂(a)(R-1)の製造と同様の方法によって、(メタ)アクリル樹脂(a)(R-2~R-4)を製造した。なお、空欄は配合しないことを表し、固形分はいずれも25%であった。
【0113】
【表1】
【0114】
表中の略号は以下の通りである。
BA:アクリル酸n-ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
nBMA:メタクリル酸n-ブチル
MAA:メタクリル酸
2HEMA:メタクリル酸2-ヒドロキシエチル
GMA:メタクリル酸グリシジル
MOI:2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート
【0115】
[ウレタン樹脂(R-5)の製造例]
攪拌機、温度計、還流冷却器、窒素導入管、減圧設備を備えたガラス製フラスコにテレフタル酸166部、アジピン酸146部および3-メチル-1,5-ペンタンジオール212部、エチレングリコール25部を仕込み、窒素ガスを通じながら攪拌し、常圧下徐々に昇温し、200~230℃にて約8時間反応させ酸価:43mgKOH/gの液状物を得た。次いでテトラ-n-ブトキシチタン0.01部を仕込み、窒素置換後密閉下180℃にて30分間攪拌した。次いで230℃、5mmHgにて2時間反応させ、酸価:1.1mgKOH/g、水酸基価:114.2mgKOH/g、重量平均分子量(Mw):982、色相:10(APHA法、以下同様)のポリエステルジオールを得た。
次いで、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器に、前記ポリエステルジオールを734部、ジメチロールプロピオン酸23.9部、トルエンジイソシアネート219部、およびトルエン242部を仕込み、窒素雰囲気下50℃で8時間反応させた。これに、トルエン1200部を加えて、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーの溶液を得た。
次に得られたプレポリマーの溶液を70℃に加温しその温度を保ちながら、1,3-ジアミノプロパン20.0部、ベンジルアミン3.1部、2-プロノール600部、およびトルエン961部を混合した溶液を1時間で滴下した。滴下終了後70℃にて更に6時間反応させることで、重量平均分子量(Mw):15万、分散度(Mw/Mn):4.5、ガラス転移温度(Tg):18℃、酸価:10mgKOH/g、固形分:25%のウレタン樹脂(R-5)の溶液を得た。
【0116】
[金属酸化物粒子(B)の分散体の製造例]
[分散剤の製造例]
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計を備えた4口フラスコに、イソミリスチルアルコール60.0部、ε-カプロラクトン127.8部、δ-バレロラクトン112.2部および触媒としてモノブチルスズ(IV)オキシド0.1部を仕込み、窒素ガスで置換した後、120℃で3時間撹拌しながら反応した。固形分測定により98%が反応したことを確認したのち、ピロメリット酸二無水物30.5部を追加し100℃で5時間反応を行った。反応終了後、冷却し、メチルエチルケトンで固形分量を調整して、固形分:81%、酸価:49mgKOH/g、直鎖型、酸性である分散剤を得た。
【0117】
[金属酸化物粒子(B)の分散体(D-1)の製造例]
金属酸化物粒子(B)としてZrO(PCS60、新日本電工社製、個数平均一次粒子径20nm、BET法による比表面積 50~70m/g)を724部、前述の分散剤を80.2部、メチルエチルケトン1195.8部を混合し、ディスパーで予備分散した後、直径0.3mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを取り除き、固形分:39.4%、金属酸化物粒子(B)の濃度:36.2%の金属酸化物粒子(B)の分散体(D-1)を得た。
[金属酸化物粒子(B)の分散体(D-2)の製造例]
金属酸化物粒子(B)をTiO(MT-05、テイカ社製、個数平均一次粒子径10nm、BET法による比表面積 20~50m/g)、分散剤をDISPERBYK(登録商標)-180(BYK-Chemie社製、固形分81%)に変更した以外は、金属酸化物粒子(B)の分散体(D-1)の製造と同様の方法によって、固形分:39.4%、金属酸化物粒子(B)の濃度:36.2%の金属酸化物粒子(B)の分散体(D-2)を製造した。
[金属酸化物粒子(B)の分散体(D-3)の製造例]
金属酸化物粒子(B)をSiO(AEROSIL(登録商標)50、日本アエロジル社製、個数平均一次粒子径50nm、BET法による比表面積 35~65m/g)に変更した以外は、金属酸化物粒子(B)の分散体(D-1)の製造と同様の方法によって、固形分:39.4%、金属酸化物粒子(B)の濃度:36.2%の金属酸化物粒子(B)の分散体(D-3)を製造した。
[金属酸化物粒子(B)の分散体(D-4)の製造例]
金属酸化物粒子(B)をAl(AEROXIDE(登録商標)Alu C、日本アエロジル社製、個数平均一次粒子径13nm、BET法による比表面積 85~115m/g)に変更した以外は、金属酸化物粒子(B)の分散体(D-1)の製造と同様の方法によって、固形分:39.4%、金属酸化物粒子(B)の濃度:36.2%の金属酸化物粒子(B)の分散体(D-4)を製造した。
[金属酸化物粒子(B)の分散体(D-5)の製造例]
金属酸化物粒子(B)をTiO(MT-700B、テイカ社製、個数平均一次粒子径80nm、BET法による比表面積 20~60m/g)に変更した以外は、金属酸化物粒子(B)の分散体(D-1)の製造と同様の方法によって、固形分:39.4%、金属酸化物粒子(B)の濃度:36.2%の金属酸化物粒子(B)の分散体(D-5)を製造した。
【0118】
[実施例1]
[樹脂組成物の製造]
樹脂(A)として前述の(メタ)アクリル樹脂(a)(R-1)の溶液:314.8部(樹脂(A)78.7部、溶剤236.1部)、金属酸化物粒子(B)の分散体(D-1):41.4部(固形分16.3部(内、金属酸化物粒子(B)15部)、溶剤25.1部)、その他成分として架橋剤であるエポキシ系架橋剤jER(登録商標)YX8034(三菱ケミカル社製):5部、溶剤としてメチルエチルケトン:55部をディスパーで撹拌を行いながら順次投入し、十分に均一になるまで撹拌した。次いで、孔径10μmのメンブランフィルターで濾過を行い、塗工むらの原因となる粗大異物を除去し、固形分:24%の樹脂組成物を得た。
なお、表2に記載した樹脂(A)、金属酸化物粒子(B)、架橋剤およびその他成分は固形分換算量とした。
【0119】
[封止シートの製造]
樹脂組成物を、厚さ38μmの保護フィルム(三井化学東セロ社製、SP-PET-O3;剥離層面側のSqが0.3μm)の剥離層上に、乾燥後の厚さが20μmになるように塗布し、100℃の熱風オーブンで3分間乾燥することで、樹脂組成物層を形成した。次いで、露出した樹脂組成物層に厚さ50μmの剥離ライナー(三井化学東セロ社製、SP-PET-O1)の剥離層側を貼り合わせ、0℃にて7日間エージングし、保護フィルム/厚みが20μmの樹脂組成物層/剥離ライナーの順に積層された実施例1の封止シートを得た。
【0120】
[封止シートの厚さTt、樹脂組成物層の厚さTa、保護フィルムの厚さTb、剥離ライナーの厚さTc]
10cm×10cmサイズに裁断した封止シートの幅方向の端部から他端部まで等間隔となる10箇所を決め、その10箇所の厚さを測定し、その平均値を封止シートの厚さTtとした。次いで、封止シートから剥離ライナーを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した剥離ライナーの厚さを測定した。その平均値をTcとする。その後、更に、樹脂組成物層から保護フィルムを剥離し、前述と同じ位置に対応する10箇所の剥離した保護フィルムの厚さを測定した。その平均値をTbとする。樹脂組成物層の厚さTaは、下記の(式2)により求めた。なお、厚さはMH-15M(ニコン社製)を用いて測定した。
Ta=Tt-Tc-Tb (式2)
【0121】
[樹脂組成物層のtanδピーク強度、tanδ40]
樹脂組成物層の厚さが50μmになるように変更した以外は、前述の封止シートの製造例と同様に封止シートを作成した。0.5cm×2cmサイズに裁断し、保護フィルムと剥離ライナーを剥がした。得られた樹脂組成物層を動的粘弾性測定装置DVA-200/L2(アイティー計測制御社製)を用いて、周波数10Hz、測定温度範囲-50~150℃、昇温速度5℃/分、引張モードにて、動的粘弾性を測定し損失正接(tanδ)をプロットした。得られたグラフから損失正接(tanδ)のピークトップ強度(tanδピーク強度)、40℃の損失正接(tanδ40)を読み取った。
【0122】
[屈折率]
実施例1の封止シートを、2cm×5cmサイズに裁断し、保護フィルムと剥離ライナーを剥がした。得られた樹脂組成物層の屈折率を、アッベ屈折計(DR-M2、アタゴ株式会社)を用いて測定した。
【0123】
[ヘイズ・全光線透過率]
実施例1の封止シートを2.5cm×10cmサイズに裁断し、剥離ライナーを剥がした面に厚さ1.1mmのガラス板(青板ガラス、河村久蔵商店社製)を貼付した後、保護フィルムを剥がした。ヘイズメーター(NDH8000、日本電色工業社製)を用いて、樹脂組成物層のヘイズ値と全光線透過率を測定した。
【0124】
[彩度C
実施例1の封止シートを2.5cm×10cmサイズに裁断し、剥離ライナーを剥がした面に厚さ1.1mmのガラス板(青板ガラス、河村久蔵商店社製)を貼付した後、180℃条件下で120分間静置した。標準白色板の上にガラス板が接するように載置し、保護フィルムを剥離することで、標準白色板/ガラス板/樹脂組成物層の構成物を作った。測色機(X-Rite eXact、エックスライト社製)を用いて、光源条件はD50/2°としてa値とb値を樹脂組成物層面の任意の3か所で測定して平均値を算出した。下記(式1)を用いて、a値の平均値とb値の平均値から彩度Cを算出した。
=(a*2+b*20.5 (式1)
【0125】
[二乗平均平方根高さSq]
10cm×10cmサイズに裁断した保護フィルムの剥離層面を、ISO 25178に準じて、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID+、対物レンズ20倍)を用いて、任意の5か所を測定した後、データ解析ソフト(LMeye8)を用いて解析することで算出した。
【0126】
[評価方法・基準]
[埋め込み性]
マイクロLED基板の凹凸を模した、試験基板(サイズ25mm×25mmのガラス板の一方面に、凹部の幅200μm、凸部の高さ5μm、凸部の幅200μmが形成された板)を用意した。試験基板の模式的断面図を図3に示す。
封止シートを30mm×30mmサイズに裁断し、剥離ライナーを剥がして樹脂組成物層を露出させ、樹脂組成物層を試験基板の凹凸部が形成された面に載置した。その後、保護フィルムの上にクッション材として、厚さ50μmのTPX(オピュランX-44B、三井化学東セロ社製)と、厚さ2.0mmの塩ビフィルム(セレブT、オカモト社製)を、順に積層し、さらに張り付き防止のためボール紙を積層した。ガラス基板/樹脂組成物層/保護フィルム/クッション材(TPX/塩ビフィルム)/ボール紙からなる積層体に上方から基板面に対し5MPa、100℃の条件で20分間、プレスし、試験基板の凹部に樹脂組成物層を充填することで、封止層を形成した。プレス後、クッション材とボール紙を剥離した。
得られた封止層付試験基板から側面にはみ出した封止層を、カッターを用いて大まかに除去し、さらにやすりがけすることで封止層付試験基板の側面に残存する封止層を取り除き、試験基板の側面を露出させることで、凹凸部分が観察できる状態にした。任意の15か所の試験基板の凹部について、顕微鏡で観察することにより、埋め込み性を評価した。試験基板の凹部において、封止層と試験基板の最大隙間が1μm以下である場合を溝が埋め込まれているとした。
評価基準は下記の通りとし、A~Cを良好とし、目標性能未達の評価をDとした。
A:埋め込まれた溝が14か所以上
B:埋め込まれた溝が13か所以下、11か所以上
C:埋め込まれた溝が10か所以下、8か所以上
D:埋め込まれた溝が7か所以下
【0127】
[シームレス性]
実施例1の封止シートを25mm×100mmに裁断したものを1枚用意し、剥離ライナーを剥がして樹脂組成物層を露出させ、ガラス板(25mm×100mm×1.1mm、青板ガラス、河村久蔵商店社製)の上に端部が合うように載置した。その後、保護フィルムの上にクッション材として、厚さ50μmのTPX(オピュランX-44B 、三井化学東セロ社製)と、厚さ2.0mmの塩ビフィルム(セレブT、オカモト社製)を、順に積層し、さらに張り付き防止のためボール紙を積層した。ガラス板/樹脂組成物層/保護フィルム/クッション材(TPX/塩ビフィルム)/ボール紙からなる積層体に上方から基板面に対し5MPa、100℃の条件で20分間、プレスし、ガラス板と樹脂組成物層を圧着し、ガラス板の上に封止層を形成した。プレス後、クッション材とボール紙を剥離し、シームレス試験片とした。得られたシームレス試験片から保護フィルムを剥離し、ヘイズ(Hs)を測定した。
次いで、封止シートを縦25mm、横50mmサイズに裁断したものを2枚用意し、剥離フィルムを剥がして樹脂組成物層を露出させ、ガラス板(25mm×100mm×1.1mm、青板ガラス、河村久蔵商店社製)の上に横並びで端部を合わせて載置した。その後、シームレス試験片と同様にプレスし、2枚の封止シートから形成した封止層の同士の界面をつなぎ目とするジョイント試験片を得た。ジョイント試験片から保護フィルムを剥離し、つなぎ目部位のヘイズ(Hj)を測定した。
シームレス試験片のヘイズ(Hs)とジョイント試験片のヘイズ(Hj)の変化量(|HsーHj|/100(%))を算出して評価した。
評価基準は下記の通りとし、A~Cを良好とし、目標性能未達の評価をDとした。
A:変化量が0.5%以下
B:変化量が0.5%より大きく、0.8%以下
C:変化量が0.8%より大きく、1.0%以下
D:変化量が1.0%より大きい
【0128】
[密着性]
シームレス性評価に用いたシームレス試験片を用意し、保護フィルムを剥がし、ガラス板と封止層からなる試験片を180℃条件下で120分間静置することで、ガラス板と封止層を密着させた試験片を作製した。
JIS K 5600-5-6(クロスカット法)に準じ、クロスカットガイドとカッターナイフを用いて、試験片の封止層に1mm角の直角の格子パターン(25マス)を作成し、粘着テープ(CT1835、ニチバン社製)を格子カットした部分に貼り、封止層としっかり密着させた。付着して5分以内に60°に近い角度で、0.5~1.0秒で引き離した。剥がれた封止層の様子を観察し、密着性を評価した。
評価基準は下記の通りとし、A~Cを良好とし、目標性能未達の評価をDとした。
A:完全に剥がれたマスが0個、切込みの端部のみに部分的剥離なし
B:完全に剥がれたマスが0個、切込みの端部のみに部分的剥離あり
C:剥がれたマスが1個以上2個以下
D:剥がれたマスが3個以上
【0129】
[視認性]
シームレス性評価に用いたシームレス試験片を用意し、保護フィルムを剥がし、ガラス板と封止層からなる試験片を180℃条件下で120分間静置することで、ガラス板と封止層を密着させた試験片を作製した。
試験片をLED表示装置(LED Name Badge(白)、アスコ社製)の表示面に封止層が接するように載置し、表示装置/封止層/ガラス板からなる積層体を作った。次いで、表示装置に黒背景に白文字(大文字A~Cの計3文字)を表示した。観測者は水平方向から30°立ち上がった角度と、90°立ち上がった垂直方向の2つの角度より、表示された文字を観察した。試験片の載置前後で表示された文字の歪み、および輪郭のにじみを観測者が目視で比較評価した。
評価基準は下記の通りとし、A~Bを良好とし、目標性能未達の評価をDとした。
A:いずれの角度条件においても、歪みおよび輪郭のにじみが見られない。
B:いずれか1つの角度条件において、歪みおよび/又は輪郭のにじみが見られる。
D:全ての角度条件において、歪みおよび/又は輪郭のにじみが見られる。
【0130】
[実施例2~37]、[比較例1~10]
表2~5に示した含有率と厚さTaと保護フィルムに変更した以外は実施例1と同様の方法によって封止シートを作成し、同様に評価した。なお、いずれの架橋剤、オリゴマー、モノマー、重合開始剤、その他成分も同時に添加した。
表2~5中、樹脂(A)、架橋剤、オリゴマー、モノマー、重合開始剤、その他成分は固形分換算の量である。金属酸化物粒子(B)は分散体(D-1~D-5)の固形分換算の量と括弧内に分散体(D-1~D-5)中の金属酸化物粒子(B)の量を記載した。空欄は配合しないことを表す。
【0131】
表中の略号は以下の通りである。
C-1:エポキシ系架橋剤(jER(登録商標)YX8034、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱ケミカル社製)
C-2:イソシアネート化合物(コスモネート(登録商標)T100、2,4-トリレンジイソシアネート、三井化学ファイン社製)
C-3:シランカップリング剤(KBE-403、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越シリコーン社製)
O-1:ウレタンアクリレートオリゴマー(KRM8667、ダイセル・オルネクス社製、3官能、重量平均分子量2000、60℃粘度11,000cps)
O-2:エポキシアクリレートオリゴマー(Miramer(登録商標)HR6042、MIWON社製、2官能、重量平均分子量1400、25℃粘度21,000cps)
O-3:ポリエステルアクリレートオリゴマー(Miramer(登録商標)PS4040、MIWON社製、4官能、重量平均分子量1300、25℃粘度6,300cps)
O-4:アクリルエステルオリゴマー(ART CURE(登録商標)UN-9000PEP、根上工業社製、2官能、重量平均分子量5000、25℃粘度2,000,000cps)
M-1:EO変性(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(Miramer(登録商標)M3130、MIWON社製、3官能、25℃粘度65cps)
M-2:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(ビスコート(登録商標)#230、大阪有機化学工業社製、2官能、25℃粘度7cps)
I-1:ジ-t-ブチルパーオキサイド(パーブチル(登録商標)D、日油社製)
I-2:2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(VAm-110、富士フイルム和光純薬社製)
A-1:リン系酸化防止剤(アデカスタブ PEP-36、ADEKA社製)
A-2:表面調整剤(BYK(登録商標)-3440、BYK-Chemie社製)
P-1:厚さ38μmの保護フィルム(SP-PET-O3、三井化学東セロ社製、Sq:0.3μm)
P-2:厚さ75μmの保護フィルム(マットフィルム(タイプM3)、アイム社製、Sq:1.5μm)
P-3:厚さ50μmの保護フィルム(マットフィルム(タイプM8)、アイム社製、Sq:1,0μm)
P-4:厚さ10μmの保護フィルム(マットフィルム(タイプM3)、アイム社製、Sq:1.5μm)
P-5:厚さ100μmの保護フィルム(マットフィルム(タイプM8)、アイム社製、Sq:1.0μm)
P-6:厚さ188μmの保護フィルム(マットフィルム(タイプM3)、アイム社製、Sq:1.5μm)
P-7:厚さ200μmの保護フィルム(マットフィルム(タイプM2)、アイム社製、Sq:2.0μm)
【0132】
【表2】
【0133】
【表3】
【0134】
【表4】
【0135】
【表5】
【0136】
本開示において、個数平均一次粒子径が5~50nmである金属酸化物粒子(B)を含有しない封止シートの場合、比較例1、5、6、10に示すように、埋め込み性と、密着性または視認性に課題があることが分かる。また、屈折率が1.45~1.65の範囲外の封止シートの場合、比較例2~4、7~9に示すように、シームレス性と視認性に課題がある。
比較例1~10の封止シートは、埋め込み性とシームレス性をバランスよく高レベルで満足することはできなかった。また、密着性と視認性も高水準で満足することはできなかった。
これに対し、実施例1~37によれば、本開示の封止シートは、表2~5に記載の通り、優れた埋め込み性を発現しており、シームレス性にも優れている。さらに、密着性や視認性にも優れることから、本開示の封止シートは、光半導体素子の封止に良好に用いることができると判明した。
【符号の説明】
【0137】
1:封止シート
2:樹脂組成物層
2´:封止層
3:基材
4:剥離ライナー
5:光半導体素子
6:基板
7:ガラス基板
【要約】
【課題】光半導体素子を封止する場合において、埋め込み性とシームレス性に優れ、マイクロLEDを光源とするディスプレイに適用した場合においても埋め込み性とシームレス性に優れる封止シートを提供することを課題とする。
【解決手段】光半導体素子を封止するための封止シートであって、前記封止シートは、保護フィルムと、樹脂組成物層とがこの順に配置されており、前記樹脂組成物層は、樹脂(A)と、金属酸化物粒子(B)とを含有し、前記金属酸化物粒子(B)の個数平均一次粒子径が5~50nmであって、前記樹脂組成物層の屈折率が1.45~1.65である封止シートによって解決される。
【選択図】 図1
図1
図2
図3