(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 3/47 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
H02K3/47
(21)【出願番号】P 2023545414
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2022030779
(87)【国際公開番号】W WO2023032642
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2021144252
(32)【優先日】2021-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 勇生
【審査官】尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-178490(JP,A)
【文献】特開平6-141500(JP,A)
【文献】特開昭56-115149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁極を有する界磁子(20)と、多相の電機子巻線(41,211)を有するティースレス構造の電機子(40,210)と、前記電機子を保持する電機子保持部材(50,220)と、を備える回転電機(10)であって、
前記電機子巻線は、相ごとに複数の部分巻線(81)からなる相巻線を有し、
前記部分巻線は、周方向に所定間隔を離して設けられる一対の中間導線部(82)と、軸方向一端側及び他端側に設けられ前記一対の中間導線部を環状に接続する渡り部(83,84)とを有し、互いに異なる部分巻線の各中間導線部どうしが近接状態で周方向に並べて配置されており、
前記電機子のコイルエンド(CE1,CE2)において、前記電機子保持部材の一部又は前記電機子保持部材に固定された部材である位置規制部材(70,100,170,225,240,260,270,280)により、前記電機子保持部材に組み付けられた状態での前記部分巻線の位置が規制されており、
前記部分巻線と前記位置規制部材との間に絶縁層(150,250)が介在している、回転電機。
【請求項2】
前記位置規制部材は、前記コイルエンドにおいて前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態で設けられており、
前記渡り部と前記位置規制部材との間に前記絶縁層が介在している、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記電機子巻線は、前記部分巻線として、前記コイルエンドにおける前記渡り部の形状が相違している第1部分巻線及び第2部分巻線を有し、
前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線は、前記コイルエンドにおいて少なくともいずれか一方が径方向に屈曲された状態で互いに周方向に重なる状態で配置されており、
前記位置規制部材は、前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線の各位置を共に規制する共通部材として設けられている、請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位と、前記第2部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位とにそれぞれ入り込んだ状態で設けられている、請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記位置規制部材は、前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具(101,245)により固定される部材であり、
前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態になる一方、前記第2部分巻線における前記渡り部に軸方向外側から対向する状態にして設けられている、請求項3に記載の回転電機。
【請求項6】
前記位置規制部材は、前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具(101,245)により固定される部材であり、
前記コイルエンドにおいて、前記第1部分巻線では前記渡り部が径方向に屈曲され、前記第2部分巻線では前記渡り部が径方向に屈曲されていない構成であり、
前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態になる一方、前記第2部分巻線における前記渡り部の環状外側となる部位に対向する状態にして設けられている、請求項3に記載の回転電機。
【請求項7】
前記位置規制部材は、前記第2部分巻線の前記渡り部において周方向に延びる部分を、環状外側及び環状内側のそれぞれから挟み込む部位(113,122)を有する、請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
前記位置規制部材は、
前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具(245)により固定される部材であり、
環状をなす環状部(241,261)を有し、
前記環状部における径方向内外のうちいずれか一方の側に、前記部分巻線における前記渡り部の環状内側に入り込んだ状態となる規制部(242,264)が設けられ、他方の側に、前記固定具により前記電機子保持部材に固定される被固定部(243,266)が設けられている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項9】
前記複数の部分巻線における前記各渡り部は周方向に並び、その周方向に並ぶ前記各渡り部に対向する状態で環状の前記位置規制部材が設けられており、
前記各部分巻線に対して電気的に接続される配線モジュール(130)が、環状をなし、かつ前記位置規制部材に対して固定された状態で設けられている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項10】
軸方向両側の前記コイルエンドのうち少なくともいずれかにおいて前記部分巻線の前記渡り部と前記位置規制部材とを含む範囲でこれら各部材が一体で樹脂モールドされることにより、前記絶縁層が形成されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項11】
前記位置規制部材において環状をなす環状部(261)に、軸方向に貫通する貫通孔(265)が設けられており、その貫通孔内と前記環状部の軸方向両側とを含む範囲で樹脂モールドがなされている、請求項10に記載の回転電機。
【請求項12】
前記位置規制部材において、前記渡り部を挟んで前記電機子保持部材の反対側であり、かつ当該渡り部を包囲する部位が、樹脂モールドがなされていない非モールド部となっている、請求項10に記載の回転電機。
【請求項13】
前記電機子保持部材には、軸方向一端側及び他端側にそれぞれ前記位置規制部材が設けられており、
軸方向において軸方向一端側の前記位置規制部材から軸方向他端側の前記位置規制部材までの範囲であり、かつ前記部分巻線の前記中間導線部を含む構成部材が樹脂モールドされている、請求項10に記載の回転電機。
【請求項14】
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記部分巻線の前記中間導線部と前記電機子コアとの間に絶縁材が介在しており、その絶縁材は、前記コイルエンドにおける前記絶縁層よりも接着力の高い樹脂材である、請求項10に記載の回転電機。
【請求項15】
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記部分巻線の前記中間導線部と前記電機子コアとの間に絶縁材が介在しており、その絶縁材は、前記コイルエンドにおける前記絶縁層よりも熱伝導率の高い樹脂材である、請求項10に記載の回転電機。
【請求項16】
前記電機子の温度を検出する温度検出部(160)を有し、
前記温度検出部が、前記渡り部及び前記位置規制部材と共に樹脂モールドされている、請求項10に記載の回転電機。
【請求項17】
前記電機子保持部材において、
軸方向一方の第1コイルエンド(CE1)には、前記位置規制部材として、前記電機子保持部材とは別部材でありかつ当該電機子保持部材に対して固定具(245)により固定される第1位置規制部材(240)が設けられ、
軸方向他方の第2コイルエンド(CE2)には、前記位置規制部材として、径方向に張り出した状態で第2位置規制部材(225)が前記電機子保持部材に一体成形されている、請求項1に記載の回転電機。
【請求項18】
前記電機子巻線は、前記部分巻線として、前記第2コイルエンドにおいて径方向に屈曲された前記渡り部を有する部分巻線と、径方向に屈曲されていない前記渡り部を有する部分巻線とを有しており、
前記第2位置規制部材は、前記電機子保持部材の円筒部(221)に対して径方向に対向する環状の環状壁部(227)を有し、前記円筒部と前記環状壁部との間に形成される環状溝部に、径方向に屈曲されていない前記渡り部が挿入されている、請求項17に記載の回転電機。
【請求項19】
前記第2位置規制部材において、前記環状壁部は、周方向に所定間隔で設けられ軸方向に延びる複数の規制部(228)を有し、
前記第2位置規制部材における前記規制部が、径方向に屈曲された前記渡り部の環状内側に入り込んだ状態となっている、請求項18に記載の回転電機。
【請求項20】
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記電機子コアは、前記電機子保持部材に対して径方向に対向する状態で設けられており、
前記電機子コアと前記電機子保持部材との間に、前記絶縁層を構成する絶縁材が介在している、請求項1に記載の回転電機。
【請求項21】
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記位置規制部材は、前記電機子保持部材に対して別体で設けられ、
前記電機子コア及び前記位置規制部材には、軸方向に貫通する貫通孔(44,114,123)がそれぞれ設けられており、
前記電機子コアの軸方向端面に前記位置規制部材が重ねられた状態で、前記電機子コア及び前記位置規制部材の前記各貫通孔に固定具(101)が挿通され、かつその固定具が、前記電機子コアを挟んで前記位置規制部材の反対側で締結されている、請求項1に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年9月3日に出願された日本出願番号2021-144252号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
この明細書における開示は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、周方向に極性が交互となる複数の磁極を有する磁石部を含む界磁子と、多相の電機子巻線を有する電機子と、を備える回転電機が知られている。また、電機子としてティースレス構造を有するものが知られており、このティースレス構造の電機子では、電機子コアのティースに電機子巻線が巻装される構成とは異なり、電機子巻線の位置ずれが生じることが懸念される。そこで、例えば、電機子巻線の軸方向端部であるコイルエンドに巻線規制部材(コイルエンドホルダ)を取り付け、その巻線規制部材を電機子巻線に係合させることで電機子巻線の位置を規制するようにした技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
巻線規制部材により電機子巻線の位置を規制する場合、剛性の観点から巻線規制部材が金属製であることが望ましい。しかしながら、金属製の巻線規制部材を用いる場合、電機子巻線の絶縁性が損なわれることの懸念が考えられる。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電機子巻線の絶縁状態を適正に維持することができる回転電機を提供することを目的とする。
【0007】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【0008】
手段1は、
複数の磁極を有する界磁子と、多相の電機子巻線を有するティースレス構造の電機子と、前記電機子を保持する電機子保持部材と、を備える回転電機であって、
前記電機子巻線は、相ごとに複数の部分巻線からなる相巻線を有し、
前記部分巻線は、周方向に所定間隔を離して設けられる一対の中間導線部と、軸方向一端側及び他端側に設けられ前記一対の中間導線部を環状に接続する渡り部とを有し、互いに異なる部分巻線の各中間導線部どうしが近接状態で周方向に並べて配置されており、
前記電機子のコイルエンドにおいて、前記電機子保持部材の一部又は前記電機子保持部材に固定された部材である位置規制部材により、前記電機子保持部材に組み付けられた状態での前記部分巻線の位置が規制されており、
前記部分巻線と前記位置規制部材との間に絶縁層が介在している。
【0009】
ティースレス構造の電機子を有する回転電機では、電機子巻線を固定する構造が必要となる。この点、電機子を保持する電機子保持部材を用い、電機子巻線を構成する部分巻線の位置を、電機子保持部材の一部又は電機子保持部材に固定された部材である位置規制部材により規制することで、電機子巻線の適正な固定が可能となる。ただしこの場合、剛性の観点から金属製の位置規制部材を用いる構成にすると、部分巻線と位置規制部材との接触に伴い電機子巻線の絶縁性が損なわれることが懸念される。この懸念に対して、部分巻線と位置規制部材との間に絶縁層を介在させる構成としたため、絶縁性低下を抑制できる。その結果、電機子巻線の絶縁状態を適正に維持することができる。
【0010】
手段2では、手段1において、前記位置規制部材は、前記コイルエンドにおいて前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態で設けられており、前記渡り部と前記位置規制部材との間に前記絶縁層が介在している。
【0011】
電機子のコイルエンドにおいて渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態で位置規制部材が設けられていることにより、各部分巻線において異なる2方向での位置規制が可能となる。例えば、渡り部が軸方向に延びる構成(渡り部が径方向に屈曲されていない構成)では、その渡り部の環状内側に位置規制部材が入り込んでいることにより、周方向及び軸方向の位置規制が可能となる。また、渡り部が屈曲されて径方向に延びる構成では、その渡り部の環状内側に位置規制部材が入り込んでいることにより、周方向及び径方向の位置規制が可能となる。また、渡り部と位置規制部材との間に絶縁層が介在していることにより、やはり位置規制部材による部分巻線の絶縁性低下を抑制できる。
【0012】
なお、部分巻線は内周側基準で導線材を多重に巻回して環状に形成されることが考えられる。この場合、渡り部の環状内側に位置規制部材を入り込ませる構成では、それら渡り部と位置規制部材との間の離間距離(絶縁距離)を設計する際において部分巻線の公差設計等が容易となっている。
【0013】
手段3では、手段2において、前記電機子巻線は、前記部分巻線として、前記コイルエンドにおける前記渡り部の形状が相違している第1部分巻線及び第2部分巻線を有し、前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線は、前記コイルエンドにおいて少なくともいずれか一方が径方向に屈曲された状態で互いに周方向に重なる状態で配置されており、前記位置規制部材は、前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線の各位置を共に規制する共通部材として設けられている。
【0014】
部分巻線として、コイルエンドにおける渡り部の形状が相違している第1部分巻線及び第2部分巻線を用いることにより、部分巻線どうしを相互に干渉させることなく、互いに周方向に重なる状態で配置することができる。この場合、第1部分巻線及び第2部分巻線の各位置を、共通の位置規制部材を用いて位置規制する構成にしたため、部品点数の削減や構成の簡素化を図ることができる。
【0015】
手段4では、手段3において、前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位と、前記第2部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位とにそれぞれ入り込んだ状態で設けられている。
【0016】
第1部分巻線及び第2部分巻線を、コイルエンドにおいて少なくともいずれか一方が径方向に屈曲された状態で互いに周方向に重なる状態で配置する場合、第1部分巻線及び第2部分巻線において各々の渡り部が近接配置される。この点を鑑み、位置規制部材を、第1部分巻線における渡り部の環状内側となる部位と、第2部分巻線における渡り部の環状内側となる部位とにそれぞれ入り込んだ状態で設けるようにした。これにより、各部分巻線において複数の方向における位置規制を簡易に実現することができる。
【0017】
手段5では、手段3において、前記位置規制部材は、前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具により固定される部材であり、前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態になる一方、前記第2部分巻線における前記渡り部に軸方向外側から対向する状態にして設けられている。
【0018】
共通部材としての位置規制部材を、第1部分巻線における渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態にする一方、第2部分巻線における渡り部に軸方向外側から対向する状態にする構成とした。この場合、各部分巻線における渡り部の屈曲状態を加味しつつ位置規制部材を組み付けることができる。
【0019】
手段6では、手段3において、前記位置規制部材は、前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具により固定される部材であり、前記コイルエンドにおいて、前記第1部分巻線では前記渡り部が径方向に屈曲され、前記第2部分巻線では前記渡り部が径方向に屈曲されていない構成であり、前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態になる一方、前記第2部分巻線における前記渡り部の環状外側となる部位に対向する状態にして設けられている。
【0020】
共通部材としての位置規制部材を、第1部分巻線における渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態にする一方、第2部分巻線における渡り部の環状外側となる部位に対向する状態にする構成とした。この場合、各部分巻線における渡り部の屈曲状態を加味しつつ位置規制部材を組み付けることができる。また、第1部分巻線及び第2部分巻線の組み付け後に、軸方向から位置規制部材を組み付けることが可能であり、作製作業を容易化できるものとなっている。
【0021】
手段7では、手段6において、前記位置規制部材は、前記第2部分巻線の前記渡り部において周方向に延びる部分を、環状外側及び環状内側のそれぞれから挟み込む部位を有する。
【0022】
第2部分巻線は、いずれかのコイルエンドにおいて径方向に屈曲されていない渡り部を有する部分巻線であり、その第2部分巻線の渡り部において周方向に延びる部分が、位置規制部材により環状外側及び環状内側のそれぞれから挟み込まれる構成にした。この場合、第2部分巻線の渡り部が、位置規制部材により軸方向両側から挟み込まれるため、軸方向の位置規制を適正に行わせることができる。
【0023】
手段8では、手段1~7のいずれかにおいて、前記位置規制部材は、前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具により固定される部材であり、環状をなす環状部を有し、前記環状部における径方向内外のうちいずれか一方の側に、前記部分巻線における前記渡り部の環状内側に入り込んだ状態となる規制部が設けられ、他方の側に、前記固定具により前記電機子保持部材に固定される被固定部が設けられている。
【0024】
電機子保持部材とは別体で設けられた位置規制部材において、環状部における径方向内外のうちいずれか一方の側に、部分巻線における渡り部の環状内側に入り込んだ状態となる規制部を設けるとともに、他方の側に、固定具により電機子保持部材に固定される被固定部を設ける構成とした。この場合、位置規制部材において径方向内外に離れた位置に、部分巻線の位置規制のための規制部と、電機子保持部材に対して機械的に固定される被固定部とがそれぞれ設けられているため、周方向に並ぶ各渡り部の位置規制を邪魔することなく、電機子保持部材に対する位置規制部材の固定を行わせることができる。つまり、位置規制部材において、例えば径方向外側の位置に部分巻線の規制部と被固定部とを共に設ける構成にすると、被固定部の制約を受けて規制部が小さくなる等の懸念が生じるが、上記構成によれば、規制部を十分な強度を有するものとして設けることができる。
【0025】
手段9では、手段1~8のいずれかにおいて、前記複数の部分巻線における前記各渡り部は周方向に並び、その周方向に並ぶ前記各渡り部に対向する状態で環状の前記位置規制部材が設けられており、前記各部分巻線に対して電気的に接続される配線モジュールが、環状をなし、かつ前記位置規制部材に対して固定された状態で設けられている。
【0026】
各部分巻線の渡り部が周方向に並ぶ構成において、その周方向に並ぶ各渡り部に対向する状態で環状の位置規制部材を設けるとともに、環状の配線モジュールを、位置規制部材に対して固定する構成とした。これにより、部品点数の削減を図りつつ、周方向に並ぶ各部分巻線と配線モジュールとの電気的な接続を好適に実現することができる。
【0027】
手段10では、手段1~9のいずれかにおいて、軸方向両側の前記コイルエンドのうち少なくともいずれかにおいて前記部分巻線の前記渡り部と前記位置規制部材とを含む範囲でこれら各部材が一体で樹脂モールドされることにより、前記絶縁層が形成されている。
【0028】
軸方向の少なくともいずれかのコイルエンドにおいて部分巻線の渡り部と位置規制部材とを含む範囲でこれら各部材が一体で樹脂モールドされることにより、部分巻線の渡り部と位置規制部材とを含む範囲で同一の樹脂材料を用いて樹脂モールド部が形成されている。この場合、部分巻線の渡り部の周囲において位置規制部材に対向する部分(渡り部と位置規制部材との間の隙間部分)に適正に絶縁層を形成することができる。
【0029】
手段11では、手段10において、前記位置規制部材において環状をなす環状部に、軸方向に貫通する貫通孔が設けられており、その貫通孔内と前記環状部の軸方向両側とを含む範囲で樹脂モールドがなされている。
【0030】
位置規制部材の環状部に、軸方向に貫通する貫通孔が設けられていることにより、位置規制部材の軸方向外側から軸方向内側への樹脂材の流れが促される。これにより、部分巻線の各渡り部と位置規制部材との間への樹脂材の回り込みが確実に行われ、適正なる樹脂モールド部の形成(絶縁層の形成)を実現できる。
【0031】
手段12では、手段10又は11において、前記位置規制部材において、前記渡り部を挟んで前記電機子保持部材の反対側であり、かつ当該渡り部を包囲する部位が、樹脂モールドがなされていない非モールド部となっている。
【0032】
位置規制部材において、渡り部を挟んで電機子保持部材の反対側であり、かつ当該渡り部を包囲する部位を、樹脂モールドがなされていない非モールド部とした。この場合、位置規制部材の一部が樹脂モールドされずに外部に露出する露出部となっており、放熱性が向上する。例えば、油冷構造を有する構成では、位置規制部材の非モールド部(露出部)が油冷による放熱部となっている。
【0033】
手段13では、手段10~12のいずれかにおいて、前記電機子保持部材には、軸方向一端側及び他端側にそれぞれ前記位置規制部材が設けられており、軸方向において軸方向一端側の前記位置規制部材から軸方向他端側の前記位置規制部材までの範囲であり、かつ前記部分巻線の前記中間導線部を含む構成部材が樹脂モールドされている。
【0034】
軸方向において軸方向両端側の各位置規制部材と部分巻線の中間導線部とを含む構成部材を、樹脂モールドする構成とした。これにより、部分巻線の全体を含む範囲で樹脂モールドが形成され、部分巻線における意図しない絶縁低下を適正に抑制できる。
【0035】
手段14では、手段10~13のいずれかにおいて、前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コアを有し、前記部分巻線の前記中間導線部と前記電機子コアとの間に絶縁材が介在しており、その絶縁材は、前記コイルエンドにおける前記絶縁層よりも接着力の高い樹脂材である。
【0036】
部分巻線の中間導線部と電機子コアとの間に介在している絶縁材を、コイルエンドにおける絶縁層よりも接着力の高い樹脂材としたため、電機子コアに対する部分巻線の組み付け強度を高めることができ、部分巻線の位置ずれを好適に抑制することができる。
【0037】
手段15では、手段10~14のいずれかにおいて、前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コアを有し、前記部分巻線の前記中間導線部と前記電機子コアとの間に絶縁材が介在しており、その絶縁材は、前記コイルエンドにおける前記絶縁層よりも熱伝導率の高い樹脂材である。
【0038】
部分巻線の中間導線部と電機子コアとの間に介在している絶縁材を、コイルエンドにおける絶縁層よりも熱伝導率の高い樹脂材としたため、中間導線部での冷却性向上を図ることができる。
【0039】
手段16では、手段10~15のいずれかにおいて、前記電機子の温度を検出する温度検出部を有し、前記温度検出部が、前記渡り部及び前記位置規制部材と共に樹脂モールドされている。
【0040】
部分巻線の渡り部及び位置規制部材と共に温度検出部を一体的に樹脂モールドしたため、その樹脂モールド部により、温度検出部に対する熱伝達と温度検出部の固定とを両立させることができる。
【0041】
手段17では、手段1~7のいずれかにおいて、前記電機子保持部材において、軸方向一方の第1コイルエンドには、前記位置規制部材として、前記電機子保持部材とは別部材でありかつ当該電機子保持部材に対して固定具により固定される第1位置規制部材が設けられ、軸方向他方の第2コイルエンドには、前記位置規制部材として、径方向に張り出した状態で第2位置規制部材が前記電機子保持部材に一体成形されている。
【0042】
電機子保持部材の軸方向一端側の第1コイルエンドに、電機子保持部材とは別部材の第1位置規制部材を固定具により固定する一方、軸方向他端側の第2コイルエンドに、径方向に張り出した状態で第2位置規制部材を一体成形する構成とした。この構成よれば、電機子保持部材に対して各部分巻線を組み付ける場合において、先に、電機子保持部材に一体成形された第2位置規制部材により位置規制した状態で各部分巻線を組み付け、その後に、電機子保持部材及び部分巻線を含むアセンブリに対して、第1位置規制部材を後付けすることができる。この場合、軸方向両側の位置規制部材のうち一方を電機子保持部材に一体成形しておくことで、部品点数の削減や組み付け作業の簡略化を図りつつ、各部分巻線に対する適正な位置規制を施すことができる。
【0043】
手段18では、手段17において、前記電機子巻線は、前記部分巻線として、前記第2コイルエンドにおいて径方向に屈曲された前記渡り部を有する部分巻線と、径方向に屈曲されていない前記渡り部を有する部分巻線とを有しており、前記第2位置規制部材は、前記電機子保持部材の円筒部に対して径方向に対向する環状の環状壁部を有し、前記円筒部と前記環状壁部との間に形成される環状溝部に、径方向に屈曲されていない前記渡り部が挿入されている。
【0044】
電機子保持部材において径方向に張り出した状態で形成された第2位置規制部材に、環状の環状壁部を設け、電機子保持部材の円筒部と環状壁部との間に形成される環状溝部に、径方向に屈曲されていない渡り部を挿入する構成とした。この場合、環状溝部内に渡り部が挿入されることで、その渡り部を有する部分巻線において、径方向及び軸方向の位置規制が可能となる。
【0045】
手段19では、手段18において、前記第2位置規制部材において、前記環状壁部は、周方向に所定間隔で設けられ軸方向に延びる複数の規制部を有し、前記第2位置規制部材における前記規制部が、径方向に屈曲された前記渡り部の環状内側に入り込んだ状態となっている。
【0046】
第2位置規制部材の環状壁部に、周方向に所定間隔で、軸方向に延びる複数の規制部を設け、その規制部が、径方向に屈曲された渡り部の環状内側に入り込む状態とした。この場合、環状壁部の規制部が渡り部の環状内側に入り込むことで、その渡り部を有する部分巻線において、周方向の位置規制が可能となる。
【0047】
手段20では、手段1~19のいずれかにおいて、前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コアを有し、前記電機子コアは、前記電機子保持部材に対して径方向に対向する状態で設けられており、前記電機子コアと前記電機子保持部材との間に、前記絶縁層を構成する絶縁材が介在している。
【0048】
電機子コアと電機子保持部材との間に、絶縁層を構成する絶縁材が介在していることにより、電機子保持部材に対する電機子コアのがたつきを抑制することができる。またこの場合、電機子の製造時において、電機子コアと電機子保持部材との間の隙間を、絶縁材(樹脂材)が流れる通路として用いることにより、軸方向両側のコイルエンドでの絶縁層の形成(樹脂モールド)を簡易に実施することができる。
【0049】
なお、電機子コアと電機子保持部材との間には、周方向に所定間隔で軸方向に延び、電機子の製造時に絶縁材の流通を可能とする通路(樹脂通路)が形成されているとよい。
【0050】
手段21では、手段1~20のいずれかにおいて、前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コアを有し、前記位置規制部材は、前記電機子保持部材に対して別体で設けられ、前記電機子コア及び前記位置規制部材には、軸方向に貫通する貫通孔がそれぞれ設けられており、前記電機子コアの軸方向端面に前記位置規制部材が重ねられた状態で、前記電機子コア及び前記位置規制部材の前記各貫通孔に固定具が挿通され、かつその固定具が、前記電機子コアを挟んで前記位置規制部材の反対側で締結されている。
【0051】
電機子コアの軸方向端面に位置規制部材を重ねた状態で、電機子コア及び位置規制部材の各貫通孔に固定具を挿通させ、かつその固定具を、電機子コアを挟んで位置規制部材の反対側で締結する構成とした。これにより、電機子コア及び位置規制部材の同時の固定が可能になっている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
【
図1】
図1は、第1実施形態における回転電機の縦断面図であり、
【
図2】
図2は、固定子ユニットの外観を示す斜視図であり、
【
図4】
図4は、(a)は
図3の4a-4a線断面図、(b)は
図3の4b-4b線断面図であり、
【
図5】
図5は、コアアセンブリの分解示す斜視図であり、
【
図6】
図6は、(a)はコアアセンブリの縦断面図、(b)はコアアセンブリの横断面図であり、
【
図8】
図8は、コアアセンブリに対して位置規制部材を組み付けた状態を示す斜視図であり、
【
図9】
図9は、部分巻線の構成を示す斜視図であり、
【
図14】
図14は、固定子ユニットの組み立て過程を説明するための斜視図であり、
【
図15】
図15は、固定子ユニットの組み立て過程を説明するための斜視図であり、
【
図16】
図16は、固定子ユニットの組み立て過程を説明するための斜視図であり、
【
図17】
図17は、固定子ユニットの組み立て過程を説明するための斜視図であり、
【
図19】
図19は、第2実施形態における固定子ユニットの外観を示す斜視図であり、
【
図22】
図22は、コアアセンブリと位置規制部材とを分解して示す斜視図であり、
【
図24】
図24は、第3実施形態における固定子ユニットの外観を示す斜視図であり、
【
図28】
図28は、第4実施形態における固定子ユニットの外観を示す斜視図であり、
【
図29】
図29は、固定子ユニットにおいて位置規制部材を分離させた状態を示す斜視図であり、
【
図30】
図30は、第5実施形態における固定子ユニットの外観を示す斜視図であり、
【
図31】
図31は、固定子ユニットにおいて位置規制部材を分離させた状態を示す斜視図であり、
【発明を実施するための形態】
【0053】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号が付される場合がある。対応する部分および/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0054】
本実施形態における回転電機は、例えば車両動力源として用いられるものとなっている。ただし、回転電機は、産業用、車両用、航空機用、家電用、OA機器用、遊技機用などとして広く用いられることが可能となっている。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一又は均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0055】
(第1実施形態)
本実施形態に係る回転電機10は、アウタロータ式の表面磁石型多相交流モータであり、車両のインホイールモータとして用いられる。
図1は、回転電機10の縦断面図である。以下の記載では、回転電機10において、回転軸線の延びる方向を軸方向とし、回転軸線の中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸線を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0056】
回転電機10は、大別して、回転子20と、固定子40を含んでなる固定子ユニット30とを有する回転電機本体を備えており、その回転電機本体に対して、不図示の車体に固定される略円柱状のスピンドル11と、不図示の車輪のホイールに固定されるハブ12とが一体化された構成となっている。ハブ12は、スピンドル11を挿通させる挿通孔13を有している。そして、ハブ12の挿通孔13にスピンドル11が挿通された状態で、一対の軸受14,15によりハブ12が回転可能に支持されている。回転電機10では、回転中心となる軸線の延びる向き(
図1の左右方向)が軸方向であり、その軸方向が水平方向又は略水平方向となる向きで回転電機10が車両に取り付けられるものとなっている。
【0057】
回転電機10では、回転子20及び固定子40が、エアギャップを挟んで径方向に対向配置されている。また、スピンドル11に対して固定子ユニット30が固定され、ハブ12に対して回転子20が固定されている。そのため、スピンドル11及び固定子ユニット30に対して、ハブ12及び回転子20が回転可能となっている。回転子20が「界磁子」に相当し、固定子40が「電機子」に相当する。
【0058】
スピンドル11及び固定子ユニット30の一体物と、ハブ12及び回転子20の一体物とが互いに組み付けられた状態において、回転子20の軸方向一端側(スピンドル11の基端側)には回転子カバー16が固定されている。回転子カバー16は、円環板状をなしており、固定子ユニット30との間に軸受17を介在させた状態で、回転子20に対してボルト等の固定具により固定されている。
【0059】
回転子20は、略円筒状の回転子キャリア21と、その回転子キャリア21に固定された環状の磁石ユニット22とを有している。回転子キャリア21は、円筒状をなす筒状部23と、その筒状部23の軸方向一端側に設けられた端板部24とを有しており、筒状部23の径方向内側に環状に磁石ユニット22が固定されている。回転子キャリア21の軸方向他端側は開放されている。回転子キャリア21は、磁石保持部材として機能する。端板部24の中央部には貫通孔24aが形成されており、その貫通孔24aに挿通された状態で、ハブ12がボルト等の固定具により端板部24に固定されている。
【0060】
磁石ユニット22は、回転子20の周方向に沿って極性が交互に変わるように配置された複数の永久磁石により構成されている。これにより、磁石ユニット22は、周方向に複数の磁極を有する。磁石ユニット22が「磁石部」に相当する。永久磁石は、例えば、固有保磁力が400[kA/m]以上であり、かつ残留磁束密度Brが1.0[T]以上である焼結ネオジム磁石である。
【0061】
磁石ユニット22は、それぞれ極異方性の複数の永久磁石を有しており、それら各磁石は、d軸側(d軸寄りの部分)とq軸側(q軸寄りの部分)とで磁化容易軸の向きが相違し、d軸側では磁化容易軸の向きがd軸に平行する向きとなり、q軸側では磁化容易軸の向きがq軸に直交する向きとなっている。この場合、磁化容易軸の向きに沿って円弧状の磁石磁路が形成されている。要するに、各磁石は、磁極中心であるd軸の側において、磁極境界であるq軸の側に比べて磁化容易軸の向きがd軸に平行となるように配向がなされて構成されている。
【0062】
次に、固定子ユニット30の構成を説明する。
図2(a),(b)は、固定子ユニット30の外観を示す斜視図であり、そのうち
図2(b)は、固定子ユニット30に設けられた樹脂モールドを除去した状態を示している。
図3は、固定子ユニット30の平面図であり、
図4(a)は、
図3の4a-4a線断面図であり、
図4(b)は、
図3の4b-4b線断面図である。
【0063】
固定子ユニット30は、その概要として、固定子40と、その径方向内側の固定子ホルダ50と、配線モジュール130とを有している。固定子40は、ティースレス構造となっており、固定子巻線41と固定子コア42とを有している。そして、固定子コア42と固定子ホルダ50とを一体化してコアアセンブリCAとして設け、そのコアアセンブリCAに対して、固定子巻線41を構成する複数の部分巻線81を組み付ける構成としている。なお、固定子巻線41が「電機子巻線」に相当し、固定子コア42が「電機子コア」に相当し、固定子ホルダ50が「電機子保持部材」に相当する。また、コアアセンブリCAが「支持部材」に相当する。
【0064】
固定子ユニット30は、固定子40と配線モジュール130とを含む範囲で樹脂材により被覆されている。そのため、固定子ユニット30は、一部を除いて樹脂モールド部150に覆われ、その外観として外周面が樹脂面となる形態で形成されている(
図2(a)参照)。
【0065】
ここではまず、コアアセンブリCAについて説明する。
図5は、コアアセンブリCAの分解示す斜視図であり、
図6(a)は、コアアセンブリCAの縦断面図であり、
図6(b)は、コアアセンブリCAの横断面図(
図6(a)の6b-6b線断面図)である。
【0066】
コアアセンブリCAは、上述したとおり固定子コア42と、その径方向内側に組み付けられた固定子ホルダ50とを有している。言うなれば、固定子ホルダ50の外周面に固定子コア42が一体に組み付けられて構成されている。
【0067】
固定子コア42は、磁性体である電磁鋼板からなるコアシートが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されており、径方向に所定の厚さを有する円筒状をなしている。固定子コア42の径方向外側の外周面は凹凸のない曲面状をなしており、その外周面(すなわち、径方向内外のうち回転子20側)には固定子巻線41が組み付けられる。固定子コア42はバックヨークとして機能する。固定子コア42は、例えば円環板状に打ち抜き形成された複数枚のコアシートが軸方向に積層されて構成されている。ただし、固定子コア42としてヘリカルコア構造を有するものを用いてもよい。ヘリカルコア構造の固定子コア42では、帯状のコアシートが用いられ、このコアシートが環状に巻回形成されるとともに軸方向に積層されることで、全体として円筒状の固定子コア42が構成されている。
【0068】
また、固定子コア42において、径方向内側の内周面には、周方向に所定間隔で複数の凸部43が設けられている。凸部43は、固定子コア42の径方向の厚さを局所的に厚くする部分であり、凸部43により厚肉となった部分にはそれぞれ軸方向に貫通する貫通孔44が形成されている。
【0069】
本実施形態において、固定子40は、スロットを形成するためのティースを有していないスロットレス構造を有するものであるが、その構成は以下の(A)~(C)のいずれかを用いたものであってもよい。これら(A)~(C)は実質的にティースレス構造に相当する。
(A)固定子40において、周方向における各導線部(後述する中間導線部82)の間に導線間部材を設け、かつその導線間部材として、1磁極における導線間部材の周方向の幅寸法をWt、導線間部材の飽和磁束密度をBs、1磁極における磁石の周方向の幅寸法をWm、磁石の残留磁束密度をBrとした場合に、Wt×Bs≦Wm×Brの関係となる磁性材料を用いている。
(B)固定子40において、周方向における各導線部(中間導線部82)の間に導線間部材を設け、かつその導線間部材として、非磁性材料を用いている。
(C)固定子40において、周方向における各導線部(中間導線部82)の間に導線間部材を設けていない構成となっている。
【0070】
固定子ホルダ50は、固定子コア42が組み付けられる円筒部51と、円筒部51よりも径方向外側に張り出す張出部52と、円筒部51の径方向内側に形成された底部53とを有している。底部53には、軸方向に貫通する貫通孔54が設けられており、その貫通孔54に、スピンドル11が挿通可能となっている。固定子ホルダ50は、例えばアルミニウムや鋳鉄等の金属、又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により構成されている。
【0071】
円筒部51は、その外周面が二段に形成されており、小径部55と大径部56とを有している。小径部55に対して固定子コア42が組み付けられている。小径部55には、固定子コア42の凸部43に対応する複数の凹部57が設けられており、固定子ホルダ50に対して固定子コア42が組み付けられることで、固定子ホルダ50側の凹部57内に固定子コア42側の凸部43が入り込む状態となっている。
【0072】
大径部56には、小径部55側に端面58が形成されているとともに、その端面58に開口する状態で、軸方向に延びる複数の孔部59が形成されている。孔部59にて雌ねじが形成されている。固定子ホルダ50に対して固定子コア42が組み付けられた状態では、固定子コア42側の貫通孔44と固定子ホルダ50側の孔部59とが軸方向に連通する。固定子コア42の外径と固定子ホルダ50の大径部56の外径とは一致している。
【0073】
円筒部51には、冷却水等の冷媒を流通させる冷媒通路60が形成されている。冷媒通路60は、軸方向に延び、かつ円筒部51に沿って環状に設けられており、不図示の入口部と出口部との間で周方向に冷媒を流通させるものとなっている。本実施形態では、上述のとおり小径部55に複数の凹部57が設けられていることから、その凹部57ごとに冷媒通路60が径方向内側に凹ませて形成されている。ただし、凹部57ごとに凹ませることなく、冷媒通路60が環状に形成されていてもよい。
【0074】
なお、円筒部51を、径方向外側の外筒部材と径方向内側の内筒部材とからなる二重構造とし、それら外筒部材と内筒部材との間の隙間空間が冷媒通路60になっているとよい。不図示とするが、冷媒通路60には、冷媒を循環させる外部循環経路が接続されるようになっている。外部循環経路には、例えば電動式のポンプと、ラジエータ等の放熱装置とが設けられ、ポンプの駆動に伴い循環経路と回転電機10の冷媒通路60とを通じて冷媒が循環する。
【0075】
また、張出部52には、周方向に所定間隔で複数の突出部61が設けられている。突出部61にはそれぞれ軸方向に貫通する貫通孔62が形成されている。貫通孔62にはそれぞれ雌ねじが形成されている。固定子コア42の凸部43の数(貫通孔44の数)と突出部61の数はいずれも同数で設けられており、本実施形態では例えば18個である。
【0076】
固定子ホルダ50の張出部52には、コアアセンブリCAに対して組み付けられる部分巻線81の位置を規制する位置規制部材70が固定されるようになっている(
図2(b)参照)。
図7は、位置規制部材70の斜視図であり、
図8は、コアアセンブリCAに対して位置規制部材70を組み付けた状態を示す斜視図である。
【0077】
位置規制部材70は、固定子ホルダ50の大径部56よりも大径の円環部71を有しており、その円環部71には径方向外側に突出する複数の突出部72が設けられている。突出部72は周方向に所定間隔で設けられており、各突出部72の位置は、固定子ホルダ50の張出部52に設けられた突出部61の位置に合致している。突出部72にはそれぞれ軸方向に貫通する貫通孔73が形成されている。
【0078】
また、円環部71には、コアアセンブリCAに組み付けられた部分巻線81の渡り部(後述する渡り部83,84)に対して位置規制を行う規制部75,76が設けられている。規制部75は、円環部71から径方向内側に延びるようにして周方向に所定間隔で設けられ、規制部76は、円環部71から軸方向に延びるようにして周方向に所定間隔で設けられている。これら各規制部75,76は、周方向に延びる凸状部であり、周方向に交互に並ぶようにして設けられている。
【0079】
位置規制部材70は、部分巻線81の位置規制の役割を担う部材であり、高剛性の部材であることが望ましい。本実施形態では、位置規制部材70を金属製としており、例えばアルミニウムやアルミニウム合金、鋳鉄等により位置規制部材70が形成されている。
【0080】
図8においては、固定子ホルダ50の張出部52に位置規制部材70が組み付けられている。つまり、張出部52側の突出部61と位置規制部材70側の突出部72とに固定具としてのボルト77が螺着されることにより、コアアセンブリCAに対して位置規制部材70が固定されている。この状態では、固定子ホルダ50の大径部56と位置規制部材70とが径方向に対向し、それら両者の間に環状空間が形成されている。そして、この環状空間と、位置規制部材70の各規制部75,76とにより、部分巻線81の位置規制が行われるようになっている。ただしその詳細は後述する。
【0081】
なお、円筒部51の内周側には環状の内部空間が形成されており、その内部空間に、例えば電力変換器としてのインバータを構成する電気部品が配置される構成としてもよい。電気部品は、例えば半導体スイッチング素子やコンデンサをパッケージ化した電気モジュールである。円筒部51の内周面に当接した状態で電気モジュールを配置することにより、冷媒通路60を流れる冷媒による電気モジュールの冷却が可能となっている。
【0082】
次に、コアアセンブリCAに対して組み付けられる固定子巻線41の構成を詳しく説明する。コアアセンブリCAに対して固定子巻線41が組み付けられた状態は、
図2~
図14に示すとおりであり、コアアセンブリCAの径方向外側、すなわち固定子コア42の径方向外側に、固定子巻線41を構成する複数の部分巻線81が周方向に並ぶ状態で組み付けられている。固定子巻線41は、複数の相巻線を有し、各相の相巻線が周方向に所定順序で配置されることで円筒状(環状)に形成されている。本実施形態では、U相、V相及びW相の相巻線を用いることで、固定子巻線41が3相の相巻線を有する構成となっている。
【0083】
図4(a)に示すように、固定子40は、軸方向において、固定子コア42に径方向に対向するコイルサイドCSに相当する部分と、そのコイルサイドCSの軸方向外側であるコイルエンドCE1,CE2に相当する部分とを有している。コイルサイドCSは、回転子20の磁石ユニット22に径方向に対向する部分でもある。この場合、部分巻線81は、その軸方向両端部分が固定子コア42よりも軸方向外側(すなわちコイルエンドCE1,CE2側)に突出した状態で組み付けられている。部分巻線81は、回転電機10の極数に応じて設けられており、相ごとに複数の部分巻線81が並列又は直列に接続されている。本実施形態では、磁極数を24としているが、その数は任意である。
【0084】
部分巻線81はそれぞれ、軸方向両端のうち一方が径方向に屈曲され、他方が径方向に屈曲されずに設けられている。そして、全ての部分巻線81のうち半数の部分巻線81は、軸方向一端側が屈曲側となり、その屈曲側で径方向内側に屈曲されている。また、残りの半数の部分巻線81は、軸方向他端側が屈曲側となり、その屈曲側で径方向外側に屈曲されている。なお以下の記載では、部分巻線81のうち、径方向内側に屈曲された屈曲部を有する部分巻線81を「部分巻線81A」、径方向外側に屈曲された屈曲部を有する部分巻線81を「部分巻線81B」とも称する。
【0085】
各部分巻線81A,81Bの構成を詳しく説明する。
図9(a),(b)は、部分巻線81A,81Bの構成を示す斜視図である。
【0086】
部分巻線81A,81Bはいずれも、導線材を多重に巻回することで構成されており、互いに平行でかつ直線状に設けられる一対の中間導線部82と、一対の中間導線部82を軸方向両端でそれぞれ接続する一対の渡り部83,84とを有している。そして、これら一対の中間導線部82と一対の渡り部83,84とにより環状に形成されている。一対の中間導線部82は、所定のコイルピッチ分を離して設けられており、周方向において一対の中間導線部82の間に、他相の部分巻線81の中間導線部82が配置可能となっている。本実施形態では、一対の中間導線部82は2コイルピッチ分を離して設けられ、一対の中間導線部82の間に、他2相の部分巻線81における中間導線部82が1つずつ配置される構成となっている。各部分巻線81A,81Bを周方向に並べて配置した状態では、互いに異なる部分巻線81A,81Bの各中間導線部82どうしが近接状態で周方向に並べて配置されている。
【0087】
軸方向両側の各渡り部83,84は、それぞれコイルエンドCE1,CE2(
図4(a)参照)に相当する部分として設けられ、各渡り部83,84のうち、一方の渡り部83は径方向に屈曲形成され、他方の渡り部84は径方向に屈曲されることなく形成されている。渡り部83が「屈曲側の渡り部」であり、渡り部84が「非屈曲側の渡り部」である。渡り部83は、中間導線部82に対して直交する向き、すなわち軸方向に直交する方向に折り曲がるようにして設けられている。これにより、部分巻線81A,81Bは、側方から見て略L形状となっている。
【0088】
部分巻線81A,81Bでは、渡り部83の径方向の屈曲方向が異なり、部分巻線81Aでは渡り部83が径方向内側に屈曲され、部分巻線81Bでは渡り部83が径方向外側に屈曲されている。この場合、各部分巻線81A,81Bを周方向に並べて配置することを想定すると、部分巻線81A,81Bにおける渡り部83の平面視の形状(径方向の平面形状)が互いに異なっているとよく、部分巻線81Aの渡り部83では先端側ほど周方向の幅が細くなり、部分巻線81Bの渡り部83では先端側ほど周方向の幅が広くなっているとよい。
【0089】
図4(a)では、軸方向両側のうち一端側であるコイルエンドCE1側(図の上側)において、部分巻線81Aの渡り部83が径方向内側に屈曲され、他端側であるコイルエンドCE2側(図の下側)において、部分巻線81Bの渡り部83が径方向外側に屈曲されている。
【0090】
各部分巻線81A,81Bにおいて、中間導線部82は、コイルサイドCSにおいて周方向に1つずつ並ぶコイルサイド導線部として設けられている。また、各渡り部83,84は、コイルエンドCE1,CE2において、周方向に異なる2位置の同相の中間導線部82どうしを接続するコイルエンド導線部として設けられている。
【0091】
部分巻線81A,81Bでは、導線集合部分の横断面が四角形になるように導線材が多重に巻回されて形成されている。中間導線部82で言えば、導線材が周方向に複数列で並べられ、かつ径方向に複数列で並べられることで、横断面が略矩形状となるように形成されている。
【0092】
各部分巻線81A,81Bは、導線材が多重に巻回された状態で絶縁材により被覆されているとよい。図示による詳細な説明は割愛するが、部分巻線81A,81Bにおいて各中間導線部82に、シート状の絶縁被覆体が被せられているとよい。例えば、中間導線部82に絶縁フィルム材を巻装する構成が考えられる。また、渡り部83,84には、その渡り部形状に合わせて成形された絶縁カバーが取り付けられているとよい。絶縁カバーにより、各部分巻線81A,81Bにおける渡り部どうしの絶縁を図ることができる。また、樹脂浸漬等により、各部分巻線81A,81Bの全体が樹脂材により被覆されている構成であってもよい。
【0093】
上述したとおり、コアアセンブリCAに対して部分巻線81が組み付けられた状態では、コイルエンドCE2側(
図4(a)の下側)において部分巻線81の位置が位置規制部材70により規制される。これに対し、コイルエンドCE1側(
図4(a)の上側)では、位置規制部材70とは別の位置規制部材100により、部分巻線81の位置が規制される。つまり、各部分巻線81は、軸方向両端のうち渡り部83が径方向外側に屈曲された側(CE2側)が位置規制部材70により位置規制されるのに対し、渡り部83が径方向内側に屈曲された側(CE1側)が位置規制部材100により位置規制されるものとなっている。
【0094】
以下に、位置規制部材100の構成を説明する。
図10(a)は、位置規制部材100の斜視図であり、
図10(b)は、位置規制部材100を構成する第1環状部材110と第2環状部材120とを互いに分離させた状態を示す斜視図である。位置規制部材100は、それぞれ環状に形成され、かつ軸方向に重ねられた状態で設けられる第1環状部材110と第2環状部材120とを有している。第1環状部材110は、固定子コア42の軸方向端面に当接した状態で設けられ、第2環状部材120は、軸方向において第1環状部材110を挟んで固定子コア42の反対側に設けられる。コイルエンドCE1側では、互いに分割可能な第1環状部材110及び第2環状部材120を有する位置規制部材100により、部分巻線81の位置が規制されるものとなっている。
【0095】
各環状部材110,120は、位置規制部材70と同様、部分巻線81の位置規制の役割を担う部材であり、高剛性の部材であることが望ましい。本実施形態では、各環状部材110,120を金属製としており、例えばアルミニウムやアルミニウム合金、鋳鉄等により各環状部材110,120が形成されている。
【0096】
図10(b)に示すように、第1環状部材110は、円環部111と、その円環部111に所定間隔で設けられた規制部112,113とを有している。規制部112は、円環部111から軸方向に延びるように設けられるのに対し、規制部113は、円環部111から径方向外側に延びるように設けられている。これら各規制部112,113は、周方向に交互に並ぶようにして設けられている。各規制部112には、それぞれ軸方向に貫通する貫通孔114が形成されている。また、周方向に並ぶ各規制部112のうち複数の規制部112には、径方向内側に突出する突出部115が設けられている。
【0097】
また、第2環状部材120は、円環部121と、その円環部121に所定間隔で設けられた規制部122とを有している。規制部122は、円環部121から軸方向に延びるように設けられ、その先端側で径方向外側に屈曲されている。また、円環部121には、軸方向に貫通する貫通孔123が形成されている。
【0098】
図10(a)に示すように、第1環状部材110及び第2環状部材120を一体化した状態では、各環状部材110,120の円環部111,121が重ね合わされることで、各環状部材110,120の貫通孔114,123が軸方向に連通した状態となる。また、第1環状部材110側の規制部113と第2環状部材120側の規制部122とが軸方向(図の上下方向)に互いに離間した状態で対向する。
【0099】
なお、各環状部材110,120を重ね合わせた状態での互いの位置ずれを抑制すべく、各環状部材110,120の少なくともいずれかには、例えば凹凸係合による係合部が設けられているとよい。これにより、コアアセンブリCAへの組み付け時において各環状部材110,120の位置ずれが抑制されるようになっている。
【0100】
位置規制部材100(第1環状部材110及び第2環状部材120)は、長尺ボルト101によりコアアセンブリCAに対して固定されるようになっている。具体的には、
図4(a),(b)に示すように、位置規制部材100は、固定子コア42の軸方向端面に組み付けられている。その組み付け状態では、各環状部材110,120の貫通孔114,123と、固定子コア42側の貫通孔44と、固定子ホルダ50側の孔部59とが軸方向に連通しており、これら一連の孔部に長尺ボルト101螺着されることで、コアアセンブリCAに対して位置規制部材100が固定されている。
【0101】
位置規制部材70,100による部分巻線81A,81Bの位置規制の概要を、
図11を用いて説明する。
図11(a),(b)は、
図4(a),(b)の一部を拡大して示す図であり、
図11(a)が
図4(a)に対応し、
図11(b)が
図4(b)に対応する。
【0102】
図11(a),(b)に示すように、コイルエンドCE2側では、位置規制部材70の円環部71と固定子ホルダ50の大径部56とが径方向に対向し、それら両者の間に形成される環状空間に、部分巻線81Aの渡り部84(非屈曲側の渡り部)が挿入されている。これにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの径方向及び軸方向の位置が規制されている。また、位置規制部材70の規制部75が部分巻線81Aの渡り部84の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの周方向及び軸方向の位置が規制されている。
【0103】
さらに、位置規制部材70の規制部76が部分巻線81Bの渡り部83(屈曲側の渡り部)の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Bの周方向の位置が規制されている。
【0104】
一方、コイルエンドCE1側では、第1環状部材110の円環部111により、部分巻線81Aの軸方向の位置が規制されている。また、第1環状部材110の規制部112が部分巻線81Aの渡り部83の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Aの周方向及び径方向の位置が規制されている。
【0105】
さらに、第1環状部材110の規制部113と第2環状部材120の規制部122との間に、部分巻線81Bの渡り部84が配置されることにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Bの周方向及び軸方向の位置が規制されている。なお、位置規制部材70,100はそれぞれ、部分巻線81A,81Bの各位置を共に規制する共通部材として設けられている。
【0106】
次に、配線モジュール130について説明する。配線モジュール130は、固定子巻線41において各部分巻線81A,81Bに電気的に接続される巻線接続部材であり、この配線モジュール130により、各相の部分巻線81が相ごとに並列又は直列に接続され、かつ各相の相巻線が中性点接続される。
図4(a),(b)に示すように、配線モジュール130は、コイルエンドCE1側、すなわち軸方向両側のうち部分巻線81Aの渡り部83が径方向内側に屈曲された側に設けられている。
【0107】
図12に示すように、配線モジュール130は円環状に形成されており、周方向に所定間隔で複数の台座部131が設けられている。配線モジュール130は、位置規制部材100に固定されるものとなっている。具体的には、第1環状部材110に設けられた突出部115(
図10(a)参照)に台座部131が固定されることで、位置規制部材100に対して配線モジュール130が固定されている。コイルエンドCE1側では、部分巻線81Bの渡り部84が環状に並んで配置されており、その渡り部84の径方向内側に配線モジュール130が設けられている。
【0108】
詳細な構成は割愛するが、配線モジュール130は、相ごとにバスバー等の配線部材を有しており、その配線部材が、各相の電力入出力線に接続される。そして、それら各相の電力入出力線が不図示のインバータに接続され、電力の入出力が行われるようになっている。なお、配線モジュール130に、各相の相電流を検出する電流センサが一体に設けられていてもよい。配線モジュール130は、固定子巻線41の形態に応じて環状に形成されているものであればよく、多角形状の環状をなすものや、環状部分の一部が欠けている略C字状の形状のものであってもよい。
【0109】
次に、固定子ユニット30における各部材の組み付け手順と、固定子ユニット30の細部の詳細構成とを説明する。
図13は、固定子ユニット30を組み付け順に分解した分解斜視図である。
図13では、固定子ユニット30が、コアアセンブリCA、部分巻線81A、位置規制部材70,100、部分巻線81B、配線モジュール130に分解して示されている。また、
図14~
図17は、固定子ユニット30の組み立て過程の構成を示す斜視図である。
【0110】
固定子ユニット30の組み付けに際し、まず
図14では、コアアセンブリCAに対して複数の部分巻線81Aが組み付けられている。この状態では、コイルエンドCE1側(図の上側)において、部分巻線81Aの渡り部83(屈曲側の渡り部)が固定子コア42の軸方向端面に対向するように配置される。この場合、固定子コア42の貫通孔44を周方向の中心位置として各部分巻線81Aがそれぞれ配置される。また、コイルエンドCE2側(図の下側)では、部分巻線81Aの渡り部84(非屈曲側の渡り部)が、固定子ホルダ50の張出部52の軸方向端面に対向し、かつ大径部56に沿って周方向に並ぶ状態となっている。
【0111】
図15では、
図14の状態のアセンブリに対して、コイルエンドCE2側の位置規制部材70が組み付けられている。このとき、位置規制部材70が軸方向上側から組み付けられ、ボルト77の螺着により、位置規制部材70がコアアセンブリCAに固定される。この状態では、各部分巻線81Aの渡り部84が、位置規制部材70の円環部71と固定子ホルダ50の大径部56との間に入り込んだ状態となり、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの径方向の位置が規制される。また、位置規制部材70の規制部75が各部分巻線81Aの一対の中間導線部82の間に入り込み、渡り部84の先端部に軸方向に対向することにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの周方向及び軸方向の位置が規制される。
【0112】
また、
図16では、
図15の状態のアセンブリに対して、コイルエンドCE1側の位置規制部材100が組み付けられている。位置規制部材100の環状部材110,120は、部分巻線81Aの渡り部83の軸方向外側から組み付けられ、長尺ボルト101の螺着によりコアアセンブリCAに固定される。この状態では、第1環状部材110の円環部111により、部分巻線81Aの軸方向の位置が規制される。また、第1環状部材110の規制部112が部分巻線81Aの渡り部83の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Aの周方向及び径方向の位置が規制される。
【0113】
また、
図17では、
図16の状態のアセンブリに対して、複数の部分巻線81Bが組み付けられている。このとき、部分巻線81Bは、各々の中間導線部82が部分巻線81A側の中間導線部82の間に入るようにして径方向外側から組み付けられる。この状態では、位置規制部材70の規制部76が部分巻線81Bの渡り部83の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Bの周方向の位置が規制される。また、第1環状部材110の規制部113と第2環状部材120の規制部122との間に、部分巻線81Bの渡り部84が配置されることにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Bの周方向及び軸方向の位置が規制される。
【0114】
そして、
図17の状態のアセンブリに対して、配線モジュール130が組み付けられる(
図4(b)参照)。
【0115】
また、
図4(b)に示すように、各部分巻線81A,81Bの径方向外側には、各部分巻線81A,81Bを拘束する拘束部材として、シート状(帯状)のコイルカバー140が取り付けられている。コイルカバー140は、円環に形成された無端状カバーであり、各部分巻線81A,81Bを径方向外側から覆うようにして設けられている。コイルカバー140は、軸方向において少なくともコイルサイドCSを含む範囲で設けられており、図示のごとく軸方向に複数に分割されている。ただし、コイルカバー140は単一のカバーとして設けられていてもよい。コイルカバー140は、絶縁性を有しかつ撓み変形可能なシート材であるとよい。シート材は、例えば絶縁性樹脂シートである。また、コイルカバー140は、バネ状(スプリング状)であり緊縛力を有するものであってもよい。
【0116】
なお、コイルカバー140は、合成樹脂等の絶縁材料を用いて構成される他、導電材料が合成樹脂等の絶縁材料により被覆されている構成であってもよい。すなわち、コイルカバー140では少なくとも外表面に絶縁性が付与されているとよい。拘束部材として、紐状の部材が各部分巻線81A,81Bの径方向外側に巻回されている構成であってもよい。
【0117】
また、
図2(a)に示すように、本実施形態の固定子ユニット30では、固定子巻線41と配線モジュール130とを含む範囲で樹脂モールドが施されている。
図2(a)では、軸方向両側のコイルエンドCE1,CE2とコイルサイドCSとを含む範囲で一体で樹脂モールドされることにより樹脂モールド部150が形成され、この樹脂モールド部150により、部分巻線81A,81Bと位置規制部材70,100との間に絶縁層が形成されている。
【0118】
以下に、固定子ユニット30の樹脂モールドに関する構成を説明する。
図18(a),(b)は、樹脂モールド部150を付加した状態の固定子ユニット30を示す断面図である。なお、
図18(a)は
図4(a)に対応する図であり、
図18(b)は
図4(b)に対応する図である。
【0119】
図18(a),(b)に示すように、樹脂モールド部150は、軸方向において軸方向一端側の位置規制部材70から軸方向他端側の位置規制部材100までの範囲であり、かつ部分巻線81A,81Bの各中間導線部82を含むものとして設けられている。この場合、コイルエンドCE2において、各部分巻線81A,81Bの渡り部83,84と位置規制部材70とが僅かに互いに離間した状態でそれぞれ配置され、その離間部分に樹脂材が充填されていることにより絶縁層が形成されている。また、コイルエンドCE1において、各部分巻線81A,81Bの渡り部83,84と位置規制部材100とが僅かに互いに離間した状態でそれぞれ配置され、その離間部分に樹脂材が充填されていることにより絶縁層が形成されている。
【0120】
コイルサイドCSでは、周方向に並ぶ各中間導線部82の間に樹脂材が充填されていることにより絶縁層が形成されている。
【0121】
なお、コアアセンブリCAに対して部分巻線81A,81Bや位置規制部材70,100が組み付けられる場合には、それら部分巻線81A,81Bや位置規制部材70,100の組み付け位置により、各渡り部83,84と位置規制部材70,100とが互いに離間する状態となる。そして、それら離間による隙間部分が樹脂材により埋められる構成となっている。
【0122】
また、固定子コア42と固定子ホルダ50との間に樹脂材(絶縁材)が介在する構成であるとよい。これにより、固定子ホルダ50に対する固定子コア42のがたつきが抑制される。上述したとおり固定子コア42と固定子ホルダ50との径方向内外の対向部には凹凸が形成されており(
図5参照)、その凹凸の嵌め合わせにより固定子コア42及び固定子ホルダ50が結合されている。この場合、それら両部材の間の隙間部分に樹脂材が介在する構成となっている。なお、固定子ホルダ50に対する固定子コア42の組み付けが、上記の凹凸嵌合以外に、焼き嵌めやピン固定などであってもよい。
【0123】
コイルエンドCE1,CE2の絶縁層とコイルサイドCSの絶縁層とが、すなわち固定子コア42の軸方向外側の絶縁層と、固定子コア42の径方向内外の絶縁層とが同じ樹脂材により形成されたものであるとよい。
【0124】
固定子ユニット30の製造時には、固定子コア42と固定子ホルダ50との間の隙間を、樹脂材(絶縁材)が流れる通路として用いることが可能である。この場合、固定子コア42と固定子ホルダ50との間において、周方向に所定間隔で軸方向に延び、固定子ユニット30の製造時に樹脂材の流通を可能とする通路(樹脂通路)が形成されているとよい。また、例えば固定子ホルダ50の端面58に、周方向に複数の突起部を設けて、固定子ホルダ50の端面58と固定子コア42の軸方向端面との間に隙間を形成し、その隙間を通じて樹脂材を流す構成としてもよい。なお、固定子コア42及び固定子ホルダ50の少なくともいいずれかに、軸方向の両端面の間で貫通する貫通孔を設け、その貫通孔を、固定子ユニット30の製造時に樹脂材の流通を可能とする樹脂通路として用いる構成であってもよい。
【0125】
ただし、コイルエンドCE1,CE2の絶縁層とコイルサイドCSの絶縁層とが互いに異なる樹脂材により形成されたものであってもよい。部分巻線81A,81Bの中間導線部82と固定子コア42との間に介在している絶縁材は、コイルエンドCE1,CE2における絶縁層よりも接着力の高い樹脂材であるとよい。この樹脂材は、モールド時の予熱工程で同時硬化されるとよい。また、部分巻線81A,81Bの中間導線部82と固定子コア42との間に介在している絶縁材は、コイルエンドCE1,CE2における絶縁層よりも熱伝導率の高い樹脂材であるとよい。なお、中間導線部82と固定子コア42との間の絶縁層は、例えば熱伝導率が0.3W/mK以上の樹脂により形成されているとよい。
【0126】
図18(a)に示すように、樹脂モールド部150内には、固定子40の温度を検出する温度検出部160が設けられているとよい。つまり、温度検出部160を、例えば位置規制部材100又は配線モジュール130に一体的に設け、これらをまとめて樹脂モールドする構成であるとよい。
【0127】
樹脂モールド部150は、少なくとも各コイルエンドCE1、CE2に設けられていればよい。つまり、コイルサイドCSには樹脂モールド部150が設けられていない構成であってもよい。
【0128】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0129】
各部分巻線81A,81Bの位置規制を行う位置規制部材70,100を有する固定子ユニット30において、剛性の観点から金属製の位置規制部材70,100を用いる構成にすると、部分巻線81A,81Bと位置規制部材70,100との接触に伴い固定子巻線41の絶縁性が損なわれることが懸念される。この懸念に対して、樹脂モールド部150を設け、部分巻線81A,81Bと位置規制部材70,100との間に絶縁層を介在させる構成としたため、絶縁性低下を抑制できる。その結果、固定子巻線41の絶縁状態を適正に維持することができる。
【0130】
コイルエンドCE1,CE2において渡り部83,84の環状内側となる部位に位置規制部材70,100の一部を入り込ませるようにしたため、各部分巻線81A,81Bにおいて異なる2方向での位置規制が可能となる。そして、渡り部83,84と位置規制部材70,100との間に絶縁層が介在していることにより、やはり位置規制部材70,100による部分巻線81A,81Bの絶縁性低下を抑制できる。
【0131】
なお、各部分巻線81A,81Bは内周側基準で導線材を多重に巻回して環状に形成されることが考えられる。この場合、渡り部83,84の環状内側に位置規制部材70,100を入り込ませる構成では、それら渡り部83,84と位置規制部材70,100との間の離間距離(絶縁距離)を設計する際において部分巻線81A,81Bの公差設計等が容易となっている。
【0132】
部分巻線81A,81Bとして、コイルエンドCE1,CE2における渡り部83,84の形状が相違している部分巻線81A,81Bを用いることにより、部分巻線81A,81Bどうしを相互に干渉させることなく、互いに周方向に重なる状態で配置することができる。この場合、各部分巻線81A,81Bの位置を、共通の位置規制部材70,100を用いて位置規制する構成にしたため、部品点数の削減や構成の簡素化を図ることができる。
【0133】
各部分巻線81A,81Bを、各コイルエンドCE1,CE2においていずれか一方が径方向に屈曲された状態で互いに周方向に重なる状態で配置する場合、部分巻線81A,81Bにおいて各々の渡り部83,84が近接配置される。この点を鑑み、位置規制部材70,100を、部分巻線81Aにおける渡り部の環状内側となる部位と、部分巻線81Bにおける渡り部の環状内側となる部位とにそれぞれ入り込んだ状態で設けるようにした。これにより、各部分巻線81A,81Bにおいて複数の方向における位置規制を簡易に実現することができる。
【0134】
位置規制部材100を、コイルエンドCE1において部分巻線81Aにおける渡り部83の環状内側となる部位に入り込んだ状態にする一方、部分巻線81Bにおける渡り部84に軸方向外側から対向する状態にする構成とした。この場合、コイルエンドCE1において、各部分巻線81A,81Bにおける渡り部83,84の屈曲状態を加味しつつ位置規制部材100を組み付けることができる。
【0135】
位置規制部材100が、部分巻線81Bの渡り部84において周方向に延びる部分を、環状外側及び環状内側のそれぞれから挟み込む部位(規制部113,122)を有する構成とした。この場合、部分巻線81Bの渡り部84が、位置規制部材100により軸方向両側から挟み込まれるため、軸方向の位置規制を適正に行わせることができる。
【0136】
複数の部分巻線81A,81Bにおける各渡り部83,84が周方向に並ぶ構成において、その周方向に並ぶ各渡り部83,84に対向する状態で円環状の位置規制部材100を設けるとともに、円環状の配線モジュール130を、位置規制部材100(詳細には第2環状部材120)に対して固定する構成とした。これにより、部品点数の削減を図りつつ、周方向に並ぶ各部分巻線81A,81Bと配線モジュール130との電気的な接続を好適に実現することができる。
【0137】
各コイルエンドCE1,CE2において、各部分巻線81A,81Bの渡り部83,84と位置規制部材70,100とを含む範囲でこれら各部材を一体で樹脂モールドした。この場合、各コイルエンドCE1,CE2において同一の樹脂材料を用いて樹脂モールド部150が形成されている。これにより、各部分巻線81A,81Bの渡り部83,84の周囲において位置規制部材70,100に対向する部分(渡り部と位置規制部材との間の隙間部分)に適正に絶縁層を形成することができる。
【0138】
軸方向において軸方向両端側の各位置規制部材70,100と部分巻線81A,81Bの中間導線部82とを含む構成部材を、樹脂モールドする構成とした。これにより、部分巻線81A,81Bの全体を含む範囲で樹脂モールド部150が形成され、部分巻線81A,81Bにおける意図しない絶縁低下を適正に抑制できる。
【0139】
コイルエンドCE1,CE2の絶縁層とコイルサイドCSの絶縁層とが互いに異なる樹脂材により形成されたものである場合において、部分巻線81A,81Bの中間導線部82と固定子コア42との間に介在している絶縁材を、コイルエンドCE1,CE2における絶縁層よりも接着力の高い樹脂材とした。これにより、固定子コア42に対する部分巻線81A,81Bの組み付け強度を高めることができ、部分巻線81A,81Bの位置ずれを好適に抑制することができる。
【0140】
また、同じくコイルエンドCE1,CE2の絶縁層とコイルサイドCSの絶縁層とが互いに異なる樹脂材により形成されたものである場合において、部分巻線81A,81Bの中間導線部82と固定子コア42と固定子ホルダ50との間に介在している絶縁材を、コイルエンドCE1,CE2における絶縁層よりも熱伝導率の高い樹脂材とした。これにより、中間導線部82での冷却性向上を図ることができる。
【0141】
部分巻線81A,81Bの渡り部83,84及び位置規制部材100と共に温度検出部160を一体的に樹脂モールドした。これにより、樹脂モールド部150により、温度検出部160に対する熱伝達と温度検出部160の固定とを両立することができる。
【0142】
固定子コア42と固定子ホルダ50との間に、絶縁層を構成する絶縁材が介在していることにより、固定子ホルダ50に対する固定子コア42のがたつきを抑制することができる。またこの場合、固定子ユニット30の製造時において、固定子コア42と固定子ホルダ50との間の隙間を、絶縁材(樹脂材)が流れる通路として用いることにより、軸方向両側のコイルエンドCE1,CE2での絶縁層の形成(樹脂モールド)を簡易に実施することができる。
【0143】
なお、固定子コア42と固定子ホルダ50との間には、周方向に所定間隔で軸方向に延び、固定子ユニット30の製造時に絶縁材の流通を可能とする通路(樹脂通路)が形成されているとよい。
【0144】
固定子コア42の軸方向端面に位置規制部材100を重ねた状態で、固定子コア42及び位置規制部材100の各貫通孔に固定具(長尺ボルト101)を挿通させ、かつその固定具を、固定子コア42を挟んで位置規制部材100の反対側で締結する構成とした。これにより、固定子コア42及び位置規制部材100の同時の固定が可能になっている。
【0145】
以下に、他の実施形態の構成及び作用効果について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0146】
(第2実施形態)
本実施形態の固定子ユニット30を説明する。本実施形態の固定子ユニット30では、第1実施形態との相違点として、固定子ユニット30のコイルエンドCE2側における巻線位置規制の構成を変更している。
図19(a),(b)は、固定子ユニット30の外観を示す斜視図であり、そのうち
図19(b)は、固定子ユニット30に設けられた樹脂モールドを除去した状態を示している。
図20は、固定子ユニット30の平面図であり、
図21(a)は、
図20の21a-21a線断面図であり、
図21(b)は、
図20の21b-21b線断面図である。
図22は、本実施形態におけるコアアセンブリCAと、コアアセンブリCAのコイルエンドCE2側に取り付けられる位置規制部材170とを分解して示す斜視図である。
【0147】
本実施形態では、コイルエンドCE1,CE2における巻線位置規制の構成のうちコイルエンドCE2側の構成を変更しており、それに伴い、コアアセンブリCAの固定子ホルダ50において張出部52が削除されている。また、大径部56に設けられた孔部59は、軸方向に貫通する貫通孔となっている。ただし、コアアセンブリCAについて他の構成は、
図5等に示す構成と共通である。また、コイルエンドCE1側の位置規制部材100の構成は変更が無いため、説明を省略する。
【0148】
図22に示すように、位置規制部材170は、円環状に形成されており、固定子ホルダ50の大径部56の軸方向端面(図の下側端面)よりも軸方向外側となる端板部171と、その端板部171の外縁部から軸方向に延びる円環状の環状壁部172とを有している。端板部171には、周方向に所定間隔で複数のボス部173が設けられており、そのボス部173にはそれぞれ軸方向に貫通する貫通孔174が形成されている。
【0149】
環状壁部172は、大径部56よりも大径に形成されている。環状壁部172には、軸方向に延びるようにして複数の規制部175が設けられている。規制部175は、周方向に延びる凸状部であり、周方向に所定間隔で設けられている。位置規制部材170は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金、鋳鉄等により形成されている。
【0150】
図21(a),(b)に示すように、コイルエンドCE2側において、位置規制部材170は、ボス部173が固定子ホルダ50の大径部56の軸方向端面(図の下側端面)に当接した状態で、固定子ホルダ50に組み付けられている。この状態では、位置規制部材170の環状壁部172と固定子ホルダ50の大径部56とが径方向に対向し、それら両者の間に形成される環状溝部に、部分巻線81Aの渡り部84(非屈曲側の渡り部)が挿入されている。これにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの径方向及び軸方向の位置が規制されている。また、位置規制部材170の規制部175が部分巻線81Bの渡り部83(屈曲側の渡り部)の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Bの周方向の位置が規制されている。
【0151】
なお、環状壁部172には、径方向内側に延びるようにして周方向に所定間隔で複数の規制部が設けられていてもよい。この場合、その規制部が部分巻線81Aの渡り部84の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの周方向及び軸方向の位置が規制される。
【0152】
図23(a),(b)は、樹脂モールド部150を付加した状態の固定子ユニット30を示す断面図である。なお、
図23(a)は
図21(a)に対応する図であり、
図23(b)は
図21(b)に対応する図である。
【0153】
図23(a),(b)に示すように、樹脂モールド部150は、軸方向において軸方向一端側の位置規制部材170から軸方向他端側の位置規制部材100までの範囲であり、かつ部分巻線81A,81Bの各中間導線部82を含むものとして設けられている。その構成は、既述の
図18(a),(b)と概ね同じである。つまり、各コイルエンドCE1,CE2において、各部分巻線81A,81Bの渡り部83,84と位置規制部材70,100との間に樹脂材が入り込み、絶縁層が形成される構成となっている。また、固定子コア42と固定子ホルダ50との間に樹脂材(絶縁材)が介在する構成となっている。
【0154】
また、コイルエンドCE2側では、位置規制部材170において、部分巻線81Aの渡り部84を挟んで固定子ホルダ50の反対側であり、かつ当該渡り部84を径方向外側から包囲する部位が、樹脂モールドがなされていない非モールド部となっている(
図23のX部)。この場合、位置規制部材170の一部が樹脂モールドされずに外部に露出する露出部となっており、放熱性が向上する。つまり、回転電機10では、例えば回転子キャリア21の内部に潤滑油を滴下して固定子40を油令することが考えられる。このような油冷構造を有する構成において、位置規制部材170の非モールド部(露出部)が油冷による放熱部となっている。
【0155】
なお、
図23(a)に示すように、位置規制部材170において固定子ホルダ50の軸方向端面よりも軸方向外側となる端板部171に、軸方向に貫通する孔部176が設けられていてもよい。孔部176は、ボス部173に干渉しない位置に設けられているとよい。この場合、固定子ホルダ50の大径部56を囲む環状溝部に対して、孔部176から樹脂材を充填することが可能となる。そのため、位置規制部材170の周囲において絶縁層を適正に形成することができる。
【0156】
(第3実施形態)
本実施形態の固定子ユニット200を説明する。
図24(a),(b)は、固定子ユニット200の外観を示す斜視図であり、そのうち
図24(a)は、樹脂モールドがなされた状態の固定子ユニット200を示し、
図24(b)は、樹脂モールドがなされていない状態の固定子ユニット200を示している。
図25(a)は、樹脂モールドがなされた状態の固定子ユニット200の縦断面図であり、
図25(b)は、樹脂モールドがなされていない状態の固定子ユニット200の縦断面図である。
図26は、固定子ユニット200において主要な構成を分解して示す斜視図である。
【0157】
固定子ユニット200は、その概要として、固定子210と、その径方向内側の固定子ホルダ220と、配線モジュール230とを有している。固定子210は、ティースレス構造となっており、固定子巻線211と固定子コア212とを有している。そして、固定子コア212と固定子ホルダ220とを一体化してコアアセンブリCAとして設け(
図26参照)、そのコアアセンブリCAに対して、固定子巻線211を組み付ける構成としている。
【0158】
固定子210は、上述した固定子40と概ね同様の構成を有しており、固定子巻線211は、上記同様、複数の部分巻線81A,81Bにより構成されている。固定子コア212は、内周側に複数の凸部を有していない点を除き、固定子コア42と同様の構成を有している。固定子210について、固定子40と同様の構成については詳細な説明を省略する。
図25に示すように、軸方向両側のうち、部分巻線81Aの渡り部83が径方向内側に屈曲されている側(図の上側)がコイルエンドCE1であり、部分巻線81Bの渡り部83が径方向外側に屈曲されている側(図の下側)がコイルエンドCE2である。なお、配線モジュール230についても、配線モジュール130と同等の構成を有しているため、説明を省略する。
【0159】
図26に示すように、固定子ホルダ220は円筒部221を有し、その円筒部221には固定子コア212が組み付けられている。円筒部221において、コイルエンドCE1側の軸方向端部には、径方向内側に延びるフランジ部222が形成されており、そのフランジ部222には周方向に所定間隔で複数のボス部223が設けられている。各ボス部223には、軸方向に延びる孔部223aが設けられている。孔部223aにはそれぞれ雌ねじが形成されている。
【0160】
また、円筒部221において、コイルエンドCE2側の軸方向端部には、円筒部221よりも径方向外側に張り出した張出部225が設けられている。張出部225は、固定子ホルダ220の円筒部221(大径部221a)から径方向外側に延びる端板部226と、その端板部226の外縁部から軸方向に延びる円環状の環状壁部227とを有している。環状壁部227は、大径部221aよりも大径に形成されている。環状壁部227には、軸方向に延びるようにして複数の規制部228が設けられている。規制部228は、周方向に延びる凸状部であり、周方向に所定間隔で設けられている。
【0161】
固定子ホルダ220の張出部225は、コイルエンドCE2側において、コアアセンブリCAに対して組み付けられる部分巻線81A,81Bの位置を規制する位置規制部材として機能する。
【0162】
固定子ホルダ220は、例えばアルミニウムや鋳鉄等の金属、又は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)により構成されている。なお、図示を略しているが、固定子ホルダ220は、固定子ホルダ50と同様に、冷却水等の冷媒を流通させる冷媒通路を有しているとよい。
【0163】
また、コイルエンドCE1側において、固定子ホルダ220のボス部223には、部分巻線81の位置を規制する位置規制部材240が取り付けられている。位置規制部材240は、円環部241と、その円環部241に所定間隔で設けられた複数の規制部242とを有している。規制部242は、円環部241から軸方向に延びるように設けられている。円環部241には、ボルト挿通孔として、軸方向に貫通する複数の貫通孔243が形成されている。位置規制部材240は、ボルト245により固定子ホルダ220に固定されている。位置規制部材240は、例えばアルミニウムやアルミニウム合金、鋳鉄等により形成されている。
【0164】
位置規制部材240において、円環部241における径方向内外のうちいずれか一方の側には、部分巻線81Aにおける渡り部83の環状内側に入り込む規制部242が設けられるとともに、他方の側には、ボルト245により固定子ホルダ220に固定される貫通孔243(被固定部)が設けられている。この場合、位置規制部材240において径方向内外に離れた位置に規制部242と貫通孔243(被固定部)とがそれぞれ設けられているため、周方向に並ぶ各渡り部83の位置規制を邪魔することなく、固定子ホルダ220に対する位置規制部材240の固定を行わせることができる。つまり、位置規制部材240において、仮に径方向外側の位置に規制部242と貫通孔243(被固定部)とを共に設ける構成にすると、被固定部の制約を受けて規制部242が小さくなる等の懸念が生じるが、上記構成によれば、規制部242を十分な強度を有するものとして設けることができる。
【0165】
各部分巻線81A,81Bの位置規制について
図25~
図27を用いて詳しく説明する。コイルエンドCE2側(図の下側)では、固定子ホルダ220の大径部221aと張出部225の環状壁部227とが径方向に対向し、それら両者の間に形成される環状溝部に、部分巻線81Aの渡り部84(非屈曲側の渡り部)が挿入されている。これにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの径方向及び軸方向の位置が規制されている。また、張出部225の規制部228が部分巻線81Bの渡り部83(屈曲側の渡り部)の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Bの周方向の位置が規制されている。
【0166】
一方、コイルエンドCE1側では、固定子ホルダ220に対して位置規制部材240が組み付けられた状態において、位置規制部材240の円環部241により、部分巻線81Aの軸方向の位置が規制されている。また、位置規制部材240の規制部242が部分巻線81Aの渡り部83の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Aの周方向及び径方向の位置が規制されている。
【0167】
本実施形態では、コイルエンドCE2側において、固定子ホルダ220とは別部材の位置規制部材240(第1位置規制部材)がボルト245により固定される一方、コイルエンドCE1側において、径方向に張り出した状態で張出部225(第2位置規制部材)が固定子ホルダ220に一体成形される構成とした。この構成よれば、固定子ホルダ220に対して各部分巻線81A,81Bを組み付ける場合において、先に、固定子ホルダ220に一体成形された張出部225により位置規制された状態で各部分巻線81A,81Bを組み付け、その後に、固定子ホルダ220及び部分巻線81A,81Bを含むアセンブリに対して、位置規制部材240を後付けすることができる。この場合、軸方向両側の位置規制部材のうち一方を固定子ホルダ220に一体成形しておくことで、部品点数の削減や組み付け作業の簡略化を図りつつ、各部分巻線81A,81Bに対する適正な位置規制を施すことができる。
【0168】
また、
図24(a)に示すように、本実施形態の固定子ユニット200では、固定子巻線211と配線モジュール230とを含む範囲で樹脂モールド部250が形成されている。樹脂モールド部250の構成を、
図25(a)を用いて説明する。
【0169】
樹脂モールド部250は、軸方向において軸方向一端側の位置規制部材である張出部225から軸方向他端側の位置規制部材240までの範囲であり、かつ部分巻線81A,81Bの各中間導線部82を含むものとして設けられている。この場合、各コイルエンドCE1,CE2において、各部分巻線81A,81Bの渡り部83,84と、張出部225及び位置規制部材240との間に樹脂材が入り込み、絶縁層が形成される構成となっている。
【0170】
また、コイルエンドCE1側では、張出部225において、部分巻線81Aの渡り部84を挟んで固定子ホルダ220の反対側であり、かつ当該渡り部84を径方向外側から包囲する部位が、樹脂モールドがなされていない非モールド部となっている(
図25(a)のX部)。この場合、張出部225の一部が樹脂モールドされずに外部に露出する露出部となっており、放熱性が向上する。
【0171】
なお、部分巻線81A,81Bを比べると、部分巻線81Aは渡り部83が径方向内側に屈曲され、部分巻線81Bは渡り部83が径方向外側に屈曲されている。この場合、部分巻線81Aの方が導線長が短くなり、導線抵抗が低くなることで発熱量が大きくなることが考えられる。ただし上記構成では、部分巻線81Aの渡り部83は、張出部225により形成された環状溝部に収容されていることで放熱性が高められている。また、固定子ホルダ220に設けられた冷却通路への放熱も好適に行われるものとなっている。
【0172】
(第4実施形態)
本実施形態では、第3実施形態における固定子ユニット200の一部を変更している。
図28は、本実施形態の固定子ユニット200の構成を示す斜視図であり、
図29は、本実施形態の固定子ユニット200において位置規制部材260を分離させた状態を示す斜視図である。
図28では、説明の便宜上、配線モジュールや樹脂モールドの図示を省略している。本実施形態では、固定子ユニット200において、コイルエンドCE1側での位置規制部として位置規制部材260を備える構成としている。
図28に示す固定子ユニット200では、
図24(b)に示す固定子ユニット200との対比において、位置規制部材240に代えて位置規制部材260を設けている点で相違するが、その位置規制部材260以外の構成は概ね同じである。
図29において、コアアセンブリCA及び固定子巻線211の側の構成は、
図27と同じである。
【0173】
図29に示すように、位置規制部材260は、第1円環部261と、第2円環部262と、それら各円環部261,262を軸方向に繋ぐ複数の繋ぎ部263とを有している。第1円環部261には、軸方向に延びる複数の規制部264が所定間隔で設けられているとともに、軸方向に貫通する複数の孔部265,266が設けられている。孔部265は、周方向において規制部264と同じピッチで、かつ周方向に孔部265と規制部264とが交互になるよう設けられている。孔部266は、ボルト245を挿通させるボルト挿通孔として設けられている。また、第2円環部262には、軸方向に延びる複数の規制部267が所定間隔で設けられている。
【0174】
図28に示すように、固定子ホルダ220には、コイルエンドCE1側(図の上側)に位置規制部材260が組み付けられている。そして、その状態において、位置規制部材260の第1円環部261により、部分巻線81Aの軸方向の位置が規制されるとともに、第2円環部262により、部分巻線81Bの軸方向の位置が規制されている。また、位置規制部材260の規制部264が部分巻線81Aの渡り部83(屈曲側の渡り部)の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Aの周方向及び径方向の位置が規制されている。さらに、位置規制部材260の規制部267が周方向に並ぶ各部分巻線81Bの渡り部84(非屈曲側の渡り部)どうしの間に入り込むことにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Bの周方向の位置が規制されている。
【0175】
本実施形態では、位置規制部材260を、部分巻線81Aにおける渡り部83の環状内側となる部位に入り込んだ状態にする一方、部分巻線81Bにおける渡り部84の環状外側となる部位に対向する状態にする構成とした。この場合、各部分巻線81A,81Bにおける渡り部83,84の屈曲状態を加味しつつ位置規制部材260を組み付けることができる。また、各部分巻線81A,81Bの組み付け後に、軸方向から位置規制部材260を組み付けることが可能であり、作製作業を容易化できるものとなっている。
【0176】
また、位置規制部材260の第1円環部261に、軸方向に貫通する孔部265が設けられていることにより、固定子ユニット200の製造時(モールド成形時)において、第1円環部261の軸方向外側から軸方向内側への樹脂材の流れが促される。これにより、孔部265内と第1円環部261の軸方向両側とを含む範囲で樹脂モールドがなされる。この場合、部分巻線81A,81Bの各渡り部83,84と位置規制部材260との間への樹脂材の回り込みが確実に行われ、適正なる樹脂モールド部250の形成(絶縁層の形成)を実現できる。
【0177】
(第5実施形態)
本実施形態では、第3実施形態における固定子ユニット200の一部を変更している。
図30は、本実施形態の固定子ユニット200の構成を示す斜視図であり、
図31は、本実施形態の固定子ユニット200において位置規制部材270,280を分離させた状態を示す斜視図である。
図30では、説明の便宜上、配線モジュールや固定子ホルダ、樹脂モールドの図示を省略している。本実施形態では、固定子ユニット200において、コイルエンドCE1側の位置規制部として位置規制部材270を備えるとともに、コイルエンドCE2側の位置規制部として位置規制部材280を備える構成としている。なお、固定子巻線211の構成は既述の構成と同じである。
【0178】
図31に示すように、位置規制部材270は、円環部271と、その円環部271から径方向内側に延びる複数の規制部272と、円環部271から軸方向に延びる複数の規制部273とを有している。規制部273は、円環部271から軸方向に延び、かつその先端側で屈曲され径方向外側に延びる形状を有する。また、円環部271には、不図示の固定子ホルダに対する被取付部として、軸方向に延びる突出部274が設けられている。
【0179】
また、位置規制部材280は、円環部281と、その円環部281から軸方向に延びる複数の規制部282と、円環部281から径方向外側に延びる複数の規制部283とを有している。また、円環部281には、不図示の固定子ホルダに対する被取付部として、径方向内側に延びる突出部284が設けられている。
【0180】
図30に示すように、固定子ホルダ220には、コイルエンドCE2側(図の下側)に位置規制部材270が組み付けられている。そして、その状態において、位置規制部材270の規制部272が部分巻線81Aの渡り部84(非屈曲側の渡り部)の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Aの軸方向及び周方向の位置が規制されている。また、位置規制部材270の規制部273が部分巻線81Bの渡り部83の環状内側(屈曲側の渡り部)に入り込むことにより、コイルエンドCE2側において部分巻線81Bの軸方向及び周方向の位置が規制されている。
【0181】
また、固定子ホルダ220には、コイルエンドCE1側(図の上側)に位置規制部材280が組み付けられている。そして、その状態において、位置規制部材280の規制部282が部分巻線81Aの渡り部83(屈曲側の渡り部)の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Aの周方向及び径方向の位置が規制されている。また、位置規制部材280の規制部283が部分巻線81Bの渡り部84(非屈曲側の渡り部)の環状内側に入り込むことにより、コイルエンドCE1側において部分巻線81Bの軸方向及び周方向の位置が規制されている。
【0182】
(他の変形例)
・上記各実施形態では、軸方向両側の各コイルエンドCE1,CE2において樹脂モールド部を形成する構成としたが、これを変更し、いずれか一方のコイルエンドにおいて樹脂モールド部を形成する構成としてもよい。
【0183】
・上記各実施形態では、軸方向両側の各コイルエンドCE1,CE2において、各部分巻線81A,81Bの位置を規制する位置規制部材を設ける構成としたが、いずれか一方のコイルエンドにおいて位置規制部材を設ける構成としてもよい。この場合、軸方向一方側のみで各部分巻線81A,81Bの位置規制を行うとともに、コイルカバー140により各部分巻線81A,81Bを拘束する構成とするとよい。
【0184】
・上記各実施形態では、固定子ユニット30,200として固定子コア42,212を具備する構成としたが、これを変更し、固定子コア42,212を具備しない構成としてもよい。この場合、各部分巻線81A,81Bは、固定子ホルダ50,220に対して組み付けられる。なお、コイルサイドCSにおいて、各部分巻線81A,81Bの中間導線部82と固定子ホルダ50,220との間に絶縁層(樹脂材)が介在しているとよい。
【0185】
・部分巻線81A,81Bの構成を変更することが可能である。
【0186】
図32に示す構成では、2種類の部分巻線81A,81Bのうち一方の部分巻線81Aは、側面視で略C字状をなし、他方の部分巻線81Bは、側面視で略I字状をなしている。各部分巻線81A,81Bのうち、部分巻線81AがコアアセンブリCAに対して先付けされ、部分巻線81BがコアアセンブリCAに対して後付けされる。そして、軸方向両側の各コイルエンドCE1,CE2では、各部分巻線81A,81Bの渡り部に位置規制部材がそれぞれ組み付けられるとともに、それら渡り部と位置規制部材とをまとめて樹脂モールドされる。
【0187】
・上記各実施形態では、コイルエンドCE1側において、固定子コア42,212の軸方向端面と固定子ホルダ50,220の軸方向端面とが面一となっていたが、これを変更してもよい。例えば、コイルエンドCE1側において、固定子コア42,212の軸方向端面よりも固定子ホルダ50,220の軸方向端面が軸方向に突出している構成としてもよい。この場合、放熱性向上の効果が期待できる。
【0188】
・回転電機10における固定子巻線41は2相の相巻線(U相巻線及びV相巻線)を有する構成であってもよい。この場合、例えば部分巻線81では、一対の中間導線部82が1コイルピッチ分を離して設けられ、一対の中間導線部82の間に、他1相の部分巻線81における中間導線部82が1つ配置される構成となっていればよい。
【0189】
・上記各実施形態では、回転子20として表面磁石型の回転子を用いたが、これに代えて、埋込磁石型の回転子を用いる構成としてもよい。
【0190】
・上記各実施形態では、回転電機10をアウタロータ構造のものとしたが、これを変更し、インナロータ構造の回転電機であってもよい。インナロータ構造の回転電機では、固定子が径方向外側に設けられ、回転子が径方向内側に設けられる。
【0191】
・回転電機10として、界磁子を回転子、電機子を固定子とする回転界磁形の回転電機に代えて、電機子を回転子、界磁子を固定子とする回転電機子形の回転電機を採用することも可能である。
【0192】
・回転電機10の用途は車両の走行用モータ以外であってもよく、航空機を含め広く移動体に用いられる回転電機や、産業用又は家庭用の電気機器に用いられる回転電機であってもよい。
【0193】
この明細書における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、ひとつの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0194】
上述の実施形態から抽出される技術思想を以下に記載する。
[構成1]
複数の磁極を有する界磁子(20)と、多相の電機子巻線(41,211)を有するティースレス構造の電機子(40,210)と、前記電機子を保持する電機子保持部材(50,220)と、を備える回転電機(10)であって、
前記電機子巻線は、相ごとに複数の部分巻線(81)からなる相巻線を有し、
前記部分巻線は、周方向に所定間隔を離して設けられる一対の中間導線部(82)と、軸方向一端側及び他端側に設けられ前記一対の中間導線部を環状に接続する渡り部(83,84)とを有し、互いに異なる部分巻線の各中間導線部どうしが近接状態で周方向に並べて配置されており、
前記電機子のコイルエンド(CE1,CE2)において、前記電機子保持部材の一部又は前記電機子保持部材に固定された部材である位置規制部材(70,100,170,225,240,260,270,280)により、前記電機子保持部材に組み付けられた状態での前記部分巻線の位置が規制されており、
前記部分巻線と前記位置規制部材との間に絶縁層(150,250)が介在している、回転電機。
[構成2]
前記位置規制部材は、前記コイルエンドにおいて前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態で設けられており、
前記渡り部と前記位置規制部材との間に前記絶縁層が介在している、構成1に記載の回転電機。
[構成3]
前記電機子巻線は、前記部分巻線として、前記コイルエンドにおける前記渡り部の形状が相違している第1部分巻線及び第2部分巻線を有し、
前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線は、前記コイルエンドにおいて少なくともいずれか一方が径方向に屈曲された状態で互いに周方向に重なる状態で配置されており、
前記位置規制部材は、前記第1部分巻線及び前記第2部分巻線の各位置を共に規制する共通部材として設けられている、構成2に記載の回転電機。
[構成4]
前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位と、前記第2部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位とにそれぞれ入り込んだ状態で設けられている、構成3に記載の回転電機。
[構成5]
前記位置規制部材は、前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具(101,245)により固定される部材であり、
前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態になる一方、前記第2部分巻線における前記渡り部に軸方向外側から対向する状態にして設けられている、構成3に記載の回転電機。
[構成6]
前記位置規制部材は、前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具(101,245)により固定される部材であり、
前記コイルエンドにおいて、前記第1部分巻線では前記渡り部が径方向に屈曲され、前記第2部分巻線では前記渡り部が径方向に屈曲されていない構成であり、
前記共通部材としての前記位置規制部材が、前記第1部分巻線における前記渡り部の環状内側となる部位に入り込んだ状態になる一方、前記第2部分巻線における前記渡り部の環状外側となる部位に対向する状態にして設けられている、構成3に記載の回転電機。
[構成7]
前記位置規制部材は、前記第2部分巻線の前記渡り部において周方向に延びる部分を、環状外側及び環状内側のそれぞれから挟み込む部位(113,122)を有する、構成6に記載の回転電機。
[構成8]
前記位置規制部材は、
前記電機子保持部材とは別体で設けられ、当該電機子保持部材に対して固定具(245)により固定される部材であり、
環状をなす環状部(241,261)を有し、
前記環状部における径方向内外のうちいずれか一方の側に、前記部分巻線における前記渡り部の環状内側に入り込んだ状態となる規制部(242,264)が設けられ、他方の側に、前記固定具により前記電機子保持部材に固定される被固定部(243,266)が設けられている、構成1~7のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成9]
前記複数の部分巻線における前記各渡り部は周方向に並び、その周方向に並ぶ前記各渡り部に対向する状態で環状の前記位置規制部材が設けられており、
前記各部分巻線に対して電気的に接続される配線モジュール(130)が、環状をなし、かつ前記位置規制部材に対して固定された状態で設けられている、構成1~8のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成10]
軸方向両側の前記コイルエンドのうち少なくともいずれかにおいて前記部分巻線の前記渡り部と前記位置規制部材とを含む範囲でこれら各部材が一体で樹脂モールドされることにより、前記絶縁層が形成されている、構成1~9のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成11]
前記位置規制部材において環状をなす環状部(261)に、軸方向に貫通する貫通孔(265)が設けられており、その貫通孔内と前記環状部の軸方向両側とを含む範囲で樹脂モールドがなされている、構成10に記載の回転電機。
[構成12]
前記位置規制部材において、前記渡り部を挟んで前記電機子保持部材の反対側であり、かつ当該渡り部を包囲する部位が、樹脂モールドがなされていない非モールド部となっている、構成10又は11に記載の回転電機。
[構成13]
前記電機子保持部材には、軸方向一端側及び他端側にそれぞれ前記位置規制部材が設けられており、
軸方向において軸方向一端側の前記位置規制部材から軸方向他端側の前記位置規制部材までの範囲であり、かつ前記部分巻線の前記中間導線部を含む構成部材が樹脂モールドされている、構成10~12のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成14]
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記部分巻線の前記中間導線部と前記電機子コアとの間に絶縁材が介在しており、その絶縁材は、前記コイルエンドにおける前記絶縁層よりも接着力の高い樹脂材である、構成10~13のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成15]
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記部分巻線の前記中間導線部と前記電機子コアとの間に絶縁材が介在しており、その絶縁材は、前記コイルエンドにおける前記絶縁層よりも熱伝導率の高い樹脂材である、構成10~14のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成16]
前記電機子の温度を検出する温度検出部(160)を有し、
前記温度検出部が、前記渡り部及び前記位置規制部材と共に樹脂モールドされている、構成10~15のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成17]
前記電機子保持部材において、
軸方向一方の第1コイルエンド(CE1)には、前記位置規制部材として、前記電機子保持部材とは別部材でありかつ当該電機子保持部材に対して固定具(245)により固定される第1位置規制部材(240)が設けられ、
軸方向他方の第2コイルエンド(CE2)には、前記位置規制部材として、径方向に張り出した状態で第2位置規制部材(225)が前記電機子保持部材に一体成形されている、構成1~16のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成18]
前記電機子巻線は、前記部分巻線として、前記第2コイルエンドにおいて径方向に屈曲された前記渡り部を有する部分巻線と、径方向に屈曲されていない前記渡り部を有する部分巻線とを有しており、
前記第2位置規制部材は、前記電機子保持部材の円筒部(221)に対して径方向に対向する環状の環状壁部(227)を有し、前記円筒部と前記環状壁部との間に形成される環状溝部に、径方向に屈曲されていない前記渡り部が挿入されている、構成17に記載の回転電機。
[構成19]
前記第2位置規制部材において、前記環状壁部は、周方向に所定間隔で設けられ軸方向に延びる複数の規制部(228)を有し、
前記第2位置規制部材における前記規制部が、径方向に屈曲された前記渡り部の環状内側に入り込んだ状態となっている、構成18に記載の回転電機。
[構成20]
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記電機子コアは、前記電機子保持部材に対して径方向に対向する状態で設けられており、
前記電機子コアと前記電機子保持部材との間に、前記絶縁層を構成する絶縁材が介在している、構成1~19のいずれか1つに記載の回転電機。
[構成21]
前記電機子は、前記電機子巻線の径方向内側又は径方向外側に設けられる電機子コア(42)を有し、
前記位置規制部材は、前記電機子保持部材に対して別体で設けられ、
前記電機子コア及び前記位置規制部材には、軸方向に貫通する貫通孔(44,114,123)がそれぞれ設けられており、
前記電機子コアの軸方向端面に前記位置規制部材が重ねられた状態で、前記電機子コア及び前記位置規制部材の前記各貫通孔に固定具(101)が挿通され、かつその固定具が、前記電機子コアを挟んで前記位置規制部材の反対側で締結されている、構成1~20のいずれか1つに記載の回転電機。