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  • 特許-新規化合物およびその利用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】新規化合物およびその利用
(51)【国際特許分類】
   C07H 13/06 20060101AFI20240528BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240528BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240528BHJP
   A61K 31/7024 20060101ALI20240528BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240528BHJP
   C09K 15/06 20060101ALI20240528BHJP
   C12P 19/12 20060101ALI20240528BHJP
   C12R 1/465 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
C07H13/06 CSP
A61K8/60
A61Q19/00
A61K31/7024
A61P39/06
C09K15/06
C12P19/12 ZNA
C12R1:465
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021511171
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004718
(87)【国際公開番号】W WO2020202790
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2019068164
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】張 万皎
(72)【発明者】
【氏名】小坂 邦男
(72)【発明者】
【氏名】松山 恵介
(72)【発明者】
【氏名】田中 麻美
(72)【発明者】
【氏名】曽田 匡洋
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/034147(WO,A1)
【文献】特開2017-158546(JP,A)
【文献】INAHASHI Y. et al.,Biosynthesis of Trehangelin in Polymorphospora rubra K07-0510: Identification of Metabolic Pathway to Angelyl-CoA,ChemBioChem,2016年,17,p.1442-1447
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
A61K
A61Q
A61K
A61P
C07H
C09K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
上記式(1)中、R は、水素、アセチル基、2-ブテノイル基または2-メチル-2-ペンテノイル基であり、R は、2-メチル-2-ブテノイル基であり、R 、R 、R およびR は水素である。〕
【請求項2】
請求項に記載の化合物を含む組成物であって、
上記組成物が、化粧品組成物または抗酸化剤である、組成物。
【請求項3】
さらに、下記式(6)~(8)で表される化合物の少なくとも一つを含む、請求項に記載の組成物。
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項4】
請求項に記載の化合物の製造方法であり、
(A)請求項に記載の化合物を生産する能力を有するストレプトマイセス リビダンス(Streptomyces lividans)を培地中で培養する工程、および
(B)上記培養物から請求項に記載の化合物を採取する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物およびその利用に関する。より具体的には、本発明は、新規化合物、該新規化合物を含む組成物、該新規化合物を含む化粧品組成物または抗酸化剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物により生産される代謝産物は、ヒトにとって有用な物質であることも多く、従来より、医薬、化粧品等の有効成分として利用されてきた。
【0003】
例えば、抗菌活性を有するペニシリンがアオカビから単離されたこと等は有名な話である。また、近年の事例としては、特許文献1および2に記載されているように、膜脂質障害抑制作用、抗菌活性、抗酸化作用等の機能を有するトレハンジェリンなる物質が、放線菌から得られたことが報告されている。
【0004】
このように、微生物から有用物質を得る例にはいとまがなく、微生物を用いた新規有用物質の探索は、なお多くの可能性を秘めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/034147号公報
【文献】日本国公開特許公報「特開2015-24985号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明の一態様は、抗酸化作用を有する新規の化合物、およびその利用技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定の微生物、より具体的には、放線菌Streptomyces lividans 1326株から、抗酸化作用を有する新規の化合物の同定に成功し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の一態様は、下記式(1)で表される化合物である。
【0008】
【化1】
〔式中、R~Rのいずれか一つは、水素、アセチル基、2-ブテノイル基または2-メチル-2-ペンテノイル基であり、残りの2つは水素であり、かつ、R~Rのいずれか一つは、2-メチル-2-ブテノイル基であり、残りの2つは水素である。〕
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、抗酸化作用を有する新規の化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一態様における化合物の抗酸化作用を評価した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の一形態について、以下に詳細に説明する。
【0012】
なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。また、本明細書における構造式において、立体構造等が特に示されていない場合、本明細書における構造式で表される化合物には、互変異生体、幾何異性体、光学異性体等の各種の立体異性体、およびそれらの混合物(ラセミ体を含む)が含まれる。
【0013】
〔1.化合物〕
本発明者らは、抗酸化作用を有する新規の化合物を探索するために、種々の微生物について詳細な検討を行った。その中で、特定の化合物の合成経路に関与する遺伝子を導入した放線菌ストレプトマイセス リビダンス(Streptomyces lividans)1326株から、抗酸化作用を有する新規化合物を同定することに成功した。
【0014】
本発明の一実施形態に係る化合物(以下、「本化合物」と称する。)は、上記式(1)で表される化合物である。本化合物は、後述する実施例に示すとおり、優れた抗酸化作用を有する。かかる化合物の具体的な例について以下に説明する。なお、本発明に係る化合物は、溶媒和物、例えば、水和物の形態であってもよく、そのような溶媒和物もまた、本化合物の範囲に包含される。また、本明細書中、「2-ブテノイル」は、クロトニルおよびイソクロトニルと同じ意味で使用され、「2-メチル-2-ブテノイル」は、アンジェロイルと同じ意味で使用される。
【0015】
本発明の実施の一形態において、本化合物は、好ましくは、上記式(1)中、Rは、水素、アセチル基、2-ブテノイル基または2-メチル-2-ペンテノイル基であり、Rは、2-メチル-2-ブテノイル基であり、R、R、RおよびRは水素である。
【0016】
上記好ましい態様において、上記式(1)中のRが「水素(H)」である化合物は、3-O-アンジェロイルトレハロース(3-O-angeloyltrehalose)であり、下記式(2)で表される。
【0017】
【化2】
本明細書において、3-O-アンジェロイルトレハロースとは、以下の物性を有する化合物である。
【0018】
(1)性状:白色粉末
(2)分子量:424
(3)分子式:C172812
(4)融点:117~120℃
(5)高分解能質量分析による[M+NH 理論値(m/z):442.1925、実測値(m/z):442.1901
(6)紫外部吸収極大(メタノール中):220nm
(7)H-NMRδ ppm:1.86(3H,dd,J=1.5Hz,J=1.5Hz),1.93(3H,dd,J=7.2Hz,J=1.5Hz),3.15(1H,ddd,J=9.5Hz,J=9.1Hz,J=5.7Hz),3.2~3.7(9H,m),3.78(1H,ddd,J=10.0Hz,J=4.0Hz,J=2.3Hz),4.37(1H,t,J=5.9Hz),4.48(1H,t,J=5.9Hz),4.72(1H,d,J=6.4Hz),4.77(1H,d,J=5.6Hz),4.84(1H,d,J=5.7Hz),4.84(1H,d,J=6.7Hz),4.91(1H,d,J=3.6Hz),4.95(1H,d,J=3.6Hz),5.02(1H,d,J=7.0Hz),5.21(1H,t,J=9.5Hz),6.04(1H,dq,J=7.2Hz,J=1.5Hz)
(8)溶剤に対する溶解性:メタノールに溶けにくい。
【0019】
上記好ましい態様において、上記式(1)中のRが「アセチル基((CO)CH)」である化合物は、3-O-アセチル-3’-O-アンジェロイルトレハロース(3-O-acetyl-3’-O-angeloyltrehalose)であり、下記式(3)で表される。
【0020】
【化3】
本明細書中において、3-O-アセチル-3’-O-アンジェロイルトレハロースとは、以下の物性を有する化合物である。
【0021】
(1)性状:白色粉末
(2)分子量:466
(3)分子式:C193013
(4)融点:160~161℃
(5)高分解能質量分析による[M+NH 理論値(m/z):484.2030、実測値(m/z):484.2001
(6)紫外部吸収極大(メタノール中):219nm
(7)H-NMRδ ppm:1.87(3H,dd,J=1.4Hz,J=1.4Hz),1.93(3H,dd,J=7.1Hz,J=1.4Hz),2.05(3H,s),3.2~3.5(2H,m),3.4~3.7(6H,m),3.7~3.8(2H,m),4.45(1H,t,J=5.6Hz),4.48(1H,t,J=5.6Hz),4.94(1H,d,J=7.3Hz),4.95(1H,d,J=6.7Hz),4.97(2H,d,J=3.7Hz),5.02(1H,d,J=6.2Hz),5.03(1H,d,J=7.0Hz),5.14(1H,t,J=9.5Hz),5.24(1H,t,J=9.5Hz),6.05(1H,dq,J=7.1Hz,J=1.4Hz)
(8)溶剤に対する溶解性:メタノールに溶けにくい。
【0022】
上記好ましい態様において、上記式(1)中のRが「イソクロトニル基((CO)HC=CHCH)」である化合物は、3-O-アンジェロイル-3’-O-イソクロトニルトレハロース(3-O-angeloyl-3’-O-isocrotonyltrehalose)であり、下記式(4)で表される。
【0023】
【化4】
本明細書中において、3-O-アンジェロイル-3’-O-イソクロトニルトレハロースとは、以下の物性を有する化合物である。
【0024】
(1)性状:白色粉末
(2)分子量:492
(3)分子式:C213213
(4)融点:155~158℃
(5)高分解能質量分析による[M+NH 理論値(m/z):510.2187、実測値(m/z):510.2225
(6)紫外部吸収極大(メタノール中):227nm
(7)H-NMRδ ppm:1.87(3H,dd,J=1.4Hz,J=1.4Hz),1.94(3H,dd,J=7.1Hz,J=1.4Hz),2.10(3H,dd,J=7.2Hz,J=1.7Hz),3.2~3.5(2H,m),3.4~3.7(6H,m),3.7~3.8(2H,m),4.46(1H,t,J=5.9Hz),4.48(1H,t,J=5.9Hz),4.92(1H,d,J=7.2Hz),4.93(1H,d,J=7.2Hz),4.97(1H,d,J=3.1Hz),4.98(1H,d,J=3.1Hz),5.01(1H,d,J=7.3Hz),5.02(1H,d,J=7.4Hz),5.23(1H,t,J=9.5Hz),5.26(1H,t,J=9.5Hz),5.85(1H,dd,J=11.5Hz,J=1.7Hz),6.05(1H,dq,J=7.1Hz,J=1.4Hz),6.39(1H,dq,J=11.5Hz,J=7.2Hz)
(8)溶剤に対する溶解性:メタノールに溶けにくい。
【0025】
上記好ましい態様において、上記式(1)中のRが「2-メチル-2-ペンテノイル基((CO)C(CH)=CHCHCH)」である化合物は、3-O-(2-メチル-2-ブテノイル)-3’-O-(2-メチル-2-ペンテノイル)トレハロース(3-O-(2-methyl-2-butenoyl)-3’-O-(2-methyl-2-pentenoyl)trehalose)であり、下記式(5)で表される。
【0026】
【化5】
本明細書中において、3-O-(2-メチル-2-ブテノイル)-3’-O-(2-メチル-2-ペンテノイル)トレハロースとは、上記の式(5)で表される構造を有するとともに、以下の物性を有する化合物である。
【0027】
(1)性状:白色粉末
(2)分子量:520
(3)分子式:C233613
(4)融点:176~180℃
(5)高分解能質量分析による[M+NH 理論値(m/z):538.2500、実測値(m/z):538.2495
(6)紫外部吸収極大(メタノール中):227nm
(7)H-NMRδ ppm:0.98(3H,t,J=7.5Hz),1.8~1.9(6H,m),1.94(3H,dd,J=7.2Hz,J=1.5Hz),2.41(2H,ddq,J=7.5Hz,J=7.5Hz,J=1.1Hz),3.2~3.5(2H,m),3.4~3.7(6H,m),3.7~3.8(2H,m),4.48(2H,t,J=5.6Hz),4.917(1H,d,J=7.3Hz),4.925(1H,d,J=7.3Hz),4.98(2H,d,J=3.7Hz),5.01(2H,d,J=7.4Hz),5.26(1H,t,J=9.6Hz),5.27(1H,t,J=9.5Hz),5.93(1H,dt,J=7.5Hz,J=1.4Hz),6.05(1H,dq,J=7.2Hz,J=1.5Hz)
(8)溶剤に対する溶解性:メタノールに溶けにくい。
【0028】
〔2.組成物〕
本発明の一実施形態に係る組成物(以下、「本組成物」と称する。)は、上記式(1)~(5)で表される本化合物の少なくとも一つを含むものである。
【0029】
また、別の一実施形態において、本組成物は、下記式(6)~(8)で表される化合物の少なくとも一つをさらに含むものであることが好ましい。
【化6】
【化7】
【0030】
【化8】
上記式(6)~(8)で表される化合物は、それぞれ、「トレハンジェリンA」、「トレハンジェリンB」および「トレハンジェリンC」とも呼ばれる。また、本明細書において、上記式(6)~(8)で表される化合物を総称して、「トレハンジェリン」と呼ぶ。
【0031】
本組成物に含まれる本化合物は、抗酸化作用を有するため、抗酸化物質が所望される種々の分野、例えば、化粧品、医薬、食品、飲料品、香料、顔料、合成樹脂、接着剤、燃料等の分野において有用である。また、上記式(6)~(8)で表される化合物は、膜脂質障害抑制作用、抗菌活性、抗酸化作用等の機能を有するため、本組成物がそれらの化合物を含むことにより、より広い効能、抗酸化作用における相乗効果等が期待できる。
【0032】
本組成物に含まれる本化合物の配合量としては、0.00001重量%~5重量%程度が好ましい例として挙げられるが、用いる剤型、使用対象等の様々な条件に応じて、その配合量を適宜設定できる。中でも、本組成物に含まれる本化合物の配合量は、0.00001重量%~0.5重量%が好ましく、0.0001重量%~0.05重量%がより好ましい。
【0033】
また、本組成物に含まれる上記式(6)~(8)で表される化合物の配合量としては、0.0001重量%~10重量%程度が好ましい例として挙げられるが、用いる剤型、使用対象等の様々な条件に応じて、その配合量を適宜設定できる。中でも、本組成物に含まれる上記化合物の配合量は、0.0001重量%~1重量%が好ましく、0.001重量%~0.1重量%がより好ましい。
【0034】
本組成物において、本発明の式(1)で表される化合物と、トレハンジェリンとの配合比は、例えば、0.01:1~10:1であり、好ましくは、0.4:1である。
【0035】
本組成物において、本発明の式(2)で表される化合物と、トレハンジェリンとの配合比は、例えば、0.01:1~10:1であり、好ましくは、0.2:1である。
【0036】
本組成物において、本発明の式(3)で表される化合物と、トレハンジェリンとの配合比は、例えば、0.01:1~10:1であり、好ましくは、0.04:1である。
【0037】
本組成物において、本発明の式(4)で表される化合物と、トレハンジェリンとの配合比は、例えば、0.01:1~10:1であり、好ましくは、0.05:1である。
【0038】
本組成物において、本発明の式(5)で表される化合物と、トレハンジェリンとの配合比は、例えば、0.01:1~10:1であり、好ましくは、0.05:1である。
【0039】
本組成物において、式(2)~(5)で表される本化合物と、トレハンジェリンとの配合比は、例えば、0.01:1~10:1であり、好ましくは、0.34:1である。
【0040】
本組成物は、トレハンジェリン以外にも種々の物質を含んでいてもよい。
【0041】
以下、本組成物の一例として、「化粧品組成物」および「抗酸化剤」について説明する。
【0042】
〔3.化粧品組成物〕
本発明の一実施形態において、本組成物は、化粧品組成物(以下、「本化粧品組成物」と称する。)であることが好ましい。
【0043】
本化粧品組成物は、上記式(1)~(5)の少なくともいずれかの化合物を含むことが好ましく、さらに上記式(6)~(8)で表される化合物のいずれかを含むことがより好ましい。
【0044】
本化粧品組成物は、上記化合物の他に、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、水溶性高分子のような高分子、増粘剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤、乾燥剤等を含んでいてもよい。また、本化粧品組成物は、ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、抗癌剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分等を含んでいてもよい。
【0045】
油脂類としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ、モクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0046】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等が挙げられる。
【0047】
高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等が挙げられる。
【0048】
シリコーンとしては、例えば、鎖状ポリシロキサンのジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等、環状ポリシロキサンのデカメチルポリシロキサン等が挙げられる。
【0049】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N-アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N-アシルアミノ酸塩等が挙げられる。
【0050】
カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0051】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
【0052】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体が挙げられる。
【0053】
防腐剤としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等が挙げられる。
【0054】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等が挙げられる。
【0055】
高分子としては、例えば、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等のビニル系高分子、ベントナイト等が挙げられる。
【0056】
増粘剤としては、例えば、カラギーナン、トラガカントガム、クインスシード、カゼイン、デキストリン、ゼラチン、CMC、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、グアーガム、キサンタンガム等が挙げられる。
【0057】
粉末成分としては、例えば、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末、無機白色顔料、無機赤色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等の有機顔料等が挙げられる。
【0058】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられる。
【0059】
紫外線遮断剤としては、例えば、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0060】
保湿剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等が挙げられる。
【0061】
薬効成分としては、例えば、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L-アスコルビン酸-2-グルコシド等のビタミンC類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD2、コレカルシフェロール等のビタミンD類;α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL-α-トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類等が挙げられる。
【0062】
本化粧品組成物に含有させることができる物質として、その他に、プラセンタエキス、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ-オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、マルトースショ糖縮合物等の常在菌コントロール剤、塩化リゾチームが挙げられる。
【0063】
さらに、本化粧品組成物に含有させることができる物質として、カミツレエキス、パセリエキス、ぶなの木エキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物等が挙げられる。
【0064】
本化粧品組成物は、例えば、水溶液、油剤、乳液、懸濁液等の液剤、ゲル、クリーム等の半固形剤、粉末、顆粒、カプセル、マイクロカプセル、固形等の固形剤の形態で適用可能である。従来より公知の方法でこれらの形態に調製し、ローション剤、乳剤、ゲル剤、クリーム剤、軟膏、硬膏、ハップ剤、エアゾル剤、坐剤、注射剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、シロップ剤、トローチ剤等の種々の剤型とすることができる。これらを身体に塗布、貼付、噴霧、飲用等により適用することができる。特にこれら剤型の中で、ローション剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、硬膏剤、ハップ剤、エアゾル剤等が皮膚外用剤に適している。
【0065】
本化粧品組成物は、化粧水、乳液、クリーム、パック等の皮膚化粧料、メイクアップベースローション、メイクアップクリーム、乳液状またはクリーム状あるいは軟膏型のファンデーション、口紅、アイカラー、チークカラーといったメイクアップ化粧料、ハンドクリーム、レッグクリーム、ボディローション等の身体用化粧料等、入浴剤、口腔化粧料、毛髪化粧料等とすることができる。
【0066】
〔4.抗酸化剤〕
本発明の一実施形態において、本組成物は、抗酸化剤(以下、「本抗酸化剤」と称する。)であることが好ましい。
【0067】
本抗酸化剤は、通常の薬学的に許容される担体を用いて、常法により製剤化することができる。
【0068】
経口用固形製剤を調製する場合には、主薬に、賦形剤、更に必要に応じて、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えた後、常法により、溶剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等とする。
【0069】
注射剤を調製する場合には、主薬に、必要に応じて、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤等を添加し、常法により、皮下または静脈内用注射剤とすることができる。
【0070】
皮膚外用剤を調製する場合には、前述の本化粧品組成物に準じて調製することができる。例えば、上記式(1)~(5)で表される本化合物を溶解する脂肪酸エステル類、高級アルコール類および炭酸プロピレンからなる群から選ばれる一種あるいは二種以上の混合物である疎水性・無水性の溶剤と、白色ワセリン、黄色ワセリン、流動パラフィンおよび流動パラフィンのポリエチレンゲルから選ばれる一種あるいは二種以上の混合物である親油性基剤とからなる軟膏剤とすることができる。
【0071】
また、クリーム剤としては、本化合物と、5~20重量部の白色ワセリンおよび5~15重量部の高級アルコール類からなる固形油分と3~10重量部のスクワランからなる液状油分とからなる油相成分と、水相成分と、2.5~7.5重量部の2種以上からなる界面活性剤と、を含むクリーム剤とすることができる。クリーム剤の油相成分には、上記の白色ワセリン、高級アルコール類、スクワランの他に、他の固形油分、液状油分を添加してもよい。
【0072】
主薬に、必要に応じて、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤等を添加し、常法により、軟膏・クリーム等の半固形剤、ローション等の液剤、またはテープ剤のような外用剤とすることができる。
【0073】
本抗酸化剤は、全身的または局所的に投与することができる。
【0074】
全身的に投与する場合には、注射剤、経口剤、経鼻剤等として、血管内、組織内、胃腸管、粘膜等へ、水性注射剤、油性注射剤、錠剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、経鼻液剤、経鼻粉剤等の剤型で投与される。投与量は、症状の程度、年齢、疾患の種類等により異なるが、通常成人1日当たり50~500mgを1日1~数回に分けて投与する。
【0075】
また、局所的に投与する場合には、外用剤として、軟膏・クリーム等の半固形剤、ローション等の液剤、またはテープ剤の剤型で、皮膚の疾患部位に直接投与される。投与量は、症状の程度、年齢、疾患の種類等により異なるが、通常の抗炎症用の皮膚外用剤の適用方法に準じればよい。例えば、外用剤の適当量を症状にあわせて1日1回~数回塗布すればよく、症状にあわせて幾度でも塗布できる。
【0076】
〔5.本化合物の製造方法〕
本発明の一実施形態に係る本化合物の製造方法(以下、「本製造方法」と称する。)は、(A)上記式(1)~(5)で表される本化合物を生産する能力を有する微生物を培地中で培養する工程、および(B)上記培養物から上記式(1)~(5)で表される本化合物を採取する工程を含む。
【0077】
本化合物は、本化合物を生産する能力を有する微生物を培地中で培養し、培養物中に本化合物を蓄積せしめ、該培養物から本化合物を採取(分離・抽出・精製)することにより製造することができる。
【0078】
本製造方法において、「本化合物を生産する能力を有する微生物」は、本化合物を生産する能力を有する微生物であれば特に限定されない。また、それらの変異株をはじめ、遺伝子組換え株、同定されていない未知の野生株等の本化合物を生産する能力を有する菌すべてが、本製造方法に用いることのできる菌株に含まれる。
【0079】
微生物が「本化合物を生産する能力を有する微生物」であるか否かは、被験対象となる微生物が適度に増殖できるような条件下(培養温度、pH、培地成分等)で培養を行い、培養物中の本化合物の有無を調べることにより行うことができる。上記培養物中に、本化合物が存在すれば当該微生物は、本化合物を生産する能力を有する微生物であると決定することができる。なお、上記の被験対象となる微生物が適度に増殖できるような条件は、培養する微生物に応じて、適宜設定可能である。
【0080】
本明細書において、「変異株」とは、人工的または自然界における変異誘発刺激により本化合物を生産する能力を有する微生物とは異なる菌学的性状または遺伝子を有する株のことであり、このような変異株には、本化合物を生産する能力を有する微生物から派生した菌株の他、本化合物を生産する能力を有する微生物を派生させた元の菌株も含まれる。本明細書において、変異株は実際の派生の痕跡の有無を問うものではなく、例えば、本化合物を生産する能力を有する微生物の遺伝子(例えば、16S rRNA遺伝子)と高い相同性(例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上等)を有する遺伝子を有する菌株もまた、変異株に含まれる。また、このような変異株は、本化合物の産生能を維持している限り、人工的に作製したものであるか、天然から採取したものであるかを問わない。
【0081】
本明細書において、「遺伝子組換え株」とは、微生物の野生株に外部から人工的に遺伝子を導入した株を意味する。遺伝子組換え株は、本化合物を生産する能力を有する限り、特に限定されない。遺伝子組換え株はまた、形質転換体とも称される。
【0082】
遺伝子組換え株の宿主としては、特に限定されないが、例えば、ゲノム上に本化合物の合成遺伝子を有さない微生物を使用し得る。この場合、当該微生物に、本化合物の合成遺伝子を導入することにより、本化合物の製造が可能となる。
【0083】
また、別の実施形態において、ゲノム上に本化合物の合成遺伝子を有する微生物を宿主として使用し得る。そのような微生物は、遺伝子を導入しなくても、本化合物を製造する能力を有するが、そのような微生物に本化合物の合成遺伝子を導入した場合には、本化合物の製造量が増加する等の利点を有する。このような微生物として、例えば、ポリモーフォスポラ ルブラ(Polymorphospora rubra)K07-0510株(受託番号 NITE BP-01411)等が挙げられる。なお、ポリモーフォスポラ ルブラ(Polymorphospora rubra)K07-0510株は、上述の通り、それ単体で本化合物を製造できるため、遺伝子を導入しない場合も、「本化合物を生産する能力を有する微生物」に包含される。
【0084】
遺伝子組換え株の宿主としては、例えば、Escherichia属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Bacillus属、Microbacterium属、Serratia属、PSEudomonas属、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Chromatium属、Erwinia属、Methylobacterium属、Phormidium属、Rhodobacter属、RhodopSEudomonas属、Rhodospirillum属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Synnecoccus属、Zymomonas属に属する微生物等が挙げられる。好ましくは、Escherichia属、Corynebacterium属、Brevibacterium属、Bacillus属、PSEudomonas属、Agrobacterium属、Alicyclobacillus属、Anabaena属、Anacystis属、Arthrobacter属、Azobacter属、Chromatium属、Erwinia属、Methylobacterium属、Phormidium属、Rhodobacter属、RhodopSEudomonas属、Rhodospirillum属、Scenedesmun属、Streptomyces属、Synnecoccus属、Zymomonas属に属する微生物等である。放線菌としては、例えば、Streptomyces albus、Streptomyces lividans、Streptomyces chromofuscus、Streptomyces exfoliatus、Streptomyces argenteorus等が挙げられる。
【0085】
遺伝子組換え株の宿主は、外部から所望の遺伝子を人工的に導入した際に、本化合物を生産する能力を有するものであれば特に限定されないが、放線菌が好ましく、Streptomyces属の放線菌がより好ましく、Streptomyces lividansがとりわけ好ましい。
【0086】
遺伝子組換え株の作製は、例えば、特開2017-158546号公報に記載の方法により行われる。簡潔には、特開2017-158546号公報の記載に基づき、トレハンジェリンの合成に関与する酵素群(エノイル-CoAハイドラターゼ、3-ケトアシル-CoAシンターゼ、アシルトランスフェラーゼおよび3-ケトアシル-CoAレダクターゼ)をコードする遺伝子を取得し、同文献の記載に基づき、取得した遺伝子をベクターに組み込んで宿主に導入することにより、「本化合物を生産する能力を有する微生物」に包含される遺伝子組換え株(形質転換体)が得られる。
【0087】
すなわち、本発明の別の一実施形態において、本化合物の製造方法は、(C)トレハンジェリンの合成に関与する酵素をコードする遺伝子を導入した形質転換体(例えば、放線菌)を培地中で培養する工程、および(D)上記培養物から上記式(1)~(5)で表される本化合物を採取する工程を含む。
【0088】
本実施形態において、本化合物は、トレハンジェリンの合成に関与する酵素群を組み込んだ形質転換体(例えば、放線菌)を培地中で培養し、培養物中に本化合物を蓄積せしめ、該培養物から本化合物を採取(分離・抽出・精製)することにより製造することができる。
【0089】
本化合物を生産する能力を有する微生物を培養するための培地は、微生物の栄養源として使用し得るものであればよい。例えば、市販のペプトン、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、綿実粉、落花生粉、大豆粉、酵母エキス、NZ-アミン、カゼインの水和物、硝酸ソーダ、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム等の窒素源、グリセリン、スターチ、グルコース、ガラクトース、マンノース等の炭水化物、あるいは脂肪等の炭素源、および食塩、リン酸塩、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の無機塩を、単独で、または組み合わせて使用することができる。その他、必要に応じて、微量の金属塩、消泡剤として動物油、植物油、鉱物油等を添加することもできる。これらは、生産菌を利用して本化合物の生産の役だつものであればよく、公知の微生物の培養材料はすべて用いることができる。
【0090】
また、本化合物を生産する能力を有する微生物の培養は、生産菌が発育し、かつ、本化合物を生産できる温度範囲(例えば、10~40℃、好ましくは、25~30℃)で数日~2週間振盪培養することにより行うことができる。培養条件は、本明細書の記載を参照しながら、使用する本化合物の生産菌の性質に応じて、適宜選択して行なうことができる。
【0091】
本化合物の採取は、培養液より酢酸エチル等の水不混和性の有機溶媒を用いて抽出することにより行うことができる。本抽出法に加え、脂溶性物質の採取に用いられる公知の方法、例えば吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーよりのかき取り、遠心向流分配クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等を適宜組合せるか、あるいは繰返すことによって純粋になるまで精製することができる。
【0092】
本化合物の採取は、例えば、実施例に記載の方法により行うことができる。
【0093】
本発明の一実施形態は、以下の構成を包含する。
<1>下記式(1)で表される化合物。
【0094】
【化9】
〔式中、R~Rのいずれか一つは、水素、アセチル基、2-ブテノイル基または2-メチル-2-ペンテノイル基であり、残りの2つは水素であり、かつ、R~Rのいずれか一つは、2-メチル-2-ブテノイル基であり、残りの2つは水素である。〕
<2>上記式(1)中、Rは、水素、アセチル基、2-ブテノイル基または2-メチル-2-ペンテノイル基であり、Rは、2-メチル-2-ブテノイル基であり、R、R、RおよびRは水素である、<1>に記載の化合物。
<3><1>または<2>に記載の化合物を含む、組成物。
<4>さらに、下記式(6)~(8)で表される化合物の少なくとも一つを含む、<3>に記載の組成物。
【化10】
【化11】
【化12】
<5>上記組成物が、化粧品組成物または抗酸化剤である、<3>または<4>に記載の組成物。
<6><1>または<2>に記載の化合物の製造方法であり、
(A)<1>または<2>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培地中で培養する工程、および
(B)上記培養物から<1>または<2>に記載の化合物を採取する工程を含む、方法。
【0095】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例
【0096】
以下に実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0097】
〔1.生産菌株の作製〕
放線菌Polymorphospora rubra K07-0510株を、酵母エキス1%およびグルコース1%を含むYD培地で、適当な温度(例えば、27℃)で数日間培養した。培養後、得られた培養液より遠心分離により菌体を取得した。次いで、得られた菌体より常法(モレキュラー・クローニング第2版)に従い染色体DNAを単離精製した。
【0098】
配列番号1の4つのオープンリーディングフレーム(orf)を便宜上、塩基配列番号の少ない方から、orfA、orfB、orfC、orfDと命名した。orfA~Dの配列番号1における位置と機能は以下の通りである。
・orfA(配列番号2:配列番号1の塩基番号1-828、エノイル-CoAハイドラターゼをコード)
・orfB(配列番号3:配列番号1の塩基番号875-1900、3-ケトアシル-CoAシンターゼをコード)
・orfC(配列番号4:配列番号1の塩基番号1905-2684、アシルトランスフェラーゼをコード)
・orfD(配列番号5:配列番号1の塩基番号2681-3475、3-ケトアシル-CoAレダクターゼをコード)
上記4つの遺伝子を十分発現させるような組換え体プラスミドを、PCR法〔Science,230,1350(1985)〕を用いて、下記方法により構築した。
【0099】
放線菌Polymorphospora rubra K07-0510株の染色体DNAを鋳型として、配列番号6に示した5’末端にPstI制限酵素サイトおよびリボソーム結合配列を有するセンスプライマー、配列番号7に示した5’末端にStuI制限酵素サイトを有するアンチセンスプライマーおよびTaq DNA polymerase(ロシュ・ライフサイエンス社製)を用い、DNA Thermal Cycler(アプライドバイオシステムズ社製)でPCRを行うことにより、orfA、orfB、orfCおよびorfD(以下、「orfABCD」という)を発現させるDNAを増幅した。PCRは、95℃で30秒間、68℃で30秒間、72℃で4分間からなる反応工程を1サイクルと30サイクル行った後、72℃で10分間反応させる条件で行った。増幅されたDNA断片をアガロースゲル電気泳動によって精製し、制限酵素PstIとStuIとで消化することで、PstIとStuI処理orfABCDを発現させるDNAを含有するDNA断片(以下、「orfABCD含有DNA断片」という)を取得した。
【0100】
pOSV556t〔Nat.Chem.,3,338,(2011)〕を制限酵素PstIとStuIとで消化し、PstIおよびStuI処理pOSV556t断片を取得した。上記で取得されたPstIおよびStuI処理orfABCD含有DNA断片をPstIおよびStuI処理pOSV556t断片と混合した後、ライゲーション反応を行うことにより組換え体DNAを取得した。
【0101】
該組換え体DNAを用い、E.coli Top10株を常法に従って形質転換後、該形質転換体をアンピシリン100μg/mlを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養した。該形質転換体より定法に従って組換えDNAを含むプラスミドを単離した。該組換え体DNAがorfABCDであることを、DNA配列を決定することによって確認し、このプラスミドをpOSV556-orfABCDと命名した。
【0102】
pOSV556-orfABCDを常法によりE.coli ET12567/pUZ8002株〔Practical Streptomyces Genetics (2000)〕に導入し、カナマイシン50μg/ml、クロラムフェニコール25μg/ml、アンピシリン100μg/mlに耐性を示すE.coli ET12567/pUZ8002/pOSV556-orfABCD株を得た。さらに、pOSV556-orfABCDを常法によりE.coli ET12567/pUZ8002株から放線菌Streptomyces lividans 1326株(独立行政法人 製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NBRC):NBRC番号15675)に接合伝達させることにより、ハイグロマイシン50μg/mlに耐性を示すStreptomyces lividans/pOSV556-orfABCDを得た。
【0103】
〔2.新規化合物の単離および同定〕
上記で得られたStreptomyces lividans/pOSV556-orfABCDを、酵母エキス1%およびグルコース1%を含む液体培地500ml中、27℃で1日間震盪培養した。次いで、20%トレハロース水溶液50mlを添加した後、さらに27℃で4日間震盪培養した。得られた培養液にエタノール500mlを加えて1時間撹拌した。次いで、その抽出液中のエタノールを減圧留去し、得られた水溶液に250mlの酢酸エチルを加えてよく撹拌した後、酢酸エチル層を回収した。その後、濃縮乾固し、0.1%ギ酸100mLに溶解させた。
【0104】
上記で得られた500mLの培養液由来濃縮乾固サンプルを使用し、新規化合物の精製を行った。精製には、以下のカラムおよび溶出溶媒を使用した。
<1回目の精製>
・カラム:ULTRA PACK ODS-SM-50B φ26×300mm(山善社製)
・溶出溶媒:水/アセトニトリル/ギ酸(850/150/1)
<2回目の精製>
・カラム:オープンカラムで、Silica PSQ-100B 10gを使用
・溶出溶媒:酢酸エチル
精製途中画分の純度確認は、HPLCで行った。LC純度95%以上のサンプルを回収し、凍結乾燥し、精製した。なお、HPLCおよびLC/MSは、以下の分析条件により行った。
<HPLC分析条件>
・装置:Prominence UFLCシステム(島津社製)
・カラム:YMC-Pack ODS-AQ(株式会社ワイエムシィ社製)
・移動相:水/アセトニトリル/ギ酸(850/150/1)
・流速:1mL/分
・検出:220nm
<LC/MS分析条件>
・装置:Agilent Technologies 6224 TOF LC/MS(アジレントテクノロジー社製)
・カラム:YMC-Pack ODS-AQ(株式会社ワイエムシィ社製)
・移動相:水/アセトニトリル/ギ酸(850/150/1)
・流速:0.5mL/分
これにより、新規化合物A(25mg)、新規化合物B(12mg)、新規化合物C(15mg)、および新規化合物D(20mg)が得られた。これらの化合物について、以下の融点およびNMR分析を行った。
【0105】
(融点およびNMR分析結果)
上記新規化合物A、B、CおよびDについて、以下の分析条件により、融点およびNMRを測定した。
<融点測定条件>
・装置:BUCHI Melting Point B-545(BUCHI社製)
<NMR分析条件>
・装置:BRUKER AMX 400(Bruker社製)
・溶媒:DMSO-d6
・内標:TMS
その結果、新規化合物A、B、CおよびDは、それぞれ、3-O-アンジェロイルトレハロース、3-O-アセチル-3’-O-アンジェロイルトレハロース、3-O-アンジェロイル-3’-O-イソクロトニルトレハロース、および3-O-(2-メチル-2-ブテノイル)-3’-O-(2-メチル-2-ペンテノイル)トレハロースであることが同定された。
【0106】
〔3.生理機能評価〕
上記で得られた化合物について、生理機能の評価を行った。生理機能の評価は、Carnosic acid, a catechol-type electrophilic compound, protects neurons both in vitro and in vivo through activation of the Keap1/Nrf2 pathway via S-alkylation of targeted cysteines on Keap1. Takumi Satoh et al., Journal of Neurochemistry. Vol. 104, pp. 1116-1131, (2008)に記載のツールを用いて行った。
【0107】
簡潔には、10%FBS-DMEM/F12培地(GIBCO社製)を用いて、ARPE-19細胞を、50%コンフルエントになるように24ウェルプレートに播種した。24時間後、1ウェルあたり、(1)0.5μgのpGL3-GSTYaARE-Luciferaseベクターと、0.5μgのpSV-betaGALベクターと、50μLのOpti-MEM I(GIBCO社製)との混合溶液(ベクターの溶液)、および(2)2μLのlipofectamine 2000(Thermo Fisher社製)と、50μLのOpti-MEM I(GIBCO社製)との混合溶液(lipofectamine 2000の溶液)を調製し、室温で5分間放置した。該ベクターの溶液と該lipofectamine 2000の溶液とを混合し、室温で20分間放置した。その混合液を培養細胞(ARPE-19細胞)に添加し(1ウェルあたり100μL)、COインキュベーターで6時間培養した。続いて、培地を新しい10%FBS-DMEM/F12培地(0.5mL/ウェル)に交換し、18時間培養した。その後、培地を、新しい10%FBS-DMEM/F12培地(0.3mL/ウェル)または各種トレハンジェリン誘導体を20mg/mL含む10%FBS-DMEM/F12培地(0.3mL/ウェル)に交換し、24時間培養した。培地を除去した後、PassiveLysisBuffer(プロメガ社製)150μLを加えて、細胞溶解液を調製した。
【0108】
細胞溶解液を100μLずつ96ウェルプレートにとり、βGALアッセイキット溶液(プロメガ社製)100μLを加えて、37℃で3時間インキュベートした。その後、405nmの吸光度を測定することで、βGAL活性を確認した。
【0109】
上記とは別の96ウェルプレートに細胞溶解液を20μLずつ入れ、ルシフェラーゼアッセイキット液(プロメガ社製)を100μLずつ添加した。その後、発光を測定することにより、ルシフェラーゼ活性を測定した。得られたルシフェラーゼ活性の結果を、βGAL活性の結果で割ることで補正し、antioxidant responsive element転写活性を算出した。結果を図1に示す。
【0110】
(結果)
図1より、3-O-アンジェロイルトレハロース、3-O-アセチル-3’-O-アンジェロイルトレハロース、3-O-アンジェロイル-3’-O-イソクロトニルトレハロースおよび3-O-(2-メチル-2-ブテノイル)-3’-O-(2-メチル-2-ペンテノイル)トレハロースは、いずれも、対照と比較して、1.24~2.09倍のルシフェラーゼ活性を示した。このことより、3-O-アンジェロイルトレハロース、3-O-アセチル-3’-O-アンジェロイルトレハロース、3-O-アンジェロイル-3’-O-イソクロトニルトレハロースおよび3-O-(2-メチル-2-ブテノイル)-3’-O-(2-メチル-2-ペンテノイル)トレハロースは、抗酸化作用を有することが分かった。
【0111】
また、公知物質であるトレハンジェリンAとの比較において、3-O-アンジェロイルトレハロースはトレハンジェリンAと同程度の、3-O-アンジェロイル-3’-O-イソクロトニルトレハロースおよび3-O-(2-メチル-2-ブテノイル)-3’-O-(2-メチル-2-ペンテノイル)トレハロースは、トレハンジェリンAよりも高い抗酸化作用を有することが分かった。
【0112】
〔4.処方例〕
(化粧水)
本発明の一実施形態に係る化合物を含む化粧料として、下記の組成にて化粧水を製造した。室温下で、下記の成分(11)に、成分(1)~(10)を加えて撹拌した。その後、成分(12)を加えて均一に溶解し、ローションを得た(単位は重量%)。
【0113】
(1)グリセリン 9.5
(2)1,3-ブチレングリコール 4.5
(3)ブドウ糖 1.5
(4)エタノール 5.0
(5)カルボキシビニルポリマー 0.02
(6)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(7)ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
(8)本発明の一実施形態に係る化合物 0.1
(9)クエン酸 0.05
(10)クエン酸ナトリウム 0.1
(11)イオン交換水 残余
(12)水酸化カリウム 0.01
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、抗酸化作用を有する新規の化合物であることから、化粧品、医薬等の分野において利用することができる。
図1
【配列表】
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