(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】セラミック電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240528BHJP
H01G 4/12 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/12 270
H01G4/12 360
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 311Z
H01G4/30 512
(21)【出願番号】P 2020082235
(22)【出願日】2020-05-07
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0001979
(32)【優先日】2020-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カン、ソン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ジョン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ジ ホン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ハン キュ
(72)【発明者】
【氏名】シム、ジェ シク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン イン
(72)【発明者】
【氏名】リー、サン ロク
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/073621(WO,A1)
【文献】特開2013-129560(JP,A)
【文献】特開2014-084267(JP,A)
【文献】特開2001-240466(JP,A)
【文献】特開2010-024126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00-4/224
H01G 4/255-4/40
H01G 13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置され、前記内部電極と連結される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、コア-二重シェル構造を有し、
前記二重シェルは、前記コアの少なくとも一部を囲む第1シェル、及び前記第1シェルの少なくとも一部を囲む第2シェルを含み、
前記第2シェルに含まれる希土類元素の濃度は、前記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満であり、
前記コア-二重シェル構造のコアに含まれる希土類元素の濃度は、前記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の0.1倍以下である、
セラミック電子部品。
【請求項2】
前記コア-二重シェル構造の断面において、前記コア-二重シェル構造の中心をα、前記第2シェルの表面のうち前記αから最も遠い地点をβと定義すると、前記αとβをつないだ直線のうち前記第2シェルに該当する長さは上記直線の全長さの4%超過25%未満である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記αとβをつないだ直線のうち前記第1シェルに該当する長さは上記直線の全長さの5%以上30%以下である、請求項2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記αとβをつないだ直線のうち前記第1シェルに該当する長さは、前記αとβをつないだ直線のうち前記第2シェルに該当する長さの0.5倍以上1.5倍以下である、請求項2または3に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記コア-二重シェル構造において、前記第1シェルは、前記コア表面の90面積%以上を覆うように配置され、
前記第2シェルは、前記第1シェルの表面の90面積%以上を覆うように配置される、請求項1から
4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上はコア-シェル構造を有する、請求項1から
5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記複数の誘電体結晶粒のうち前記コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒の数は全体の50%以上である、請求項1から
6のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層は、BaTiO
3、(Ba,Ca)(Ti,Ca)O
3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O
3、Ba(Ti,Zr)O
3、及び(Ba,Ca)(Ti,Sn)O
3のうち一つ以上を主成分として含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記誘電体層は、前記主成分100モルに対して希土類元素の含有量が0.1~15モルである、請求項
8に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記希土類元素は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうち一つ以上である、請求項1から
9のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記誘電体層は、副成分として、Mn、Cr、Ba、Si、Al、Mg、及びZrのうち一つ以上をさらに含む、請求項
8に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
コア-シェル構造を有し、前記シェルは、希土類元素を含む母材粉末を設ける段階と、
前記母材粉末に副成分を添加してセラミックグリーンシートを設ける段階と、
前記セラミックグリーンシートに内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を設ける段階と、
前記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を設ける段階と、
前記本体上に外部電極を形成する段階と、を含み、
前記母材粉末に含まれる希土類元素の含有量は、前記副成分に含まれる希土類元素の含有量の0.6倍超過2.4倍未満であ
り、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、コア-二重シェル構造を有し、
前記二重シェルは、前記コアの少なくとも一部を囲む第1シェル、及び前記第1シェルの少なくとも一部を囲む第2シェルを含み、
前記第2シェルに含まれる希土類元素の濃度は、前記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満である、
セラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記コア-二重シェル構造の断面において、前記コア-二重シェル構造の中心をα、前記第2シェルの表面のうち前記αから最も遠い地点をβと定義すると、前記αとβをつないだ直線のうち前記第2シェルに該当する長さは上記直線の全長さの4%超過25%未満である、請求項1
2に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記複数の誘電体結晶粒のうち前記コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒の数は全体の50%以上である、請求項1
2または1
3に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記焼成は、前記第2シェルに含まれる希土類元素の濃度が前記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満になるように焼成温度を調整して行う、請求項1
2から1
4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記焼成は、焼成温度1230℃超過1280℃未満の範囲で行う、請求項1
2から1
5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ又はサーミスタなどのセラミック材料を用いる電子部品は、セラミック材料からなるセラミック本体と、セラミック本体の内部に形成された内部電極と、上記内部電極と接続されるように、セラミック本体の表面に配置された外部電極と、を備える。
【0003】
セラミック電子部品のうちの一つである積層型セラミックキャパシタ(MLCC:multi-layer ceramic capacitor)は、高容量化及び超薄層化する傾向にある。
【0004】
高容量の積層型セラミックキャパシタ(MLCC:multi-layer ceramic capacitor)は、BaTiO3を主材料として構成し、ニッケルを内部電極のベース材料にして、本体を形成する。
【0005】
かかる本体は、還元雰囲気で焼成する必要がある。この際、誘電体は耐還元性を有するようにする必要がある。
【0006】
しかし、酸化物の固有特性により、還元雰囲気での焼成時に酸化物内部の酸素が抜け出て酸素空孔(oxygen vacancy)及び電子が発生し、信頼性が劣化し、IR(insulation resistance)が低くなるという問題がある。
【0007】
かかる問題を解消するために、希土類(rare earth)元素、例えば、Dy、Y、及びHoなどを添加して酸素空孔の発生を抑制し、且つ酸素空孔の移動度を下げて、遷移金属(transition metal)の添加により発生した電子を抑制する方法が提案された。
【0008】
しかし、より大きい容量を有するようにするために、積層型キャパシタを薄層化したり、使用環境がさらに厳しくなるにつれて、高電圧にする場合には、上記方法は効果的ではないという問題が依然として存在する。
【0009】
また、上記方法を介して希土類元素又は遷移金属を添加する場合には、高温寿命特性又は温度による容量変化特性(TCC、Temperature coefficient of capacitance)が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第2009-0105972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明のいくつかの目的のうちの一つは、信頼性を向上させることができるセラミック電子部品及びその製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のいくつかの目的のうちの一つは、温度による容量変化特性(TCC、Temperature coefficient of capacitance)を向上させることができるセラミック電子部品及びその製造方法を提供することである。
【0013】
本発明のいくつかの目的のうちの一つは、高温寿命特性を向上させることができるセラミック電子部品及びその製造方法を提供することである。
【0014】
本発明のいくつかの目的のうちの一つは、誘電率を向上させることができるセラミック電子部品及びその製造方法を提供することである。
【0015】
但し、本発明の目的は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でさらに容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一側面は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、コア-二重シェル構造を有し、上記二重シェルは、上記コアの少なくとも一部を囲む第1シェル、及び上記第1シェルの少なくとも一部を囲む第2シェルを含み、上記第2シェルに含まれる希土類元素の濃度は、上記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満であるセラミック電子部品を提供する。
【0017】
本発明の他の一側面は、コア-シェル構造を有し、上記シェルは、希土類元素を含む母材粉末を設ける段階と、上記母材粉末に副成分を添加してセラミックグリーンシートを設ける段階と、上記セラミックグリーンシートに内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を設ける段階と、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を設ける段階と、上記本体上に外部電極を形成する段階と、を含み、上記母材粉末に含まれる希土類元素の含有量は、上記副成分に含まれる希土類元素の含有量の0.6倍超過2.4倍未満であるセラミック電子部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置され、上記内部電極と連結される外部電極と、を含み、上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、コア-二重シェル構造を有し、上記二重シェルは、上記コアの少なくとも一部を囲む第1シェル、及び上記第1シェルの少なくとも一部を囲む第2シェルを含み、上記第2シェルに含まれる希土類元素の濃度は、上記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満であるセラミック電子部品を提供することができる。
【0019】
本発明の他の一側面は、コア-シェル構造を有し、上記シェルは、希土類元素を含む母材粉末を設ける段階と、上記母材粉末に副成分を添加してセラミックグリーンシートを設ける段階と、上記セラミックグリーンシートに内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を設ける段階と、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を設ける段階と、上記本体上に外部電極を形成する段階と、を含み、上記母材粉末に含まれる希土類元素の含有量は、上記副成分に含まれる希土類元素の含有量の0.6倍超過2.4倍未満であるセラミック電子部品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるセラミック電子部品を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面を概略的に示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示す分解斜視図である。
【
図6】コア-二重シェル構造を有する結晶粒を示す模式図である。
【
図7】発明例である試験番号9のコア-二重シェルを有する結晶粒についてのXRF EDS line分析結果であって、Dyに対する強度(intensity)を測定したものを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、具体的な実施形態及び添付された図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0022】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示しており、同一の思想の範囲内の機能が同一の構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0023】
図面において、X方向は、第2方向、L方向又は長さ方向、Y方向は、第3方向、W方向又は幅方向、Z方向は、第1方向、積層方向、T方向又は厚さ方向と定義することができる。
【0024】
セラミック電子部品
図1は本発明の一実施形態によるセラミック電子部品を概略的に示す斜視図であり、
図2は
図1のI-I'線に沿った断面を概略的に示す断面図であり、
図3は
図1のII-II'線に沿った断面を概略的に示す断面図であり、
図4は本発明の一実施形態による誘電体層及び内部電極が積層された本体を分解して概略的に示す分解斜視図であり、
図5は
図2のP領域を拡大した図であり、
図6はコア-二重シェル構造を有する結晶粒を示す模式図である。
【0025】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100について詳細に説明する。また、セラミック電子部品の一例として、積層セラミックキャパシタを例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、セラミック材料を用いる様々なセラミック電子部品は、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用されることができる。
【0026】
本発明の一実施形態によるセラミック電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置され、上記内部電極121、122と連結される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒10a、10b、10cを含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、複数のコア-二重シェル構造を有し、上記二重シェルS1、S2は、上記コアCの少なくとも一部を囲む第1シェルS1、及び上記第1シェルS1の少なくとも一部を囲む第2シェルS2を含み、上記第2シェルS2に含まれる希土類元素の濃度は、上記第1シェルS1に含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満である。
【0027】
本体110は、誘電体層111と内部電極121、122が交互に積層されて形成されることができる。
【0028】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図面に示されるように、本体110は、六面体状やこれと類似した形状からなることができる。また、本体110は、焼成過程で本体110に含まれるセラミック粉末の収縮により、完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0029】
本体110は、第1方向(Z方向)に互いに対向する第1面及び第2面1、2、第1面及び第2面1、2と連結され、第2方向(X方向)に互いに対向する第3面及び第4面3、4、及び第1面及び第2面1、2と連結され、第3面及び第4面3、4と連結され、且つ第3方向(Y方向)に互いに対向する第5面及び第6面5、6を有することができる。
【0030】
本体110を形成する複数の誘電体層111は、焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0031】
図5を参照すると、誘電体層111は、複数の誘電体結晶粒10a、10b、10cを含む。尚、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒10aである。
【0032】
図6を参照すると、コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒10aは、コアCの少なくとも一部を囲む第1シェルS1、及び第1シェルS1の少なくとも一部を囲む第2シェルS2を含む。
【0033】
一方、セラミック電子部品の一つである積層型セラミックキャパシタ(MLCC:multi-layer ceramic capacitor)は、高容量化及び超薄層化する傾向にある。高容量化及び薄層化に伴い、積層セラミックキャパシタにおける誘電体層の耐電圧特性の確保が重要な問題として台頭している。併せて、誘電体の絶縁抵抗劣化に伴う不良率の増加が問題として浮上している。
【0034】
かかる問題を解消するために、希土類(rare earth)元素、例えば、Dy、Y、及びHoなどを添加して酸素空孔の発生を抑制し、且つ酸素空孔の移動度を下げて、遷移金属(transition metal)の添加により発生した電子を抑制する方法が提案された。
【0035】
しかし、より大きい容量を有するようにすべく、積層型キャパシタを超薄層化したり、使用環境がさらに厳しくなるにつれて、高電圧が印加される場合には、単に希土類元素又は遷移金属を添加する方法では、上述した問題を十分に解決できないか、高温寿命特性又は温度による容量変化特性(TCC、Temperature coefficient of capacitance)が所望のレベルの値を有さない場合が存在した。
【0036】
そこで、本発明では、複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上がコア-二重シェル構造を有するようにし、且つコア-二重シェル構造において、第1シェルに含まれる希土類元素の濃度と第2シェルに含まれる希土類元素の濃度の割合を制御することにより、より優れた高温寿命特性及びTCC特性を確保した。
【0037】
第1シェルS1及び第2シェルS2に含まれる希土類元素は、基本的にABO3として表されるペロブスカイト構造のAサイト又はBサイトを置換してシェル領域を構成し、かかるシェル領域は、誘電体グレインの粒界において電子の流れを防ぐ障壁として作用し、漏れ電流を防ぐ役割を果たすことができる。
【0038】
また、シェルS1、S2が、濃度が異なる第1シェルS1及び第2シェルS2で構成された二重構造を取ることにより、高温寿命特性及びTCC特性をより向上させることができる。
【0039】
一方、コアCには希土類元素が存在しないか、存在したとしても微量しか存在しない。これにより、コアCに含まれる希土類元素の濃度は、第1シェルS1に含まれる希土類元素の濃度の0.1倍以下であることができる。
【0040】
また、希土類元素の濃度が、コアCと第1シェルS1の境界で急激に変化し、第1シェルS1と第2シェルS2の境界で急激に変化するため、コアCと第1シェルS1及び第2シェルS2とを容易に区別することができ、これはTEM-EDS分析を介して確認することができる。
【0041】
図5及び
図6に示すように、第1シェルS1は、コアCの表面を完全に覆うように配置されることができ、第2シェルS2は、第1シェルS1の表面のすべてを覆うように配置されることができる。但し、第1シェルがコアの一部の表面を覆わなくてもよく、第2シェルが第1シェルの一部の表面を覆わない形で存在することもできる。
【0042】
この際、第1シェルS1は、コアの表面の90面積%以上を覆うように配置されることができ、第2シェルS2は、第1シェルS1の表面の90面積%以上を覆うように配置されることができる。これは、第1シェルS1がコア表面の90面積%未満を覆うように配置されるか、又は第2シェルS2が第1シェルS1の表面の90面積%未満を覆うように配置される場合には、本発明による信頼性向上の効果が十分ではない可能性があるためである。
【0043】
第2シェルS2に含まれる希土類元素の濃度は、上記第1シェルS1に含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満であることができる。
【0044】
第2シェルS2に含まれる希土類元素の濃度が第1シェルS1に含まれる希土類元素の濃度の1.3倍以下の場合には、第1シェルS1及び第2シェルS2に含まれる希土類元素の濃度が類似するため、コア-二重シェル構造による信頼性向上の効果が十分ではない可能性がある。
【0045】
これに対し、第2シェルS2に含まれる希土類元素の濃度が第1シェルS1に含まれる希土類元素の濃度の3.8倍以上の場合には、第2シェルS2に含まれる希土類元素の濃度が高すぎるため、希土類元素による二次相が形成される可能性があり、信頼性が逆に低下するおそれがある。
【0046】
図6を参照すると、コア-二重シェル構造の断面において、上記コア-二重シェル構造の中心をα、上記第2シェルの表面のうち上記αから最も遠い地点をβと定義すると、上記αとβをつないだ直線のうち上記第2シェルに該当する長さLS2は上記直線の全長さの4%超過25%未満であることができる。ここで、αとは、誘電体結晶粒の断面積の重心点を意味することができる。
【0047】
上記αとβをつないだ直線のうち上記第2シェルに該当する長さLS2が上記直線の全長さの4%以下の場合には、信頼性向上の効果が十分ではない可能性があり、高温寿命特性の向上効果又は誘電率が低下するおそれがある。
【0048】
これに対し、上記αとβをつないだ直線のうち上記第2シェルに該当する長さLS2が上記直線の全長さの25%以上の場合には、高温寿命特性が低下したり、温度による容量変化特性(TCC、Temperature coefficient of capacitance)が低下するおそれがある。
【0049】
したがって、上記αとβをつないだ直線のうち上記第2シェルに該当する長さLS2は上記直線の全長さの4%超過25%未満であることが好ましく、4.5%以上24%以下であることがより好ましく、5%以上20%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
この際、上記αとβをつないだ直線のうち上記第1シェルに該当する長さLS1は、上記直線の全長さの5%以上30%以下であることができる。
【0051】
上記αとβをつないだ直線のうち上記第1シェルに該当する長さLS1が上記直線の全長さの5%未満の場合には、二重シェル構造を実現することが難しく、30%を超える場合には、信頼性を確保することが難しくなる可能性がある。
【0052】
また、第1シェルの長さと第2シェルの長さの差が長すぎる場合には、高温寿命特性及びTCC特性をともに向上させることが難しくなるおそれがある。したがって、上記αとβをつないだ直線のうち上記第1シェルに該当する長さLS1は、上記αとβをつないだ直線のうち上記第2シェルに該当する長さLS2の0.5倍以上1.5倍以下であることができる。
【0053】
図5を参照すると、誘電体層111は、コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒10aに加えて、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒10bを含むことができる。これにより、複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒10bであることができる。コア-シェル構造を有する誘電体結晶粒10bは、コア10b1、及びコア10b1の少なくとも一部を囲むシェル10b2を含むことができる。この際、コア-シェル構造のシェル10b2は、コア-二重シェル構造のシェルS1、S2とは希土類含有量が異なり得る。但し、これに限定されるものではなく、コア-シェル構造のシェル10b2がコア-二重シェル構造のシェルS1、S2のうち一つのシェルが同一の希土類含有量を有することもできる。
【0054】
また、誘電体層111は、別のシェルを有さない誘電体結晶粒10cを含むこともできる。
【0055】
この際、複数の誘電体結晶粒10a、10b、10cのうち上記コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒10aの数は全体の50%以上であることができる。ここで、コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒の数の割合は、誘電体層の断面を透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)でスキャンした画像から測定したものであることができる。
【0056】
複数の誘電体結晶粒のうち上記コア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒の数が全体の50%未満の場合には、高温寿命特性及びTCC特性の向上効果が不十分である可能性がある。
【0057】
一方、誘電体層111は、ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する物質を主成分として含むことができる。
【0058】
例えば、誘電体層111は、BaTiO3、(Ba,Ca)(Ti,Ca)O3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3,Ba(Ti,Zr)O3、及び(Ba,Ca)(Ti,Sn)O3のうち一つ以上を主成分として含むことができる。
【0059】
より具体的な例として、誘電体層111は、BaTiO3、(Ba1-xCax)(Ti1-yCay)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.5),Ba(Ti1-yZry)O3(ここで、0<y≦0.5)、及び(Ba1-xCax)(Ti1-ySny)O3(ここで、xは0≦x≦0.3、yは0≦y≦0.1)からなる群より選択される一つ以上を主成分として含むことができる。
【0060】
また、誘電体層111は、上記主成分100モルに対して希土類元素の含有量が0.1~15モルであることができる。
【0061】
誘電体層111に含まれる希土類元素の含有量が上記主成分100モルに対して0.1モル未満の場合には、二重-シェル構造を実現することが難しく、15モルを超える場合には、焼成温度が急激に上がり、緻密な微細構造を得ることが難しい可能性がある。
【0062】
この際、希土類元素は、ランタン(La)、イットリウム(Y)、アクチニウム(Ac)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)のうち一つ以上であることができる。
【0063】
また、誘電体層111に含まれる副成分については、希土類元素が含まれる必要があること以外は特に限定する必要はなく、所望の特性を得るために、適切な元素及び含有量を定めることができる。例えば、誘電体層111は、希土類元素の他に、副成分として、Mn、Cr、Ba、Si、Al、Mg、及びZrのうち一つ以上をさらに含むことができる。
【0064】
一方、誘電体結晶粒のサイズは、特に限定する必要はない。例えば、誘電体結晶粒の平均結晶粒サイズ(Grain size)は、50nm以上500nm以下であることができる。
【0065】
平均結晶粒サイズ(Grain size)が50nm未満の場合には、誘電率及び粒成長率の低下に伴う添加元素の固溶不足の現象による期待効果の実現が不十分になるという問題が発生する可能性がある。これに対し、500nmを超える場合には、温度及びDC電圧による容量変化率が増加し、誘電体層当たりの誘電体結晶粒の数の減少により、信頼性が低下するおそれがある。
【0066】
一方、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Aと、上記容量形成部Aの上部及び下部に形成されたカバー部112、113と、を含むことができる。
【0067】
また、上記容量形成部Aは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であって、誘電体層111を間に挟んで複数の第1及び第2内部電極121、122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0068】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的には物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0069】
上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極を含まず、誘電体層111と同一の材料を含むことができる。
【0070】
すなわち、上記上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0071】
また、上記容量形成部Aの側面には、マージン部114、115が配置されることができる。
【0072】
マージン部114、115は、本体110の第6面6に配置されたマージン部114と、第5面5に配置されたマージン部115と、を含む。すなわち、マージン部114、115は、上記本体110の幅方向両側に配置されることができる。
【0073】
マージン部114、115とは、
図3に示すように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)の方向に沿った断面において、第1及び第2内部電極121、122の両先端と本体110の境界面の間の領域を意味することができる。
【0074】
マージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0075】
マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成される部分を除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することにより形成されたものであってもよい。
【0076】
また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一の誘電体層又は2つ以上の誘電体層を容量形成部Aの両側面に幅方向に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0077】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に積層されている。
【0078】
内部電極121、122は、第1及び第2内部電極121、122を含むことができる。第1及び第2内部電極121、122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0079】
図2を参照すると、第1内部電極121は、第4面4と離隔され、第3面3に露出することができ、第2内部電極122は、第3面3と離隔され、第4面4に露出することができる。
【0080】
この際、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0081】
図3を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0082】
内部電極121、122を形成する材料は、特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。
【0083】
上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0084】
一方、積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要がある一方で、誘電体層及び内部電極の厚さが薄くなるほど、信頼性が低下し、絶縁抵抗、破壊電圧などの特性が低下する可能性がある。
【0085】
そのため、誘電体層及び内部電極の厚さが薄くなるほど、本発明による信頼性向上の効果も増加することができる。
【0086】
特に、内部電極121、122の厚さte又は誘電体層111の厚さtdが0.41μm以下の場合に、本発明による高温寿命特性及びTCC特性の向上効果が顕著になることができる。
【0087】
内部電極121、122の厚さteとは、第1及び第2内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。
【0088】
内部電極121、122の厚さteは、本体110の第2及び第1方向の断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で画像をスキャンして測定することができる。
【0089】
例えば、内部電極121、122の厚さteは、上記本体110の幅方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンした画像から抽出された内部電極層のうち、本体の長さ方向の中心線と厚さ方向の中心線が接する地点の内部電極層1層を基準に、上部の2層と下部の2層の合計5層の内部電極層に対して、上記本体の長さ方向の中心線と厚さ方向の中心線が接する地点を基準に、上記基準点の1つを中心に左側の2個及び右側の2個の5個の地点を等間隔に定めた後、各地点の厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0090】
すなわち、内部電極121、122の厚さteは、上記5層の内部電極層に対して、上記本体の長さ方向の中心線と厚さ方向の中心線が接する地点の誘電体層の1個の地点、及び内部電極層の1個の地点と上記1つの基準点を中心に左側及び右側方向に等間隔(各500nm)である各2個の地点の厚さを測定するため、合計25個の地点の厚さの平均値で決定されることができる。
【0091】
誘電体層111の厚さtdとは、上記第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。
【0092】
内部電極の厚さteと同様に、誘電体層111の厚さtdも、本体110の第2及び第1方向の断面(L-T断面)を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で画像をスキャンして測定することができる。
【0093】
例えば、誘電体層111の厚さtdは、上記本体110の幅方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)でスキャンした画像から抽出された誘電体層のうち、本体の長さ方向の中心線と厚さ方向の中心線が接する地点の内部電極層1層を基準に、上部の2層と下部の2層の合計5層の内部電極層に対して、上記本体の長さ方向の中心線と厚さ方向の中心線が接する地点を基準に、上記基準点の1つを中心に左側の2個及び右側の2個の5個の地点を等間隔に定めた後、各地点の厚さを測定して平均値を測定することができる。
【0094】
すなわち、誘電体層111の厚さtdは、上記5層の誘電体層に対して、上記本体の長さ方向の中心線と厚さ方向の中心線が接する誘電体層の1個の地点、及び上記1つの基準点を中心に左側及び右側方向に等間隔(各500nm)である各2個の地点の厚さを測定するため、合計25個の地点の厚さの平均値で決定されることができる。
【0095】
外部電極131、132は、本体110上に配置され、内部電極121、122と連結される。
【0096】
図2に示されている形のように、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結された第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。
【0097】
本実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の数や形状などは内部電極121、122の形や他の目的に応じて変わり得る。
【0098】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであればいかなる物質を用いて形成されることができ、電気的特性や構造的安定性などを考慮して、具体的な物質を決定することができ、さらに多層構造を有することができる。
【0099】
例えば、外部電極131、132は、本体110上に配置される電極層131a、132aと、電極層131a、132a上に形成されるめっき層131b、132bと、を含むことができる。
【0100】
電極層131a、132aについてのより具体的な例として、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、又は導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0101】
また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順に形成された形であることができる。尚、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方法で形成されたものであってもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方法で形成されたものであってもよい。
【0102】
電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気導電性に優れた材料を用いることができるが、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち一つ以上であることができる。
【0103】
めっき層131b、132bは、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、及びこれらの合金の一つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることができる。
【0104】
めっき層131b、132bについてのより具体的な例として、めっき層131b、132bは、Niめっき層又はSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順に形成された形であってもよく、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順に形成された形であってもよい。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0105】
セラミック電子部品の製造方法
以下、本発明の他の一側面によるセラミック電子部品の製造方法について詳細に説明する。但し、重複する説明を避けるために、セラミック電子部品の説明と重複する内容は省略する。
【0106】
本発明の他の一側面によるセラミック電子部品の製造方法は、コア-シェル構造を有し、上記シェルは、希土類元素を含む母材粉末を設ける段階と、上記母材粉末に副成分を添加してセラミックグリーンシートを設ける段階と、上記セラミックグリーンシートに内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を設ける段階と、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を設ける段階と、上記本体上に外部電極を形成する段階と、を含み、上記母材粉末に含まれる希土類元素の含有量は、上記副成分に含まれる希土類元素の含有量の0.6倍超過2.4倍未満である。
【0107】
先ず、コア-シェル構造を有し、且つ上記シェルは、希土類元素を含む母材粉末を設ける。
【0108】
母材粉末がコア-シェル構造を有さない場合には、本発明によるコア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒を実現することが難しい可能性がある。
【0109】
コア-シェル構造を有する母材粉末の製造方法は、特に限定しない。例えば、水熱合成を介してBaTiO3を製造するにあたり、所望のサイズに粉末を成長させる間に希土類元素を入れて合成することができる。又は、BaTiO3を希土類元素と混合した後、熱処理を介してコア-シェル構造を有する母材粉末を製造することができる。
【0110】
次に、上記母材粉末に副成分を添加してセラミックグリーンシートを設ける。この際、母材粉末に副成分を添加し、エタノール及びトルエンを溶媒にして分散剤とともに混合した後、バインダーを混合してセラミックシートを作製することができる。
【0111】
本発明によるコア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒を実現するためには、上記母材粉末に含まれる希土類元素の含有量を上記副成分に含まれる希土類元素の含有量の0.6倍超過2.4倍未満に制御することができる。
【0112】
母材粉末に含まれる希土類元素の含有量が副成分に含まれる希土類元素の含有量の0.6倍以下の場合には、誘電特性が低下する可能性があり、2.4倍以上の場合には、本発明によるコア-二重シェル構造を有する誘電体結晶粒を実現することが難しいおそれがある。
【0113】
したがって、母材粉末に含まれる希土類元素の含有量は、成分に含まれる希土類元素の含有量の0.6倍超過2.4倍未満であることが好ましく、0.7倍以上2.2倍以下であることがより好ましく、0.8倍以上2.0倍以下であることがさらに好ましい。
【0114】
一方、副成分に含まれる元素は、希土類元素以外には特に限定する必要はなく、所望の特性を得るために適切に制御することができる。
【0115】
次に、上記セラミックグリーンシートに内部電極用導電性ペーストを印刷した後、積層して積層体を設ける。
【0116】
次に、上記積層体を焼成して誘電体層及び内部電極を含む本体を設ける。
【0117】
この際、上記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つ以上は、コア-二重シェル構造を有し、上記二重シェルは、上記コアの少なくとも一部を囲む第1シェル、及び上記第1シェルの少なくとも一部を囲む第2シェルを含み、上記第2シェルに含まれる希土類元素の濃度は、上記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満であることができる。
【0118】
また、上記第2シェルに含まれる希土類元素の濃度が上記第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満になるようにするためには、母材粉末及び副成分に添加される希土類元素の含有量だけでなく、焼成温度を適切に調整して行う必要がある。
【0119】
一方、焼成温度の具体的な数値範囲は、添加元素の種類及び含有量に応じて異なり得るが、特に限定しない。例えば、焼成温度は1230℃超過1280℃未満であることができる。
【0120】
次に、上記本体上に外部電極を形成してセラミック電子部品を得ることができる。
【0121】
(実施例)
下記表1に記載された母材粉末を設けた。ここで、1.2Dy doped BTとは、コア-シェル構造を有し、BaTiO3 100モルに対して、シェル部に1.2モルのDyが含まれる母材粉末を意味する。また、0.5Dy doped BTとは、コア-シェル構造を有し、BaTiO3 100モルに対して、シェル部に0.5モルのDyが含まれる母材粉末を意味する。尚、Non doped BTとは、コア-シェル構造を有さないBaTiO3粉末を意味する。
【0122】
その後、母材粉末に下記表1に記載された副成分を添加し、エタノール及びトルエンを溶媒にして分散剤と混合した後、バインダーを混合してセラミックシートを作製した。成形されたセラミックシートにNi電極を印刷して積層し、圧着且つ切断したチップを脱バインダーのために仮焼した後、下記表1に記載された焼成温度で還元雰囲気(の下)で焼成を行い、サンプルチップを製造した。
【0123】
製造されたサンプルチップの誘電率、125℃におけるTCC値及び高温寿命特性を測定して下記表2に記載した。
【0124】
125℃におけるTCC値はLCRメーター(meter)を用いて1kHz、1Vの条件で-55℃から125℃までの温度範囲で測定した。
【0125】
高温寿命評価(高温IR昇圧実験)は、各試験番号毎に40個のサンプルに対して、150℃、1Vr=10V/μmの条件で30分ずつ維持し、電圧を倍数で増加させながらFail電圧値(短絡が発生した電圧値)の平均を記載したものである。ここで、1Vrは1基準電圧を意味し、10V/μmは誘電体の厚さ1μm当たりに10Vの電圧をかけたものを意味する。
【0126】
また、製造された各サンプルチップを幅方向の中央部で切断した長さ及び厚さ方向(L―T)の断面を透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)及びエネルギー分散型分光分析(EDS、Transmission Electron Microscope)装置を用いて分析し、濃度*、長さ*、及び割合*を下記表2に記載した。TEMは、200kV ARMを用いており、spot 4、10万倍で確認することができる。STEM-EDSは10nm間隔で100ポイントを測定したものである。
【0127】
濃度*は、コア-二重シェルを有する結晶粒に対して、電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscope)に設置されたEDS(Energy Disperse X-Ray Spectrometer)線(line)分析を行い、第2シェルのDy intensityからコア領域のDy intensityを引いた値を、第1シェルのDy intensityからコア領域のDy intensityを引いた値で分けて求めた。
【0128】
長さ
*は、コア-二重シェルを有する結晶粒に対して、
図7のようにTEM EDS線(line)分析を行い、[LS2区間で測定されたポイント(point)の数]/[αからβまでの全測定ポイント(point)の数]を記載したものである。
【0129】
分率*は、上記長さ及び厚さ方向(L―T)の断面の中央部の10μm×10μmの領域において全誘電体結晶粒の数に対するコア-二重シェル構造を有する結晶粒の数の割合を測定したものである
【0130】
【0131】
【0132】
試験番号2、3、8、及び9は、第2シェルに含まれる希土類元素の濃度が第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満を満たしたため、高温寿命信頼性に優れることが確認できる。また、試験番号2、3、8、及び9は、誘電率及び125 におけるTCC特性にも優れることが確認できる。
【0133】
これに対し、コア-二重シェル構造の結晶粒を含まない試験番号11及び12の場合には、高温寿命信頼性が劣化した。
【0134】
また、試験番号1、5~7、及び10は、コア-二重シェル構造を有するものの、第2シェルに含まれる希土類元素の濃度が第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍以下であるか、2.8倍以上であるため、高温寿命信頼性が劣化することを確認することができる。
【0135】
特に、試験番号1及び4の場合、同一の組成を有し、コア-二重シェル構造を有さない試験番号11よりも高温寿命信頼性が劣化し、試験番号7の場合と同一の組成を有し、コア-二重シェル構造を有さない試験番号12よりも高温寿命信頼性が劣化することを確認することができる。したがって、第2シェルに含まれる希土類元素の濃度が第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.3倍超過3.8倍未満を満たすように制御することにより、高温寿命信頼性を大幅に向上させることが分かる。
【0136】
図7は発明例である試験番号9のコア-二重シェルを有する結晶粒についてのXRF EDS線(line)分析結果であって、Dyに対する強度(intensity)を測定したものを示すグラフである。
【0137】
図7において、コア部分に該当する長さLCのDyに対する強度(intensity)は平均25程度であり、これはDyが存在しないことを意味する。但し、コア部分に該当する長さLCのDyに対する強度(intensity)は、TEM装置及び測定条件の環境により異なる可能性があるが、測定された強度(intensity)のうち最も低い領域の値を有する部分をコア領域としてみなすことができ、コア部分にDyが存在しないとみなすことができる。
【0138】
第1シェルに該当する長さLS1のDyに対する強度(intensity)は平均51程度であり、第2シェルに該当する長さLS2のDyに対する強度(intensity)は平均64程度である。したがって、第2シェルのDy intensityからコア領域のDy intensityを引いた値を、第1シェルのDy intensityからコア領域のDy intensityを引いた値で分けた値は1.5と、第2シェルに含まれる希土類元素の濃度が第1シェルに含まれる希土類元素の濃度の1.5倍である。但し、第1シェルに該当する長さLS1のDyに対する強度(intensity)及び第2シェルに該当する長さLS2のDyに対する強度(intensity)もTEM装置及び測定条件の環境により異なる可能性がある。ここで、第1シェルと第2シェルの間の希土類元素の濃度の割合は維持されることができる。
【0139】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0140】
100 セラミック電子部品
110 本体
121、122 内部電極
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 マージン部
131、132 外部電極