(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】音波偏向デバイスおよび音波偏向システム
(51)【国際特許分類】
H04R 1/34 20060101AFI20240528BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H04R1/34 330Z
H04R3/00 310
(21)【出願番号】P 2021090355
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183265
【氏名又は名称】中谷 剣一
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】三俣 哲
(72)【発明者】
【氏名】川合 巳佳
(72)【発明者】
【氏名】小倉 敬樹
(72)【発明者】
【氏名】陳 柯君
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 功一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】西田 正弥
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-067500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/34
H04R 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気粘弾性エラストマで構成され外力により弾性率が変化する弾性率変化部と、
前記弾性率変化部に外力を印加する印加部と、
を備え、
前記弾性率変化部は、前記弾性率を変化させることにより音波を偏向
し、
前記印加部は、前記弾性率変化部に磁場を印加する、
音波偏向デバイス。
【請求項2】
振動部を備え、
前記振動部の少なくとも一部は、前記弾性率変化部で構成されている、
請求項
1に記載の音波偏向デバイス。
【請求項3】
複数の前記印加部は、平面視において前記振動部の外周に沿って対向して配置されている、
請求項
2に記載の音波偏向デバイス。
【請求項4】
前記印加部は、第1コイルと、前記第1コイルに対向して配置される第2コイルと、を有し、前記第1コイルの巻回方向と前記第2コイルの巻回方向とが異なる、
請求項
3に記載の音波偏向デバイス。
【請求項5】
振動部を備え、
前記弾性率変化部は、前記振動部を支持する支持部である、
請求項
1に記載の音波偏向デバイス。
【請求項6】
前記振動部は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面から突出する突起部と、を有し、
前記支持部は、前記突起部を支持し、
前記振動部の前記第1主面と前記支持部との間に隙間が形成されている、
請求項
5に記載の音波偏向デバイス。
【請求項7】
前記支持部は、平面視において前記振動部の中央部より外側に配置されている、
請求項
5または
6に記載の音波偏向デバイス。
【請求項8】
前記支持部は、環状に形成され、
前記印加部は、平面視において前記支持部と重なる位置に配置されたコイルを有する、
請求項
7に記載の音波偏向デバイス。
【請求項9】
前記振動部は、樹脂または金属で形成されている、
請求項
5から
8のいずれか1項に記載の音波偏向デバイス。
【請求項10】
さらに、
前記音波を発生させる音波発生部、
を備える、
請求項1から
9のいずれか1項に記載の音波偏向デバイス。
【請求項11】
同一平面上に並んで配置される複数の音波偏向デバイスを備え、
前記複数の音波偏向デバイスのそれぞれは、
磁気粘弾性エラストマで構成され外力により弾性率が変化する弾性率変化部と、
前記弾性率変化部に外力を印加する印加部と、
を備え、
それぞれの前記弾性率変化部は、前記弾性率を独立して変化させることにより音波を偏向
し、
前記印加部は、前記弾性率変化部に磁場を印加する、
音波偏向システム。
【請求項12】
振動部を備え、
前記振動部の少なくとも一部は、前記弾性率変化部で構成されている、
請求項
11に記載の音波偏向システム。
【請求項13】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面から突出する突起部と、を有する振動部を備え、
前記弾性率変化部は、前記突起部を支持する支持部である、
請求項
11に記載の音波偏向システム。
【請求項14】
前記振動部の前記第1主面と前記支持部との間に隙間が形成されている、
請求項
13に記載の音波偏向システム。
【請求項15】
前記支持部は、平面視において前記振動部の中央部より外側に配置されている、
請求項
13または
14に記載の音波偏向システム。
【請求項16】
前記支持部は、環状に形成され、
前記印加部は、平面視において前記支持部と重なる位置に配置されたコイルを有する、
請求項
15に記載の音波偏向システム。
【請求項17】
前記振動部は、樹脂または金属で形成されている、
請求項
13から
16のいずれか1項に記載の音波偏向システム。
【請求項18】
前記複数の音波偏向デバイスのそれぞれは、さらに、
前記音波を発生させる音波発生部、
を備える、
請求項
11から
17のいずれか1項に記載の音波偏向システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波偏向デバイスおよび音波偏向システムに関する。
【背景技術】
【0002】
音波を任意の位置に集中させたり、特定の方向に指向性を持たせたりするような装置が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、変調された超音波により、狭指向性を有する可聴域の音を発生させるパラメトリックスピーカが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のパラメトリックスピーカは、構成の簡素化という点で未だ改善の余地がある。
【0006】
本発明は、構成を簡素化させた音波偏向デバイスおよび音波偏向システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様にかかる音波偏向デバイスは、
外力により弾性率が変化する弾性率変化部と、
前記弾性率変化部に外力を印加する印加部と、
を備え、
前記弾性率変化部は、前記弾性率を変化させることにより音波を偏向する。
【0008】
本発明の一態様にかかる音波偏向システムは、
同一平面上に並んで配置される複数の音波偏向デバイスを備え、
前記複数の音波偏向デバイスのそれぞれは、
外力により弾性率が変化する弾性率変化部と、
前記弾性率変化部に外力を印加する印加部と、
を備え、
それぞれの前記弾性率変化部は、前記弾性率を独立して変化させることにより音波を偏向する。
【0009】
本発明の別の態様にかかる音波偏向システムは、
振動部を有する複数の同一位相の音波発生装置を備え、
前記複数の音波発生装置の前記振動部は、それぞれ弾性率が異なり、
前記複数の音波発生装置から出力される音波が合成波として偏向される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、構成を簡素化させた音波偏向デバイスおよび音波偏向システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1にかかる音波偏向デバイスを示す模式図
【
図4】実施の形態1の変形例1にかかる音波偏向デバイスを示す断面図
【
図5】実施の形態1の変形例2にかかる音波偏向デバイスを示す断面図
【
図6】実施の形態2にかかる音波偏向システムを示す模式図
【
図7】実施の形態3にかかる音波偏向デバイスを示す模式図
【
図8】それぞれの振動部の弾性率をそれぞれ異なる大きさにした場合に音波偏向デバイスから出力される音波の偏向角を示す表
【
図9】弾性率変化部に印加する磁場の大きさと、弾性率変化部の弾性率との関係を示す表
【
図10】弾性率変化部が誘電エラストマで構成されている場合の、弾性率変化部に印加される電場の大きさと弾性率と、弾性率変化部の弾性率との関係を示す表
【
図11】実施の形態4にかかる音波偏向デバイスを示す模式図
【
図14】振動部の弾性率を徐々に異なる大きさにした場合に音波偏向デバイスから出力される音波の偏向角を示す表
【
図15】実施の形態5にかかる音波偏向デバイスを示す平面図
【
図17】実施の形態6にかかる音波偏向システムを示す概略図
【
図20】
図19の計測方法で計測された実施例1の音波の偏向角を示すグラフ
【
図21】
図19の計測方法で計測された比較例1の音波の偏向角を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明に至った経緯)
近年、音波を偏向させて、指向性を持たせたスピーカあるいは超音波センサ等に対するニーズが高まっている。
【0013】
例えば、指向性を有する音響システムとして、パラメトリックスピーカが知られている。パラメトリックスピーカは、音に指向性を持たせることにより、所定の範囲に選択的に音波を届けることができ、例えば、同じ空間内にいる特定の人にのみ音を聞かせることができる。
【0014】
特許文献1には、変調した超音波を用いて指向性を実現するパラメトリックスピーカが開示されている。特許文献1に記載のパラメトリックスピーカは、超音波素子を有する独立したスピーカを複数並べて、それぞれのスピーカから変調された超音波を放出することにより指向性を有する可聴音を発生する。音の指向性を制御するために、それぞれの超音波スピーカに対して変調の制御をすることになり、大型で複雑な制御システムが必要である。このため、非常に限定的な市場でしか活用されていない。
【0015】
そこで、本発明者らは、簡素な構成で音波を偏向することができる音波偏向デバイスおよび音波偏向システムについて検討し、以下の発明に至った。
【0016】
本発明の一態様にかかる音波偏向デバイスは、
外力により弾性率が変化する弾性率変化部と、
前記弾性率変化部に外力を印加する印加部と、
を備え、
前記弾性率変化部は、前記弾性率を変化させることにより音波を偏向する。
【0017】
このような構成により、構成を簡素化した音波偏向デバイスを提供することができる。
【0018】
前記弾性率変化部は、磁気粘弾性エラストマで構成されており、
前記印加部は、前記弾性率変化部に磁場を印加してもよい。
【0019】
このような構成により、磁場を印加することで弾性率変化部の弾性率を自在に変えることができる。このため、音波の位相操作をすることなく、簡素な構成で音波偏向システムを提供することができる。
【0020】
振動部を備え、
前記振動部の少なくとも一部は、前記弾性率変化部で構成されていてもよい。
【0021】
このような構成により、振動部の弾性率を変更することで、音波を偏向することができる。
【0022】
複数の前記印加部は、平面視において前記振動部の外周に沿って対向して配置されていてもよい。
【0023】
このような構成により、単一の振動部において、弾性率を部分的に変えることができる。このため、単一の音波偏向デバイスで、音波を偏向させることができる。
【0024】
前記印加部は、第1コイルと、前記第1コイルに対向して配置される第2コイルと、を有し、前記第1コイルの巻回方向と前記第2コイルの巻回方向とが異なってもよい。
【0025】
このような構成により、単一の振動部において、弾性率をグラデーション状に変えることができる。
【0026】
振動部を備え、
前記弾性率変化部は、前記振動部を支持する支持部であってもよい。
【0027】
このような構成により、振動部を支持する支持部の弾性率を変化させて、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0028】
前記振動部は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面から突出する突起部と、を有し、
前記支持部は、前記突起部を支持し、
前記振動部の前記第1主面と前記支持部との間に隙間が形成されていてもよい。
【0029】
このような構成により、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0030】
前記支持部は、平面視において前記振動部の中央部より外側に配置されていてもよい。
【0031】
このような構成により、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0032】
前記支持部は、環状に形成され、
前記印加部は、平面視において前記支持部と重なる位置に配置されたコイルを有してもよい。
【0033】
このような構成により、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0034】
前記振動部は、樹脂または金属で形成されていてもよい。
【0035】
このような構成により、簡素な構成で音波を偏向することができる。
【0036】
さらに、
前記音波を発生させる音波発生部、
を備えてもよい。
【0037】
このような構成により、音波を偏向させることのできるスピーカまたは超音波センサ等を提供することができる。
【0038】
このような構成により、簡素な構成で音波を偏向することができる。
【0039】
本発明の一態様にかかる音波偏向システムは、
同一平面上に並んで配置される複数の音波偏向デバイスを備え、
前記複数の音波偏向デバイスのそれぞれは、
外力により弾性率が変化する弾性率変化部と、
前記弾性率変化部に外力を印加する印加部と、
を備え、
それぞれの前記弾性率変化部は、前記弾性率を独立して変化させることにより音波を偏向する。
【0040】
このような構成により、構成を簡素化した音波偏向システムを提供することができる。
【0041】
前記弾性率変化部は、磁気粘弾性エラストマで構成されており、
前記印加部は、前記弾性率変化部に磁場を印加してもよい。
【0042】
このような構成により、磁場を印加することで弾性率変化部の弾性率を自在に変えることができる。このため、音波の位相操作をすることなく、簡素な構成で音波偏向システムを提供することができる。
【0043】
振動部を備え、
前記振動部の少なくとも一部は、前記弾性率変化部で構成されていてもよい。
【0044】
このような構成により、振動部の弾性率を変更することで、音波を偏向することができる。
【0045】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面と、前記第1主面から突出する突起部と、を有する振動部を備え、
前記弾性率変化部は、前記突起部を支持する支持部であってもよい。
【0046】
このような構成により、振動部を支持する支持部の弾性率を変化させて、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0047】
前記振動部の前記第1主面と前記支持部との間に隙間が形成されていてもよい。
【0048】
このような構成により、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0049】
前記支持部は、平面視において前記振動部の中央部より外側に配置されていてもよい。
【0050】
このような構成により、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0051】
前記支持部は、環状に形成され、
前記印加部は、平面視において前記支持部と重なる位置に配置されたコイルを有してもよい。
【0052】
このような構成により、振動部の張りの強さを変えて音波を偏向することができる。
【0053】
前記振動部は、樹脂または金属で形成されていてもよい。
【0054】
このような構成により、簡素な構成で音波を偏向することができる。
【0055】
前記複数の音波偏向デバイスのそれぞれは、さらに、
前記音波を発生させる音波発生部、
を備えてもよい。
【0056】
このような構成により、簡素な構成のパラメトリックスピーカを提供することができる。
【0057】
本発明の別の態様にかかる音波偏向システムは、
振動部を有する複数の同一位相の音波発生装置を備え、
前記複数の音波発生装置の前記振動部は、それぞれ弾性率が異なり、
前記複数の音波発生装置から出力される音波が合成波として偏向される。
【0058】
このような構成により、構成を簡素化した音波偏向システムを提供することができる。
【0059】
(実施の形態1)
[概念]
実施の形態1にかかる音波偏向デバイスの概念について
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態1にかかる音波偏向デバイス100を示す概念図である。
図1に示すように、音波偏向デバイス100では、弾性率変化部を備え、トランスミッタ13から出力される音波を弾性率変化部によって偏向する。すなわち、音波偏向デバイス100は、弾性率変化部の弾性率を変化させることによって音波を偏向する。音波偏向デバイス100は、例えば、音波を偏向可能なスピーカ、または超音波素子である。
【0060】
[全体構成]
次に、音波偏向デバイス100の構成について
図2および
図3を用いて説明する。
図2は、
図1の音波偏向デバイス100の平面図である。
図3は、
図2の音波偏向デバイス100のA-A断面図である。
【0061】
音波偏向デバイス100は、
図2および
図3に示すように、弾性率変化部で構成される振動部11と、印加部12と、トランスミッタ13(音波発生部13)と、鉄心14と、を備える。なお、音波偏向デバイス100では、トランスミッタ13と、鉄心14とは、必須の構成ではない。
【0062】
音波偏向デバイス100は、音波を偏向させるデバイスである。振動部11を構成する弾性率変化部は、弾性率を変化させることにより音波を偏向する。
【0063】
図2および
図3に示すように、音波偏向デバイス100は円柱状の形状を有する。音波偏向デバイス100の形状は円柱状に限定されず、角柱等であってもよい。
【0064】
本実施の形態では、音波偏向デバイス100は、振動部11(弾性率変化部)、印加部12、トランスミッタ13、および鉄心14がハウジング15に収容されて構成されている。
図2および
図3に示すように、音波偏向デバイス100は、円筒状のハウジング15に収容されている。
【0065】
音波偏向デバイス100の構成要素について、説明する。
【0066】
<振動部>
振動部11は、トランスミッタ13から出力された音波により振動し、空中に音波を放射する。トランスミッタ13が本発明の「音波発生部」に相当する。本実施の形態では、
図2および
図3に示すように、音波偏向デバイス100には、1つの振動部11が配置されている。振動部11は、平面視において円形の膜状に形成されており、平面視において振動部11の周りを印加部12に囲まれている。
【0067】
振動部11は弾性率変化部で構成されている。弾性率変化部は、外力により弾性率が変化する。本実施の形態では、弾性率変化部は、磁気粘弾性エラストマで構成されている。磁気粘弾性エラストマは、磁場を印加することにより、弾性率が変化する材料である。磁気粘弾性エラストマの詳細については後述する。
【0068】
<印加部>
印加部12は、弾性率変化部に外力を印加する。本実施の形態では、印加部12は、弾性率変化部に磁場を印加するコイルである。図示省略の制御部により、印加部12に電流を流すことにより、印加部12が弾性率変化部に磁場を印加する。また、制御部により、弾性率変化部に印加する磁場の大きさを制御する。
【0069】
印加部12は、例えば、径が0.2mmのワイヤを450ターン巻回させて形成される。本実施の形態では、印加部12を囲むように鉄心14が配置されている。鉄心14は、磁場を通すため、印加部12で発生した磁場を効率よく振動部11(弾性率変化部)に印加することができる。
【0070】
<磁気粘弾性エラストマ>
磁気粘弾性エラストマは、エラストマを基質として、その内部に磁性粒子を分散固定した材料である。基質となるエラストマとしては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ブチルゴム、またはポリウレタン等の、粘弾性を有する材料が挙げられる。磁性粒子としては、例えば、磁場の作用によって磁気分極する性質を有する材料であればよく、純鉄、カルボニル鉄、またはフェライト等の強磁性体材料、または高透磁率材料の粉末が挙げられる。
【0071】
磁気粘弾性エラストマは、磁場が印加されていないときには、エラストマの性質を有し、磁場が印加されると磁性粒子の性質を有する材料である。具体的には、磁場が印加されていない場合、磁気粘弾性エラストマは、基質となるゴムまたはポリウレタン等のように柔らかい状態である。一方、磁場が印加されると、磁気粘弾性エラストマは、弾性率が大きくなるため硬くなる。磁気粘弾性エラストマの硬さは、印加する磁場の大きさの二乗に比例する。
【0072】
<音波の偏向>
固体を伝播する音波の速度は、音速をc(m/s)、密度をρ(kg/m3)、体積弾性率をк(Pa)としたときに、(1)式で示される。すなわち、弾性率の高い固体ほど音波の速度が速くなり、弾性率の低い固体ほど音波の速度が遅くなる。
【0073】
【0074】
すなわち、トランスミッタ13から出力された音波が振動部11を伝わると、振動部11の弾性率により音波の速度が変わる。その結果、振動部11を通過して空気中に放射された音波の方向を変えることができる。
【0075】
振動部11の弾性率を部分的に変えることにより、例えば、振動部11から空気中に放射された音波を
図1の矢印A1に示す方向に偏向することができる。
【0076】
[効果]
実施の形態1にかかる音波偏向デバイス100によれば、以下の効果を奏することができる。
【0077】
音波偏向デバイス100は、振動部11と、弾性率変化部と、印加部12とを備え、弾性率変化部は、弾性率を変化させることにより振動部11の振動により出力される音波を偏向する。弾性率変化部は、外力により弾性率が変化する。印加部12は、弾性率変化部に外力を印加する。
【0078】
このような構成により、構成を簡素化させた音波偏向デバイス100を提供することができる。弾性率変化部の弾性率を印加部12の外力により変化させることにより音波を偏向させることができる。このため、デバイスに複雑な音響システムを組み込むことなく、簡素な構成で音波を偏向させることができ、音波偏向デバイス100の小型化、および低コスト化が可能である。
【0079】
弾性率変化部は、磁気粘弾性エラストマで構成されており、印加部12は、弾性率変化部に磁場を印加する。
【0080】
このような構成により、磁気を印加することにより、弾性率変化部の弾性率を変えることができる。このため、複雑な制御回路を使用することなく、簡素な構成の音波偏向デバイス100および音波偏向システム200を提供することができる。
【0081】
なお、上述した実施の形態では、音波偏向システム200が5つの音波偏向デバイス100を備える例について説明したが、これに限定されない。音波偏向システム200には、2つ以上の複数の音波偏向デバイス100が配置されていればよい。
【0082】
[変形例]
図4は、実施の形態1の変形例1にかかる音波偏向デバイス101を示す断面図である。
図4に示すように、振動部21(弾性率変化部)が膜状ではなくブロック状に形成されていてもよい。この場合、印加部22は、ブロック状の振動部21を囲むように配置されていてもよい。
【0083】
図5は、実施の形態1の変形例2にかかる音波偏向デバイス102を示す断面図である。
図5に示すように、印加部32を囲む鉄心34の形状が異なっていてもよい。変形例2の音波偏向デバイス102では、印加部32の形状に合わせて、鉄心34が環状に形成されている。
【0084】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2にかかる音波偏向システム200について説明する。なお、実施の形態2では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態2においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態2では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0085】
実施の形態2では、音波偏向システム200が複数の音波偏向デバイス100を備える点で実施の形態1と異なる。
【0086】
実施の形態2にかかる音波偏向システムについて
図6を用いて説明する。
図6は、実施の形態2にかかる音波偏向システム200を示す概念図である。
図6に示すように、音波偏向システム200は、複数の音波偏向デバイス100a~100eを備える。
図6に示す例では、音波偏向システム200は、5個の音波偏向デバイス100a~100eを備える。音波偏向システム200は、同一平面上に並んで配置されている。音波偏向システム200は、例えば、パラメトリックスピーカとして機能する。
【0087】
音波偏向システム200は、同一平面上に並んで配置される複数の音波偏向デバイス100を備える。同一平面上に並んで配置されるとは、それぞれの音波偏向デバイス100a~100eの弾性率変化部が同一平面上に並ぶよう配置されることである。
図2に示すように、本実施の形態では、5つの音波偏向デバイス100(100a~100e)を有する音波偏向システム200を例に説明する。
【0088】
音波偏向システム200では、複数の音波偏向デバイス100a~100eそれぞれの弾性率を変化させて音波を偏向している。すなわち、音波偏向システム200では、それぞれの弾性率変化部(振動部)11a~11eは、弾性率を独立して変化させることにより音波を偏向する。例えば、音波偏向デバイス100aの振動部11aに印加する磁場を大きくし、音波偏向デバイス100b~100eに印加する磁場を段階的に小さくすることで、振動部11a~11eの弾性率も段階的に小さくすることができる。
【0089】
それぞれの音波偏向デバイス100a~100eのトランスミッタ13(音波発生部13)からは同じ電気信号が出力され、それぞれの振動部11a~11eには同じ音波が入力される。それぞれの振動部11a~11eの弾性率が異なるため、音波はそれぞれの振動部11a~11eを異なる速度で伝播する。音速の異なる音波が振動部11a~11eを通過すると、振動部11a~11eの表面(
図6において振動部11a~11eの上面)において、それぞれの音波で位相の差が生じる。これらの音波が偏向波として合成され、音波偏向システム200から出力される音波は、示す矢印A2の方向(
図6の右側)に傾く。
【0090】
逆に、振動部11aに印加される磁場が小さく、振動部11b~11eでは段階的に印加される磁場が大きくなる場合、振動部11a~11eの弾性率は段階的に大きくなる。この場合、合成された偏向波は、
図6の左側に傾いて出力される。
【0091】
このように、振動部11(11a~11e)の弾性率の違いにより、振動部11(11a~11e)を伝播する音波の速度が異なるため、音波偏向システム200から出力される音波が所定の方向に偏向される。それぞれの振動部11a~11eに印加される磁場の大きさを調整することにより、音波を所望の方向に偏向することができる。
【0092】
[効果]
実施の形態2にかかる音波偏向システム200によれば、以下の効果を奏することができる。
【0093】
音波偏向システム200は、同一平面上に並んで配置される複数の音波偏向デバイス100を備える。
【0094】
このような構成により、パラメトリックスピーカと同様の構成を、簡素なシステムで実現することができる。
【0095】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3にかかる音波偏向デバイス103について説明する。なお、実施の形態3では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態3においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態3では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0096】
図7は、実施の形態2にかかる音波偏向デバイス103を示す模式図である。実施の形態2では、音波偏向デバイス103が複数の振動部41を備える点で、実施の形態1と異なる。
図7に示すように、音波偏向デバイス103は、5つの振動部41a~41eが並んで配置されている。実施の形態1と同様に、それぞれの振動部41は弾性率変化部で構成されている。また、弾性率変化部は磁気粘弾性エラストマで構成されている。
【0097】
図8は、それぞれの振動部41a~41eの弾性率をそれぞれ異なる大きさにした場合に音波偏向デバイス103から出力される音波の偏向角を示す表である。
図9は、弾性率変化部に印加する磁場の大きさと、弾性率変化部の弾性率との関係を示す表である。
【0098】
図7に示すように振動部41aから振動部41eに向かって段階的に弾性率が大きくなるよう磁場を調整し、音波偏向デバイス103から出力される音波の偏向角を観測した。本実施の形態では、それぞれの振動部41a~41eにそれぞれ異なる磁場を印加する5つの印加部(図示省略)が配置されている。制御部により、それぞれの印加部が印加する磁場を調整し、それぞれの41a~41eの弾性率を
図8の表のように調整する。音波の偏向角とは、音波偏向デバイス103の音波が出力される面46に直交する方向(
図7の破線S1)と、音波の進行方向(
図7の矢印A3)と、のなす角度θ1を示す。
【0099】
図8の表に示すように、それぞれの振動部41a~41eの弾性率を変えて音波の偏向角を観測したところ、6度~60度の範囲で音波が偏向された。また、振動部41aと振動部41eとの弾性率の差が大きいほど、音波の偏向角が大きくなることがわかる。このように、1つの音波偏向デバイス103の中で、振動部41(41a~41e)の弾性率をそれぞれ変えることにより、1つの音波偏向デバイス103によって音波を偏向することができる。
【0100】
図9の表に示すように、弾性率変化部に印加される磁場の大きさに比例して、弾性率変化部の弾性率が大きくなる。このため、弾性率変化部に印加される磁場の大きさを変えることで、弾性率変化部の弾性率を変化させることができる。
【0101】
[効果]
実施の形態3にかかる音波偏向デバイス103によれば、以下の効果を奏することができる。
【0102】
より精度よく、簡素な構成で音波を偏向することができる。
【0103】
なお、上述した実施の形態では、5つの振動部41のすべてが弾性率変化部で構成されている例について説明したが、振動部41の少なくとも一部が、弾性率変化部で構成されていてもよい。
【0104】
また、上述した実施の形態では、弾性率変化部が磁気粘弾性エラストマで構成されている例について説明したが、これに限定されない。弾性率変化部は、例えば、誘電エラストマ等の外力で弾性率が変化する材料で構成されていてもよい。
【0105】
図10は、弾性率変化部が誘電エラストマで構成されている場合の、弾性率変化部に印加される電場の大きさと弾性率と、弾性率変化部の弾性率との関係を示す表である。
【0106】
図10の表に示すように、弾性率変化部が誘電エラストマで構成されている場合にも、弾性率変化部に印加する電場の大きさを変えることで、弾性率変化部の弾性率を変化させることができる。
【0107】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4にかかる音波偏向デバイス104について説明する。なお、実施の形態4では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態4においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態4では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0108】
図11は、実施の形態3にかかる音波偏向デバイス104を示す模式図である。
図12は、
図11の音波偏向デバイス104の平面図である。
図13は、
図12の音波偏向デバイス104のB-B断面図である。
【0109】
実施の形態3では、2つの印加部52が、振動部51の外周に沿って対向して配置されている点で、実施の形態2と異なる。
【0110】
本実施の形態では、
図11~
図13に示すように、振動部51が平面視において矩形状に形成されている。振動部51は、弾性率変化部で構成されており、弾性率変化部は磁気粘弾性エラストマで構成されている。振動部51は、平面視でトランスミッタ53に設けられた開口部53aに重なるよう配置されている。
【0111】
振動部の外周に沿って対向する位置に、2つの印加部52が配置されている。2つの印加部52は、第1コイル52aと、第1コイル52aに対向して配置される第2コイル52bと、を有する。第1コイル52aの巻回方向と第2コイル52bの巻回方向とが異なるよう、それぞれのコイル52a、52bが配置される。このように2つのコイル52a、52bを配置することで、一方から他方に吸引するよう磁場を印加することができる。すなわち、振動部51には
図12の矢印Mの方向の磁場が印加される。その結果、振動部51に印加される磁場の大きさを調整することができる。
【0112】
例えば、
図11に示す振動部51において、第1コイル52a側に印加される磁場が大きく、第2コイル52bに向かうにつれて印加される磁場の大きさを線形的に小さくして、第2コイル52b側に印加される磁場が小さくなるような磁場の調整が可能になる。この場合、
図11の矢印A3に示すように、音波が
図11の矢印A4の方向に偏向される。したがって、第1コイル52aと第2コイル52bとに印加される磁場の大きさを適宜変更することで、音波を所望の方向に偏向することができる。
【0113】
図14は、振動部51の弾性率を徐々に異なる大きさにした場合に音波偏向デバイス104から出力される音波の偏向角を示す表である。
図14の表に示すように、
図11において振動部51の第1コイル52a側と第2コイル52b側とで弾性率の差が大きくなるよう磁場を印加すると、偏向角が大きくなる。
【0114】
本実施の形態のような第1コイル52aおよび第2コイル52bの配置の場合、
図11の振動部51の端部の弾性率を大きくして中央部の弾性率を小さくする、あるいはその逆のような磁場の印加も可能である。このように、振動部51の弾性率を自在に変化させることができる。
【0115】
[効果]
実施の形態3にかかる音波偏向デバイス104によれば、以下の効果を奏することができる。
【0116】
振動部51に対して、より細かい弾性率の制御が可能になり、より精度よく偏向角を制御することができる。
【0117】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5にかかる音波偏向デバイス105について説明する。なお、実施の形態5では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態5においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態5では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0118】
図15は、実施の形態5にかかる音波偏向デバイス105を示す平面図である。
図16は、
図15の音波偏向デバイス105のC-C断面図である。
【0119】
実施の形態4では、音波偏向デバイス105が振動部61を備え、弾性率変化部が振動部61を支持する支持部66である点で、実施の形態1と異なる。
【0120】
図15および
図16に示すように、音波偏向デバイス105は振動部61を備える。弾性率変化部は、振動部61を支持する支持部66である。本実施の形態では、振動部61は、第1主面61aと、第1主面61aと反対側の第2主面61bを有する膜状に形成されている。また、振動部61の第2主面61bから、突起部61cが突出している。振動部61は円形の膜状であり、突起部61cは環状に形成されている。突起部61cの一部が支持部66に埋め込まれることにより、振動部61が支持されている。また、振動部61と支持部66との間には、隙間G1が形成されている。本実施の形態では、振動部61は、樹脂または金属により形成されている。
【0121】
支持部66もまた環状に形成されている。支持部66は、
図15に示すように、平面視において振動部の中央部より外側に配置されている。本実施の形態では、弾性率変化部は、突起部61cを支持する支持部66である。支持部66は、磁気粘弾性エラストマで構成されている。
【0122】
印加部は、平面視において支持部66と重なる位置に配置されたコイル62を有する。また、支持部66およびコイル62は、鉄心64で囲まれている。
【0123】
印加部により支持部66(弾性率変化部)に磁場が印加されると、支持部66の弾性率が大きくなる。支持部66は振動部61を支える「ばね」のようなものである。支持部66の弾性率が変わることにより、振動部61を支える「ばね」の硬さが変わり、振動部61の全体としての固有振動数も従属的に変化する。この場合、支持部66の弾性率が変わることにより、振動部61の押し引きの抵抗力が変化する。このため、支持部66の弾性率を変えることにより振動部61の押し引きの抵抗力が変化し、音波を偏向することができる。
【0124】
[効果]
実施の形態5にかかる音波偏向デバイス105によれば、以下の効果を奏することができる。
【0125】
支持部66の弾性率を変えることで、振動部61の張りの強さを変えることができる。このため、簡素な構成で、音波を偏向させることができる。
【0126】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6にかかる音波偏向システム201について説明する。なお、実施の形態6では、主に実施の形態1と異なる点について説明する。実施の形態6においては、実施の形態1と同一または同等の構成については同じ符号を付して説明する。また、実施の形態6では、実施の形態1と重複する記載は省略する。
【0127】
図17は、実施の形態5にかかる音波偏向システム201を示す概略図である。
図18は、
図17の音波偏向システム201の平面図である。
【0128】
実施の形態5では、音波偏向システム201が振動部71a~71eを有する複数の音波発生装置72a~72eを備える点で、実施の形態1と異なる。
【0129】
図17および
図18に示すように、音波偏向システム201は、複数の同一位相の音波発生装置72a~72eを備え、複数の音波発生装置72a~72eから出力される音波を合成波として偏向するシステムである。音波発生装置72a~72eは、それぞれ振動部71a~71eを有する。振動部71a~71eは、それぞれ弾性率が異なる。またそれぞれの音波発生装置72a~72eは、平面視で円形であり、中心間の距離D1が35mmとなるよう配置されている。また、音波偏向システム201には、音波発生装置72a~72eと振動部71a~71eとを保持するカバー74が配置されている。
【0130】
音波発生装置72a~72eは、例えば圧電ブザーであり、基板73に配置されている。音波発生装置72a~72eにはそれぞれ、振動部71a~71eが載置される。振動部71a~71eは、例えば、ウレタン樹脂などの合成樹脂等で形成された板である。それぞれの振動部71a~71eは、それぞれ弾性率が異なる。本実施の形態では、振動部71aの弾性率が最も大きくなり、振動部71eに向かって段階的に弾性率が小さくなるよう、振動部71a~71eを形成している。
【0131】
[効果]
実施の形態6にかかる音波偏向システム201によれば、以下の効果を奏することができる。
【0132】
それぞれ異なる弾性率を有する振動部71a~71eを備えているため、構成を簡素化した音波偏向システムを提供することができる。
【0133】
なお、上述した実施の形態では、音波発生装置72a~72eがそれぞれ振動部71a~71eを有する例について説明したが、1つの音波発生装置に対して、弾性率の異なる複数の振動部が配置されていてもよい。
【0134】
<実施例>
実施例1として、音波偏向システム201を使用し、比較例1として、振動部71a~71eを含まない音波偏向システムを使用した。振動部71a~71eを含まない点以外は、実施例1と比較例1とは同様の構成である。
【0135】
図19は、音波の偏向角の計測方法を示す概略図である。
図20は、
図19の計測方法で計測された実施例1の音波の偏向角を示すグラフである。
図21は、
図19の計測方法で計測された比較例1の音波の偏向角を示すグラフである。
【0136】
図19に示すように、実施例1および比較例1の音波偏向システムを中心にして、半径R1が30cmの半円上を計測領域とする。半円上には、間隔θ2が15度となるよう、13の計測点M1~M13を設定する。計測点M1~M13には、それぞれ騒音計を配置する。
【0137】
それぞれの音波発生装置からは4kHzの音源を出力する。実施例1および比較例1でそれぞれ3回ずつ計測して平均値を算出した。
【0138】
図20および
図21のグラフでは、M1を0度、M2を15度、M13を180度として、それぞれの計測点で測定された音の大きさをプロットしている。
【0139】
図20に示すように、実施例1の場合、60度~75度で最も大きい音が観測されている。一方、
図21に示すように、比較例1の場合、75度~100度で最も大きい音が観測されている。
【0140】
したがって、比較例1では、音波偏向システムから90度の方向に音波が出力され、実施例1では、比較例1と比較して、15度~30度程度、音波が偏向されていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、スピーカまたは超音波センサ等の、音波を偏向させる用途に有用である。
【符号の説明】
【0142】
100、100a~100e、101~105 音波偏向デバイス
200 音波偏向システム
11、11a~11e、21、41、41a~41e、51、61 振動部
12、22、32、52 印加部
13 トランスミッタ(音波発生部)
52a 第1コイル
52b 第2コイル
61a 第1主面
61b 第2主面
61c 突起部
62 コイル
66 支持部
201 音波偏向システム
71a~71e 振動部
72a~72e 音波発生装置