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特許7495035大環類チロシンキナーゼ阻害剤の結晶形及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】大環類チロシンキナーゼ阻害剤の結晶形及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/22 20060101AFI20240528BHJP
   A61K 31/4375 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C07D498/22 CSP
A61K31/4375
A61K45/00
A61P25/04
A61P25/28
A61P29/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022567834
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-20
(86)【国際出願番号】 CN2021092225
(87)【国際公開番号】W WO2021223748
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】202010382192.2
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520281446
【氏名又は名称】シュエンジュウ バイオファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジャンイン
(72)【発明者】
【氏名】ヂュ,ポン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,チョンクン
【審査官】柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】特許第7190036(JP,B2)
【文献】特開2022-133462(JP,A)
【文献】特表2019-532089(JP,A)
【文献】特表2018-534296(JP,A)
【文献】特表2018-529633(JP,A)
【文献】特表2017-503867(JP,A)
【文献】国際公開第2019/094143(WO,A1)
【文献】特表2014-515346(JP,A)
【文献】特表2012-502043(JP,A)
【文献】特表2021-502413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/00ー471/22
C07D 498/00-498/22
C07D 503/00-503/22
A61K 31/4375
A61K 45/00
A61P 25/04
A61P 25/28
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 37/06
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu-Kα放射を用いた2θ角度で表される粉末X線回折パターンにおいて、10.07±0.2°、11.01±0.2°、12.54±0.2°、14.13±0.2°、15.96±0.2°、16.70±0.2°、及び21.60±0.2°に特徴的なピークを有する式(I)化合物の結晶形II。
【請求項2】
その粉末X線回折パターンにおいて、8.86±0.2°、13.43±0.2°、15.06±0.2°、18.66±0.2°、19.10±0.2°、19.71±0.2°、20.42±0.2°、及び22.95±0.2°にも特徴的なピークを有する請求項1に記載の結晶形II。
【請求項3】
DSC熱分析パターンに示すように、155℃~170℃に1つの吸熱転移ピークが存在する請求項1に記載の結晶形II。
【請求項4】
DSC熱分析パターンに示すように、160℃~165℃に吸熱転移ピークが存在する請求項1に記載の結晶形II。
【請求項5】
DSC熱分析パターンに示すように、最大吸熱量を発生させるときの転移温度が162.25±3℃である請求項1に記載の結晶形II。
【請求項6】
式(I)化合物と有機溶媒とを混合して、化合物が完全に溶解するまで加熱し、貧溶媒を滴下し、固体を析出させて、ろ過して乾燥し、結晶形IIを得るステップを含む請求項1又は2に記載の結晶形IIの製造方法。
【請求項7】
以下の1つ又は複数のことを特徴とする請求項6に記載の結晶形IIの製造方法。
(1)前記有機溶媒はアセトン及び酢酸エチルから選択される1種又は複数種であること
(2)前記貧溶媒は水及びノルマルヘプタンから選択される1種又は複数種であること
(3)30℃~80℃に加熱すること
【請求項8】
サンプルが溶解して澄明になるまで加熱する請求項7に記載の結晶形IIの製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の式(I)化合物の結晶形IIと、1種又は複数種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤と、を含有する医薬製剤又は医薬組成物。
【請求項10】
Nav1.7チャネルモジュレータ、オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬、鎮静剤、選択的/非選択的エポキシダーゼ阻害剤、抗癲癇薬、抗うつ薬、局所麻酔薬、5-HT受容体遮断薬、5-HT受容体アゴニスト、麦角類アルカロイド、β-受容体遮断薬、M受容体遮断薬、硝酸エステル類及びビタミンKから選択される疼痛治療薬と、
有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アンチセンスDNA又はRNA、抗腫瘍抗生物質、成長因子阻害剤、シグナル伝達阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素阻害剤、ビタミンA様受容体調節剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節剤、ホルモン剤、血管新生阻害剤、細胞増殖阻害剤、標的抗体、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤及びプレニル基タンパク質転移酵素阻害剤から選択される癌治療薬と、
ドーパミン様薬物、ドーパミン受容体アゴニスト、ドーパミン代謝作用薬、NMDA受容体拮抗剤、アデノシンA2A受容体阻害剤、DA放出及び再取り込み作用薬、中枢性抗コリン薬、コリンエステラーゼ阻害剤、5-HTアゴニスト、α2アドレナリン作動性受容体拮抗剤、抗うつ薬、コリン受容体アゴニスト、β/γセクレターゼ阻害剤、H3受容体拮抗剤及び抗酸化薬から選択される神経変性疾患を治療する医薬品と、
病状改善用抗リウマチ薬、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド薬、TNF拮抗剤、シクロホスファミド、ミコフェノール酸エステル及びシクロスポリンから選択される自己免疫疾患を治療する医薬品と、
ステロイド系抗炎症薬及び非ステロイド系抗炎症薬から選択される炎症を治療する医薬品から選択される1種又は複数種の第2治療活性剤をさらに含有する請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の式(I)化合物の結晶形IIの、TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害を治療及び/又は予防する医薬品の製造における使用であって、
前記疾患及び関連障害は、疼痛、癌、炎症、神経変性疾患、自己免疫疾患から選択される1種又は複数種である使用。
【請求項12】
前記TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼが媒介する疾患は癌であり、
前記癌は、肺癌、結腸癌、直腸癌、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、胆のう癌、胆管癌、白血病、黒色腫、リンパ癌、甲状腺癌、多発性骨髄腫、軟部肉腫、卵巣癌、子宮頸癌、卵管癌、腎細胞癌、胃癌、消化管間質腫、骨癌、基底細胞癌、腹膜癌、皮膚線維腫、膵臓癌、食管癌、膠芽腫、頭頸部癌、炎症性筋線維芽腫、未分化大細胞リンパ腫及び神経芽細胞腫から選択される請求項11に記載の使用。
【請求項13】
肺癌は小細胞肺癌及び非小細胞肺癌から選択される請求項12に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕本願は中国出願番号が202010382192.2、出願日が2020年5月8日の出願を基にしており、その優先権を主張しており、この中国出願の開示内容は引用に本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、大環類チロシンキナーゼ阻害剤の結晶形、その製造方法及びその医薬組成物又は製剤に関し、ここで、前記チロシンキナーゼは、TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種である。本発明は、また、TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼ受容体が媒介する疼痛、炎症、癌、神経変性疾患及び自己免疫疾患を治療及び/又は予防する医薬品の製造におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
分子標的治療は近年の癌治療における重大な突破である。手術、放射線治療及び化学治療などの従来の治療手段に対して、分子標的治療はその高い特異性と相対的に低い毒性や副反応により癌を治療するための新天地を開拓しており、末期癌患者の標準治療方法になりつつある。プロテインキナーゼは標的治療の一つの大きい領域として、細胞の成長、増殖や生存にとって肝心な調節剤であり、その遺伝とエピジェネティクスの変化のいずれも癌の発生を招く可能性がある。
【0004】
未分化リンパ腫キナーゼ(ALK:Anaplastic
Lymphoma Kinase)は、受容体チロシンキナーゼのインスリン受容体スーパーファミリーに属し、脳の発育及び特定のニューロンに重要な役割を果たす。現在多くの癌にALK突然変異が発見されており、未分化大細胞リンパ腫(ALCL)、非小細胞肺癌、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、結腸直腸癌、乳癌やその他のいくつかの癌を含む。
【0005】
トロポミオシン関連受容体チロシンキナーゼ(TRK)は、神経栄養タンパク質(NT)の高親和性受容体である。TRKファミリーのメンバーは、神経由来細胞に高発現している。TRKが、疼痛感、腫瘍細胞の増殖及び生存シグナル伝達に重要な役割を果たすため、TRK受容体キナーゼの阻害剤は、疼痛及び癌の治療薬として有用である。
【0006】
ROS1キナーゼは、現在注目されているチロシンキナーゼ受容体でもある。ROS1キナーゼは、遺伝子組み換えを経って、膠芽腫、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、乳癌などを含む多くのヒト癌において組成型活性融合タンパク質を産生することが報告されている。
【0007】
上記3種類のチロシンキナーゼには、強い相同性が存在する。ROS1遺伝子とALK遺伝子は、チロシンキナーゼ領域において49%の配列相同性を持ち、キナーゼ触媒領域のATP結合部位において両者の相同性は77%と高く、TRK
A/B/Cのキナーゼ領域は、80%以上の配列相同性を持つ。TRK A遺伝子、ROS1遺伝子及びALK遺伝子は、チロシンキナーゼ領域において40%前後の配列相同性を持つ。市販されているALK阻害剤クリゾチニブ(Crizotinib)はROS1とTRKの両方の阻害活性を有し、TRK阻害剤エントレチニブ(Entrectinib)もALKとROS1の阻害活性を有する。
【0008】
現在、すでに市販されているALK/ROS1阻害剤及び2017年に市販を申告されたNTRK阻害剤は長期投与中に薬剤耐性が出現した。そのため、薬効が強く、毒性が低く、選択的阻害活性を有し、薬剤耐性の問題を解決できる抗腫瘍薬の開発は、非常に重要な臨床的価値と意義を有する。また、結晶形の研究は、創薬の過程で重要な役割を果たし、同一医薬品の異なる結晶形は、溶解度、安定性、バイオアベイラビリティなどで顕著な差異が存在し、医薬品の品質をよりよく制御し、製剤、生産、輸送、貯蔵などの場合における要求を満たすために、良好な性質を持つ結晶形を発見することを目的として化合物の結晶形について研究を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、TRK、ALK及びROS1のうちの1種又は複数種のキナーゼに対して優れた阻害活性を有し、しかも、生物体内で高い暴露量及びバイオアベイラビリティを有し、臨床での治療効果又は適応症、安全性等が全て改善していたチロシンキナーゼ阻害剤、すなわち(2R,6R)-3-フルオロ-6-メチル-1H-4-オキサ-7-アザ-1(5,3)-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3(3,2)-ピリジン-2(1,2)-ピロリジニルシクロオクタン-8-オン(式(I)化合物)を提供する。
【0010】
【化1】
別の態様では、本発明は、また、式(I)化合物(2R,6R)-3-フルオロ-6-メチル-1H-4-オキサ-7-アザ-1(5,3)-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3(3,2)-ピリジン-2(1,2)-ピロリジニルシクロオクタン-8-オンの結晶形IIに関する。
【0011】
本発明は、また、式(I)化合物の結晶形IIの製造方法、結晶形IIを含む医薬製剤、結晶形IIを含む医薬組成物、及び式(I)化合物の結晶形II、結晶形IIを含む医薬製剤、結晶形IIを含む医薬組成物の、TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種チロシンキナーゼ受容体が媒介する疼痛、炎症、癌、神経変性疾患及び自己免疫疾患を治療及び/又は予防する医薬品の製造における使用に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、Cu-Kα放射を用いた2θ角度で表される粉末X線回折パターンにおいて、10.07±0.2°、11.01±0.2°、12.54±0.2°、14.13±0.2°、15.96±0.2°、16.70±0.2°、及び21.60±0.2°に特徴的なピークを有する式(I)化合物の結晶形IIを提供する。
【0013】
いくつかの実施形態では、Cu-Kα放射を用いた2θ角度で表される粉末X線回折パターンにおいて、前記結晶形IIは上記特徴的なピークを含むに加えて、8.86±0.2°、13.43±0.2°、15.06±0.2°、18.66±0.2°、19.10±0.2°、19.71±0.2°、20.42±0.2°、及び22.95±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0014】
いくつかの実施形態では、Cu-Kα放射を用いた2θ角度で表される粉末X線回折パターンにおいて、前記結晶形IIは8.86±0.2°、10.07±0.2°、11.01±0.2°、12.54±0.2°、13.43±0.2°、14.13±0.2°、15.06±0.2°、15.96±0.2°、16.70±0.2°、18.66±0.2°、19.10±0.2°、19.71±0.2°、20.42±0.2°、21.60±0.2°、及び22.95±0.2°に特徴的なピークを有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記結晶形IIは図1と実質的に同じ粉末X線回折図を有する。
【0016】
いくつかの実施形態では、DSC熱分析パターンに示すように、前記結晶形IIは約155℃~170℃に1つの吸熱転移ピークを有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、DSC熱分析パターンに示すように、前記結晶形IIは160℃~165℃に吸熱転移ピークを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、DSC熱分析パターンに示すように、前記結晶形IIの最大吸熱における転移温度(相転移温度)、即ち吸熱ピークのピーク値での温度が、162.25±3℃である。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記結晶形IIは図2と実質的に同じ示差走査熱量分析スペクトルを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、TGAスペクトルに示すように、前記結晶形IIは0℃~250℃では明らかな減重がない。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記結晶形IIは図3と実質的に同じTGA曲線スペクトルを有する。
【0022】
別の態様では、本発明は、また、式(I)化合物を有機溶媒と混合して、化合物が完全に溶解するまで加熱し、貧溶媒を滴下し、固体を析出させて、ろ過して乾燥し、結晶形IIを得るステップを含む式(I)化合物の結晶形IIの製造方法を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、式(I)化合物の結晶形IIの製造方法は降温操作をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作よりも前に行われる。
【0025】
いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作よりも後に行われる。
【0026】
いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作と同時に行われる。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明による式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、式(I)化合物を有機溶媒と混合して、撹拌しながら30~80℃に加熱し、化合物が完全に溶解すると、0~30℃に降温し、貧溶媒を滴下し、保温して撹拌し、固体を析出させて、ろ過して乾燥し、結晶形IIを得るステップを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明による式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、式(I)化合物を有機溶媒と混合し、撹拌しながら30~80℃に加熱し、化合物が完全に溶解すると、貧溶媒を滴下し、0~30℃に降温し、保温して撹拌し、固体を析出させて、ろ過して乾燥し、結晶形IIを得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、40~70℃、例えば40~45℃、例えば45~50℃、例えば50~55℃、例えば55~60℃、例えば60~65℃、例えば65~70℃、例えばサンプルが溶解して澄明になるまで加熱する。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、0~30℃、例えば0~10℃、10~15℃、10~20℃、15~20℃、20~30℃に降温する。降温過程は異なる温度で複数回降温を行ってもよく、その降温方式は自然冷却降温、氷浴降温、油浴降温、冷凍設備による降温などを含むが、これらに限定されず、本発明では、自然冷却降温、油浴降温及び冷凍設備による降温が好ましい。
【0031】
本発明では、「貧溶媒を滴下するときの温度」とは、滴下する該貧溶媒の溶媒温度ではなく、貧溶媒を滴下するときの反応系の温度である。
【0032】
いくつかの実施形態では、結晶が析出されるまで降温すると、貧溶媒を滴下する。いくつかの実施形態では、降温したが結晶が析出されないときに、貧溶媒を滴下し始める。いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作に先立って完了する。いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作よりも遅く完了する。いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作と同時に行われる。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、貧溶媒を滴下するときの温度は0~30℃、例えば0~10℃、10~15℃、15~20℃、20~30℃から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、降温操作は貧溶媒を滴下する操作よりも前に行われ、貧溶媒を滴下するときの反応系の温度は例えば0~30℃、0~10℃、10~15℃、10~20℃、15~20℃、20~30℃である。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、貧溶媒を滴下するときの温度は10~70℃、例えば20~60℃、55~65℃、45~55℃、35~45℃、20~30℃から選択される。
【0036】
いくつかの実施形態では、貧溶媒を滴下する操作が完了した後に降温を開始する。いくつかの実施形態では、貧溶媒を滴下し始めたが完了する前に降温を開始する。いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作に先立って完了する。いくつかの実施形態では、降温操作は貧溶媒を滴下する操作よりも遅く完了する。いくつかの実施形態では、降温操作と貧溶媒を滴下する操作は同時に完了する。
【0037】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、降温操作は貧溶媒を滴下する操作よりも後に行われ、貧溶媒を滴下するときの温度は10~70℃、例えば20~60℃、55~65℃、45~55℃、35~45℃、20~30℃から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、前記有機溶媒はケトン系溶媒及びエステル系溶媒から選択される1種、又は両種以上の溶媒を特定の比率で組み合わせた混合溶媒である。いくつかの実施形態では、前記ケトン系溶媒は脂肪ケトン系及び環状ケトン系溶媒から選択される。いくつかの実施形態では、前記脂肪ケトン系溶媒は、好ましくはメチルエチルケトン、メチルイソアセトン、アセトン、メチルブタノン又はメチルイソブタノン、より好ましくはアセトンであり、前記環状ケトン系溶媒は、好ましくはシクロアセトン、シクロヘキサノン、イソホロン又はN-メチルピロリドン、より好ましくはN-メチルピロリドンである。いくつかの実施形態では、前記エステル系溶媒は、脂肪族エステル系及び芳香族エステル系溶媒から選択される。いくつかの実施形態では、前記脂肪族エステル系溶媒は、好ましくはギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル又はプロピオン酸イソプロピル、さらに好ましくはギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル又は酢酸プロピル、より好ましくは酢酸エチル、前記芳香族エステル系溶媒は、例えばフタル酸ジメチルである。
【0039】
上記したケトン系溶媒及びエステル系溶媒は挙げられる具体例に制限されず、式(I)化合物の結晶形IIの製造に用いられる上記の分類に属する溶媒であれば、本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【0040】
前記「混合溶媒」とは、上記有機溶媒のうち同一種類又は異なる種類の溶媒を所定の割合で混合した溶媒である。同一種類の溶媒で形成される混合溶媒の具体例としては、ギ酸メチル/酢酸エチル、酢酸メチル/酢酸エチル、酢酸イソブチル/酢酸エチル又はメチルエチルケトン/アセトンなどが含まれるが、これらに限定されない。前記異なる種類の溶媒で形成される混合溶媒には、エステル系/ケトン系が含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、前記有機溶媒はアセトン及び酢酸エチルから選択される1種又は2種類である。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、前記貧溶媒は水及びノルマルヘプタンから選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記式(I)化合物の結晶形IIの製造方法において、前記乾燥方式は、室温自然風乾、赤外線ランプによる乾燥、オーブン乾燥及び乾燥器による乾燥を含むが、これらに限定されず、好ましくは真空条件下で乾燥し、好ましい乾燥温度は30℃~100℃で、好ましくは30℃~80℃で、好ましくは35℃~70℃で、好ましくは40℃~65℃で、好ましくは45℃~55℃であり、乾燥過程では、任意の異なる温度で複数回乾燥してもよい。
【0044】
別の態様では、本発明は、また、前述式(I)化合物の結晶形IIと、1種又は複数種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤とを含有する医薬製剤又は医薬組成物を提供する。
【0045】
本発明の前記式(I)化合物の結晶形IIは単独して投与してもよいし、1種又は複数種の医薬品と併用してTRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害を治療してもよい。
【0046】
したがって、いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は1種又は複数種の第2治療活性剤を含有する。いくつかの実施形態では、前記第2治療活性剤は、疼痛治療薬、癌治療薬、炎症を治療する医薬品、神経変性疾患を治療する医薬品及び自己免疫疾患を治療する医薬品から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、前記疼痛治療薬は、Nav1.7チャネルモジュレータ、オピオイド鎮痛薬、非ステロイド性抗炎症薬、鎮静剤、選択的/非選択的エポキシダーゼ阻害剤、抗癲癇薬、抗うつ薬、局所麻酔薬、5-HT受容体遮断薬、5-HT受容体アゴニスト、麦角類アルカロイド、β-受容体遮断薬、M受容体遮断薬、硝酸エステル類、ビタミンKなどを含むが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態では、前記癌治療薬は、有糸分裂阻害剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アンチセンスDNA又はRNA、抗腫瘍抗生物質、成長因子阻害剤、シグナル伝達阻害剤、細胞周期阻害剤、酵素阻害剤、ビタミンA様受容体(quasi
vitamin A receptor)調節剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、生体応答調節剤、ホルモン剤、血管新生阻害剤、細胞増殖阻害剤、標的抗体、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤及びプレニル基タンパク質転移酵素阻害剤などを含むが、これらに限定されない。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記炎症を治療する医薬品はステロイド系抗炎症薬及び非ステロイド系抗炎症薬を含むが、これらに限定されない。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記神経変性疾患を治療する医薬品は、ドーパミン様薬物、ドーパミン受容体アゴニスト、ドーパミン代謝作用薬、NMDA受容体拮抗剤、アデノシンA2A受容体阻害剤、DA放出及び再取り込み作用薬、中枢性抗コリン薬、コリンエステラーゼ阻害剤、5-HTアゴニスト、α2アドレナリン作動性受容体拮抗剤、抗うつ薬、コリン受容体アゴニスト、β/γセクレターゼ阻害剤、H3受容体拮抗剤又は抗酸化薬などを含むが、これらに限定されない。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記自己免疫疾患を治療する医薬品は、病状改善用抗リウマチ薬、非ステロイド性抗炎症薬、グルココルチコイド薬、TNF拮抗剤、シクロホスファミド、ミコフェノール酸エステル、シクロスポリンなどを含むが、これらに限定されない。
【0052】
いくつかの実施形態では、組み合わせ対象の各成分(例えば、本発明の式(I)化合物の結晶形IIと第2治療活性剤)は同時投与又は順次個別に投与してもよい。例えば、本発明式(I)化合物の結晶形IIの投与の前に、それと同時に又はその後に、第2治療活性剤を投与してもよい。さらに、組み合わせ対象の各成分は、同一製剤形式、又は個別の、異なる製剤の形式で併用してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は臨床的又は薬学的に許容されるいずれの剤形、例えば錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤、注射剤(注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む。)、座薬、吸入剤又は噴霧剤、などに製造されてもよい。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、上記医薬製剤又は医薬組成物は、このような治療を必要とする患者又は被験者には、経口投与、胃腸外投与、直腸投与又は経肺投与などの方法で投与することができる。経口投与に使用する場合、前記医薬組成物は、経口製剤、例えば、錠剤、カプセル剤、丸薬、顆粒剤等の従来の経口固形製剤としてもよく、経口溶液剤、経口懸濁剤又はシロップ剤等の経口液剤としてもよい。経口製剤とする場合、適切な充填剤、結合剤、崩壊剤や潤滑剤等を添加してもよい。また、胃腸外投与に使用する場合、上記医薬製剤は、注射液、注射用無菌粉末及び注射用濃溶液を含む注射剤としてもよい。注射剤を製造する場合、既存の製薬分野における通常の方法で製造することができ、注射剤を調製する場合、添加剤を添加しなくてもよいし、薬剤の性質に応じて適切な添加剤を添加してもよい。前記医薬組成物は、直腸投与に用いる場合には座薬等としてもよい。前記医薬組成物は、経肺投与に用いる場合には、吸入剤や噴霧剤等としてもよい。
【0055】
本発明の医薬組成物又は医薬製剤に利用可能な薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤は、医薬製剤の分野における従来の任意の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤であってもよく、特定の担体及び/又は賦形剤の選択は、特定の患者の治療に用いられる投与方法又は疾患のタイプや状態に依存する。特定の投与パターンのための適切な医薬組成物又は医薬製剤の製造方法は、完全に医薬分野の当業者の常識である。
【0056】
別の態様では、本発明は、また、チロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害を治療及び/又は予防する医薬品の製造における前述式(I)化合物の結晶形IIの使用に関し、前記医薬品は1種又は複数種の他の医薬品と併用して、チロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害を予防又は治療することができる。前記チロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害は、好ましくは、TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種チロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害である。前記TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害は、疼痛、癌、炎症、神経変性疾患、自己免疫疾患、及び感染性疾患等を含むが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、前記疼痛は、いずれかの原因又は病因による疼痛であってもよく、炎症性疼痛、内臓の疼痛、がんによる疼痛、化学療法痛、外傷痛、手術・術後痛、分娩痛、急性痛、慢性痛、難治性痛、体性痛、傷害性痛、神経性痛、血行障害性疼痛、免疫性痛、内分泌性痛、代謝性病変に起因する疼痛、心性痛、頭痛、幻肢痛、及び歯痛の1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態では、前記癌は、肺癌、結腸癌、前立腺癌、乳癌、肝臓癌、リンパ癌、甲状腺癌、多発性骨髄腫、軟部肉腫、卵巣癌、子宮頸癌、卵管癌、腎細胞癌、胃癌、消化管間質腫、骨癌、基底細胞癌、腹膜癌、皮膚線維腫、膵臓癌、食管癌、膠芽腫、頭頸部癌、炎症性筋線維芽腫及び未分化大細胞リンパ腫のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されず、前記肺癌は、小細胞肺癌及び非小細胞肺癌を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、前記炎症は、アテローム性動脈硬化症、アレルギー及び感染や損傷に引き起こされる炎症を含むが、これらに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態では、前記神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症及びハンチントン病のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、シェーグレン症候群、I型糖尿病及びエリテマトーデスのうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されない。
【0062】
いくつかの実施形態では、前記感染性疾患は例えばトリパノソーマ症などである。
【0063】
別の態様では、本発明は、また、これを必要とする被験者に、有効量の前述式(I)化合物の結晶形II、前述製剤又は医薬品組成物を投与することを含むTRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害の治療及び/又は予防方法を提供し、前記TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼが媒介する疾患及び関連障害は以上で定義した通りである。
【0064】
本願では、特に断らない限り、本明細書に使用される科学的用語及び技術的用語は当業者が一般的に理解する意味を有する。また、本発明をよりよく理解するために、以下、一部の用語の定義及び解釈が提供される。
【0065】
本願では、各結晶形の粉末X線回折パターンにおいて、吸収ピークの位置は上記発明の具体的な数値±0.2°の範囲内、例えば±0.1°の範囲内であってもよく、示差走査熱量法測定における吸熱転移温度は、上記の具体的な数値±3.0℃(例えば±1.0℃又は±2.0℃)の範囲内であってもよい。
【0066】
理解すべきものとして、粉末X線回折(XRPD又はXRDと略称される)のスペクトル及びピーク値は、装置のタイプやテスト条件が異なることにより、わずかに異なる場合がある。異なる結晶形のスペクトル、ピーク値及び各回折ピークの相対的強度は、化合物の純度、サンプルの前処理、走査速度、粒子径、及びテスト装置のチェックや保守によって影響を受ける。提供された数値は、絶対値として用いられることができない。
【0067】
理解すべきものとして、吸熱転移温度の読み取り値は、装置のタイプ又はテスト条件が異なることにより、わずかに異なる場合がある。この数値は、化合物の純度、サンプルの重量、加熱速度、粒子径、及びテスト装置のチェックや保守によって影響を受ける。提供された数値は、絶対値として用いられることができない。
【0068】
本開示は、また、熱重量分析(TGA)を用いて、結晶形の分解又は昇華、蒸発の程度(減少重量)と温度との関係を分析する。TGAとは、一定の速度で昇温し、温度による被験品の重量変化を測定する方法である。理解すべきものとして、同種の結晶形は、サンプルの純度、粒径、装置の種類、テスト方法などの影響を受けて、得られた数値には一定の誤差が存在する。結晶形が分解又は昇華、蒸発する際の温度は、上記に開示した具体的な数値±3.0℃の範囲で、例えば±2.0℃の範囲であってもよい。
【0069】
本明細書で使用される場合、「室温」、「常温」という用語は、室内環境温度を意味し、一般的に20℃~30℃、例えば20℃~25℃を意味する。
【0070】
本明細書で使用される場合、「被験者」という用語は健康な個体、何らかの疾患に罹患しているか、又は罹患している疑いのある個体を意味し、ヒト又は非ヒト哺乳動物であってもよく、好ましくはヒトであってもよい。通常は、健康なボランティア、患者、検査対象者、及び治療対象者などが含まれる。
【0071】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、所望の効果を得るのに十分な量、又は少なくとも部分的に得るのに十分な量を意味する。例えば、治療有効量とは、疾患に罹患した患者の疾患及びその合併症を十分に治癒し又は少なくとも部分的に阻止する量をいう。予防有効量とは、疾患の発生を予防、阻止、又は遅らせるのに十分な量をいう。このような有効量を測定することは、完全に当業者の能力の範囲内である。例えば、治療用途に有効な量は、治療対象の疾患の重篤度、患者自身の免疫系の全体的な状態、年齢や、体重、性別などの患者の一般的な状態、薬剤の投与方法、及び同時に投与される他の治療などに依存する。
【0072】
被験者に投与される医薬品の量は、疾患又は病態の種類及び重篤度、並びに、例えば一般的な健康状態や、年齢、性別、体重、及び薬剤耐性などの被験者の特徴に依存し、製剤の種類及び医薬品の投与方法、ならびに投与期間又は時間間隔などの因子にも依存する。当業者は、これらの要因及びその他の要因に基づいて適切な用量を決定することができる。
【0073】
本発明の式(I)化合物の結晶形、特に結晶形IIの主な利点は下記のうちの1つ又は複数を含む。
【0074】
(1)製造方法は操作されやすく、工業的産生に適している。
【0075】
(2)良好な性状を持ち、生産、検査、製剤製造、輸送や保存に有利である。
【0076】
(3)純度が高く、溶媒残留が少なく、安定性に優れ、品質が制御されやすい。
【0077】
(4)TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼに対して良好な阻害活性を有し、生体内で優れた暴露量及び/又はバイオアベイラビリティを有する。
【0078】
(5)生体内外で良好な薬効を有し、TRK、ALK及び/又はROS1のうちの1種又は複数種のチロシンキナーゼ症が媒介する疾患及び関連障害の治療及び/又は予防に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
以下説明する図面は本発明をさらに理解するために提供され、本願の一部となり、本発明の例示的な実施例及びその説明は本発明を解釈するものであり、本発明を何ら制限するものではない。図面は、下記の通りである。
図1】式(I)化合物の結晶形IIの粉末X線回折パターンであり、縦座標は回折強度(intensity)、横座標は回折角度(2θ)を表す。
図2】式(I)化合物の結晶形IIのDSC分析スペクトルであり、縦座標は熱流(W/g)、横座標は温度T(℃)を表す。
図3】式(I)化合物の結晶形IIのTGA分析スペクトルであり、縦座標は重量(%)、横座標は温度T(℃)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明の実施例の図面を参照して、本発明の実施例の技術案を明確かつ完全に説明するが、明らかに、説明する実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。以下、少なくとも1つの例示的な実施例の説明は実際には説明的なものに過ぎず、本発明及びその適用又は使用に対するいかなる制限ではない。本発明の実施例に基づいて当業者が創造的な努力を必要とせずに得る他の全ての実施例は本発明の特許範囲に属する。
【0081】
実施例1:(2R,6R)-3-フルオロ-6-メチル-1H-4-オキサ-7-アザ-1(5,3)-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3(3,2)-ピリジン-2(1,2)-ピロリジニルシクロオクタン-8-オンの製造(式(I)化合物)
【0082】
【化2】
1. (R)-6-(2-(5-フルオロ-2-メトキシピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)-3-ニトロピリジン-2-アミンの製造
【0083】
【化3】
(R)-5-フルオロ-2-メトキシ-3-(ピロリジン-2-イル)ピリジン(1.0g、5.1mmol)と6-クロロ-3-ニトロピリジン-2-アミン(886mg、5.1mmol)をアセトニトリル(30mL)に加え、ジイソプロピルエチルアミン(1.98g、15.3mmol)を加え、70℃に加熱し、16時間反応させた。反応液を乾固まで回転蒸発させ、水(30mL)を加えてろ過した。固体を酢酸エチル(30mL)で洗浄し、真空乾燥し、表題産物(1.65g、収率97.0%)を得た。
【0084】
LC-MS (M/e):334.1 (M+H+)
2. (R)-6-(2-(5-フルオロ-2-メトキシピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)ピリジン-2,3-ジアミンの製造
【0085】
【化4】
(R)-6-(2-(5-フルオロ-2-メトキシピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)-3-ニトロピリジン-2-アミン(1.65g、4.94mmol)をメタノール(20mL)に溶解し、ラネーニッケル(1g)を加え、20℃、水素ガス雰囲気で16時間反応させた。反応液をろ過して、回転蒸発させ、残留物をそのまま次のステップに用いた。
【0086】
LC-MS (M/e):304.1 (M+H+)
3. (R)-5-(2-(5-フルオロ-2-メトキシピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジンの製造
【0087】
【化5】
(R)-6-(2-(5-フルオロ-2-メトキシピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)ピリジン-2,3-ジアミン(前のステップの粗品、約3.0mmol)をトルエン(30mL)に溶解し、オルトギ酸トリメチル(5.2g、49mmol)とパラトルエンスルホン酸(170mg、0.99mmol)を加え、110℃に加熱し、5時間反応させた。反応液を乾固まで回転蒸発させ、炭酸水素ナトリウム溶液(100mL)と酢酸エチル(100mL)を加えて分液し、水相を酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機相を併せて、回転蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)により精製し、表題産物(1.5g、収率96.8%)を得た。
【0088】
LC-MS (M/e):314.1 (M+H+)
4. (R)-3-(1-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル)ピロリジン-2-イル)-5-フルオロピリジン-2-オールの製造
【0089】
【化6】
(R)-5-(2-(5-フルオロ-2-メトキシピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン(1.5g、4.79mmol)を塩化水素エタノール溶液(30mL)に加え、90℃に加熱し、16時間反応させた。反応液を乾固まで回転蒸発させ、トリエチルアミン(5mL)を加えてpHをアルカリ性に調整し、回転蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール=10:1)により精製し、表題産物(1.4g、収率97.9%)を得た。
【0090】
LC-MS (M/e):300.1 (M+H+)
5. ((R)-1-((3-((R)-1-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル)ピロリジン-2-イル)-5-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)プロパ-2-イル)カルバミン酸t-ブチル
【0091】
【化7】
(R)-3-(1-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル)ピロリジン-2-イル)-5-フルオロピリジン-2-オール(700mg、2.34mmol)、(R)-(1-ヒドロキシプロパ-2-イル)カルバミン酸t-ブチル(410mg、2.34mmol)とトリ-n-ブチルホスフィン(945mg、4.68mmol)をテトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、窒素ガス保護下、アゾジカルボニルジピペリジン(1.18g、4.68mmol)を加え、30℃で2時間反応させた。反応液を濃縮し、C18カラムクロマトグラフィーにより精製し、表題産物(500mg、収率46.7%)を得た。
【0092】
LC-MS (M/e):457.0 (M+H+)
6. (R)-1-((3-((R)-1-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル)ピロリジン-2-イル)-5-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)プロパ-2-アミンの製造
【0093】
【化8】
((R)-1-((3-((R)-1-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル)ピロリジン-2-イル)-5-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)プロパ-2-イル)カルバミン酸t-ブチル(500mg、1.1mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(20mL)を加え、20℃で16時間反応させた。反応液を濃縮し、トリエチルアミンでpHをアルカリ性に調整し、回転蒸発させ、C18カラムクロマトグラフィーにより精製し、表題産物粗品(400mg)を得た。
【0094】
LC-MS (M/e):357.0 (M+H+)
7. (2R,6R)-3-フルオロ-6-メチル-1H-4-オキサ-7-アザ-1(5,3)-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3(3,2)-ピリジン-2(1,2)-ピロリジニルシクロオクタン-8-オンの製造
【0095】
【化9】
(R)-1-((3-((R)-1-(3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-5-イル)ピロリジン-2-イル)-5-フルオロピリジン-2-イル)オキシ)プロパ-2-アミン(前のステップの粗品、400mg、約1.1mmol)をキシレン(50mL)に溶解し、カルボニルジイミダゾール(535mg、3.3mmol)を加え、130℃に昇温し、2時間反応させた。反応液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=1:1)により精製し、表題産物粗品(300mg)を得て、さらにHPLC高圧逆相分取クロマトグラフィー(アセトニトリル:水=10%-70%)により分離し、表題化合物(100mg、23.8%)を得た。
【0096】
分子式:C1919FN;分子量:382.4;LC-MS (M/e):383.2 (M+H+)。
【0097】
1H-NMR (400 MHz, CDCl3) d 10.50 (m, 1H), 8.36 (s, 1H), 7.86-7.90 (m,
2H), 7.31-7.35 (m, 1H), 6.51 (d,J = 8.8 Hz, 1H), 5.63-5.60 (m, 1H),
5.13-5.17 (m, 1H), 4.39-4.42 (m, 1H), 4.15-4.19 (m, 1H), 3.92-3.98 (m, 1H),
3.65-3.60 (m, 1H), 2.50-2.59 (m, 2H), 2.40-2.50 (m, 1H), 1.95-2.01 (m, 1H),
1.57(d,J = 6.8 Hz, 3H).
実施例2:式(I)化合物結晶形IIの製造
製造方法1:
式(I)化合物10.00gとアセトン12.5gを混合し、撹拌して50~55℃に昇温し、溶解して澄明化し、降温して結晶を析出し、固体を析出させた後、さらに10℃に降温し、10℃で水60mLを滴下し、滴下終了後、保温して0.5h撹拌し、吸引ろ過し、45~50℃で真空乾燥し、製品を得て、XRDにより検出した結果、式(I)化合物の結晶形IIであった。
【0098】
製造方法2:
式(I)化合物50.00gとアセトン62.50gを混合し、撹拌して50~55℃に昇温し、溶解して澄明化し、10~15℃に降温して結晶を析出し、10~15℃でノルマルヘプタン375mLを滴下し、保温して撹拌し、吸引ろ過し、50℃で真空乾燥し、製品を得て、XRDにより検出した結果、式(I)化合物結晶形IIであった。
【0099】
製造方法3:
3-1:式(I)化合物600.00gと酢酸エチル900mLを混合し、60~70℃に昇温し、溶解して澄明化し、20℃に降温し、20±5℃でノルマルヘプタン6Lを滴下し、保温して撹拌し、吸引ろ過し、50℃で真空乾燥し、製品を得て、XRDにより検出した結果、式(I)化合物結晶形IIであった。
【0100】
3-2:式(I)化合物1.45kgと酢酸エチル2.2Lを混合し、60~70℃に昇温し、溶解して澄明化し、温度を60~65℃に制御して、ノルマルヘプタン(15L)を滴下し、10~20℃に降温して結晶を析出し、保温して撹拌し、吸引ろ過し、45~50℃で真空乾燥し、製品を得て、XRDにより検出した結果、式(I)化合物結晶形IIであった。
【0101】
XRPDテスト
X線反射パラメータ:Cu、Kα;入射スリット:0.6mm;発散スリット:1mm;走査モード:連続;走査範囲:3.0~45.0度;サンプリング歩幅:0.02度;歩あたりの走査時間:0.3s。
【0102】
結晶形IIの粉末X線回折図を図1に示し、該結晶形は以下の回折2θ角度にピークを有する。
【0103】
8.86±0.2°、10.07±0.2°、11.01±0.2°、12.54±0.2°、13.43±0.2°、14.13±0.2°、15.06±0.2°、15.96±0.2°、16.70±0.2°、18.66±0.2°、19.10±0.2°、19.71±0.2°、20.42±0.2°、21.60±0.2°、22.95±0.2°
示差走査熱量テスト
示差走査熱量法(DSC)によって式(I)化合物の結晶形IIの固体熱特性を検討した。DSCテスト条件:窒素ガスを用いて50mL/minでパージし、100℃~200℃で、3℃/minの加熱速度でデータを収集し、吸熱ピークが下に向く時にプロットした。結晶形IIのDSC曲線は図2に示される。DSC熱分析パターンに示すように、前記結晶形IIは160℃~165℃に吸熱転移ピークが存在し、その最大吸熱時の転移温度(相転移温度)、即ち吸熱ピークのピーク値での温度は162.25±3℃である。
【0104】
熱重量分析
TGAテスト条件:窒素ガスを用いて60mL/minでパージし、室温~350℃、10℃/minの加熱速度でデータを収集した。結晶形IIのTGA曲線は図3に示される。TGAスペクトルに示すように、前記結晶形IIは0℃~250℃で明らかな重量減少がなかった。
【0105】
性質テストの実験例:
1.安定性試験
被験品:式(I)化合物の結晶形II
実験方法:適量の被験品をそれぞれ秤量し、以下の条件で放置した後、被験品の性状、水分、含有量、関連物質、XRD、DSCを調べ、放置条件は以下の通りである。
【0106】
60℃±2℃の条件、又は25℃ RH92.5%の条件下で10日間閉口/開口して放置し、10日目にサンプリングして検出した(開放包装は平型計量瓶で、密閉包装は低密度ポリエチレン袋と低密度ポリエチレン袋+複合膜袋である。);
40℃、RH75%の条件下で閉口/開口して1ヶ月放置し、1ヶ月後、サンプリングして検出した(開放包装は平型計量瓶で、密閉包装は低密度ポリエチレン袋と低密度ポリエチレン袋+複合膜袋である。)。
【0107】
水分:『中国薬局方』2015年版四部通則0832水分測定法第一法2クーロン滴定法に従う。
【0108】
XRD:『中国薬局方』2015年版四部通則0451
X線回折法によって測定される。
【0109】
DSC:3℃/minの昇温速度で、100℃から200℃に昇温して測定する。
【0110】
関連物質、含有量:中国薬局方2015年版四部通則0512の高速液相クロマトグラフィーにより測定される。
【0111】
実験結果
【0112】
【表1】
実験結果:
60℃で閉口/開口して10日間放置する条件、又は25℃ RH92.5%で閉口/開口して10日間放置する条件、又は40℃ RH75%閉口/開口して1ヶ月放置する条件下では、性状、総関連物質、含有量、水分、XRD、DSCのいずれにも変化が認められず、結晶形の安定性が良好である。
【0113】
2. 結晶形IIの吸湿性試験
被験品:式(I)化合物の結晶形II;
実験方法:『中国薬局方』2015年版四部通則9103医薬品の吸湿性試験のガイドライン原則に従って測定した。すなわち、被験品を25℃、RH80%の条件下で24h放置し(サンプル瓶を当該条件下に24h放置しておく。)、結果を表2に示す。
【0114】
【表2】
実験結果:本品は吸湿性がないか、ほぼない。
【0115】
活性テスト
以下、本発明の化合物の活性テストの例を提供し、本発明の化合物の有利な活性及び有益な技術的効果を示す。なお、下記実験計画は本発明の内容の例示に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。
【0116】
実験例1.本発明の化合物のインビトロ細胞学的阻害活性
実験材料
試験化合物:実施例1の方法によって製造され式(I)化合物
実験に使用される細胞株の定義:
Ba/F3 LMNA-NTRK1-G595R細胞系:
Ba/F3細胞にLMNA-NTRK1 G595Rをトランスフェクションした安定発現細胞株;
Ba/F3 ETV6-NTRK3-G623R細胞系:
Ba/F3細胞にETV6-NTRK3-G623Rをトランスフェクションした安定発現細胞株。
【0117】
実験方法(CelltiterGlo assay)
1. 細胞培養及び接種
全ての細胞は懸濁細胞であり、培地は全てRPMI-1640+10%FBSであり、細胞は対数成長期で試験に用いた。
【0118】
対数成長期の細胞を採取して血小板計数器を用いて細胞を計数した。トリパンブルー色素排除法によって細胞活性を検出し、細胞活性が90%以上であることを確保した。適切な濃度に調整し、90 μL細胞懸濁液を96ウェルプレートにそれぞれ加えた。
【0119】
【表3】
2. 試験化合物の調製
2.1 試験化合物DMSOストック液を調製し、濃度を表4に示す。
【0120】
【表4】
2.2 試験化合物のワーキングストック液の調製
DMSOを用いて試験化合物のストック液を10mMから1mMに希釈し、その後、DMSOを用いて3倍連続勾配希釈を行い、合計9つの濃度とした。DMSO勾配希釈した化合物溶液2μLをそれぞれ取り、培養液198μLに加え、試験化合物のワーキングストック液(化合物濃度は終濃度の10倍で、DMSO濃度は1%で、最高濃度は10μMである。)を得た。
【0121】
最大値はDMSO溶媒対照であり、空白孔は培地のみを加え、細胞を接種していなかった。
【0122】
2.3 化合物処理
細胞を接種した96ウェルプレートのウェルあたり化合物のワーキングストック液(10倍希釈、DMSO終濃度0.1%)10μLを加えた。
【0123】
試験化合物の終濃度:1000nM、333.33nM、111.11nM、37.04nM、12.35nM、4.12nM、1.37nM、0.46nM、0.15nM。
【0124】
5%CO細胞インキュベータにて72時間培養した。
【0125】
3. 検出
CTG試薬を融解し、細胞プレートを室温に平衡化して30分間保持し、ウェルあたり試薬(Celltiter
Glo assay kit)60μLを加え、振とう器で2min振とうさせ、均一に混合し(遮光)、室温で10分間インキュベートした(遮光)。マルチモードプレートリーダーにより光信号値を読み取った。
【0126】
4. データ処理
1) 阻害率(%)=(DMSO溶媒対照ウェルの読み取り値-試験物ウェルの読み取り値)/(DMSO溶媒対照ウェルの読み取り値-空白ウェルの読み取り値)×100%;
2) GraphPad Prism 5.0に入力してプロップし、曲線及びIC50を得た。
【0127】
実験結果及び結論
【0128】
【表5】
表5から分かるように、本発明の化合物は、Ba/F3 LMNA-NTRK1-G595R、Ba/F3
ETV6-NTRK3-G623Rなどの細胞の増殖を効果的に阻害することができ、臨床的には、本発明の化合物はNTRK遺伝子突然変異により引き起こされる薬剤耐性癌疾患を治療する潜在力を有することが示された。
【0129】
実験例2 本発明の化合物のインビトロ細胞学的阻害活性
実験材料
試験化合物:実施例1の方法によって製造される式(I)化合物
実験に使用される細胞株の定義:
Ba/F3 SLC34A2/ROS1-G2032R細胞系:
Ba/F3細胞にSLC34A2/ROS1-G2032Rをトランスフェクションした安定発現細胞株。
【0130】
実験方法(Celltiter-Glo assay)
1. 細胞の培養及び接種
全ての細胞は懸濁細胞であり、培地は全てRPMI-1640+10%FBSであり、細胞は対数成長期で試験に用いた。
【0131】
対数成長期の細胞を採取して血小板計数器を用いて細胞を計数した。トリパンブルー色素排除法によって細胞活性を検出し、細胞活性が90%以上であることを確保した。適切な濃度に調整し、90μL細胞懸濁液を96ウェルプレートにそれぞれ加えた。
【0132】
【表6】
2. 試験化合物の調製
2.1 試験化合物DMSOストック液を調製し、濃度を表7に示す。
【0133】
【表7】
2.2 試験化合物のワーキングストック液の調製
DMSOを用いて試験化合物のストック液を10mMから1mMに希釈し、その後、DMSOを用いて3.16倍連続勾配希釈を行い、合計9つの濃度とした。DMSO勾配希釈した化合物溶液2μLをそれぞれ取り、培養液198μLに加え、試験化合物のワーキングストック液(化合物濃度は終濃度の10倍で、DMSO濃度は1%で、最高濃度は10μMである。)を得た。
【0134】
最大値はDMSO溶媒対照であり、空白ウェルは培地のみを加え、細胞を接種していなかった。
【0135】
2.3 化合物処理
細胞を接種した96ウェルプレートのウェルあたり化合物のワーキングストック液(10倍希釈、DMSO終濃度0.1%)10μLを加えた。
【0136】
試験化合物の終濃度:1000nM、316nM、100nM、31.6nM、10nM、3.16nM、1nM、0.316nM、0.1nM。
【0137】
5%CO細胞インキュベータにて72時間培養した。
【0138】
3. 検出
CTG試薬を融解し、細胞プレートを室温に平衡化して30分間保持し、ウェルあたり試薬(Celltiter-Glo
assay kit)100μLを加え、振とう器で5min振とうさせ、均一に混合し(遮光)、室温で20分間インキュベートした(遮光)。マルチモードプレートリーダーにより光信号値を読み取った。
【0139】
4. データ処理
1) 細胞生存率(%)=(試験物ウェルの読み取り値-空白ウェルの読み取り値)/(DMSO溶媒対照ウェルの読み取り値-空白ウェルの読み取り値)×100%;
2) GraphPad Prism 5.0に入力してプロップし、曲線及びIC50を得た。
【0140】
実験結果及び結論
【0141】
【表8】
表8から分かるように、本発明の化合物は、Ba/F3 SLC34A2/ROS1-G2032R細胞の増殖を効果的に阻害することができ、臨床的には、本発明の化合物は、ROS遺伝子突然変異により引き起こされる薬剤耐性癌疾患を治療する潜在力を有することが示された。
【0142】
実験例3:本発明の化合物のBaF3-LMNA-NTRK1-G595R安定的トランスフェクション細胞株の皮下異種移植モデルにおける薬効を検討する実験
実験品:実施例1の方法によって製造される式(I)化合物
陽性対照薬:化合物LOXO-195は、市販品として入手するか、又は従来技術WO2011146336で開示された方法によって製造され、その構造は以下に示される。
【0143】
【化10】
実験方法
3.1 細胞接種
RPMI1640無血清培地に再懸濁させたBaF3 LMNA-NTRK1-G595R安定的トランスフェクション細胞株を、1×10 cell/匹(0.1ml/匹)で、マウス(NOD-SCID)の右肩甲部皮下に接種した。
【0144】
3.2 群分け投与
平均腫瘍体積が約500mmになると、Vehicle群、式(I)化合物(10/5/3/1mg/kg、bid)群、LOXO-195群(30/10/3mg/kg、bid)にランダムに分けた。
【0145】
詳細な投与方法、投与量及び投与経路を表9に示す。
【0146】
【表9】
【0147】
【表10】
注:n:動物数;群分けする当日に投与を行う。
【0148】
3.3 実験評価指標
1)腫瘍成長阻害率TGI(%)
腫瘍成長阻害率TGI(%)=(1-T/C)×100%
2)治療群/対照群腫瘍体積の比T/C(%)
T/C(%)=TRTV/CRTV×100%
* RTV=Vt/V、ここで、Vtは群分けした後のt日目の腫瘍体積で、Vは群分けする当日の腫瘍体積であり、TRTVは投与群の平均相対腫瘍体積で、CRTVは溶媒対照群の平均相対腫瘍体積である。
【0149】
3) 治療効果の評価標準:T/C(%)>40%は無効で、T/C(%)≦40%は有効であり、腫瘍成長阻害率≧60%は有効である。
【0150】
3.4 実験結果
【0151】
【表11】
【0152】
【表12】
実験の結論
実験データから明らかなように、本発明の化合物を経口投与することにより、NTRK融合遺伝子を含む細胞系BaF3
LMNA-NTRK1-G595R腫瘍の薬効モデルを効果的に阻害することができ、即ち、本発明の化合物はNTRK融合遺伝子突然変異による腫瘍に対して良好な腫瘍阻害作用を有し、臨床的には非常に良い使用の将来性が期待できる。
【0153】
本明細書に記載されるものに加えて、前述説明、本発明の各種の修正は当業者にとって明らかなことである。このような修正も添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。本願に引用される各参照文献(全ての特許、特許出願、定期刊行物の記事、書物及び任意の他の開示)は援用により全体として本明細書に組み込まれている。
図1
図2
図3