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特許7495081損傷度予測装置、学習済モデル、学習済モデルの生成方法、及び損傷度予測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】損傷度予測装置、学習済モデル、学習済モデルの生成方法、及び損傷度予測方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 22/00 20060101AFI20240528BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240528BHJP
【FI】
E01D22/00 A
G06Q10/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021027724
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022129145
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2023-11-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 宇野州彦、白可、及び岩波光保が、AI・データサイエンス論文集 第1巻第J1号p.132-141,2020にて、宇野州彦、白可、及び岩波光保が発明した、画像情報を用いた機械学習手法による桟橋の残存耐力評価に関する研究について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野 州彦
(72)【発明者】
【氏名】白 可
(72)【発明者】
【氏名】岩波 光保
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-153111(JP,A)
【文献】特開2019-184313(JP,A)
【文献】特開2019-157360(JP,A)
【文献】国際公開第2020/110717(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0410459(US,A1)
【文献】特許第7341414(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
G06Q 10/20
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを与えて機械学習をさせた学習済モデルを用いた予測手段において、前記予測手段に対する入力データである、対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造に与えられる想定外力の入力を受け付ける入力手段と、
前記学習済モデルから得られる、前記対象となる桁構造に対し前記想定外力が与えられたときに予測される各桁の損傷状態を示す情報を出力する出力手段と
を有する損傷度予測装置。
【請求項2】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁の周囲の他の桁の劣化度又は健全性、及び当該桁と当該他の桁との距離を示す数値データを含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造物に含まれる前記桁の周囲の他の桁の劣化度又は健全性、及び当該桁と当該他の桁との距離を示す数値データの入力を受け付ける
請求項1に記載の損傷度予測装置。
【請求項3】
前記距離の計測方法としてチェビシェフ距離、マンハッタン距離、及びユークリッド距離のいずれかが用いられる
請求項2に記載の損傷度予測装置。
【請求項4】
前記教師データが、前記入力データとして、前記複数の桁の各々の位置を示す情報として無次元距離を含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造に含まれる複数の桁の各々の位置を示す無次元距離の入力を受け付ける
請求項1又は2に記載の損傷度予測装置。
【請求項5】
前記対象となる桁構造及び前記教師データにおける前記桁構造が桟橋の桁構造であり、
前記教師データが、前記入力データとして、前記桟橋の法線に直交する桁の列の数 を含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桟橋の法線に直交する桁の列の数の入力を受け付ける
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の損傷度予測装置。
【請求項6】
前記対象となる桁構造及び前記教師データにおける前記桁構造が桟橋の桁構造であり、
前記教師データが、前記入力データとして、前記桟橋の杭の特性値 を含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桟橋の杭の特性値の入力を受け付ける
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の損傷度予測装置。
【請求項7】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁が前記桁構造の端に位置するか否かを示す情報を含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桁が前記桁構造の端に位置するか否かを示す情報の入力を受け付ける
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の損傷度予測装置。
【請求項8】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁が前記桁構造の端において片接合であるか両接合であるかを示す情報を含み、
前記入力手段が、前記桁が前記桁構造の端において片接合であるか両接合であるかを示す情報の入力を受け付ける
請求項7に記載の損傷度予測装置。
【請求項9】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁の長さを示す情報を含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桁の長さを示す情報の入力を受け付ける
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の損傷度予測装置。
【請求項10】
前記教師データにおける前記桁構造及び前記対象となる桁構造が桟橋の桁構造であり、
前記教師データが、前記入力データとして、前記桟橋の杭の突出長を含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記杭の突出長を示す情報の入力を受け付ける
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の損傷度予測装置。
【請求項11】
前記対象となる桁構造が、n層構造の橋梁の桁構造であり、
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁構造が何層目かを示す情報、及び隣接する他の層との距離を示す情報を含み、
前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桁構造が何層目かを示す情報、及び隣接する他の層との距離を示す情報の入力を受け付ける
請求項1乃至4 のいずれか一項に記載の損傷度予測装置。
【請求項12】
前記予測手段は、前記対象となる桁構造に対する将来予測の確率モデルを用いることで将来の任意の日における残存耐力を評価する
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の損傷度予測装置。
【請求項13】
複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力が入力される入力層と、
前記桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力する出力層と、
前記桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを用いてパラメータが学習された中間層と
を有し、
対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造与えられる想定外力の入力を受け付け、
対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造与えられる想定外力を示すデータを前記入力層に入力し、前記中間層にて演算し、当該桁構造に当該想定外力が与えられたときの当該桁構造の損傷状態を示す情報を前記出力層から出力する
ようコンピュータを機能させるための学習済モデル。
【請求項14】
桟橋又は橋梁の損傷度の予測をする損傷度予測装置に適用するための学習済モデルを生成するモデル生成方法であって、
複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを取得するステップと、
前記教師データを用いて、前記桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力し、当該桁構造に当該外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力する学習済モデルを生成するステップと
を有する学習済モデルの生成方法。
【請求項15】
複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを与えて機械学習をさせた学習済モデルを用いた予測手段において、前記予測手段に対する入力データである、対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造に与えられる想定外力の入力を受け付けるステップと、
前記学習済モデルから得られる、前記対象となる桁構造に対し前記想定外力が与えられたときに予測される各桁の損傷状態を示す情報を出力するステップと
を有する、桁構造の損傷度予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桟橋又は橋梁の桁構造に対し外力が与えられたときの損傷を予測する技術に関する。なお、本明細書に於いて橋梁とは、水面上または陸上部を道路交通法第2条で定義される車両が通過するための架空構造物をいう。
【背景技術】
【0002】
構造物の施工又は保守点検のための技術が知られている。一般に、桟橋の桁構造に対し外力が与えられたときの損傷を予測又は評価するためには、非特許文献1に記載された詳細定期点検診断を実施し、その結果に基づいた構造解析が行われる。しかしながら、詳細定期点検結果を用いて残存耐力評価を得るまでには時間を要すため、評価中に評価対象構造物が大きな外力を受ける可能性が高くなり、評価結果を得る前に大きな外力を受けてしまうと、評価結果自体の価値はなくなってしまう。また、時間や費用の面から、詳細点検自体を実施しない、又は詳細定期点検診断を実施しても対象構造物の残存耐力を評価しないこともあり、その場合には現状の保有耐力を把握できないことから、原形復旧を前提とした補修に留まらざるを得ず、合理的な補修にならない。以上のことから詳細定期点検診断及びその結果に基づいた構造解析にはコストや時間がかかるため、一般点検診断から得られる劣化度判定結果から比較的簡易に残存耐力を評価する手法が提案されている(非特許文献2)。
【0003】
また、本発明者らは先に特許文献1において、桟橋又は橋梁の損傷度評価支援装置、評価方法及びプログラムとして、外力が作用したときの桟橋又は橋梁の梁構造の損傷の構造解析結果を格納したデータベースから、実物の桟橋の各梁の劣化度データから算出された桟橋の上部工劣化度に対応する構造解析結果を取得して出力する装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-153111号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】国土交通省港湾局監修、「港湾の施設の維持管理技術マニュアル(改訂版)」一般財団法人沿岸技術研究センター、2018年7月、p.296、p.317
【文献】宇野州彦・岩波光保“劣化度判定結果を活用した残存耐力評価手法の実桟橋への適用”土木学会論文集B3(海洋開発),第74巻第2号、pp.I_55-I_60、2018.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、劣化度の影響を考慮しつつ桟橋又は橋梁の損傷を予測するには、対象となる桟橋又は橋梁の構造解析結果があらかじめデータベースに記録されている必要があった。
【0007】
これに対し本発明は、対象となる構造物に外力が与えられたときの損傷を、構造解析結果があらかじめ記録されたデータベースによることなく、評価対象構造物の任意の桁に対する外力による損傷度を空間的、定量的に予測する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを与えて機械学習をさせた学習済モデルを用いた予測手段において、前記予測手段に対する入力データである、対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造に与えられる想定外力の入力を受け付ける入力手段と、前記学習済モデルから得られる、前記対象となる桁構造に対し前記想定外力が与えられたときに予測される各桁の損傷状態を示す情報を出力する出力手段とを有する損傷度予測装置を提供する。
【0009】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁の周囲の他の桁の劣化度又は健全性、及び当該桁と当該他の桁との距離を示す数値データを含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造物に含まれる前記桁の周囲の他の桁の劣化度又は健全性、及び当該桁と当該他の桁との距離を示す数値データの入力を受け付けてもよい。
【0010】
前記距離の計測方法としてチェビシェフ距離、マンハッタン距離、及びユークリッド距離のいずれかが用いられてもよい。
【0011】
前記教師データが、前記入力データとして、前記複数の桁の各々の位置を示す情報として無次元距離を含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造に含まれる複数の桁の各々の位置を示す無次元距離の入力を受け付けてもよい。
【0012】
前記対象となる桁構造及び前記教師データにおける前記桁構造が桟橋の桁構造であり、前記教師データが、前記入力データとして、前記桟橋の法線に直交する桁の列の数を含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桟橋の法線に直交する桁の列の数の入力を受け付けてもよい。
【0013】
前記対象となる桁構造及び前記教師データにおける前記桁構造が桟橋の桁構造であり、前記教師データが、前記入力データとして、前記桟橋の杭の特性値を含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桟橋の杭の特性値の入力を受け付けてもよい。
【0014】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁が前記桁構造の端に位置するか否かを示す情報を含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桁が前記桁構造の端に位置するか否かを示す情報の入力を受け付けてもよい。
【0015】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁が前記桁構造の端において片接合であるか両接合であるかを示す情報を含み、前記入力手段が、前記桁が前記桁構造の端において片接合であるか両接合であるかを示す情報の入力を受け付けてもよい。
【0016】
前記教師データが、前記入力データとして、前記桁の長さを示す情報を含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桁の長さを示す情報の入力を受け付けてもよい。
【0017】
前記教師データにおける前記桁構造及び前記対象となる桁構造が桟橋の桁構造であり、前記教師データが、前記入力データとして、前記桟橋の杭の突出長を含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記杭の突出長を示す情報の入力を受け付けてもよい。
【0018】
前記対象となる桁構造が、n層構造の橋梁の桁構造であり、前記教師データが、前記入力データとして、前記桁構造が何層目かを示す情報、及び隣接する他の層との距離を示す情報を含み、前記入力手段が、前記対象となる桁構造において前記桁構造が何層目かを示す情報、及び隣接する他の層との距離を示す情報の入力を受け付けてもよい。
【0019】
前記予測手段は、前記対象となる桁構造に対する将来予測の確率モデルを用いることで将来の任意の日における残存耐力を評価してもよい。
【0020】
また、本発明は、複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力が入力される入力層と、前記桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力する出力層と、前記桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを用いてパラメータが学習された中間層とを有し、対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造与えられる想定外力の入力を受け付け、対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造与えられる想定外力を示すデータを前記入力層に入力し、前記中間層にて演算し、当該桁構造に当該想定外力が与えられたときの当該桁構造の損傷状態を示す情報を前記出力層から出力するようコンピュータを機能させるための学習済モデルを提供する。
【0021】
さらに、本発明は、桟橋又は橋梁の損傷度の予測をする損傷度予測装置に適用するための学習済モデルを生成するモデル生成方法であって、複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを取得するステップと、前記教師データを用いて、前記桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力し、当該桁構造に当該外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力する学習済モデルを生成するステップとを有する学習済モデルの生成方法を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、複数の桁を有する桁構造における桁の各々について、当該桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び前記桁構造に与えられる外力を入力データとし、当該桁構造に前記外力が与えられたときの構造解析結果から得られる当該桁構造の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを与えて機械学習をさせた学習済モデルを用いた予測手段において、前記予測手段に対する入力データである、対象となる複数の桁を含む桁構造の点検結果から得られた当該複数の桁の各々の劣化度又は健全性の数値データ、当該複数の桁における当該桁の位置を示す識別番号、及び当該対象となる桁構造に与えられる想定外力の入力を受け付けるステップと、前記学習済モデルから得られる、前記対象となる桁構造に対し前記想定外力が与えられたときに予測される各桁の損傷状態を示す情報を出力するステップとを有する、桁構造の損傷度予測方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、対象となる構造物に外力が与えられたときの損傷状況の予測を、都度、構造解析を行う場合と比較してより短時間で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る損傷度予測装置1の機能構成を例示する図。
図2】学習装置2の機能構成を例示する図。
図3】損傷度予測装置1のハードウェア構成を例示する図。
図4】一実施形態に係る機械学習モデル9の構造を例示する図。
図5】教師データを準備する処理を例示するフローチャート。
図6】桟橋劣化度の判定基準を例示する図。
図7】橋梁健全性の判定基準を例示する図。
図8】桁構造の取り扱いを説明する図。
図9図8の桁構造における劣化度の検査結果を例示する図。
図10】桟橋の劣化度分布を示す情報を例示する図。
図11】桁構造の平面形状を示す情報を例示する図。
図12】桟橋における外力条件を例示する図。
図13】構造解析の結果を例示する図。
図14】機械学習モデル9の学習処理を例示するフローチャート。
図15】損傷度の予測処理を例示するシーケンスチャート。
図16】予測される損傷状態を示す情報を例示する図。
図17】桁の位置を示す無次元距離を例示する図。
図18】複数層の桁構造において各桁に付与される識別情報を例示する図。
図19】不規則な桁構造を例示する図。
図20】ダミーの杭頭部が追加された桁構造を例示する図。
図21】ダミー桁が追加された桁構造を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.構成
図1は、一実施形態に係る損傷度予測装置1の機能構成を例示する図である。損傷度予測装置1は、対象となる構造物に対し外力が与えられたときの損傷を予測するシステムである。対象となる構造物は、桟橋又は橋梁の桁構造体である。ここで、「桁」とは桟橋においては上部工のうち2本の杭(又は支柱)の間に渡される棒状構造体、又は構造体のどちらかの端部が1本の杭(又は支柱)により支持される構造体をいい、梁と言われることもある。損傷度予測装置1は、対象となる構造物の損傷を、その構造物の構造解析によらずに機械学習を用いて予測する。
【0026】
損傷度予測装置1は、ユーザから指示又はデータの入力を受け付け、入力された指示又はデータに応じた情報を出力するクライアント装置又はユーザ端末である。損傷度予測装置1は、記憶手段11、入力手段12、予測手段13、及び出力手段14を有する。記憶手段11は、種々のデータ及びプログラムを記憶する。この例において、記憶手段11に記憶されるデータには学習済モデルMが含まれる。学習済モデルMは、教師データを与えて機械学習をさせた機械学習モデルである。学習済モデルMは、例えば、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、決定木、サポートベクターマシン、又は深層学習を用いて学習し構築されたモデルである。この教師データは、入力データ(又は説明変数)として(1)桟橋又は橋梁の桁構造における各桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、(2)その桁構造におけるその桁の位置を示す識別情報(又は識別番号)、及び(3)その桁構造に与えられる外力を少なくとも含む。またこの教師データは、出力データ(又は目的変数)としてその桁構造にその外力が与えられたときの構造解析結果から得られるその桁構造の各桁の損傷状態を示す情報を少なくとも含む。この教師データは、少なくとも1つの桟橋又は橋梁に関するデータである。学習済モデルMは、学習装置2により生成される。
【0027】
図2は、学習装置2の機能構成を例示する図である。学習装置2は、モデルに教師データを与えて機械学習をさせ、学習済モデルMを得る。学習装置2は、記憶手段21及び学習手段22を有する。記憶手段21は、教師データ及び学習済モデル(又は学習前のモデル)を記憶する。学習手段22は、モデルに教師データを与えて機械学習をさせ、学習済モデルを得る。学習装置2は、学習済モデルMを損傷度予測装置1に出力する。
【0028】
再び図1を参照する。入力手段12は、学習済モデルMに入力するための説明変数の入力を受け付ける。予測手段13は、入力手段12を介して入力された説明変数を学習済モデルMに与え、対応する目的変数を得る。学習済モデルMに入力される説明変数は、(a)対象となる構造物の点検結果から得られた桁構造における劣化度分布又は健全性判定分布を示す数値データ及び桁の位置を示す識別情報(若しくは劣化度分布又は健全性判定分布のマップ)、(b)対象となる構造物における桁構造の平面形状及び寸法、並びに(c)対象となる構造物に与えられる想定外力を少なくとも含む。これらの説明変数に対し学習済モデルMから得られる目的変数(すなわち予測の結果)は、対象となる構造物の損傷状態を示す情報を少なくとも含む。出力手段14は、予測手段13が得た、構造物の損傷状態を示す情報を出力する。
【0029】
図3は、損傷度予測装置1のハードウェア構成を例示する図である。損傷度予測装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、メモリ102、ストレージ103、入力装置104、表示装置105を有するコンピュータ装置、例えば、パーソナルコンピュータである。CPU101は、プログラムを実行して各種演算を行い、損傷度予測装置1における他のハードウェア要素を制御する制御装置である。メモリ102は、CPU101がプログラムを実行する際にワークエリアとして機能する主記憶装置であり、例えばRAMを含む。ストレージ103は、各種プログラム及びデータを記録する不揮発性の記憶装置であり、例えばSSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)を含む。入力装置104は、ユーザが損傷度予測装置1に対し指示又はデータを入力するための装置であり、例えば、タッチスクリーン、キーボード、及びマイクロフォンのうち少なくとも一種を含む。表示装置105は、ユーザに対し情報を提示する装置であり、例えば、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ又はLCD(Liquid Crystal Display)を含む。
【0030】
この例において、ストレージ103に記憶されるプログラムには、コンピュータ装置を損傷度予測装置1として機能させるためのプログラム(以下「クライアントプログラム」という)が記憶される。CPU101がクライアントプログラムを実行することにより、コンピュータ装置に損傷度予測装置1としての機能が実装される。CPU101がクライアントプログラムを実行している状態において、メモリ102及びストレージ103の少なくとも一方が記憶手段11の一例である。CPU101が予測手段13の一例である。入力装置104が入力手段12の一例である。表示装置105が出力手段14の一例である。
【0031】
学習装置2のハードウェア構成については図示を省略するが、損傷度予測装置1と同様のハードウェア構成を有するコンピュータ装置である。なお、学習装置2は、損傷度予測装置1と同一のコンピュータ装置に実装されてもよいし、損傷度予測装置1とは別のコンピュータ装置、例えばネットワーク上のサーバ装置に実装されてもよい。
【0032】
2.動作
損傷度予測装置1の動作説明に先立ち、本実施形態において用いられる機械学習モデルの概要を説明する。
【0033】
図4は、一実施形態に係る機械学習モデル9の構造を例示する図であり、ニューラルネットワークを例示している。この例において、機械学習モデルは、入力層91、中間層92、及び出力層93を有する。この例において、入力層91には、(1)桟橋又は橋梁の桁構造における各桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、(2)その桁構造におけるその桁の位置を示す識別情報(又は識別番号)、(3)その桁構造に与えられる外力、(4)その桁の周囲の他の桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、及び(5)その桁と他の桁との距離を示す数値データが入力される。出力層93は、その桁構造にその外力が与えられたときの構造解析結果から得られるその桁構造の各桁の損傷状態を示す情報を出力する。損傷状態を示す情報は、損傷の範囲、損傷の度合い、及び損傷の割合の少なくとも一つ以上の情報を含む。より詳細には、損傷状態を示す情報は、例えば損傷度分布のマップを含む。中間層92は、入力層91と出力層93との間に位置する層であり、入力層91を介して入力されたデータから出力層93を介して出力するデータを得るためのパラメータを含む。中間層92において、(1)桟橋又は橋梁の桁構造における各桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、(2)その桁構造におけるその桁の位置を示す識別情報(又は識別番号)、(3)その桁構造に与えられる外力、(4)その桁の周囲の他の桁の劣化度又は健全性を示す数値データ、及び(5)その桁と他の桁との距離を示す数値データ桁を入力データとし、その桁構造にその外力が与えられたときの構造解析結果から得られるその桁構造の各桁の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを用いてそのパラメータが学習される。なお、この例において「損傷状態」は損傷度合い、損傷分布及び損傷面積率の少なくとも一種を含むものとする。
【0034】
なお、機械学習により桁構造の損傷状態を推定する手法としては、桁構造の劣化度を数値データではなく劣化度分布のマップ、すなわち画像データを入力データとして与えることも考えられる。具体的には、機械学習モデルに、桟橋又は橋梁の桁構造における劣化度分布又は健全性判定分布のマップ、その桁構造の平面形状、寸法、及びその桁構造に与えられる外力を入力データとし、その桁構造にその外力が与えられたときの構造解析結果から得られる桁構造の各桁の損傷状態を示す情報を出力データとする教師データを与えて機械学習をさせることが考えられる。しかし、本願発明者らの研究によれば、このような手法によると、未知の形状(すなわち学習したことのない形状)の桟橋に対して予測を行うときに、例えば過去に学習した桟橋形状の中から最も近い形状のものを出力するなど、桟橋形状を誤認識してしまうことがある。本実施形態においては、この問題に対処する。
【0035】
以下、損傷度予測装置1及び学習装置2の動作を説明する。損傷度予測装置1及び学習装置2の動作は、概ね、教師データの準備、学習済モデルMの生成(すなわち学習)、及び学習済モデルMを用いた予測の三段階に分けられる。以下、教師データの準備、学習、及び予測のそれぞれの処理を説明する。以下において、学習手段22等の機能要素を処理の主体として記載することがあるが、これは、CPU101等のハードウェア要素がプログラムに従って他のハードウェア要素と協働して処理を実行することを意味する。また、以下では対象となる構造物として桟橋を例として説明する。
【0036】
2-1.教師データの準備
図5は、教師データを準備する処理を例示するフローチャートである。ここでは、様々なサイズの桟橋又は橋梁を対象として、その各々に複数の解析条件(例えば、劣化度分布及び外力に関する条件)を与えて構造解析が実施される。構造解析には既知の構造解析ソフトウェア(例えば、株式会社フォーラムエイト製の「Engineer's Studio」など)が用いられる。構造解析の結果である損傷状態として損傷分布、損傷の度合い、及び桟橋又は橋梁上部工の総面積に対する損傷の面積割合である損傷面積率のデータが得られる。これらのデータが教師データとして用いられる。
【0037】
ステップS101において、学習装置2(の学習手段22)は、桟橋又は橋梁の劣化度分布又は健全性判定分布を示す情報を取得する。ここで、劣化度又は健全性を示す情報のデータ形式はどのようなものでもよい。一例において、劣化度又は健全性を示す情報は、対象となる桁構造における桁を特定する情報(例えば、桁の識別子又は桁の相対的位置を示す情報)と、その桁の劣化度又は健全性を示す数値データとの組み合わせである。一例において、劣化度分布又は健全性判定分布の情報は、この組み合わせを示す文字列のデータである。劣化度又は健全性とは、その桁の劣化又は健全性の程度を示す情報であり、この例では、検査員が実際の桟橋又は橋梁を所定の検査基準に従って検査した結果、又は検査装置による自動判定により得られる情報である。
【0038】
図6は、桟橋劣化度の判定基準を例示する図である(非特許文献1より引用)。この例においては、桁の側面部及び下面部のそれぞれについて基準が設けられている。側面部及び下面部のいずれについても、劣化度としてはa、b、c、及びdの四区分が定義される。劣化度aが一番劣化の程度が重い(又は劣化の程度が高い)状態であり、劣化度dが一番劣化の程度が軽い又は劣化がない(又は劣化の程度が低い)状態である。桁構造は複数の桁に区分され、各桁について劣化度が判定される。検査員は、桁構造のうち対象となる桁の下面部及び側面部を観察し、判定基準と照らし合わせてその桁の劣化度を判定する。この例において、検査員は、その桁の下面部の劣化度及び側面部の劣化度をそれぞれ判定し、より程度が重い劣化度を、その桁の劣化度として採用する。例えば、下面の劣化度がcであり、2つある側面のうち一方の劣化度がb、他方がdであった場合、その桁の劣化度はbである。
【0039】
なお対象となる構造物が桟橋ではなく橋梁(例えば道路橋)であった場合、劣化度に代わり健全性という指標が用いられる。
【0040】
図7は、橋梁構造物の健全性の判定基準を例示する図である(道路橋定期点検要領「国土交通省 道路局2019.2」より引用)。この例において、道路橋の健全性としては、区分I、II、III、及びIVの四区分が定義される。区分Iが最も健全(又は劣化の程度が軽い)状態であり、区分IVが最も劣化の程度が重い状態である。検査員は、桁構造のうち対象となる桁を観察し、判定基準と照らし合わせてその桁の健全性を判定する。なお、図6及び図7において例示した劣化度及び健全性の判定基準はあくまで例示であり、これ以外の基準が用いられてもよい。劣化度及び健全性の区分は4つに限られず、5つ以上又は3つ以下に区分されてもよい。
【0041】
図8は、桁構造の取り扱いを説明する図である。図8(A)は、桁構造を例示する図である。この図において、グレーの長方形が桁(又は梁)を、黒い正方形が杭を、白い長方形が床板を、それぞれ表している。実際の桁構造において桁、杭、及び床板はそれぞれ異なったサイズを有しているが、ここではデータとしての取り扱いを容易にする又は図示を容易にする目的で、これらをすべて同一サイズの正方形に規格化する。図8(B)は、規格化された桁構造を示す。この桁構造において、図の左上の白色のマスを原点とし、右向きにx軸、下向きにy軸を設定する。以下、他の図におけるx方向、y方向も本記載と同様として記載するものとし、例えば左から3番目かつ上から2番目に位置している桁を桁[3,2]と表す。
【0042】
図9は、図8の桁構造における劣化度の検査結果を例示する図である。図9(A)は、図8(B)の規格化された桁構造に劣化度の検査結果をマッピングした図である。この例では、桁[3,2]の劣化度はcである。ここで、複数ある桁を1つずつ順番に注目し、注目した桁(以下「注目桁」という)の周辺の桁について、注目桁からの距離とその劣化度が集計される。図9(B)は桁[3,2]についての周辺の桁の集計結果を示す図である。この例では桁[3,2]を起点にして距離1の位置に4つの桁が存在し、その劣化度が、d、b、c、及びcであることが示される。
【0043】
この例においては、桁と桁との距離として規格化された桁構造おけるチェビシェフ距離が用いられる。チェビシェフ距離は、ユークリッド距離及びマンハッタン距離とともに、距離を表す概念の1つである。チェビシェフ距離は、二次元空間において縦横2軸のうち差が大きい方の、座標値の差に相当する。例えば、桁[3,2]と桁[2,1]とのチェビシェフ距離は1であり、桁[3,2]と桁[6,2]とのチェビシェフ距離は3である。本実施形態においては、桁同士が接続されていることで互いに影響を与えることを考慮し、桁と桁との接続数に重きを置いた距離概念を採用することが重要であるとの着想の下、チェビシェフ距離を用いている。しかし、桁と桁との距離はチェビシェフ距離に限定されず、前述のユークリッド距離やマンハッタン距離、あるいはさらに別の定義による距離が用いられてもよい。
【0044】
図10は、ステップS101において取得される、桟橋の劣化度分布を示す情報を例示する図である。この図は、単一の注目桁(桁[3,2])について、注目桁自身の劣化度、及び周辺の他の桁の劣化度を示す。劣化度は、注目桁からの距離に応じて分類されている。距離ゼロの欄は、注目桁自身の劣化度を示す。距離1以降の欄は周辺の他の桁の劣化度を示すものであり、劣化度のレベル毎に、そのレベルに該当する桁の割合が示される。例えば、桁[3,2]から距離1の桁は4つあるが(図9(b)参照)、その劣化度はそれぞれd、b、c、及びcである。これらを集計すると、劣化度dが25%、劣化度cが50%、劣化度bが25%、及び劣化度aが0%である。
【0045】
図10は単一の注目桁についての劣化度を示すものであるが、対象となる桁構造を構成するすべての桁について、図10のような情報が準備され、ステップS101において取得される。なお、対象桁の劣化度、周辺桁の劣化度及び各周辺桁のチェビシェフ距離がセットとして取得されるが、取得される情報とする周辺桁の範囲については、当初に対象距離を複数パターン設定し(例えば、チェビシェフ距離10、20、25・・)その中で目的変数として構造解析結果と比較して正解率の高くなる梁の距離を採用する。
【0046】
ステップS102において、学習手段22は、対象となる桁構造の平面形状を示す情報を取得する。ここで、桁構造の平面形状を示す情報のデータ形式はどのようなものでもよい。一例において、平面形状を示す情報は、対象となる桟橋の桁構造における桁を特定する情報と、その桁のサイズを示す情報との組み合わせである。
【0047】
図11は、桁構造の平面形状を示す情報を例示する図である。ここで、図11(A)は桁の識別番号を示す。縦方向及び横方向の桁にそれぞれ識別番号が振られている。図11(B)の表は、対象となる桁構造のサイズ(縦横それぞれの桁の数)を示す情報、及び各桁の寸法を示す情報を含む。この桁構造はx方向に7本、y方向に5本の桁から構成される。例えば、桁番号101の桁は、x方向の長さが0.95m、y方向の長さが0.50mである。
【0048】
再び図5を参照する。ステップS103において、学習手段22は、対象となる桁構造に与える外力条件を取得する。
【0049】
図12は、桟橋における外力条件を例示する図である。なお、橋梁における外力条件はこれとは別に定義されてもよい(例示は省略する)。この表の行は外力条件を、列は説明変数を示す。この例では、説明変数として、静的(海←陸)、静的(海→陸)、L1、L2-1、及びL2-2の5種が用いられる。「静的(海←陸)」は、例えば所定の船舶の牽引力を表す。「静的(海→陸)」は、例えば所定の船舶の接岸力を示す。「L1」はレベル1地震動、すなわち供用期間中に発生する確率が高い地震を示す。「L2」はレベル2地震動、すなわち供用期間中に発生する確率が低いが、大きなエネルギーを放出する地震を示し、L2-1は、タイプI:プレート境界型のレベル2地震動(例えば東北地方太平洋沖地震など)を示す。L2-2は、タイプII:内陸直下型のレベル2地震動(例えば兵庫県南部地震など)を示す。なお、外力条件として記載している静的(海←陸)、静的(海→陸)、については、所定の船舶の牽引力・接岸力としてだけではなく、設計荷重としても作用させ、健全な桟橋で発生するはずのない損傷が発生するかどうかを確認するためにも用いられる。なお、外力条件のL1、L2に関しても、設計対象桟橋の重要度によっては設計荷重として用いられる。
【0050】
この表において、各セルの値は「0」又は「1」のいずれかである。値「0」は、その外力が与えられないことを、値「1」はその外力が与えられることを、それぞれ示す。例えば、外力条件「静的(海←陸)」は、対称となる桁構造に例えば船舶の牽引力のみが与えられ、他の外力は与えられないことを示す。なおこの例では単一の種類の外力が与えられる外力条件のみが示されているが、複数種類の外力が与えられる外力条件が用いられてもよい。具体的には、例えば静的(海←陸)外力とレベル1地震動とが同時に与えられる外力条件が用いられてもよい。
【0051】
再び図5を参照する。ステップS105において、学習手段22は、ステップS103において取得した平面形状を有しかつステップS101において取得した劣化度分布を有する桁構造に対し、ステップS104において取得した外力条件により示される外力が与えられたと仮定した場合の構造解析結果を取得する。構造解析は、学習手段22自身により行われてもよいし、学習装置2以外の他の装置により行われてもよい。
【0052】
図13は、構造解析の結果を例示する図である。この例においては、構造解析の結果として損傷度合い、損傷度分布及び損傷面積率のデータが得られる。一例において、構造解析の結果は、規格化された桁構造の画像上にマッピングされる。このマップにおいて、全ての桁は共通のサイズを有し、桁構造の実際のサイズを示す情報を含んでいなくてもよいし、各桁が実際のサイズに応じた縮尺サイズで表示されてもよい。
【0053】
このマップにおいて、各桁の損傷は、色、ハッチング又は文字情報など、損傷の種類が分かる形態で表示される。(この図では色を表現できないので代わりにハッチングで区別する)。例えば、ひび割れ損傷は黄色で、降伏損傷は赤で、終局損傷は黒で表される。これらの損傷が桁構造のマップ上に表示されているので、この図は損傷の範囲及び度合いを示していると言える。
【0054】
このマップが、桁の識別情報と損傷度との組を含む情報に変換される。あるいは、構造解析の結果として、図13のマップに加えて又は代えて、桁の識別情報と損傷度との組を含む情報が出力される。
【0055】
学習装置2は、様々な形状及びサイズを有する複数の桟橋の各々についてステップS101~S104の処理を繰り返し行い、データを蓄積する。こうして蓄積されたデータが、以下で説明する学習処理において教師データとして用いられる。この教師データにおいて、ステップS101において取得した劣化度分布の数値データ、ステップS102において取得した平面形状、及びステップS103において取得した外力条件が入力データであり、ステップS104において得られた構造解析結果が出力データである。学習装置2は、これらの教師データを記憶手段21に記憶する。
【0056】
2-2.学習
図14は、機械学習モデル9の学習処理を例示するフローチャートである。図14のフローは、例えば、損傷度予測装置1の管理者又はユーザから学習の指示が与えられたことを契機として開始される。あるいは、図14のフローは、所定量の教師データが蓄積されたことを契機として開始されてもよい。
【0057】
ステップS201において、学習手段22は、学習に用いる教師データを取得する。この例において、学習手段22は、損傷度予測装置1とは別の外部装置において準備された教師データを取得する。
【0058】
ステップS202において、学習手段22は、機械学習モデル9に対し、教師データを与えて機械学習をさせる。この教師データは、入力データ及び出力データを含む。一例において、入力データは、ステップS101において取得した劣化度分布の数値データ、ステップS102において取得した平面形状、及びステップS103において取得した外力条件である。
【0059】
ステップS203において、学習手段22は、機械学習により中間層92のパラメータが学習された機械学習モデル9を、学習済モデルMとして記憶手段21に記憶する。学習装置2は、学習済モデルMを損傷度予測装置1に出力する。損傷度予測装置1は、学習済モデルMを記憶手段11に記憶する。こうして、損傷度予測装置1は学習済モデルMを得る。
【0060】
2-3.予測
図15は、損傷度の予測処理を例示するシーケンスチャートである。損傷度の予測は、ユーザからの要求に応じて行われる。
【0061】
ユーザは、損傷度予測装置1において損傷度の予測を指示する。具体的には、ユーザは、対象となる構造物について、説明変数を入力する。入力手段12は、説明変数、具体的には以下の(ア)~(ウ)のデータの入力を受け付ける(ステップS301)。(ア)対象となる構造物の点検結果から得られた桁構造における劣化度分布又は健全性判定分布の数値データ。(イ)対象となる構造物における桁構造の平面形状及び寸法。(ウ)対象となる構造物に与えられる想定外力。
【0062】
一例において、構造物の点検結果を入力するためのユーザインターフェースを損傷度予測装置1自身が提供する。ユーザは、点検結果を損傷度予測装置1に入力する。あるいは、損傷度予測装置1は、対象となる構造物の点検結果を記録する装置から、劣化度分布又は健全性判定分布のデータの提供を受けてもよい。劣化度分布又は健全性判定分布のデータは、教師データの場合と同様に、どのようなデータ形式を有していてもよい。
【0063】
対象となる構造物の平面形状及び寸法のデータ(例えば画像データ)については、ユーザが損傷度予測装置1に入力する。あるいは、構造物の平面形状及び寸法のデータは、サーバ等の外部装置においてデータベースに記録されており、損傷度予測装置1は、このデータベースから、ユーザの指示に応じて対象となる構造物の平面形状のデータを取得してもよい。
【0064】
想定外力については、例えば、教師データにおいて用いられたのと同じ条件が用いられる。あるいは、損傷度予測装置1は、図12の表の外力条件のうちユーザにより指定された条件のみを説明変数として用いてもよい。
【0065】
ステップS302において、入力手段12は、損傷度を予測する要求を生成する。この要求は、ステップS301において入力、取得、又は指定された説明変数を含む。ステップS303において、入力手段12は、予測手段13に対し損傷度の予測を要求する。
【0066】
なおこの例において、入力手段12は、実質的に以下の3種の説明変数を学習済モデルMに入力していると言える。(a)対象となる構造物の点検結果から得られた桁構造における各桁の劣化度分布又は健全性判定分布の数値データ、(b)対象となる構造物における桁構造の平面形状及び寸法、及び(c)対象となる構造物に与えられる想定外力。
【0067】
ステップS304において、予測手段13は、損傷度を予測する要求を受け付ける。ステップS305において、予測手段13は、桁の劣化度のマップ、桁構造の平面形状及び寸法、及び想定外力を説明変数として学習済モデルMに入力する。学習済モデルMは、入力された説明変数に応じて目的変数、すなわち損傷状態を示す情報を出力する。損傷状態を示す情報は、一例において、図13で例示した、教師データとして用いられた損傷分布のマップと同じ形式のデータである。ステップS306において、予測手段13は、学習済モデルMから出力された目的変数を取得する。予測手段13は、取得した目的変数を、要求の送信元の装置に送信する(ステップS307)。ステップS308において、出力手段14は、学習済モデルMから出力された目的変数に応じて、予測される損傷状態を示す情報を出力する。出力手段14は、学習済モデルMから出力された情報をそのままユーザに対し出力してもよいし、学習済モデルMから出力された情報に対し何らかの加工がされた後で出力してもよい。
【0068】
図16は、出力手段14から出力される、予測される損傷状態を示す情報を例示する図である。この例では、各桁の損傷度(すなわち損傷の度合い)が複数に区分(すなわち損傷区分)され、各区分が視覚的に(例えば異なる色で)表現される。ここで用いられる区分は図13において例示されたものと共通であり、例えば、ひび割れ損傷は黄色で、降伏損傷は赤で、終局損傷は黒で表される。また、図6において表示した劣化度や図7において表示した健全性に応じた色別表示としてもよい。
【0069】
また、出力手段14から出力される情報には、損傷の割合(損傷面積率)が含まれる。ここで損傷の割合とは、対象となる桁構造が有する桁のうち、所定の損傷を有する桁の面積の割合をいう。例えば対象となる桁構造における桁の総面積が5,000m2である場合において、少なくとも一部にひび割れ損傷がある桁の総面積が3,000m2であったときは、ひび割れ面積率は60%である。あるいは、損傷の割合は面積率ではなく、損傷のある桁の数の割合で示されてもよい。
【0070】
なお、予測される損傷状態を示す情報の形式は図16の例に限定されない。損傷状態を示す情報は、損傷の範囲、損傷の度合い、及び損傷の割合の少なくとも一つ以上の情報を含んでいればよい。例えば、出力手段14は損傷の区分を区別せず、損傷の有無を2値(すなわち損傷あり/損傷無し)で表してもよい。あるいは、出力手段14は、損傷状態をマップで出力せず、損傷の割合のみを出力してもよい。
【0071】
このように、損傷度予測装置1によれば、対象となる構造物の構造解析をその都度実施することなく、損傷状態を示す情報を得ることができる。
【0072】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載された事項のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0073】
3-1.説明変数
学習における教師データ及び予測における入力データにおいて用いられる説明変数は実施形態において例示したものに限定されない。説明変数は、例えば、以下の(ア)~(カ)のうち少なくとも1種を含んでもよい。
(ア)桟橋の法線に直交する桁の列の数。
(イ)杭の特性値β[m-1]。
なお、特性値βは、例えば次式(1)(「(公社)日本港湾協会:港湾の施設の技術上の基準・同解説(中巻)、pp.704-705、平成30年」から引用)、又は(2)(「(公社)日本道路協会:道路橋示方書・同解説 IV下部構造編、pp.259-260、平成29年」から引用)で定義される。
【数1】
ここで、Bは杭幅[m]、KCHは横方向地盤反力係数[kNm-3]、EIは杭の曲げ剛性[kNm]である。
【数2】
ここで、Dは杭の直径[m]、kHは水平方向地盤反力係数[kNm-3]、EIは杭の曲げ剛性[kNm]である。
(ウ)その桁が端部に位置するという情報。
(エ)端部の桁の接合(片接合か両接合か)という情報。
(オ)桁の位置を示す無次元距離。
(カ)杭の突出長又は杭の長さ。
【0074】
(ア)に関し、桁の総数が同じでも桟橋の法線に直交する桁の列の数に応じて外力から受ける影響の大小が変わると考えられるので、これを説明変数として用いることには意義がある。(イ)に関し、杭の特性値(例えば1/β)に応じて外力から受ける影響の大小が変わると考えられるので、これを説明変数として用いることには意義がある。(ウ)に関し、桁構造において端部に位置する桁は外力に対する挙動が端部以外の位置の桁とは異なる可能性があるので、その桁が端部に位置するか否かという情報を説明変数に追加することで予測精度が向上する可能性がある。(エ)に関し、端部に位置する桁の接合には片接合及び両接合の2つの態様が考えられるところ、片接合と両接合とでは外力に対する挙動が異なる可能性があるので、その桁が端部に位置する場合において片接合であるか両接合であるかという情報を説明変数に追加することで予測精度が向上する可能性がある。なお、両接合とはその桁の両端が杭により支持される接合構造をいい、片接合とはその桁の一端のみが杭により支持される接合構造をいう。
【0075】
(オ)に関し、図17は、桁の位置を示す無次元距離を例示する図である。この図は、x方向の距離を示している。この例の距離は、規格化された桁構造において基準位置(左上端)からの距離を最大値(この例では13)で除し、10倍して小数部分を切り上げた数値を示す。このように無次元距離を用いることで、様々なサイズの桁構造に対して統一された距離を用いることができる。なお、無次元距離の具体的な算出方法はこれに限定されず、整数とするかどうか、何桁の数値とするか(図の例では2桁)はいずれも任意である。
【0076】
(カ)に関し、桁構造だけでなく杭の突出長又は杭の長さに応じて外力に対する挙動が異なる可能性があるので、その桁構造を支持する杭に関する情報を説明変数に追加することで予測精度が向上する可能性がある。
【0077】
3-2.桁の長さ
損傷度予測装置1は、桁の長さを説明変数として用いてもよいが、説明変数として用いられる長さは、実数値が用いられてもよく、実数値を最大値比率としての基準値(例えばその桁構造における桁の長さの最大値)で規格化した値が用いられてもよい。あるいは、損傷度予測装置1は、桁の長さを数値として扱うのではなく、分類されたクラスとして扱ってもよい。一例として2クラス分類する場合には、その桁構造に含まれる全ての桁の長さの平均値以下の長さを有する桁については長さとして「ゼロ」を、平均値を超える長さを有する桁については長さとして「1」を用いる。また、梁のx方向、y方向それぞれについて分類するようにしてもよい。なお、桁だけではなく杭についても同様である。
【0078】
3-3.複数層構造
対象となる桁構造が橋梁の桁構造であって、複数層(n層)のデッキ構造である場合も、損傷度予測装置1の予測の対象とすることができる。複数層のデッキ構造の一例としては、道路橋と鉄道橋とのダブルデッキ構造、又は2つの道路橋(例えば上り線及び下り線)のダブルデッキ構造がある。複数層のデッキ構造は、鉛直方向に複数の上部工(例えば道路面)を有する。この例においては各層で単層の場合と同様に他の桁との距離を考慮するが、鉛直方向の距離は考慮しない。しかし、複数層の相関を考慮しないと、本来は上層に位置する桁構造ほど地震時に揺れやすい、といった事情があるものの、その区別無く学習又は予測してしまうという問題がある。そこで、この例では、劣化度の情報に、その桁が第何層の桁であるかという情報を含めることにより、複数層のデッキ構造を考慮する。また、橋脚全体の長さ、各層間の橋脚の長さ、または対象橋梁の基礎構造形式が杭基礎であれば、さらに説明変数(カ)杭の突出長又は杭の長さとしての情報に含めるようにしてもよい。
【0079】
図18は、複数層の桁構造において各桁に付与される識別情報を例示する図である。図には各層に「第k層」といった表示があるが、この情報も併せて説明変数として用いられる。なお、複数層構造用の機械学習モデルは、単層構造の機械学習モデルとは別の(多層構造の橋梁の)教師データを用いて学習されたものであることが好ましい。
【0080】
3-4.不規則な桁構造
図19は、不規則な桁構造を例示する図である。対象となる桁構造は規則的な格子状(方格状)であるものに限定されず、この図のように不規則なものである可能性もある。ここでは、このような不規則な桁構造への対処方法を説明する。具体的には、長い桁の間にダミーの杭頭部を設け、桁を分割する。
【0081】
図20は、図19の例においてダミーの杭頭部が追加された桁構造を例示する図である。この例においては、ダミーの杭頭部により長い桁が2つに分割される。なお規則的な格子であればダミーの杭頭部間に桁が存在するはずであるが、ここでは存在しない桁は図示していない。この例では完全な格子状(すなわち方格状)ではないものの、対象とするすべての桁にチェビシェフ距離を与えることができるので処理上の問題はない。
【0082】
この状態で学習又は予測をする場合、本来1本の桁であっても2分割され、桁が2本存在していることになるため、損傷結果もそれぞれ別個に出力される。本来は1本の桁であるので同じ損傷結果となるべきであるが、これら2本の桁で違う損傷結果が得られる可能性もある。この場合、例えばより損傷度の最も大きい結果を採用することが、安全性の観点からは好ましい。ただし、これら2本の損傷結果の平均値や中間値等の代表値を、対象となる桁の損傷度として採用してもよい。
【0083】
また、図20の例において、ダミーの杭頭部に加えてダミーの桁が設定されてもよい。
【0084】
図21は、図20の例においてダミーの桁が追加された桁構造を例示する図である。この例においては、ダミーの杭頭部に加えてダミーの桁が追加され、桁構造は完全な格子状(方格状)となる。ダミーの桁にもチェビシェフ距離を与えることはできるが、ダミーの桁は現実には存在しない桁なので現実の桁において観測される劣化度を与えることはできない。そこで、ダミーの桁用に新たな劣化度(例えば劣化度Z)を定義し、これを説明変数として用いる。またこれに対応して、損傷度の判断が不能又は不要であることを示す損傷度Zを定義し、これを目的変数として用いる。このように定義された劣化度及び損傷度を用いて学習をさせれば、ダミーの桁を追加しても問題ない。学習済モデルMから出力された損傷度の結果において、損傷度Zの桁は表示しないなどの処理が行われてもよい。
【0085】
3-5.確率モデル
予測手段13は、所定の確率モデルを用いて将来の劣化度又は健全性を予測してもよい。この確率モデルは、過去の状態推移に基づく確率により将来の状態推移を推定するモデルであり、一例としてはマルコフ連鎖モデルである。この例において、予測手段13は、学習済モデルMと確率モデルとを組み合わせて予測を行う。より具体的には、予測手段13は、学習済モデルMからの出力を確率モデルに入力する。予測手段13は、さらに、現在時刻及び予測の対象となる将来時刻を確率モデルに入力する。これらの時刻は、例えば入力手段12を介してユーザにより入力される。
【0086】
3-6.その他
対象となる桁構造物が複数層の桁構造を有している場合、予測の対象となる桁構造はどれか単一の層に限定されない。複数の層に対して学習及び予測の処理が適用されてもよい。
【0087】
教師データの準備、学習、及び予測における処理の順序は図5図14、及び図15において例示したものに限定されない。例えば、説明変数の入力順序はどのようなものであってもよい。
【0088】
損傷度予測装置1のハードウェア構成は実施形態において例示されたものに限定されない。要求される機能を実装できるものであれば、損傷度予測装置1はどのようなハードウェア構成を有してもよい。例えば、損傷度予測装置1の機能の一部、一例としては予測手段13及び学習済モデルMをサーバ装置等の外部装置に実装してもよい。この場合、入力手段12及び出力手段14を有するコンピュータ装置がこの外部装置と協働し、全体として実施形態に係る損傷度予測装置1として機能する。このサーバ装置は現実のサーバであってもよいし仮想サーバであってもよい。
【0089】
プログラム及び学習済モデル等のソフトウェア要素は、CD-ROM(Compact Disc Read only memory)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で提供されてもよいし、インターネット等の通信網を介してダウンロードされてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1…損傷度予測装置、2…学習装置、9…機械学習モデル、11…記憶手段、12…入力手段、13…予測手段、14…出力手段、21…記憶手段、22…学習手段、91…入力層、92…中間層、93…出力層、101…CPU、102…メモリ、103…ストレージ、104…入力装置、105…表示装置
図1
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図21