(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-27
(45)【発行日】2024-06-04
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240528BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
H01Q1/32 Z
H01Q1/22 A
(21)【出願番号】P 2020007197
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】今川 敬之
(72)【発明者】
【氏名】土屋 正登
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】橋目 譲
(72)【発明者】
【氏名】久下 智之
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-031726(JP,A)
【文献】特開2015-154327(JP,A)
【文献】特開2016-111304(JP,A)
【文献】特開2003-249812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるアンテナ装置であって、
前記車両の外部と無線通信する通信機と、
拡張アンテナを兼ねた金属製ブラケットと、を備え、
前記通信機は、筐体と、前記筐体内に収容され、かつ、パターンアンテナが形成された基板と、を有し、
前記金属製ブラケットは、前記筐体に固定される第1部分と、前記車両に固定される第2部分とを有し、
前記第1部分と前記パターンアンテナは、前記金属製ブラケットと前記パターンアンテナの少なくとも一部が空間結合するように前記筐体の一部を間に挟んだ状態で対向している、アンテナ装置。
【請求項2】
前記金属製ブラケットは、前記第1部分から上方に向かって延びている、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1部分と前記筐体の間には、成形樹脂部が配置されており、
前記第1部分と前記パターンアンテナは、前記金属製ブラケットと前記パターンアンテナの少なくとも一部が前記成形樹脂部を介して空間結合するように前記筐体の一部及び前記成形樹脂部を間に挟んだ状態で対向している、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
インストルメントパネルをさらに備え、
前記成形樹脂部は、前記インストルメントパネルの一部である、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記通信機及び前記金属製ブラケットは、それぞれ、前記インストルメントパネルの内面が対向した状態で配置されている、請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記筐体は、樹脂製である、請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフに設けられた給電素子(アンテナ素子を兼ねた給電素子)と当該車両のルーフが固定される車体のループ構造自体を空間結合(非接触の電磁界結合)することで構成されるアンテナ装置が例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のアンテナ装置においては、給電素子が設けられた車両のルーフに代えて、車両の外部と無線通信する通信機を用いる場合、通信機と車体のループ構造自体が空間結合するように通信機を車体のループ構造の近くに配置しなければならないため、通信機の設置の自由度が制限されるという問題点があった。
【0005】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、車両の外部と無線通信する通信機を車体のループ構造の近くに配置しなくても特性が向上する(拡張アンテナから電波放出を効率的に行える)、通信機の設置の自由度が高いアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアンテナ装置は、車両に搭載されるアンテナ装置であって、前記車両の外部と無線通信する通信機と、拡張アンテナを兼ねた金属製ブラケットと、を備え、前記通信機は、筐体と、前記筐体内に収容され、かつ、パターンアンテナが形成された基板と、を有し、前記金属製ブラケットは、前記筐体に固定される第1部分と、前記車両に固定される第2部分とを有し、前記第1部分と前記パターンアンテナは、前記金属製ブラケットと前記パターンアンテナの少なくとも一部が空間結合するように前記筐体の一部を間に挟んだ状態で対向している。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、車両の外部と無線通信する通信機を車体のループ構造の近くに配置しなくても特性が向上する(拡張アンテナから電波放出を効率的に行える)、通信機の設置の自由度が高いアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1のアンテナ装置1Aの概略構成図である。
【
図2】実施形態2のアンテナ装置1Bの概略断面図である。
【
図4】実施形態3のアンテナ装置1Cの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1であるアンテナ装置1Aについて添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0010】
まず、
図1を用いて、実施形態1のアンテナ装置1Aの構成について説明する。
【0011】
図1は、実施形態1のアンテナ装置1Aの概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態1のアンテナ装置1Aは、車両Vに搭載されるアンテナ装置である。アンテナ装置1Aは、車両Vの外部と無線通信する通信機10(車載通信機)と、拡張アンテナを兼ねた金属製ブラケット20と、を備えている。
【0013】
通信機10は、筐体11と、筐体11内に収容され、かつ、パターンアンテナ12aが形成された基板12と、を有している。金属製ブラケット20は、筐体11に固定される第1部分21と、車両V(例えば、インストルメントパネル30の内面や車体フレーム(図示せず))に固定される第2部分22とを有している。
【0014】
第1部分21とパターンアンテナ12aは、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aの少なくとも一部が空間結合(非接触の電磁界結合)するように筐体11の一部(例えば、上部11a)を間に挟んだ状態で対向している。
【0015】
以上説明したように、実施形態1によれば、車両Vの外部と無線通信する通信機10を車体のループ構造の近くに配置しなくても特性が向上する(拡張アンテナから電波放出を効率的に行える)、通信機10の設置の自由度が高いアンテナ装置1Bを提供することができる。
【0016】
これは、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aの少なくとも一部が空間結合(非接触の電磁界結合)するように第1部分21とパターンアンテナ12aが筐体11の一部(例えば、上部11a)を間に挟んだ状態で対向しているため、通信機10のパターンアンテナ12aの駆動電流により、金属製ブラケット20に誘導電流が生じ、この誘導電流により金属製ブラケット20から電波(通信用の電波)が放出されることによるものである。つまり、金属製ブラケット20が、通信機10を車両Vに固定する機能だけでなく、拡張アンテナとしての機能も有していることによるものである。
【0017】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2であるアンテナ装置1Bについて添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0018】
まず、
図2を用いて、実施形態2のアンテナ装置1Bの構成について説明する。
【0019】
図2は、実施形態2のアンテナ装置1Bの概略断面図である。
図2は、インストルメントパネル30の車両前後方向の断面を側面視した概略断面図である。以下、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、通信機10の搭載位置、搭載方向、搭載角度は、図示のような形態に限られない。
【0020】
図2に示すように、アンテナ装置1Bは、車両Vに搭載されている。アンテナ装置1Bは、車両Vの外部と無線通信する通信機10(車載通信機とも呼ばれる)と、通信機10を車両Vに固定する、拡張アンテナを兼ねた金属製ブラケット20と、車両Vの計器類(図示せず)等が設けられるインストルメントパネル30と、を備えている。通信機10及び金属製ブラケット20は、それぞれ、インストルメントパネル30の内面(車室内側からインストルメントパネル30を見てインストルメントパネル30背面)が対向した状態で配置されている。
【0021】
通信機10は、例えば、車両外部と無線通信を行うデータ通信モジュールである。通信機10は、筐体11と、基板12(商品基板とも呼ばれる)と、を備えている。筐体11は、樹脂(合成樹脂)製である。筐体11内には、基板12、バックアップ用電池(図示せず)等が収容されている。基板12には、パターンアンテナ12aが形成されている。パターンアンテナ12aは、例えば、モノポールアンテナ、L字型アンテナ、逆L字型アンテナ、F字型アンテナ、逆F字型アンテナである。基板12は、パターンアンテナ12aが筐体11の上部11a近傍に位置した状態で筐体11内に配置されている。基板12には、パターンアンテナ12aの他、通信機10を構成する(無線通信を制御する)電子部品等が実装されているが、電子部品等は、各図中省略されている。
【0022】
通信機10は、金属製ブラケット20により車両Vに固定されている。
【0023】
金属製ブラケット20は、筐体11に固定される第1部分21と、車両Vに固定される第2部分22と、を有している。
【0024】
第1部分21は、例えば、筐体11の上部11a(上面)に固定されている。この固定には、公知の固定手段(例えば、ネジ)が用いられる。その際、第1部分21とパターンアンテナ12aは、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aの少なくとも一部が空間結合(非接触の電磁界結合)するように筐体11の一部(例えば、上部11a)を間に挟んだ状態で対向している。つまり、第1部分21は、パターンアンテナ12aに対して非接触で、かつ、パターンアンテナ12aの駆動電流によりパターンアンテナ12aに誘導電流が発生する位置に固定されている。
【0025】
金属製ブラケット20は、第1部分21から上方(例えば、第2部分22)に向かって延びている。そして、第2部分22は、筐体11の上方に位置する車両構成部材、例えば、インストルメントパネル30の内面や車体フレーム(図示せず)に固定されている。
【0026】
次に、上記構成のアンテナ装置1Bの動作の一例について説明する。
【0027】
上記構成のアンテナ装置1Bにおいては、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aの少なくとも一部が空間結合(非接触の電磁界結合)するように第1部分21とパターンアンテナ12aが筐体11の一部(例えば、上部11a)を間に挟んだ状態で対向しているため、通信機10のパターンアンテナ12aの駆動電流により、金属製ブラケット20に誘導電流が生じ、この誘導電流により金属製ブラケット20から電波(通信用の電波)が放出される。このように、金属製ブラケット20は、通信機10を車両Vに固定する機能だけでなく、拡張アンテナとしての機能も有している。
【0028】
図3は、電波強度の比較例である。
図3(a)は拡張アンテナを兼ねる金属製ブラケット20を用いない場合の電波強度の放射パターンを計算した例であり、
図3(b)は拡張アンテナを兼ねる金属製ブラケット20を用いた場合の電波強度の放射パターンを計算した例である。
【0029】
図3を参照すると、実施形態2のように拡張アンテナを兼ねる金属製ブラケット20を用いることで、電波強度(特性)が向上することが分かる。
【0030】
以上説明したように、実施形態2によれば、車両Vの外部と無線通信する通信機10を車体のループ構造の近くに配置しなくても特性が向上する(拡張アンテナから電波放出を効率的に行える)、通信機10の設置の自由度が高いアンテナ装置1Bを提供することができる。
【0031】
これは、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aの少なくとも一部が空間結合(非接触の電磁界結合)するように第1部分21とパターンアンテナ12aが筐体11の一部(例えば、上部11a)を間に挟んだ状態で対向しているため、通信機10のパターンアンテナ12aの駆動電流により、金属製ブラケット20に誘導電流が生じ、この誘導電流により金属製ブラケット20から電波(通信用の電波)が放出されることによるものである。つまり、金属製ブラケット20が、通信機10を車両Vに固定する機能だけでなく、拡張アンテナとしての機能も有していることによるものである。
【0032】
また、実施形態2によれば、金属製ブラケット20が拡張アンテナを兼ねているため、筐体11に一体成形される非接触アンテナが不要となる。そのため、筐体11の軽量化、及びコスト削減が可能となる。
【0033】
また、実施形態2によれば、金属製ブラケット20(拡張アンテナ)を基板12から距離を離して、インストルメントパネル30の上面方向に設置可能であるため、受信感度の向上が期待できる。
【0034】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3であるアンテナ装置1Cについて添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。なお、通信機10の搭載位置、搭載方向、搭載角度は、図示のような形態に限られない。
【0035】
図4は、実施形態3のアンテナ装置1Cの概略断面図である。
図4は、インストルメントパネル30の車両前後方向の断面を側面視した概略断面図である。
【0036】
以下、実施形態2との相違点を中心に説明する。
【0037】
図4に示すように、金属製ブラケット20の第1部分21と通信機10の筐体11の間には、成形樹脂部31が配置されている。このように成形樹脂部31を設けた理由は、当該成形樹脂部31に対して通信機10の筐体11及び金属製ブラケット20をそれぞれ当接させることで、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aを空間結合(非接触の電磁界結合)する位置関係、形状で配置するため(つまり、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aの位置決めのため)である。具体的には、第1部分21は、例えば、筐体11の側部11b(側面)に成形樹脂部31を介して固定されている。成形樹脂部31は、例えば、インストルメントパネル30の一部である。第1部分21とパターンアンテナ12aは、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aの少なくとも一部が成形樹脂部31を介して空間結合するように筐体11の一部(例えば側部11b)及び成形樹脂部31を間に挟んだ状態で対向している。成形樹脂部31は、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aが筐体11の一部(例えば側部11b)及び成形樹脂部31を間に挟んだ状態(かつ、金属製ブラケット20とパターンアンテナ12aがそれぞれ成形樹脂部31に当接した状態)で適切に空間結合するようにその形状、サイズ等が設計されている。以上の点以外、実施形態2のアンテナ装置1Cと同様の構成である。
【0038】
以上説明したように、実施形態3によれば、実施形態2と同様の効果を奏することができる。
【0039】
また、成形樹脂部31により、車両ごとに最適化設計した(電波放出を効率的にする形状とした)金属製ブラケット(拡張アンテナ)と通信機10(パターンアンテナ12a)を適切に空間結合することができる。これにより、車両組み立ての際に、通信機10、及び金属製ブラケット20の取り付け作業が改善される。
【0040】
上記実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0041】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
1A、1B、1C アンテナ装置
10 通信機
11 筐体
11a 上部
11b 側部
12 基板
12a パターンアンテナ
20 金属製ブラケット
21 第1部分
22 第2部分
30 インストルメントパネル
31 成形樹脂部
V 車両