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特許7495092高周波出力装置および高周波出力安定化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】高周波出力装置および高周波出力安定化方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/30 20060101AFI20240528BHJP
   G01R 35/00 20060101ALI20240528BHJP
   H03F 3/189 20060101ALI20240528BHJP
   H03G 3/30 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H03F1/30 210
G01R35/00 Z
H03F3/189
H03G3/30 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019071229
(22)【出願日】2019-04-03
(65)【公開番号】P2020170941
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 真一
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-49630(JP,A)
【文献】特開2001-217812(JP,A)
【文献】特開2006-333023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
H03G3/00-3/34
H04B1/04
G01R35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を生成する信号生成部と、
前記信号生成部が生成した高周波信号に対して利得を変更し得る増幅を行い、高周波コンポーネントに入力する可変増幅器と、
前記高周波コンポーネントから出力端へ進行する高周波信号を前記高周波コンポーネントと前記出力端との間で分波する方向性結合器と、
前記信号生成部と前記可変増幅器との間、および前記高周波コンポーネントと前記方向性結合器との間に配置し、前記可変増幅器および前記高周波コンポーネントをバイパスする経路へ切り替えを行う一対の切替器と、
前記可変増幅器および前記高周波コンポーネントをバイパスする経路における前記方向性結合器で分波した高周波信号の周波数と出力レベルの常温時および使用時における測定結果の差に基づいて、前記可変増幅器および前記高周波コンポーネントをバイパスする経路における高周波信号の周波数と出力レベルの前記使用時の測定結果を補正し、前記可変増幅器における利得の調整量を演算する調整量演算部と、
を備えることを特徴とする高周波出力装置。
【請求項2】
前記調整量演算部は、前記方向性結合器から分波した高周波信号を対数増幅する対数増幅器を備えることを特徴とする請求項1に記載の高周波出力装置。
【請求項3】
前記調整量演算部は、A/D変換器と演算処理部とD/A変換器を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波出力装置。
【請求項4】
高周波信号を空中伝搬させるためのアンテナを前記出力端に接続することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高周波出力装置。
【請求項5】
前記出力端における出力を測定する出力計を前記出力端に接続することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高周波出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波出力装置および高周波出力安定化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば無線装置など、無線周波数とも呼ばれる周波数の高い高周波を出力する装置において、周波数、温度、および出力レベルに依存せず安定した高周波を出力することは必須の課題である。しかしながら、増幅器や濾波器などのデバイスは、少なからず周波数特性や温度ドリフトを有しており、これらデバイスが多段構成であるほど出力の不確定性が高まる。そこで、高周波を出力する高周波出力装置では、出力を安定化するための構成を備えることも多い。
【0003】
特許文献1には、検出電力と基準電力とが一致するように利得を調節する利得調節部を備え、出力を安定させる構成の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-217812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、上記先行技術文献の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。以下の分析は、本発明者らによってなされたものである。
【0006】
ところで、利得を安定化するための構成を備えたとしても、利得を安定化する構成自体が正確に機能するようにキャリブレーション(較正)を行う必要がある。周波数、温度、および出力レベルのすべての変化に対応するキャリブレーションを行うためには、これらすべての変化の影響を事前に測定することが原則である。
【0007】
しかしながら、周波数および出力レベルの変化の影響を事前に測定することは比較的に容易であっても、温度変化の影響を事前に測定することは容易ではない。温度変化の影響のキャリブレーションを行うには、高周波出力装置を恒温槽に入れて、温度を可変しながらキャリブレーションを行う必要がある。そして、恒温槽を用いたキャリブレーションは、一般に数時間以上の時間を要するので生産コストを圧迫してしまう。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、温度変化に対するキャリブレーションの時間を排除することに寄与する高周波出力装置および高周波出力安定化方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の視点は、高周波信号を生成する信号生成部と、前記信号生成部が生成した高周波信号に対して利得を変更し得る増幅を行い、高周波コンポーネントに入力する可変増幅器と、前記高周波コンポーネントから出力端へ進行する高周波信号を前記高周波コンポーネントと前記出力端との間で分波する方向性結合器と、前記方向性結合器で分波した高周波信号に基づいて、前記可変増幅器における利得の調整量を演算する調整量演算部と、前記信号生成部と前記可変増幅器との間、および前記高周波コンポーネントと前記方向性結合器との間に配置し、前記可変増幅器および前記高周波コンポーネントをバイパスする経路へ切り替えを行う一対の切替器と、を備えることを特徴とする高周波出力装置が提供される。
【0010】
本発明の第2の視点は、出力端付近の高周波信号を測定しながら高周波出力装置の出力を安定化する高周波出力安定化方法であって、周波数と出力レベルに関して前記高周波出力装置のキャリブレーションを行うステップと、常温時の周波数と出力レベルに関して、前記出力端付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定するステップと、使用時の周波数と出力レベルに関して、前記出力端付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定するステップと、前記常温時および前記使用時における前記測定系の特性の測定結果の違いに基づいて、前記高周波出力装置の出力を調整するステップと、を含む高周波出力安定化方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の各視点によれば、温度変化に対するキャリブレーションの時間を排除することに寄与する高周波出力装置および高周波出力安定化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る高周波出力装置の概要を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る高周波出力装置のキャリブレーション時を示す図である。
図3図3は、第1実施形態に係る高周波出力装置の使用時を示す図である。
図4図4は、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法の概要を示すフローである。
図5図5は、第2実施形態に係る高周波出力装置の概要を示す図である。
図6図6は、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法の概要を示すフローである。
図7図7は、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法の概要を示すフローである。
図8図8は、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法の概要を示すフローである。
図9図9は、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法の概要を示すフローである。
図10図10は、スロープおよびインターセプトの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る高周波出力装置の概要を示す図である。図1に示すように、高周波出力装置100は、信号生成部10と可変増幅器20と方向性結合器30と調整量演算部40と一対の切替器51,52とを備えている。
【0015】
信号生成部10は、高周波信号を生成するユニットであり、高周波出力装置100における高周波信号の経路の最上流に位置する。信号生成部10は、搬送波としての高周波を生成する発振器などを備えることができるがこれに限定しない。信号生成部10は、後段のデバイスが周波数、温度、および出力レベルに依存して変動する周波数の高周波を生成するもの全てを適切に採用し得る。
【0016】
可変増幅器20は、信号生成部10が生成した高周波信号を増幅した後に高周波コンポーネント21に入力する。また、可変増幅器20は、信号生成部10が生成した高周波信号を増幅する際の利得を可変し得るものである。可変増幅器20における利得の調整量は、調整量演算部40の出力に従うように構成する。
【0017】
ここで、高周波コンポーネント21は、温度、および出力レベルに依存して変動するデバイスの全てを適切に採用し得る。例えば、ハイパスフィルタやローパスフィルタやバンドパスフィルタなどの濾波器、増幅器、所望の信号を高周波にエンコードする変調器などを採用することができるがこれに限定しない。高周波コンポーネント21は、高周波出力装置100の目的に応じて適切に選択し得る構成である。
【0018】
方向性結合器30は、高周波コンポーネント21から出力端31へ進行する高周波信号を分波するものである。方向性結合器30は、高周波コンポーネント21と出力端31との間に配置されている。また、切替器52が高周波コンポーネント21と方向性結合器30との間に配置されているので、方向性結合器30は、切替器52と出力端31との間に配置されていることにもなる。
【0019】
調整量演算部40は、方向性結合器30で分波した高周波信号に基づいて、可変増幅器20における利得の調整量を演算する。可変増幅器20は、調整量演算部40が演算した利得の調整量に基づいて、信号生成部10が生成した高周波信号の増幅を調整する。
【0020】
一対の切替器51,52は、それぞれ信号生成部10と可変増幅器20との間、および高周波コンポーネント21と方向性結合器30との間に配置される。一対の切替器51,52は、信号生成部10から方向性結合器30までの高周波信号の経路を、通常の経路とバイパス経路とで切り替える。通常の送信経路とは、可変増幅器20および高周波コンポーネント21を通過する経路であり、バイパス経路とは、可変増幅器20および高周波コンポーネント21をバイパスする経路である。
【0021】
一対の切替器51,52によってバイパス経路が選択されている状態では、信号生成部10が生成した高周波信号は、実質的に方向性結合器30のみを通過することになる。つまり、調整量演算部40は、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定することなる。第1実施形態に係る高周波出力装置100は、一対の切替器51,52によってバイパス経路を選択し、常温における調整量演算部40の測定結果を記憶しておき、これを基準として可変増幅器20における利得の調整量を演算する。
【0022】
第1実施形態に係る高周波出力装置100では、使用時においても、一時的に一対の切替器51,52によってバイパス経路を選択し、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定する。常温時および使用時における測定結果の違いは、測定系における温度変化の影響である。そして、使用時における通常経路の測定結果には、測定系における温度変化の影響が重畳して測定されている。そこで、第1実施形態に係る高周波出力装置100では、重畳して測定されている測定系における温度変化の影響を考慮して可変増幅器20における利得を調整する。これにより、第1実施形態に係る高周波出力装置100では、温度変化に対するキャリブレーションを行わなくても、温度変化による影響を除外することが可能である。
【0023】
図2は、第1実施形態に係る高周波出力装置のキャリブレーション時を示す図である。また、図3は、第1実施形態に係る高周波出力装置の使用時を示す図である。また、図4は、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法の概要を示すフローである。
【0024】
図2に示すように、高周波出力装置100のキャリブレーションをする際には、出力端31における出力を測定する出力端31に出力計60を接続する。キャリブレーション時において出力計60によって測定された出力端31における出力は、自動または手動で調整量演算部40に入力される。
【0025】
一方、図3に示すように、高周波出力装置100の使用時には、例えば高周波信号を空中伝搬させるためのアンテナ61を出力端31に接続する。なお、高周波出力装置100の使用時には、出力端31にアンテナ61以外のものを接続してもよい。例えば、高周波出力装置100の出力端31は、ケーブルを介し、またはケーブルを介さず、他の装置の入力端を接続してもよい。
【0026】
第1実施形態に係る高周波出力安定化方法は、図2に示すように出力端31に出力計60を接続した状態と、図3に示すように出力端31に例えばアンテナ61を接続した状態とで行う。ただし、以下では、高周波出力装置100を用いて高周波出力安定化方法を実施するものとして説明を行うが、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法は高周波出力装置100の構成に限定されるものではない。出力端付近の高周波信号を測定しながら高周波出力装置の出力を安定化する機能を備える高周波出力装置一般で実施することができる。
【0027】
図4に示すように、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法では、最初に周波数と出力レベルに関して高周波出力装置100のキャリブレーションを行う(ステップS10)。このステップS10では、図2に示すように、出力端31における出力を測定する出力端31に出力計60を接続した状態で、高周波出力装置100のキャリブレーションを行う。
【0028】
次に、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法では、常温時の周波数と出力レベルに関して、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定する(ステップS20)。このステップS20では、高周波出力装置100の構成であれば、一対の切替器51,52を、バイパス経路側に選択することで、信号生成部10が出力する高周波信号を直接的に測定系で測定することになる。なお、このステップS20では、図2に示すように、出力端31における出力を測定する出力端31に出力計60を接続した状態で行うことが可能である。
【0029】
その後、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法では、使用時の周波数と出力レベルに関して、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定する(ステップS30)。使用時では、図3に示すように、高周波出力装置100の出力端31にアンテナ61が接続されている。また、高周波出力装置100の構成であれば、一対の切替器51,52が可変増幅器20および高周波コンポーネント21を通過する経路側に選択されている。
【0030】
そこで、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法では、一時的に一対の切替器51,52を、バイパス経路側に選択する。この一時的な一対の切替器51,52の切り替えは、定期的に行ってもよく、温度変化を検知して自動または手動で行ってもよい。
【0031】
そして、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法では、常温時および使用時における測定系の特性の測定結果の違いに基づいて、高周波出力装置100の出力を調整する(ステップ40)。常温時および使用時における測定結果の違いは、測定系における温度変化の影響である。そして、使用時における通常経路の測定結果には、測定系における温度変化の影響が重畳して測定されている。そこで、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法では、重畳して測定されている測定系における温度変化の影響を考慮して高周波出力装置100の出力を調整する。これにより、第1実施形態に係る高周波出力安定化方法では、温度変化に対するキャリブレーションを行わなくても、温度変化による影響を除外することが可能である。
【0032】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る高周波出力装置の概要を示す図である。図5に示すように、高周波出力装置200は、第1実施形態と同様に、信号生成部10と可変増幅器20と方向性結合器30と調整量演算部40と一対の切替器51,52とを備えている。高周波出力装置200は、調整量演算部40の内部構成の他、第1実施形態と同様の構成であるので共通する構成に関しては同一の符号を付すことで説明を省略する。また、説明の都合上、出力端31に出力計60を接続した状態を図示しているが、第1実施形態と同様に、使用時には出力端31に例えばアンテナ61を接続した状態とし得る。
【0033】
図5に示すように、調整量演算部40は、方向性結合器30から分波した高周波信号を対数増幅する対数増幅器41を備えている。また、調整量演算部40は、A/D(アナログ-デジタル)変換器42と演算処理部43とD/A(デジタル-アナログ)変換器44を備えている。また、演算処理部43は、比較器45と記憶部46を備えている。
【0034】
調整量演算部40では、対数増幅器41が方向性結合器30から分波した高周波信号を対数増幅する。そして、A/D変換器42は、対数増幅器41の出力をデジタル信号に変換する。演算処理部43の比較器45は、A/D変換器42から入力された値と記憶部46に記憶されている値を比較して、可変増幅器20における利得の調整量を演算する。D/A変換器44は、演算処理部43が演算した可変増幅器20における利得の調整量をアナログ信号に変換する。D/A変換器44が出力するアナログ信号は、可変増幅器20における利得の制御信号として用いられる。
【0035】
第2実施形態に係る高周波出力装置200でも、第1実施形態と同様に、重畳して測定されている測定系における温度変化の影響を考慮して可変増幅器20における利得を調整する。これにより、第2実施形態に係る高周波出力装置200でも、温度変化に対するキャリブレーションを行わなくても、温度変化による影響を除外することが可能である。
【0036】
図6から図9は、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法の概要を示すフローである。図6から図9の各図に示すフローは、図4に示した各ステップS10からS40の各ステップを、高周波出力装置200の構成に合わせて詳述したものである。
【0037】
図6に示す各ステップは、周波数と出力レベルに関して高周波出力装置200のキャリブレーションを行う処理の詳細を示している。図6に示すように、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、信号生成部10の出力を最大付近として、出力計60と調整量演算部40における測定結果を記録する(ステップS11)。さらに、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、信号生成部10の出力を最小付近として、出力計60と調整量演算部40における測定結果を記録する(ステップS12)。なお、ステップS11とステップS12は順不同である。
【0038】
ステップS11およびステップS12における調整量演算部40における測定結果は、A/D変換器42によって変換された値である。したがって、対数増幅器41を通過することで、対数変換されており、A/D変換器42によって変換された値は、いわゆるデシベル表現された値となっている。また、ステップS11およびステップS12の測定結果は、調整量演算部40の記憶部46としてもよいが、別途のキャリブレーション用の装置の記憶部やオペレーターの記録用紙であってもよい。
【0039】
次に、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、ステップS11およびステップS12によって得られた出力計60と調整量演算部40における測定結果からスロープとインターセプトを計算し、これを調整量演算部40の記憶部46に記憶する(ステップS13)。ここで、スロープとインターセプトとは、図10に示すように、出力計60の変化に対する調整量演算部40における測定結果の変化の比率と、出力計60の値の軸に対する切片である。これらスロープおよびインターセプトは、その定義から解るように、出力レベルに関する高周波出力装置200の特性を表している。
【0040】
そして、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、上記ステップS11からステップS13までの処理を使用予定している各周波数に対して行う(ステップS14)。これにより、図10に示すように、各周波数に対するスロープおよびインターセプトが得られる。
【0041】
次に、信号生成部10の出力を規定値とする(ステップ15)。
【0042】
そして、出力計60における出力レベルがhigh(例えば-10dBm)となるときの、出力計60の読み値(これをPWRhighとする)と、A/D変換器42の読み値(これをCODEhighとする)と、D/A変換器44の入力値(これをDAChighとする)とを取得し、これを記憶部46に記憶する(ステップS16)。具体的には、D/A変換器44の入力値をインクリメントまたはデクリメントしながら、出力計60における出力レベルがLowとなったときの値をDAChighとする。そして、このときの出力計60の読み値をPWRhighとし、A/D変換器42の読み値をCODEhighとする。
【0043】
同様に、出力計60における出力レベルがlow(例えば-20dBm)となるときの、出力計60の読み値(これをPWRlowとする)と、A/D変換器42の読み値(これをCODElowとする)と、D/A変換器44の入力値(これをDAClowとする)とを取得し、これを記憶部46に記憶する(ステップS17)。
【0044】
そして、上記ステップS16およびステップS17を使用予定している各周波数に対して行う(ステップS18)。その後、各周波数に対して、PWRhigh,PWRlow,CODEhigh,CODElowからスロープおよびインターセプトを算出し、これを記憶部46に記憶する(ステップS19)。
【0045】
次に、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、常温時の周波数と出力レベルに関して、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定する。図7に示す各ステップは、常温時の周波数と出力レベルに関して、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定する処理の詳細を示している。
【0046】
図7に示すように、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、まず一対の切替器51,52を、バイパス経路側に選択する(ステップS21)。これにより、信号生成部10が出力する高周波信号を直接的に測定系で測定することになる。つまり、A/D変換器42の読み値は、測定系の特性を測定することになる。
【0047】
そこで、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、信号生成部10の出力を規定値として、このときのA/D変換器42の読み値(これをCAL_CODEとする)を記憶部46に記憶する(ステップS22)。
【0048】
そして、上記ステップS22を使用予定している各周波数に対して行う(ステップS23)。
【0049】
次に、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、使用時の周波数と出力レベルに関して、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定する。図8に示す各ステップは、常温時の周波数と出力レベルに関して、出力端31付近の高周波信号を測定する測定系の特性を測定する処理の詳細を示している。
【0050】
図8に示すように、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、まず一対の切替器51,52を、バイパス経路側に選択する(ステップS31)。既に第1実施形態でも説明したように、使用時では、一対の切替器51,52が可変増幅器20および高周波コンポーネント21を通過する経路側に選択されている。そこで、ステップS31では、一時的に一対の切替器51,52を、バイパス経路側に選択する。この切り替えは、例えば温度が高温(例えば摂氏50度)になった時に行うこととしてもよい。
【0051】
そして、信号生成部10の出力を規定値として、このときのA/D変換器42の読み値(これをCAL_CODE′とする)を取得する(ステップS32)。
【0052】
その後、一対の切替器51,52を、通常の送信経路側に戻す(ステップS33)。
【0053】
次に、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、常温時および使用時における測定系の特性の測定結果の違いに基づいて、高周波出力装置200の出力を調整する。図9に示す各ステップは、常温時および使用時における測定系の特性の測定結果の違いに基づいて、高周波出力装置200の出力を調整する。
【0054】
図9に示すように、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、ステップS22で記憶部46に記憶されたCAL_CODEと、ステップS32で取得したCAL_CODE′とを用いて、CAL_CODEdiff=CAL_CODE-CAL_CODE′を計算する(ステップS41)。
【0055】
次に、CAL_CODEdiffの使用時(例えば摂氏50度)における調整量演算部40のA/D変換器42の読み値に加算する(これをCODE′とする)(ステップS42)。つまり、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法は、常温時と使用時とにおける測定系の特性の測定結果の差を補正値として用いて、使用時における高周波出力装置200の出力の測定結果を補正する。
【0056】
そして、ステップS42のように補正された使用時における高周波出力装置200の出力の測定結果が所定範囲内になるように高周波出力装置200の出力を調整する(ステップS43)。具体的には、比較器45が、補正されたCODE′と記憶部46に記憶されているスロープおよびインターセプトから定まる所定範囲とを比較する。補正されたCODE′が所定範囲外である場合、D/A変換器への入力をインクリメントまたはデクリメントすることで、補正されたCODE′が所定範囲の収まるように可変増幅器20における利得を調整する。これにより、第2実施形態に係る高周波出力安定化方法では、温度変化に対するキャリブレーションを行わなくても、温度変化による影響を除外することが可能である。
【0057】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(少なくとも部分的な非選択を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、修正を含むことはもちろんである。特に、本書に記載した数値範囲について、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。また、引用した上記の特許文献等の各開示は、本書に引用をもって織り込むものとする。
【符号の説明】
【0058】
100,200 高周波出力装置
10 信号生成部
20 可変増幅器
21 高周波コンポーネント
30 方向性結合器
31 出力端
40 調整量演算部
41 対数増幅器
42 A/D変換器
43 演算処理部
44 D/A変換器
45 比較器
46 記憶部
51,52 切替器
60 出力計
61 アンテナ
図1
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図10